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平成21(行ケ)10126審決取消請求事件

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裁判所 請求棄却 知的財産高等裁判所
裁判年月日 平成21年12月17日
事件種別 民事
当事者 被告アッスンニリグ式社
原告株式会社石野製作所
対象物 個別搬送装置
法令 特許権
特許法29条2項1回
キーワード 審決90回
実施48回
無効45回
無効審判16回
特許権4回
意匠権3回
進歩性3回
刊行物2回
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事件の概要 1 本件は,被告が特許権者で発明の名称を「個別搬送装置」とする特許第41 , ( 「 」05749号について その請求項1・2に係る発明 以下 本件特許発明1 ・ 本件特許発明2」という )につき原告から特許無効審判請求がなされたと「 。 ころ,特許庁が請求不成立の審決をしたことから,原告がその取消しを求めた 事案である。

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判決文

平成21年12月17日 判決言渡
平成21年(行ケ)第10126号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 平成21年12月10日
判 決
原 告 株 式 会 社 石 野 製 作 所
訴訟代理人弁理士 日 高 一 樹
同 渡 邉 知 子
被 告 ア ッ ス ン ニ リ グ 式 社
レ ク エ ジ ア ン 株 会
訴訟代理人弁護士 吉 田 肇
同 長 谷 川 武 治
訴訟代理人弁理士 福 島 三 雄
同 向 江 正 幸
同 高 崎 真 行
同 川 角 栄 二
主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
特許庁が無効2008−800179号事件について平成21年4月3日に
した審決を取り消す。
第2 事案の概要
1 本件は,被告が特許権者で発明の名称を「個別搬送装置」とする特許第41
05749号について,その請求項1・2に係る発明 以下 本件特許発明1 」
( 「
・ 本件特許発明2」という。
「 )につき原告から特許無効審判請求がなされたと
ころ,特許庁が請求不成立の審決をしたことから,原告がその取消しを求めた
事案である。
2 争点は,①本件特許発明1が,下記文献1∼8に記載された各発明との関係
で進歩性(特許法29条2項)を有するか,②本件特許発明2が下記文献1∼
9に記載された各発明との関係で進歩性を有するか(同 ),である。

・ 文献1:特開2004−187922号公報(発明の名称「循環型飲
食物搬送装置」,出願人 株式会社石野製作所,公開日 平成
16年7月8日。甲1)
・ 文献2:意匠登録第1256941号公報(意匠に係る物品「搬送機
械」,意匠権者 株式会社石野製作所,意匠公報発行日 平成
17年11月28日。甲2)
・ 文献3:特開平9−37915号公報(発明の名称「保温機構を備え
た回転飲食台,保温機構および冷気循環機構を備えた回転飲
食台」,出願人 日本クレセント株式会社,公開日 平成9年
2月10日。甲3)
・ 文献4:特開平11−46959号公報(発明の名称「飲食物供給用
循環型搬送路」,出願人 株式会社石野製作所,公開日 平成
11年2月23日。甲4)
・ 文献5:特開平10−165284号公報(発明の名称「単位覆い部
材及び該部材を備える飲食カウンター 」,出願人 株式会社石
野製作所,公開日 平成10年6月23日。甲5)
・ 文献6:意匠登録第1271281号公報(意匠に係る物品「搬送機
械」,意匠権者 株式会社石野製作所,意匠公報発行日 平成
18年5月22日。甲6)
・ 文献7:実願平1−32602号(実開平2−124760号)のマ
イクロフィルム(考案の名称「台車搬送装置 」,出願人 株式
会社椿本チエイン,公開日 平成2年10月15日。甲7)
・ 文献8:特許第2738968号公報(発明の名称「紡績機械のため
の無端運搬装置」特許権者 マシーネンファブリク リーター

アクチェンゲゼルシャフト,特許公報発行日 平成10年4
月8日。甲8)
・ 文献9:特公平1−56765号公報(発明の名称「回転式カウン
ター」,出願人 田中スチール工業株式会社,公告日 平成元
年12月1日。甲9)
第3 当事者の主張
1 請求の原因
(1) 特許庁における手続の経緯
被告は,平成19年5月2日に名称を「個別搬送装置」とする発明につい
て特許出願(特願2007−121860号)をし,平成20年4月4日に
特許第4105749号として設定登録を受けた(請求項の数2。以下「本
件特許」という)。
これに対し原告から,平成20年9月12日付けで本件特許の請求項1及
び2について無効審判請求(甲11)がなされたので,特許庁は同請求を無
効2008−800179号事件として審理した上,平成21年4月3日,
「本件審判の請求は,成り立たない 。」旨の審決をし,その謄本は平成21
年4月15日原告に送達された。
(2) 発明の内容
本件特許発明1,2の内容は,次のとおりである。
【請求項1】
飲食店用の循環搬送装置に設けられる飲食物用の個別搬送装置であっ
て,
循環搬送装置の台に設けられた平行な2列のレーンの間に立設されて
照明を保持する支柱に取り付けられ,且つ前記2列のレーンの少なくと
も一方側においてレーンに沿って設けられる直線状のフレームと,
このフレームに設けられ,フレームから水平に延出して,前記フレー
ムが設けられた側のレーンの上方においてレーンに沿って配置される透
光性を有する支持板と,
駆動装置によりフレーム内を可動する部材に設けられ,前記支持板上
を前記フレームに沿って直線状に往復動するトレーと
を備えることを特徴とする個別搬送装置。
【請求項2】
前記駆動装置は,無端状のベルトと,このベルトを回転させるモータ
とを備え,
前記ベルトに固定されたフックに前記トレーが着脱可能に連結される
ことを特徴とする請求項1に記載の個別搬送装置。
(3) 審決の内容
審決の内容は,別添審決写しのとおりである。
その理由の要旨は,本件特許発明1及び2は,前記文献1ないし9に基づ
く各発明(以下順に「甲第1号証の発明」等という。なお,甲第1号証の発
明は,その実施例1に基づくものを「甲第1号証の第1発明」と,その実施
例2に基づくものを「甲第1号証の第2発明」と,その実施例3に基づくも
のを「甲第1号証の第3発明」という。)との関係で当業者が容易に発明を
することができたとはいえない,等としたものである。
なお,無効審判請求人たる原告の主張した無効理由AないしE(Dは主張
撤回),及び相違点1a∼c・2a∼c・3a∼c・4a∼c等の詳細は,
別添審決写し記載のとおりである。
(4) 審決の取消事由
しかしながら,審決には,以下のとおりの誤りがあるから,違法として取
り消されるべきである(取消事由1は主張撤回)。
ア 取消事由2(相違点1a認定の誤り)
(ア) 審決は,相違点1aとして ,「本件特許発明1では,循環搬送装置
に設けられた支柱が,照明を保持するのに対し,甲第1号証の第1発明
では,そのような構成がない点」と認定した。
しかし,甲1の図1中には,台形状の台座に取り付けられた円形の図
形が記載され,当該図形は,当業者であれば誰しもが照明を表している
ものと認識する図形である。
通常,特許図面において,図中に表された部位や部品等の名称を全て
記載することは行わない。図中に形状が記載され,名称が記載されてい
なくとも,記載された図形の形状や設けられた箇所により,何が図中に
記載されているのか,当業者であれば明らかに認識できるものは多く存
在する。
甲第1号証の第1発明の図1に記載された円形は,同じ技術分野に属
する公開特許公報等を参照すると,同様の図形が照明やランプとして名
称とともに記載されており,当該円形が照明等であることは明らかであ
る。また,甲1の図1同様,照明等の図形のみ記載され,名称の記載が
されていない公報も多く存在する。
(イ) 上記事実を裏付けるため,下記公開公報等により説明する。
特開平9−327364号公報(発明の名称「飲食カウンター用取付
け窓枠部材及び該窓枠部材を備える飲食カウンター並びにその取付け方
法」,出願人 石野産業株式会社,公開日 平成9年12月22日。甲1
6)に記載された蛍光灯59は,飲食物を搬送するコンベア上部に配設
された照明を表しており,その形状は,甲1の図1の記載同様,台形状
の台座に取り付けられた円形の蛍光管である。
特許2612739号公報(発明の名称「回転飲食台用保温装置」,
特許権者 日本クレセント株式会社,特許公報発行日 平成9年5月21
日。甲17)には,回転飲食台上方に配設された照明ランプFLが記載
され,その形状は同じである。これらは,いずれも技術分野が本件特許
発明1及び甲1と同じであり,当業者であれば台形の台座部に円形の形
状を見て,それが照明等であることを認識することは明らかである。
その他,特開2004−28397号公報(発明の名称「商品冷蔵方
法およびその装置」,出願人 日本クレセント株式会社,公開日 平成1
6年1月29日。甲18)には,冷蔵ケース上方に配設されたランプ2
2が記載され,特開平5−184443号公報 発明の名称 ショーケー
( 「
スの照明灯カバー支持構造」,出願人 富士電機株式会社,公開日 平成
5年7月27日。甲19)には,ショーケース上方に配設された照明灯
7が記載され,いずれも同様の形状により照明等が表されており,上記
事実を裏付けるものである。
また,照明等の図形のみ記載され,名称の記載がされていない公報と
して,例えば特開平10−80346号公報(発明の名称「飲食カウン
ター用の取付け窓部材及び該窓部材を備える飲食カウンター並びにその
製造方法」 出願人 石野産業株式会社,公開日 平成10年3月31日。

甲20)があり,各図には名称の記載がない,照明等を示す図形が記載
されている。
以上からも明らかなように,合理的に当業者が何を表しているのか認
識できる図であれば,符合が付されて名称が記載されていないことのみ
で,認定できないと判断するのは失当である。
なお,甲1の図1中に描かれた「点」からも,これが蛍光灯であるこ
とは,甲29( インターネットサイト「フリー百科事典『ウィキペディ
ア(Wikipedia)』 http://ja.wikipedia.org)に掲載の「蛍光灯」に関する記
」(
載及び写真 ),甲30( 絵でひく英和大図鑑ワーズ・ワード(コンパク

ト版 )」株式会社同朋舎出版1997年6月20日発行,232頁 ),
甲31 東芝ライテック株式会社蛍光ランプ メロウライン」
( 「 FHF50EX-N
の仕様図面)からも明らかである。
(ウ) したがって,相違点1aの「循環搬送装置に設けられた支柱が,照
明を保持する」との点は,甲第1号証の第1発明にも認められ,本件特
許発明1と甲第1号証第1発明の相違点ではなく,一致点であるから,
審決の認定は誤りである。
イ 取消事由3(無効理由Aについての進歩性判断の誤り)
(ア) 上記取消事由2のとおり,甲第1号証の第1発明には照明について
の記載があるから,甲第1号証の第1発明と本件特許発明1との一致点
は,以下のとおり認定されるべきである。両者は,
「飲食店用の循環搬送装置に設けられる飲食物用の個別搬送装置であ
って,
循環搬送装置の台に設けられた平行な2列のレーンの間に立設され
て照明を保持する支柱に取り付けられ,且つ前記2列のレーンの少な
くとも一方側においてレーンに沿って設けられる直線状のフレーム
と,
このフレームに設けられた支持板と,
駆動装置によりフレーム内を可動する部材に設けられ,前記支持板
上を前記フレームに沿って直線状に往復動するトレーと
を備えることを特徴とする個別搬送装置。」である点(下線は審決
認定の一致点の相違として,原告が付記)。
(イ) 相違点1bについて
審決は,相違点1bについて,本件特許発明1における,支持板が,
「直線状のフレームから水平に延出」する点は,甲第1号証の第1発明
自体の形態をそのように表現することも可能ではあるが,続く「前記フ
レームが設けられた側のレーンの上方においてレーンに沿って配置され
る」点も含めた構成は記載も示唆もされていないと認定していることか
ら,本件特許発明1と甲第1号証の第1発明の相違点は,「前記フレー
ムが設けられた側のレーンの上方においてレーンに沿って配置される」
点に限定されると考えられる。
しかしながら ,「前記フレームが設けられた側のレーンの上方におい
てレーンに沿って配置される」との点は,例えば,甲第1号証の第2発
明における「案内レール13」にも,甲2における「支持板」にも相当
するものである。したがって甲第1号証の第1発明に,甲第1号証の第
2発明,甲2に記載された技術事項を組み合わせることによって当業者
が容易に想到し得たものである。
なお,甲第1号証の第2発明については,無効審判請求の理由Aで挙
げた証拠からは欠落しているが,甲第1号証の第1発明と同じ公報に記
載されている発明であり,かつ,甲1及び甲2は,本件特許発明1と全
く同じ技術分野における発明であり,当業者であれば当然知っている技
術事項であることは明らかであるから,当業者にとってこれらの技術事
項を組み合わせることに格別の技術的困難性は見いだしにくく,容易で
ある。
この点,審決は,相違点1bについて,甲7,8を副引例とする点に
つき判断し, …甲第7号証および甲第8号証には『案内レール』や『支

持レール』に沿って『台車』や『スライダ』が移動する点は記載されて
いるが ,『案内レール』や『支持レール』の下方に本件特許発明1にお
ける『レーン』相当する構成は記載も示唆もされていないから,…甲第
1号証の第1発明ならびに甲第7号証および甲第8号証に記載された技
術事項を組み合わせることによって当業者が容易に想到し得たものであ
るとはいえない。(15頁27行∼35行)と判断した。

しかし,「案内レール」や「支持レール」の下方に本件特許発明1に
おける「レーン」に相当する構成は,上記の通り,甲第1号証の第2発
明及び甲2に記載されており,当業者にとってこれらの技術事項を組み
合わせることに格別の技術的困難性はなく,容易に想到し得る。
(ウ) 相違点1cについて
審決は,相違点1cについて,甲3における「載置板」は,「…透光
性を有することが明らかではあるが,上記『載置板』は本件特許発明1
における『支持板』とは機能が異なり,その上面に沿って注文品が往復
運動するものではない。(16頁2行∼4行)とし,甲4の「スライド

板」については ,「…本件特許発明1のように上方の搬送路が下方の搬
送路に対し遮光するのを解消するためのものではない 。(16頁8行∼

9行)として,これら技術事項を甲第1号証の第1発明における「支持
板」に採用して,相違点1cに係る本件特許発明1の発明特定事項のよ
うにすることは,容易想到といえないとした。
しかし,甲3の「載置板」は注文品が往復運動するものではないが,
甲3に記載された発明は,客に飲食物を提供するための循環搬送装置と
いう同一の技術分野に属し,かつ上下に3段の循環搬送路が記載されて
いる。さらに,甲3の「載置板」は,透光性材質を採用した目的が本件
特許発明1と一致する。すなわち,甲3には「載置板56は保温機構の
クレセントチェーン上で巡回搬送されるケーキ,コーヒーポット等の商
品を見易くするため,透明素材により成形することが望ましく,ガラス
が最適である。 (段落【0042】
」 )と記載されているように,甲3に
おける「載置板」は本件特許発明1同様,下方に配された搬送路に対し
遮光するのを解消するためのものである。
加えて,下方に配される物に対し遮光するのを解消するために透光性
材質を採用すること自体は,当業者には周知技術に過ぎない。周知技術
を示すものとして,特開2002−107045号公報(発明の名称
「オープンショーケース 」,出願人 三洋電機株式会社,公開日 平成1
4年4月10日。甲21)には,「…前記棚板を,透明板より形成した
ので,透明板より形成された棚板に生じる結露又は曇りを効果的に防止
することができると共に,透明板の下方の商品を明るくすることができ
る。 (段落【0010】
」 )と記載があり,特開平5−180557号公
報(発明の名称「冷凍冷蔵庫 」,出願人 株式会社日立製作所,公開日
平成5年7月23日。甲22)には,「照明手段は冷蔵室3の上面ドア
側のくぼみ部10内に設けられ,しかも,棚板7は透明なガラス板であ
るため,冷蔵室3の室内がドア側から,即ちユーザからみて手前側から
全体に照明されることになり,収納されている品物が手前側から照明さ
れることになって品物の見分けがつきやすくなる。(段落【0042】
」 )
との記載があり,ガラス板である透明な棚板の記載がある。
したがって,甲3における「載置板」自体が注文品を往復運動するも
のではないとしても,甲第1号証の第1発明に甲3に記載された技術事
項を採用して,相違点1cに係る本件特許発明1の発明特定事項のよう
にすることに格別の困難性は見いだせない。
更に容易性を裏付ける根拠として ,「注文品が往復運動する搬送路」
は,甲第1号証の第1発明のみならず,甲第1号証の第2発明ないし第
3発明,及び甲2にもその構成が記載された公知の技術である。
加えて,甲4における「スライド板」【図2】ガラス板2)のように,

物が搬送される搬送路の支持板を透光性材質とすることも公知の技術で
ある。
よって,下方に搬送路を設け,その上方に注文品が往復運動する透明
板を設けること,すなわち本件特許発明1における「支持板」を「透光
性を有する支持板」とすることは,下方に配される物に対し遮光するの
を解消するために透光性材質を採用するという,周知技術に基づき当業
者が通常考え得る板材の材質の選択の範疇に止まり,格別,技術的に困
難な要素を見いだすことは出来ず,当業者にとって通常考え得る容易な
設計変更に過ぎない。
以上の検討によれば,本件特許発明1は,当業者が容易に発明するこ
とができたものであり,審決の無効理由Aの判断は,誤りである。
ウ 取消事由4(相違点2b認定の誤り)
甲第1号証の第1発明の「往復注文搬送装置2」は,甲第1号証の第2
発明の「往復注文搬送装置3a,3b」と構成要素を同じくするものであ
り,審決が相違点1bの判断において「本件特許発明1における,支持板
が,『直線状のフレームから水平に延出』する点は,甲第1号証の第1発
明自体の形態をそのように表現することも可能ではあるが,…」(15頁
22行∼24行)とした点は,そのまま甲第1号証の第2発明にも当ては
まる。
審決は甲第1号証の第1発明では,フレームが設けられた側のレーンの
上方においてレーンに沿って配置される構成を認定しなかったが,甲第1
号証の第2発明は,まさしく「前記フレームが設けられた側のレーンの上
方においてレーンに沿って配置される」構成を有することが認められる。
したがって,審決の認定した相違点2bは,本件特許発明1と甲第1号証
の第2発明との相違点ではなく,一致点であると認められるから,審決の
認定は誤りである。
エ 取消事由5(無効理由Bに関する判断の誤り)
(ア) 上記取消事由4の事由により,甲第1号証の第2発明と本件特許発
明1との一致点は,以下のように認定されるべきである。
両者は,「飲食店用の循環搬送装置に設けられる飲食物用の個別搬送
装置であって,
循環搬送装置の台に設けられた平行な2列のレーンの間に立設された
支柱に取り付けられ,且つ前記2列のレーンの少なくとも一方側におい
てレーンに沿って設けられる直線状のフレームと,
このフレームに設けられ,フレームから水平に延出して,前記フレー
ムが設けられた側のレーンの上方においてレーンに沿って配置される支
持板と,
駆動装置によりフレーム内を可動する部材に設けられ,前記支持板上
を前記フレームに沿って直線状に往復動するトレーと
を備えることを特徴とする個別搬送装置。」である点で一致する(下
線は原告が付記 )。
(イ) 相違点2aについて
審決記載の相違点2aは認めるが,循環搬送装置に設けられた支柱が,
照明を保持する点については,上記取消事由2のとおり,甲第1号証の
第1発明にも記載されている。
(ウ) 相違点2cについて
相違点2cについて,当業者にとって通常考え得る容易な設計変更に
過ぎないことは,上記取消事由3の相違点1cについて記載した内容の
とおりであり,これを援用するが,当業者にとって容易想到と判断され
るべき理由についても同様である。
上記取消事由3の相違点1cに関する記載のとおり,甲3における 載

置板」自体が注文品を往復運動するものではないとしても,甲第1号証
の第2発明に甲3に記載された技術事項を採用して,相違点2cに係る
本件特許発明1の発明特定事項のようにすることに格別の困難性はな
い。
よって,下方に搬送路を設け,その上方に注文品が往復運動する透明
板を設けること,すなわち本件特許発明1における「支持板」を「透光
性を有する支持板」とすることは,下方に配される物に対し遮光するの
を解消するために透光性材質を採用するという,周知技術に基づき当業
者が通常考え得る板材の材質の選択の範疇に止まり,格別,技術的に困
難な要素を見いだすことは出来ず,当業者にとって通常考え得る容易な
設計変更に過ぎない。
以上のとおり,甲第1号証の第2発明と本件特許発明1との相違点は ,
相違点2cのみであり,かつ当該相違点は当業者にとって通常考え得る
容易な設計変更に過ぎない。
したがって本件特許発明1は,当業者が容易に発明することができた
ものであり,審決の無効理由Bに関する判断は誤りである。
オ 取消事由6(無効理由Cに関する判断の誤り)
(ア) 相違点3aについて
審決記載の相違点3aについては認めるが,循環搬送装置に設けられ
た支柱が照明を保持する点については,上記取消事由2のとおり,甲第
1号証の第1発明にも記載されている。
(イ) 相違点3bについて
審決は,甲第1号証の第3発明における「…『ヒサシ24a,24b 』
は本件特許発明1における「支持板」に相当するとはいえない。仮に,
『ヒサシ24a,24b』が本件特許発明1における『支持板』に相当
するとしても,本件特許発明1における,支持板が,『直線状のフレー
ムから水平に延出』する点は,甲第1号証の第3発明には記載も示唆も
されていない。(19頁13行∼18行)とした。確かに,甲第1号証

の第3発明にこの点に関する記載はないが,甲第1号証の第1発明につ
き,審決が「…『直線状のフレームから水平に延出』する点は,甲第1
号証の第1発明自体の形態をそのように表現することも可能ではある
…」(15頁22行∼24行)としており,甲第1号証の第3発明及び
同第1発明に記載された技術事項を組み合わせることによって,当業者
が容易に想到し得たものであると認められる。
(ウ) 相違点3cについて
相違点3cは当業者にとって通常考え得る容易な設計変更に過ぎない
ことは,上記取消事由3,相違点1cについて記載したとおりであり,
容易想到と判断されるべき理由も同じであるからこれを援用する。
上記取消事由3,相違点1cについてに記載のとおり,甲3における
「載置板」自体が注文品を往復運動するものではないとしても,甲第1
号証の第3発明に甲3に記載された技術事項を採用して,相違点3cに
係る本件特許発明1の発明特定事項のようにすることに格別の困難性は
ない。
よって,下方に搬送路を設け,その上方に注文品が往復運動する透明
板を設けること,すなわち本件特許発明1における「支持板」を「透光
性を有する支持板」とすることは,下方に配される物に対し遮光するの
を解消するために透光性材質を採用するという,周知技術に基づき当業
者が通常考え得る板材の材質の選択の範疇に止まり,当業者にとって容
易な設計変更に過ぎない。
したがって本件特許発明1は,当業者が容易に発明することができた
ものであり,審決記載の無効理由Cに関する判断は誤りである。
カ 取消事由7(相違点4b認定の誤り)
上記取消事由4と同じく,甲第1号証の第1発明の「往復注文搬送装置
2」は,甲2の「搬送トレー搬送路」と構成要素を同じくするものである
から,上記審決の相違点1bについての「…『直線状のフレームから水平
に延出』する点は,甲第1号証の第1発明自体の形態をそのように表現す
ることも可能ではある… 」(15頁22行∼24行)とした点は,そのま
ま甲2にも当てはまる。
審決は,甲第1号証の第1発明に関し,「…続く『前記フレームが設け
られた側のレーンの上方においてレーンに沿って配置される』点も含めた
構成は記載も示唆もされていない。 15頁24行∼26行)

( と認定した。
しかしこの点に関し,甲2には,まさしく「前記フレームが設けられた側
のレーンの上方においてレーンに沿って配置される」構成が認められる。
したがって,相違点4bは本件特許発明1と甲2の相違点ではなく,一
致点であるから,審決の相違点4bの認定は誤りである。
キ 取消事由8(無効理由Eに関する判断の誤り)
(ア) 上記取消事由7により,甲第2号証の発明と本件特許発明1との一致
点は,以下のように認定されるべきである。
両者は,
「飲食店用の循環搬送装置に設けられる飲食物用の個別搬送装置であっ
て,
循環搬送装置の台に設けられた平行な2列のレーンの間に立設された
支柱に取り付けられ,レーンの少なくとも一方側においてレーンに沿っ
て設けられる直線状のフレームと,
このフレームに設けられ,フレームから水平に延出して,前記フレー
ムが設けられた側のレーンの上方においてレーンに沿って配置される支
持板と,
駆動装置によりフレーム内を可動する部材に設けられ,前記支持板上
を前記フレームに沿って直線状に往復動するトレーと
を備えることを特徴とする個別搬送装置 。」である点(下線は原告が付
記)。
なお,甲2には ,「…飲食物等の循環搬送を行うクレセントチェーンに
よる搬送路の上方にチェーン駆動による搬送トレーの搬送路を設けた構成
を有するもので,当該搬送トレー運搬路は主に個別注文に応じて所定の位
置まで直線状に物品を搬送するために使用される。… 」(意匠の説明2行
∼3行)との記載があり,循環搬送路の形状は平面視ロ字状で構成され,
個別注文搬送路下方には,平行な2列のレーンである循環搬送路が記載さ
れている。
(イ) 相違点4aについて
審決記載の相違点4aについては認めるが,循環搬送装置に設けられた
支柱が照明を保持するのは,上記取消事由2のとおり,甲第1号証の第1
発明にも記載されている。
(ウ) 相違点4cについて
相違点4cについてが当業者にとって通常考え得る容易な設計変更に過
ぎないことは,上記取消事由3,相違点1cについてに記載した内容のと
おりであり,当業者にとって容易想到とされるべきものであるから,援用
する。
(エ) 上記取消事由3,相違点1cについて記載のとおり,甲3における 載

置板」自体が注文品を往復運動するものではないとしても,甲2の発明に
甲3に記載された技術事項を採用して,相違点4cに係る本件特許発明1
の発明特定事項のようにすることに格別の困難性はない。
よって,下方に搬送路を設け,その上方に注文品が往復運動する透明板
を設けること,すなわち本件特許発明1における「支持板」を「透光性を
有する支持板」とすることは,下方に配される物に対し遮光するのを解消
するために透光性材質を採用するという,周知技術に基づき当業者が通常
考え得る板材の材質の選択の範疇に止まり,当業者にとって容易な設計変
更に過ぎない。
以上のとおり,甲第2号証の発明と本件特許発明1との相違点は,相違
点4cのみであり,かつ当該相違点は当業者にとって通常考え得る容易な
設計変更に過ぎない。
したがって本件特許発明1は,当業者が容易に発明することができたも
のであり,審決記載の無効理由Eの判断は誤りである。
ク 取消事由9(本件特許発明2についての判断の誤り)
本件特許発明1については,上記のとおりの審決の認定判断の誤りがあ
る。
本件特許発明2について,同発明は本件特許発明1を引用し,さらに以
下の構成要件を限定したものである。そして本件特許発明2の特許請求の
範囲は,以下の構成要件に分説することができる。
<ア> 前記駆動装置は ,無端状のベルトと,このベルトを回転させるモー
タとを備え,
<イ> 前記ベルトに固定されたフックに前記トレーが着脱可能に連結さ
れる
<ウ> ことを特徴とする請求項1に記載の個別搬送装置。
上記<ア>について,本件特許発明2における「無端状のベルト」は,本
件特許発明1に関する証拠である,甲第1号証の第1発明及び甲第1号証
の第2発明の「無端チェンC1,C2」,甲第1号証の第3発明の「無端
状の固定子コイル 」(段落【0055 】 ,甲2の「可動部材 」
) (図の記載
により明らか)に相当する。
上記<イ>については,本件特許発明2における「ベルト」 「フック」
, ,
「トレー」は,甲9に記載の「チェーン24」「L字型フック34」「鮨
, ,
皿載置台32」に相当し,甲9には ,「ベルトに固定されたフックに前記
トレーが着脱可能に連結される」技術内容が記載されている。
本件特許出願前に頒布された刊行物に記載された発明に基づいて当業者
が容易に発明をすることができた本件特許発明1に同一の技術分野に属す
る甲9に記載された技術事項を組み合わせることは,当業者にとって容易
に想到し得るものである。
よって,本件特許発明2も出願前に頒布された刊行物に記載された発明
に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでないとした審決
の認定判断には誤りがある。
2 請求原因に対する認否
請求の原因(1)ないし(3)の各事実はいずれも認めるが,同(4)は争う。
3 被告の反論
(1) 取消事由2に対し
ア 原告は,甲16∼甲19を提示して,甲第1号証の第1発明(図1)に
おける円形の図形は照明であると主張すると共に ,[相違点1a]の「循
環搬送装置に設けられた支柱が,照明を保持する」点は,甲第1号証の第
1発明にも認められ,本件特許発明1と甲第1号証第1発明の相違点では
なく,一致点である旨主張する。
しかし,甲第1号証の第1発明では,原告が指摘する図形に対して符号
が付されて説明されているわけでもなく,なんら円形の図形に対して説明
されていないことから,原告が指摘する図形は 照明」
「 とは認められない。
換言すれば,甲第1号証の第1発明(図1)において,原告が指摘する円
形の図形は,客に湯を提供するための給湯管や,各種ケーブルを収容した
パイプなどとも考えられ,「照明」であるとはいえない。
また,甲16∼甲19では,照明について符号を付して説明している。
逆にいえば,符号を付して説明していない場合,直ちに「照明」であると
は言い切れないのである。また,「照明」であるならば,符号付きで説明
をするのが通常であるともいえる。そもそも甲第1号証の第1発明では,
U字状の支持枠F1に往復注文搬送装置2が支持されている点が特徴であ
ることを考慮すれば,その特徴ある支持枠F1にさらに照明が設けられる
ことは当業者にとって自明でもなく,照明が設けられているとは到底いえ
ない。
また,甲第1号証の第1発明における円形の図形では,内部に左右に離
隔して2つの点が記載されており,甲16∼甲19に記載の各照明の図と
異なっている。
したがって,甲第1号証の第1発明における円形の図形が,「照明」で
あるとは到底いえず,審決の「…上記円は『照明』とは認められない。」
との認定に誤りはなく,支柱に照明が設けられている点は,本件特許発明
1と甲第1号証の第1発明との相違点となるべきものであり,原告の主張
は失当である。
イ なお,原告は,「照明等の図形のみ記載され,名称の記載がされていな
い公報」として,甲20を提示しているが,この甲20の図形が照明であ
る理由が全く示されておらず,しかも,甲20における図形と甲1におけ
る図形が,同じものであるとする理由も一切述べられていない。したがっ
て,甲20は,甲第1号証の第1発明における円形の図形が照明であるこ
とを証明する証拠となっていない。
(2) 取消事由3に対し
ア 原告は,取消事由2の主張を受けて,本件特許発明1と甲第1号証の第
1発明との一致点を原告主張のとおり認定すべきであるとする。
しかし,上記(1)のとおり,本件特許発明1と甲第1号証の第1発明と
において,支柱が照明を保持する点は相違点とされるべきであり,審決の
認定に誤りはない。
イ 原告は,本件特許発明1と甲第1号証の第1発明との相違点は ,「前記
フレームが設けられた側のレーンの上方においてレーンに沿って配置され
る」との点に限られるとして,この点は甲第1号証の第2発明における 案

内レール13」にも,甲2における「支持板」にも相当するものであるか
ら,甲第1号証の第1発明に,甲第1号証の第2発明,甲2を組み合わせ
ることによって当業者が容易に想到し得たと主張する。
上記原告の主張は,審判請求時の請求書に記載しなかった無効理由につ
いて主張するものであり,許されない。
原告は,無効審判請求書(甲11)の11頁( ①本件特許発明請求項

1と証拠との対比」の「A.本件特許発明請求項1と証拠①の実施例1と
の対比 」)において,本件特許発明1と甲第1号証の第1発明との相違点
として,
「ヘ.本件特許発明請求項1において,支持板がフレームから水平に延
出して,前記フレームが設けられた側のレーンの上方においてレーンに沿
って配置されるのに対し,証拠①の実施例1は,支持板 案内レール13 )

がフレーム(往復注文搬送装置2の筐体)から水平に延出し,当該フレー
ムが設けられた側のレーンの上方に配置されていない点」(12頁)を挙
げている。
そして, 「相違点ヘ. について,
この 」 原告は ,審判請求書の12頁 (b)

相違点ヘ.について」で ,「支持板がフレームから水平に延出して,前記
フレームが設けられた側のレーンの上方においてレーンに沿って配置する
点は,証拠⑦に記載の『案内レール』に関する記載,または証拠⑧に記載
の『支持レール』に関する記載による技術を参考にすれば当業者にとって
容易に想到できる構成である。」と主張している。
このように,原告自身が,審判請求時に,本件特許発明1における「前
記フレームが設けられた側のレーンの上方においてレーンに沿って配置さ
れる」点は,甲7及び甲8に記載された技術を参考にすればよいと主張し
ており,これに基づいて無効審判において審理判断がなされ,本件特許発
明1の有効性の判断がなされたものである。
上記のとおり,原告は,審判請求時の審判請求書に記載しなかった無効
理由について主張しているものであり ,無効審判の審決取消訴訟において,
その判断の違法が争われる場合,専ら審判手続において現実に争われ,か
つ審理判断された特定の無効原因に関するもののみが審理の対象とされる
べきであり 最高裁大法廷昭和51年3月10日判決・昭和42年 行ツ)
( (
第28号・民集30巻2号79頁),原告の主張は失当である。
そして,審決の相違点1bに関する判断の内容にも誤りはない。
ウ 仮に原告主張のとおり,甲第1号証の第1発明に,甲第1号証の第2発
明または甲2に記載の発明を適用したとしても,本件特許発明1における,
「支持板」がフレームから水平に延出し ,「前記フレームが設けられた側
のレーンの上方においてレーンに沿って配置される」構成とはなりえない。
本件特許発明1において,透光性を有する「支持板」が ,「フレームか
ら水平に延出して,前記フレームが設けられた側のレーンの上方において
レーンに沿って配置」されるとは,本件明細書(特許公報,甲10)の段
落【0044】の記載からも明らかなとおり,個別搬送装置の支持板を介
して循環搬送装置のレーンに照明を適切に当てるための構成を意味してい
る。
これに対して,甲第1号証の第1発明,同第2発明,及び甲2に記載の
発明では,案内レール(支持板)を介して下方の循環搬送装置のレーンに
照明を当てる点が一切開示されておらず,これを示唆する記載さえない。
また,甲第1号証の第1発明,同第2発明,及び甲2に記載の発明では,
支柱に照明が設けられておらず,案内レール(支持板)を介して循環搬送
装置のレーンに照明を当てることを意図していなかったことは明らかであ
る。しかも,上記発明の構成では,案内レールを介して下方のレーンに照
明を照らすことが不可能な構成とされている。
具体的には,甲第1号証の第1発明では,そもそも往復注文搬送装置2
が循環搬送装置のレーンとレーンの間に一つだけ設けられる構成とされて
おり,しかも,往復注文搬送装置2の下方には,支柱7,仕切板5,およ
び保持枠Hが設けられている。このように,甲第1号証の第1発明は,本
件特許発明1のように,各レーンの上方に個別搬送装置が設けられる構成
と全く異なっており,案内レール13を介して下方の循環搬送装置のレー
ン(循環搬送路)1a,1bを照らすことは到底できない。
甲第1号証の第2発明では,往復注文搬送装置3a,3bは,支柱及び
仕切板5a,5bの上方に設けられる基台に載置されており,案内レール
13の下方は完全に閉塞されている。しかも ,甲第1号証の第2発明では,
案内レール13が筐体(フレーム)に挟まれた構成であり,筐体(フレー
ム)を保持するために,往復注文搬送装置3a,3bと基台との間に隔壁
板が設けられており,案内レール13の下方は完全に閉塞されている。こ
のため,甲第1号証の第2発明では,往復注文搬送装置3a,3bの上方
から照明を当てると,往復注文搬送装置3a,3bの影によりレーン(循
環搬送路)1a,1bが暗くなる構成となっている。このように,甲第1
号証の第2発明では,案内レール13を介して下方の循環搬送装置のレー
ン(循環搬送路)1a,1bを照らすことは到底できない構成とされる。
さらに,甲2に記載の発明では,注文用の搬送装置は,支柱に設けられ
た隔壁板上に載置されて設けられており,支持板の下方は完全に閉塞され
ている。しかも,甲2では,甲第1号証の第1発明や第2発明と同様,支
持板がフレーム(筐体)に挟まれた構成であり,支持板の下方には,左右
一対のフレーム(筐体)を連結する底板が配置されると共に,外フレーム
の底板も配置されて支持板の下方は完全に閉塞されている。このため,甲
2に記載の発明では,注文用の搬送装置の上方から照明を当てると,注文
用搬送装置の影によりレーンが暗くなる構成となっている。したがって,
甲2に記載の発明では,支持板を介して下方の循環搬送装置のレーンを照
らすことは到底できない。
このように,甲第1号証の第1発明,同第2発明,及び甲2に記載の発
明では,案内レール(支持板)を介して循環搬送装置のレーンを照らすこ
とは到底できず,支持板がフレームから水平に延出して,レーンの上方に
おいてレーンに沿って配置される構成となっていないことは明らかであ
る。
審決も,相違点1bについて,本件特許発明1における,支持板が, 直

線状のフレームから水平に延出」する点は,甲第1号証の第1発明自体の
形態をそのように表現することも可能ではあるが,続く「前記フレームが
設けられた側のレーンの上方においてレーンに沿って配置される」点も含
めた構成は記載も示唆もされていない旨認定判断したものである。つまり ,
本件特許発明1では ,「支持板」は,単にフレームから延出しているので
はなく,レーンの上方に配置されるようにフレームから水平に延出して設
けられており,支持板を介してレーンに照明を当てることが可能な構成と
されている。
これに対して甲第1号証の第1発明,同第2発明,及び甲2に記載の発
明では,案内レール(支持板)がフレームから延出すると単に表現できる
だけであって,レーンの上方においてレーンに沿って配置されるようにフ
レームから水平に延出しているとは到底いえない。
審決においても ,「筐体」に挟まれた「案内レール13」上に支持され
て「往復直線移動する注文用トレーT」といった記載があることから,当
審も当該「筐体」を「直線状のフレーム」とみなした旨(14頁)記載が
あるように,甲第1号証の第1発明,同第2発明,及び甲2に記載の発明
において,案内レール13がフレーム(筐体)から延出していると表現で
きたとしても,結局,案内レール13が「筐体(フレーム )」に挟まれた
構成であることに変わりがない。案内レール13は,フレームから水平に
延出して,レーンの上方においてレーンに沿って配置される構成とはなっ
ておらず,甲第1号証の第1発明,同第2発明,及び甲2に記載の発明で
は,案内レール(支持板)を介して下方へ照明を当てることができない構
成となっている。
したがって,仮に,甲第1号証の第1発明に,甲第1号証の第2発明,
甲2に記載の発明を適用したとしても,本件特許発明1のように,支持板
を介して下方の循環搬送装置のレーンを照らすために ,「支持板」が,「フ
レームから水平に延出して,前記フレームが設けられた側のレーンの上方
においてレーンに沿って配置」される構成とは到底ならないから,審決の
結論に誤りはない。
エ 原告は,相違点1cについて,甲第1号証の第1発明に甲3に記載され
た技術事項を採用して,相違点1cに係る本件特許発明1の発明特定事項
のようにすることに格別の困難性はない旨主張する。
しかし,甲3における「載置板」は,商品などを置くための単なる棚板
であって,搬送装置自体を構成する部材ではなく,搬送装置とは別個独立
したものである。これは甲3の段落【0041】に,「この載置板56に
より,冷蔵コンベア32上の冷蔵商品を取分けて載置させる取皿を,この
載置板56上に載置させることができ,冷蔵商品を取分け易くすることが
できる…」と記載されていることからも明らかである。また,甲3の図5,
図7からも,載置板56が,搬送装置自体を構成するものではなく,搬送
装置と別個独立したものであることは明らかである。
さらに,甲3には,上下に3段の循環搬送路が記載されているだけで,
載置板56は,搬送装置自体を構成するものではなく,循環搬送装置に付
加的に設けられたものであって,循環搬送装置から取った商品を一旦置く
ための棚板に過ぎない。
これに対して,本件特許発明1における「支持板」は,フレームから延
出して設けられ,その上を注文品が載置されたトレーが往復動し,個別搬
送装置自体を構成するものであり,本件特許発明1における 支持板 」 ,
「 と
甲3における「載置板」とは,機能が全く異なるものであって,その用途
も全く異なるものである。
したがって,審決が,甲3における「載置板」は,本件特許発明1にお
ける「支持板」とは機能が異なり,その上面に沿って注文品が往復動する
ものではないとした認定に誤りはない。また,甲3に記載の発明では,段
落【0042】に記載されているように,クレセントチェーン上の商品を
見易くするために載置板56をガラスなどにするのであって,本件特許発
明1のように下方のレーンに照明を当てるためではない。
このように,甲第1号証の第1発明や第2発明における「案内レール1
3」に,甲3に記載の「載置板」を採用して,本件特許発明1のように,
支持板を透光性を有する構成とすることは当業者にとって容易であるとは
到底いえない。
また原告は,下方に配される物に対し遮光するのを解消するために透光
性材質を採用することは周知技術である旨主張し,甲21(特開2002
−107045号公報),甲22(特開平5−180557号公報)を提
出する。
しかし,甲21,甲22に記載されているのは, ショーケース」や「冷

蔵庫」であって,本件特許発明1とは技術分野が全く異なる。しかも,原
告が主張する甲21,甲22の各部材は,甲3と同様,商品などを載置す
るための単なる棚板であって,本件特許発明1における「支持板」とは用
途や機能が全く異なっている。
したがって,これら甲21及び甲22に基づいて本件特許発明1を容易
に想到することができたとは到底いえない。
また甲4の「スライド板」は,甲第1号証の第1発明及び同第2発明の
各装置の案内レールと構成や用途,作用・機能が全く異なっていて適用す
る合理的な理由がなく ,十分な動機付けもない。甲4では,スライド板 ガ

ラス板2)の上方を照らす点のみが記載されており,スライド板の下方を
照らす点は記載されておらず,示唆する記載もない。さらに甲4の図2,
図5からも明らかなとおり,スライド板(ガラス板2)の下方には,各種
部材が収容されており,甲4において,スライド板(ガラス板2)の下方
を照らすと,これら各種部材が客に見えてしまう。したがって,甲4では,
スライド板(ガラス板2)の下方を照らすことはできない構成である。
しかも,甲4に記載された発明では,スライド板(ガラス板2)の下方
に皿を搬送する機構を設ける構成であり,甲第1号証の第1発明における
往復注文搬送装置2の搬送方法と構成が全く異なる。甲4の段落【001
9】に ,「…平滑性を有した透明なガラス板2がスライド板として設けら
れ,前記ガラス板2は,前記ハウジング7に搬送路内を密封するように接
着,一体化されており,前記ガラス板2直下の搬送路中央部には,通電に
より磁化する電磁石14が複数,所定の間隔にて設けられ,この電磁石1
4は,搬送路内に設けられたチェーンレール13に沿って,搬送路内を循
環移動するようにされている駆動チェーン12に取付け治具により取付け
られており,前記駆動チェーン12の移動に伴って搬送路内を循環移動す
るようになっている 。」と記載されているように,甲4のスライド板(ガ
ラス板2)を甲第1号証の第1発明における往復注文搬送装置2に採用し
ようとすれば,甲4の図2,図5に示されるように,電磁石14,チェー
ンレール13,および駆動チェーン12などを案内レール13の下方に配
置する必要がある。
このように,甲第1号証の第1発明,同第2発明における案内レール1
3に,甲4における「スライド板」を適用することはできず,仮に適用し
ようとすると,案内レール13の下方に,電磁石14,チェーンレール1
3,および駆動チェーン12などを配置する必要があり,本件特許発明1
の構成とは到底なり得ない。
したがって,審決が,甲4における「スライド板」は,透光性を有する
ことが明らかではあるが,本件特許発明1のように上方の搬送路が下方の
搬送路に対し遮光するのを解消するためのものではないとした認定判断に
誤りはなく,審決に違法はない。
原告は,甲3などを適用することで,甲第1号証の第1発明や第2発明
における案内レール13を透光性を有する構成とすることができると主張
するが,そもそも甲1の案内レール13を透光性を有する構成とすること
に合理的な理由がない。前記のとおり,甲第1号証の第1発明,同第2発
明では,案内レール13を介して下方のレーンを照らすことが一切記載さ
れておらず,示唆する記載さえもない。しかも,甲第1号証の第1発明,
同第2発明では,案内レール13を介して下方のレーンを照らすことがで
きない。
したがって,甲第1号証の第1発明,同第2発明における「案内レール
13」に,甲3などを適用して,透光性を有する構成とすればよいという
原告の主張は失当である。
本件特許発明1では,フレームから水平に延出する支持板を,レーンの
上方に配置すると共に,この支持板を透光性を有する構成とすることで,
循環搬送装置に個別搬送装置を取り付けても循環搬送装置のレーンに照明
を適切に当てることができる点に特徴を有しており,甲3,甲21,甲2
2のように,商品を載せ置く単なる棚板を透明にしたものとは全く異なる
技術的思想である。
原告は,この本件特許発明1の特徴点を全く無視したものであり,失当
である。
(3) 取消事由4に対し
ア 原告は,相違点2bは本件特許発明1と甲第1号証の第2発明との相違
点ではなく,一致点である旨主張する。
この原告の主張は,本件特許発明1の特徴点を無視するものであり,本
件特許発明1では, フレームから水平に延出」
「 する支持板を, 前記フレー

ムが設けられた側のレーンの上方においてレーンに沿って配置」 ,
し かつ,
この支持板を透光性を有する構成とすることで,個別搬送装置の支持板を
介して循環搬送装置のレーンに照明を適切に当てることができる。
これに対して,甲第1号証の第2発明では,案内レール13を介して下
方のレーンに照明を当てる点が一切開示されておらず,示唆する記載さえ
ない。また,甲第1号証の第2発明では,支柱に照明が設けられておらず ,
案内レール13を介して循環搬送装置のレーンに照明を当てることを意図
していなかったことは明らかである。
しかも,甲第1号証の第2発明の構成では,上述したように,案内レー
ル13を介して下方のレーンに照明を照らすことができない構成とされて
いる。甲第1号証の第2発明では,往復注文搬送装置3a,3bは,仕切
板5a,5bにより構成される基台に載置されており,案内レール13の
下方は完全に閉塞されている。また,往復注文搬送装置3a,3bと基台
との間には,隔壁板が設けられており,案内レール13の下方は完全に閉
塞されている。このため,甲第1号証の第2発明では,往復注文搬送装置
3a,3bの上方から照明を当てると,往復注文搬送装置3a,3bの影
によりレーン(循環搬送路)1a,1bが暗くなる構成となっている。
したがって,甲第1号証の第2発明では,案内レール13を介して循環
搬送装置のレーンを照らすことができず,案内レールがフレームから水平
に延出して,レーンの上方においてレーンに沿って配置される構成となっ
ていないことは明らかである。
イ 審決は,それ故に,相違点1bについて,本件特許発明1における,支
持板が ,「直線状のフレームから水平に延出」する点は,甲第1号証の第
1発明自体の形態をそのように表現することも可能ではあるが,続く「前
記フレームが設けられた側のレーンの上方においてレーンに沿って配置さ
れる」点も含めた構成は記載も示唆もされていない旨認定し,さらに相違
点2bについて,上記同様,本件特許発明1における,支持板が ,「直線
状のフレームから水平に延出して,前記フレームが設けられた側のレーン
の上方においてレーンに沿って配置される」点は,甲第1号証の第2発明
ならびに甲7,甲8に記載された技術事項を組み合わせることによって当
業者が容易に想到し得たものであるとはいえない旨判断したものである。
つまり,本件特許発明1では,「支持板」は,単にフレームから延出し
ているのではなく,レーンの上方に配置されるようにフレームから水平に
延出して設けられており,支持板を介してレーンに照明を当てることが可
能な構成とされている。これに対して甲第1号証の第2発明では ,案内レー
ル13がフレーム(筐体)から延出すると単に表現できるだけであって,
レーンの上方においてレーンに沿って配置されるようにフレームから水平
に延出しているとは到底いえない。
そもそも甲第1号証の第2発明では,審決が,「…『筐体』に挟まれた
『案内レール13』上に支持されて『往復直線移動する注文用トレーT』
といった記載があることから,当審も当該『筐体』を『直線状のフレーム』
とみなした。(14頁26行∼28行)としたように,案内レール13が

フレーム 筐体)
( から延出していると表現できたとしても,結局,案内レー
ル13が「筐体(フレーム) に挟まれた構成であることに変わりがない。

案内レール13がフレームから水平に延出して,レーンの上方において
レーンに沿って配置される構成とはなっていないことから,甲第1号証の
第2発明では,案内レール13を介して下方へ照明を当てることができな
い構成となっているものである。
なお,甲第1号証の第2発明における「支柱」は,原告が主張する箇所
ではなく,仕切板5a,5b間に設けられた「上方へ延びる部材」が「支
柱」である。
そして,甲第1号証の第2発明では,案内レール13が筐体 フレーム)

に挟まれた構成であるが故に,往復注文搬送装置3a,3bは,支柱の上
方に設けられた基台,さらには基台上に設けられた隔壁板に載せ置かれて
設置されている。
よって,甲第1号証の第2発明では,案内レール13を介して循環搬送
路(レーン )1a,1bを照らすために,案内レール13が,筐体(フレー
ム)から水平に延出して ,「フレームが設けられた側のレーンの上方にお
いてレーンに沿って配置される 」構成となっていないことは明らかである。
このように,甲第1号証の第2発明では,案内レール13を介して循環
搬送装置の循環搬送路(レーン)1a,1bを照らすことができず,本件
特許発明1のように,フレームから水平に延出する支持板が,レーンの上
方においてレーンに沿って配置され,支持板を介して循環搬送装置のレー
ンを照らすことができる構成となっていないから,原告の主張は失当であ
る。
(4) 取消事由5に対し
本件特許発明1と甲第1号証の第2発明とにおいて,支持板が,「フレー
ムが設けられた側のレーンの上方においてレーンに沿って配置される」点は
相違点とされるべきことは既に述べたとおりである。
原告は,相違点2aに関し,循環搬送装置に設けられた支柱が照明を保持
するとも主張するが,これも既に述べたように,甲第1号証の第1発明では
支柱に照明が設けられているとはいえない。
原告は,相違点2cについて,甲3における「載置板」自体が注文品を往
復運動するものではないとしても,甲第1号証の第2発明に甲3に記載され
た技術事項を採用して,相違点2cに係る本件特許発明1の発明特定事項の
ようにすることに格別の困難性はない旨主張する。
しかし,甲3における「載置板」は,搬送装置自体を構成するものではな
く,単なる棚板に過ぎず,個別搬送装置自体を構成する本件特許発明1の 支

持板」とは,機能が全く異なる部材である。したがって,甲第1号証の第2
発明の案内レール13に,甲3における「載置板」を適用しても本件特許発
明1には到底なり得ない。
また,そもそも甲第1号証の第2発明の案内レール13を透光性を有する
構成とすることに合理的な理由がない。既に述べたように,甲第1号証の第
2発明では,案内レール13を介してレーンを照らすことが一切記載されて
おらず,示唆する記載さえもない。甲第1号証の第2発明では,案内レール
13の下方に基台や隔壁板が配置されて案内レール13の下方が完全に閉塞
されており,案内レール13を介して下方のレーンを照らすことができない
構成となっている。よって,甲第1号証の第2発明における「案内レール1
3」を透光性を有する構成とすることに何ら合理的な理由がない。
さらに,原告は,下方に配される物に対し遮光するのを解消するために透
光性材質を採用するという,周知技術に基づき当業者が通常考え得る板材の
材質の選択の範疇に止まり,容易な設計変更に過ぎない旨主張するが,甲第
1号証の第2発明では,案内レール13を介して下方のレーンを照らすこと
ができない構成となっており,甲3の載置板は本件特許発明1の支持板と機
能が全く異なるものである。
また,甲4に記載のスライド板を甲第1号証の第2発明に適用した場合,
上述したように,本件特許発明1の構成とは到底なり得ない。さらに,甲2
1,甲22に開示されているのは,「ショーケース」や「冷蔵庫」の単なる
棚板であり,本件特許発明1と全く技術分野が異なり,しかも,機能や用途
が全く異なっている。
そもそも,循環搬送装置に個別搬送装置を取り付け,この個別搬送装置の
支持板を介して循環搬送装置のレーンを照らす構成が,いずれの証拠にも示
されていない以上,甲第1号証の第2発明における案内レール13を周知技
術に基づいて透光性を有する構成とできるとは到底いえず,原告の主張は失
当である。
(5) 取消事由6に対し
原告の相違点3aについての主張につき,繰り返し述べているとおり甲第
1号証の第1発明では,支柱に照明は設けられていないから,原告の主張は
失当である。
原告は,相違点3bについて,甲第1号証の第3発明に甲第1号証の第1
発明を組み合わせることによって当業者が容易に想到し得たものであると主
張する。
しかしこの主張も,審判請求時の無効審判請求書に記載しなかった無効理
由について主張するものであり,失当である。
すなわち原告は,審判請求書(甲11)の14頁( (C.本件特許発明請

求項1と証拠①の実施例3との対比 」)において,本件特許発明1と甲第1
号証の第3発明との相違点として,
「ヘ.本件特許発明請求項1において,支持板がフレームから水平に延出
しているのに対し,証拠①の実施例3は,支持板(ヒサシ24a,24
b)が支柱25から水平に延出している点」(15頁)
を挙げている。
そして , 「相違点ヘ . について,
この 」 原告は ,審判請求書の15頁の (b)

相違点ヘ.について」の中で,「証拠⑦に記載の『案内レール』に関する記
載,または証拠⑧に記載の『支持レール』に関する記載による技術を参考に
して,フレーム(28a,28b)を支柱に近接して設けそこから支持板(ヒ
サシ24a,24b)を水平に延出させ,当該案内レール上をトレーが往復
動するようにすることは,当業者にとって容易に想到できる構成である。」
と主張している。
このように,原告自身が,審判請求時に,本件特許発明1における「支持
板」が ,「直線状のフレームから水平に延出」する点は,甲7,甲8に記載
された技術を参考にすればよいと主張しており,これに基づいて無効審判に
おいて審理判断がなされ,本件特許発明1の有効性の判断がなされている。
原告は,無効審判請求時の審判請求書に記載しなかった無効理由について
主張しているものであり,原告の主張は失当である。
審決の相違点3bについての認定判断にも誤りはない。
加えて,原告は,甲第1号証の第3発明と甲第1号証の第1発明とを組み
合わせることによって本件特許発明1を当業者が容易に想到し得たものであ
ると主張しているが,甲第1号証の第3発明に,どのように甲第1号証の第
1発明を組み合わせるのかについての主張はない。
また,甲第1号証の第3発明では,ヒサシをフレームに設ける点が一切開
示されておらず,示唆する記載さえない。そもそも甲第1号証の第3発明の
吊り下げ式往復注文搬送装置30a,30bと,甲第1号証の第1発明の往
復注文搬送装置2とは,甲1の図1及び図5からも明らかなとおり,フレー
ムや案内レール,ヒサシなどの構成が全く異なっており,注文搬送装置の構
成が全く異なっている。そのため,甲第1号証の第3発明に,甲第1号証の
第1発明を組み合わせることは到底できず,組み合わせることに合理的な理
由がない。
原告は,相違点3cについて,甲3における「載置板」自体が注文品を往
復運動するものではないとしても,甲第1号証の第3発明に甲3に記載され
た技術事項を採用して,相違点3cに係る本件特許発明1の発明特定事項の
ようにすることに格別の困難性はない旨も主張する。
既に述べたとおり,甲3における「載置板」は,搬送装置自体を構成する
ものではなく,単なる棚板に過ぎず,個別搬送装置自体を構成する本件特許
発明1の「支持板」とは,機能が全く異なる部材である。したがって,甲第
1号証の第3発明のヒサシに,甲3における「載置板」を適用して本件特許
発明1とはなり得ない。甲第1号証の第3発明では,ヒサシを介してレーン
を照らすことが一切記載されておらず,示唆する記載さえなく,甲第1号証
の第3発明におけるヒサシを,透光性を有する構成とすることに何ら合理的
な理由がない。
さらに,原告は,下方に配される物に対し遮光するのを解消するために透
光性材質を採用するという,周知技術に基づき当業者が通常考え得る板材の
材質の選択の範疇に止まり容易な設計変更に過ぎない旨も主張するが,甲第
1号証の第3発明におけるヒサシは,フレームに設けられておらず,注文搬
送装置を構成するものでない以上,本件特許発明1の支持板に相当するもの
とは到底いえないから,原告の主張は失当である。
(6) 取消事由7に対し
原告は,相違点4bは本件特許発明1と甲2の相違点ではなく,一致点で
あると主張する。
しかし,本件特許発明1では, フレームから水平に延出」する支持板を,

「前記フレームが設けられた側のレーンの上方においてレーンに沿って配置」
し,かつ,この支持板を透光性を有する構成とすることで,個別搬送装置の
支持板を介して循環搬送装置のレーンに照明を適切に当てることができる。
これに対して,甲2に記載の発明では,既に述べたとおり,支持板を介して
下方のレーンに照明を当てる点が一切開示されておらず,示唆する記載さえ
ない。
また,甲2に記載の発明では,支柱に照明が設けられておらず,支持板を
介して循環搬送装置のレーンに照明を当てることを意図していなかったこと
は明らかである。しかも,甲2に記載の発明の構成では,支持板を介して下
方のレーンに照明を照らすことができない構成とされている。これも既に述
べたとおりである。
また,甲2に記載の発明では,甲第1号証の第1発明や第2発明と同様,
支持板がフレーム 筐体)
( に挟まれた構成であり,支持板の下方には,フレー
ム 筐体)
( の底板が配置されると共に,外フレームの底板も配置されており,
支持板の下方は完全に閉塞されている。このため,甲2に記載の発明では,
注文用の搬送装置の上方から照明を当てると,注文用搬送装置の影により循
環搬送装置のレーンが暗くなってしまう構成となっている。
したがって,甲2に記載の発明では,支持板を介して下方の循環搬送装置
のレーンを照らすことは到底できず,支持板が,フレームから水平に延出し
て,レーンの上方においてレーンに沿って配置される構成となっていないこ
とは明らかである。
このように,甲2に記載の発明では,支持板を介して循環搬送装置のレー
ンを照らすことができず,本件特許発明1のように,フレームから延出する
支持板が,レーンの上方においてレーンに沿って配置され,支持板を介して
循環搬送装置のレーンを照らすことができる構成となっていないから,原告
主張の取消事由7は失当である。
(7) 取消事由8に対し
既に述べたように,本件特許発明1と甲2に記載の発明とにおいて,支持
板が,「フレームが設けられた側のレーンの上方においてレーンに沿って配
置される」点は相違点とされるべきであり,原告の主張は,失当である。相
違点4aに関する主張に対しては,甲第1号証の第1発明では支柱に照明が
設けられているといえないことも既に主張したとおりである。
相違点4cに関する主張についても,既に述べたように,甲3における 載

置板」は棚板に過ぎず,個別搬送装置自体を構成する本件特許発明1の「支
持板」とは,機能が異なる部材である。したがって,甲2に記載された発明
の支持板に,甲3における「載置板」を適用しても本件特許発明1とは到底
なり得ない。そもそも甲2記載の発明の支持板を透光性を有する構成とする
ことに合理的な理由がないことも既に述べたとおりである。甲4記載のスラ
イド板を甲2に記載された発明に適用した場合に本件特許発明1の構成とは
到底なり得ないこと,甲21,甲22に開示されているのは ,「ショーケー
ス」や「冷蔵庫」の単なる棚板であり,本件特許発明1と全く技術分野が異
なり,しかも,機能や用途が全く異なっていることも既に述べたとおりであ
る。
以上のように,本件特許発明1は,甲2に記載の発明,甲3,甲7,甲8
に記載の発明などからは容易に想到し得ない構成とされており,審決の無効
理由Eに関する認定判断に誤りはなく,審決に違法はない。
(8) 取消事由9に対し
原告の主張する取消事由はいずれも理由がなく,本件特許発明1は,甲第
1号証に記載の各発明,甲2,3などに記載の発明からは容易に想到し得る
ものでなく,審決の認定判断に誤りはない。したがって,審決に違法はなく,
本件特許発明1は取り消されるべきものではない。
以上のように,本件特許発明1は取り消されるべきものではなく,本件特
許発明1を引用する発明である本件特許発明2も取り消されるべきものでは
ない。
第4 当裁判所の判断
1 請求原因(1)(特許庁における手続の経緯 ),(2)(発明の内容 ),(3)(審決
の内容)の各事実は,いずれも当事者間に争いがない。
そこで,原告主張の取消事由について,以下順次判断する。
2 取消事由2(相違点1a認定の誤り)について
(1) 原告は,審決が,無効理由Aにおける甲第1号証の第1発明と本件特許
発明1との対比において,相違点1aを「本件特許発明1では,循環搬送装
置に設けられた支柱が,照明を保持するのに対し,甲第1号証の第1発明で
はそのような構成がない点 」(14頁30行∼31行)と認定した点につい
て,甲1の図1には,台形状の台座に取り付けられた円形の図形が記載され ,
この図形は,甲16∼20から明らかなように,当業者であれば照明を表わ
していると認識するから,審決の相違点1aの認定は誤りであり,審決は取
り消されるべきである旨主張する。
なるほど審決は,相違点1aの判断において,甲1の図1における円は『照

明』とは認められない 」(15頁7行)とした。しかし,審決は,相違点1
aについての判断において,甲5に「 循環搬送装置に設けられた支柱が,

照明を保持する』構成が記載されている」 15頁13行∼14行)として,

甲第1号証の第1発明に甲5の技術事項を採用することにより,相違点1a
に係る構成とすることに格別の困難性はないと判断した。
そうすると審決は,相違点1aについて容易想到であるとする請求人(原
告)の主張に沿った判断をしたものであり,原告の上記相違点1aについて
の認定の誤りについての主張が認められたとしても,審決の結論に影響しな
いことが明らかである。
したがって,原告主張の取消事由2は,審決の取消事由としては主張自体
失当であるが,事案に鑑み,審決の認定した甲第1号証の第1∼第3発明の
内容の当否について検討する。
(2)ア 甲第1号証の第1発明,同第2発明,同第3発明の記載された甲1に
は,以下の記載がある。
(ア) 発明の詳細な説明
・ 「 発明の属する技術分野】

本発明は,飲食客エリア内を飲食物を載置して循環する無端状の循環搬
送路を備える循環型飲食物搬送装置に関する。(段落【0001】
」 )
・ 「そして,上記のような循環型飲食物搬送装置において,飲食客が循環
搬送路上に載置されていない飲食物を注文したときは,店員がその都度,
注文飲食客に直接手渡すか,座席番号00番の注文品と書いた表示物と
一緒に通常の搬送路に注文飲食物を投入して,その座席番号の飲食客だ
けが採れるように搬送していた。(段落【0003】
」 )
・ 「 発明が解決しようとする課題】

しかしながら,より多くの飲食客を収納できるようにした大型店舗が
増加している現況において,繁盛時には多くの注文飲食客から注文を受
けるので,注文飲食物を直接店員が移動して手渡すには多くの店員を動
員させなければならず,また店員が飲食物を持ちながら飲食客の後をう
ろうろすること自体好感のもてるものではなかった。一方,座席番号を
記した表示物を付けて一般の搬送路に投入する方法は,人手が掛からな
い反面,注文飲食客が会話に夢中になって見逃してしまう恐れもあり,
確実に注文飲食物を注文飲食客に送り届けることができなかった。(段

落【0005】)
・ 「本発明は,上記問題点を解決するためになされたもので,人手を掛け
ずに注文飲食物を注文飲食客に確実に送り届けることができる専用の往
復注文搬送路を設けた循環型飲食物搬送装置を提供することを目的とし
ている。(段落【0006】
」 )
・ 「 課題を解決するための手段】

上記目的を達成するために,本発明の循環型飲食物搬送装置は,飲食
客エリア内を飲食物を載置して循環する無端状の循環搬送路を備える循
環型飲食物搬送装置において,前記循環搬送路の近傍に,注文飲食客に
注文飲食物を移送する往復注文搬送装置を設け,該往復注文搬送装置は
注文飲食物を前後方向に往復移動可能で注文飲食客の座席位置で停止す
ることを特徴としている。
この特徴によれば,注文した飲食物が注文飲食物載置台により送り届
けられるので,人手が掛からず,しかも注文飲食者のところで飲食物が
停止するので,見逃してしまうようなことがない。(段落【0007】
」 )
(イ) 実施例1に関し
a 発明の詳細な説明
・ 「図1は本発明の第1実施形態に係る循環型飲食物搬送装置であって,
無端状循環搬送路とその近傍上部に配設され前後方向に往復動可能な
注文飲食物載置台を備えた往復注文搬送装置を横切る断面図である 。

(段落【0021】)
・ 「図1に示す符号1は循環型飲食物搬送装置であって,この循環型飲
食物搬送装置1は,無端状のクレセントチェーンコンベヤ12a,1
2bで構成される略水平な循環搬送路1a,1bから成る往路及び復
路を有し,図示しない隔壁で仕切られた厨房エリア内から飲食物Nを
食器皿8に載置して飲食客エリア内を回走し,再び厨房エリアに戻る
ようになっている。(段落【0022】
」 )
・ 「更に,循環搬送路1a,1bの側面には対面式の飲食カウンター4
a,4bが配設されており,これら飲食カウンター4a,4bには複
数の飲食客の座席が搬送方向に沿って所定間隔で配設されている。 段


落【0023】)
・ 「詳しくは,循環搬送路1a,1bの間に形成された支持台11上部
には,搬送方向に沿う複数の支柱7が所定間隔毎に立設しており,こ
れら支柱7間に設けられた保持枠Hに注文飲食客の対面側の飲食客の
視界から遮る仕切板5が取付けられている。(段落【0024】
」 )
・ 「そして,これら循環搬送路1a,1bの中間部上方には,前後方向
に往復動可能な注文飲食物運搬体を備えた往復注文搬送装置2が設け
られている。なお,この注文飲食物運搬体は食器皿8のことを意味す
る場合と,食器皿8を載せた注文用トレーTとを意味する場合とを含
んでいる。(段落【0025】
」 )
・ 「そして,これら各支柱7の頂部には,U字状の支持枠F1が支持さ
れており,支持枠F1の内部底枠には往復注文搬送装置2が支持され
ており,この往復注文搬送装置2は,図示しない前後に配置された一
対のスプロケットに係止されて水平に折り返される無端チェンC1,
C2と,一側チェンC1に連結されて厨房エリア内で飲食物Nを載せ
た食器皿8を載置して飲食客エリア内に向く案内レール13上に支持
されて往復直線移動する注文用トレーTとから構成されている 。 (段

落【0026】)
b 図面(かっこ内は【図面の簡単な説明】の記載である)
・ 【図1】 本発明の第1実施形態に係る循環型飲食物搬送装置であって,

無端状循環搬送路とその近傍上部に配設され前後方向に往復動可能な
注文飲食物載置台を備えた往復注文搬送装置を横切る断面図である 。

(ウ) 実施例2に関し
a 発明の詳細な説明
・ 「図4は第2実施形態に係る循環型飲食物搬送装置であって,無端状
循環搬送路とその近傍上部に前後方向に往復動可能に並設された2つ
の往復注文搬送装置を横切る断面図である。尚,前述した構成部分と
同一構成部分については,同一符号を付して重複する説明を省略する。」
(段落【0043】)
・ 「図4に示される循環型飲食物搬送装置1の循環搬送路1a,1b間
には,仕切板5a,5bが配置されて対面側の飲食客の視界を遮るよ
うになっており,これら循環搬送路1a,1bの上方には2つの注文
用トレーT,Tを個別に前後方向に往復動する2つの独立した往復注
文搬送装置3a,3bが並設されている。(段落【0044】
」 )
・ 「これら往復注文搬送装置3a,3bは,第1実施形態と同じ構成で
あって,前後に配置された一対のスプロケットに係止されて水平に折
り返される無端チェンC1,C2の一方側チェンC1にそれぞれ独立
して連結された注文用トレーT,Tを厨房エリアと飲食客エリア間で
往復直線移動するように構成されている。(段落【0045】
」 )
b 図面(かっこ内は【図面の簡単な説明】の記載である)
・ 【図4】(第2実施形態に係る循環型飲食物搬送装置であって,無端状
循環搬送路とその近傍上部に前後方向に往復動可能に並設された2つ
の往復注文搬送装置を横切る断面図である。)
(エ) 実施例3に関し
a 発明の詳細な説明
・ 「図5は本発明の第3実施形態に係る循環型飲食物搬送装置であって,
無端状循環搬送路とその近傍上部に配設されるリニアモータ駆動の2
つの吊り下げ式往復注文搬送装置を横切る断面図である。尚,前述し
た構成部分と同一構成部分は同一符号を付してその説明を省略する 。

(段落【0051】)
・ 「図5に示すように,2つの吊り下げ式往復注文搬送装置30a,3
0bはリニアモータ駆動の吊り下げ式であり,循環型飲食物搬送装置
1を構成する無端状のクレセントチェーンコンベヤ12a,12bか
ら成る循環搬送路1a,1bの対面に設置された仕切板5a,5b間
の支持台上部には複数の支柱25が所定間隔毎立設しており,これら
支柱25間には対面側の飲食客の注文飲食物を視界から遮る目隠し板
32が取付けられている。(段落【0052】
」 )
・ 「そして,上記支柱25の上端から搬送方向と直交する左右方向に張
り出した支持アーム26の両端には,前後方向を向く2つの独立した
搬送路を構成する直線状のガイドレールR1,R2が支持されている。
なお,支持アーム26は支柱25に支えられているが,天井に直接吊
り下げるようにしてもよい。(段落【0053】
」 )
・ 「そして,これらガイドレールR1,R2には,吊り下げ体P1,P
2の側面に回転自在に軸支されたガイドローラが走行可能に支持され
ており,これら吊り下げ体P1,P2には食器皿8を載置して独立し
て往復移送可能な吊り下げ搬送トレー29a,29bがそれぞれ吊り
下げられている。(段落【0054】
」 )
・ 「吊り下げ体P1,P2のガイドローラと反対側には,両ガイドレー
ルR1,R2の一部に取付けられた無端状の固定子コイルと,可動子
から成るリニアモータが設けられている。(段落【0055】
」 )
・ 「本実施形態に係る吊り下げ式往復注文搬送装置30a,30bは,
図示していないが,上記の実施形態と同様に,飲食カウンター4a,
4b前の座席に対応して注文伝達手段としてのインターフォンがそれ
ぞれ取り付けられており,その座席に着席した飲食客は,インターフ
ォンのボタンを押すことで好みの飲食物を厨房側に口頭で注文するこ
とができるようになっている。(段落【0056】
」 )
・ 「また,吊り下げ搬送トレー29a,29bの下方には,仕切板5a,
5bの上端から循環搬送路1a,1bの上部にそれぞれヒサシ24a,
24bが張り出しており,吊り下げ搬送トレー29a,29bから循
環搬送路1a,1b上に飲食物が落下するのを防止している 。 (段落

【0057】)
b 図面(かっこ内は【図面の簡単な説明】の記載である)
・ 【図5】 本発明の第3実施形態に係る循環型飲食物搬送装置であって,

無端状循環搬送路とその近傍上部に配設されるリニアモータ駆動の2
つの吊り下げ式往復注文搬送装置を横切る断面図である。)
(オ) 甲1記載の各発明の意義
上記(ア)ないし(エ)によれば,甲1に記載の各発明は,飲食物を載置
して循環する無端状の循環搬送路を備える循環型飲食物搬送装置に関す
るものであり(段落【0001 】,飲食客が循環路上に載置されていな

い飲食物を注文したときに,人手を掛けずに注文飲食物を注文飲食客に
確実に送り届けることができる専用の往復動注文搬送路を設けた循環型
飲食物搬送装置を提供することを目的とするものである(段落【000
3】【0006】等)
・ 。
(カ) 実施例1に記載された発明〔甲第1号証の第1発明〕の意義
a 上記(ア),(イ)によれば,甲第1号証の第1発明は,第1実施形態
に係る発明であり,無端状のクレセントチェーンコンベヤ12a,1
2bで構成される略水平な循環搬送路1a,1bから成る往路及び復
路を有し(段落【0022】,循環搬送路1a,1bの間に形成され

た支持台11上部には,搬送方向に沿う複数の支柱7が所定間隔毎に
立設し(段落【0024 】,循環搬送路1a,1bの中間部上方には ,

前後方向に往復動可能な注文飲食物運搬体を備えた往復注文搬送装置
2が設けられた構成となっている(段落【0025】。

これら記載及び上記(ア),(イ)の摘記によれば,審決が甲第1号証
の第1発明の内容に関し,審決書8頁のとおり認定したことに誤りは
ない。
b 原告の主張に対する補足的判断
(a) 原告は,甲第1号証の第1発明に関し,図1の台形状の台座に
取り付けられた円形の図形は照明であり,これを認定しなかったの
は誤りである旨主張する。
なるほど上記(イ)bのとおり,甲1の図1には,原告の主張する
ように,U字状支持枠F1の上部左右に,台形状の図形と,これに
密接している,内部に二つの点を有する円形の部材が描かれている。
しかし,これら部材には符号等は付されておらず,甲1の発明の詳
細な説明にも,この部材について何ら記載がされていないばかりか,
甲1の循環型飲食物搬送装置の照明について言及するところがな
く,甲1は照明について考慮された文献ではないということができ
る。したがって,甲第1号証の第1発明の内容に関して,審決が原
告主張の照明について認定しなかったことは誤りではない。
(b) 原告は,甲16から甲20を提出し,このような台形状の台座
に取り付けられた円形部材は蛍光管を意味すると主張する。なるほ
ど甲16∼20には以下の記載がある。
・ 甲16(特開平9−327364号公報,発明の名称「飲食カ
ウンター用取付け窓枠部材及び該窓枠部材を備える飲食カウン
ター並びにその取付け方法」,出願人 石野産業株式会社,公開日
平成9年12月22日)は,発明の詳細な説明に「…蛍光灯5
9が設けられている…」(段落【0050】)との記載があり,下
記図1には,略台形状部材の頂部に円形が密接した形状に蛍光灯
59が描かれている。

【図1】
・ 甲17(特許2612739号公報,発明の名称「回転飲食台
用保温装置」,特許権者 日本クレセント株式会社,特許公報発行
日 平成9年5月21日)の発明の詳細な説明には「…照明ラン
プ FL …を備えた… 」(第5欄3行∼4行)と記載され,第1図
は下記のとおりである。

【第1図】
・ 甲18(特開2004−28397号公報,発明の名称「商品冷
蔵方法およびその装置」,出願人 日本クレセント株式会社,公開日
平成16年1月29日)の発明の詳細な説明には,「…図中…22
はランプ…」(段落【0018】)との記載があり,図1は下記のと
おりである。

【図1】
・ 甲19 特開平5−184443号公報 ,
( 発明の名称 ショーケー

スの照明灯カバー支持構造」,出願人 富士電機株式会社,公開日
平成5年7月27日)の発明の詳細な説明には ,「…蛍光灯である
照明灯7が懸垂支持されている…」 段落 0003 】 と記載され,
( 【 )
下記図1のとおり,略台形状部材の頂部に円形が密接した形状とし
て描かれている。

【図1】
・ 甲20(特開平10−80346号公報,発明の名称「飲食カウ
ンター用の取付け窓部材及び該窓部材を備える飲食カウンター並び
にその製造方法 」,出願人 石野産業株式会社,公開日 平成10年
3月31日)には,明細書中には関連記載はないものの,下記図1
のとおり,台形状の部材等が,ガイドレール5の下部に描かれてい
る。

【図1】
(c) しかし,上記によれば,甲16には,図1の把手19や,ロー
タリーダンパー28についても,原告が蛍光管であると主張する形
状とよく似た形状に描かれている。また,下記のとおり,本件特許
発明1・2が記載された特許公報(甲10)においても,蛍光灯2
3は単なる円形に描かれている(図3 )。これによれば,必ずしも
原告主張の形状の部材は蛍光管には限られず,別の形状に描かれる
こともあるということができる。加えて,甲1は,本来,照明に関
わる構成を開示する文献ではなく,上記甲16∼19と異なり明確
にその旨の記載があるものでもない。そうすると,甲1の図1に描
かれたU字状支持枠F1の上部左右に,台形状の図形と,これに密
接している,内部に二つの点を有する円形の部材は,蛍光管を意図
して描かれた可能性もあるとはいえるものの,蛍光管であると断定
することもできないというべきである。原告の上記主張は採用する
ことができない。
(d) さらに原告は,甲1の図1の蛍光管と主張する円形の内部には ,
2つの「点」が記載されているところ,甲29∼31によれば,こ
れらの「点」は通電用のピンであり,このことは図形が照明である
ことを当業者に強く認識させると主張する。
甲29( インターネットサイト「フリー百科事典『ウィキペディ
ア(Wikipedia)』 http://ja.wikipedia.org)に掲載の「蛍光灯」に関す
」(
る記載及び写真) 甲30 「絵でひく英和大図鑑ワーズ・ワード(コ
, (
ンパクト版)」株式会社同朋舎出版1997年6月20日発行,2
32頁 ),甲31(東芝ライテック株式会社蛍光ランプ「メロウラ
イン」FHF50EX-N の仕様図面)等からは,円形内部に2つの「点」
を記載したものが一般的に蛍光管を表わすものとは認められない
上,そもそも原告が蛍光管であると主張して提出した甲16∼甲2
0には,上記のような円形内部の2つの「点」は描かれていないも
のである。原告の上記主張は採用することができない。
(キ) 実施例2に記載された発明〔甲第1号証の第2発明〕の意義
上記(ア),(ウ)によれば,甲第1号証の第2発明は,循環搬送路1a ,
1bの上方には2つの注文用トレーT,Tを個別に前後方向に往復動す
る2つの独立した往復注文搬送装置3a,3bが並設され(段落【00
44】,これら往復注文搬送装置3a,3bは,第1実施形態と同じ構

成である(段落【0045】。これら記載及び上記(ア),(ウ)の摘記に

よれば,審決が甲第1号証の第2発明の内容に関し,審決書8頁のとお
り認定したことに誤りはない。
(ク) 実施例3に記載された発明〔甲第1号証の第3発明〕の意義
上記(ア),(エ)によれば,甲第1号証の第3発明は,2つの吊り下げ
式往復注文搬送装置30a,30bをリニアモータ駆動の吊り下げ式と
したものであり(段落【0054】,これら記載及び上記(ア),(エ)の

摘記によれば,審決が甲第1号証の第3発明の内容に関し,審決書8∼
9頁のとおり認定したことに誤りはない。
イ 上記によれば,原告主張の取消事由2は理由がなく,また審決が認定し
た甲第1号証の第1発明∼第3発明の内容にも誤りがない。
3 取消事由3(無効理由Aについての判断の誤り)について
(1) 原告は,審決が,①相違点1bにおいて,支持板が「フレームが設けら
れた側のレーンの上方においてレーンに沿って配置される」構成が,甲第1
号証の第1発明と実質的に相違すると判断しているが,この構成は,甲1号
証の第2発明,甲2に記載されているから,これらを甲第1号証の第1発明
に組み合わせて相違点1bの構成とすることは容易である,②相違点1cの
支持板が透光性を有する構成は,同様の構成が甲3,甲4に記載されている
上,甲21,22に示される如く周知であるから,相違点1cの構成も設計
事項にすぎず,容易想到性を否定した審決の判断は誤りである旨主張する。
これに対し被告は,上記①の相違点1bにおける判断について,審判請求
人である原告は,甲第1号証の第1発明を主引例とし,これに甲第1号証の
第2発明,甲2を組み合わせる構成を無効理由として主張していないから,
審決取消訴訟においてこれを取消事由とすることはできないと主張する。
(2) 相違点1bの判断に関し
ア 本件無効審判請求において,本件特許発明1について審判請求人である
原告が審判請求書(平成20年9月12日付け,甲11)で主張した無効
理由Aは,本件特許発明1 無効審判請求書では 本件特許発明請求項1 」
( 「 )
と甲第1号証の第1発明(無効審判請求書では「証拠①の実施例1」)と
の対比として,相違点ホ(審決の相違点1a ),相違点ヘ(審決の相違点
1b),相違点ト(審決の相違点1c)が存在するところ,相違点ヘ(相
違点1b)については,証拠⑦(審判甲7・本件甲7 ),証拠⑧(審判甲
8・本件甲8)の技術を参考にすれば当業者が容易に想到できるというも
のである(甲11,12頁17行∼21行)

そして,審判被請求人である被告は,これを前提として,相違点ヘ(相
違点1b)につき審判事件答弁書(甲12)において反論し,審決も,相
違点1bについて,甲7,甲8を参考として容易想到でないと判断したも
のである。
したがって,相違点1bの判断に当たり,甲第1号証の第1発明を主引
例とし,これに甲第1号証の第2発明,甲2を適用することは,本件無効
審判において無効理由として審理・判断されていないから,これらの組合
せによる相違点1bに係る構成の容易想到を主張し,審決の結論には誤り
があるとすることは許されないというべきである。したがって,原告のこ
の点に関する主張は失当である。
イ 原告の主張に対する補足的判断
この点に関し原告は,平成21年3月3日付け「口頭審理陳述要領書」
(甲13)において ,「案内レールがフレームから水平に延出して設けて
成る」点が,甲第1号証の第1発明及び第2発明により明らかであり,甲
2においても同様である旨主張しているから,新たな無効理由を主張する
ものではないと反論する。
しかし,上記「口頭審理陳述要領書 」(平成21年3月3日付け,甲1
3)には,以下の記載がある。
「② 被請求人(判決注: 非請求人」は誤記)答弁書における主張への反論

(1) 証拠①(判決注:本件甲1)の実施例1および2におけるフレーム(往
復注文搬送装置2の筐体)が水平環状であるとの主張への反論
被請求人は,証拠①の実施例1および2におけるフレーム(往復注文
搬送装置2の筐体)が水平環状であると主張しています。…下記参考図
3のように構成され,まさしく本件特許の実施例に記載されたフレーム,
支持板及び駆動装置による構成態様と同一となるものであります。尚,
このことは証拠②(判決注:本件甲2)においても同様であります。…
以上のことから,証拠①の実施例1および2におけるフレーム(往復
注文搬送装置2の筐体)が水平環状であるとの主張は失当であるととも
に,フレームが無端チェンC1,C2をそれぞれ収容しているフレーム
部とした場合においては,本件特許請求項1の『支持板がフレームから
水平に延出して設けられている』構成を有していることは明らかであり
ます。(4頁4行∼6頁5行)

上記記載によれば,原告主張の「口頭審理陳述要領書」における記載箇
所は,何ら甲第1号証発明を主引例としてこれに甲第1号証の第2発明,
甲2を組み合わせることに関するものではないことが明らかであるから,
原告の上記主張は採用することができない。
ウ 上記のとおり,甲第1号証の第1発明を主引例とし,甲第1号証の第2
発明,甲2を副引例とする相違点1bの容易想到性については本訴におい
て主張することが許されないものではあるが,念のため,原告主張の甲第
1号証の第1発明を主引例として,これに甲第1号証の第2発明,甲2を
組み合わせた場合の相違点1bの容易想到性について検討する。
(ア) 本件特許発明1・2について
本件明細書(特許公報〔甲10〕)には,以下の記載がある。
a 特許請求の範囲
前記第3,1( 2)のとおり
b 発明の詳細な説明
・ 「本発明は,飲食物を搬送するための搬送装置であって,特に,回転
寿司などで使用される循環搬送装置に取り付けられる搬送装置に関す
るものである。(段落【0001】
」 )
・ 「周知のとおり,回転寿司などの飲食店において,循環搬送装置が使
用されている。このような店舗では,客は,希望の飲食物が回ってこ
ない場合には,別途インターホンなどで注文して循環搬送装置により
飲食物を流して貰うか,直接店員に持ってきてもらうことになる。と
ころが,注文したものを循環搬送装置に載せて搬送する場合,客に届
くまでに時間がかかってしまう。一方,店員が搬送する場合には,手
間がかかってしまう不都合があった。
このような問題を解決するために,下記特許文献1において,注文
品を別に搬送する搬送装置が提案されている。この特許文献1に記載
の発明では,飲食物搬送装置(1)とは別に注文搬送装置(2)が設
けられており,注文品を客にすばやく届けることができる。…」
(段落
【0002】)
・ 「しかしながら,特許文献1に記載の注文搬送装置(2)は,既存の
循環搬送装置に適用することができず,設備の変更にコストがかかっ
てしまう。
また,特許文献1に記載の発明の場合,注文搬送装置(2)と飲食
物搬送装置(1)とを照らす蛍光灯についてはなんら考慮がなされて
おらず,注文搬送装置(2)の下側に配置される飲食物搬送装置(1)
のトレーなどに照明が届かないおそれがある。なお,上記括弧書きの
数字は,特許文献1中の符号を示す。(段落【0003】
」 )
・ 「本発明が解決しようとする課題は,簡易に既存の循環搬送装置に取
り付けることが可能であり,照明が適切に当てられる個別搬送装置を
提供することにある。(段落【0004】
」 )
・ 「本実施例の個別搬送装置1は,飲食店,典型的には回転寿司で使用
されている既存または既設の循環搬送装置3に着脱可能に取り付けら
れる。
循環搬送装置3は,たとえば,図1や図5に示すように,平面視略
コ字形の台5の上面に形成された溝に,無端状のクレセントチェーン
9が配置されて構成されている。(段落【0012】
」 )
・ 「クレセントチェーン9は,コ字形の台5の開放両端辺部5a,5b
および中央辺部5cにおいて,それぞれ往路と復路となる平行な2列
のレーンを形成するよう配置されており,台5の上面にはクレセント
チェーン9により連続した循環路11が形成されている。
具体的には,台5の開放両端辺部5a,5bには,それぞれ左右に
離間して前後方向に沿う2列のレーン(11a,11b ) (11c,

11d)が形成されており,台5の中央辺部5cには,前後に離間し
て左右方向に沿う2列のレーン11e,11fが形成されて,連続し
た循環路11が構成されている。
なお,クレセントチェーン9には,モータに接続されたスプロケッ
ト(不図示)が噛み合わされており,モータの回転に伴ってクレセン
トチェーン9は循環する。(段落【0013】
」 )
・ 「また,循環搬送装置3は,台5の開放両端辺部5a,5bが店内に
配置される一方,中央辺部5cが調理場に配置されて,台5の開放両
端辺部5a,5bと中央辺部5cとは壁13などにより仕切られてい
る。そして,飲食物が載せられた食器皿が,調理場内においてクレセ
ントチェーン9の受け板9aに載せられて,食器皿は店内を回送する。
なお,図3に示すように,台5の開放両端辺部5a,5bの左右両
側にはそれぞれ板状のカウンターテーブル15が前後方向に沿って設
けられていると共に,図1に示すように,前後方向に離隔して客席1
7,17,…が配置されている。(段落【0014】
」 )
・ 「図2および図3に示すように,台5の開放両端辺部5a,5bには,
その左右方向中央部に,複数本の支柱19,19,…が前後方向に離
間して立設されている。つまり,台5の開放両端辺部5a,5bには,
クレセントチェーン9により形成された平行な2列のレーン(11a,
11b) (11c,11d)の間に複数本の支柱19が前後方向に離

隔して設けられている。(段落【0015】
」 )
・ 「支柱19の上端部には,下方へ開口する断面略コ字形の架台21が,
前後方向に沿って設けられており,この架台21に照明灯が保持され
ている。
本実施例では,図3に示すように,支柱19を挟んだ左右両側に前
後方向に沿って蛍光灯23,23が配置されており,台5の開放両端
辺部5a,5bに設けられた各レーン11a,11b,11c,11
dを照らしている。
また,本実施例では,各支柱19の中央部を通るように,矩形板状
の仕切板25が前後方向に沿って設けられている。 段落 0016】

( 【 )
・ 「本実施例の個別搬送装置1は,支柱19に固定される係止具31と,
この係止具31に取り付けられるフレーム39と,このフレーム39
に設けられる支持板71と,フレーム39内に設けられるベルト75
と,このベルト75を回転させるモータ79とを備える 。 (段落【0

017】)
・ 「このように各支柱19に固定された係止具31に,フレーム39が
取り付けられる。
なお,支柱19の右側に設けられる個別搬送装置1Aのフレーム3
9は,各支柱19の右側に設けられた係止具31に取り付けられ,支
柱19の左側に設けられる個別搬送装置1Bのフレーム39は,各支
柱19の左側に設けられた係止具31に取り付けられる 。 (段落【0

021】)
・ 「フレーム39は,台5の開放両端辺部5a,5bに前後方向に沿っ
て配置され,台5の開放両端辺部5a,5bの前後方向の寸法とほぼ
同じまたは若干長い寸法とされている。
本実施例では,フレーム39は,係止具31に引っ掛けられて取り
付けられる第一フレーム41と,この第一フレーム41に固定される
第二フレーム43とを備える。(段落【0022】
」 )
・ 「第一フレーム41の底片45には,長尺な矩形板状の支持板71が
固定されている。支持板71は,透明な板材とされ,本実施例では,
透明なアクリル板により形成されている。支持板71は,その左端部
が第一フレーム41の底片45の溝53にはめ込まれて第一フレーム
41にネジ73で固定されている。(段落【0030】
」 )
・ 「支持板71が第一フレーム41に取り付けられた状態では,支持板
71はフレーム39より右側へ水平に延出しており,支持板71のほ
ぼ真下に循環搬送装置3のレーン11b(11d)が配置されており,
図3に示すように,蛍光灯23,支持板71,およびレーン11b(1
1d)が上下方向に沿って配置されている。(段落【0031】
」 )
・ 「フック89には,矩形板状のトレー103が着脱可能に設けられる。
トレー103には,二つの車輪105,105が,前後方向に離間し
て設けられており,各車輪105は,左右方向に沿う軸107まわり
に回転可能とされている。また,トレー103の上面には,食器皿が
載せ置かれる二つの浅い円形の凹所103aが前後に離間して形成さ
れている。(段落【0039】
」 )
・ 「トレー103は,車輪105,105が支持板71に接地された状
態で支持板71に載せ置かれて,その一側端部にフック89の他片8
9bが引っ掛けられる。この状態においてトレー103の上面は,水
平に配置されている。
なお,本実施例では,下側のベルト75bに,二つのフック89,
89が前後方向に離間して取り付けられており,各フック89にトレー
103がそれぞれ取り付けられている。(段落【0040】
」 )
・ 「このように設けられたトレー103は,ベルト75が回転すること
で前後方向に沿って移動が可能とされる。
つまり,モータ79の回転軸79aが正または逆回転することで,
ベルト75が正または逆回転し,これに伴って,下側のベルト75b
に取り付けられたフック89が前後方向に沿って移動し,トレー10
3は往復動する。
なお,トレー103の移動速度は,クレセントチェーン9の速度よ
り速くすることが可能である。(段落【0041】
」 )
・ 「このような構成の本実施例の個別搬送装置1が取り付けられた循環
搬送装置3の循環路11に希望する飲食物が流れていない場合,客は,
インターホンや液晶画面から希望する飲食物を注文する。なお,直接
店員に注文してもよい。
そして,店員は,調理場において調理したものを食器皿に載せ,そ
の食器皿をトレー103に載せ置き,トレー103を移動させればよ
い。(段落【0042】
」 )
・ 「本実施例の個別搬送装置1は,既設の循環搬送装置に取り付けるこ
とができ,設備の変更を安価に行うことができる。
また,本実施例では,ベルト75やローラ65を収容したフレーム
39を支柱19側に配置し,透明な支持板71をフレーム39より外
側へ延出させて,レーン11a(11c),11b(11d)の上方に
透明な支持板71を配置している。
これにより,支柱19の上端部に設けられた照明23の光がフレー
ム39などに遮られることなく,支持板71を介して下側のレーン1
1a(11c),11b(11d)まで照らすことができ,飲食物が載
せられた食器皿を適切に照らすことができる。したがって,照明を増
やす必要がない。
さらに,レーン11a(11c ),11b(11d)と照明23との
間には,薄い支持板71とトレー103とが配置されるだけであり,
レーン11a(11c),11b(11d)と照明23との間のスペー
スを有効に利用することが可能である。
つまり,本実施例の個別搬送装置1を循環搬送装置3に取り付けた
場合でも,循環搬送装置3のレーン11a,11b,11c,11d
を流れる食器皿が取り難くなってしまうことがなく,トレー103に
より運ばれる食器皿も取り難くなることがない。(段落【0044】
」 )
c 図面(かっこ内は【図面の簡単な説明】の記載である)
・ 【図1】(本発明の個別搬送装置の一実施例が取り付けられた循環搬送
装置を示す平面図である。)
・ 【図3】(図1の一部の正面図である。)
・ 【図5】(図1の個別搬送装置の一部を断面にした斜視図である。)
・ 【図6】(図5の拡大断面図である。)
d 上記a∼cによれば,循環搬送装置を用いて飲食物を循環搬送する
回転寿司などの飲食店においては,客による個別の注文に対応し得る
よう,従来,注文品を別に搬送する個別搬送装置を,循環搬送装置の
上側に配置したものは知られていたが,この知られた個別搬送装置は
既存の循環搬送装置には適用することができないものであり,また搬
送装置を照らす蛍光灯についてもなんら考慮がされていなかったた
め,下側に配置される循環搬送装置のトレーに照明が届かないおそれ
があるという問題があった。
本件特許発明1・2は,この課題を解決することを目的とし,上記
特許請求の範囲記載の構成を有するところ,特に,循環搬送装置の台
に設けられた平行な2列のレーンの間に立設されて照明を保持する支
柱に,直線状のフレームを取り付け,このフレームから水平に延出し
てレーンの上方に沿って個別搬送装置のトレーを往復動するための透
光性を有する支持板を配置した構成としている。
これにより,既存の循環搬送装置に個別搬送装置を取り付けること
が可能となり,また支柱に保持された照明の光は,個別搬送装置の支
持板を透過し,循環搬送装置に適切に照明を当てることができるとす
るものである。
(イ) 上記(ア)のとおり,本件特許発明1は,循環搬送装置上に個別搬送
装置を取り付けるに当たり,照明が配慮されていなかったことを課題と
し,循環搬送装置に対する照明の障害とならないように,個別搬送装置
の支持板に透光性を持たせ,これにより循環搬送装置を搬送される飲食
物等に,支柱に保持された照明の明かりが適切に当てられるという意義
を有するものである。すなわち,本件特許発明1における「支持板が,
フレームから水平に延出して,フレームが設けられた側のレーンの上方
においてレーンに沿って配置される」とする相違点1bの構成は,支柱
に保持された照明(相違点1a)と,透光性を有する支持板(相違点1
c)の構成と,それぞれ相互に関連し合うことにより,上記意義を有す
ることを規定したものである。
したがって,審決が相違点1bとして認定した,「本件特許発明1で
は,支持板が,フレームから水平に延出して,前記フレームが設けられ
た側のレーンの上方においてレーンに沿って配置されるのに対し,甲第
1号証の第1発明では,そのように構成されていない点」とは,請求項
に記載された「支柱に保持された照明」との関係を踏まえてその配置を
表したものであって,支柱に取り付けられたフレームから水平に延出し
た支持板が,支柱に保持された照明がレーンを照らすのに障害となる位
置である,レーンの上方においてレーンに沿って配置されているという
構成を特定したものということができる。
これに対し,甲第1号証の第2発明は,甲1の図4記載のとおり,往
復注文搬送装置の案内レール(支持板)が循環搬送路から成る往路及び
復路(レーン)の上方に位置することについては記載されている。しか
し,既に検討したとおり,甲1の循環型飲食物搬送装置は照明について
考慮された装置ではなく,甲第1号証の第2発明の記載された甲1の図
4記載の装置の上部には,照明に当たりうるものの記載もないから,甲
第1号証の第2発明は,照明が存在することを前提として,支持板とレー
ンとの配置関係を特定したものではない。そうすると,甲第1号証の第
2発明も,甲第1号証の第1発明と同様に ,「本件特許発明1では,支
持板が,フレームから水平に延出して,前記フレームが設けられた側の
レーンの上方においてレーンに沿って配置されるのに対し,甲第1号証
の第2発明では,そのように構成されていない点」との相違点2b(甲
第1号証の第1発明の相違点1bと同じ内容)の構成を有しないという
ことができる。
(ウ) また,甲2 意匠登録第1256941号公報,
( 意匠に係る物品 搬

送機械 」,意匠権者 株式会社石野製作所,意匠公報発行日 平成17年
11月28日)には,以下の記載がある。
a 意匠の説明
・ 「本意匠は,『部分意匠として意匠登録を受けようとする部分の部分拡
大斜視図』及び『使用状態参考図』に示すように,飲食物等物品の循環
搬送を行うクレセントチェーンによる搬送路の上方にチェーン駆動によ
る搬送トレーの運搬路を設けた構成を有するもので,当該搬送トレー運
搬路は主に個別注文に応じて所定の位置まで直線状に物品を搬送するた
めに使用される。実線で表された部分が,部分意匠として意匠登録を受
けようとする部分である。『E−E断面図 』 『A−A,B−B間のE−

E拡大断面図』 『内部機構を省略したA−A,B−B,C−C間のD−

D拡大断面図』 『部分意匠として意匠登録を受けようとする部分の部分

拡大斜視図』及び『A−A間のF−F拡大断面図』を含めて部分意匠と
して意匠登録を受けようとする部分を特定している。一点鎖線は,部分
意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界線の
みを示す線である。『部分拡大参考斜視図』において,網点部は,部分
意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」
b 図面
・ 【部分意匠として意匠登録を受けようとする部分の部分拡大斜視図】
・ 【内部機構を省略したA−A,B−B,C−C間のD−D拡大断面図】
・ 【斜視図】
・ 【使用状態参考図】
c 上記a,bによれば,甲2は,飲食物を循環搬送する搬送機械に関
する意匠登録であるところ,その内部機構を省略したA−A ,B−B ,
C−C間のD−D拡大断面図,使用状態参考図を見ると,甲1の図4
(甲第1号証の第2発明)と同様に,下部に無端状循環搬送路を配し ,
上部に搬送装置を配する装置が描かれている。しかし,甲2にも,照
明に該当すると解すべき記載はないから,照明が存在することを前提
として支持板とレーンの配置関係を特定したものではないということ
ができる。
(エ) 以上の検討によれば,甲第1号証の第2発明,甲2は,いずれも照明
の存在を前提としておらず,照明との配置関係を前提として特定された本
件特許発明1と甲第1号証の第1発明との相違点1bの構成を備えるもの
ということはできない。
したがって,原告の主張する,甲第1号証の第1発明に甲第1号証の第
2発明,甲2に記載の発明を適用することにより,相違点1bに係る構成
を採用することが当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知
識を有する者)に容易に想到し得たとすることはできない。原告の上記主
張は採用することができない。
(3) 相違点1cについての判断に関し
原告は,本件特許発明1の支持板が透光性を有するとの相違点1cの構成
に関し,下方に配された物に対し遮光するのを解消するために,支持板に透
光性の材質を採用することは,甲3,4(審判甲3,4)に同様の構成が記
載されているほか,甲21,22に記載の如く周知技術であるとして,審決
が相違点1cについて容易想到性を否定した判断は誤りであると主張する。
ア 甲3(特開平9−37915号公報,発明の名称「保温機構を備えた回
転飲食台,保温機構および冷気循環機構を備えた回転飲食台」,出願人 日
本クレセント株式会社,公開日 平成9年2月10日)には,以下の記載
がある。
(ア) 発明の詳細な説明
・ 「また,保温機構の上方に載置板56が配設されている 。 (段落【00

39】)
・ 「本例において,載置板56は仕切板30に突設されている。(段落【0

040】)
・ 「この載置板56により,冷蔵コンベア32上の冷蔵商品を取分けて載
置させる取皿を,この載置板56上に載置させることができ,冷蔵商品を
取分け易くすることができると共に,保温機構のクレセントチェーン20
の上方を被覆し,クレセントチェーン20上の通常商品および保温商品を
チリ,ほこり等から保護でき,冷蔵コンベア32上から取分ける冷蔵商品
が,保温機構のクレセントチェーン20の商品上に落下することがなく,
衛生上極めて有効である。(段落【0041】
」 )
・ 「また,載置板56は保温機構のクレセントチェーン20上で巡回搬送
されるケーキ,コーヒーボトル等の商品を見易くするため,透明素材によ
り成形することが望ましく,ガラスが最適である。(段落【0042】
」 )
・ 「また,本実施の形態において,載置板56は仕切板30に突設されて
いるが,クレセントチェーン20上方に支柱(図示略)を介して配設させ
ることは自明である。(段落【0058】
」 )
(イ) 図面(かっこ内は【図面の簡単な説明】の記載である)
・ 【図1】(本発明に係る保温機構備えた回転飲食台の側面図。)
・ 【図5】(本発明に係る保温機構および冷気循環機構を備えた回転飲食台
の一部破断斜視図。)
(ウ) 上記(ア),(イ)によれば,甲3は,クレセントチェーン上を巡回搬
送される飲食物を見易くするため,取皿を載置する載置板56を透明素
材により成形するのが望ましい,とするものである。
イ 甲4(特開平11−46959号公報,発明の名称「飲食物供給用循環
型搬送路」 出願人 株式会社石野製作所,公開日 平成11年2月23日)

には,以下の記載がある。
(ア) 特許請求の範囲
・ 「 請求項1】 飲食物を飲食客に提供する循環型搬送路上には,不動の

スライド板が設けられ,前記スライド板上にはマグネットと反応する基材
と連動して移動する飲食物容器が載置されるとともに,スライド板下部に
は,循環移動するマグネットが設けられていることを特徴とする飲食物供
給用循環型搬送路。」
(イ) 発明の詳細な説明
・ 「本発明の飲食物供給用循環型搬送路は,前記スライド板が透光性を有す
る部材から成り,前記搬送路内に照明手段が設けられていることが好まし
い。このようにすれば,搬送路に装飾効果と高級感を与えることができる。」
(段落【0015】)
・ 「本実施例1の飲食物供給用循環型搬送路は,図2および図3に示すよう
な構成とされており,搬送路周辺を囲むハウジング7の上面部に,寿司皿
3を配置して搬送する,平滑性を有した透明なガラス板2がスライド板と
して設けられ,前記ガラス板2は,前記ハウジング7に搬送路内を密封す
るように接着,一体化されており,前記ガラス板2直下の搬送路中央部に
は,通電により磁化する電磁石14が複数,所定の間隔にて設けられ,こ
の電磁石14は,搬送路内に設けられたチェーンレール13に沿って,搬
送路内を循環移動するようにされている駆動チェーン12に取付け治具に
より取付けられており,前記駆動チェーン12の移動に伴って搬送路内を
循環移動するようになっている。(段落【0019】
」 )
・ 「また,本実施例1においては,図2に示されるように,前記寿司皿3の
椀下面部に,各寿司皿3に独自に付与されたIDに基づくバーコード4が
設けられており,このバーコード4を検出,読み取るための読み取り装置
15が,前記ガラス板2の下面に当接するように,搬送路側部位置に設け
られている。(段落【0021】
」 )
・ 「また,前記寿司皿3の下面中央部には,寿司皿3と接着一体化された前
記電磁石14からの磁力に反応する金属片5が設けられており,さらに寿
司皿3の下端部には,前記ガラス板2との摩擦を低減させるための突起部
6が設けられている。(段落【0022】
」 )
(ウ) 図面(かっこ内は【図面の簡単な説明】の記載である)
・ 【図2】(本発明の実施例1の飲食物供給用循環型搬送路の構成を示す断
面模式図である。)
・ 【図3】(本発明の実施例1の飲食物供給用循環型搬送路を示す側面図で
ある。)
・ 【図5】(本発明の実施例2の飲食物供給用循環型搬送路の構成を示す断
面模式図である。)
(エ) 上記によれば,甲4は,寿司皿を搬送する搬送路上に設けられたス
ライド板を透明なガラス板2とし,搬送路下面に設けた読み取り装置で
寿司皿に付与されたバーコード4を装置15により読み取り可能とした
ものである。
ウ 甲21(特開2002−107045号公報,発明の名称「オープンシ
ョーケース」 出願人 三洋電機株式会社,公開日 平成14年4月10日)

には,以下の記載がある。
(ア) 特許請求の範囲
・ 「 請求項1】 前面に開口を有する断熱箱を仕切板にて仕切ることにより

貯蔵室とダクトとを形成すると共に,冷却器により冷却された冷気を送風
機にて前記ダクトを介して前記貯蔵室内に供給し,この貯蔵室内には複数
段の棚装置を設けてなるオープンショーケースにおいて,前記棚装置は,
棚板と,この棚板の下側の後部に取り付けられた長手方向部材とを備え,
この長手方向部材に形成した冷気通路を前記ダクトに設けた孔に連通させ
ると共に,前記長手方向部材の前面には吹出口を形成して,この吹出口か
ら前記棚板の下面に沿って冷気を吹き出させることを特徴とするオープン
ショーケース。」
・ 「 請求項2】 前記棚板は,透明板より形成されていることを特徴とする

請求項1のオープンショーケース。」
(イ) 発明の詳細な説明
・ 「請求項2の発明によれば,請求項1に加えて,前記棚板を,透明板より
形成したので,透明板より形成された棚板に生じる結露又は曇りを効果的
に防止することができると共に,透明板の下方の商品を明るくすることが
できる。(段落【0010】
」 )
(ウ) 図面(かっこ内は【図面の簡単な説明】の記載である)
・ 【図2】(図1のオープンショーケースの側断面図である。)
(エ) 上記(ア)∼(ウ)によれば,甲21は,オープンショーケースにおい
て,棚板を透明として下方の商品を明るくすることができる,とするも
のである。
エ 甲22(特開平5−180557号公報,発明の名称「冷凍冷蔵庫」,
出願人 株式会社日立製作所,公開日 平成5年7月23日)には,以下の
記載がある。
(ア) 発明の詳細な説明
・ 「さらに,照明手段は冷蔵室3の上面ドア側のくぼみ部10内に設けられ,
しかも,棚板7は透明なガラス板であるため,冷蔵室3の室内がドア側か
ら,即ちユーザからみて手前側から全体に照明されることになり,収納さ
れている品物が手前側から照明されることになって品物の見分けがつきや
すくなる。(段落【0042】
」 )
(イ) 図面(かっこ内は【図面の簡単な説明】の記載である)
・ 【図1】 本発明による冷凍冷蔵庫の一実施例の内部を示す斜視図である。
( )
(ウ) 上記(ア),(イ)によれば,甲22は,冷蔵室の棚板7を透明なガラ
ス板とし,冷蔵室の上面に設けた照明手段により,全体が照明できるよ
うにしたものである。
オ 上記ア∼エのとおり,甲3,甲4,甲21,甲22には,下方に配され
た物に対し遮光するのを解消するために,物品を支持する板を透光性の材
質とする,本件特許発明1の透光性を有する支持板と類似した構成が示さ
れている。
しかし,既に検討したとおり,本件特許発明1において,支持板を透光
性にするという相違点1cに係る構成が採用されているのは,支持板が,
フレームから水平に延出して,フレームが設けられた側のレーンの上方に
おいてレーンに沿って配置されるため ,支持板が透光性を有していないと,
支柱が有する照明の明かりが遮られ,飲食物を搬送するレーンに照明が当
たらないためである。
一方,甲第1号証の第1発明は,照明について考慮した搬送装置ではな
く,フレームから水平に延出した支持板が,レーンの上方においてレーン
に沿って配置されているために支持板によりレーンを照らす明かりが遮ら
れる,との問題を有していない。
そうすると,甲第1号証の第1発明において,支持板がレーンに対する
照明を遮るという問題は考えられないのであるから,当該問題を解決する
ための手段である,支持板を透光性を有するものにするという,相違点1
cの構成を採用する動機付けはないといわざるを得ない。
したがって,審決が相違点1cの構成に関して容易想到性を否定した判
断に誤りはなく,甲3,甲4,甲21,甲22により,相違点1cに係る
構成につき容易に想到できるとの原告の上記主張は採用することができな
い。
4 取消事由4(相違点2b認定の誤り)について
原告は,審決が,本件特許発明1と甲第1号証の第2発明との相違点2bに
つき ,「本件特許発明1では,支持板が,フレームから水平に延出して,前記
フレームが設けられた側のレーンの上方においてレーンに沿って配置されるの
に対し,甲第1号証の第2発明では,そのように構成されていない点。(17

頁7行∼9行)として,甲第1号証の第1発明との相違点1bと同じ構成を認
定した点につき,甲第1号証の第2発明は ,「フレームが設けられた側のレー
ンの上方においてレーンに沿って配置される」構成を有するから,審決の認定
した相違点2bは,相違点ではなく一致点である旨主張する。
しかし,甲第1号証の第2発明が,相違点2bの構成を備えているといえな
いことについては,上記3(取消事由3)(2)ウ(イ)において検討したとおり
である。原告の上記主張は採用することができず,取消事由4は理由がない。
5 取消事由5(無効理由Bに関する判断の誤り)について
原告は,取消事由4が成り立つことを前提として,相違点1cと同内容の相
違点2cについて,取消事由3と同様の理由により,その構成をとることに格
別の困難性はないから,本件特許発明1は甲第1号証の第2発明から当業者が
容易に発明することができた旨主張する。
しかし,取消事由3・4につき理由がないことにつき上記検討のとおりであ
るから,原告の主張は採用することができず,取消事由5は,理由がない。
6 取消事由6(無効理由Cに関する判断の誤り)について
原告は,本件特許発明1と甲第1号証の第3発明との相違点として審決が認
定した,相違点1b,同1cと同内容の相違点3b,同3cにつき,相違点3
bについては,甲第1号証の第1発明を適用することにより容易想到であり,
相違点3cについては,相違点1cと同じ理由により容易想到であるから,審
決の判断は誤りである旨主張する。
被告は,相違点3bが容易想到である理由として原告が主張する甲第1号証
の第3発明を主引例としてこれに甲第1号証の第1発明を組み合わせることに
ついては,審判段階で無効理由とはされておらず,本件訴訟において主張する
ことはできないとし,原告もこれに反論していない。
上記取消事由3において検討したのと同じく,相違点3bが容易想到である
理由として原告が主張する,甲第1号証の第3発明を主引例として甲第1号証
の第1発明を組み合わせることについては,無効審判請求における審判請求書
には記載していなかったものである。
すなわち,審判請求書(甲11)により審判請求人である原告が無効理由C
として主張したのは,甲第1号証の第3発明と本件特許発明1とは審決の相違
点3bと同内容の「相違点へ.(審判請求書15頁18行)を有するとして,

これに証拠⑦(甲7)及び証拠⑧(甲8)を適用することにより当業者が容易
に想到できるというものである 審判請求書15頁19行∼末行) 相違点へ.
( 。
「 」
(審決の相違点3b)の判断に当たり,甲第1号証の第3発明に甲第1号証の
第1発明を適用することについては,無効審判における無効理由とはされてお
らず,これについて被請求人である被告の反論,審決の判断もされていない。
また,この点について,請求人である原告の提出した口頭審理陳述要領書(甲
13)にも何らの記載もされていない。そうすると,甲第1号証の第3発明に
甲第1号証の第1発明を適用して,相違点3cが容易想到であることについて,
原告は本件訴訟において主張することはできない。
相違点3cについても,既に検討した同内容の相違点である1cに対して述
べたとおり,容易に想到できたとはいえない。
原告の上記主張は採用することができず,取消事由6は理由がない。
7 取消事由7(相違点4b認定の誤り)について
本件特許発明1と甲第2号証の発明との対比において,審決が相違点1bと
同じ構成を相違点4bと認定した点について,原告は甲2の「搬送トレー搬送
路」は,甲第1号証の第1発明の「往復注文搬送装置2」と構成要素を同じく
するものであり,さらに フレームが設けられた側のレーンの上方においてレー

ンに沿って配置される」との構成を有しているから,相違点4bは,本件特許
発明1と甲第2号証の発明との相違点ではなく一致点である旨主張する。
しかし,既に検討したとおり,相違点1bの構成を甲第2号証の発明が有し
ているとはいえないから,これを理由として相違点4bも相違点でないとする
原告の上記主張は採用することができない(審決が相違点4a∼4cの認定に
おいて,「甲第1号証の第1発明では」と記載している点〔20頁下8行,下
3行,21頁1行〕は ,「甲第2号証の発明では」の誤記であることに当事者
間に争いがない。平成21年7月9日の本件第1回弁論準備手続期日調書)。
8 取消事由8(無効理由Eに関する判断の誤り)について
原告は,取消事由7が成り立つことを前提として,相違点1cと同じ相違点
4cについて,取消事由3と同様の理由により,その構成をとることに格別の
困難性はないから,本件特許発明1は甲第2号証の発明から当業者が容易に発
明することができた旨主張する。
しかし,取消事由7が成り立たないことは上記7で検討したとおりであり,
原告の上記主張は採用することができない。また,取消事由3に理由がないこ
とも既に検討したとおりであり,これと同様の理由により,相違点4cに係る
構成を採用することが容易想到とはいえない。
原告の上記主張は採用することができず,取消事由8は理由がない。
9 取消事由9(本件特許発明2に関する判断の誤り)について
本件特許発明1の構成を限定する内容の本件特許発明2について,原告は,
限定した構成を採用することも容易であるから,本件特許発明2を行うことが
容易でないとした審決の判断は誤りである旨主張する。
しかしながら,取消事由2∼8で検討したとおり,本件特許発明1を想到す
ることが当業者にとって容易なことと認めることはできない。原告の上記主張
は採用することができず,取消事由9は理由がない。
10 結語
以上のとおりであるから,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。
よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所 第2部
裁判長裁判官 中 野 哲 弘
裁判官 今 井 弘 晃
裁判官 真 辺 朋 子

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