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令和7(行ケ)10028審決取消請求事件

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裁判所 請求棄却 知的財産高等裁判所
裁判年月日 令和8年7月15日
事件種別 民事
当事者 原告アリババ株式会社
被告株式会社BWB
対象物 商取引システム、管理サーバおよびプログラム
法令 特許権
特許法2条1項2回
キーワード 審決16回
無効10回
進歩性7回
実施3回
特許権2回
無効審判2回
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事件の概要 本件は、原告が、特許権者である被告に対し、特許無効審判請求を不成立と した審決の取消しを求める事案である。

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判決文

令和8年7月15日判決言渡
令和7年(行ケ)第10028号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 令和8年5月20日
判 決
原 告 ア リ バ バ 株 式 会 社
同訴訟代理人弁護士 山 崎 順 一
江 嵜 宗 利
10 同訴訟代理人弁理士 鈴 木 正 剛
被 告 株 式 会 社 B W B
同訴訟代理人弁護士 清 水 節
15 佐 藤 貴 夫
溝 田 宗 司
渡 邉 佳 行
関 卓 人
同訴訟代理人弁理士 太 田 健
20 主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
25 特許庁が無効2023-800082号事件について令和7年3月13日に
した審決を取り消す。
第2 事案の概要
本件は、原告が、特許権者である被告に対し、特許無効審判請求を不成立と
した審決の取消しを求める事案である。
1 特許庁における手続の経緯等(当事者間に争いがないか、又は当裁判所に顕
5 著な事実)
⑴ 被告は、発明の名称を「商取引システム、管理サーバおよびプログラム」
とする発明について、平成28年5月23日、特許出願(特願2016-1
02587号)をし、同年11月25日、特許権の設定登録(特許番号第6
047679号。請求項の数8。以下、この特許を「本件特許」という。)を
10 受けた。
⑵ 原告は、本件特許の請求項8(以下、単に「請求項8」という。)に係る発
明(以下「本件特許発明」という。)について、令和5年12月20日、特許
無効審判を請求(無効2023-800082号事件)した。
⑶ 特許庁は、令和7年3月13日、「本件審判の請求は、成り立たない。」と
15 の審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は同月18日に原告に送
達された。
⑷ 原告は、令和7年4月1日、本件審決の取消しを求めて本件訴訟を提起し
た。
2 特許請求の範囲及び明細書の記載
20 ⑴ 請求項8の記載は、以下のとおりである。
「 コンピュータに、
商品についての商品情報を含む登録要求を受信するステップと、
前記登録要求を通関認証装置に送信するステップと、
前記通関認証装置から、前記商品についての、関税に関する情報を含む
25 事前通関情報を取得するステップと、
ユーザ端末と接続して電子商取引を実行する商取引装置に対し、当該商
取引装置が前記商品情報とともに前記事前通関情報を前記ユーザ端末か
らアクセスされるサイトに掲載することができるように、前記事前通関情
報を通知するステップと
を実行させるためのプログラム。」
5 ⑵ 本件の特許出願に係る明細書及び図面(甲1。以下「本件明細書」という。)
の記載によれば、本件特許に係る発明について以下の記載がある(以下、そ
の段落番号等を【】で示す。)。
ア 技術分野
本件特許に係る発明は、経済圏を跨いだ物流を実現させるためのシステ
10 ムに関する。(【0001】)
イ 背景技術
近年、EC(E-commerce;電子商取引)サイトを利用して、
国を跨いだ商取引事業(いわゆる越境EC)が注目されている。特許文献
1(特開2013-235407号公報)では、個人輸入の偽装を防止し
15 て税関業務が円滑に進むようにするための物流情報システムが開示され
ている。同システムにおいては、まずユーザからの要求に応じてECサイ
トにて商品の購入が確定すると、仲介業者端末にて検品や税率の計算が行
われる。検品結果や税率の情報はサーバに送信され、サーバにおいてユー
ザの管理や関税が加味された費用を支払うための請求情報の生成が行わ
20 れる。請求情報はユーザ端末及び仲介業者端末に送信される。仲介業者は、
ユーザの支払を確認すると、商品の発送及び関税の支払を代行する。(【0
002】、【0003】)
ウ 発明が解決しようとする課題
特許文献1のシステムにおいては、商品購入後に通関手続が実行される
25 ため、例えば商品が税関に到着した際に通関条件を満たしていないことが
事後的に判明する場合があり、税関側の業務が増え、物流が滞留する一因
となる。本件特許に係る発明は、通関処理を円滑化することを目的とする。
(【0004】、【0005】)
エ 発明の効果
本件特許に係る発明によれば、通関処理の円滑化が実現する。(【000
5 7】)
オ 発明を実施するための形態
管理サーバは、ECサーバで扱う商品について事前通関処理(税関にお
ける通関に関する登録処理)を支援する情報処理装置である。管理サーバ
の通知部は、通関認証サーバから取得した事前通関情報をECサーバに通
10 知する。事前通関情報には、少なくとも、通関認証サーバにて事前登録処
理が行われたことを示す情報を含み、通関処理の結果(適合/不適合)、そ
の商品に課せられる関税の率や額、関税を計算するための情報、その他通
関処理に関連する情報が含まれてもよい。(【0015】、【0016】)
通関認証サーバは事前通関情報を生成する。具体的には、税関端末にア
15 クセスして商品情報を送信し、その商品が税関において通過を認められて
いる商品であるか否かを問い合わせ、その結果をデータベースに記憶する。
適合した場合、その商品の関税についての情報を決定する。そして、事前
通関に適合した旨及び決定した関税を事前通関情報に内包させる。(【00
23】、【0025】)
20 上記実施例によれば、購入者や商品の受取人等が税関に出向いて通関手
続をする手間が省かれる。よって、税関にて物流が滞留することがなく、
通関処理が円滑に遂行する。また、商品購入時には、その商品が税関を通
過することが事実上保証されているので、商品が確実に到着するという安
心感がユーザに与えられる。(【0040】)
25 3 本件審決の理由の要旨
本件審決は、原告(請求人)の主張する無効理由1(発明該当性)及び無効
理由2(進歩性の欠如)はいずれも理由がないと判断した。本件審決の理由の
要旨は、以下のとおりである。
⑴ 無効理由1について
ア 請求項に記載された特許を受けようとする発明が、特許法2条1項に規
5 定された「発明」といえるか否かは、前提とする技術的課題、その課題を
解決するための技術的手段の構成及びその構成から導かれる効果等の技
術的意義に照らし、全体として「自然法則を利用した技術的思想の創作」
に該当するか否かによって判断すべきものである。
イ 本件特許発明の技術的意義は、越境ECにおける従来のシステムにおい
10 ては、商品購入後に通関手続が実行されるため、例えば商品が税関に到着
した際に通関条件を満たしていないことが事後的に判明する場合があり、
税関側の業務が増え、物流が滞留する一因となるとの課題があったことか
ら、これを解決するために、商品についての商品情報を含む登録要求を受
信する受付手段と、前記登録要求を通関認証装置に送信する要求手段と、
15 前記商品についての、関税に関する情報を含む事前通関情報を前記通関認
証装置から取得する取得手段と、ユーザ端末と接続して電子商取引を実行
する商取引装置に対し、当該商取引装置が前記商品情報と共に前記事前通
関情報を前記ユーザ端末からアクセスされるサイトに掲載することがで
きるように、前記事前通関情報を通知する通知手段とを有する管理サーバ
20 に上記各処理を実行させるものであり、これにより、通関処理の円滑化が
実現するとの効果を奏するものである。
このような従来のシステムにおける技術的な課題を解決するための技
術的構成及びこれにより導かれる効果に照らして全体を考察すると、本件
特許発明の本質が、人為的な取決めや人間の精神活動のみに向けられてい
25 るとはいえず、自然法則を利用した技術的思想の創作ということができる。
ウ また、本件特許発明は、ソフトウェア関連発明に該当するところ、上記
課題を解決するために特許請求の範囲に記載された各ステップをコンピ
ュータに実行させるものであって、ソフトウェアによる情報処理がハード
ウェア資源を用いて具体的に実現されているということができるから、
「発明」に該当する。
5 ⑵ 無効理由2について
ア 特開2001-142986号公報(以下「甲3」という。)に記載され
た発明(以下「甲3発明」という。)と本件特許発明を対比すると、「コン
ピュータに、商品についての商品情報を含む情報を受信するステップと、
前記商品についての、関税に関する情報を含む情報を取得するステップと、
10 ユーザ端末と接続して電子商取引を実行する商取引装置に対し、前記関税
に関する情報を含む情報を通知するステップとを実行させるためのプロ
グラム。」である点で一致し、次の点で相違する。
(ア) 相違点1
「商品についての商品情報を含む「情報」を受信する」について、本
15 件特許発明は「商品についての商品情報を含む「登録要求」」を受信する
ものであるのに対し、甲3発明は「(最新の税率や法律の他、商品につい
ての商品情報が含まれていることが明らかな)情報」を「収集する」も
のであって、収集する情報が「(最新の税率や法律の他、商品についての
商品情報が含まれていることが明らかな)情報」を含む「登録要求」で
20 ある旨特定されていない点。
(イ) 相違点2
本件特許発明は、「前記登録要求を通関認証装置に送信するステップ」
を有しているのに対して、甲3発明はかかるステップを有していない点。
(ウ) 相違点3
25 「商品についての、関税に関する情報を含む「情報」」は、本件特許発
明では、「商品についての、関税に関する情報を含む「事前通関情報」」
であって、
「通関認証装置」から「受信する」のに対し、甲3発明では「付
加価値税や製品を引き取るためにクライアントが支払う関税の額に関す
る情報を含む「算出額」」であって「事前通関情報」ではなく、「管轄区
域データベース・サーバ内において算出及び取得した」ものであって「通
5 関認証装置」
(「事前通関装置」とあるのは誤記と認める。)から取得した
ものではない点。
(エ) 相違点4
「ユーザ端末と接続して電子商取引を実行する商取引装置に対し、
・・・
前記関税に関する情報を含む事前通関情報を通知するステップ」に関し、
10 本件特許発明は「当該商取引装置が前記商品情報とともに前記事前通関
情報を前記ユーザ端末からアクセスされるサイトに掲載することができ
るように」との事項が特定されているのに対し、甲3発明にはかかる事
項が特定されておらず、また、通知する情報に「事前登録処理が行われ
たことを示す情報」を含んでいない点。
15 イ 相違点1については容易に想到し得たと認められるが、以下のとおり、
その余の相違点については容易想到と認められないから、本件特許発明が
進歩性を欠くということはできない。
(ア) 相違点2及び相違点3について
甲3には、
「通信認証装置」に相当する構成が開示されていない。また、
20 甲3発明において、「通関認証装置」に「要求情報」を送信し、「通関認
証装置」から「事前通関情報」を受信する構成にしようとする動機付け
はない。一方、本件特許発明は相違点2及び相違点3の構成とすること
で「通関処理の円滑化が実現する」との効果を奏するものである。
(イ) 相違点4について
25 甲3発明の「付加価値税や製品を引き取るためにクライアントが支払
う関税の額に関する情報を含む算出額」は「事前登録処理が行われたこ
とを示す情報」を含んでおらず、また、甲3発明は「通関認証装置」に
相当する構成を有していないのであるから、甲3発明には事前通関に関
する技術思想を含んでいない。
4 取消事由
5 ⑴ 取消事由1(発明該当性判断の誤り・無効理由1関係)
⑵ 取消事由2(進歩性判断の誤り・無効理由2関係)
第3 当事者の主張
1 取消事由1(発明該当性判断の誤り)
【原告の主張】
10 ⑴ 請求項8には、少なくとも「管理サーバ300の」、「受付手段」、「要求手
段」、「取得手段」、「通知手段」が形成されることの記載がないから、ソフト
ウェアとハードウェア資源とが協働した具体的手段又は具体的手順によって、
使用目的(通関業務を円滑化させる)に応じた特有の(コンピュータでしか
実現できない)情報の演算又は加工が記載されているとはいえない。したが
15 って、そのような記載が特許請求の範囲にあるものとして本件特許発明の発
明該当性を認めた本件審決は誤りである。
⑵ 「ユーザが注文した商品が税関を通過することが事実上保証されているの
で、商品が確実に到着するという安心感がユーザに与えられる。」という本件
特許発明の効果(本件明細書【0040】)は、(商品情報がECサイトに掲
20 載される前に)通関認証サーバが通関の適否や関税の計算を行って事前通関
情報を生成し、ECサーバがユーザ端末に送信して、商品情報によって特定
される商品を税関経由で流通させる旨の指示をユーザ端末から受け付けるこ
と、及び、
(商品情報がECサイトに掲載されて、ユーザから注文が入った後
に)受注情報が管理サーバへ送信されて税関端末に登録されることによるも
25 のと理解される。
しかし、後者は、そもそも、商品情報がECサイトに掲載された後の話で
あって、請求項8に記載され、あるいは記載されているに等しい事項ではな
く、これを根拠に発明該当性を肯定することなどできない。
また、前者に関して、事前通関情報は、出品商品の情報とそれに対応する
データベースに記憶された情報との照合結果とを単純につなぎ合わせたもの
5 にすぎず、コンピュータプログラムのアルゴリズムにより新たに創出された
ものでない。
したがって、本件特許発明のプログラムは、コンピュータに特有の情報処
理・演算機能により新たな情報を創出するものではなく、純粋に人為的取決
めである通関法令に基づく商品の通関許否の判断のために所与の情報を編集
10 し提供する、ありきたりの事務作業にコンピュータを使用するというだけの
プログラムであって、もっぱら人為的取決めそれ自体のために向けられてい
る発明であり、
「自然法則を利用した技術的思想の創作」ということはできず、
「発明」に該当しない。
【被告の主張】
15 本件特許発明は、本件審決で認定された「事前通関情報」に係る情報処理に
よって、事前通関処理が行われているか否かを判定し、事前通関処理が行われ
ていることを一つの条件として、現実の通関処理を完了させ、従来技術では解
決できなかった課題を解決するものである。
したがって、本件特許発明を全体としてみたとき、その本質は、上記一連の
20 情報処理にあるのであって、人為的取決めや人間の精神活動そのものに向けら
れたものでないから、自然法則を利用した技術的思想の創作に当たる。
また、本件審決で認定されたとおり、本件特許発明はソフトウェアによる情
報処理がハードウェアを用いて具体的に実現されているものであり、これまで
になかった仕組みである「事前通関」を「事前通関情報」に係る情報処理によ
25 って実現するものであるから、従来からある仕組みをコンピュータに置き換え
ただけのものでもない。
さらに、事前通関情報をECサイトに掲載できるように通知していることか
らすれば、本件特許発明は個別具体的な演算・情報の加工を行うものである。
したがって、本件特許発明は特許法上の発明に該当する。
2 取消事由2(進歩性判断の誤り)
5 【原告の主張】
以下のとおり、本件特許発明は、その課題、構成、効果において甲3発明と
相違するところがなく、仮に相違点があるとしても、それは通信相手となる装
置の明記の有無や通信相手との間で受け渡される情報の呼び方という形式的な
相違であり、当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎない。したがって、本件
10 特許発明の進歩性に関する本件審決の判断は誤りであり、取消しを免れない。
⑴ 甲3発明の「管轄区域データベース・サーバ」と本件特許発明の「コンピ
ュータ」に相当する管理サーバとは、それぞれ所定の処理を実行する複数の
機能部分を実装しており、かつ一つ以上の機能部分を分離して実装したり統
合して実装したりすることに何の支障もないのであるから、構成上の相違点
15 は何ら存在しない。したがって、管理サーバと「通関認証装置」とが別個の
装置であることは相違点ではない。
⑵ 甲3発明の「管轄区域データベース・サーバ」に格納され、eコマース・
サーバに複製可能な情報と、本件特許発明の「事前通関情報」とは、その呼
び方が相違するだけであって、同義の情報であるから、
「管轄区域データベー
20 ス・サーバ」が有するリポジトリが、本件特許発明の「通関認証装置」に相
当する。
⑶ 甲3発明においてeコマース・サーバに通知される「販売可能か否かに関
する情報」は、クライアントに税関を通過するという「安心感」を与えるか
ら、甲3発明は「事前通関に関する技術的思想」を含んでいる。
25 ⑷ 甲3発明の「管轄区域データベース・サーバ」が米国のeコマース・サー
バから受け付ける「情報の要求」には製品の情報のデータベースへの登録の
要求が伴っているのであるから、上記「情報の要求」と本件特許発明におけ
る「商品についての商品情報を含む登録要求」とは、その呼び方が相違する
だけであって同義である。
⑸ 甲3発明において米国のeコマース・サーバがドイツにおける「付加金額、
5 関税、販売可能か否かに関する情報」をドイツのクライアントが閲覧可能な
態様で表示できるように米国のeコマース・サーバに複製させる(通知する)
ステップと、本件特許発明において商取引装置に対し事前通関情報を通知す
るステップとの間に、実質的な相違点は存在しない。
⑹ 本件特許発明の「商品購入時には、その商品が税関を通過することが事実
10 上保証されているので、商品が確実に到着するという安心感がユーザに与え
られる。さらに、ユーザは商品購入時に関税率を事前に把握することができ
るので、関税を考慮して購入対象の商品を検討することができる。」という課
題及び効果は、甲3発明の課題及び効果と何ら変わらない。
【被告の主張】
15 本件特許発明と甲3発明とを比較すると、本件審決が認定したとおりの相違
点が存する。
特に、相違点3に関して、甲3発明の「販売可能か否かの情報」は、出品者
に対する参考情報にすぎず、何らかの認証を付与する情報ではないのに対し、
本件特許発明の「事前通関情報」は、実際に商品が消費者により購入されて税
20 関を通過する際には、この事前通関情報が存在するかどうか、すなわち通関認
証サーバに事前登録処理がされているかどうかが確認され、存在する場合には、
本来、商品購入後通関前に実施されるはずの検品等の手続が省略され、存在し
ない場合にはこれらの手続が省略されず商品購入後に通常の通関手続が行われ
るものであるから、両者は明確に異なる。
25 このような相違は、両発明の技術思想の相違に基づくものであり、設計事項
などで埋められるものではない。
第4 当裁判所の判断
1 取消事由1(発明該当性判断の誤り)について
⑴ 本件特許発明は、その特許請求の範囲の記載(前記第2の2⑴)によれば、
コンピュータに、商品情報を含む登録要求を受信するステップ、この登録要
5 求を通関認証装置に送信するステップ、この通関認証装置から事前通関情報
を取得するステップ及びこの事前通関情報を商取引装置に通知するステップ
を実行させるプログラムである。ここにいう通関認証装置(これと「通関認
証サーバ」は同義と解される。)及び事前通関情報の意義については本件明細
書に具体的な説明がされている(同⑵)。そして、本件特許発明は、上記の構
10 成を採用することにより、商品購入後の通関手続において通関条件を満たし
ていないなどの事実が判明して通関業務が増え、物流が停滞するという従来
技術の課題を解決し、通関処理の円滑化を実現しようとするものである。
そうすると、本件特許発明は、ソフトウェアによる情報処理がハードウェ
ア資源を用いて具体的に実現されているとみることができるから、自然法則
15 を利用した技術的思想の創作として「発明」
(特許法2条1項)に該当すると
認められる。
⑵ これに対し、原告は前記のとおり主張するが、以上に説示したところに照
らし、これを採用することはできない。
⑶ したがって、本件特許発明の発明該当性に関する本件審決の判断に誤りが
20 あるとはいえず、取消事由1は理由がない。
2 取消事由2(進歩性判断の誤り)について
⑴ 証拠(甲1、3)及び弁論の全趣旨によれば、甲3発明は、本件審決が認
定したとおり、収集する情報が「登録要求」である旨特定されていない点(相
違点1)、「前記登録要求を通関認証装置に送信するステップ」を有していな
25 い点(同2)、取得される情報が「事前通関情報」ではなく、
「通関認証装置」
から取得したものでもない点(同3)及び商取引装置に通知する情報に「事
前登録処理が行われたことを示す情報」を含んでいないなどの点(同4)に
おいて本件特許発明と相違すると認められる。そして、このうち相違点1に
ついては容易想到であるとしても、その余の相違点に係る本件特許発明の構
成が容易に想到し得るものであることにつき原告は何ら具体的な主張立証を
5 していない。したがって、進歩性の判断に誤りがあることをいう取消事由2
は失当というほかない。
⑵ これに対し、原告は、前記のとおり甲3発明と本件特許発明の間に実質的
な相違点は存在しないと主張する。
しかし、本件特許発明の特許請求の範囲及び本件明細書の記載(前記第2
10 の2)によれば、本件特許発明の「通関認証装置」は、特定の商品に係る登
録要求を受信し、当該商品が事前通関に適合するか否かを認証し、認証する
場合には関税に関する情報を含む「事前通関情報」を生成する装置と解され
る。一方、甲3発明には管轄区域に関するデータベース・サーバが存在する
ものの、当該国ないし区域の通関等に関する情報を収集・格納し、クライア
15 ントに送信するデータベースにすぎず(甲3)、通関の認証に関する機能を有
すると認めるに足りないから、甲3発明が本件特許発明の「通関認証装置」
及び「事前通関情報」に相当する構成を有しているとは認められない。
したがって、少なくとも相違点3についての原告の上記主張は採用できず、
取消事由2は理由がない。
20 3 結論
よって、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとして、主文のと
おり判決する。
知的財産高等裁判所第4部

裁判長裁判官
長 谷 川 浩 二
裁判官
伊 藤 清 隆
10 裁判官
諸 岡 慎 介

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