令和6(ワ)70539特許権侵害に基づく損害賠償請求事件
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| 裁判所 |
請求棄却 東京地方裁判所
|
| 裁判年月日 |
令和8年5月19日 |
| 事件種別 |
民事 |
| 法令 |
特許権
|
| キーワード |
無効30回 新規性25回 特許権18回 無効審判10回 刊行物9回 分割9回 実施8回 進歩性5回 侵害4回 損害賠償3回
|
| 主文 |
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。 |
| 事件の概要 |
|
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判決文
令和 8 年 5 月 19 日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
令和 6 年(ワ)第 70539 号 特許権侵害に基づく損害賠償請求事件
口頭弁論終結日 令和 8 年 2 月 17 日
判 決
当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり
5 主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
10 被告は、原告に対し、1000 万円及びこれに対する令和 7 年 1 月 8 日から支
払済みまで年 3%の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は、発明の名称を「被加熱芳香カートリッジ」とする発明の特許(以下
「本件特許」といい、本件特許に係る特許請求の範囲請求項 1 及び 2 の発明を
15 それぞれ「本件発明 1」及び「本件発明 2」という。また、これらの発明を併せ
て「本件各発明」という。)に係る特許権(以下「本件特許権」という。)を有
する原告が、別紙物件目録記載の各製品(以下、併せて「対象製品」という。)
は本件各発明の技術的範囲にそれぞれ属することから、被告による対象製品の
輸入及び販売等は本件特許権の侵害に当たると主張して、被告に対し、不法行
20 為(民法 709 条。損害額につき、特許法 102 条 2 項又は 3 項)に基づき、少な
くとも 1 億円を下らない損害の一部請求として 1000 万円の損害賠償及びこれ
に対する令和 7 年 1 月 8 日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定
の年 3%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
補助参加人は、被告を補助するため本件訴訟に参加した。
25 1 前提事実(証拠等を掲記しない事実は、当事者間に争いがないか、弁論の全趣
旨により容易に認められる。なお、書証の番号は特に断らない限り枝番号を含
む(以下同じ。)。)
(1) 当事者等
ア 原告は、雑貨商品(ノンニコチンスティック等)の企画、製造、販売に
5 関する事業等を行う株式会社である。
イ 被告は、加熱式タバコを含む多様な商品の製造、販売、輸出入等を業と
する株式会社である。
ウ 補助参加人は、タバコの輸入及び販売、日本で販売されるタバコに関す
る連絡業務、市場開発、広告宣伝業及び広告物制作業務並びに販売促進業
10 務等を行う合同会社である。
対象製品は、補助参加人の関連会社であるフィリップ・モリス・プロダ
クツ・エス・アー(以下「PMPSA」という。)が製造し、同社から供給を
受けた補助参加人と被告との間の独占的販売契約に基づき、補助参加人か
ら被告に供給されている製品である。補助参加人は、同契約に基づき、被
15 告に対し、対象製品が第三者の権利を侵害した場合等に、被告が負担する
損害・損失等について補償義務を負う。(丙 1)
(2) 本件特許権及び本件各発明
原告は、次の特許権(本件特許権)を有している(以下、本件特許に係る
明細書及び図面を「本件明細書」という。また、
「/」は改行部分を示す。以
20 下同じ。)
特許番号 特許第 7583386 号
発明の名称 被加熱芳香カートリッジ
出願番号 特願 2024-127681 号
出願日 令和 6 年 8 月 2 日
25 分割の表示 特願 2020-65072 号の分割
原出願日 令和 2 年 3 月 31 日
登録日 令和 6 年 11 月 6 日
特許請求の範囲
【請求項 1】
「喫煙者が吸引する際の気流の流れの方向を基準として、加熱されて
5 エアロゾル及び芳香の成分となる揮発物を生成する被加熱芳香発生基
材の集合体である被加熱芳香発生源を上流側に、下流側に支持部材と
フィルタを、長手方向に順に配設される被加熱芳香カートリッジであ
って、/前記支持部材が、少なくとも、前記被加熱芳香発生源の移動
を防止する支持部と、前記揮発物が通過する流路とを備え、/前記揮
10 発物が流路に流入する流入口と前記揮発物が流路から流出する流出口
の前記被加熱芳香カートリッジの長手方向に垂直な断面の形状が相似
な円形状であり、前記支持部材の外周が形成する前記被加熱芳香カー
トリッジの長手方向に垂直な断面の面積に対する、前記流路の外周が
形成する前記被加熱芳香カートリッジの長手方向に垂直な断面の面積
15 の割合を空孔率と定義したとき、前記流入口の方が前記流出口よりも
前記空孔率が小さい、/ことを特徴とする被加熱芳香カートリッジ。」
【請求項 2】
「前記流入口と前記流出口の前記空孔率との差が、19~69%ポイント
に設計されている、/ことを特徴とする、請求項 1 に記載の被加熱芳
20 香カートリッジ。」
(3) 構成要件の分説
ア 本件発明 1
1A 喫煙者が吸引する際の気流の流れの方向を基準として、加熱されてエ
アロゾル及び芳香の成分となる揮発物を生成する被加熱芳香発生基材の
25 集合体である被加熱芳香発生源を上流側に、下流側に支持部材とフィル
タを、長手方向に順に配設される被加熱芳香カートリッジであって、
1B 前記支持部材が、少なくとも、前記被加熱芳香発生源の移動を防止す
る支持部と、前記揮発物が通過する流路とを備え、
1C 前記揮発物が流路に流入する流入口と前記揮発物が流路から流出す
る流出口の前記被加熱芳香カートリッジの長手方向に垂直な断面の形状
5 が相似な円形状であり、
1D 前記支持部材の外周が形成する前記被加熱芳香カートリッジの長手
方向に垂直な断面の面積に対する、前記流路の外周が形成する前記被加
熱芳香カートリッジの長手方向に垂直な断面の面積の割合を空孔率と定
義したとき、前記流入口の方が前記流出口よりも前記空孔率が小さい、
10 1E ことを特徴とする被加熱芳香カートリッジ。
イ 本件発明 2
2A 前記流入口と前記流出口の前記空孔率との差が、19~69%ポイントに
設計されている、
2B ことを特徴とする、請求項 1 に記載の被加熱芳香カートリッジ。
15 (4) 被告の行為等
被告は、補助参加人との間の独占的販売契約に基づき、補助参加人から供
給される対象製品を日本国内に輸入し、また、国内において販売及び販売の
申出をしている。
対象製品は、PMPSA が製造するスティック交換型タバコ加熱機「IQOS
20 ILUMA」に挿入して用いられる専用のタバコスティックである。
本件各発明との対比において、対象製品における「テリア」シリーズと「セ
ンティア」シリーズが同じ構成であることについては、当事者間に争いはな
い。ただし、対象製品の具体的な構成については、別紙「対象製品の構成(主
張対比表)」のとおり、争いがある。
25 2 争点
(1) 対象製品の本件各発明の技術的範囲への属否(争点 1)
ア 「支持部材」(構成要件 1A、1B、1D)の意義及び充足性(争点 1-1)
イ 「被加熱芳香発生源を上流側に、下流側に支持部材とフィルタを、長手
方向に順に配設される」(構成要件 1A)の充足性(争点 1-2)
ウ 「支持部」(構成要件 1B)の充足性(争点 1-3)
5 エ (構成要件 1B、1C、1D)の意義及び「前記揮発物が流路に流入
「流路」
する流入口と前記揮発物が流路から流出する流出口の前記被加熱芳香カー
トリッジの長手方向に垂直な断面の形状が相似な円形状」(構成要件 1C)
の充足性(争点 1-4)
オ 「前記流入口の方が前記流出口よりも前記空孔率が小さい」(構成要件
10 1D)の充足性(争点 1-5)
カ 「前記流入口と前記流出口の前記空孔率との差が、19~69%ポイントに
設計されている」(構成要件 2A)の充足性(争点 1-6)
(2) 無効理由の有無(争点 2)
ア 無効理由 1
15 丙 21 発明を主引用例とする新規性欠如(争点 2-1)
イ 無効理由 2
丙 22 発明を主引用例とする新規性欠如(争点 2-2)
ウ 無効理由 3
丙 23 発明を主引用例とする新規性欠如(争点 2-3)
20 エ 無効理由 4
丙 24 発明を主引用例とする新規性欠如(争点 2-4)
オ 無効理由 5
丙 30 発明を主引用例とする新規性欠如(争点 2-5)
カ 無効理由 6
25 丙 18~20 に基づく新規性欠如(争点 2-6)
キ 無効理由 7
本件発明2の構成要件 2A に係る進歩性欠如(争点 2-7)
ク 無効理由 8
分割要件違反による新規性欠如(争点 2-8)
ケ 無効理由 9
5 サポート要件違反(争点 2-9)
(3) 公知技術の抗弁(争点 3)
(4) 原告の損害発生の有無及び額(争点 4)
3 当事者の主張
(1) 争点 1-1(「支持部材」(構成要件 1A、1B、1D)の意義及び充足性)
10 (原告の主張)
本件明細書の記載によれば、従来技術では、マウスピースを構成する支持
部材及び冷却部材の構造が複雑であるがゆえに、被加熱芳香発生基材及び被
加熱芳香発生源の破損や移動等を防止する支持部材と、エアロゾルを生成す
る冷却部材とを、被加熱芳香カートリッジに分離(離間)して配設する必要
15 があったところ、本件各発明は、被加熱芳香発生基材及び被加熱芳香発生源
の破損や移動を防止し、喫煙者にとって心地よい煙及び芳香を味わうことが
できるように、適切な構造の流路を有する支持部材を備えた被加熱芳香カー
トリッジを提供するという目的を達成するものである。そのため、本件各発
明における「支持部材」は、被加熱芳香発生源を支持する機能を有するもの
20 であれば足り、「支持部材」が 1 つの部材から構成されているか 2 つの部材
から構成されているかは、本件各発明の本質ではない。
また、本件明細書上、「支持部材」は、「従来の支持部材と冷却部材の機能
を兼ねる」ものであって、従来技術のように「被加熱芳香カートリッジに分
離して配設」されるものではない。
25 対象製品において、エアーフローチャンバー及び冷却プラグは、両者一体
となって、被加熱芳香カートリッジであるタバコ部分と隣接しており、これ
らが離れて配設されていた従来技術とは異なるのであって、これらをもって
「支持部材」に当たるとすることに支障はない。
加えて、本件明細書では、
「流路の揮発物との接触面には複雑な凹凸等を形
成してもよい」とされていることから、エアーフローチャンバーと冷却プラ
5 グの境目に段が形成される程度の単純な凹凸形状は当然に予定されていると
いえる。本件明細書では、連続形状であることによる技術的意義は強調され
ておらず、段差状であることを除外する積極的な記載もない。
したがって、対象製品のエアーフローチャンバー及び冷却プラグを合わせ
たものは、本件発明 1 の「支持部材」(構成要件 1A、1B、1D)に当たる。
10 (被告及び補助参加人の主張)
本件明細書によれば、従来のカートリッジのマウスピースでは、熱力学及
び流体力学に基づいた設計がされていなかったため、支持部材と冷却部材と
がカートリッジの中に分離して配設される必要があり、構造が複雑になって
いたところ、本件各発明は、
「支持部材」において、揮発物が通過する流路の
15 入口側及び出口側の断面形状、面積、位置、空孔率等につき熱力学的及び流
体力学的観点から検討して適切な流路を構成することにより、単一の支持部
材に、加熱ブレード挿入時における被加熱芳香発生源の移動を防止する機能
だけでなく、喫煙者に心地よい煙と芳香を提供する機能をも併せ持たせ、そ
のような支持部材を被加熱芳香カートリッジに配設したものである。
20 「支持部材」と「冷却部材」の 2 つの部材に分
そうすると、本件各発明は、
けていた従来技術の問題点を克服するべく、
「支持部材」について、従来技術
の支持部材と冷却部材の機能を兼ね備えるようにしたものであって、「支持」
の機能と「冷却」を通じて心地よい煙・方向を形成するという機能を、2 つ
の異なる部材を併せたものによって実現することは予定されていない。すな
25 わち、本件発明 1 の「支持部材」は、単一の部材でなければならない。
また、本件明細書記載の第 1 ないし第 8 の特徴を実現する例として開示さ
れた支持部材は、いずれも単一の部材で構成され、かつ、そこに設けられた
流路の断面形状が連続的に変化しているもののみであり、流路の途中で断面
形状が非連続的に(段差状に)変化するものは一例もない。
したがって、
「支持部材」とは、被加熱芳香発生源の移動を防止できる「支
5 持部」と、気体の流通及び冷却のための最適の流路構造を備えた単一の部材
である。
他方、対象製品のエアーフローチャンバー及び冷却プラグは、それぞれ異
なる部材であるから、本件発明 1 の「支持部材」に該当しない。また、エア
ーフローチャンバー及び冷却プラグは、中空部分の径が異なる。本件明細書
10 が連続形状の流路(段差のない形状の流路)しか開示していないことに鑑み
ると、これらを 1 つにまとめて「支持部材」とすることは相当でない。
したがって、対象製品は、本件発明 1 の構成要件 1A、1B 及び 1D を充足
しない。
(2) 争点 1-2(「被加熱芳香発生源を上流側に、下流側に支持部材とフィルタを、
15 長手方向に順に配設される」(構成要件 1A)の充足性)
(原告の主張)
対象製品においては、エアーフローチャンバー及び冷却プラグから成るも
のが本件各発明の「支持部材」に相当する。このため、対象製品においては、
「被加熱芳香発生源を上流側に」、「下流側に支持部材とフィルタ」が「順に
20 配設され」ているといえる。
したがって、対象製品は、
「被加熱芳香発生源を上流側に、下流側に支持部
(構成要件 1A)ものに当たる。
材とフィルタを、長手方向に順に配設される」
(被告及び補助参加人の主張)
対象製品は、エアロゾル形成基材であるタバコシートが充填されたタバコ
25 部分(部材 B)、中空円筒状のエアーフローチャンバー(部材 C)、中空円筒
状の冷却プラグ(部材 D)及びプラグ状のフィルター(部材 E)が長手方向
に順に配設されたタバコスティックである。すなわち、対象製品においては、
タバコ部分に隣接するエアーフローチャンバーとフィルターの間に、別の部
材である冷却プラグが介在している。このため、対象製品は、本件発明 1 の
構成要件 1A を充足しない。
5 (3) 争点 1-3(「支持部」(構成要件 1B)の充足性)
(原告の主張)
本件各発明は、誘導加熱方式を除外するものではない。ブレード加熱方式
は、本件明細書上「典型的な例」とされているように、実施例に過ぎない。
また、誘導加熱方式の装置においても、装置の挿入口の内周面にテーパー
10 を持った突起があり、カートリッジを挿入すると、押し込む力に対抗して突
起からの抗力が作用し、カートリッジの径方向と軸方向の両方に力がかかり、
エアロゾル形成基体を移動させる力が働く。このため、エアロゾル形成基体
(タバコ部分)が巻紙(保護ペーパー)に接着されていても、エアロゾル形
成基体に当接する中空管状は支持要素としての機能を有するから、エアロゾ
15 ル形成基体に当接するエアーフローチャンバー及び冷却プラグは、「支持部」
を有するといえる。
対象製品においては、まず、エアーフローチャンバーはタバコ基体に当接
しているため、タバコ基体が移動しようとしても、タバコ基体はエアーフロ
ーチャンバーの端部から抗力を受けて移動しない。そのため、エアーフロー
20 チャンバーは、タバコ基体とフィルタとの距離が変更されないようタバコ基
体の移動を阻止する機能を有するといえる。また、冷却プラグの端部はエア
ーフローチャンバーの端部に当接している。エアーフローチャンバー及び冷
却プラグの軸方向は、タバコスティックの中心軸に沿うように配置されてい
ることから、タバコ基体が移動しようとしてエアーフローチャンバーを軸方
25 向に押しても、エアーフローチャンバーは、冷却プラグの端部から抗力を受
けるため移動しない。すなわち、冷却プラグは、エアーフローチャンバーを
介し、タバコ基体とフィルタとの距離が変更されないよう、タバコ基体の移
動を阻止する機能を有する。
したがって、エアーフローチャンバー及び冷却プラグは、一体のものとし
て、「支持部」(構成要件 1B)を備える「支持部材」に相当する。
5 (被告及び補助参加人の主張)
特許請求の範囲及び本件明細書の記載によれば、本件各発明においては、
芳香カートリッジを加熱式芳香具に装着する際に、加熱ブレードの挿入によ
り、被加熱芳香発生源がマウスピース側に移動しようとする力が加わること
を前提に、
「支持部材」は、この被加熱芳香発生源からの外力を受け、これに
10 抵抗して応力を発生させ、被加熱芳香発生源の移動を防止するものと理解さ
れる。このように、本件各発明は、専らブレード加熱式の加熱芳香カートリ
ッジを想定している。すなわち、本件各発明の「前記被加熱芳香発生源の移
動を防止する支持部」を備える「支持部材」は、被加熱芳香発生源に突き刺
さる加熱ブレードからの外力に対応して被加熱芳香発生源からの力を受け、
15 これに抵抗して応力を発生させ、被加熱芳香発生源の移動を防止する部材で
ある。
他方、対象製品は、タバコ基体の中に発熱体となる金属片のサセプタが内
蔵されている誘導加熱方式を用いており、加熱ブレードを挿入する方式では
ない。このため、対象製品においては、加熱ブレードの挿入によりマウスピ
20 ース方向への外力が発生することはなく、それに抵抗してタバコ基材の移動
を防止させる必要もない。むしろ、エアーフローチャンバーの役割は、加熱
により発生したタバコ香味を含むエアロゾルを吸い口側へ移送するエアロゾ
ル通路を提供することにある。そのために、エアーフローチャンバーには、
中央に大きな空洞部がある。加えて、タバコ部分、エアーフローチャンバー
25 及び冷却プラグは、巻紙(保護ぺーパー)に糊付けされて、いずれもマウス
ピース方向に移動しない構造となっており、対象製品のエアーフローチャン
バー及び冷却プラグがタバコ部分の移動を防止する構造になっていない。ま
た、対象製品の挿入口は、差し込んだカートリッジが抜けないようにカート
リッジの径よりも若干小さくなっている部分があるが、それによって、対象
製品のフロントシールやタバコ基体に径方向の力がかかってフロントシール
5 やタバコ基体が軸の中心方向に少しだけつぶれるだけであり、タバコ基体に
対してマウスピース方向(軸方向)への力はかからない。仮に、タバコ基体
に対してマウスピース方向への力が多少かかったとしても、タバコ基体は、
巻紙(保護ペーパー)に糊付けされているから、マウスピース方向に移動す
ることはない。このように、タバコ部分は、それ自体長手方向の位置が固定
10 されており、エアーフローチャンバーがタバコ部分をマウスピース側に移動
しないように支持しているわけではないし、更にマウスピース側にある冷却
プラグも、タバコ部分をマウスピース側に移動しないように支持していると
はいえない。
したがって、対象製品は、本件発明 1 の「移動を防止する支持部」
(構成要
15 件 1B)を備えていない。
(4) 争点 1-4(「流路」(構成要件 1B、1C、1D)の意義及び「前記揮発物が流
路に流入する流入口と前記揮発物が流路から流出する流出口の前記被加熱
芳香カートリッジの長手方向に垂直な断面の形状が相似な円形状」(構成要
件 1C)の充足性)
20 (原告の主張)
本件明細書は、セルロースアセテートから揮発物が通過し得ることを前提
としながら、
「流路」とセルロースアセテートから成る「フィルター」を区別
しており、空孔部分のみを「流路」としている。したがって、本件発明 1 の
(構成要件 1B、1C、1D)とは、空孔部分のみを指すものというべき
「流路」
25 である。
対象製品におけるエアーフローチャンバー及び冷却プラグは、繊維状のも
のが集合したセルロースアセテートからなり、通気性を有する素材からなる
ものといえる。しかし、エアーフローチャンバー及び冷却プラグにおける貫
通孔とそれ以外のセルロースアセテート部分では、吸引の抵抗が著しく異な
り、揮発物が流れる量が大きく異なる。対象製品において上流から下流に向
5 けて流れる空気は、ほぼ全てが吸引の抵抗がほぼゼロである貫通孔を通って
流れ、セルロースアセテート部分を流れるものはゼロに近いと考えられる。
このため、セルロースアセテート部分は「流路」というべきではない。
さらに、対象製品のエアーフローチャンバー及び冷却プラグからなる部材
をもって「支持部材」に当たることを前提にすると、
「前記揮発物が流路に流
10 入する流入口」
(エアーフローチャンバーとタバコ部分が接する部分)と「前
記揮発物が流路から流出する流出口」(冷却プラグとフィルタが接する部分)
の「断面の形状」は、「相似な円形状」といえる。
したがって、対象製品は、本件発明 1 の「流路」を有し、その構成要件 1C
を充足する。
15 (被告及び補助参加人の主張)
本件明細書上、
「流路」は揮発物が通過する道筋であるという以上に何ら限
定されていない。このため、「流路」とは、「支持部材」に設けられた中空部
分に限らず、その他のエアロゾルが通過し得る空隙をも含むものというべき
である。
20 対象製品におけるエアーフローチャンバー及び冷却プラグの素材は、繊維
状のものが集合したセルロースアセテートであり、通気性を有し、タバコ部
分で発生したエアロゾルは、エアーフローチャンバー及び冷却プラグをも通
過し得る。そうである以上、エアーフローチャンバー及び冷却プラグにおけ
る「流路」は、中空部分だけでなく、エアーフローチャンバー及び冷却プラ
25 グ内における微細な空隙部分(繊維の存在しない隙間部分)も含む。
そうすると、仮にエアーフローチャンバー及び冷却プラグを一体の「支持
部材」と解したとしても、微細な空隙部分を含めた「流路」における入口側
と出口側の形状は相似でも円形状でもない。
また、仮に「流路」が空孔部分のみを意味すると解した場合であっても、
「支持部材」に相当するエアーフローチャンバーが備える流路(空孔部分)
5 は、入口も出口も同径・同一形状であるから、「相似な円形状」ではない。
したがって、対象製品は、本件発明 1 の構成要件 1C を充足しない。
(5) 争点 1-5(「前記流入口の方が前記流出口よりも前記空孔率が小さい」(構
成要件 1D)の充足性)
(原告の主張)
10 実験結果によれば、被告製品における流入口(タバコベイパーが流路に流
入する流入口)の空孔率(エアーフローチャンバー及び冷却プラグの外周が
形成するタバコスティックの長手方向に垂直な断面の面積に対する、前記流
路の外周が形成するタバコスティックの長手方向に垂直な断面の面積の割合)
は、約 22~24%の範囲にあり、流出口(タバコベイパーが流路から流出する
15 流出口)の空孔率は、約 50~52%の範囲にある。
したがって、対象製品は、流入口の方が流出口よりも空孔率が小さいとい
えるから、本件発明 1 の構成要件 1D を充足する。
(被告及び補助参加人の主張)
仮に「流路」が空孔部分のみを意味すると解した場合であっても、対象製
20 品において「支持部材」に相当するエアーフローチャンバーが備える流路(空
孔部分)は、入口も出口も同径・同一形状であり、空孔率は異ならない。
したがって、対象製品は、
「支持部材」の流入口と流出口における空孔率の
大小関係を定めた本件発明 1 の構成要件 1D を充足しない。
仮に「支持部材」につきエアーフローチャンバー及び冷却プラグと解した
25 としても、
「流路」とは、空孔部分に限らず、揮発物が通過する道筋も全て含
まれると解するべきである。対象製品におけるエアーフローチャンバー及び
冷却プラグは、いずれもその内部に無数の繊維と空隙を有しており、円形と
はいえず、その中の「流路」も円形とはいえないから、
「支持部材の外周」及
び「流路の外周」が存在しない。
したがって、対象製品は、本件発明 1 の構成要件 1D を充足しない。
5 (6) 争点 1-6(「前記流入口と前記流出口の前記空孔率との差が、19~69%ポイ
ントに設計されている」(構成要件 2A)の充足性)
(原告の主張)
実験結果によれば、対象製品において、流入口と流出口の空孔率の差は、
約 27~29%ポイントの範囲にある。
10 したがって、対象製品は、本件発明 2 の構成要件 2A を充足する。
(被告及び補助参加人の主張)
「支持部材」に相当するエアーフローチャンバーが備える「流路」
(空孔部
分)は、入口側も出口側も同径・同一形状であるから、空孔率は異ならない。
仮にエアーフローチャンバー及び冷却プラグを一体としたものを「支持部
15 材」と解した場合でも、「前記揮発物が通過する流路」には、「支持部材」の
空孔部分に限らず、揮発物が通過する道筋が全て含まれるところ、対象製品
におけるエアーフローチャンバー及び冷却プラグの内部に存在する無数の空
隙をも含めた空孔率の差は、立証されていない。
したがって、対象製品は、本件発明 2 の構成要件 2A を充足しない。
20 (7) 争点 2-1(丙 21 発明を主引用例とする新規性欠如)
(被告及び補助参加人の主張)
特表平 11-503912 号公報(国際公開日平成 8 年(1996 年)10 月 24 日。
丙 21。以下「丙 21 文献」という。)には、以下の図 7A に示される構造の非
燃焼式シガレット(被加熱芳香カートリッジに相当する)に係る発明が開示
されている(以下「丙 21 発明」という。)。
5 【図 7A】(ただし着色したもの)
丙 21 発明の構成は、以下のとおりである。
1-1a タバコウェブ部 66 を上流側に、下流側に、内部に中空部を含む第 1
の自由流通フィルタ 74、内部に中空部を含む第 2 の自由流通フィルタ
102、フィルタ部材 104 を順に配設した、非燃焼式シガレットである。
10 1-1b 第 1 の自由流通フィルタ 74 は、タバコウェブ部の移動を防止する
肉厚の周壁部と、エアロゾルが通過する流路となる中空部(符号 74 の
部材の中央部分)を有し、第 2 の自由流通フィルタ 102 も、その中央部
にエアロゾルが通過する流路となる中空部を有している。
1-1c、1-1d
15 第 1 の自由流通フィルタ 74 の中空部のタバコウェブの断面形状は円
形であり、第 2 の自由流通フィルタ 102 の中空部のフィルタ 104 側の断
面形状は円形であって、その断面形状における中空部の径は、第 1 の自
由流通フィルタ 74 の中空部よりも小さい。
1-1e 非燃焼式シガレット
20 1-2a 第 1 の自由流通フィルタ 74 のタバコウェブ側における中空部の断
面積が第 1 の自由流通フィルタ 73 の外周で構成される円形形状の断面
積に対して占める割合 (流入口の空孔率)と、第 2 の自由流通フィルタ
102 のフィルタ側における中空部が自由流通フィルタ 102 の外周で構成
される円の全断面積に対して占める割合 (流出口の空孔率)の差は、19
5 ~69%ポイントの範囲内にある。
このような構成を有する丙 21 発明につき、本件各発明の構成要件と対比
すると、本件各発明との間に相違点はない。
そうすると、本件各発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において
頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可
10 能となった発明(以下「刊行物記載発明等」という。)といえる。
したがって、本件特許は、特許法 29 条 1 項 3 号に違反してされたもので
あり、特許無効審判により無効にされるべきものであるから(同法 123 条 1
項 2 号)、原告は、被告に対し、本件特許権を行使できない(同法 104 条の 3
第 1 項)。
15 (原告の主張)
本件各発明と丙 21 発明については、以下の相違点が存在する。したがっ
て、本件各発明は新規性を認められる。
ア 相違点 1-1
丙 21 発明には、本件発明 1 の「被加熱芳香発生源の移動を防止する支
20 持部」と一致する構成がない。
イ 相違点 1-2
丙 21 発明には、本件発明 1 の「前記揮発物が流路に流入する流入口と
前記揮発物が流路から流出する流出口の前記被加熱芳香カートリッジの長
手方向に垂直な断面の形状が相似な円形状であり」と一致する構成がない。
25 ウ 相違点 1-3
丙 21 発明には、本件発明 1 の「前記流入口の方が前記流出口よりも前
記空孔率が小さい」と一致する構成がない。
(8) 争点 2-2(丙 22 発明を主引用例とする新規性欠如)
(被告及び補助参加人の主張)
特表 2015-50336 号公報(国際公開日平成 25 年 7 月 4 日。丙 22。以下「丙
5 22 文献」という。)には、以下の図 1 のとおり、エアロゾル形成基材の集合
体(7)と、中空の管体(6)、中空円筒状の移行セクション(4)及びフィル
タ(3)を長手方向に順に並べ、包装部材(5)で包んで一本にした加熱式エ
アロゾル発生物品に係る発明が記載されている(以下「丙 22 発明」という。)。
【図 1】(ただし着色したもの)
10 丙 22 発明の構成は、以下のとおりである。
2-1a エアロゾル形成基材(7)の集合体を上流側に、下流側に中空のセル
ロースアセテート管体(6)、移送セクション(4)及びマウスピースフィ
ルタ(3)を長手方向に順に配設した電気加熱式エアロゾル発生物品であ
る。
15 2-1b 管体(6)は、エアロゾル形成基材(7)の集合体タバコロッドの移
動を防止する支持部(管体 6 の肉厚壁部分)と、エアロゾルが通過する
流路となる中空部(管体 6 の中空部)を有し、移行セクション(4)もエ
アロゾルが通過する流路となる中空部((4)の中空部分)を有しており、
2-1c、2-1d
20 管体(6)の中空部のタバコロッド側の断面形状は円形であり、移行セ
クション(4)の中空部のフィルタ側の断面形状は、管体(6)の中空部
よりも径の小さな円形である、
2-1e 加熱式エアロゾル発生物品
2-2a タバコロッド側における管体(6)の中空部の断面積が管体(6)の
5 全断面積に対して占める割合は、19〜69%ポイントの範囲にある。
このような構成を有する丙 22 発明につき、本件各発明の構成要件と対比
すると、本件各発明との間に相違点はない。
そうすると、本件各発明は、本件特許出願前に頒布等された刊行物記載発
明等といえる。
10 したがって、本件特許は、特許法 29 条 1 項 3 号に違反してされたもので
あり、特許無効審判により無効にされるべきものであるから、原告は、被告
に対し、本件特許権を行使できない。
(原告の主張)
本件各発明と丙 22 発明については、以下の相違点が存在する。したがっ
15 て、本件各発明は新規性を認められる。
ア 相違点 2-1
丙 22 発明には、本件発明 1 の「被加熱芳香発生源の移動を防止する支
持部」と一致する構成がない。
イ 相違点 2-2
20 丙 22 発明には、本件発明 1 の「前記揮発物が流路に流入する流入口と
前記揮発物が流路から流出する流出口の前記被加熱芳香カートリッジの長
手方向に垂直な断面の形状が相似な円形状であり」と一致する構成がない。
ウ 相違点 2-3
丙 22 発明には、本件発明 1 の「前記流入口の方が前記流出口よりも前
25 記空孔率が小さい」と一致する構成がない。
(9) 争点 2-3(丙 23 発明を主引用例とする新規性欠如)
(被告及び補助参加人の主張)
特表 2016-538842 号公報(国際公開日平成 27 年 6 月 11 日。丙 23。以下
「丙 23 文献」という。)には、以下の図 2 及び 4 のとおり、エアロゾル形成
基材である材料シートの集合体であるロッド(1020)、中空円筒状の支持要
5 素(1030)、中空円筒状の冷却要素(1040)及びフィルタ(1050)を長手方
向に順に並べ、包装部材で包んで一本にした加熱式エアロゾル発生物品に係
る発明が記載されている(以下「丙 23 発明」という。)。
【図 2】(ただし着色したもの)
10 【図 4】(ただし着色したもの)
丙 23 発明の構成は、以下のとおりである。
3-1a エアロゾル形成基材である材料シートの集合体であるタバコロッド
(1020)を上流側に、下流側に支持要素(1030)、冷却要素(1040)及
びフィルタ(1050)を長手方向に順に配設した加熱式エアロゾル発生物
15 品である。
3-1b 支持要素は、タバコロッドの移動を防止する支持部(支持要素 1030
の肉厚周壁部分)と、エアロゾルが通過する流路となる中空部を有し、
冷却要素もエアロゾルが通過する流路となる中空部を有しており、
3-1c、3-1d
支持要素の中空部のタバコロッド側の断面 (流入口)の形状は円形で
5 あり、冷却要素の中空部のフィルタ側の断面 (流出口)の形状は、支持
要素の中空部よりも径の小さな円形である、
3-1e 加熱式エアロゾル発生物品。
3-2a タバコロッド側における支持要素の中空部の断面積が支持要素の全
断面積に対して占める割合(流入口の空孔率)とフィルタ側における冷
10 却要素の空孔部が冷却要素の全断面関に対して占める割合(流出口の空
孔率)との差は、19~69%ポイントの範囲内にある。
このような構成を有する丙 23 発明につき、本件各発明の構成要件と対比
すると、本件各発明との間に相違点はない。
そうすると、本件各発明は、本件特許出願前に頒布等された刊行物記載発
15 明等といえる。
したがって、本件特許は、特許法 29 条 1 項 3 号に違反してされたもので
あり、特許無効審判により無効にされるべきものであるから、原告は、被告
に対し、本件特許権を行使できない。
(原告の主張)
20 本件各発明と丙 23 発明については、以下の相違点が存在する。したがっ
て、本件各発明は新規性を認められる。
ア 相違点 3-1
丙 23 発明には、本件発明 1 の「被加熱芳香発生源の移動を防止する支
持部」と一致する構成がない。
25 イ 相違点 3-2
丙 23 発明には、本件発明 1 の「前記揮発物が流路に流入する流入口と
前記揮発物が流路から流出する流出口の前記被加熱芳香カートリッジの長
手方向に垂直な断面の形状が相似な円形状であり」と一致する構成がない。
ウ 相違点 3-3
丙 23 発明には、本件発明 1 の「前記流入口の方が前記流出口よりも前
5 記空孔率が小さい」と一致する構成がない。
(10) 争点 2-4(丙 24 発明を主引用例とする新規性欠如)について
(被告及び補助参加人の主張)
WO2020/032610 号国際公開公報(国際公開日令和 2 年(2020 年)2 月 13
日。丙 24。以下「丙 24 文献」という。)には、以下の図 9 のとおり、タバコ
10 ロッド、チューブ部、冷却部及びアセテート部を順次配設し、エアロゾル生
成装置に挿入されヒータで加熱されるようにした電気加熱式シガレットに係
る発明が記載されている(以下「丙 24 発明」という。)。
【図 9】(ただし着色したもの)
15 丙 24 発明の構成は、以下のとおりである。
4-1a タバコロッド部を上流側に、下流側に、内部に中空部を含むチュー
ブ部、内部に中空部を含む冷却部、及びアセテート部(フィルタ)を順
に配設した被加熱式シガレットである。
4-1b チューブ部は、タバコロッドの移動を防止する支持部(チューブ部
20 の周壁部分)と、エアロゾルが通過する流路(チューブの中空部分)を
有し、冷却部もエアロゾルが通過する流路(冷却部の中空部分)を有し
ている。
4-1c、4-1d
中空部 300 の中空部のタバコロッド側の断面 (流入口)は円形であ
り、冷却部の中空部のフィルタ側の断面(流出口)の形状は、中空部の
中空部よりも径の小さな円形である、
5 4-1e 電気加熱式シガレット。
4-2a 中空部のタバコロッド側における中空部の断面積が中空部 300 の全
断面積に対して占める割合(流入口の空孔率)と、冷却部 200 のフィル
タ側における中央の中空部が冷却部の全断面積に対して占める割合は
(流出口の空孔率)の差は、19~69%ポイントの範囲にある。
10 このような構成を有する丙 24 発明につき、本件各発明の構成要件と対比
すると、本件各発明との間に相違点はない。
そうすると、本件各発明は、本件特許出願前に頒布等された刊行物記載発
明等といえる。
したがって、本件特許は、特許法 29 条 1 項 3 号に違反してされたもので
15 あり、特許無効審判により無効にされるべきものであるから、原告は、被告
に対し、本件特許権を行使できない。
(原告の主張)
本件各発明と丙 24 発明については、以下の相違点が存在する。したがっ
て、本件各発明は新規性を認められる。
20 ア 相違点 4-1
丙 24 発明には、本件発明 1 の「被加熱芳香発生源の移動を防止する支
持部」と一致する構成がないという相違点が存在する。
イ 相違点 4-2
丙 24 発明には、本件発明 1 の「前記揮発物が流路に流入する流入口と
25 前記揮発物が流路から流出する流出口の前記被加熱芳香カートリッジの長
手方向に垂直な断面の形状が相似な円形状であり」と一致する構成がない。
ウ 相違点 4-3
丙 24 発明には、本件発明 1 の「前記流入口の方が前記流出口よりも前
記空孔率が小さい」と一致する構成がない。
(11) 争点 2-5(丙 30 発明を主引用例とする新規性欠如)について
5 (被告及び補助参加人の主張)
ア 欧州特許出願公開 3494809 号公報(公開日令和元年(2019 年)6 月 12
日。丙 30。以下「丙 30 文献」という。)には、図 2 において、以下の構成
を有する発明が記載されている(以下「丙 30 発明」という。)。
【図 2】
10 5-1a タバコロッド部(20)を上流側に、下流側に中空部(300)、冷却
部(200)、及びフィルタ(100)を順に配設した被加熱式シガレット
である。
5-1b 中空部(300)は、タバコロッドの移動を防止する支持部(中空部
の肉厚周壁部分)と、エアロゾルが通過する流路となる中空構造(300
15 の中央部分)を有し、冷却部(200)も、その中央部にエアロゾルが通
過する流路である 1 つの貫通孔(210)を有している。
5-1c、5-1d
中空部(300)の中空部分のタバコロッド側の断面(流入口)の形状
は円形であり、冷却部(200)の中空部のフィルタ(100)側の断面(流
出口)の形状は、中空部(300)の中空部よりも径の大きな円形である、
(なお、被告及び補助参加人の主張として「冷却部(200)の中空部の
フィルタ(100)側の断面(流出口)の形状は、中空部(300)の中空
部よりも径の小さな円形である」とあるが、他の主張とも合わせて全
5 体としてみれば、
「冷却部の中空部のフィルタ(100)側の断面(流出
口)の形状は、中空部(300)の中空部よりも径の大きな円形である」
と主張する趣旨と解される。)
5-1e 非燃焼式シガレット。
5-2a 中空部(300)のロッド側における中空部の断面積が中空部(300)
10 の全断面積に対して占める割合(空孔率)は、例えば、約 25%、冷却
部 200 のフィルタ側における中央の中空部が冷却部の全断面積に対し
て占める割合(空孔率)は約 56%であり、両者の差が約 31%ポイント
である。
このような構成を有する丙 30 発明につき、本件各発明の構成要件と対
15 比すると、本件各発明との間に相違点はない。
そうすると、本件各発明は、本件特許出願前に外国において頒布された
刊行物に記載された発明といえる。
したがって、本件特許は、特許法 29 条 1 項 3 号に違反してされたもの
であり、特許無効審判により無効にされるべきものであるから、原告は、
20 被告に対し、本件特許権を行使できない。
イ 原告の主張する後記相違点について
(ア) 相違点 5-1 について
丙 30 文献の記載によれば、タバコロッド 20、中空部 300 及び冷却部
200 が順次当接して配置されていることが理解できる。
25 原告は、対象製品の部材 B に対して部材 C(エアーフローチャンバー)
及び部材 D(冷却プラグ)に順次当接していることをもって、部材 C と
部材 D が一体としてタバコ部分の移動を防止している旨、及び部材 C と
部材 D を併せたものが本件各発明の「支持部材」に当たる旨を主張して
いる。これを前提とすると、丙 30 発明の中空部 300 と冷却部 200 が併
せて本件各発明の「支持部材」に相当することになるところ、丙 30 発明
5 における冷却部 200 は支持部材の一部であり、その円筒の壁部分は「支
持部材」における「支持部」に相当するといえる。
また、丙 30 文献の記載及び冷却部 200 と貫通孔 210 の組合せから導
かれる肉厚(0.2〜4 mm)からすると、冷却部も中空部も、いずれも「壁
部」といえるような部分を備えており、その肉厚は、中空部の肉厚の方
10 が冷却部の肉厚よりも 「若干」大きいとされているから、冷却部の壁部
も一定程度の厚みを備えたものが想定されている。最も肉厚が小さくな
る組み合わせで考えても冷却部 200 の壁部の肉厚は 0.2 mm であって、
一般的な紙よりも厚く、これを中空管状に構成すれば、軸方向に相応の
強度を持つ。
15 そうすると、丙 30 発明のタバコスティックに加熱ブレードが挿入さ
れ、タバコロッドを移動させるような力が加わった場合には、中空部と
冷却部とがその力を受け止めてタバコロッドの移動を防止できることは、
当業者にとって容易に理解できる。
したがって、原告が主張する相違点 5-1 は存在しない。
20 (イ) 相違点 5-2 について
丙 30 文献の記載によっても、冷却部の中空部の断面は「円形」であっ
てもよく、実際、図 2 等を見れば、丙 30 発明の冷却部 200 の貫通孔が
円形であることが開示されているといえる。
したがって、原告が主張する相違点 5-2 は存在しない。
25 (ウ) 相違点 5-3 について
流入口の空孔率と流出口の空孔率との差分(19~69%)については、
丙 30 文献に明示の記載はないが、同文献に具体的に記載された中空部
の直径(5~8mm)、中空部の貫通孔の直径(2~7 mm)、 冷却部(200)
の直径(5~8 mm)及び 冷却部の貫通孔の直径(4~7.8 mm)に基づい
て計算すると、丙 30 文献には、空孔率の差分が 19~69%ポイントの範
5 囲に入る例が記載されているといえる。
したがって、原告が主張する相違点 5-3 は存在しない。
(原告の主張)
本件各発明と丙 30 発明については、以下の相違点が存在する。したがっ
て、本件各発明は新規性を認められる。
10 ア 相違点 5-1
丙 30 発明においては、中空部(300)と冷却部(200)を合わせたもの
がタバコロッドの移動を防止することができるか否かが明らかではない。
また、丙 30 文献によれば、冷却部 200 の直径は 5〜8 mm であり、貫通
孔 210 の直径は 4〜7.8mm であることから、冷却部(200)は、その組み
15 合わせ次第では 0.2mm しかなく、この程度の厚みしかない部位でタバコ
ロッドの移動を防止することを想定しているとは、当業者は読み取らない。
したがって、丙 30 発明は、本件発明 1 の「被加熱芳香発生源の移動を
防止する支持部」と一致する構成を備えていない。
イ 相違点 5-2
20 丙 30 文献には、
「もちろん、貫通孔 210 の断面は、四角形または他の形
状であってもよい。」との記載があることに加え、貫通孔 210 の断面と中
空洞 300 の断面の形状を相似にすることを含め、貫通孔 210 の断面と中空
洞 300 の断面の形状の関係についての記載が存在しない。そのため、丙 30
発明の 1c 及び 1d の構成は、正しくは、以下のとおり認定されるべきであ
25 る。
「中空部(300)の中空部分のタバコロッド側の断面(流入口)の形状は
円形であり、冷却部(200)の中空部のフィルタ(100)側の断面(流出口)
の形状は、中空部(300)の中空部よりも径が小さい円形、四角形又は他の
形状である」
したがって、丙 30 発明は、本件発明 1 の「前記揮発物が流路に流入す
5 る流入口と前記揮発物が流路から流出する流出口の前記被加熱芳香カート
リッジの長手方向に垂直な断面の形状が相似な円形状であり」と一致する
構成がない。
ウ 相違点 5-3(本件発明 2 との関係)
丙 30 文献には、空孔率との指標は存在せず、流入口と流出口の空孔率
10 との差についての記載もない。このため、丙 30 発明は、流入口と流出口の
空孔率との差を要素としていない発明といえる。
丙 30 文献に接した当業者は、丙 30 発明を流入口と流出口の空孔率との
差というパラメータによって特定するという構成について着想を得る前提
ないし動機がない。
15 したがって、空孔率の差分(19〜69%)の点は、本件発明 2 と丙 30 発
明との相違点になる。
(12) 争点 2-6(丙 18~20 発明に基づく新規性欠如)について
(被告及び補助参加人の主張)
ア 丙 18 発明
20 特表 2016-538848 号公報(丙 18)の図 3 には、以下の構成の「低抵抗
気流経路を備えたエアロゾル発生物品」に係る発明(以下「丙 18 発明」と
いう。)が開示されている。
イ 丙 19 発明
特許第 5920744 号公報(国際公開日平成 25 年 7 月 4 日。丙 19)の図 1
5 及び 2 には、以下の構成の「エアロゾル発生装置と共に使用するためのエ
アロゾル発生物品」に係る発明(以下「丙 19 発明」という。)が開示され
ている。
ウ 丙 20 発明
特許第 5877618 号公報(国際公開日平成 25 年 8 月 22 日。丙 20)の図
10 1 及び 2 には、以下の構成の「エアロゾル冷却要素を有するエアロゾル発
生物品」に係る発明(以下「丙 20 発明」という。)が開示されている。
エ 新規性の欠如
丙 18 発明~丙 20 発明のいずれも、丙 21 発明~丙 24 発明及び丙 30 発
明と同様に、支持部材、流路の断面形状の相似性、流路の空孔率の大小の
5 点のいずれにおいても、本件各発明との間に相違点はない。
そうすると、本件各発明は、本件特許出願前に頒布等された刊行物記載
発明等といえる。
したがって、本件特許は、特許法 29 条 1 項 3 号に違反してされたもの
であり、特許無効審判により無効にされるべきものであるから、原告は、
10 被告に対し、本件特許権を行使できない。
(原告の主張)
争う。
(13) 争点 2-7(本件発明 2 の構成要件 2A に係る進歩性欠如)について
(被告及び補助参加人の主張)
15 本件発明 2 の構成要件 2A に係る空孔率の差を相違点と解したとしても、
本件明細書には空孔率の差によって格別な技術的効果が奏されることは示さ
れておらず、実際にそのような効果を奏するものでもない。このため、その
ような相違点は進歩性を基礎付けるものではない。空孔率の差は設計事項に
過ぎないから、本件発明 2 は、公知技術に対し、少なくとも進歩性を欠く。
20 したがって、本件特許は、特許法 29 条 2 項に違反してされたものであり、
特許無効審判により無効にされるべきものであるから(同法 123 条 1 項 2
号)、原告は、被告に対し、本件特許権を行使できない。
(原告の主張)
本件発明 2 の構成要件 2A に係る空孔率の差は、相違点として存在する。
5 本件各発明は、「前記流入口の方が前記流出口よりも前記空孔率が小さい」
(請求項 1)、「前記流入口と前記流出口の前記空孔率との差が、19~69%ポ
(請求項 2)との構成を有するところ、各公知技術には空孔率の指標
イント」
は存在せず、それゆえに、流入口と流出口の空孔率との差についても何らの
記載もないから、流入口と流出口の空孔率との差をその要素としていないと
10 いえる。このような各公知技術に接した当業者は、各公知技術を流入口と流
出口の空孔率との差というパラメータによって特定するという構成について
着想を得る前提ないし動機付けがない。
したがって、本件発明 2 は進歩性を有する。
(14) 争点 2-8(分割要件違反による新規性欠如)
15 (被告及び補助参加人の主張)
ア 分割要件違反
本件特許の原出願に係る当初明細書(以下「原出願当初明細書」という。)
の発明の詳細な説明及び図面は、本件明細書と同一内容である。
原出願当初明細書には、支持部材が単一の部材で形成され、かつ、支持
20 部材に設けられた流路の断面形状が「連続的に変化する」もののみが開示
されており、流路の途中で流路の断面形状や断面積が非連続的に変化する
もの(段差があるもの)は存在しない。
そうすると、分割出願に係る本件各発明が、原告の主張のとおり、支持
部材が 2 つの部材で構成されているものを含み、また、流路の断面形状が
25 「非連続的」に変化する(段差がある)ものも含むのであれば、その発明
は、原出願当初明細書に記載された事項の範囲を超えるものであり、分割
出願が「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したもので
あること」(特許法 36 条 6 項 1 号)との要件を充たしていないことにな
る。
したがって、本件特許の出願には分割要件違反があるから、本件特許の
5 出願日は、その現実の出願日(令和 6 年 8 月 2 日)となる。
イ 新規性の欠如
本件特許出願の時点では、既に対象製品が販売されていた。そうすると、
本件各発明が対象製品をその技術的範囲に含むのであれば、本件各発明は、
特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明(特許法 29
10 条 1 項 2 号)ということになる。
また、原出願当初明細書に開示された発明よりも広い発明をクレームし
た本件各発明は、その中に原出願の公開公報に記載された発明を含む。そ
うすると、本件各発明は、特許出願前に頒布等された刊行物記載発明等と
いうことになる。
15 したがって、本件特許は、特許法 29 条 1 項 2 号及び 3 号に違反してさ
れたものであり、特許無効審判により無効にされるべきものであるから、
原告は、被告に対し、本件特許権を行使できない。
(原告の主張)
原出願当初明細書の記載によれば、「支持部材」は、「従来の支持部材と冷
20 却部材を兼ねる」ものであるため、従来技術のように「被加熱芳香カートリ
ッジに分離して配設」されていないものであり、被加熱芳香発生源を支持す
る機能を有するものであれば、一体としてこのような機能を有する複数の部
材を「支持部材」と解することに何らの問題もなく、支持部材が 2 つの部材
で構成されていることの開示がないとはいえない。また、支持部材に設けら
25 れた流路の断面形状については、「本発明の流路の揮発物との接触面には複
雑な凹凸等を形成してもよい」と記載されており、支持部材に設けられた流
路の断面形状が非連続的に変化することは当然に予定されている。
したがって、本件特許には、分割要件の違反はない。
(15) 争点 2-9(サポート要件違反)
(被告及び補助参加人の主張)
5 本件明細書には、支持部材が単一の部材で形成され、かつ、支持部材に設
けられた流路の断面形状が「連続的に変化する」もののみが開示されており、
流路の途中で流路の断面形状や断面積が非連続的に変化するもの(段差があ
るもの)は存在しない。
そうすると、原告の主張を前提とする限り、特許を受けようとする発明で
10 ある本件各発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないこととなる。し
たがって、本件特許は、特許法 36 条 6 項 1 号に違反してされたものであり、
特許無効審判により無効にされるべきものであるから(同法 123 条 1 項 4
号)、原告は、被告に対し、本件特許権を行使できない。
(原告の主張)
15 争う。
(16) 公知技術の抗弁(争点 3)
(被告及び補助参加人の主張)
ア 対象製品は、以下のとおり、公知技術である丙 18 発明~丙 24 発明及び
丙 30 発明とカートリッジとして同一構造のものであり、これらの発明を
20 実施しているものである。このため、本件各発明がその技術的範囲に対象
製品を含むのであれば、本件各発明は、公知技術を含むことになるから新
規性がなく、本件各発明が新規性を有するのであれば、本件各発明が対象
製品を含むことはない。
イ 丙 18 発明及び丙 19 発明について
25 丙 18 文献及び丙 19 文献によれば、いずれも、(a)加熱式タバコのエアロ
ゾル発生体である部材 B、上流から下流に向かっての部材 B~E の配置順
及びエアロゾルの流れ、(b)部材 C の形状(中空円筒で、流路となる断面円
形状の中空部がある)、(c)部材 D の形状(中空円筒で流路となる断面円形
状の中空部がある)、部材 C 及び D の中空部 (流入口、流出口)が径の異
なる円形であること、(d)部材 C の中空部より部材 D の中空部の断面積が
5 大きいこと、(e)被加熱タバコカートリッジ、(2a)図面上、
「空孔率の差」は
丙 18 発明及び丙 19 発明と略同一であることを確認できる。
したがって、丙 18 発明及び丙 19 発明と対象製品は、カートリッジとし
て同一構造である。
ウ 丙 20 発明について
10 丙 20 文献によれば、丙 20 発明の中空チューブ 30 が中空管状であるこ
とや冷却要素 40 が中空管状の外側チューブ又はラッパーを含むこと、中
空チューブ 30 は、加熱ブレードがエアロゾル形成基体に挿入される時に、
エアロゾル形成基体がエアロゾル冷却要素 40 の方へエアロゾル発生物品
内に下流へと押し込まれるのを防ぐように働くこと、また、冷却要素 40 は
15 気流の抵抗(吸引抵抗)が低い方が望ましいこと、エアロゾル形成基体を
支持する中空チューブ 30 の方が冷却要素 40 の外側チューブないしラッパ
ーよりも一定程度肉厚に構成されていることが理解される。
したがって、丙 20 発明と対象製品は、カートリッジとして同一構造で
ある。
20 エ 丙 21 発明~丙 24 発明及び丙 30 発明について
丙 21 発明の構成 1-1a~1-1e 及び 1-2a、丙 22 発明の構成 2-1a~2-1e 及
び 2-2a、丙 23 発明の構成 3-1a~3-1e 及び 3-2a、丙 24 発明の構成 4-1a~
4-1e 及び 4-2a 並びに丙 30 発明の構成 5-1a~5-1e 及び 5-2a によれば、丙
21 発明~丙 24 発明及び丙 30 発明は、いずれも、対象製品とカートリッ
25 ジとして同一構造である。
(原告の主張)
ア 丙 18 発明について
丙 18 発明は、符号 20 の部材 B を通過する第 1 の気流経路と、これを
通過しない第 2 の気流経路との関係に特徴のあるものであり、部材 C と部
材 D にその特徴を有するものではなく、部材 C と部材 D は丙 18 発明の課
5 題、解決手段及び作用効果に直接関係のない構成である。
また、丙 18 文献に例示されている各部材の寸法は、最小値と最大値で
倍以上の開きがあり、加えて、
「およそ」というような数値範囲を更に曖昧
にする表現が多用されていることから、これらの記載をもって、図面が正
確性を期して記載されているとはいえない。
10 したがって、丙 18 文献から、対象製品の構成のうち、少なくとも部材 C
及び部材 D に係る構成は認定できない。このため、丙 18 発明は対象製品
と同一構造ではない。
イ 丙 19 発明について
丙 19 発明は、その技術的意義に鑑みれば、エアロゾル形成基材(20)
15 にその特徴があり、部材 C に対応する支持要素(30)と部材 D に対応する
エアロゾル冷却要素のそれぞれの径の大きさ、中空部断面積や空孔率の差
にその特徴を有するものではなく、これらの構成は、丙 19 発明の課題、解
決手段及び作用効果に直接関係のない構成である。
また、丙 19 文献に例示されている各部材の寸法は、最小値と最大値で
20 倍以上の開きがあり、
「およそ」というような数値範囲を更に曖昧にする表
現が多用されていることから、これらの記載をもって、図面が正確性を期
して記載されているとはいえない。
したがって、丙 19 文献から、対象製品の構成のうち、少なくとも部材 C
及び部材 D に係る構成は認定できない。このため、丙 19 発明は対象製品
25 と同一構造ではない。
ウ 丙 20 発明について
丙 20 発明は、その技術的意義に鑑みれば、部材 D に対応するエアロゾ
ル冷却要素(40)が、縦方向多孔率を有するポリマーシートから形成され
ることと、当該縦方向多孔率にその特徴があり、部材 C に対応する支持要
素(30)と部材 D に対応するエアロゾル冷却要素の、それぞれの経の大き
5 さ、中空部断面積や空孔率の差にその特徴を有するものではなく、これら
の構成は、丙 20 発明の課題、解決手段及び作用効果に直接関係のない構
成である。
また、丙 20 文献には、図面が「縮尺とおりである」という明示的な記載
はなく、1 つの実施形態の寸法例と図面との整合性をもって縮尺の正確性
10 を一義的に導くことはできない。さらに、同文献には、
「エアロゾル冷却要
素 40 は、厚みが 50mm±2mm のポリ乳酸のシートから形成される」との
記載があるところ、厚みが 50mm 前後のシートなどあり得ないことを考え
ると、同文献に記載された各寸法の数値が正確に設定されたことに疑義が
残る。
15 したがって、丙 20 文献から、対象製品の構成のうち、少なくとも部材 C
及び部材 D に係る構成は認定できない。このため、丙 20 発明は同一構造
ではない。
エ 丙 21 発明~丙 24 発明及び丙 30 発明について
いずれも争う。
20 (17) 争点 4(原告の損害発生の有無及び額)
(原告の主張)
ア 原告の損害の発生
原告が販売するスティック交換型タバコ加熱機に挿入して使用する加熱
式スティック「ザ・サード(The Third)」
(以下、
「原告製品」という。)は、
25 健康被害の低減目的や禁煙目的で喫煙者により購入されるものであって、
紙巻きタバコの代替品であり、一般消費者もそのような認識を有している。
他方、対象製品については、紙巻きタバコの煙から発生する有害性成分
の量を 100 とした場合、対象製品の蒸気から発生する有害性成分の量は平
均して 90%以上低減されていることが実証されており、紙巻きタバコより
も害が少ないことをメリットと考えてこれを使用し始める者も多い。そう
5 すると、対象製品も、原告製品と同様、紙巻きタバコの代替品として、紙
巻きタバコの及ぼす健康被害の低減目的や禁煙目的で購入されるものとい
える。
また、両製品ともに IQOS ILUMA という共通のデバイスに挿入して使
用することができる上、全国の各種コンビニエンスストアにて購入するこ
10 とができ、両製品の価格帯もほぼ同じである。このため、IQOS ILUMA を
所有している一般消費者にとっては、両製品とも、紙巻きタバコの代替品
の選択肢として挙がるものである。
したがって、原告製品と対象製品の消費者は重なり合っている。
イ 損害額
15 本件特許の設定登録日(令和 6 年 11 月 6 日)から現在までの間におけ
る特許法 102 条 2 項又は 3 項に基づき算出される損害額は、少なくとも 1
億円を下らない。
そこで、原告は、その一部請求として、被告に対し、1000 万円の支払を
請求する。
20 (被告及び補助参加人の主張)
原告製品は、タバコ成分を含まないことを謳って販売されている茶葉ステ
ィックである。これに対し、対象製品は、電気加熱式のタバコである。この
ため、原告製品と対象製品とは、市場において競合する関係にない。商品カ
テゴリーも、原告製品が「雑貨」に分類されるのに対し、対象製品は、販売
25 等にタバコ事業法による認可を必要とするタバコ製品であるから、需要者が
異なる。
原告製品は、フィリップモリス(PMPSA 及びその関連会社(日本法人で
あ る 補 助 参 加 人 を 含 む 。) を い う 。) の 販 売 す る 電 気 加 熱 式 喫 煙 具 で あ る
「IQOS ILUMA」で使用できるスティックであることを売りにして販売され
ているから、原告製品の需要者は、もともと「IQOS ILUMA」を保有してい
5 る電子喫煙具のユーザーである。そのような需要者が、禁煙等のために対象
製品の代わりに原告製品を購入することはあっても、原告製品の代わりに対
象製品を購入することはない。
したがって、原告に損害は発生していない。
第3 当裁判所の判断
10 事案に鑑み、まず、争点 2-5(丙 30 発明を主引用例とする新規性欠如)につ
いて検討する。
1 丙 30 発明
(1) 丙 30 文献
丙 30 文献は、発明の名称を「HEAT-NOT-BURN CIGARETTE FILTER
15 AND HEAT-NOT-BURN CIGARETTE」(非燃焼式シガレット用フィルタ及
び非燃焼式シガレット)とする欧州特許出願公開公報であり、その公開日は
令和元年(2019 年)6 月 12 日である。
(2) 丙 30 文献の記載
丙 30 文献には、次のような記載があることが認められる。
20 ア 技術分野
本開示は、シガレットの加工及び製造の技術分野に関し、特に 非燃焼式
シガレットフィルタ及び非燃焼式シガレットに関する。([0001])
イ 発明の開示
非燃焼式シガレットフィルタは、互いに連結された第 1 部分と第 2 部分
25 とを含む。第 1 部分はフィルタロッドであり、第 2 部分は少なくとも 1 つ
の中空部(hollow potion)及び少なくとも1つの冷却部(cooling potion)
を含む。冷却部は、空洞を有し通路として用いられる少なくとも 1 つの貫
通孔(through hole)を含み、中空部は中央部分が貫通空洞構造(through
cavity structure)を有し、当該空洞構造の直径(diameter)は前記貫通孔
の直径以上である。([0006])
5 中空部及び冷却部は同一材料による一体構造であり、中空部の空洞構造
の断面積は、貫通孔の断面積以上である。([0011])
貫通孔の直径は 0.2~7mm である。([0012])
中空部の空洞構造の直径は 2~7mm である。([0013])
ウ 実施形態の詳細な説明
10 図 1 から図 4 を参照すると、本開示は非燃焼式シガレットフィルタ 10
を提供する。このフィルタ 10 は、互いに連結された第 1 部分及び第 2 部
分を含み、第 1 部分はフィルタロッド 100 であり、第 2 部分は少なくとも
1 つの冷却部 200 及び少なくとも 1 つの中空部 300 を含む。冷却部 200 は
少なくとも 1 つの貫通孔 210 を備え、中空部 300 の中央部分は貫通空洞構
15 造となっている。([0027])
本件明細書の非燃焼式シガレットフィルタは、フィルタロッド 100、冷
却部 200 及び中空部 300 を有する。喫煙の際には、タバコ部分がヒーター
で熱せられた後、煙が、中空部 300、冷却部 200、及びフィルタロッド 100
を通過し、有効に煙の産出量と濃度をコントロールする一方で、煙の温度
20 を下げ、シガレットの吸い心地を改善する。([0028])
好ましくは、冷却部 200 は、空洞を有し通路として用いられる複数の、
例えば 3 個、4 個、6 個又は 7 個の貫通孔 210 を有する。([0032])
前記貫通孔 210 の断面(section)は、好ましくは円形(circular shape)
であり、その直径は 0.2~7mm が望ましく、例えば 0.2mm、0.7mm、1.2mm、
25 1.8mm、2.5mm、3mm、4mm、5mm、6mm、又は 7mm 等である。
([0033])
冷却部 200 が一つの貫通孔 210 を有する場合には、この貫通孔 210 は、
好ましくは、冷却部のちょうど中央部分にあり、4~7.8mm、例えば、4mm、
5mm、6mm、7mm 或いは 7.8mm の直径を有する。([0035])
好ましくは、冷却部 200 と中空部 300 は、両方とも円筒状(cylindrical
shape)であり、冷却部は直径が 5~8mm、例えば 5mm、6mm、7mm、
5 8mm 等である。([0037])
好ましくは、中空部 300 は直径が 5~8mm、例えば、5mm、6mm、7mm、
8mm 等である。([0038])
好ましくは、中空部 300 の空洞構造は、直径が 2~7mm、例えば、2mm、
3mm、4mm、5mm,6mm 又は 7mm である。([0039])
10 図 1~図 4 において、本件明細書の開示は、さらに、非燃焼式シガレッ
ト 1 であって、その中に上記非燃焼式シガレットフィルタとタバコロッド
20 を含み、当該タバコロッド 20 が非燃焼式シガレットフィルタの第 2 の
部分に連結され(connected)、非燃焼式シガレットフィルタとタバコ部の
外側を外装紙(ティッピングペーパー)で巻いたものを含む。([0043])
15 実施例 2
図 2 に示されるように、非燃焼式シガレット 1 は、非燃焼式シガレット
フィルタ 10 とタバコロッド 20 を有する。非燃焼式シガレットフィルタ 10
は、セルロースアセテートのフィルタロッド 100、冷却部 200 及び中空部
300 が順に連結されている。冷却部 200 は、1 つの貫通孔 210 を含んでお
20 り、中空部 300 の中央部は貫通する空洞となっている。中空部の壁部の厚
さは、冷却部 200 の壁部の厚さよりも若干大きい。([0050])
【図 2】
上記の非燃焼式シガレット 1 を喫煙する際には、タバコ側の端部を対応
する加熱手段に挿入して加熱する。加熱が完了すると、セルロースアセテ
5 ート製のフィルタ部が喫煙される。煙は中空部 300 を通過する。中空部 300
が煙を集めた後、煙は冷却部 200 を通過する。冷却部 200 は、紙材料の空
洞構造を煙溜め室として利用し、煙量の豊かさを確保し、煙濃度を高め、
喫煙品質を向上させる。([0052])
2 検討
10 (1) 前記認定の丙 30 文献の記載(特に図 2 に関するもの)によれば、丙 30 発
明の構成は、以下のとおりであることが認められる。
5-1a’ 喫煙者が吸引する際の気流の流れの方向を基準として、タバコロッ
ド(20)を上流側に、下流側に中空部(300)、冷却部(200)及びフィ
ルタロッド(100)を、長手方向に順に配設した非燃焼式シガレットであ
15 る。
5-1b’ 中空部(300)は、壁部(中空部の肉厚周壁部分)と、エアロゾル
が通過する流路となる空洞構造(300 の中央部分)を有し、冷却部(200)
も、その中央部分にエアロゾルが通過する流路である 1 つの貫通孔(210)
と、壁部を有している。中空部(300)の壁部は、そのタバコロッド(20)
と当接する側の端部において、タバコロッド(20)の移動を防止する機
能を有し、他の端部において、冷却部(200)の壁部と相互に当接する。
5-1c’ 前記揮発物が流路に流入する流入口(中空部(300)がタバコロッ
5 ド(20)と当接する側の空洞構造の開口部)と揮発物が流路から流出す
る流出口(冷却部(200)がフィルタロッドと当接する側の貫通孔(210)
の開口部)とを備え、冷却部(200)と中空部(300)は、いずれも円筒
状で、流入口及び流出口の長手方向に垂直な断面は、いずれも円形であ
る。
10 5-1d’ 上記流入口の断面の径は、流出口の断面の径よりも小さい。
5-1e’ 非燃焼式シガレット。
5-2a’ 冷却部(200)と中空部(300)は、いずれも円筒状であり、それぞ
れ、直径が 5~8mm であって、冷却部(200)の貫通孔(210)は、冷却
部(200)の中央部分にあり、4~7.8mm の直径を有し、中空部(300)
15 の空洞構造は、中空部(300)の中央部分にあり、直径が 2~7mm の直
径を有する。
5-2b’ 構成 5-2a’を特徴とし、構成 5-1a’~5-1d’を備える非燃焼式シガレッ
ト。
(2) 本件各発明と丙 30 発明の対比
20 これを本件各発明と対比すると、本件各発明の構成要件 1A~1C 及び 1E
と丙 30 発明の構成 5-1a’~ 5-1c’及び 5-1e’は、いずれも異ならないといえる。
また、丙 30 発明の構成 5-2a’につき、本件明細書記載の空孔率の定義(「空孔
率は、支持部材の外周が形成する被加熱芳香カートリッジの長手方向に垂直
な断面の面積に対する、流路の外周が形成する被加熱芳香カートリッジの長
25 手方向に垂直な断面の面積の割合と定義したものである。」(【0032】))にし
たがって空孔率を算定すると、中空部の空孔率は 6.25%以上 100%未満(中
空部の直径が 8mm で空洞構造の直径が 2mm の場合の空孔率は 6.25%、中
空部及び空洞構造の直径が漸近して壁部が薄くなるほど、空孔率は 100%に
漸近する。)となり、冷却部 200 の空孔率は 25%以上 100%未満(冷却部の直
径が 8mm で貫通孔の直径が 4mm の場合の空孔率は 25%、冷却部及び貫通
5 孔の直径が漸近して壁部が薄くなるほど、空孔率は 100%に漸近する。)とな
る。そうすると、丙 30 発明における流入口と流出口の空孔率は、例えば流入
口の空孔率が 6.25%であるのに対し、流出口の空孔率が 25%である場合を含
み、また、両者の差は、0%以上 93.75%未満となる。
これによれば、丙 30 発明の構成 5-1d’は、流入口の方が流出口よりも空孔
10 率が小さい場合を含むことになる。また、丙 30 発明の構成 5-2a’は、本件発
明 2 の構成要件 2A が特定する空孔率の差の数値範囲(19~69%)を含む。
また、以上によれば、丙 30 発明の構成 5-2b’は、本件発明 2 の構成要件 2B
と異ならないことになる。
したがって、本件各発明は、その特許出願前に頒布等された刊行物記載発
15 明等である丙 30 発明と同一の発明といえる。
(3) 原告の主張する相違点 5-1~5-3 について
丙 30 発明を主引用例とする新規性欠如に関する被告及び補助参加人の主
張に対し、原告は、相違点 5-1~5-3 が存在する旨を主張する。そこで、前記
認定に係る丙 30 発明の構成との関係でも、以下のとおり、これらの相違点
20 について検討する。
ア 相違点 5-1 について
原告は、相違点 5-1 として、丙 30 発明においては、中空部(300)と冷
却部(200)を合わせたものがタバコロッドの移動を防止することができる
か否かが明らかではないなどと指摘して、丙 30 発明は、本件発明 1 の「被
25 加熱芳香発生源の移動を防止する支持部」と一致する構成を備えていない
旨を主張する。
しかし、丙 30 文献の記載によれば、丙 30 発明の非燃焼式シガレットは、
非燃焼式シガレットフィルタとタバコロッドから構成されており、タバコ
ロッドが連結されている非燃焼式シガレットフィルタは、タバコロッド側
から順に、中空部、冷却部及びフィルタロッドが連結されて構成されてい
5 る([0043]、[0050]、図 2)。このため、丙 30 発明においては、タバコロッ
ド、中空部及び冷却部が順次当接して配置されているものといえる。また、
丙 30 発明の実施例 2 においては、冷却部が 1 つの貫通孔を有し、中空部
の中央部分も貫通する空洞構造となっており、中空部の壁部の厚さは、冷
却部の壁部の厚さよりも若干大きいとされている([0050]、図 2)。
10 加えて、丙 30 発明の実施例 2 につき、非燃焼式シガレットを喫煙する
ためには、タバコロッドの端部を加熱手段に挿入して加熱するとされてい
る([0052])。そうすると、丙 30 発明の非燃焼式シガレットは、この挿入
時の押圧力に耐えることができる構造を備えていると考えられる。すなわ
ち、タバコロッドに当接し、非燃焼式シガレットフィルタを構成する中空
15 部及びこれに更に当接する冷却部の各壁部の肉厚部分は、タバコロッドの
端部を加熱手段に挿入した際にかかる力を受け止めて、タバコロッドの移
動を防止する機能を果たすものと理解される。
さらに、丙 30 文献によれば、丙 30 発明の中空部の直径は 5~8mm、そ
の空洞部の直径は 2~7mm であり、冷却部の直径は 5~8mm、その貫通孔
20 の直径は 4~7.8mm であって、中空部及び冷却部はいずれも壁部を有する
こと(壁部の肉厚が 0mm ではないこと)を前提としているとみられると
共に、上記のとおり、中空部の壁部の厚さは、冷却部の壁部の厚さよりも
若干大きいとされている。加えて、当業者は、上記所定の数値範囲内にお
いて、上記機能を果たし得る中空部及び冷却部の各壁部の肉厚を適宜選択
25 し得ると考えられる。
以上によれば、丙 30 発明の非燃焼式シガレットにおける中空部及び冷
却部の各壁部(肉厚部分)は、
「タバコロッドの移動を防止する支持部」
(1b)
の構成を有するものと認められる。
したがって、本件各発明と丙 30 発明には、原告の主張する相違点 5-1 は
存在しない。この点に関する原告の主張は採用できない。
5 イ 相違点 5-2 について
原告は、相違点 5-2 として、丙 30 発明は、本件発明 1 の「前記揮発物
が流路に流入する流入口と前記揮発物が流路から流出する流出口の前記被
加熱芳香カートリッジの長手方向に垂直な断面の形状が相似な円形状であ
り」と一致する構成がない旨を主張する。
10 しかし、丙 30 文献の記載によれば、冷却部(200)が有する貫通孔(210)
の断面は、円形(したがって、直径を有する形状である。)が好ましいとさ
れており([0033])、また、冷却部が 1 つの貫通孔を有する場合、貫通孔は
冷却部の中央部分にあることが好ましく、直径を有する形状とされ
([0035])、さらに、冷却部は直径を有する円筒状であることが好ましいと
15 されている([0037])。これらの記載によれば、冷却部は円筒状であり、直
径を有し、冷却部の貫通孔もまた円形であり、直径を有することがわかる。
他方、中空部についても、丙 30 文献の記載によれば、中空部は直径を有
する円筒状であり([0037])、直径を有し([0038])、また、中空部の空洞構
造も直径を有する形状(すなわち、円形が少なくとも含まれる。)が好まし
20 いものとされている([0039])ことがわかる。
また、丙 30 発明の非燃焼式シガレットにおける中空部の空洞構造及び
冷却部の貫通孔は、いずれも「流路」に当たるところ、中空部の空洞構造
の直径は 2~7mm、冷却部の貫通孔の直径は 4~7.8mm とされており、空
洞部と貫通孔とで直径が異なるものが丙 30 文献には記載されているとい
25 える。
以上によれば、丙 30 発明における流入口(中空部の空洞構造とタバコ
ロッドが当接する部分)と流出口(冷却部の貫通孔とフィルタロッドが当
接する部分)の前記被加熱芳香カートリッジの長手方向に垂直な断面の形
状は、相似な円形状であるものが少なくとも含まれるといえる。
したがって、本件各発明と丙 30 発明には、原告の主張する相違点 5-2 は
5 存在しない。この点に関する原告の主張は採用できない。
ウ 相違点 5-3(本件発明 2 との関係)について
原告は、丙 30 文献には空孔率との指標は存在せず、丙 30 発明は、流入
口と流出口の空孔率との差を要素としていない発明であるなどと指摘して、
空孔率の差分(19〜69%)の点は、本件発明 2 と丙 30 発明との相違点に
10 なると主張する。
しかし、前記のとおり、丙 30 文献の記載によれば、丙 30 発明における
流入口と流出口の空孔率の差は 0%以上 93.75%未満となり、本件発明 2 の
構成要件 2A における空孔率の差の数値範囲(19~69%)は、これに含ま
れている。
15 したがって、本件発明 2 と丙 30 発明には、原告の主張する相違点 5-3 は
存在しない。この点に関する原告の主張は採用できない。
(4) 小括
以上によれば、本件特許は、特許法 29 条 1 項 3 号に違反してされたもの
であり、特許無効審判により無効にされるべきものであるから(同法 123 条
20 1 項 2 号)、原告は、被告に対し、本件特許権を行使できない(同法 104 条の
3 第 1 項)。
3 まとめ
したがって、その余の点について論ずるまでもなく、原告は、被告に対し、
本件特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求権を行使し得ない。
25 第4 結論
よって、原告の請求は理由がないから、これを棄却することとして、主文の
とおり判決する。
東京地方裁判所民事第 47 部
裁判官
池 田 幸 子
裁判官
松 尾 恵 梨 佳
15 裁判長裁判官杉浦正樹は、転補のため署名押印することができない。
裁判官
池 田 幸 子
別紙
当事者目録
原 告 Future Technology 株式会社
同訴訟代理人弁護士 山本 飛翔
同訴訟復代理人弁護士 田浦 一
被 告 双日株式会社
同訴訟代理人弁護士 𠮷𠮷田 和彦
同 高石 秀樹
被告補助参加人(以下「補助参加人」という。)
フィリップ・モリス・ジャパン合同会社
同代表者代表社員 フィリップモリスプロダクツエスアー
同訴訟代理人弁護士 古城 春実
同 堀籠 佳典
同 岡田 健太郎
同 平井 佑希
(別紙省略)
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