令和7(ワ)70116特許権侵害差止等請求事件
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| 裁判所 |
東京地方裁判所
|
| 裁判年月日 |
令和8年7月14日 |
| 事件種別 |
民事 |
| 対象物 |
トルクセンサ |
| 法令 |
特許権
民法709条1回
|
| キーワード |
実施26回 無効21回 進歩性16回 特許権12回 訂正審判7回 新規性6回 審決6回 差止2回 侵害2回 損害賠償1回
|
| 主文 |
1 被告は、別紙被告物件目録記載の製品を生産し、譲渡し、輸出し、譲
2 被告は、前項記載の製品を廃棄せよ。
3 訴訟費用は被告の負担とする。 |
| 事件の概要 |
本件は、
発明の名称を
「トルクセンサ」とする特許
(特許第5710036号。
以下「本件特許」という。)に係る特許権(以下「本件特許権」という。)を有
する原告が、別紙被告物件目録記載の製品(以下「被告製品」という。)は本件
特許に係る発明の技術的範囲に属するから、被告製品の生産等は本件特許権を侵
害する行為であると主張して、被告に対し、本件特許権に基づき、被告製品の生
産等の差止め(特許法(以下「法」という。)100条1項)及び被告製品の廃
棄(同条2項)を求める事案である。 |
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判決文
令和8年7月14日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
令和7年(ワ)第70116号 特許権侵害差止等請求事件
口頭弁論終結日 令和8年4月23日
判 決
5 当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり
主 文
1 被告は、別紙被告物件目録記載の製品を生産し、譲渡し、輸出し、譲
渡のための展示その他の譲渡の申出をしてはならない。
2 被告は、前項記載の製品を廃棄せよ。
10 3 訴訟費用は被告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
主文と同旨
第2 事案の概要
15 本件は、発明の名称を「トルクセンサ」とする特許(特許第5710036号。
以下「本件特許」という。)に係る特許権(以下「本件特許権」という。)を有
する原告が、別紙被告物件目録記載の製品(以下「被告製品」という。)は本件
特許に係る発明の技術的範囲に属するから、被告製品の生産等は本件特許権を侵
害する行為であると主張して、被告に対し、本件特許権に基づき、被告製品の生
20 産等の差止め(特許法(以下「法」という。)100条1項)及び被告製品の廃
棄(同条2項)を求める事案である。
なお、本件においては、当初、本件特許権の独占的通常実施権者であるユニパ
ルス株式会社(以下「ユニパルス」という。)も被告に対して民法709条に基
づく損害賠償請求をしていたが、ユニパルスは、令和8年4月23日の第7回弁
25 論準備手続期日において、その請求を放棄した。
1 前提事実(証拠等を掲記しない事実は、当事者間に争いがないか、弁論の全
趣旨により容易に認められる。)
(1) 当事者
ア ユニパルスは、ストレンゲージ・荷重・変位・トルク・振動等のセンサ
5 並びに光学機器・メカトロニクス機器・エレクトロニクス機器の製造及び
販売等を行う株式会社である。
イ 原告は、ユニパルスの関連会社であり、ユニパルスの知的財産権を同社
のために所有・管理するものである。
ウ 被告は、機械加工部品、電子機器、電子部品、自動車部品及び半導体の
10 製造及び販売等を目的とする株式会社である。
(2) 本件特許権
原告は、次の特許権(本件特許権)を有する(以下、本件特許出願の願書
に添付された明細書及び図面(訂正後のもの)を「本件明細書」という。な
お、以下、明細書のうち発明の詳細な説明中の段落番号を【0001】など
15 と記載するほか、「/」は改行部分を示す。以下同じ。)。
特許番号 特許第5710036号
発明の名称 トルクセンサ
出願日 平成26年2月26日
原出願日 平成24年3月22日
20 登録日 平成27年3月13日
訂正審決日 令和7年1月29日
(3) 本件特許の登録及び訂正
ア ユニパルスは、平成26年2月26日、特許庁に対し、発明の名称を「ト
ルクセンサ」とする発明に係る出願をした。(乙1)
25 イ 特許庁は、同年10月29日付けで、ユニパルスに対し、明確性要件違
反(法36条6項2号)及び進歩性欠如(法29条2項)を理由とする拒
絶理由通知をした。
ユニパルスは、同年12月26日、特許庁に対し、特許請求の範囲につ
いて変更する内容の手続補正書(乙2)及び意見書(乙3)を提出した。
特許庁は、上記出願について特許査定を行い、平成27年3月13日、
5 本件特許権の設定登録をした。(甲2、乙2、3)
ウ 原告は、平成27年9月28日頃、ユニパルスから本件特許権を承継し
た。(甲1)
エ 原告は、令和6年8月8日、本件特許権について1回目の訂正審判請求
をし、同年11月15日にこれを取り下げ、同日、2回目の訂正審判請求
10 をした。この2回目の訂正審判請求は、前記補正後の発明に係る特許請求
の範囲請求項1に関し、「検出信号」を、「AD変換回路(V/F変換回路
を除く)によりデジタル信号に変換した検出信号」に限定し、
「AD変換回
路」から「V/F変換回路」を除いた構成とするとともに、請求項2に関
し、引用関係を解消した構成とするものであった。
15 特許庁は、令和7年1月29日、2回目の訂正審判請求を認める旨の審
決(以下「本件審決」という。)をし、同審判は確定した(以下、当該訂正
を「本件訂正」という。)。(甲3)
(4) 特許請求の範囲
本件特許の本件訂正後の特許請求の範囲の記載は以下のとおりである(以
20 下、請求項1に記載された発明を「本件発明1」、請求項2に記載された発明
を「本件発明2」という。また、これらを併せて「本件各発明」ともいう。)。
なお、下線部は本件訂正に係る部分である。
【請求項1】
「筐体に回転可能に支持され、起歪部にストレンゲージを有するトルク検出
25 軸と、/接続されている前記ストレンゲージからの電気信号をAD変換回
路(V/F変換回路を除く)によりデジタル信号に変換した検出信号とし
て非接触伝送手段を介して送信する検出回路が設けられ、中空円盤形状を
有して中空部に挿入される前記トルク検出軸に固定されている軸側基板と、
/前記検出回路からの検出信号を受信して外部に出力する出力回路及び外
部から供給された電力を前記出力回路に供給する電源回路が設けられ、前
5 記筐体に固定されている筐体側基板と、/前記電源回路から給電されて前
記検出回路に非接触で給電する回転トランスと、/を備えてなるトルクセ
ンサ。」
【請求項2】
「筐体に回転可能に支持され、起歪部にストレンゲージを有するトルク検出
10 軸と、/接続されている前記ストレンゲージからの電気信号を検出信号と
して非接触伝送手段を介して送信する検出回路が設けられ、中空円盤形状
を有して中空部に挿入される前記トルク検出軸に固定されている軸側基板
と、/前記検出回路からの検出信号を受信して外部に出力する出力回路及
び外部から供給された電力を前記出力回路に供給する電源回路が設けられ、
15 前記筐体に固定されている筐体側基板と、/前記電源回路から給電されて
前記検出回路に非接触で給電する回転トランスと、/を備え、/前記起歪
部は、それぞれ前記ストレンゲージを有し、前記トルク検出軸の回転中心
軸線を通る平面上に設けられ、軸対称且つ互いに離間して配置されている
複数の平板を備えるトルクセンサ。」
20 (5) 構成要件の分説
ア 本件発明1
1A 筐体に回転可能に支持され、起歪部にストレンゲージを有するトル
ク検出軸と、
1B 接続されている前記ストレンゲージからの電気信号をAD変換回路
25 (V/F変換回路を除く)によりデジタル信号に変換した検出信号
として非接触伝送手段を介して送信する検出回路が設けられ、中空
円盤形状を有して中空部に挿入される前記トルク検出軸に固定さ
れている軸側基板と、
1C 前記検出回路からの検出信号を受信して外部に出力する出力回路及
び外部から供給された電力を前記出力回路に供給する電源回路が
5 設けられ、前記筐体に固定されている筐体側基板と、
1D 前記電源回路から給電されて前記検出回路に非接触で給電する回転
トランスと、
1E を備えてなるトルクセンサ。
イ 本件発明2
10 2A 筐体に回転可能に支持され、起歪部にストレンゲージを有するトル
ク検出軸と、
2B 接続されている前記ストレンゲージからの電気信号を検出信号と
して非接触伝送手段を介して送信する検出回路が設けられ、中空円
盤形状を有して中空部に挿入される前記トルク検出軸に固定されて
15 いる軸側基板と、
2C 前記検出回路からの検出信号を受信して外部に出力する出力回路
及び外部から供給された電力を前記出力回路に供給する電源回路が
設けられ、前記筐体に固定されている筐体側基板と、
2D 前記電源回路から給電されて前記検出回路に非接触で給電する回
20 転トランスと、を備え、
2E 前記起歪部は、それぞれ前記ストレンゲージを有し、前記トルク検
出軸の回転中心軸線を通る平面上に設けられ、軸対称且つ互いに離
間して配置されている複数の平板を
2F 備えるトルクセンサ。
25 (6) 被告の行為
被告は、令和6年春頃から、被告製品を販売するための宣伝を開始し、製
造し、販売している。また、被告は、被告製品について英文のカタログを配
布し、被告製品を輸出している。(甲4)
被告製品は、本件発明1の構成要件1A、1C及び1E並びに本件発明2
の構成要件2A、2C、2E及び2Fを充足する。なお、被告製品の構成に
5 ついては当事者間に争いがあり、原告が主張する被告製品の構成は別紙「被
告製品の構成(原告の主張)」のとおりであり、被告が主張する被告製品の構
成は別紙「被告製品の構成(被告の主張)」のとおりである。
2 争点
(1) 被告製品の本件各発明の技術的範囲への属否
10 ア 「中空円盤形状」(構成要件1B、2B)の充足性
イ 「電源回路」(構成要件1D、2D)の充足性
(2) 本件発明1の無効理由
ア 拡大先願(乙4発明)
イ 新規性欠如(乙5発明)
15 ウ 進歩性欠如(乙5発明)
(3) 本件発明2の無効理由
進歩性欠如(乙5発明)
第3 争点に関する当事者の主張
1 争点(1)ア(「中空円盤形状」(構成要件1B、2B)の充足性)について
20 (原告の主張)
被告製品のロータ基板(構成1b)は、本件各発明における「中空円盤形状」
(構成要件1B、2B)を有する「軸側基板」
(同)に相当するから、構成要件
1B及び2Bを充足する。この点に関する被告の主張は、以下のとおり、採用
することができない。
25 (1) 立体形状との主張について
被告は、被告製品のロータ基板は2枚の壁材(センサ側壁材とコイル側壁
材)と8本の柱材とが一体的に構成された立体形状であって、1枚の中空円
形の基板に検出回路が設けられた構成ではないから、
「中空円盤形状」に該当
しない旨主張する。
しかし、構成要件1B及び2Bにおける「軸側基板」は、1枚で構成され
5 ていなければならないという限定はない。この点につき被告は明細書の図1
に1枚の中空円形の基板が開示されていることを指摘するが、特許請求の記
載が実施例に限定されるものではない。仮に被告製品のロータ基板を2枚の
壁材と8本の柱材とが一体化された立体形状であると捉えたとしても、形状
は円盤であり、また構成要件1B及び2Bの「中空円盤形状」は厚みについ
10 て限定するものでもない。
そもそも「円盤形状」であることの技術的意義は、意見書(前提事実(3)イ)
にも記載したとおり、
「トルク検出軸の回転バランスの調整が容易になり、ト
ルク検出軸の回転を安定化させてトルク測定精度を向上させることができる」
という効果が得られるところにあって、円盤が複数であっても、また立体形
15 状を有すると捉えても、上記作用効果を生ずるものである。
したがって、被告製品のロータ基板は「中空円盤形状」に該当する。
(2) 円形ではないとの主張について
被告は、被告製品のロータ基板のセンサ側壁材及びコイル側壁材の平面形
状が円の一部を直線で欠いた形状であり、円形ではないから、
「 中空円盤形状」
20 に該当しない旨主張する。
しかし、構成要件1B及び2Bは「中空円盤形状」と規定しているにすぎ
ず、真円であることまで要求していない。そもそも軸側基板を完全な真円と
して製作することは現実的に不可能である上、中空円盤形状とする目的は、
トルク検出軸の回転を安定化させてトルク測定精度を向上させるところにあ
25 るから、軸側基板が真円でなくとも中空円盤形状といえる範囲であれば、回
転バランスの調整を不可能にするものでない限り、中空円盤形状との構成か
ら排除されるべきものではない。
そして、被告製品のロータ基板が真円ではなく、直線部が存在するとして
も、その直線部は円周をわずかに削る程度であり、一見して円であることか
らすると、被告製品のロータ基板は「中空円盤形状」に該当する。
5 (3) 重心が偏心し、空気抵抗の影響を受けやすいとの主張について
被告は、被告製品のロータ基板は柱材の配置が不均一であるから、重心が
偏心していて振動が発生しやすいとか、立体形状のため空気抵抗の影響を受
けやすく、高速では回転させることができないのであって、本件各発明の効
果を得られていない旨主張する。
10 しかし、被告製品のロータ基板は、1分間に2万5000回転の速度を実
現できる程度に重心のバランスが取れているのであって、ロータ基板の重心
が偏心しているというのは誤りであり、また十分に高速な回転が実現されて
いる。
したがって、被告の上記主張は失当である。
15 (被告の主張)
以下のとおり、被告製品のロータ基板は「中空円盤形状」に該当しないから、
本件各発明の構成要件1B及び2Bを充足しない。
(1) 立体形状であること
本件各発明の「中空円盤形状」
(構成要件1B及び2B)については、本件
20 明細書の図1のとおり、1枚の中空円形の基板3上に検出回路31が実装さ
れた構成のみが開示されているのであって、他に「中空円盤形状」に関する
記載はないから、本件各発明における「中空円盤形状」とは1枚の中空円形
の基板に検出回路が設けられた構成を指す。
これに対し、被告製品のロータ基板は、2枚の壁材(センサ側壁材とコイ
25 ル側壁材)と8本の柱材とが一体的に構成された立体形状であって、1枚の
中空円形の基板に検出回路が設けられた構成ではない。
この点につき原告は、
「円盤形状」であることの技術的意義として「トルク
検出軸の回転を安定化させてトルク測定精度を向上させることができる」と
いう作用効果を生じさせるのであり、円盤が複数でも立体形状でも上記作用
効果を生ずる旨主張するが、本件明細書にはそのような言及はない。
5 したがって、被告製品のロータ基板は「中空円盤形状」に該当しない。
(2) 円形ではないこと
本件各発明の請求項には「中空円盤形状」として基板が円形であることが
明記されており、図1においても真円の基板が描かれているのであるから、
本件各発明では円形であることを必須の構成要素としている。
10 これに対し、被告製品のロータ基板における2枚の壁材(センサ側壁材及
びコイル側壁材)の平面形状は、円の一部を直線で欠いた形状(輪郭が直線
部と曲線部とから構成された形状)であり、円形ではないから、被告製品の
ロータ基板は「中空円盤形状」に該当しない。
(3) 重心が偏心し、空気抵抗の影響を受けやすいこと
15 被告製品のロータ基板は、①柱材の配置が不均一であるため重心が偏心し
ており、振動が発生しやすく、振動によるひずみが電波して誤差が大きくな
る、②2枚の壁材と8本の柱材を一体化した立体形状のため、空気抵抗の影
響を受けやすく、高速では回転することができない。
したがって、仮に原告の主張するとおり「円盤形状」であることによって
20 「トルク検出軸の回転を安定化させてトルク測定精度を向上させることがで
きる」との作用効果が得られるとしても、被告製品は「円盤形状」を設けた
構成で得られる効果を利用していないのであるから、被告製品のロータ基板
は「中空円盤形状」に該当しない。
2 争点(1)イ(「電源回路」(構成要件1D、2D)の充足性)について
25 (原告の主張)
(1) 本件各発明の構成要件1D及び2Dは「前記電源回路から給電されて前記
検出回路に非接触で給電する回転トランスと」というものであり、このうち
「前記電源回路」とは、
「外部から供給された電力を前記出力回路に供給する
電源回路」(構成要件1C、2C)を指す。
そして、被告製品の電源回路は下記回路図のとおりであり、被告製品にお
5 いては、外部から供給を受けた電力が出力回路と回転トランスのそれぞれに
供給されているのであるから、被告製品は本件各発明の構成要件1D及び2
Dを充足する。
【回路図】
(2) これに対し、被告は、被告製品の回転トランスは「外部から供給された電
10 力を前記出力回路に供給する電源回路」から電力を供給されるものではない
から、本件各発明の構成要件1D及び2Dを充足しない旨主張する。
しかし、
「電源回路」とは、外部から電力の供給を受けて内部の必要な部位
に供給するための回路をいうところ、被告製品では、外部から供給を受けた
電力が出力回路と回転トランスのそれぞれに供給されていることは明らかで
ある。すなわち、被告製品の入出力コネクタからの電力の供給を受けて出力
回路及び回転トランスに電力を供給する一体の構成が「電源回路」に該当し、
5 当該「電源回路」から回転トランスが給電を受けるのであるから、被告製品
は構成要件1D及び2Dを充足する。
(被告の主張)
(1) 本件各発明の構成要件1D及び2Dは「前記電源回路から給電されて前記
検出回路に非接触で給電する回転トランスと」というものであり、このうち
10 「前記電源回路」とは「外部から供給された電力を前記出力回路に供給する
電源回路」(構成要件1C、2C)を指すのであるから、「回転トランス」に
給電する「電源回路」とは「出力回路」に電力を供給する「電源回路」であ
る必要がある。このことは、本件明細書においても、
「電源回路33」から「検
出回路31に非接触で給電がなされる」とともに、
「出力回路32にも前記電
15 源回路33から電力が供給される」
(【0015】)と明記されているところで
ある。
これに対し、被告製品では、別紙「被告製品の構成(被告の主張)」のとお
り、「入出力コネクタ8を介して外部から供給された電力を…出力回路に供
給する出力回路電圧調整給電回路」
(構成要件1c’)とは別に、
「入出力コネ
20 クタ8を介して供給された外部からの電力を…供給する回転トランス電圧調
整給電回路」(構成要件1d’)が設けられている。
したがって、被告製品の回転トランスは、
「外部から供給された電力を前記
出力回路に供給する電源回路」から電力を供給されるものではないから、本
件各発明の構成要件1D及び2Dを充足しない。
25 (2) これに対し、原告は、被告製品の回路図は「原告の主張」欄に記載の回路
図のとおりである旨主張する。
しかし、原告主張の回路図は誤りであり、
「電源回路」及び「回転トランス」
として囲まれた範囲も誤りである。被告製品の電源に関する具体的な回路配
置や供給電圧は被告の営業秘密に属するため、本件各発明との対比において
必要な機能についてブロック図で示すと、下記ブロック図のとおりであって、
5 「ノイズフィルタ」においてノイズが減衰された直流電圧は2系統に分離さ
れ、一方は「出力回路電圧調整給電回路」に入力され、複数の直流電圧に変
換して出力回路に電力を供給し、他方は「回転トランス電圧調整給電回路」
に入力され、交流電圧に変換して回転トランスに電力を供給する。
したがって、原告の上記主張は採用することができない。
10 3 争点(2)ア(本件発明1の無効理由-拡大先願(乙4発明))について
(被告の主張)
(1) 特開2013-156230号公報(乙4。以下「乙4文献」という。)
は、本件特許の原出願日(平成24年3月22日)より前の同年1月31日
に出願され、平成25年8月15日に公開された公開特許公報である(以下、
15 乙4文献記載の発明を「乙4発明」という。)。
乙4文献には、ひずみゲージ910のわずかな出力変化を検出して、この
出力信号をロータ側出力信号増幅回路325で増幅し、ロータ側フィルター
回路326でノイズを除去し、この出力信号をV/F変換モジュール327
によって電圧から周波数に変換して信号伝送部300のトランスのロータ側
信号伝送コイル322に伝えることが開示されている。また、本件審決が認
定するとおり、「信号をV/F変換すること」が「アナログ信号をデジタル
信号に変換すること」に含まれることは技術常識であるから、乙4文献には、
5 ストレンゲージに相当するひずみゲージから出力したアナログ信号をV/F
変換モジュールによってデジタル信号に変換することが開示されているとい
える。すなわち、乙4文献は、ひずみゲージから出力したアナログ信号をデ
ジタル信号に変換する機能を備えた回路を配置することを開示した上で、V
/F変換モジュール327という具体的な手段を開示しているものである。
10 一方、本件明細書の記載によれば、「AD変換回路」について、「ストレ
ンゲージ2の抵抗値変化を微小な電圧信号に変換したホイートストンブリッ
ジ回路のアナログ出力を、デジタル信号に変換する」及び「抵抗値の変化で
生じたアナログ信号を・・・デジタル化」することは開示されているが、AD変
換回路の具体的な構成については記載されていない。つまり、本件明細書は、
15 「AD変換回路」として、ストレンゲージからのアナログ出力をデジタル信
号に変換するという機能しか開示しておらず、その具体的な構成を開示して
いないため、「AD変換回路(V/F変換回路を除く)」に含まれる具体的
な構成を本件特許の明細書から把握することができない。そして、V/F変
換モジュールが、本件特許の出願前から、AD変換回路の一つとして、アナ
20 ログ信号をデジタル信号に変換するものであると一般的に認識されていたの
は上記のとおりであるから、アナログ出力をどのような手段及び変換方法に
よって変換するのかについて特定していない本件特許明細書の「AD変換回
路」には、V/F変換モジュールが含まれるといえる。
したがって、先願発明(乙4発明)及び本件発明1は、ひずみゲージ(ス
25 トレンゲージ)から出力したアナログ信号をデジタル信号に変換する機能を
備えた回路を配置するという技術思想において同一である。
(2) これに対し、本件審決は、本件発明1と乙4発明を対比した上で、ストレ
ンゲージからの電気信号を変換した検出信号が、本件発明1においては、ス
トレンゲージからの電気信号をAD変換回路(V/F変換回路を除く)によ
りデジタル信号に変換した検出信号であるのに対して、乙4発明においては、
5 ひずみゲージからの電圧をV/F変換モジュールによって周波数に変換し
た検出信号である点において相違すると認定している。
しかし、上記(1)において主張したとおり、この点は実質的には相違点では
ない。仮に、本件特許出願当時の技術常識を参酌することにより、具体的な
「AD変換回路(V/F変換回路を除く)」を把握することができるという
10 のであれば、同様に、乙4発明においても、ひずみゲージから出力したアナ
ログ信号をデジタル信号に変換する機能を備えた回路を配置するという技術
思想を開示しているのであるから、技術常識を参酌することにより、V/F
変換回路以外のAD変換回路も記載されているに等しい事項ということにな
る。また、作用効果に関してみても、本件発明1及び乙4発明は、いずれも
15 「電気信号の伝達時にノイズが重畳し難くなる」という課題解決を実現する
技術思想において一致している。
(3) 以上によれば、本件発明1は、先願発明(乙4発明)と同一であり、法2
9条の2の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特
許1は無効である(法123条1項2号)。
20 (原告の主張)
(1) 本件発明1は、ストレンゲージからの電気信号(アナログ信号)の情報を
デジタル信号に変換してから出力回路(筐体側基板)に非接触伝送するもの
であるのに対して、乙4発明は、V/F変換モジュール327がひずみゲー
ジからの電圧(アナログ信号)を当該電圧に応じた周波数を有するパルス信
25 号(情報を示す周波数は、連続的に可変なアナログ情報である。)に変換して
からステータ側回路基板(筐体側基板)に非接触伝送するものである。本件
発明1はデジタルICで数値化できるデジタル信号(「0」または「1」のデ
ータ列を表す信号)への変換を伴うものであるのに対して、乙4発明のV/
F変換モジュールという具体的な手段で変換された信号は特異で、デジタル
ICで数値化が想定されないため、両者は異なる技術である。
5 (2) この点につき、本件審決は、
「技術常識1」として、
「『信号をV/F変換す
ること』は、
『アナログ信号をデジタル信号に変換すること』に含まれる」と
している。
しかし、技術常識の根拠とした特開平4-57519号公報において出力
されるのは、入力された電圧に応じた周波数を有するパルス信号である。パ
10 ルス信号自体はデジタル信号の一種であるとしても、この信号の周波数は、
電圧に応じた情報を示すアナログであるから、本件明細書に示されたデジタ
ル信号とは明らかに異なる。
いずれにしても、原告は、1回目の訂正審判請求において、審判合議体か
ら「信号をV/F変換すること」は「アナログ信号をデジタル信号に変換す
15 ること」に含まれ、乙4発明と区別できない旨の指令を受けたため、審判官
の助言に従い、1回目の訂正審判請求を取り下げ、2回目の訂正審判請求を
し、「AD変換回路(V/F変換回路を除く)」との訂正を求めたところ、本
件審判によってこれが認められたものである。
(3) 以上によれば、本件発明1と先願発明(乙4発明)は同一でない。
20 4 争点(2)イ(本件発明1の無効理由-新規性欠如(乙5発明))について
(被告の主張)
ドイツ国特許出願公開DE102010031064号明細書(乙5。以下
「乙5文献」という。)は、本件特許の原出願日(平成24年3月22日)より
前の平成24年1月12日に公開された文献である(以下、乙5文献記載の発
25 明を「乙5発明」という。)。
(1) 乙5文献には、乙5発明として以下の構成が開示されている。
ア 構成a
ハウジング9に回転可能に支持され、終端領域3の溶接ポイント3aに
よって接続されたスリーブ2の測定構造(矩形の貫通孔4及び屈曲バー5’)
にホイートストンブリッジ5を有するシャフトW。
5 イ 構成b
接続されているホイートストンブリッジ5からの電気信号をアナログデ
ジタルコンバータ11bによりデジタルの電気信号Sとして、コイル6a、
6bを介して、非接触で伝達する電子モジュール11が設けられ、中空円
形で中空部にシャフトWが貫通したプリント回路基板14a。
10 ウ 構成c
電子モジュール11で処理されたホイートストンブリッジ5からの信号
を評価して外部に出力する評価ユニット13及び電源8から供給された電
気エネルギーを評価ユニット13の他の回路に供給するエネルギー源13
aが設けられ、ハウジング9に配置されたプリント回路基板14a。
15 エ 構成d
評価ユニット13のエネルギー源13aから給電されて電子モジュール
11に非接触で電気エネルギーを伝達するコイル6a及び6b。
オ 構成e
トルクを検知するための装置。
20 (2) 以上を前提に、乙5発明と本件発明1の構成を対比すると、以下のとおり
いずれも一致するのであって、両者間に相違点は存在しない。
ア 乙5発明の構成aと本件発明1の構成要件1Aの対比
乙5発明の「ハウジング9」、「測定構造」、「ホイートストンブリッ
ジ5」及び「シャフトW」は、それぞれ、本件発明1の「筐体」、「起歪
25 部」、「ストレンゲージ」及び「トルク検出軸」に相当する。
したがって、乙5発明の構成aと本件発明1の構成要件1Aは一致する。
イ 乙5発明の構成bと本件発明1の構成要件1Bの対比
乙5発明の「アナログデジタルコンバータ11b」、「コイル6a、6
b」、「電子モジュール11」及び「プリント回路基板14a」は、それ
ぞれ、本件発明1の「AD変換回路(V/F変換回路を除く)」、「非接
5 触伝送手段」、「検出回路」及び「軸側基板」に相当する。
したがって、乙5発明の構成bと本件発明1の構成要件1Bは一致する。
ウ 乙5発明の構成cと本件発明1の構成要件1Cの対比
乙5発明の「評価ユニット13」、「エネルギー源13a」及び「プリ
ント回路基板14b」は、それぞれ、本件発明1の「出力回路」、「電源
10 回路」及び「筐体側基板」に相当する。
したがって、乙5発明の構成cと本件発明1の構成要件1Cは一致する。
エ 乙5発明の構成dと本件発明1の構成要件1Dの対比
乙5発明の「コイル6a、6b」は、本件発明1の「回転トランス」に
相当する。
15 したがって、乙5発明の構成dと本件発明1の構成要件1Dは一致する。
オ 乙5発明の構成eと本件発明1の構成要件1Eの対比
乙5発明の「トルクを検知するための装置」は、本件発明1の「トルク
センサ」に相当する。
したがって、乙5発明の構成eと本件発明1の構成要件1Eは一致する。
20 (3) これに対し、原告は、乙5発明の「プリント回路基板14a」には「電子
モジュール11」が設けられておらず、本件発明1の「検出回路が設けられ」
た「軸側基板」(構成要件1B)との構成を有するものではない旨主張する。
しかし、乙5文献の記載を踏まえると、電子モジュール11が図示されて
いなくとも、貫通孔15の内部に電子モジュール11などの電子的構成要素
25 を配置する構成を把握できるし、円形の端部領域Vの上に、上面に第1のコ
イル6aが設けられたプリント回路基板14aが配置されており、貫通孔1
5にはプリント回路基板14aの下面が露出していることも理解できる。そ
うすると、乙5文献に接した当業者は、貫通孔15の内部における電子的構
成要素の配置について、プリント回路基板14aの上面に設けられた第1の
コイル6aと接続させるため、貫通孔15に露出したプリント回路基板14
5 aの下面に電子モジュール11を実装する構成であると理解できる。
したがって、乙5文献には「電子モジュール11が設けられたプリント回
路基板14a」が開示されているから、乙5発明は本件発明1の「検出回路
が設けられ」た「軸側基板」(構成要件1B)との構成を有する。
(4) また、原告は、①乙5発明の「評価ユニット13」は「エネルギー源13
10 a」を内蔵しており、「外部から供給された電力」(構成要件1C)が利用
されていない、②乙5発明では、信号の評価は装置内部の評価ユニットで完
結するのであって、「検出回路からの検出信号を受信して外部に出力する」
(構成要件1C)ことは想定されていない旨主張する。
しかし、このうち上記①については、原告の指摘する乙5文献の電源(エ
15 ネルギー源)8は、評価ユニットの一部であるエネルギー源13aに対応す
るものではなく、評価ユニット13のエネルギー源13aとは別の構成であ
って、このことは、電源(エネルギー源)8と評価ユニット13のエネルギ
ー減13aに異なる符号(8と13a)を付し、異なる構成であることを明
記していることからも裏付けられる。原告の主張は、乙5文献の記載内容を
20 無視した独自の解釈にすぎない。
そして、上記①及び上記②については、本件特許の出願当時、トルクセン
サに外部電源から電力を供給し、外部に信号を出力することは一般的に行わ
れていた技術常識であった。乙5文献には外部電源から電力を供給すること
及び外部に信号を出力することを除外する記載は存在しないが、上記技術常
25 識を参酌すれば、乙5発明は、当然に、電源8を外部電源とし、評価ユニッ
ト13の評価信号を外部に出力することも包含している。
(5) したがって、本件発明1は、乙5発明と同一であり、法29条1項3号の
規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許1は無効
である(法123条1項2号)。
(原告の主張)
5 (1) 本件発明1の構成要件1Bは、「接続されている前記ストレンゲージから
の電気信号をAD変換回路(V/F変換回路を除く)によりデジタル信号に
変換した検出信号として非接触伝送手段を介して送信する検出回路が設け
られ、中空円盤形状を有して中空部に挿入される前記トルク検出軸に固定さ
れている軸側基板と、」というものであるが、乙5発明の「プリント回路基板
10 14a」には、
「電子モジュール11」が設けられておらず、そもそも本件特
許発明の構成要件1Bの「検出回路が設けられ」た「軸側基板」との構成を
有するものではない。
乙5文献によれば、乙5発明においてはスリーブ2の端部領域Vの貫通孔
にプリント回路基板14aとは独立して電子モジュール11が配置されてい
15 ること及びプリント回路基板14aとは無関係に電子モジュール11が配置
されていることが理解でき、プリント回路基板14aの下面に電子モジュー
ル11が配置されていることはどこにも記載されていない。
したがって、乙5発明は、本件発明1の構成要件1Bの内容を開示するも
のではない。
20 (2) また、本件発明1の構成要件1Cは、
「前記検出回路からの検出信号を受信
して外部に出力する出力回路及び外部から供給された電力を前記出力回路
に供給する電源回路が設けられ、前記筐体に固定されている筐体側基板と、」
というものである。他方で、乙5発明において、エネルギー源8が外部電源
であることや外部電源から電力を供給されていることは記載も示唆もされ
25 ておらず、電源8からの電気エネルギーが、
「評価ユニット13」が内蔵する
「エネルギー源13a」に供給されることは開示されていないのであるから、
乙5発明においては、
「外部から供給された電力」が利用されているとはいえ
ない。
さらに、乙5発明においては、
「スリーブ2が方向R 1(図3aに従って左
から右)にねじられると、スリーブ2上の屈曲バー5’の形が変化する。次
5 に、ホイートストンブリッジ5は対応する信号Sを生成し最終的にこの信号
Sはコイル6a、6bによって評価ユニット13に伝達され、この評価ユニ
ット13が伝達された信号に基づいて対応をするねじれを評価する」と記載
されているのみで、評価後に信号を外部に出力する構成についての開示はな
い。すなわち、乙5発明においては、信号の評価は装置内部の評価ユニット
10 で完結するものであって、本件発明1のように「前記検出回路からの検出信
号を受信して外部に出力する」ことは想定されていない。
したがって、乙5発明は、本件発明1の構成要件1Cの内容を開示するも
のではない。
(3) 以上のとおり、乙5発明は少なくとも本件発明1の構成要件1B及び1
15 Cの内容を開示するものではないから、本件発明1は、新規性を有する。
5 争点(2)ウ(本件発明1の無効理由-進歩性欠如(乙5発明))について
(被告の主張)
仮に本件発明1の構成要件1B及び1Cについて乙5発明との間に相違点
が認められるとしても、以下のとおり、本件発明1は進歩性を欠くものという
20 べきである。
(1) 本件発明1の構成要件1Bにつき、乙5文献に電子モジュールをどのよう
に配置するのか明記されていない点が乙5発明との相違点であるとしても、
電子モジュールをプリント回路基板に実装することは技術常識であるから、
乙5発明において貫通孔15に露出したプリント回路基板14aの下面に
25 電子モジュール11を実装する構成とすることは、当業者が容易に想到し得
る事項にすぎない。
(2) 本件発明1の構成要件1Cにつき、乙5文献に外部電源から電力を供給し、
外部に信号を出力することが明記されていない点が乙5発明との相違点で
あるとしても、トルクセンサに外部電源から電力を供給し、外部に信号を出
力することは技術常識であるから、乙5発明において電源8を外部電源とし、
5 評価ユニット13の評価信号を外部に出力することは、当業者が容易に想到
し得る事項にすぎない。
(3) したがって、本件発明1は、乙5発明に周知技術を組み合わせて当事者が
容易に発明をすることができ、法29条2項の規定により特許を受けること
ができないものであるから、本件特許1は無効である(法123条1項2号)。
10 (原告の主張)
本件発明1の構成要件1Bにつき、乙5文献には、電子モジュール11がコ
イル6aの印刷されたプリント回路基板14aに設けられることについて記
載がない。むしろ、乙5文献の図面からすると、電子モジュールは、検出回路
の他の構成要素であるホイートストンブリッジ5から接続線と共にスリーブ
15 2の外側面に設けられていることが分かる。電子モジュールを含む検出回路の
構成要素をスリーブから突出した端部領域Vに設けると、トルク測定時に回転
するときに振動及びひずみが生じやすくなるという問題があったため、乙5発
明を含む従前のトルクメータでは採用されていなかった。また、コイルは磁束
を発生させるため、仮にそのすぐ裏側に回路素子を配置すると、コイルの磁束
20 が回路素子の電気的挙動に影響して異常が生じてしまうのであって、そのよう
な設計はしない。
したがって、乙5文献には、
「電子モジュール11が設けられたプリント回路
基板14a」を示唆するような記載はなく、むしろそのように考えることには
技術的な障害が存するから、進歩性欠如の無効理由はない。
25 6 争点(3)(本件発明2の無効理由-進歩性欠如(乙5発明))について
(被告の主張)
(1) 本件発明2と乙5発明の相違点
本件発明2と乙5発明とは、乙5発明においては、終端領域3の溶接ポイ
ント3aによってシャフトWに接続されたスリーブ2の測定構造(矩形の貫
通孔4及び屈曲バー5’)にホイートストンブリッジ5を有するものである
5 のに対し、本件発明2においては「前記起歪部は、それぞれ前記ストレンゲ
ージを有し、前記トルク検出軸の回転中心軸線を通る平面上に設けられ、軸
対称且つ互いに離間して配置されている複数の平板を」(構成要件2E)備
えるという点で相違する。
(2) 容易想到性①-乙6発明
10 実願61-140538号(乙6。以下「乙6文献」という。)は、本件特
許の原出願日である平成24年3月22日よりも前の1988年4月1日に
公開された文献である(以下、乙6文献記載の発明を「乙6発明」という。)。
乙6文献には、弾性体シャフト21とそれに貼り付けた通常のストレイン
ゲージ22、23とから成る従来のトルク検出器の問題点を解決するために、
15 「起歪部がそれぞれストレインゲージを有し、シャフトの回転中心軸線を通
る平面上に設けられ、軸対称且つ互いに離間して配置されている4本の平板
上の半導体ストレインゲージを備えること」
(構成2e)が開示されている。
また、乙5発明の測定構造は、終端領域3の溶接ポイント3aによってシ
ャフトWに接続されたスリーブ2の測定構造(矩形の貫通孔4及び屈曲バー
20 5’)にホイートストンブリッジ5を有するものであり、円筒状のスリーブ
2の側面のホイートストンブリッジ5を設けたものであって、乙6発明の従
来のトルク検出器と同様の問題点を有するものである。
したがって、当業者であれば、乙5発明の測定構造に代えて、乙6発明の
構成2e「起歪部がそれぞれストレインゲージを有し、シャフトの回転中心
25 軸線を通る平面上に設けられ、軸対称且つ互いに離間して配置されている4
本の平板上の半導体ストレインゲージを備えること」を採用することは容易
に想到し得る。
(3) 容易想到性②-周知技術
ア 乙6文献に開示された技術内容
乙6文献は本件特許の原出願日(2 01 2年 3月 22 日 )よりも20年
5 以上前に刊行された文献であるところ、前記のとおり、トルク検出器の測
定構造として、それぞれストレインゲージを有し、シャフトの回転中心軸
線を通る平面状に設けられ、軸対称且つ互いに離間して配置されている4
本の平板状の半導体ストレインゲージを備えた構成を採用することが開示
されている。
10 イ 乙7文献に開示された技術内容
Rainer Schicker, Georg Wegener 著「Measuring Torque Correctly」
(乙7。以下「乙7文献」という。)は、本件特許の原出願日(2 01 2
年 3月2 2 日 )よりも10年前の2002年に出版された書籍である。乙
7文献には、「現在最も一般的に使用されている測定体の形状」の一つと
15 して「ケージ型」が記載されているところ、この「ケージ型」では、互い
に離間して配置された複数枚の平板を有し、平板にはひずみゲージが配置
されている。
このように、乙7文献には、それぞれひずみゲージが配置され、軸を中
心として対称且つ互いに離間して配置された4枚の平板を有するケージ型
20 の測定体が、2002年において最も一般的に使用されている測定体の一
つとして開示されている。
ウ 周知技術
以上のように、それぞれひずみゲージが配置され、軸を中心として対称
且つ互いに離間して配置された4枚の平板を有するケージ型の測定体は、
25 本件特許の原出願日よりも20年以上前の乙6文献に開示されており、ま
た、本件特許の原出願日の10年前に発行された乙7文献においても、最
も一般的に使用されている測定体の一つとして例示されている。
このように、本件特許の原出願日当時のトルク検出器の分野において、
それぞれひずみゲージが配置され、軸を中心として対称且つ互いに離間し
て配置された4枚の平板を有するケージ型の測定体(構成2e)が周知技
5 術であったことは明らかである。
したがって、当業者は、かかる周知技術に基づいて、前記(1)の相違点に
係る構成を容易に想到できたものである。
(4) 小括
したがって、本件発明2は、乙5発明に乙6発明又は周知技術を組み合わ
10 せて当業者が容易に発明をすることができたものであり、法29条2項の規
定により特許を受けることができないから、本件発明2は無効である(法1
23条1項2号)。
(原告の主張)
(1) 相違点
15 本件発明2と乙5発明とは、被告が主張する相違点(構成要件2E)に加
え、乙5発明は本件発明1の構成要件1B及び1Cを開示するものでないの
と同様に(前記4)、乙5発明は本件発明2の構成要件2B(「検出回路が設
けられ」た「軸側基板」)及び2C(「検出回路からの検出信号を受信して外
部に出力する」及び「外部から供給された電力」)の構成を有するものでもな
20 いという相違点が存在する。
(2) 容易想到でないこと
本件発明2の構成要件2Bについては、前記5において主張したところと
同様に、容易想到とはいえない。
この点に加え、本件発明2の構成要件2Eについても、以下のとおり、容
25 易想到ということはできない。
ア トルクセンサの各測定体は、構造や特性に大きな相違があり、トルク検
出対象の性質(トルクの大きさ、範囲、トルク検出器の装着自由度等)に
応じて選択されるものであるから、それぞれの測定体は互いに置換可能で
はない。
イ 乙5発明のトルクセンサの測定体は、中実のシャフトであり、シャフト
5 のねじれを、スリーブ上のホイートストンブリッジで検出し、測定する。
中実シャフトは、中空シャフトやケージ型と比較してひずみにくいので、
最も大きなトルクを検出する用途に用いられる。乙5発明は、自動車のス
テアリングロッド又はステアリングシャフト等の外側を取り囲むように形
成されるから、相応に大きな構造をとる必要がある。乙5発明で想定され
10 ている自動車のステアリングロッド又はステアリングシャフト等を対象と
してトルクを測定しようとする場合、シャフトを数mm以下にする必要が
あるという課題は存在しないし、乙6発明に記載された「10~5gf-
cm」、「6~3gf-cm」より大きいトルク検出しなければならないの
であるから、乙6が従来のトルク検出器の課題として挙げている点は、乙
15 5発明には存在しない。
他方で、乙6文献及び乙7文献に示されたトルクセンサの測定体は、ケ
ージ型であり、微小なトルクを検出する小型のトルクセンサである。ケー
ジ型は、測定対象のトルクが小さい場合に用いられる。
そうすると、乙5発明のトルクセンサと乙6発明や乙7に示されたケー
20 ジ型のトルクセンサは、測定するトルクの大きさや構造、用途が異なるも
のであるから、乙5発明に乙6発明や乙7記載のトルクセンサを適用する
ことができるものではない。
(3) 以上のとおり、本件発明2は進歩性を有するのであって、進歩性欠如によ
り無効ということはできない。
25 第4 当裁判所の判断
1 本件明細書の記載及び被告製品の構成
(1) 本件明細書の記載
本件明細書には、次のような記載がある(下線部は本件訂正に係る部分で
ある。)。(甲2)
ア 技術分野
5 本発明は、トルクセンサに関し、特に、ストレンゲージ式で非接触方式
のトルクセンサに関する。(【0001】)
イ 背景技術
従来から知られているストレンゲージ式のトルクセンサは、接触方式と
非接触方式に大別される。接触方式としては、起歪体である軸に貼付した
10 ストレンゲージの抵抗値の変化を、スリップリングなどの接触体を介して
取出し、このスリップリングに結線したケーブルなどによって処理回路に
送り、出力する構成が一般的である。ところが、このスリップリングなど
の接触体を用いた構成によると、接触体の摩擦抵抗による初動トルクが大
きく、回転始動時の測定が不安定なものとなり、また、摩擦による温度上
15 昇によってトルクの測定に悪影響を及ぼし、さらには、接触体が摩擦によ
り摩耗して、摩耗した導電物が筐体内に散らばるので、一定期間での交換
や内部清掃などの定期的な保守作業が必要であるなど、多くの問題点があ
った。(【0002】)
非接触方式としては、回転軸を起歪体として、この起歪体に貼付したス
20 トレンゲージの抵抗値の変化を検出し、検出信号を、回転トランスからコ
ネクタを経由してコードで連結した表示装置に送る方式(例えば特許文献
1)や、回転軸を起歪体として、この起歪体に貼付したストレンゲージの
抵抗値の変化を検出し、検出信号を回転軸側に設けた充電池を電源とする
回路で増幅、変調等の処理を行なって、無線送信する一方、前記充電池に
25 充電するための発電機構を有する方式(例えば特許文献2)が知られてい
る。(【0003】)
ウ 発明が解決しようとする課題
しかし、上述の第1の非接触方式によると、トルクセンサと表示装置は
コードで連結され、検出信号は回転トランスによって伝達される交流信号
であるので、直流信号の処理と比較してその処理回路の構成が複雑化し、
5 大規模化するため、センサ本体内に処理回路を設けることが困難であり、
また、高精度を確保するための処理回路の規模と小型化との両立が困難で
あるという不都合がある。また、上述の第2の非接触方式によると、回転
軸に充電池を設けているが、回転軸の強度や慣性モーメント等を考慮する
と、その設置位置が制約を受け、設計上の自由度が限定されるほか、充電
10 池の寿命による交換という保守作業が必要であるという不都合がある。
本発明は、これらの不都合を解消したストレンゲージ式で非接触方式の
トルクセンサを提供することを目的とする。(【0005】)
エ 課題を解決するための手段
この目的を達成するため本発明に係るトルクセンサは、筐体に回転可能
15 に支持され、起歪部にストレンゲージを有するトルク検出軸と、接続され
ている前記ストレンゲージからの電気信号をAD変換回路(V/F変換回
路を除く)によりデジタル信号に変換した検出信号として非接触伝送手段
を介して送信する検出回路が設けられ、中空円盤形状を有して中空部に挿
入される前記トルク検出軸に固定される円盤状の軸側基板と、前記検出回
20 路からの検出信号を受信して外部に出力する出力回路及び外部から供給さ
れた電力を前記出力回路に供給する電源回路が設けられ、前記筐体に固定
されている筐体側基板と、前記電源回路から給電されて前記検出回路に非
接触で給電する回転トランスと、からなるものである。(【0006】)
上述の構成でトルク検出軸の起歪部を、平板を軸対象〔判決注:原文マ
25 マ〕に設けた構成として、これら平板にストレンゲージを設けると小型化
に好適である。トルク検出軸は円柱状なので、円周面にストレンゲージを
貼ると、ストレンゲージが湾曲した状態となって安定性が悪くなるが、感
度はトルク検出軸の径に反比例するので、感度を高めようとすると、トル
ク検出軸が小径化されてストレンゲージの湾曲度が大きくなり、安定性は
より悪くなってしまう。また、小径化した場合、ストレンゲージは周方向
5 に貼る枚数が限られるので、軸方向に並べて貼ることになるため、高精度
と小型化を両立することは困難である。これに対して、ストレンゲージを
貼る面が平面であれば、このような不都合は生じない。また、軸対象に設
けた各平板は、曲げ方向には強度を有して変形せず、ねじれ方向には容易
に歪むので、板厚を調整することで高精度と小型化の両立が可能となる。
10 さらに、検出信号をデジタル信号とすると出力回路との送受信の際に、ノ
イズなどの影響を受けにくく好適である。(【0007】)
オ 発明の効果
本発明に係るトルクセンサによれば、軸側にストレンゲージに接続して
設けた検出回路により直接ストレンゲージの微小信号の処理が可能となっ
15 て、高精度な計測と小型化の両立が可能になり、また、検出回路と出力回
路を筐体内に設けて、非接触方式で前記両回路間の検出信号の送受信と前
記検出回路に対する給電を行なうので、計測精度はより一層向上する一方、
従来必要であった定期的な保守作業は不要となる。(【0008】)
カ 発明を実施するための形態
1 トルク検出軸
1a,1b,1c,1d 平板
2 ストレンゲージ
3、7a、7b 基板
5 4a、4b 転がり軸受
5 軸側コイル
6 固定側コイル
8a、8b 側壁
9 筐体
10 10 蓋体
11 固定ナット
12 外部接続用コネクタ
31 検出回路
32 出力回路
15 33 電源回路
以下、本発明の好適な一実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1及び図2に示すように、トルク検出軸1は、起歪体と動力伝達軸を兼
ねるもので、筐体9の側壁8a、8bに転がり軸受4a、4bを介して回
転可能に支持されている。このトルク検出軸1の起歪部は、4枚の平板1
a、1b、1c、1dを軸対象に設けてなり、これら各平板1a、1b、
1c、1dにそれぞれストレンゲージ2を接着している(図3~図5参照)。
この軸対象に設けた平板1a、1b、1c、1dの構成によると、トルク
5 検出軸1の曲げ方向には強度を有して変形せず、ねじれ方向には容易に歪
むものであり、板厚に反比例して精度が向上する。(【0010】)
トルク検出軸1には基板3が固定ナット11で固定され、基板3上には
検出回路31が設けられている。この検出回路31は、ストレンゲージ2
に結線されてこれとともにホイートストンブリッジ回路を形成する抵抗と、
10 前記ストレンゲージ2の抵抗値変化を微小な電圧信号に変換した前記ホイ
ートストンブリッジ回路のアナログ出力を、デジタル信号に変換するAD
変換回路と、このデジタル信号を処理するCPUと、この処理した信号を
デジタル化した検出信号としてIrDAなどの赤外線通信で送信する非接
触伝送手段である送信回路とからなる。(【0011】)
15 一方、筐体9には基板7a、7bが固定され、前記基板7a上には、出
力回路32が設けられている。この出力回路32は、検出回路31からの
検出信号を受信する受信回路と、受信した検出信号を処理するCPUと、
処理した検出信号をアナログ信号に変換するDA変換回路とからなり、ア
ナログ変換してなる電圧信号を外部に出力するものである。(【0012】)
20 また、基板7a上には、出力回路32に電力を供給する電源回路33が
設けられ、この電源回路33には、外部接続用コネクタ12を介して外部
から電力が供給される。また、前記基板7aには、回転トランスの一次側
を構成する、コ字状フェライトに銅線を捲回してなる固定側コイル6が設
けられている。この固定側コイル6には、前記電源回路33から電力が供
25 給される。そして、筐体9における基板7aに対応する開口部分は蓋体1
0で閉塞されている。(【0013】)
一方、トルク検出軸1には、固定側コイル6と所定間隔をおいて対向す
るように、回転トランスの二次側を構成する、円筒状フェライトコアの外
周に銅線を捲回してなる軸側コイル5が設けられている。(【0014】)
本実施形態は以上のように構成したので、外部から電源回路33に供給
5 された交流電圧を固定側コイル6に通電すると、交流磁界が発生し、この
交流磁界が軸側のフェライトコアに透過することで、軸側コイル5に電流
が誘起される。これによって、検出回路31に非接触で給電がなされる。
また、出力回路32にも前記電源回路33から電力が供給される。(【00
15】)
10 (2) 被告製品について
弁論の全趣旨によれば、被告製品のロータ基板について、次の事実が認め
られる。
ア 被告製品は、シャフトに固定されたロータ基板を有している。
以下の写真1及び2のとおり、ロータ基板は、ストレンゲージが実装さ
15 れた側に配置されたセンサ側壁材と、コイルが配置された側に配置された
コイル側壁材と、センサ側壁材とコイル側壁材との間の8本の柱材とが一
体的に構成された立体形状である。
写真1 シャフトに固定されたロータ基板のセンサ側からの斜視写真
写真2 シャフトに固定されたロータ基板の側面写真
イ 以下の写真3及び4のとおり、ロータ基板のセンサ側壁材及びコイル側
壁材は、それぞれ、軸方向から見た外形が、四方に配置された直線部(写
真3及び4の点線部分)と直線部の間に配置された曲線部とから構成され
5 た形状である。
各壁材には、周縁部の対応する位置に8カ所の柱材取付用の貫通孔が設
けられており、貫通孔に柱材が挿入され、半田付けされている(写真3及
び4の丸で囲んだ部分)。
ウ この8本の柱材は、導電性の円柱形状であり、途中に2カ所の太径部を
有し、センサ側壁材及びコイル側壁材の対応する貫通孔に挿入され、半田
で固定されており、センサ側壁材とコイル側壁材とを太径部によって一定
間隔に保持しつつ機械的に連結して剛性を高めるとともに、センサ側壁材
とコイル側壁材とを電気的に接続する配線としても機能している。
5 そして、2枚の壁材の中央に形成された欠円形状の開口にシャフトが挿
入され、センサ側壁材のセンサ側表面に塗布されたエポキシ系接着剤によ
ってシャフトと一体化されている。
エ ロータ基板のセンサ側壁材には、ADコンバータが実装され、ロータ基
板のコイル側壁材には、集積回路及び3つの赤外線LEDが実装されてお
10 り、ストレンゲージからのアナログの検出信号は、センサ側壁材のAD変
換回路でデジタル信号に変換され、配線である柱材を介してコイル側壁材
の集積回路に入力され、赤外線LEDを介して出力される。
2 争点(1)ア(「中空円盤形状」(構成要件1B、2B)の充足性)について
(1) 前記1(2)の認定のとおり、被告製品のロータ基板は、ストレンゲージが実
15 装された側に配置されたセンサ側壁材と、コイルが配置された側に配置され
たコイル側壁材と、センサ側壁材とコイル側壁材との間の8本の柱材とが一
体的に構成されたものである。そして、このうち上記2枚の壁材は、いずれ
も四方に配置された直線部と、直線部の間に配置された曲線部とから成る外
形を有するところ、その直線部により設けられた切り欠きは、壁材全体のう
20 ちのごくわずかな部分にとどまるものであって、上記写真3及び4からも明
らかなとおり、上記各壁材の形状はなお「円盤形状」というべきものである。
したがって、被告製品のロータ基板の各壁材は「中空円盤形状」に該当す
るのであって、上記1(2)記載の被告製品の他の構成にも照らすと、被告製品
は本件各発明の構成要件1B及び2Bを充足する。
25 (2) これに対し、被告は種々の主張をするが、以下のとおりいずれも採用する
ことができない。
ア 立体形状との主張について
被告は、被告製品のロータ基板は2枚の壁材(センサ側壁材とコイル側
壁材)と8本の柱材とが一体的に構成された立体形状であって、1枚の中
空円形の基板に検出回路が設けられた構成ではないから、「中空円盤形状」
5 に該当しない旨主張する。
しかし、構成要件1B及び2Bにおける「中空円盤形状」の「軸側基板」
について、これが1枚の基板により構成されていなければならないという
限定は構成要件1B及び2Bには設けられていない。この点につき被告は、
本件明細書の図1に1枚の中空円形の基板が開示されている旨主張するが、
10 特許請求の記載が実施例に限定されるわけではなく、図1も飽くまでも「好
適な一実施形態」として開示されているのであって(【0010】)、被告の
主張はそれ自体失当である。
そして、仮に被告の指摘するとおりロータ基板を「立体形状」と捉えた
としても、その形状が「円盤形状」であることに変わりはないのであって、
15 構成要件1B及び2Bが「中空円盤形状」の厚みについて何ら制限を設け
ていないことにも照らすと、ロータ基板が「立体形状」であることは「中
空円盤形状」該当性を左右するものではない。
したがって、被告の上記主張は採用することができない。
イ 円形ではないとの主張について
20 被告は、被告製品のロータ基板の2枚の壁材(センサ側壁材及びコイル
側壁材)の平面形状が円の一部を直線で欠いた形状であり、円形ではない
から、「中空円盤形状」に該当しない旨主張する。
しかし、上記直線部により設けられた切り欠きは壁材全体のうちごくわ
ずかな部分にとどまるものであって、上記写真3及び4からも明らかなと
25 おり、上記各壁材の形状はなお「円盤形状」というべきものであることは、
先に説示したとおりである。
したがって、被告の上記主張は採用することができない。
ウ 重心が偏心し、空気抵抗の影響を受けやすいとの主張について
被告は、被告製品のロータ基板は柱材の配置が不均一であるから、重心
が偏心していて振動が発生しやすいとか、立体形状のため空気抵抗の影響
5 を受けやすく、高速では回転させることができないのであって、本件各発
明の効果を得られていない旨主張する。
しかし、構成要件1B及び2Bは「中空円盤形状」という基板の形状そ
れ自体を要件とするものであって、その作用効果の有無を要件とするもの
ではないから、被告製品のロータ基板が本件各発明の効果を奏するか否か
10 は充足性の判断を左右するものではない。
そして、この点を措くとしても、被告製品の仕様上の最高回転数は1分
当たり2万5000回転というものであり(甲6)、被告製品のロータ基板
はそのような高速回転が可能な程度に重心のバランスが取れているもので
あって、現に、実際に被告製品を手動で回転させた場合、停止する角度位
15 置はその都度異なること(甲8)からすると、被告製品のロータ基板の重
心が偏心しているなどと認めることはできない。また、上記最高回転数に
照らせば、被告製品のロータ基板を高速で回転させることができないとの
主張についても、およそ採用の余地がない。この点につき被告は、
「本件特
許発明の「軸側基板」と被告製品の「ロータ基板」の構成が異なることに
20 よる作用効果の違いを主張しているのであり、実際の被告製品のロータ基
板において偏心していることを主張しているものではない」とも主張する
が(被告第4準備書面〔4頁〕)、従前の被告の主張は「被告製品のロータ
基板は、重心が偏心しており、振動が発生しやすく、振動によるひずみが
伝播して誤差が大きくなり、…高速では回転させることができない」
(被告
25 第2準備書面〔10頁〕)というものであって、明らかに整合しない上、上
記認定事実に照らせば、被告製品の「ロータ基板」が本件各発明の作用効
果を奏しないとの被告の主張自体、その裏付けを欠くものというべきであ
る。
したがって、被告の上記主張は採用することができない。
エ 被告は他にも種々の主張をするが、いずれも上記認定判断を左右するも
5 のではなく、採用することができない。
3 争点(1)イ(「電源回路」(構成要件1D、2D)の充足性)について
(1) 本件各発明の構成要件1D及び2Dは「前記電源回路から給電されて前記
検出回路に非接触で給電する回転トランスと」というものであり、このうち
「前記電源回路」とは「外部から供給された電力を前記出力回路に供給する
10 電源回路」
(構成要件1C、2C)を指すのであるから、構成要件1D及び2
Dにおいて「回転トランス」に給電する「電源回路」とは「出力回路」に電
力を供給する「電源回路」である必要がある。
(2) 被告は、①被告製品の回路は「被告の主張」欄掲記のブロック図のとおり
であって、
「ノイズフィルタ」においてノイズが減衰された直流電圧は2系統
15 に分離され、一方は「出力回路電圧調整給電回路」に入力され、複数の直流
電圧に変換して出力回路に電力を供給し、他方は「回転トランス電圧調整給
電回路」に入力され、交流電圧に変換して回転トランスに電力を供給する、
②そのため、被告製品においては、「回転トランス」に給電する「電源回路」
とは別に、
「出力回路」に電力を供給する「電源回路」が設けられているから、
20 本件各発明の構成要件1D及び2Dを充足しない旨主張する。
しかし、本件各発明の各請求項の記載からすれば、「電源回路」とは、「外
部から供給された電力を前記出力回路に供給」する(構成要件1C、2C)
とともに、
「回転トランス」に「給電」する(構成要件1D、2D)機能を有
するものであれば足りるのであって、直流電圧に変換する機能と交流電圧に
25 変換する機能とがあるからといって、回路を更に細分化し、各機能ごとに別
の「電源回路」を構成するものと解する合理的理由は見当たらない。本件明
細書にも、
「基板7a上には、出力回路32に電力を供給する電源回路33が
設けられ、この電源回路33には、外部接続用コネクタ12を介して外部か
ら電力が供給される。また、前記基板7aには、回転トランスの一次側を構
成する……固定側コイル6が設けられている。この固定側コイル6には、前
5 記電源回路33から電力が供給される。」(【0013】)、「外部から電源回路
33に供給された交流電圧を固定側コイル6に通電すると、交流磁界が発生
し、この交流磁界が軸側のフェライトコアに透過することで、軸側コイル5
に電流が誘起される。これによって、検出回路31に非接触で給電がなされ
る。また、出力回路32にも前記電源回路33から電力が供給される。」
(【0
10 015】)旨記載されていることにも照らすと、「電源回路」とは、単に、外
部から電力の供給を受けて内部の必要な部位に供給するための回路をいうも
のと解するのが相当である。
したがって、被告の主張するブロック図を前提としても、被告製品のコネ
クタから電力の供給を受けて出力回路及び回転トランスに電力を供給する一
15 体の構成が「電源回路」に該当するのであり、回転トランスは当該「電源回
路」から給電を受けるのであるから、被告製品は構成要件1D及び2Dを充
足するものというべきである。この点につき被告は種々の主張をするが、い
ずれも上記認定判断を左右するものではなく、採用することができない。
(3) 以上によれば、被告製品は本件各発明の構成要件1D及び2Dを充足する。
20 4 争点(2)ア(本件発明1の無効理由-拡大先願(乙4発明))について
(1) 乙4発明
ア 乙4文献は、被告(当時の商号は「ミネベア株式会社」)が、本件特許の
原出願日である平成24年3月22日より前の同年1月31日に特許庁に
出願し、平成25年8月15日に公開された、発明の名称を「トルク変換
25 器」とする発明に係る公開特許公報である。
イ 乙4文献の記載
乙4文献には、次のような記載があることが認められる。
(ア) 技術分野
本発明は、エンジン、モータ、トランスミッションなど各種駆動部の
トルクを測定するトルク変換器に関する。(【0001】)
5 (イ) 課題を解決するための手段
また、本発明の請求項2に係るトルク変換器は、請求項1に記載のト
ルク変換器において、前記電力供給部と前記信号伝送部は、前記回転軸
と一体的に回転するように取り付けられたロータ側電力供給構成部及び
ロータ側信号伝送構成部と、前記ロータ側電力供給部と前記ロータ側信
10 号伝送構成部のそれぞれと所定の空隙を介して前記回転軸の回転に追従
することなく前記トルク変換器に固定配置されているステータ側電力供
給構成部及びステータ側信号伝送構成部とをそれぞれ有し、前記ロータ
側信号伝送構成部から前記ステータ側信号伝送構成部への電気信号の伝
達が、前記ロータ側信号伝送構成部に設けられているコイルの電圧を周
15 波数に変換して該周波数を介することより行われることを特徴としてい
る。(【0012】)
請求項2に係るトルク変換器が、ロータ側信号伝送構成部からステー
タ側信号伝送構成部での電気信号の伝達を、ロータ側信号伝送構成部に
設けられているコイルの電圧を周波数に変換することより行っているの
20 で、この電気信号の伝達時に例えば電力供給部が発生する磁束等から受
けるノイズが重畳し難くなる。その結果、ロータ側電力供給構成部に磁
気シールドをわざわざ設けることなくロータ側信号伝送構成部からステ
ータ側信号伝送構成部に電気信号を正確に伝達することができる。(【0
013】)
25 (ウ) 発明を実施するための形態
トルク変換器1は、本実施形態ではハウジング100と、ハウジング
内の両端に設けられた2つのベアリング111,112(110)と、
各ベアリング110を介してハウジング内に回転可能に支持され両端部
が外側に突出しトルクの被測定対象物をなすシャフト(回転軸)900
を有している。なお、シャフト900の長手方向ほぼ中央部分に形成さ
5 れた平面部にはホイートストンブリッジ回路911を構成するひずみゲ
ージ910が貼り付けられている。また、シャフト900の軸径は長手
方向先端部両側から一定の距離だけわずかに小さく、その後中心方向に
向かって一定距離だけわずかに大きくなり、ひずみゲージ900の配置
された平面部前までさらにわずかに大きくなっている。これによって、
10 このシャフト900の軸径の変化部分が段部として形成されている。具
体的には、シャフト軸線上にベアリング111及び112を位置決めす
るために、長手方向両外側に段部901,905を形成している。また、
この段部901,905に挟まれる段部で、段部902はロータ側電力
供給構成部220をシャフト軸線上に位置決めする役割を果たし、段部
15 906は回路基板固定カバー226をシャフト軸線上に位置決めする役
目を果たしている。(【0019】)
ハウジング100は、直方体形状を有し、その長手方向にシャフト9
00の外径よりかなり大きく、開口部付近の内径がシャフト900を支
持するベアリング110の外径に合致し、かつ後述するロータ側とステ
20 ータ側の電力供給部200及び信号伝送部300を構成する部品を収容
する空間120が形成されている。また、ハウジング100の図1にお
ける上部には基板収容用の空間130が形成され、その空間130の内
部にステータ側回路基板135が収容されている。また、空間130の
底面と空間120との間には、ステータ側電力供給構成部210及びロ
25 ータ側電力供給構成部220とステータ側回路基板135を図示しない
電線で電気的に繋ぐステータ側コイル接続用貫通孔131、132が形
成されている。(【0020】)
また、シャフト900のひずみゲージ910の貼付位置とロータ側信
号伝送構成部320との間には、ロータ側回路基板225が固定されて
いる。なお、ロータ側回路基板225には、回路基板固定カバー226
5 が取付けられている。回路基板固定カバー226は、シャフト900が
貫通する異形カップ形状を有し、ロータ側回路基板225をシャフト9
00にしっかりと固定する役目を果たしている。これによって、ロータ
側信号伝送構成部320及びロータ側回路基板225は、シャフト90
0と一体に回転するようになっている。(【0027】)
10 続いて、ステータ側回路基板135及びロータ側回路基板225に実
装された電子部品や電子回路の構成及び回路動作について説明する。最
初に図5の回路ブロック図に基づいて本実施形態に係るトルク変換器1
の回路構成について説明する。図5の回路ブロック図においては、ステ
ータ側には、ステータ側電力供給構成部210として、発振回路215
15 と、ドライブ回路216と、電力供給部200のトランスを構成する一
方のステータ側電力供給コイル212が備わっている。また、ステータ
側には、ハウジング外部に導出されたケーブル145から15ボルトと
5ボルトの電圧を発生させる(直流)電源回路250が備わっている。
また、ステータ側には、ステータ側信号伝送構成部310のトランスを
20 構成する一方のステータ側信号伝送コイル312、F/V変換モジュー
ル(周波数/電圧変換モジュール)315、ステータ側出力信号増幅回
路(AMP)316、及びノイズ除去用の出力フィルター回路317が
備わっている。(【0037】)
【図5】
一方、ロータ側には、ロータ側電力供給構成部220として、ロータ
側電力供給構成部220のトランスを構成する他方のロータ側電力供給
コイル222、交流電流を直流電流に整流し、直流電源をロータ側に構
5 成させる整流回路223が備わっている。そして、ひずみゲージ910
により構成されるホイートストンブリッジ回路911、ロータ側出力信
号増幅回路(AMP)325、ノイズ除去用のロータ側フィルター回路
326、V/F変換モジュール(電圧/周波数変換モジュール)327、
ロータ側信号伝送構成部のトランスを構成する他方のロータ側信号伝送
10 コイル322が備わっている。なお、ロータ側の回路は、ホイートスト
ンブリッジ回路911を除いてロータ側回路基板225に全て形成され、
ステータ側の回路は、ステータ側回路基板135に全て形成されている。
(【0038】)
続いて、上述した回路構成に基づくトルク変換器1の動作について説
15 明する。最初に、外部から電源回路250にケーブル145(図1参照)
を介して直流電流が供給され、発振回路215によって所定の周波数に
変換すると共に、ドライブ回路216によって電力供給部200のトラ
ンスのステータ側電力供給コイル212に交流電流を流す。これによっ
て、電力供給部200のトランスを構成するロータ側電力供給コイル2
22に交流電流が励磁される。そして、この励磁された交流電源を整流
回路223によって、本実施形態では5ボルトの直流電源に変換する。
5 (【0039】)
そして、この直流電源を用いて、ひずみゲージ910により構成され
るホイートストンブリッジ回路911に電力を供給する。そして、トル
ク検出中にひずみゲージ910のわずかな出力変化を検出して、この出
力信号をロータ側出力信号増幅回路325で増幅し、ロータ側フィルタ
10 ー回路326でノイズを除去する。(【0040】)
そして、この出力信号をV/F変換モジュール327によって電圧か
ら周波数に変換して信号伝送部300のトランスのロータ側信号伝送コ
イル322に伝える。そして、信号伝送部300のトランスを構成する
ロータ側信号伝送コイル322からステータ側信号伝送コイル312に
15 この周波数を伝え、F/V変換モジュール315でこの周波数を電圧に
変換し、ステータ側出力信号増幅回路316によって増幅して、出力フ
ィルター回路317によりノイズを除去し、ひずみに関する検出出力信
号としてケーブル145を介して外部に伝える。(【0041】)
(2) 検討
20 前記(1)の認定事実及び双方の主張を踏まえると、本件訂正前の発明1と
乙4発明は同一と考えられるところ、ストレンゲージからの電気信号を変換
した検出信号が、本件訂正後の本件発明1においては、ストレンゲージから
の電気信号をAD変換回路(V/F変換回路を除く)によりデジタル信号に
変換した検出信号であるとされているのに対し、乙4発明においては、ひず
25 みゲージ910からの電圧をV/F変換モジュール327によって周波数に
変換した検出信号であるとされている。
そして、乙4文献に記載されている電気信号の伝達に係る技術的事項は、
請求項2や明細書段落【0012】、【0013】によれば、電圧を周波数に
変換することのみであって、その具体的な手段として、V/F変換モジュー
ルを用いるということが実施形態として記載されているにすぎない。すなわ
5 ち、乙4文献には、アナログ信号をデジタル信号に変換する機能については
記載も示唆もないのであって、この点において、乙4発明は本件発明1と相
違するものというべきである。
これに対し、被告は、乙4発明には、アナログ信号をV/F変換モジュー
ルによってデジタル信号に変換することが開示されているところ、本件明細
10 書は、ストレンゲージからのアナログ信号をデジタル信号に変換するという
機能を開示しているだけで、アナログ出力をどのような手段方法で変換する
のか限定がないから、結局、本件発明1は乙4発明と同一である旨主張する。
しかし、乙4発明において開示されているのは、V/F変換モジュールが、
ひずみゲージ(ストレンゲージ)からのV=電圧(アナログ信号)を、F=
15 電圧に応じた周波数を有するパルス信号に変換する、つまり、電圧を周波数
に変換することのみであり、電圧を周波数に変換する具体的な手段として、
V/F変換モジュールを用いることが実施形態(【0038】)として記載さ
れているにすぎないのであって、上記のとおり、アナログ信号をデジタル信
号に変換する機能については記載も示唆もないのであるから、被告の上記主
20 張は採用することができない。
(3) 以上によれば、乙4発明は、
「接続されている前記ストレンゲージからの電
気信号をAD変換回路(V/F変換回路を除く)によりデジタル信号に変換
した検出信号として非接触伝送手段を介して送信する検出回路」を備えてい
るとはいえないから、先願発明(乙4)と本件発明1が同一であるとはいえ
25 ない。
したがって、本件発明1につき、被告が主張する先願発明との同一性に係
る無効事由は存在しない。
5 争点(2)イ(本件発明1の無効理由-新規性欠如(乙5発明))について
(1) 乙5発明
ア 乙5文献
5 乙5文献は、ドイツ国において、本件特許の原出願日である平成24年
3月22日より前の2010年(平成22年)7月7日に出願され、20
12年(平成24年)1月12日に公開された、発明の名称を「トルクを
検知するための装置及び方法」とする発明に係る文献である。
イ 乙5文献の記載
10 乙5文献には、次のような記載があることが認められる。
(ア) 技術分野
本発明は、トルクを検知するための装置ならびに対応する製造方法に
関する。(【0001】)
この種の装置又はこの種の方法は、特に、自動車に採用され、例えば
15 ステアリングロッド又はステアリングシャフトなどの回転可能なシャフ
トでトルクを検出する。(【0002】)
(イ) 発明の利点
本発明のさらなる好ましい発展形態によれば、装置は、半径方向に突
出する端部領域を有しており、少なくとも部分的に測定手段及び/又は
20 測定信号を伝達するための手段がその端部領域に配置されている。ここ
での利点は、これにより、半径方向に突出する端部領域が、例えば測定
信号を伝達するための手段など、さらなる構成要素を配置するために使
用され、それによって、測定信号又はエネルギーの伝達を改善できるこ
とである。従って、装置の柔軟性が全体的に高められる。ここでのさら
25 なる利点は、これにより、測定手段及び/又は測定信号を伝達するため
の手段が測定構造から間隔をあけられているため、特に測定構造を配置
及び/又は形成する際に測定手段又は伝達するための手段による制限を
考慮する必要なく、測定構造を最適に配置できることである。これによ
り、全体として、装置の柔軟性及び信頼性がさらに向上する。(【001
6】)
5 (ウ) 発明の実施形態
図では、同一の要素又は機能が同じ要素には同一の符号が付けられて
いる。(【0032】)
図1は、本発明の第1の実施形態に基づく装置の斜視図を示している。
(【0033】)
10 図1において、符号1は、トルクを検知するための本発明に基づく装
置を示す。ここで、この装置は、スリーブ2の形をした、特に金属製、
好ましくはスチール製のベースを備える。スリーブ2は、機械的にあら
かじめ構造化されている。図1に示されている実施形態では、実質的に、
矩形の貫通孔4及び屈曲バー5’の形の測定構造がスリーブ2の中に配
15 置されており、これらはスリーブ2の周囲面に部分的に延在している。
スリーブ2は、シャフトW上に押し込まれており、スリーブ2の終端領
域3の溶接ポイント3aによってシャフトWに接続されている。もちろ
ん、その他の固定種類も考えられる。(【0034】)
シャフトWは、スリーブ2の領域において、先細り部Wa(図2cに
示されている)を有しており、従って、スリーブ2及びシャフトWは、
実質的にトーションバーを形成する。シャフトWの先細り部Waは、正
確に定義されたねじれを得るために用いられる。これにより、全体のね
5 じれは、シャフトW、その先細り部Wa、シャフトWに固定されている
装置1によって決定される。(【0035】)
スリーブ2の矩形の貫通孔4の間には、ホイートストンブリッジ5が
配置されており、これは、一方で屈曲バー5’に配置され、他方で電子
モジュール11(図3に示されている)を介してコイル6aに接続され
10 ている。このとき、第1のコイル6aは巻線を備え、これらはスリーブ
2又はシャフトWの軸に対して平行に、スリーブ2の終端領域3の下方
及び貫通孔4の上方に配置されている。図1bには、さらに第2のコイ
ル6bが概略的に示されており、これは、第1のコイル6aから間隔を
あけて半径方向外側に配置されている。このとき、両方のコイル6a及
15 び6bは、信号を非接触伝達するために誘導的に相互作用する。第2の
コイル6bは、さらに、配線7を介して電源8に接続され、またトルク
を検知するために電子モジュールで処理されたホイートストンブリッジ
5からの信号を評価する評価ユニット(図1bには図示されていない)
に接続されている。第2のコイル6bは、一方で、コイル6aによって
20 伝達されるホイートストンブリッジ5からの電気信号Sを受信して、評
価ユニットに転送することができ、同時にエネルギー源8からのエネル
ギー信号も配線7を介して、続いてコイル6bを介してコイル6aに、
ひいては屈曲バー5’上のホイートストンブリッジ5に伝達可能であり、
従って、このようにしてホイートストンブリッジ5の独立したエネルギ
25 ー供給を省略することができる。ホイートストンブリッジ5は延び感応
型であり、ここでは化学的気相成長によって表面技術的に取り付けられ、
さらに不動態化され、環境から確実に保護される。(【0036】)
さらに、スリーブ2上には、少なくとも1つの電子モジュール11(図
1には図示されていない)が配置されており、これには、論理回路11
c、アナログデジタルコンバータ11b、高周波変調器11d又は高周
5 波復調器が含まれ、特に高周波変調されたデジタルの電気信号Sを非接
触で伝達できるようになっている。この装置のサイズは、実質的に、ス
リーブ2の寸法、このスリーブ2上に配置されたホイートストンブリッ
ジ5の寸法、電子モジュール11の寸法などによって、及び図1には図
示されていないハウジング9によって特定又は決定され、このハウジン
10 グには、同様に第2のコイル6bと、エネルギー源13a、論理回路1
3c、高周波変調器又は高周波復調器13dを持つ評価ユニット13の
形のさらなる電子機器と、対応するプリント回路基板14bとが含まれ
る。(【0037】)
図2は、図1による本発明の第1の実施形態に基づく装置の側面図及
15 び平面図を示している。(【0038】)
図2aには、図1bによる図の詳細が概略図で示されている。コイル
6a、6bの間には、装置1を動作させるために誘導結合Kがある。こ
のとき、コイル6bは、スリーブ2を完全に取り囲むハウジング9の中
に配置されている。コイル6a、6bを介して、変圧器の原理と同様に、
電気エネルギー及び同じくデジタル変調された電気信号が高周波で第1
5 のコイル6aから第2のコイル6bに伝達される。このとき、信号Sは、
ブリッジ電圧が変化した形の電気信号である、この電気信号は、シャフ
トW及びスリーブ2のねじれの際にホイートストンブリッジ5によって
生成される。(【0039】)
図2bには、図1aによる装置が、この装置を取り囲むハウジング9
10 とともに側面図で示されている。この場合、ハウジング9の寸法は、実
質的に、シャフトWと、シャフトWを取り囲むスリーブ2とによって特
定される。ハウジング9は、コイル6bの領域において、第1のコイル
6aの方向に内側へ突き出している半径方向の突出部9aを有しており、
これによって、スリーブ2の第1のコイル6aとハウジング9の第2の
15 コイル6bは、最適に誘導結合されている。さらに、ハウジング9は、
シャフトWが通過できる開口部Оを有している。ハウジング9及びシャ
フトWは、開口部Oの領域でシール10によって封止されている。この
とき、ハウジング9は、メンテナンスを改善するため、又はシャフトW
への装置1の取付けを簡略化するために一体形成でも、また2つの部品
20 で形成されていてもよい。(【0040】)
図2cは、シャフトWの中央部に先細り部Waを持つシャフトWの概
略的な平面図である。先細り部Waに隣接して、スリーブ2の2つの固
定領域3が配置されている。(【0041】)
図2dは、シャフトWの軸に沿って見た場合の、本発明に基づく装置
25 1の断面を示している。ここでは、半径方向に内側から外側へ、以下の
ような構造になっている。すなわち、内部にはシャフトWがあり、その
同軸上にスリーブ2が配置されている。スリーブ2と同軸上に、第1の
コイル6aが配置されている。従って、シャフトWは自由に回転可能で
あり、第1のコイル6aと、その同軸上に配置されている第2のコイル
6bとの間には、中間スペースZが配置されており、この中間スペース
5 Zにより、第2のコイル6bは第1のコイル6aから間隔をあけられて
いる。第2のコイル6bは、シャフトW及びスリーブ2に対して軸方向
に配置されているハウジング9の内側に配置されている。
(【0042】)
スリーブ2が方向R1(図3aに従って左から右)にねじられると、
スリーブ2上の屈曲バー5’の形が変化する。次に、ホイートストンブ
10 リッジ5は対応する信号Sを生成し、最終的にこの信号Sはコイル6a、
6bによって評価ユニット13に伝達され、この評価ユニット13が伝
達された信号Sに基づいて対応するねじれを評価する。しかし、図3a
において、屈曲バー5’は、貫通孔4の対向する内側面が相互に接触す
るまでしかずれないか、曲がらない。このようにして、ストッパA2が
15 形成される。すなわち、横になっているS字の中央部の、対向する内側
の垂直に延びる面が互いに接触する。これにより、装置1の過負荷が回
避される。(【0045】)
図5は、本発明の第1の実施形態に基づく装置のブロック図を示して
いる。(【0054】)
ここでは、測定構造4、5’が、ホイートストンブリッジ5によって
ねじれを測定する。ホイートストンブリッジ5は、電子モジュール11
に接続されており、これには、信号増幅器11a、アナログデジタルコ
ンバータ11b、論理回路11c、高周波変調器/復調器が含まれてい
5 る。この電子モジュール11は、第1のコイル6aの形のインダクタン
スに接続されており、このインダクタンスは第2のコイル6bに誘導結
合されている。第2のコイル6bは、評価ユニットに接続されており、
この評価ユニット13は、エネルギー源13a、論理回路13c、高周
波変調器/復調器13dを有し、ホイートストンブリッジ5から伝達さ
10 れた信号Sを評価して、シャフトW又はスリーブ2のねじれにおけるト
ルクを検知するために用いられる。同時に、評価ユニット13からは、
誘導結合によって、信号増幅器11a、ホイートストンブリッジ5、電
子モジュール11に、それらが動作するための電気エネルギーが伝達さ
れるので、スリーブ2には、装置を動作させるために別個のエネルギー
15 源を配置する必要はない。(【0055】)
図6aから図6cは、本発明の第2の実施形態に基づく装置の側面図
及び平面図を示している。(【0056】)
図6には、本発明に基づく装置の第2の実施形態が示されている。図
1及び図2、特に図2bによる装置とは異なり、スリーブ2は、半径方
向に突出する端部領域Vを有しており、従って、図6によるスリーブ2
は、断面がT字形に形成されている。このとき、端部領域Vは、領域3
5 において、スリーブ2をシャフトWに固定するために配置されている。
同様に、図2とも異なり、ハウジング9は相応にT字形に形成されてい
る。図2bによる装置とのさらなる違いは、コイル6a、6bがプリン
ト回路の形でプリント回路基板14a、14b上に配置されていること
であり、誘導結合KがシャフトWに対して垂直に働く図2による誘導結
10 合とは反対に、これらのコイル6a、6bは、シャフトWの軸に対して
平行に誘導結合Kを提供する。(【0057】)
図6bは、スリーブ2の端部領域Vをスリーブ2の軸に沿って見た平
面図を示している。このとき、円形の端部領域Vは、電子モジュール1
1などの電子的構成要素を配置するために使用できる貫通孔15を有し
15 ている。図6cには、さらに、図6bによる上から見た平面図において、
第1のコイル6aとその巻線が示されており、第1のコイル6aは、プ
リント回路基板14aに配置されているか、これに印刷されている。
(【0
058】)
(2) 検討
20 ア 前記(1)の認定事実によれば、乙5発明は少なくとも次の構成を有する
ものと認められる。
5a ハウジング9に回転可能に支持され、終端領域3の溶接ポイント3
aによって接続されたスリーブ2の測定構造(矩形の貫通孔4及び
屈曲バー5’)にホイーストンブリッジ5を有するシャフトWと、
25 5b 接続されているホイートストンブリッジ5からの電気信号をアナロ
グデジタルコンバータ11bによりデジタルの電気信号Sとして
処理して送信する電子モジュール11などの電子的構成要素 を貫
通孔15などに配置することができる円形の端部領域Vの上面に、
第1のコイル6aが配置され又は印刷されている中空円形で中空
部にシャフトWが貫通したプリント回路基板14aと、
5 5c 前記ホイートストンブリッジ5からの電気信号Sを第1のコイル6
aを介して受信して評価する評価ユニット13及びエネルギー源
8からのエネルギー信号を前記コイル6aを介して前記ホイート
ストンブリッジ5に伝達する第2のコイル6bが設けられ、ハウジ
ング9に配置されたプリント回路基板14bと、
10 5d 評価ユニット13のエネルギー源13aから給電されて電子モジュ
ール11に非接触で電気エネルギーを伝達するコイル6a、6bと
5e を備えたトルクを検知するための装置。
イ 本件発明1の構成要件1Bについて
(ア) 本件発明1の構成要件1Bにおける「軸側基板」には、ストレンゲー
15 ジからの電気信号を検出信号として非接触伝送手段を介して送信する
「検出回路」が設けられている。
他方、乙5発明の第2の実施形態として開示されている図6bについ
て、
「円形の端部領域Vは、電子モジュール11などの電子的構成要素を
配置するために使用できる貫通孔15を有している。」と記載されてい
20 ること(【0058】)からすれば、貫通孔15は、電子モジュール11
を配置するために使用することができるとされているにすぎない。また、
乙5文献の段落【0056】~【0058】は、第1の実施形態と異な
る点を説明していることからすると、同段落において言及されていない
部分は、第1の実施形態と同様であると考えられるところ、第1の実施
25 形態では、図3及び4に示されているように、電子モジュール11は、
スリーブ2の側面に設けられていることも理解できる。加えて、段落【0
057】には、「図2bによる装置とのさらなる違いは、コイル6a、
6bがプリント回路の形でプリント回路基板14a、14b上に配置さ
れていることであり」と記載があることからすると、乙5文献には、第
2の実施形態として、プリント回路基板14aは、コイル6aを配置す
5 るためのものであることのみが記載されており、電子モジュール11等
その他の回路構成を配置するためのものであることは記載されていない。
したがって、乙5発明における「プリント回路基板14a」には、本
件発明1の「検出回路」に相当する「電子モジュール11」が実装され
ているとはいえない点において、両者は相違すると解するのが相当であ
10 る。
(イ) この点につき被告は、乙5発明の構成5bとして、
「接続されているホ
イートストンブリッジ5からの電気信号をアナログデジタルコンバータ
11bによりデジタルの電気信号Sとして、コイル6a、6bを介して、
非接触で伝達する電子モジュール11が設けられ、中空円形で中空部に
15 シャフトWが貫通したプリント回路基板14a」が開示されており、こ
れが本件発明1の構成要件1Bの「軸側基板」に相当するとして、相違
点はない旨主張する。そして、被告は、上記構成5bが開示されている
根拠として、円形の端部領域Vの上に、第1のコイル6aが設けられた
プリント回路基板14aが配置されており、貫通孔15にはプリント回
20 路基板14aの下面が露出していると容易に理解することができること、
電子モジュール11は、第1のコイル6aの形のインダクタンスに接続
されるものであり、電子モジュールをプリント回路基板に実装すること
は周知慣用技術であることから、乙5に接した当業者は、貫通孔15内
部における電子モジュール11などの電子的構成要素の配置について、
25 プリント回路基板14aの上面に設けられた第1のコイル6aと接続さ
せるため、貫通孔15に露出したプリント回路基板14aの下面に電子
モジュール11を実装する構成であると当然に理解する旨を主張する。
しかし、乙5文献の記載からすれば、
「プリント回路基板14a」につ
いて、同基板上にコイル6aが配置されていることは開示されているも
のの、同基板が電子モジュール等の回路構成を配置するためのものであ
5 ることについては、何ら開示も示唆もされていないことは、先に説示し
たとおりである。
したがって、乙5発明は、貫通孔15に露出したプリント回路基板1
4aの下面に電子モジュール11を実装する構成であるということはで
きず、被告の上記主張は採用できない。
10 ウ 本件発明1の構成要件1Cについて
(ア) 本件発明1の構成要件1Cにおける「筐体側基板」には、
「検出回路か
らの検出信号を受信して外部に出力する出力回路」及び「外部から供給
された電力」を「出力回路に供給する電源回路」が設けられている。
他方、乙5文献によれば、
「評価ユニット13」は「エネルギー源13
15 a」を有すること、
「電子モジュール11は、第1のコイル6aの形のイ
ンダクタンスに接続されており、このインダクタンスは第2のコイルb
に誘導結合されている」こと、
「評価ユニット13からは、誘導結合によ
って、信号増幅器11a、ホイートストンブリッジ5、電子モジュール
11に、それらが動作するための電気エネルギーが伝達される」ことを
20 理解することができる(【0055】、図5)。これらによれば、「エネル
ギー源」とは、電池等の電力エネルギーの源となる構成を意味するもの
であって、外部電力が供給される電源回路を意味するものではないもの
と解される。この点は、乙5文献の段落【0036】においても、
「エネ
ルギー源」ないし「電源8」が外部電源であることの記載や示唆はされ
25 ていない。
加えて、段落【0055】ないし図5に照らしても、
「評価ユニット1
3」が、
「ホイートストンブリッジ5から伝達された信号Sを評価」した
後に信号を外部に出力することを示す記載はない。
したがって、乙5発明には、本件発明1における、外部から供給され
た電力を出力回路に供給する「電源回路」に相当する構成及び「検出回
5 路からの検出信号を受信して外部に出力する出力回路」に相当する構成
のいずれも開示されていない点で、両者は相違すると解するのが相当で
ある。
(イ) この点につき被告は、乙5発明の構成5cとして、
「電子モジュール1
1で処理されたホイートストンブリッジ5からの信号を評価して外部に
10 出力する評価ユニット13及び電源8から供給された電気エネルギーを
評価ユニット13の他の回路に供給するエネルギー源13aが設けられ、
ハウジング9に配置されたプリント回路基板14b」が開示されており、
「評価ユニット13」が本件発明1の「出力回路」に、
「エネルギー源1
3a」が本件発明1の「電源回路」に、
「プリント回路基板14b」が本
15 件発明1の「筐体側基板」にそれぞれ該当する旨主張する。特に、被告
は、乙5文献の段落【0036】の記載から、電源8からの電気エネル
ギーが、まず図1では省略された評価ユニットに供給され、評価ユニッ
ト13からコイル6bを介してコイル6aに伝達されるものと理解でき
ること、本件特許出願当時、トルクセンサに外部電源から電力を供給し、
20 外部に信号を出力することは一般的に行われていた技術常識であるとこ
ろ、乙5文献にもこれを除外する記載はなく、当然に、電源8を外部電
源とし、評価ユニット13の評価信号を外部に出力することも包含して
いること等を根拠として主張する。
しかし、電力の点につき、評価ユニット13が有する「エネルギー源
25 13a」からエネルギーが電子モジュールやホイートストンブリッジ5
等に伝達されることは乙5文献において開示されているものの、
「 エネル
ギー源13a」と「電源8」ないし「エネルギー源8」との関係につい
て明細書には記載も示唆もない。そうすると、乙5発明においては、外
部から供給された電力が利用されているとはいえない点において、やは
り本件発明1と相違すると解するのが相当である。
5 また、信号の点につき、ホイートストンブリッジ5から信号を伝達さ
れた「評価ユニット13」がその信号を評価するものであること以外に、
信号を外部に出力すること等を示す記載はないことは前記のとおりであ
って、
「検出回路からの検出信号を受信して外部に出力する出力回路」を
実装しているとはいえない点において、やはり本件発明1と相違すると
10 解するのが相当である。
したがって、被告の主張はいずれも採用できない。
エ 以上によれば、本件発明1は、乙5発明との関係において新規性を有す
るものと認められるのであって、被告が主張する乙5発明による新規性欠
如の無効事由は存在しない。
15 6 争点(2)ウ(本件発明1の無効理由-進歩性欠如(乙5発明))について
前記5のとおり、本件発明1と乙5発明とを比較した場合、少なくとも、乙
5発明における「プリント回路基板14a」には、本件発明1の「検出回路」
(構成要件1B)に相当する「電子モジュール11」が実装されているとはい
えない点において相違する。
20 この点につき被告は、電子モジュールをプリント回路基板に実装することは
技術常識であることから、貫通孔15に露出したプリント回路基板14aの下
面に電子モジュール11を実装する構成とすることは、当業者が容易に想到し
得る事項にすぎない旨主張する。
しかし、前記のとおり、乙5文献の第2の実施形態には、プリント回路基板
25 14aはコイル6aをプリント回路の形で配置するためのもの であることの
みが記載されており、電子モジュール11を配置するためのものであることは
記載されていないのであって、電子モジュール11を含む検出回路の構成要素
をスリーブ2から突出した部分の端部領域Vに設けるということは何ら示唆
されていない。技術的にみても、電子モジュール11を含む検出回路の構成要
素をスリーブ2から突出した端部領域Vに設けた場合には、トルク測定時に回
5 転する際に振動及びひずみが生じやすくなるものと解されるのであって、被告
の主張する構成とすることには技術的な障害が生ずるものというべきである。
以上によれば、上記相違点(構成要件1B)につき当業者が容易に想到し得
るとはいえないのであり、他の構成要件について判断するまでもなく、本件発
明1は乙5発明との関係において進歩性を有するものというべきであるから、
10 本件発明1については、被告が主張する乙5発明による進歩性欠如の無効事由
は存在しない。
7 争点(3)(本件発明2の無効理由-進歩性欠如(乙5発明))について
被告は、本件発明2と乙5発明とは構成要件2Eにおいて相違するのであり、
この相違点は乙6発明又は周知技術によって容易想到であるから、本件発明2
15 は進歩性を欠如する旨主張する。
しかし、本件発明2の構成要件2A、2C、2D及び2Fはそれぞれ本件発
明1の構成要件1A、1C、1D及び1Eと同一であるところ、本件発明1と
乙5発明とは、少なくとも、乙5発明における「プリント回路基板14a」に
は本件発明1の「検出回路」
(構成要件1B)に相当する「電子モジュール11」
20 が実装されているとはいえない点において相違するのであるから、本件発明2
と乙5発明とは構成要件2Bにおいても相違するものというべきである。そし
て、上記6において説示したところに照らせば、上記相違点につき当業者が容
易に想到し得るとはいえないのであるから、他の構成要件について判断するま
でもなく、本件発明2は乙5発明との関係において進歩性を有することになる。
25 したがって、本件発明2についても、被告が主張する乙5発明による進歩性
欠如の無効事由は存在しない。
第5 結論
以上のとおり、被告製品は、本件各発明の技術的範囲に属し、かつ、本件各発
明につき無効事由はいずれも存在しない。
よって、原告の請求はいずれも理由があるからこれらを認容することとして、
5 主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第47部
裁判長裁判官
廣 瀬 孝
15 裁判官
池 田 幸 子
裁判官
松 尾 恵 梨 佳
別紙
当事者目録
原 告 株式会社ロボテック
同訴訟代理人弁護士 田中 伸一郎
同 外村 玲子
同 松野 仁彦
同 日野 英一郎
同訴訟代理人弁理士 磯貝 克臣
同 補 佐 人 弁 理 士 田巻 文孝
被 告 ミネベアミツミ株式会社
同訴訟代理人弁護士 永島 孝明
同 安國 忠彦
同 補 佐 人 弁 理 士 磯田 志郎
別紙
被告物件目録
「低容量軸トルクメータ TMRS シリーズ」
5 (i) TMRS-0.5NM
(ii) TMRS-1NM
(iii) TMRS-2NM
別紙
被告製品の構成(原告の主張)
1 本件発明1に対応した構成
5 1a:筐体2には軸受け部分4cにベアリング28が配置されて回転可能に
支持され、負荷側のシャフト4aの回転中心軸線を通る平面上に設けら
れた4つの平板24からなる起歪部18にストレンゲージ26を有する
シャフト4と、
1b:前記ストレンゲージ26からのアナログの検出信号をセンサ側壁材1
10 4に設けられたADコンバータ34により18bit のデジタル信号に変
換し、コイル側壁材16の外面に設けられた3つの赤外線LED36を
介して筐体2に設けられた出力回路に送信する検出回路が設けられ、図
13ないし16に示されるとおり中空円盤形状(但し、円の一部を直線
で欠いた形状である。)を有するセンサ側壁材14及びコイル側壁材16
15 の中空部に挿入されるシャフト4に固定され、二つの壁材は8本の柱材
で連結されているロータ基板(14及び16)と、
1c:上記3つの赤外線LED36からの検出信号を内側固定基板12の赤
外線受光素子32で受信して外側固定基板10に接続された入出力コネ
クタ8を介して外部に出力するための出力回路、及び別紙1の回路図に
20 示されるとおり、同入出力コネクタ8を介して外部から供給された電力
を、ノイズフィルタでノイズ成分を減衰させた整流の後、電圧+15V
および-15V、及び電圧+5Vに変換して、出力回路に供給する電源
回路が設けられ、図4及び図5に示されるとおり筐体2に固定されてい
る内側及び外側固定基板(12及び10)と、
25 1d:入出力コネクタ8を介して供給された外部からの電力を、ノイズフィ
ルタでノイズ成分を減衰させた後、電圧+33Vに変換されて、内側固
定基板12に接続された給電外側コイル30が給電を受け、同コイル3
0に非接触の被給電内側コイル22を介してシャフト4に固定されてい
る回転基板の検出回路に給電する回転トランス20と、
1e:を備えてなる低容量トルクメータ。
2 本件発明2に対応した構成
2a:1aのとおりのシャフト4と、
2b:1bのとおりのロータ基板(14及び16)と、
2c:1cのとおりの固定基板(12及び10)と、
10 2d:1dのとおりの回転トランス20とを備え、
2e:シャフト4の負荷側のシャフト4aの回転中心軸線を通る平面上に設
けられた4つの平板24からなり、各平板24は、図6ないし8に示
されるとおり軸方向から見ると90度ずつずれた回転軸に対称な位置
に、互いに離間して配置され、それぞれがストレンゲージ26を有す
15 る起歪部18、
2f:を備える低容量トルクメータ。
別紙
被告製品の構成(被告の主張)
1 本件発明1と対比した構成
5 1a’:筐体2には軸受け部分4cにベアリング28が配置されて回転可能
に支持され、負荷側のシャフト4aの回転中心軸線を通る平面上に
設けられた4つの平板24からなる起歪部18にストレンゲージ2
6を有するシャフト4と、
1b’:前記ストレンゲージ26からのアナログの検出信号をセンサ側壁材
10 14に設けられたADコンバータ34により18bitのデジタ
ル信号に変換し、センサ側壁材14及びコイル側壁材16を連結す
る導電性の配線である柱材を介してコイル側壁材の集積回路に入
力され、コイル側壁材16の外面に設けられた3つの赤外線LED
36を介して筐体2に設けられた出力回路に送信する検出回路が
15 設けられ、センサ側壁材14とコイル側壁材16との間に8本の柱
材とが一体的に構成された立体形状(センサ側壁材14とコイル側
壁材16の平面形状は、円の一部を直線で欠いた形状)を有するセ
ンサ側壁材14及びコイル側壁材16の中空部に挿入されるシャ
フト4に固定されているロータ基板と、
20 1c’:上記3つの赤外線LED36からの検出信号を内側固定基板12の
赤外線受光素子32で受信して外側固定基板10に接続された入
出力コネクタ8を介して外部に出力するための出力回路、及び入出
力コネクタ8を介して外部から供給された電力を、ノイズフィルタ
でノイズ成分を減衰させた後、出力回路に必要な電圧に変換して、
25 出力回路に供給する出力回路電圧調整給電回路が設けられ、図4及
び図5に示されるとおり筐体2に固定されている内側及び外側固
定基板(12及び10)と
1d’
:入出力コネクタ8を介して供給された外部からの電力を、ノイズフィ
ルタでノイズ成分を減衰させた後、給電外側コイル30に必要な交
流電圧に変換して供給する回転トランス電圧調整給電回路が設け
5 られ、内側固定基板12に接続された給電外側コイル30が給電を
受け、同コイル30に非接触の被給電内側コイル22を介してシャ
フト4に固定されている回転基板の検出回路に給電する回転トラ
ンス20と、
1e’:を備えてなる低容量トルクメータ。
2 本件発明2と対比した構成
2a’:1a’のとおりのシャフト4と、
2b’:1b’のとおりのロータ基板(14及び16)と、
2c’:1c’のとおりの固定基板(12及び10)と、
15 2d’:1d’のとおりの回転トランス20とを備え、
2e’:シャフト4の負荷側のシャフト4aの回転中心軸線を通る平面上に
設けられた4つの平板24からなり、各平板24は、図6ないし8
に示されるとおり軸方向から見ると90度ずつずれた回転軸に対称
な位置に、互いに離間して配置され、それぞれがストレンゲージ2
20 6を有する起歪部18、
2f’:を備える低容量トルクメータ。
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