平成20(行ケ)10343審決取消請求事件
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裁判所 |
請求棄却 知的財産高等裁判所
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裁判年月日 |
平成21年8月27日 |
事件種別 |
民事 |
当事者 |
被告Y 原告大日本塗料株式会社三原研自
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法令 |
特許権
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キーワード |
審決37回 実施9回 無効6回 進歩性1回 無効審判1回
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主文 |
原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。 |
事件の概要 |
本件は,原告が,下記1のとおりの手続において,原告の有する本件特許に対す
る被告の無効審判請求について,特許庁が,本件特許の請求項1ないし4に係る発
明の要旨を下記2のとおり認定した上で,同発明についての特許を無効とする旨の
別紙審決書(写し)の本件審決(その理由の要旨は下記3のとおり)には,下記4
のとおりの取消事由があると主張して,その取消しを求める事案である。 |
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判決文
平成21年8月27日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成20年(行ケ)第10343号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 平成21年6月25日
判 決
原 告 大 日 本 塗 料 株 式 会 社
同訴訟代理人弁護士 中 村 智 廣
三 原 研 自
同 弁理士 佐 々 木 一 也
成 瀬 勝 夫
被 告 Y
同訴訟代理人弁理士 西 森 正 博
主 文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
特許庁が無効2008−800030号事件について平成20年8月13日にし
た審決を取り消す。
第2 事案の概要
本件は,原告が,下記1のとおりの手続において,原告の有する本件特許に対す
る被告の無効審判請求について,特許庁が,本件特許の請求項1ないし4に係る発
明の要旨を下記2のとおり認定した上で,同発明についての特許を無効とする旨の
別紙審決書(写し)の本件審決(その理由の要旨は下記3のとおり)には,下記4
のとおりの取消事由があると主張して,その取消しを求める事案である。
1 特許庁における手続の経緯
(1) 本件特許(甲21)
-1 -
発明の名称:基板の塗装方法
出願日:平成8年10月29日(特願平8−286732号)
登録日:平成18年10月13日
特許番号:第3865087号
(2) 審判手続等
審判請求日:平成20年2月15日(無効2008−800030号)
審決日:平成20年8月13日
本件審決の結論:「特許第3865087号の請求項1ないし4に係る発明につ
いての特許を無効とする。」
原告に対する審決謄本送達日:平成20年8月25日
2 本件発明の要旨
本件審決が判断の対象とした本件発明は,本件特許に係る特許請求の範囲の請求
項1ないし4に記載された発明(以下,それぞれ,請求項の番号に従って「本件発
明1」ないし「本件発明4」という。)であるが,その要旨はそれぞれ以下のとお
りである。
【請求項1】コンベアにより搬送されている下層着色塗膜を有する基板の表面に,
該下層着色塗膜とは色調が異なるインクを部分的に制御塗着して模様付けするに際
し,平均粒子径が60∼1000nmである着色顔料が配合されているインクを使
用し,ピエゾ振動方式のインクジェットプリンターを用い,該インクジェットプリ
ンターのヘッドのノズル孔を該コンベアの幅方向に配列し,一方,柄模様に対応す
る柄パターンデータを予め記憶させたコンピューターの制御信号によって,該ピエ
ゾ振動方式のインクジェットプリンターヘッドのノズル孔に直結するインク室の壁
面のピエゾ振動素子の振動を制御してインク吐出を制御することにより,該基板の
表面に柄模様を塗装することを特徴とする基板の塗装方法。
【請求項2】ノズル孔の内径が20∼100μmであり,ノズル孔とノズル孔との
間の距離が30∼150μmであるインクジェットプリンターを用い,基板の表面
-2 -
に画質精度が50∼350dpiである柄模様を塗装することを特徴とする請求項
1記載の塗装方法。
【請求項3】コンベアの幅方向に配列したピエゾ振動方式のインクジェットプリン
ターヘッドのノズル孔列をコンベアの移動方向の前後に複数列配置し,それぞれの
ノズル孔列から異色のインクを吐出させて多色塗装することを特徴とする請求項1
又は2記載の塗装方法。
【請求項4】柄模様を塗装した塗膜の全表面にクリヤー塗料を塗装することを特徴
とする請求項1,2又は3記載の基板の塗装方法。
3 本件審決の理由の要旨
(1) 本件審決の理由は,要するに,本件発明1ないし4は,いずれも下記ア及
びイの引用例(甲1,2)に記載された各発明及び周知技術に基づいて当業者が容
易に発明することができたものであり,同発明についての特許は無効とすべきであ
るというものである。
ア 引用例1:特開平7−31929号公報(甲1)
イ 引用例2:実願平1−118436号(実開平3−57235号)のマイク
ロフィルム(甲2)
(2) なお,本件審決が引用例1に記載されていると認定した発明(以下「引用
発明1」という。)は以下のとおりである。
コンベアにより搬送されている下層着色塗膜を有する基板の表面に,該下塗着色
塗膜とは色調が異なるインクを部分的に制御塗着して模様付けするに際し,着色顔
料が配合されているインクを使用し,ソレノイドバルブの開閉によるオンディマン
ド方式のインクジェットプリンターを用い,該インクジェットプリンターのプリン
ター・ヘッドのノズルを該コンベアの幅方向に配列し,一方,柄模様に対応する柄
パターンデータを予め記憶させたコンピューターの制御信号によって,ソレノイド
バルブを開閉制御してインク吐出を制御することにより,該基板の表面に柄模様を
模様付けする基板の模様付け方法
-3 -
(3) また,本件審決が前記判断に当たって認定した本件発明と引用発明1との
一致点及び相違点(ア)ないし(ウ)は以下のとおりである。ただし,原告は,下記4
(1)のとおり,一致点の認定について争っている。
一致点:コンベアにより搬送されている下層着色塗膜を有する基板の表面に,該
下塗着色塗膜とは色調が異なるインクを部分的に制御塗着して模様付けするに際し,
着色顔料が配合されているインクを使用し,インクジェットプリンターを用い,該
インクジェットプリンターのヘッドのノズル孔を該コンベアの幅方向に配列し,一
方,柄模様に対応する柄パターンデータを予め記憶させたコンピューターの制御信
号によって,インク吐出を制御することにより,該基板の表面に柄模様を塗装する
基板の塗装方法
相違点(ア):着色顔料について,本件発明1においては「平均粒子径が60∼1
000nmである」と規定しているのに対し,引用発明1においてはかかる規定は
していない点
相違点(イ):インクジェットプリンターについて,本件発明1においては「ピエ
ゾ振動方式のインクジェットプリンター」と規定しているのに対し,引用発明1に
おいては「ソレノイドバルブの開閉によるオンディマンド方式のインクジェットプ
リンター」と規定している点
相違点(ウ):インク吐出の制御方法について,本件発明1においては「該ピエゾ
振動方式のインクジェットプリンターヘッドのノズル孔に直結するインク室の壁面
のピエゾ振動素子の振動を制御して」と規定しているのに対し,引用発明1におい
ては「ソレノイドバルブを開閉制御して」と規定している点
4 取消事由
(1) 一致点の認定の誤り(取消事由1)
(2) 相違点についての判断の誤り(取消事由2)
(3) 効果の顕著性を看過した誤り(取消事由3)
第3 当事者の主張
-4 -
1 取消事由1(一致点の認定の誤り)について
〔原告の主張〕
本件審決は,本件発明1の「塗装する」及び「塗装方法」が,引用発明1の「模
様付けする」及び「模様付け方法」に対応するとした上,本件発明1と引用発明1
とは,「下塗着色塗膜とは色調が異なるインクを部分的に制御塗着して模様付けす
る」点で一致するとともに,「基板の表面に柄模様を塗装する基板の塗装方法」で
ある点で一致すると認定した。
しかしながら,本件発明1は,インクジェットプリンターにより吐出されたイン
クをドット状にし,そのドット(網点)のかけ合わせ(密度)に基づいて種々の柄
模様を得るもの(いわゆる印刷方式)であるのに対し,引用発明1は,インクジェ
ットプリンターによって吐出されたインクの液滴を基板の表面で広げて互いに連結
させ,これによって均一な塗膜を形成して模様を得るもの(いわゆる塗布・塗工方
式)であるから,両者の模様付け方法には互いに相容れない明らかな違いがある。
そうすると,引用発明1における「下塗着色塗膜とは色調が異なるインクを部分
的に制御塗着して模様付けする」とは,本件発明1のように色調の異なるインクの
ドットを形成して模様付けをするのではなく,例えば目地部分や複数のタイル部分
で色の塗り分けを行うことを意味するものであるから,本件審決による上記一致点
の認定は誤りである。
したがって,本件審決は本件発明1と引用発明1との一致点の認定を誤り,相違
点を看過したものであり,本件発明1は引用発明1等に基づいて当業者が容易に発
明することができたものであるとの本件審決の判断及び同判断を前提とする本件発
明2ないし4についての本件審決の判断は誤りであるから,本件審決は取り消され
るべきである。
〔被告の主張〕
引用例1の特許請求の範囲に記載された発明においては,特定の溶剤を主成分と
する特定粘度のインクを用いて模様付けする点に特徴があるが,本件審決は,引用
-5 -
例1のその他の部分に開示されている従来のインクジェットプリンターも含めて,
引用発明1を認定しているのであり,そのようなインクジェットプリンターにおい
て,塗布・塗工方式の模様付けが行われていたと断定することはできない。
また,ピエゾ式のインクジェットプリンターにおいても,インク液滴の大小の差
はあるものの,微視的にみると,引用発明1と同様にインク液滴は広がり,塗布・
塗工方式の模様付けが行われているのであって,これが微小であるためにドット状
として捉え得るのである。
したがって,引用発明1におけるインクジェットプリンターと本件発明1のピエ
ゾ式のインクジェットプリンターとの相違は,インク液滴に圧力を加える方式の相
違に過ぎないのであり,模様付け方法において相違するということはできないから,
本件審決による一致点の認定に誤りはなく,取消事由1は理由がない。
2 取消事由2(相違点についての判断の誤り)について
〔原告の主張〕
本件審決は,相違点(ア)ないし(ウ)に係る構成とすることは当業者にとって容易
であると判断している。
(1) 相違点(ア)について
しかしながら,引用発明1は口径0.1ないし0.4mmのノズルからインクを
吐出させて行う塗工であり,平均粒子径を60ないし1000nmのような小さな
ものとする必要はないから,相違点(ア)に係る構成とすることは,ノズル口径の小
さいインクジェットプリンターを採用することを前提としない限り,当業者といえ
ども容易になし得ないものである。
(2) 相違点(イ)について
また,引用発明1は,基板の表面に滴下したインクを広げて連結させ,均一な塗
膜を形成して模様を得る塗布・塗工方式であり,解像度(dpi)の概念は存在しな
いのに対し,引用例2に記載されたピエゾ式インクジェットプリンターの発明(以
下「引用発明2」という。)は,通常ドットを形成し,解像度(dpi)の概念を有
-6 -
する印刷方式であるから,両者はその模様付けに関して互いに相反する技術であり,
相互に置換可能な同等物であるということはできない。
そうすると,引用発明1のソレノイドバルブの開閉によるオンディマンド方式の
インクジェットプリンターに代えて,ピエゾ振動方式のインクジェットプリンター
を用いて,相違点(イ)に係る構成とすることは当業者にとって容易であるというこ
とはできない。
(3) 相違点(ウ)について
上記(2)のとおり,引用発明1のインクジェットプリンターと引用発明2のピエ
ゾ振動方式のインクジェットプリンターは相互に置換可能な同等物ではない。
(4) 以上のとおり,相違点(ア)ないし(ウ)についての本件審決の判断はいずれ
も誤りであるから,本件審決は取り消されるべきである。
〔被告の主張〕
本件審決の相違点(ア)ないし(ウ)についての判断に誤りはない。
(1) 相違点(ア)について
原告の主張は,引用発明1の模様付けが塗工・塗装方式であることを前提として
いるが,引用発明1をそのようなものに限定して捉えることはできないから,原告
の主張は前提において誤っている。
(2) 相違点(イ)について
原告は,引用発明1と引用発明2に記載された発明を組み合わせることはできな
いと主張する。
しかしながら,甲2には,従来の技術としてシルクスクリーン印刷,エアースプ
レイジェットを挙げ,その後のインクジェットプリンターの進歩を紹介した上,イ
ンクジェットプリンターによる場合にインク付着性,平滑性,耐光性において劣る
との欠点を解決するため,ピエゾ式インクジェットプリンターを採用することが記
載されているのであり,引用発明2は,内外建材用パネルの印刷技術の自然な流れ
に沿って発明されたものである。そして,引用発明1と引用発明2は,互いに同一
-7 -
の技術分野に属し,柄模様の意匠性の向上という同一の目的を有するものである。
したがって,これらの技術を組み合わせることに困難性はなく,当業者が容易に
なし得たことというべきである。
(3) 相違点(ウ)について
原告の主張は,引用発明1と引用発明2を組み合わせることが困難であることを
前提とするが,この前提が誤りであることは上記(2)のとおりである。
(4) 以上のとおり,原告の主張はいずれも採用し得ないものであるから,取消
事由2は理由がない。
3 取消事由3(効果の顕著性を看過した誤り)について
〔原告の主張〕
(1) 本件発明1は,高い画質精度が要求される天然石の外観模様等のような柄
模様を有した建築材料等を工業的に製造可能にしたものであるのに対し,引用発明
1は,無機質化粧板の表面に解像度を有さない模様付けを形成しているに過ぎず,
引用発明2は,凹凸状の基板の表面に高解像度の模様付けを行うことを意図したも
のではないから,本件発明1は,引用発明1と引用発明2を組み合わせることによ
っては達成し得ない格別顕著な効果を奏する。
(2) しかし,本件審決は,その効果を看過して,本件発明の進歩性を否定して
いるのであるから,その判断の誤りを理由として,本件審決は取り消されるべきも
のである。
〔被告の主張〕
原告の主張は争う。
第4 当裁判所の判断
1 取消事由1(一致点の認定の誤り)について
(1) 引用発明1における模様付け方法
原告は,本件発明における模様付け方法がいわゆる「印刷方式」であるのに対し,
引用発明1における模様付け方法がいわゆる「塗布・塗工方式」であるとして,そ
-8 -
の違いを主張するので,まず,この点について検討する。
ア 引用例1の記載内容
引用例1には,次の①ないし⑧の記載がある。なお,文中の「/」は原文の改行
部分を示す。以下においても,これに倣う。
① 「【請求項1】表面に下層着色塗膜を予め施した無機質板をコンベアにより
搬送する過程で,この無機質板表面に,インクジェットプリンターのノズルから,
樹脂,着色顔料及び比蒸発速度(酢酸正ブチルを100とした重量法による)が5
0∼380の溶剤を主成分とする粘度5∼15cps(20℃)のインクを吐出し,
模様付けをすることを特徴とする無機質化粧板の製造方法。」(特許請求の範囲)
② 「【産業上の利用分野】本発明は,建築内装材や外装材などの分野において
利用される無機質化粧板の製造方法に関するものである。/【従来の技術】この種
の無機質化粧板の製造方法として,従来から,以下の製造方法が代表的なものとし
て知られている。/(イ)表面が平滑な,あるいは,凹凸のある無機質板を単一色
に仕上げる。/(ロ)表面に凹凸のある無機質板に塗料を全面塗布し,次いで,ロ
ールコーターを用いて,異色の塗料を,表面の凸部のみに塗布し,二色仕上げする。
/(ハ)無機質板表面をリシン仕上げやスタッコ仕上げする。/(ニ)無機質板表
面に塗料を塗布し,未乾燥の間に,その塗布面にカラー骨材を散布し,付着する。
/(ホ)無機質板表面に塗料を散点状に塗布し,斑点模様に仕上げる。/(ヘ)無
機質板表面に,カラー骨材を含有する塗料を塗布する。/(ト)表面に凹凸のある
無機質板の,その凹部に半透明着色塗料を溜め込み,あるいは,ワイピングする。
/【発明が解決しようとする課題】しかしながら,これらの製造方法では,何れも,
所望する任意の模様を,精度よく,かつ,再現性よく形成することが困難であり,
特に,表面に凹凸のある無機質板において困難であった。/そこで,本出願人は,
表面に下層着色塗膜を予め施した無機質板をコンベアにより搬送する過程で,この
無機質板表面に,インクジェットプリンターのノズルから,インク(もしくは塗
料)を吐出し,無機質板表面に模様付けをする無機質化粧板の製造方法を提唱した。
-9 -
この方法によれば,所望の模様を,確実な再現性を持って,しかも,表面に凹凸の
ある無機質板において形成することができる。この場合,多くの実験の結果,従来
からインク(もしくは塗料)として使用されている樹脂,顔料に対して,どのよう
な溶剤を,どのような形で用いるかが,上記問題解決の必須の条件であることを見
出したのである。換言すれば,どの溶剤が,上記課題,特に,高い精度,高度の意
匠性を発揮できる模様の形成のための条件であるかを確認することができた。」
(【0001】∼【0004】)
③ 「即ち,本出願人が確認したことは,溶剤の比蒸発速度(酢酸正ブチルを1
00とした重量法による)が50以下では,無機質板の表面にドット状に吐出した
インク滴(もしくは塗料滴)が広がり過ぎ,所期の模様がにじんだ状態となり,ま
た,380以上では,ドット状のインク滴(もしくは塗料滴)が広がらず,点状態
をそのまま維持して,固化し,予期したような連続した線状もしくは面状の模様を
形成できないことである。また,後者の場合には,乾燥が速く,ノズル詰まりが起
こり易く,好ましくないことも確認された。更に,インク粘度の点から考察すると,
粘度5∼15cps(20℃)の範囲を外れると,正常なインク滴(もしくは塗料
滴)となり難いことも確認できた。」(【0005】)
④ 「【発明の目的】本発明は,上記事情に基いてなされたもので,所望する任
意の模様を,精度よく,かつ,再現性よく形成することが可能で,しかも,高度の
意匠性を有する無機質化粧板の製造方法を提供しようとするものである。/【課題
を解決するための手段】このため,本発明では,表面に下層着色塗膜を予め施した
無機質板をコンベアにより搬送する過程で,この無機質板表面に,インクジェット
プリンターのノズルから,樹脂,着色顔料及び比蒸発速度(酢酸正ブチルを100
とした重量法による)が50∼380の溶剤を主成分とする粘度5∼15cps
(20℃)のインクを吐出し,模様付けをすることを特徴とする。」(【000
6】,【0007】)
⑤ 「【実施例】以下,本発明の製造法について詳細に説明する。本発明で扱う
無機質板とは,…通常建築用に使用されている各種の無機質板であり,特に,その
用途に制限なく適用できるものである。上記無機質板は,平滑な表面を有するもの
でも良いが,エンボス加工などの手段により,その表面に凹凸部を形成したものが,
より好適である。これは,その凹凸模様と,後述するインクによる着色模様との組
合せにより,相当高度な意匠性が表現できるためである。」(【0009】)。
⑥ 「本発明で使用するインクジェットプリンターとしては,従来から公知のプ
リンターを使用することができ,その制御方法も,例えば,オンディマンド方式,
荷電制御方式,サーマルヘッドによりインクを吐出させる方式が代表的なものとし
て挙げられる。/次に,本発明の無機質化粧板の製造方法を,ソレノイドバルブの
開閉によるオンデイマンド方式のインクジェットプリンターを使用した一実施例に
ついて,図1および図2を参照して,具体的に説明する。…」(【0017】,
【0018】)
⑦ 「また,多色の模様を形成したい場合は,上記プリンター・ヘッド2をコン
ベア1の搬送方向に複数段,配置し,それぞれのプリンター・ヘッド2中に,上述
の供給方法で,異なる色のインクを供給し,それらインクを,上述と同様にして,
吐出させる。これによって,基板A表面に多色の模様を抽出させることが可能であ
る。本発明の製造方法では,このようにして,インクジェットプリンターによって
基板表面に模様付け行ない,その後,乾燥させる。」(【0021】)
⑧ 「【発明の効果】本発明は,以上詳述したようになり,無機質板表面に,任
意の模様を高い精度で,かつ,再現性よく,形成することが可能であり,また,イ
ンクジェットプリンターを採用するため,そのノズルから,走行中の無機質板に対
して,無接触でインクを吐出し,模様付けすることができるので,無機質板の表面
に凹凸があっても,本発明の方法が適用可能であり,高度の意匠性を有する無機質
化粧板が得られる。」(【0025】)
イ 引用例1の記載事項
上記引用例1の記載内容によると,引用例1には,建築内外装材などの分野にお
ける無機質化粧板の模様付けについての単一色仕上げ,二色仕上げ,斑点模様仕上
げを含む従来技術(上記ア②)を踏まえ,溶剤の比蒸発速度及び塗料の粘度を調整
することによって正常なインク滴(塗料滴)を生成することにより(同①,③),
所望の任意の模様を,精度よく,かつ,再現性よく形成することが可能で,しかも,
高度の意匠性を有するものとする(同④,⑧)ような無機質化粧板の製造方法が記
載されているということができる。
そして,模様付け方法による着色模様と無機質板表面の凹凸の組合せにより,相
当高度な意匠性が表現できるものとされ(同⑤),ソレノイドバルブの開閉による
オンデイマンド方式のインクジェットプリンターを使用した実施例の説明(同⑥)
において,多色の模様を形成したい場合(同⑦)についても紹介されている。
ウ 引用例1の従来技術の補足
引用例1には,従来技術として,出願人自身が過去において提唱した無機質化粧
板の製造方法についても紹介されており,その製造方法が引用例1の出願人である
原告の出願に係る特開平6−155729号公報(乙1。以下「乙1公報」とい
う。)に記載されたものであることは当事者間に争いがないところ,乙1公報にお
ける以下の記載によると,乙1公報には,コンピュータ制御されたジェットノズル
から,コンベアにより搬送される建築板の表面に向けて塗料を噴射させ,能率良く,
かつ精度良く柄模様を描出させる建築板の塗装方法であって,多色塗装を含むもの
について記載されていると認められる。
(ア) 「【請求項1】コンベアにより搬送しつつある建築板の表面に柄模様を塗
装する方法において,予め塗装すべき柄模様に対応する柄パターンのパターンデー
タをコンピューターに記憶させ,前記コンベア上に配した塗装ヘッドに前記コンベ
アの巾方向に亘って並列したジェットノズルからのインク噴射の制御を前記コンピ
ューターの制御信号によるバルブ制御装置により行ない,前記塗装すべき柄模様を
前記ジェットノズルからのインク噴射により前記建築板の表面に塗装することを特
徴とする建築板の塗装方法。/【請求項2】コンベア上の前後に配した複数の塗装
ヘッドにそれぞれ前記コンベアの巾方向に亘って並列したジェットノズルからのイ
ンク噴射により前記建築板の表面に多色塗装することを特徴とする請求項1記載の
建築板の塗装方法。」(特許請求の範囲)
(イ) 「【産業上の利用分野】本発明は,建築板の表面,殊に凹凸模様を有する
表面に柄模様を塗装する方法に関するものである。/【従来の技術】近年,住宅の
外壁はレンガ調,タイル調,割石調が好まれ普及しつつある。しかし,これらに属
する外装板の従来製法は,未硬化の状態にある平板状の基板の表面を凹凸模様が形
成された型板を介してプレス機で押圧したり,ロール表面に凹凸模様が刻設された
ロールプレス機で押圧してレンガ,タイル,割石肌を表現する凹凸模様が板表面に
形成され,次いで硬化養生工程を経,公知のスプレー塗装機,フローコーター塗装
機,ロールコーター塗装機等で塗料を塗装する表面化粧工程を経て製品の外装板と
している。しかし,これらの場合,外装板表面に柄模様を施すことは困難であり,
施工状態において外観的に単調な外壁となり,本物のレンガ,タイル,割石とは趣
きを異にし,意匠性に乏しくなるものであった。/又,実開昭63−149725
号では,電子制御方式によりインクの噴射ノズルを左右に移動してプリント対象板
を前後に移動したり,プリント対象板を固定して噴射ノズルを摺動軸と共に前後に
移動しつつプリント作業を行なうことが提案されている。しかし,この方式は,噴
射ノズルを左右に移動しつつ長尺のプリント対象板を前後に移動して全幅に亘って
印刷するには,搬送装置に停止精度を得るための高度な技術が要求され,且つプリ
ント所要時間も相当に長くなる。一方,長尺のプリント対象板を固定して噴射ノズ
ルを摺動軸と共に左右,前後に移動しつつ印刷する場合には,摺動軸の移動機構に
堅牢さと高精度性が必要となり,従って長尺の建築板に能率良くプリントするには
プリント速度の点と精度維持の点から不適当であった。/【発明が解決しようとす
る課題】そこで,本発明は,長尺な建築板,殊に表面に凹凸模様を有する建築板の
表面に柄模様を能率良く且つ精度良く描出できる建築板の塗装方法を提供し,もっ
て上記従来技術の問題を解決しようとするものである。」(【0001】∼【00
04】)
エ 従来技術の更なる補足
上記ウ(イ)のとおり,乙1公報には,塗装方法の従来技術として実開昭63−1
49725号が引用されているところ,その内容を示す実願昭62−42388号
(実開昭63−149725号)のマイクロフィルム(甲25)における以下の記
載によると,乙1公報には,従来技術として,各種板状体等に対して,文字,図形,
絵画及び写真等の図柄を能率良くインクジェットプリントすることが可能な印刷装
置の考案が記載されていると認められる。
(ア) 「(1)複数のインクジェットヘッドを同一軸上に平行に配列し,同時に
広巾素材に印刷を行うインクジェットプリンター。/(2)広巾素材を水平に固定
又は移動させ,インクジェットヘッドのインクノズルの噴射口を水平状態で固定又
は移動させる如く配設する実用新案登録請求の範囲第1項記載のインクジェットプ
リンター。/(3)各ジェットヘッドの操作を電子制御方式により調整する実用新
案登録請求の範囲第1項記載のインクジェットプリンター。」(実用新案登録請求
の範囲)
(イ) 「この考案は,インクジェット式印刷装置に係り特に,広巾の建築材料,
広告宣伝材料等に対する文字,図形,絵画,写真等のカラープリントを行う装置の
構造に関する考案である。」(産業上の利用分野)
(ウ) 「インクジェット型の印刷装置としては,近時大いに開発が進み,電子記
録ヘッドとマルチノズルを備え図形,グラフ等も着色で同時プリントが可能となっ
ている。例えば特開昭58−188666号記載の如くである。/然しながら,こ
れらは何れも単独のインクジェットヘッドよりなり,プリント対象物は主として紙
状可撓性物であってB4,A3等の大きさのものを対象として実施されている。/
即ち,巾の狭いものに限られ,巾の広いものは単位長さの印刷能率が低下し不適当
であった。」(従来の技術)
(エ) 「この考案は,上記のような従来のインクジェット型プリンターと異なり,
巾の広い被印刷体であって,厚みの大なる平板状態,即ち紙,繊維,木質等の板状
体,コンクリート板状体,合成樹脂板状体等若しくはこれら複合又は積層体等に対
して能率良くインクジェットプリントを行うことの可能な印刷装置を提供すること
を目的として,研究の結果完成されたものである。」(考案が解決しようとする問
題点)
オ 引用例1記載の模様付け方法
上記イによると,引用例1には,インクジェットプリンターを使用して高度の意
匠性を有する無機質化粧板を製造するための模様付け方法として,インクジェット
プリンターによる多色の着色模様を描出するものが記載されているものと認められ
るところ,上記ウ及びエの従来技術の状況を踏まえると,上記着色模様としては文
字,絵画,写真等のカラープリントが含まれるものというほかない。
この点につき,原告は,引用発明1の模様付け方法が塗布・塗工方式であり,本
件発明の模様付け方法である印刷方法は排除されていると主張し,その根拠として
甲22の実験報告書を提出する。
しかしながら,上記ア③のとおり,引用例1には,無機質板の表面にドット状に
吐出したインク滴(もしくは塗料滴)が広がり過ぎ,所期の模様がにじんだ状態と
なることが問題であることのほか,ドット状のインク滴(もしくは塗料滴)が広が
らず,点状態をそのまま維持して固化し,予期したような連続した線状もしくは面
状の模様を形成できないことについても問題点として指摘する記載がある。
甲22は,そのような記載がある引用例1の特許請求の範囲の請求項1記載の発
明の実施例を追試したものであるが,実験報告書の内容によると,同実施例のもの
において,インクジェットプリンターによって吐出されたインクの液滴を基板の表
面で広げて互いに連結させ,これによって均一な塗膜を形成して模様を得るという
模様付け方法が説明されているものと認められる。
そして,上記アないしオで認定及び説示したところによると,引用例1に記載さ
れた無機質化粧板の製造方法における模様付け方法が,塗布・塗工方法のみを念頭
に置いたものであって,印刷方式を排除したものであるということは到底できない
というべきであり,上記ア③の記載は,インク滴の広がり具合が適正なものとなる
ような溶剤の比蒸発速度や塗料の粘度を説明するために主としてノズルピッチが大
きい場合を念頭に置いて説明する記載であり,実施例についても,同様の配慮から
ノズルピッチをミリメートルのオーダーとした例を紹介しているにすぎないものと
理解すべきである。
したがって,原告の主張を採用することはできない。
(2) 本件審決の一致点についての認定の当否
以上によると,引用発明1の模様付け方法について,印刷方法を排除することな
く,「柄模様に対応する柄パターンデータを予め記憶させたコンピューターの制御
信号によって,ソレノイドバルブを開閉制御してインク吐出を制御することにより,
該基板の表面に柄模様を模様付けする基板の模様付け方法」とした本件審決の認定
に誤りはなく,これを前提として,本件発明1と引用発明1とは「柄模様に対応す
る柄パターンデータを予め記憶させたコンピューターの制御信号によって,インク
吐出を制御することにより,該基板の表面に柄模様を塗装する基板の塗装方法」の
点において一致するとした本件審決の認定にも誤りはないというべきである。
したがって,取消事由1において原告が前提とする「引用発明1の模様付け方法
は塗布・塗工方法である」旨の主張を採用することはできず,本件審決による本件
発明1と引用発明1の一致点の認定に誤りはないというべきであるから,取消事由
1は理由がない。
2 取消事由2(相違点についての判断の誤り)について
(1) 相違点(ア)についての判断
原告は,引用発明1の模様付け方法が塗布・塗工方式のものであることを前提と
して,本件審決の相違点(ア)についての判断が誤りであると主張するが,上記1の
とおり,引用発明1の模様付け方法として印刷方式が排除されていると考える理由
はないから,原告の主張は前提において誤っている。
(2) 相違点(イ)についての判断
原告は,引用発明1の模様付け方法は塗布・塗工方式であり,引用発明2のピエ
ゾ振動方式のインクジェットプリンターのようにドットを形成し,解像度(dpi)
の概念を有する印刷方式を適用することは考えられないから,本件審決の相違点
(イ)についての判断は誤りであると主張するので,上記(1)の判断を踏まえ,引用
例2の記載について検討する。
ア 引用例2の記載
引用例2における以下の記載によると,引用例2には,インクの付着性,平滑性
及び耐光性等を向上させるためにエマルジョン系塗料を塗布した基板の表面に,ピ
エゾ式インクジェットヘッドにより水性顔料系インクを用いて直接絵柄等を印刷し,
更にその表面に透明硬化型プラスチック塗膜を積層したインクジェットプリントパ
ネルの発明(引用発明2)が記載されていると認められる。
(ア) 「水性インクの付着及びレベリングの良好なエマルジョン系塗料を塗布し
た基板の表面に,ピエゾ式インクジェットヘッドにより水性顔料系インクを用い直
接絵柄等を印刷し,更にその表面に保護及び美装のための透明硬化型プラスチック
塗膜を積層することを特徴とするインクジェットプリントパネル。」(実用新案登
録請求の範囲)
(イ) 「この考案は,セラミック系,セメント系等のタイル,ガラス,金属,木
材等のパネルに係り,更に詳しくは,装飾性,耐久性に優れた内外建材用パネルに
関する考案である。」(産業上の利用分野)
(ウ) 「上記のような,装飾用のパネルとしては従来より種々のものが実施され
ていて,例えば,シルクスクリーン印刷,エアースプレイジェット等が行われてい
るが,シルクスクリーン印刷の場合は,版を必要とするため当初原価が高くなり,
少量生産には不適当であり,エアースプレージェットの場合には,インクが拡散し
て吹き付けられるために絵画が粗くなり微細で平滑な表現が出来ない等の欠点があ
った。/近時,インクジェットプリンターの進歩が見られ例えば,本願考案者に係
る,実開昭63−149725号の如く広巾のパネル等の印刷に精密で効率の良い
プリンターが開発されているが,水性染料等のインクが使用されるためにプリント
基板によってはインクの付着性,平滑性,或いは耐光性が劣ること等の欠点が見ら
れた。」(従来の技術)
(エ) 「本考案はピエゾ式(即ち圧電素子利用の)インクジェットプリンターで
前記のような各種素材よりなる基材の表面に,直接カラー画をプリントするに際し
て画面を構成するインクが基材面に強固に付着し,かつ平滑なインク面を形成する
如くし,更に付着してインクが,耐光性,耐摩耗性,耐熱性等を充分に保持するこ
とを目的として研究を行いこの考案を完成したものである。」(考案が解決しよう
とする問題点)
(オ) 「以下にこの考案の構成を,実施の例を示した図面に基づいて具体的に説
明する。…(3)はピエゾ式インクジェットヘッドで水性顔料系のインクを用いて下
地層(2)の上に描かれた絵画,文字等の塗層であって,微細な部分まで鮮明にプリ
ントされる。…」(問題点を解決するための手段)
イ 引用例2の従来技術の補足
引用例2には従来技術として実開昭63−149725号に係るプリンターが紹
介されているところ,実願昭62−42388号(実開昭63−149725号)
のマイクロフィルム(甲25)において,各種板状体に対して,文字,図形,絵画
及び写真等の図柄を能率良くインクジェットプリントすることが可能な印刷装置の
考案が記載されていることは,上記1(1)エで認定したとおりである。
ウ 引用発明1と引用発明2の組合せについて
上記ア及びイによると,引用発明2においては,従来から行われていた文字,図
形,絵画及び写真等の図柄を印刷するに際し,インクの付着性,平滑性及び耐光性
等を向上させるために,基材にエマルジョン系塗料を塗布することに加え,インク
ジェットプリンタの進歩に合わせて,微細な部分まで鮮明に印刷することができる
ピエゾ式インクジェットヘッドを採用しているものということができるから,高度
な意匠性を表現することを目的とする引用発明1において,引用例2に従来技術と
して記載されたものと同様の技術を前提として,上記と同様の観点から,より微細
な部分まで鮮明に印刷することのできるピエゾ式インクジェットヘッドを採用する
ことに何ら困難性を見出すことはできないし,むしろ,従来技術からの技術の系譜
において,引用発明1が図柄印刷を含む技術の大きな流れの中に位置付けられるこ
とに鑑みるとき,引用発明1のインクジェットプリンターとして引用発明2のピエ
ゾ式のものを採用することは極めて自然な発想であるというべきである。
エ 小括
以上によると,引用発明1に引用発明2を適用し,「ソレノイドバルブの開閉に
よるオンディマンド方式のインクジェットプリンター」を「ピエゾ振動方式のイン
クジェットプリンター」とすることにより相違点(イ)に係る構成とすることは,当
業者にとって容易であるというべきであり,本件審決の相違点(イ)についての判断
に誤りはない。
(3) 相違点(ウ)についての判断
原告は,引用発明1のインクジェットプリンターを引用発明2のピエゾ振動方式
のインクジェットプリンターとすることはできないことを理由として,本件審決の
相違点(ウ)についての判断が誤りであると主張するが,原告の主張を採用すること
ができないことは上記(2),そして,上記1のとおりである。
(4) 以上のとおり,原告の主張はいずれも採用し得ないから,取消事由2は理
由がない。
3 取消事由3(効果の顕著性を看過した誤り)について
原告は,本件発明1が,引用発明1と引用発明2を組み合わせることによっては
達成し得ない格別顕著な効果を奏するとして,これを看過した本件審決の判断の誤
りをいう。
しかしながら,そもそも引用発明1が基板の凹凸模様と着色模様を組み合わせる
ことにより相当高度な意匠性を表現することを想定したものであることは,上記1
(1)ア⑤に摘示した引用例1の記載から明らかであり,ピエゾ振動方式のインクジ
ェットプリンターを採用することにより,微細な部分まで鮮明に印刷することがで
きるようになれば,これに応じて意匠性が高まることも明らかであって,原告が主
張する本件発明1の効果はこれらを組み合わせることによって達成されるものにほ
かならないから,当業者が予想する範囲内のものというべきである。
したがって,原告の主張を採用することはできないから,その主張が審決の取消
事由として許される主張であるか否かについて検討するまでもなく,取消事由3は
理由がない。
4 原告は,以上のほか,本件審決の判断の誤りをるる主張するが,その実質は,
以上で検討した原告の主張を繰り返すものにすぎず,これを採用し得ないことは明
らかである。
5 結論
以上の次第であるから,原告の請求は棄却されるべきものである。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 滝 澤 孝 臣
裁判官 高 部 眞 規 子
裁判官 杜 下 弘 記
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