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平成20(行ケ)10198審決取消請求事件

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裁判所 請求棄却 知的財産高等裁判所
裁判年月日 平成20年11月26日
事件種別 民事
当事者 被告アイリスオーヤマ株式会社
原告プラコム株式会社
法令 特許権
特許法36条6項2号4回
特許法70条1項1回
キーワード 審決28回
実施13回
無効7回
無効審判4回
進歩性3回
特許権1回
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事件の概要 1 本件は,被告が特許権者である後記特許の請求項2に係る発明(以下「本件 特許発明2」という)について原告から特許無効審判請求がなされたところ, 特許庁が請求不成立の審決をしたことから,原告がその取消しを求めた事案で ある。 2 争点は,①本件特許発明2の特許請求の範囲の記載に特許法36条6項2号 違反があるか,②本件特許発明2が,下記文献に記載された各発明との関係で 進歩性(特許法29条2項)を有するか,である。

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判決文

判決言渡 平成20年11月26日
平成20年(行ケ)第10198号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 平成20年9月24日
判 決
原 告 プ ラ コ ム 株 式 会 社
訴訟代理人弁理士 佐 藤 英 昭
被 告 アイリスオーヤマ株 式会社
訴訟代理人弁護士 安 江 邦 治
訴訟代理人弁理士 羽 切 正 治
同 小 野 友 彰
主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
特許庁が無効2007−800209号事件について平成20年4月15日
にした審決を取り消す。
第2 事案の概要
1 本件は,被告が特許権者である後記特許の請求項2に係る発明(以下「本件
特許発明2」という)について原告から特許無効審判請求がなされたところ,
特許庁が請求不成立の審決をしたことから,原告がその取消しを求めた事案で
ある。
2 争点は,①本件特許発明2の特許請求の範囲の記載に特許法36条6項2号
違反があるか,②本件特許発明2が,下記文献に記載された各発明との関係で
進歩性(特許法29条2項)を有するか,である。

・ 特開平9−195653号公報(発明の名称「ホースリール付き踏み
台」 出願人 アイリスオーヤマ株式会社,公開日 平成9年7月29日。

以下,これに記載された発明を「甲2発明」という)
・ 特開平11−246123号公報(発明の名称「ホースリール」,出
願人 アイリスオーヤマ株式会社,公開日 平成11年9月14日 。以下,
これに記載された発明を「甲3発明」という)
・ 特開平6−191604号公報(発明の名称「ボックス型パレット」,
出願人 伊豫鉄工株式会社,公開日 平成6年7月12日。以下,これに
記載された発明を「甲4発明」という)
第3 当事者の主張
1 請求の原因
(1) 特許庁における手続の経緯
ア 被告は,平成14年11月22日,名称を「ホースリール」とする発明
につき特許出願(特願2002−338918号)をし,平成19年1月
26日,特許第3908155号として設定登録を受けた(請求項1ない
し7。以下「本件特許」という )。
イ その後,平成19年9月28日付けで原告から本件特許の請求項2につ
いて無効審判請求がなされ,同請求は無効2007−800209号事件
として係属したところ,特許庁は,平成20年4月15日 ,「本件審判の
請求は,成り立たない。」旨の審決をし,その謄本は平成20年4月25
日原告に送達された。
(2) 発明の内容
本件特許の請求項2に係る発明(本件特許発明2)の内容は,次のとおり
である。
【請求項2】
ホースを巻き取るドラムがフレームに回動自在に支持されたホースリ
ールにおいて,
前記フレームを,前記ドラムが収容されるケース状に形成し,当該フ
レームに天面を形成するとともに,前記フレームの底面に開口部を設け
る一方,
前記フレーム下部に,該フレームより側方へ延出した展開状態と,前
記開口部に配置されて梱包時において前記開口部内に収容された部品の
飛び出しを防止する状態との間で開閉される脚部を設けたことを特徴と
するホースリール。
(3) 審決の内容
ア 審決の内容は,別添審決写しのとおりである。
その理由の要旨は,①本件特許発明2の特許請求の範囲の記載は明確で
あるから,特許法36条6項2号に規定する明確性要件違反は認められな
い,③本件特許発明2は前述した甲2発明ないし甲4発明であるとはいえ
ず,またこれらに基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはい
えないから特許法29条1項又は2項に違反するとはいえない,としたも
のである。
イ なお審決は,甲2発明の内容を次のとおり認定し,本件特許発明2との
一致点及び相違点を,以下のとおりとした。
・ 甲2発明の内容
「ホースを巻き取るドラムが本体に回転可能に支持されたホースリー
ルにおいて,前記本体は,前記ドラムが収容される形状に形成し,当
該本体に蓋体を設けるとともに,前記本体の底面に開口部を設けたホ
ースリール。」
・ 一致点
いずれも「ホースを巻き取るドラムがフレームに回動自在に支持さ
れたホースリールにおいて,前記フレームを,前記ドラムが収容され
るケース状に形成し,当該フレームに天面を形成するとともに,前記
フレームの底面に開口部を設けたホースリール」である点。
・ 相違点
「本件特許発明2は,フレーム下部に,該フレームより側方へ延出し
た展開状態と,開口部に配置されて梱包時において前記開口部内に収
容された部品の飛び出しを防止する状態との間で開閉される脚部を設
けているのに対し,甲2発明は,そのような構成を有していない点。」
(4) 審決の取消事由
しかしながら,審決には以下のとおり誤りがあるから,違法として取り消
されるべきである。
ア 取消事由1(明確性要件違反についての判断の誤り)
(ア) 審決は ,「…側方に延出した展開状態に関して,本件特許明細書の
段落【0038】には『展開状態75において,本体ケース11の起立
状態の安定化を図れるように構成されており,』と記載されており,ま
た段落【0037】には『図1に示したように,両脚部67,67の先
端が本体ケース11より側方へ延出し,かつ前記本体ケース11の底面
61に当接して(図8参照)回動が規制された展開状態75』と記載さ
れている。これら記載からすれば,フレーム側方へ延出した展開状態と
は,側方に延出した展開状態と開口部内に収容された部品の飛び出しを
防止する状態との中間の段階(請求人のいう領域M1)や側方に延出し
た展開状態を越えてさらに回動させた状態(請求人のいう領域M2)を
意味するものではなく,本件特許の図1あるいは図8に示されたような
状態であることは明らかであり,その記載が不明確であるとはいえな
い。(4頁15行∼26行)と判断した。

しかし,本件特許発明2における「…前記フレーム下部に,該フレー
ムより側方へ延出した展開状態と」との文言は明確でないから,上記認
定は誤りである。
上記「側方へ延出した展開状態」との記載によれば,脚部が側方に延
び出ていれば良いことから,本体ケース(フレーム)の側面を真っ直ぐ
に伸ばした真下の位置よりも,幾分,外側に斜めに傾いて伸びる位置か
ら水平に伸びる位置までの領域のみならず,水平な位置からさらに上方
に脚部が回動し,フレームの上方に向かって伸びてフレームの側面に当
接する位置までの領域を含んだ広い領域となる。
このように本件特許発明2における「側方へ延出した」という記載内
容では,水平面内位置のみならず,幾分外側に斜めに傾いて伸びる位置
から水平に伸びる位置までの領域,さらにはそこからフレームの側面に
当接する領域を含んでいる。そして,幾分外側に斜めに傾いて伸びる位
置から水平に伸びる位置までの領域では,本体ケースの起立状態の安定
化を図ることができないばかりか,地面との干渉によって脚部が折れた
り,外れる不都合がある。また,その他の領域においても,脚部が地面
と接触しないから,本体ケースの安定化を図ることができない。従って ,
「側方へ延出した」という記載だけでは本件特許発明2の効果を得るこ
とができない。
よって,「…前記フレーム下部に,該フレームより側方へ延出した展
開状態と」との文言は明確ではないから,本件特許発明2の特許請求の
範囲の記載は明確ではなく,審決の認定は誤りである。
(イ) また審決は ,「本件特許明細書の段落【0011】には『前記フレ
ーム下部に,該フレームより側方へ延出した展開状態と,前記開口部に
配置されて梱包時において前記開口部内に収容された部品の飛び出しを
防止する状態との間で開閉される脚部を設けた 。』との記載があるよう
に『開閉される脚部』の取付け方法には特段の限定がなされているもの
ではなく,実施例に示された開閉手段が『回動』であるからといって,
開閉手段がそれのみに限定されるものではない。よって,本件特許の請
求項2の記載が不明確であるとはいえない。(4頁30行∼37行)と

判断した。しかし,本件特許発明2の特許請求の範囲の記載は不明確で
あるから審決の認定は誤りである。
すなわち,本件特許発明2における 開閉される」
「 の意味に関しては,
本件明細書(甲1〔特許公報 〕 の発明の詳細な説明には「…脚部67,

67が回動自在に支持されている 。 (段落【0036 】 ,
」 ) 「…前記両脚
部67 ,67は,前記円筒部66 ,66を中心に回動することによって,
…両脚部67,67が前記底面開口部62の下部に配置された折り畳み
状態74と,… 」(段落【0037 】 ,
) 「…前記折り畳み状態74にあ
っては,…前記底面開口部62を前記脚部67,67によって閉鎖でき
るように構成されている 。 (段落【0038 】
」 )と記載されており,明
細書の発明の詳細な説明には回動することしか記載されていない。また,
図面( 図8 】 【図9 】
【 , )にも脚部が回動する構造しか記載されていな
い。
特許発明の技術的範囲は,特許請求の範囲の記載に基づいて定めなけ
ればならず(特許法70条1項),特許請求の範囲に記載された用語の
意義は明細書の記載より図面を考慮して解釈するものである 同2項 )
( 。
このことから,本件特許発明2における「開閉」は,「脚部が回動する
ことによりフレームの開口部を開閉」するものであり ,「回動」よりも
広く解釈できるような動きは含まない。
これに対し,「開閉」は「ひらくことととじること。…」(広辞苑第6
版,株式会社岩波書店2008年〔平成20年〕1月11日第6版第1
刷発行,甲6)の意味で用いられることから,請求項2における「開閉
される」の用語は「開いたり閉じたりする」として用いられる。このよ
うな「開いたり閉じたりする」動作は,直線的にスライドして開閉する
動き,ジグザク状に動いて開閉する動き,空中を飛んで開閉する動きな
どの「回動」以外の多くの動きを含むものであり,「開閉される」の用
語は動きを特定することができない不明瞭な用語である。従って,「開
閉される」の用語を含む本件特許発明2は明確ではない。
イ 取消事由2(進歩性判断の誤り)
(ア) 審決は ,「…本件特許発明2は,甲第2∼4号証に記載された発明
とは認められず,また,それらに基づいて当業者が容易に発明できたも
のとも認められない。(9頁9行∼11行)と判断した。

しかし,本件特許発明2は,甲2,3,及び当審において周知技術を
示す証拠として提出する甲7(特開2001−278402号公報,発
明の名称「廃棄物処理用コンテナ」,出願人 トピー工業株式会社,公開
日 平成13年10月10日),甲11(特開2002−104582号
公報,発明の名称「ボックス型パレット」
,出願人 株式会社豊田自動織
機及び有限会社日向エンジニアリング ,公開日 平成14年4月10日 )
に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるか
ら,審決の判断は誤りである。
(イ) すなわち甲2には,踏み台部2とホースリール部3とから構成され ,
踏み台部2は,外郭を構成する本体5と,本体5の上側を塞いで踏み台
となる蓋体6とからなると共に,ホースを巻き取る巻き取りドラムを備
えていることが記載されている(段落【0015】【0016】。
, )
甲3には,左右フレーム4,5の下部に連結パイプ13が設けられ,
「…この連結パイプ13にはステップ17がそれぞれ回動自在に軸支さ
れている 。」こと(段落【0023 】 ,
) 「…双方のステップ17は,図
7に示したように,…左右フレーム4,5の下部において他方側の連結
パイプ13との間に収容される…非使用位置(aに示した位置)から,
下方へ向かい回動され左右一対のフレーム4,5の両側部よりも前後方
向の外側に振り出されるとともに,…使用位置まで回動するようになっ
ている 。」こと(段落【0028 】 ,図7にはそのステップ17の挙動

がそれぞれ記載されている。このように作動する甲3発明のステップ1
7を甲2発明の本体5(本件特許発明2のフレームに相当)の下部に対
して設けることにより,ステップ17の展開状態では,審決が本件特許
発明2と甲2発明との相違点として認定した構成の一部である「当該フ
レームより側方へ延出した展開状態」と同一となる。
また甲7には,「…底面板6及び7は,本体枠1の底面開口を閉塞す
るに十分な大きさであって,均等な大きさからなる左右一対の金属板に
より構成され,…軸5,5により形成された蝶番機構5a・5aを介し
て観音開き状に開閉自在に取り付けられているとともに… 」(段落【0
011 】 ,
) 「…一対の底面板6・7が蝶番機構5a・5aを支点に観音
開き状に下方に向けて開き,コンテナにおける本体枠1の底面開口が開
放され,内容物である廃棄物が落下する。 (段落【0019】
」 )と記載
され,図1には底面板6・7が本体枠1の底面開口を閉じた状態が,図
3には底面板6・7が開放した状態が開示されている 。この甲7発明は ,
底面板6・7が甲2発明との相違点の一部に係る「…展開状態と,前記
開口部に配置されて梱包時において前記開口部内に収容された部品の飛
び出しを防止する状態との間で開閉される」ことを開示するものである。
次に甲11には ,「…ボックス本体2は上部には収納物を受容可能な
投入用開口3を有し,下部には収容物を排出可能な排出用開口4(図3
参照)を有する。そして,ボックス本体2の底部には,排出用開口4を
開閉する外開き式でかつ観音開き式の2枚の底蓋7,8が備えられてい
る。… 」(段落【0011 】 ,
) 「…このため,底蓋7,8のロックが解
除されて前後の底蓋7,8が下方へ回動し,排出用開口4が開放される
ことになる。従って ,収容物が荷台に排出される。(段落【0023】
」 )
と記載され,図1には,底蓋7,8が排出用開口4を開いた状態が,図
2には,排出用開口4を閉じた状態が開示されている。この甲11発明
も,相違点に係る構成の一部である底蓋7,8が「…展開状態と,前記
開口部に配置されて梱包時において前記開口部内に収容された部品の飛
び出しを防止する状態との間で開閉される」ことを開示している。
これら甲7,11は,フレームの底面に設けた開口部に対し,底面板
や底蓋を展開状態と,部品の飛び出しを防止する状態との間で開閉させ
ることが日常的になされていることを示唆するものであり,上記構造が
ホースリールの分野を含めた産業分野で汎用的な周知慣用技術に属する
ことを示している。このような周知慣用技術においては,周知慣用技術
の内容に照らし,技術内容の別を問わず,汎用的な技術レベルであるこ
と及び技術のレベルとして,必要に応じ,適宜採用し得るものであるこ
とは明らかである。
そうすると,甲2発明の本体(本件特許発明2のフレームに相当)の
底部に,甲3発明のステップを取り付ける際に甲7発明や甲11発明の
ような周知慣用的な構造とすることにより,本件特許発明2と甲2発明
との相違点に係る構成である「前記フレーム下部に,該フレームよりも
側方へ延出した展開状態と,前記開口部に配置されて梱包時において前
記開口部内に収容された部品の飛び出しを防止する状態との間で開閉さ
れる脚部を設けた」構造となる。
従って,本件特許発明2は甲2,3,7,11に基づいて当業者が容
易に想到し得たものである。
2 請求原因に対する認否
請求の原因(1)ないし(3)の各事実はいずれも認めるが,同(4)は争う。
3 被告の反論
(1) 取消事由1に対し
原告の主張は,本件無効審判請求書の第1の無効理由においてなした内容
と全く同一のものである。
原告は,本件特許発明2における「側方へ延出した展開状態」の記載によ
れば,脚部が側方に伸び出ていればよいから広い範囲となる旨主張する。
しかし,展開状態の効果について述べた本件明細書 甲1)
( の記載である,
「…展開状態75において,本体ケース11の起立状態の安定化を図れるよ
うに構成されており,… 」(段落【0038 】 ,
) 「…図1に示したように,
両脚部67,67の先端が本体ケース11より側方へ延出し…」(段落【0
037 】 ,及び図1を合理的に解釈すれば,
) 「該フレームより側方へ延出し
た展開状態」は,水平位置の状態であることは明らかである。したがって,
「側方へ延出した展開状態」の記載は明確である。
また,原告は「開閉される」の記載が不明確であると主張するが,本件特
許発明2において「開閉される」のは「フレーム底面の開口部」であって「開
閉する」のは「両脚部67,67」であることは本件明細書から明らかであ
るところ,本件明細書の「…前記フレーム下部に,該フレームより側方へ延
出した展開状態と,前記開口部に配置されて梱包時において前記開口部内に
収容された部品の飛び出しを防止する状態との間で開閉される脚部を設け
た 。 (段落【0011 】
」 )との記載によれば ,「開閉される脚部」の取付け
方法には限定がないから,一実施例に示された「回動」に限定される理由は
ない。要するに「両脚部67,67」が「フレーム底面の開口部」を「開い
たり,閉じたり」でき,かつ開いた状態において,「フレームより側方へ延
出した展開状態」となるように ,「フレーム下部に」設けられればよいもの
である。
したがって,本件特許発明2の特許請求の範囲の記載は明確であって,審
決の判断に誤りはない。
(2) 取消事由2に対し
原告は,本件訴訟において,無効審判時に引用例の一つとした甲4(特開
平6−191604号公報)に代えて甲7,11を追加した。審決は,原
告の甲2,3に関する主張について既に判断しており,その内容に誤りは
ない。
そして原告は,甲7,11は,フレームの底面に設けた開口部に対し,底
面板や底蓋を展開状態と,部品の飛び出しを防止する状態との間で開閉さ
せることが日常的になされていることを示唆するものであり,上記構造が
ホースリールの分野を含めた産業分野で汎用的な周知慣用技術に属すると
主張する。
しかし,甲11は ,「ボックス型パレット」を発明の名称とし,その技術
分野は , 例えば,穀物や飼料,或いは木屑,鉄屑等の各種の物品を収容し,

フォークリフト等でトラックの荷台等にその収容物を排出することが可能
な底開閉式のボックス型パレットに関する 。 (段落【0001 】
」 )ものであ
る。従って,甲7同様,本件特許発明2のホースリールとは全く相違する
ものであり,また,甲11には,本件特許発明2のホースリールにおける
脚部に相当するものは存在せず,また,「該フレームよりも側方へ延出した
展開状態と,前記開口部に配置されて梱包時において前記開口部内に収容
された部品の飛び出しを防止する状態との間で開閉される脚部を設け」る
という技術事項を示すものでもない。
甲7,11は,開口部が何らかの手段で閉鎖したり,開口したりすること
が公知であることを一般的に示すものであって,「前記フレーム下部に,該
フレームよりも側方へ延出した展開状態と,前記開口部に配置されて梱包
時において前記開口部内に収容された部品の飛び出しを防止する状態との
間で開閉される脚部を設け」ることについて開示や示唆するものではない。
したがって,本件特許発明2が,甲2,3,7,11に基づいて当業者が
容易に発明できたものであるとする原告の主張は誤りであり,審決の判断
は正当である。
第4 当裁判所の判断
1 請求原因(1)(特許庁における手続の経緯 ),(2)(発明の内容 ),(3)(審決
の内容)の各事実は,いずれも当事者間に争いがない。
そこで,原告主張の取消事由について,以下順次判断する。
2 取消事由1(明確性要件違反についての判断の誤り)について
(1) 原告は,原告は,本件特許発明2の①「側方へ延出した展開状態」の文
言,②「開閉される」の文言は明確ではないから,いわゆる明確性要件(特
許法36条6項2号)に反するところ,審決がこれを認めなかったのは誤り
である旨主張するので検討する。
ア 本件明細書(甲1〔特許公報〕)には以下の記載がある。
(ア) 特許請求の範囲
・ 「 請求項2】

ホースを巻き取るドラムがフレームに回動自在に支持されたホー
スリールにおいて,
前記フレームを,前記ドラムが収容されるケース状に形成し,当
該フレームに天面を形成するとともに,前記フレームの底面に開口
部を設ける一方,
前記フレーム下部に,該フレームより側方へ延出した展開状態と,
前記開口部に配置されて梱包時において前記開口部内に収容された
部品の飛び出しを防止する状態との間で開閉される脚部を設けたこ
とを特徴とするホースリール。」
(イ) 発明の詳細な説明
・ 「 発明が解決しようとする課題】

しかしながら,このようなホースリールにあっては,フレームを
構成する側板が上部に頂点を有する三角形状に形成されているた
め,店頭販売時に重ねて陳列することができなかった。(段落【0

007】)
・ 「このため,陳列スペースを要するという問題があった。 段落 0

( 【
008】)
・ 「本発明は,このような従来の課題に鑑みてなされたものであり,
陳列時における省スペース化を図ることができるホースリールを提
供することを目的とするものである。(段落【0009】
」 )
・ 「また,請求項2のホースリールにおいては,ホースを巻き取るド
ラムがフレームに回動自在に支持されたホースリールにおいて,前
記フレームを,前記ドラムが収容されるケース状に形成し,当該フ
レームに天面を形成するとともに,前記フレームの底面に開口部を
設ける一方,前記フレーム下部に,該フレームより側方へ延出した
展開状態と,前記開口部に配置されて梱包時において前記開口部内
に収容された部品の飛び出しを防止する状態との間で開閉される脚
部を設けた。(段落【0011】
」 )
・ 「すなわち,ドラムを支持するフレームは,前記ドラムを収容する
ケース状に形成されており,当該フレームには天面が形成されてい
る。このため,店頭販売時には,前記フレーム上に他のホースリー
ルが積み重ねられて陳列される 。(段落【0012 】
」 )
・ 「そして,ホースが巻かれたドラムの露出が前記フレームによって
防止されるため,陳列時の外観品質が高められる。さらに,使用時
には,汚れが付着したホースが前記フレームによって隠蔽されると
ともに,ホースへの紫外線の照射が遮断される 。 段落 0013】

( 【 )
・ 「また,梱包時において,別体化されたホース接続プラグや回転操
作用のハンドルなどの構成部品がフレーム底面の開口部内に収容さ
れる。また,使用時には,ホースに結露した水滴がフレーム外へ排
出される。(段落【0014】
」 )
・ 「さらに,脚部をフレーム下部に配置した状態で,フレーム底面の
開口部が前記脚部で塞がれる。(段落【0015 】
」 )
・ 「 発明の実施の形態】

以下,本発明の一実施の形態を図に従って説明する。図1は,本
実施の形態にかかるホースリール1を示す図であり,該ホースリー
ル1は,散水用のホースを巻き取る際に使用されるものである。」
(段落【0027】)
・ 「このホースリール1は,フレームを構成する矩形状の本体ケース
11を備えてなり,該本体ケース11は,図2にも示すように,上
方に開口した容器状の下部容器12と,下方に開口した容器状の上
部容器13とが結合され形成されている。この本体ケース11内に
は,図3に示すように,ホース14を巻き取る為のドラム15が収
容されており,該ドラム15は,ホース挿通穴16を貫通したホー
ス14が巻かれる円筒状の胴部17と,該胴部17の両端部に設け
られた鍔部18,18とによって構成されている。(段落【002

8】

・ 「前記下部容器12の底面61には,図7にも示すように,矩形状
の底部開口部62が開設されており,本体ケース11は,この底部
開口部62を介して外部に連通している。(段落【0035】
」 )
・ 「また,前記底面61には,横長の脚固定部材65,65が前面側
及び後面側の各縁部に沿ってネジ止めされている。両脚固定部材6
5,65の両端部には,図8にも示すように,十字状の軸部66,
66が互いに対向する方向へ突設されており,対向した軸部66,
66には,同形状に形成された脚部67,67が回動自在に支持さ
れている 。(段落【0036】
」 )
・ 「この脚部67の両端部には,前記軸部66,66に外嵌する円筒
部71,71が基端部72に形成されており,この円筒部71には,
先端へ向けて延出する上面部73が一体形成されている。前記両脚
部67,67は,前記円筒部66,66を中心に回動することによ
って,図9に示すように,両脚部67,67の先端が前記本体ケー
ス11の下部に配置され両脚部67,67が前記底面開口部62の
下部に配置された折り畳み状態74と,図1に示したように,両脚
部67,67の先端が本体ケース11より側方へ延出し,かつ前記
本体ケース11の底面61に当接して(図8参照)回動が規制され
た展開状態75とを任意に形成できるように構成されている。(段

落【0037】)
・ 「これにより,展開状態75において,本体ケース11の起立状態
の安定化を図れるように構成されており,前記折り畳み状態74に
あっては,底面61に開設された前記底面開口部62を前記脚部6
7,67によって閉鎖できるように構成されている。(段落【00

38】)
・ 「前記上面部73は,一方の脚部67を他方の脚部67に先行して
折り畳んで図9に示した折り畳み状態74を形成した際に,両脚部
67,67の基端部72,72より先端側が重なる長さに形成され
ており,その裏面には,複数のリブ81,・・・と,その両側縁か
ら延出したフランジ82,82とが一体形成されている。このフラ
ンジ82,82及び前記リブ81 ,・・・の高さ寸法は,図8にも
示したように,基端部72から先端へ向かうに従って低くなるよう
に設定されており,各脚部67の厚み寸法は,前記本体ケース11
に軸支された基端部72から先端へ向かうに従って薄肉になるよう
に設定されている。(段落【0039】
」 )
・ 「さらに,両脚部67,67は,図9に示したように,前記折り畳
み状態74にて重なり合う全域での厚み寸法の和が,両脚部67,
67で最も厚い基端部72での厚み寸法以下となるように,前記重
合部83での厚み寸法が設定されており,前記折り畳み状態74に
おいて,両脚部67,67が,前記脚部固定部材65の下面より上
方に位置するように構成されている。(段落【0040】
」 )
・ 「この状態で,脚部67,67を本体ケース11下部に折り畳むこ
とにより,当該脚部67,67によって底面開口部62を閉鎖する
ことができる。これにより,底部開口部62内に収容した前記接続
プラグ51や前記ハンドル47の不用意な飛び出しを防止すること
ができる 。(段落【0053】
」 )
・ 「 発明の効果】

以上説明したように,本発明の請求項1及び2のホースリールに
あっては,ケース状のフレーム上に,他のホースリールを積み重ね
て陳列することができる 。(段落【0059】
」 )
・ 「このため,ホースリールを積み重ねることができない従来のホー
スリールと比較して,店頭陳列時の省スペース化を図ることができ
る。したがって,少ないスペースで,より多くのホースリールを陳
列することができる。(段落【0060】
」 )
・ 「また、梱包時において、別体化されたホース接続プラグや回転操
作用のハンドルなどの構成部品を、フレーム底面の開口部内に収容
することができる。これにより、梱包時のコンパクト化を図ること
ができる 。(段落【0062】
」 )
・ 「さらに,脚部をフレーム下部に配置することにより,当該脚部に
よってフレーム底面の開口部を閉鎖することができる。これにより,
開口部内に収容した構成部品の不用意な飛び出しを防止することが
できる。(段落【0064】
」 )
(ウ) 図面(かっこ内は【図面の簡単な説明】の記載である)
・ 図1】
【 (本発明の一実施の形態を示す斜視図である。)
・ 図4】 同実施の形態の平面図である 。
【 ( )
・ 図8】
【 (図4のC−C断面に相当する図である。)
・ 図9 】
【 (同実施の形態の折り畳み状態を示す要部の断面図である 。)
イ 上記アの記載によれば,まず「側方へ延出した展開状態」に関しては,
本件特許発明2は,脚部をフレームより側方へ延出した展開状態と,開口
部内に収容された部品の飛び出しを防止する状態との間においてフレーム
の開口部が開閉されるところ(請求項2 ),脚部を「側方へ延出し…た展
開状態75」と「折り畳み状態74」とを任意に形成できるようにし(段
落【0037】,脚部を開口部内に収容された部品の飛び出しを防止する

状態(折り畳んだ状態)では,フレーム底面の開口部が脚部により閉鎖な
いし塞がれること(段落【0015 】 【0037】 【図9】 ,
, , ) 「側方へ延
出し…た展開状態75」においては,回動が規制され,本体ケース11の
起立状態の安定化が図れること(段落【0038 】 【図1 】 【図8 】 ,
, , )
その状態(使用時)においてはホースに結露した水滴がフレーム外へ排出
されること(段落【0014】,が示されている。

そうすると,「側方へ延出した展開状態」とは,フレームの脚部が展開
状態となり本体ケースの起立状態の安定化が図れる位置をいうことが明ら
かであって,上記文言は明確であるといえる。
ウ また ,「開閉される」の語に関しても,フレームの底面の開口を開放し
ホースに結露した水滴がフレーム外へ排出される状態である側方へ延出し
た展開状態と,開口部内に収容された部品の飛び出しを防止するため開口
部を閉じた状態との間を,フレームの脚部が移動し開口部が開閉されるこ
とを意味することが明らかであり,その文言も明確である。
エ 上記の検討によれば,本件特許発明2に,いわゆる明確性要件(特許法
36条6項2号)違反は認められないから,審決の判断に誤りはない。
(2) これに対し原告は,「側方へ延出した展開状態」には,フレームの側面の
直下の位置から水平の位置を超えてフレームの側面に当接する位置までの広
い範囲となり,本件特許発明2の効果を奏しない部分も含まれることとなっ
て特定ができず,明確ではないと主張する。
しかし,上記のとおり ,「側方へ延出した展開状態」に関する発明の詳細
な説明の記載によれば,脚部が展開状態となり本体ケースの起立状態の安定
化が図れる位置を指すことは明らかであり,原告の上記主張は採用すること
ができない。
また原告は ,「開閉される」の用語は動きが特定されず,明確ではないと
主張する。しかし,上記のとおり,フレームの脚部を,開口部を閉鎖する位
置から展開状態となり本体ケースの起立状態の安定化が図れる位置までの間
を移動させ,開口部を開閉することができることは,明細書の発明の詳細な
説明に記載されており,またその文言も明確であるから,原告の主張は採用
することができない。
3 取消事由2(進歩性判断の誤り)について
(1) 原告は,本件特許発明2は,甲2,3,7,11に記載された発明に基
づいて当業者が容易に発明できたものであるから,審決の判断は誤りである
と主張する。
ア 原告は,審決が主引用例として用いた甲2について ,「踏み台部2とホ
ースリール部3とから構成され ,踏み台部2は,外郭を構成する本体5と,
本体5の上側を塞いで踏み台となる蓋体6とからなると共に,ホースを巻
き取る巻き取りドラムを備えていることが記載されている」と主張する。
そこで検討すると,甲2(特開平9−195653号公報,発明の名称
「ホースリール付き踏み台」,出願人 アイリスオーヤマ株式会社,公開日
平成9年7月29日)には,以下の記載がある。
(ア) 特許請求の範囲
・ 「 請求項1】外郭を構成する本体と,この本体の上側を塞いで

踏み板となる蓋体と,前記本体内に2個並列に連接して収納され互
いの間で水の流れを許容すると共に個別にホースを巻き取る巻取り
ドラムと,各巻取りドラムの間に装着され各巻取りドラムの回転軸
を回転可能に支持する中間支持体と,連接された2個の巻取りドラ
ムの外側を回転可能に支持する外側支持体と,前記各巻取りドラム
の間に前記中間支持体を挟んで装着されて各巻取りドラムの回転軸
をその回転を許容した状態で掴んで支持する回転軸支持板と,各巻
取りドラムの回転軸に外部から連結してこのドラムを回転させてホ
ースを巻き取るハンドルとを備えて構成されたことを特徴とするホ
ースリール付き踏み台。」
(イ) 発明の詳細な説明
・ 「本発明は以上述べたような問題点に鑑みてなされたもので,容
易に使用できかつ容易に収納できるように使い勝手及び作業効率
の向上を図ったホースリール付き踏み台を提供することを目的と
する。(段落【0008】
」 )
・ 「このホースリール付き踏み台1は,踏み台にホースリールを格
納して一体品とし,ホースの収納,洗車等の際の使い勝手及び作
業効率の改良を図ったものである。ホースリール付き踏み台1は
具体的には,踏み台部2とホースリール部3とから構成されてい
る。(段落【0015 】
」 )
・ 「踏み台部2は,外郭を構成する本体5と,この本体5の上側に
着脱自在に取り付けられた蓋体6とから構成されている。 (段落

【0016】)
・ 「 発明の効果】以上詳細に説明したように本発明によれば,次

の効果を奏することができる。(段落【0060】
」 )
・ 「 1) 踏み台内にホースリールを格納したので,踏み台とホー

スリールとを個別に揃える場合に比べて,嵩張らず,整理,収納
等が容易になる 。(段落【0061】
」 )
・ 「 2) 使用する場合に,ホースの配設がそのまま踏み台の設置

になり,別体の外箱を取り外して使用する等の作業を要しない。
このため,使い勝手が大幅に向上する 。(段落【0062】
」 )
・ 「 3) 収納する場合は,ホースを巻取りドラムに巻き取ってそ

のまま車庫の片隅等に置くだけで済むので,かたづけが容易であ
ると共に,嵩張らず,整理,収納等も容易になる 。 (段落【00

63】)
・ 「 4) ハンドルは使用しないときには蓋体の係止爪取り付けて

収納しておき,使用するときだけ取り出すので,ホースリール付
き踏み台の持ち運びや洗車等の作業の際に邪魔にならなず,この
ホースリール付き踏み台の使い勝手がさらによくなる 。 段落 0

( 【
064 】)
(ウ) 図面(かっこ内は【図面の簡単な説明】の記載である)
・ 【図1】(本発明に係るホースリール付き踏み台をその蓋体を取
り外した状態で示す斜視図である。)
イ 上記によれば,甲2発明には,審決が本件特許発明2との一致点として
認定した「 ホースを巻き取るドラムがフレームに回動自在に支持された

ホースリールにおいて,前記フレームを,前記ドラムが収容されるケース
状に形成し,当該フレームに天面を形成するとともに,前記フレームの底
面に開口部を設けたホースリール』である点 。」が開示されているといえ
る。
そして原告も,甲2発明と本件特許発明2との一致点については同旨の
主張をしていることから,審決が甲2発明と本件特許発明2との相違点と
して認定した「本件特許発明2は,フレーム下部に,該フレームより側方
へ延出した展開状態と,開口部に配置されて梱包時において前記開口部内
に収容された部品の飛び出しを防止する状態との間で開閉される脚部を設
けているのに対し,甲2発明は,そのような構成を有していない点。」と
の点につき,原告が主張するように甲3,7,11に開示があるかが問題
となるので,以下検討する。
ウ 甲3(特開平11−246123号公報,発明の名称「ホースリール」,
出願人 アイリスオーヤマ株式会社,公開日 平成11年9月14日 )には,
以下の記載がある。
(ア) 特許請求の範囲
・ 「 請求項1】 左右一対のフレームの間にホース巻取り用のドラム

が保持され,前記左右一対のフレームの下部が,前記ドラムの回転
中心と直交する前後方向の両側部を下部連結軸を介してそれぞれ連
結されるとともに,前記左右一対のフレームの上部が,前記下部連
結軸と平行する上部連結軸を介して連結されたホースリールにおい
て,前記左右一対のフレームの前記両側部の双方の下部連結軸に,
他方の下部連結軸との間に収容された非使用位置から,下方へ向か
い回動され,前記左右一対のフレームの両側部よりも前記前後方向
の外側に振り出されかつ回動限界に達した使用位置まで回動する踏
板部を有するステップがそれぞれ軸支される一方,各々のステップ
に,前記非使用位置への回動に伴い前記左右一対のフレームの少な
くともいずれか一方の裏面側にそれぞれ設けられた係合凸部に係合
され,前記各々のステップの使用位置方向への回動を防止する被係
合凸部が設けられたことを特徴とするホースリール。」
(イ) 発明の詳細な説明
・ 「かかる構成において,使用時には,左右一対のフレームの下部の
両側部に設けられた各々のステップを使用位置に回動させることに
より,ホースリールの下部側の寸法を上部側よりも大きくして安定
性を確保し得る。しかも,各々のステップを非使用位置に回動させ
ることにより,ホースリールの下部側の寸法を小さくできる 。 (段

落【0008】)
・ 「さらに,各々のステップには,非使用位置への回動に伴い左右一
対のフレームの少なくともいずれか一方の裏面側にそれぞれ設けら
れた係合凸部に係合され,各々のステップの使用位置方向への回動
を防止する被係合凸部が設けられているため,各々のステップが非
使用位置にある状態でホースリールを移動して別の場所に設置する
とき,移動時に各々のステップが下方へ回動することにより,ホー
スリールが設置しにくくなるといった事態の発生が未然に防止され
る。(段落【0009】
」 )
・ 「このホースリール1は主として本体2と,本体2に回動自在に保
持されたドラム3とにより構成されている。本体2は,一対の左右
フレーム4,5と,左右フレーム4,5の双方の上部を連結する上
部連結軸であるグリップ6と,左右フレーム4,5の下部の双方の
両側部を連結する下部連結軸である後述する連結パイプ13(図7
参照)とから構成されており,この連結パイプ13にはステップ1
7がそれぞれ回動自在に軸支されている。(段落【0023】
」 )
・ 「そして,双方のステップ17は,図7に示したように,踏板部1
9が左右フレーム4,5の下部において他方側の連結パイプ13と
の間に収容されるとともに,前記被係合凸部20が前述した断面L
字型の係合凸部15に係合した非使用位置(aに示した位置)から,
下方へ向かい回動され左右一対のフレーム4,5の両側部よりも前
後方向の外側に振り出されるとともに,被係合凸部20が前述した
ネジ止め部16に当接して回動限界に達した使用位置まで回動する
ようになっている。(段落【0028】
」 )
・ 「一方,非使用位置にあるとき双方のステップ17は,それに設け
られた被係合凸部20が左右フレーム4,5に設けられた係合凸部
15に係合することにより使用位置方向への回動を防止される。こ
のため,ステップ17が非使用位置にある状態でホースリール1を
移動して別の場所に設置するとき,移動時に各々のステップ17が
勝手に下方へ回動することにより,ホースリール1が設置しにくく
なるといったような,ステップ17を単に回動自在に設けた場合に
生ずる別の問題を解決することができる。よって,ステップ17が
存在することによる使い勝手の低下を未然に防止できる。 段落 0

( 【
038】)
・ 「また,ステップ17においては,係合凸部15に係合する被係合
凸部20が,軸受部12に外嵌する枢軸部18に,つまりその回動
中心に近接した位置に設けられているため,非使用位置にあるとき
の被係合凸部20と係合凸部15との係合力が高く設定されていて
も,ステップ17の非使用位置から使用位置への回動操作を容易に
行い得る。(段落【0039】
」 )
・ 「よって,ステップ17の操作性を低下させることなく,非使用位
置にあるときのステップ17と左右フレーム4,5との係合力を高
く設定して,ステップ17の不用意な回動を確実に防止することが
できる 。(段落【0040】
」 )
・ 「また,ステップ17を使用位置に回動した状態で,別途用意した
ペグをペグ穴21に貫通し地面に突き刺せば,使用時のホースリー
ル1を簡単な作業により強固に位置固定できる。よって,使い勝手
がよい。(段落【0041】
」 )
(ウ) 図面(かっこ内は【図面の簡単な説明】の記載である)
・ 【図1】(本発明の一実施の形態を示す斜視図である)
・ 【図5】(ステップを示す平面図である)
・ 【図7】(ステップの使用位置と非使用位置を示す操作説明図であ
る)
(エ) 上記(ア)∼(ウ)の記載によれば,甲3には,フレームの下部連結軸
との間に収容された非使用位置から,外側に振り出されて回動限界に達
する使用位置まで回動するステップについて記載されているところ(請
求項1 ),このステップは非使用位置においては,ホースリールの下側
部の寸法を小さくできるとの利点を有するとされるものの(段落【00
08】,ステップが非使用位置においてフレームの開口部を閉鎖して開

口部内に収容された部品の飛び出しを防止する点に関する記載はない
し,そもそも甲3のフレームは開口部を有さず,またステップの大きさ
も左右フレームと連結軸の各幅から構成される底面積に比して相当に小
さいことが看て取れる(図1)。
エ 甲7(特開2001−278402号公報(発明の名称「廃棄物処理用
コンテナ」,出願人 トピー工業株式会社,公開日 平成13年10月10
日))には,以下の記載がある。
(ア) 特許請求の範囲
・ 「 請求項1】四囲を正面壁および側面壁により囲まれた方形の本

体枠と,該本体枠の正面壁における左右両側の底部またはその付近
に,各側面壁と平行に形成された蝶番機構を介して観音開き状に開
閉自在に取り付けられた一対の底面板と,本体枠の両側の正面壁面
に,水平方向に一定の間隔を介して,それぞれ中間部をピンにより
該正面壁に対して回動自在に取り付けられ,しかも下端部を,その
下方に有するところの,前記底面板に沿って蝶番機構による取り付
け部から開閉自由端方向にかけて摺接可能に保持させるとともに,
上端を側壁上端縁付近に位置させた左右一対のリンク板と,同一底
面板を保持する対称位置のリンク板上端部間にそれぞれ取り付けら
れた一対のフォーク爪差し込み部とからなり,該一対のフォーク爪
差し込み部内にフォーク爪を差し込んでフォーク爪相互間の間隔を
変化させることにより前記底面板を開閉するようにしたことを特徴
とする廃棄物処理用コンテナ。」
(イ) 発明の詳細な説明
・ 「 発明の実施の形態】以下において本発明の具体的な内容を図1

∼4にあらわした廃棄物処理用のコンテナの一実施例をもとに説明
すると,1は本体枠,6および7は底面板,8a・8bはリンク板,
18および19はフォーク爪差し込み部をあらわす。 本体枠1は四
囲を金属板による正面壁2・2および側面壁3・3により囲まれて
方形をなし,しかも上面を開口させている。 正面壁2・2は,上端
縁中央部に,それぞれフォーク爪差し込み部18・19に略等しい
高さの突出部2a・2aを有する。(段落【0010】
」 )
・ 「さらに底面板6及び7は,本体枠1の底面開口を閉塞するに十分
な大きさであって,均等な大きさからなる左右一対の金属板により
構成され,一端を本体枠1の正面壁2・2における左右両側の底部
またはその付近に凸設された脚部4・4に,それぞれ対称側の脚部
4・4との間に各側面壁3・3と平行に架け渡された軸5・5によ
り形成された蝶番機構5a・5aを介して観音開き状に開閉自在に
取り付けられているとともに,それぞれの自由端には脚部6b・6
bおよび7b・7bが取り付けられている。(段落【0011 】
」 )
・ 「またリンク板8a・8bは,それぞれ本体枠1の両側の正面壁2
・2に,水平方向に一定の間隔を介して,中間部をピン12・13
により該正面壁2に対して回動自在に取り付けられ,しかも下端部
を,その下方に有するところの,前記底面板6・7に沿って蝶番機
構5a・5aによる取り付け部から開閉自由端方向にかけて摺接可
能に保持させる 。(段落【0012】
」 )
・ 「なお,本実施例においては,リンク板8a・8bの下端部により,
底面板6および7に沿って蝶番機構5a・5aによる取り付け部か
ら開閉自由端の脚部6b・6bおよび7b・7b方向にかけて摺接
可能に保持させる構造は,同一底面板6又は7を保持する対称位置
のリンク板8a・8aの下端部間に,それぞれ摺接保持バー10・
11を架け渡し,これを底面板6および7のそれぞれの外側に常時
摺接させて保持させるようにした。(段落【0013】
」 )
・ 「 発明の効果】本発明は上記した通り,四囲を正面壁および側面

壁により囲まれた方形の本体枠と,該本体枠の正面壁における左右
両側の底部またはその付近に,各側面壁と平行に形成された蝶番機
構を介して観音開き状に開閉自在に取り付けられた一対の底面板と,
本体枠の両側の正面壁面に,水平方向に一定の間隔を介して,それ
ぞれ中間部をピンにより該正面壁に対して回動自在に取り付けられ,
しかも下端部を,その下方に有するところの,前記底面板に沿って
蝶番機構による取り付け部から開閉自由端方向にかけて摺接可能に
保持させるとともに,上端を側壁上端縁付近に位置させた左右一対
のリンク板と,同一底面板を保持する対称位置のリンク板上端部間
にそれぞれ取り付けられた一対のフォーク爪差し込み部とからなり,
該一対のフォーク爪差し込み部内にフォーク爪を差し込んでフォー
ク爪相互間の間隔を変化させることにより前記底面板を開閉するよ
うにしたために,廃棄物のコンテナ底部からの底離れがよく,した
がってとくに金属切削により生じた切り粉のような高粘性の廃棄物
類の取り扱いに適し,廃棄物類を現場から輸送用トラックに積み込
み,あるいは廃棄物保管または廃棄場に搬送する際においてフォー
クリフトによる操作だけで簡単に底面を開放または閉塞することが
でき,したがって,作業労力の軽減と著しい安全性の向上をはかる
ことができる。(段落【0021】
」 )
(ウ) 図面(かっこ内は【図面の簡単な説明】の記載である)
・ 【図3】 廃棄物処理用コンテナの底面を開口させた状態の斜視図)

(エ) 上記(ア)∼(ウ)によれば,甲7には,廃棄物処理用コンテナの底面
が開閉自在な一対の底面板から成り(請求項1 ),底面板は底面開口を
閉塞するに十分で,かつ左右均等な大きさであり,蝶番機構を介して観
音開き状に開閉され(段落【0011 】,これにより廃棄物のコンテナ

底部からの底離れがよく,廃棄物の取扱いに適している(段落【002
1】)との記載がある。
しかし,甲7の底面板は,一対の同じ大きさとしてこれが観音開きに
開放することにより廃棄物類のコンテナ底部からの底離れを良くするも
のであるところ,この底面板は,開放時においてコンテナを支持する役
割を果たすものではなく,単に底面を開放することを示しているにすぎ
ない。
オ また原告が,本件訴訟において,周知技術を示す証拠として提出する甲
11(特開2002−104582号公報,発明の名称「ボックス型パレ
ット」出願人 株式会社豊田自動織機及び有限会社日向エンジニアリング,

公開日 平成14年4月10日)には,以下の記載がある。
(ア) 発明の詳細な説明
・ 「図1∼図3に示すように,ボックス型パレット1は,四角形の箱
形に形成されたボックス本体2を主体に構成されている。ボックス
本体2は上部には収納物を受容可能な投入用開口3を有し,下部に
は収容物を排出可能な排出用開口4(図3参照 )を有する 。そして,
ボックス本体2の底部には,排出用開口4を開閉する外開き式でか
つ観音開き式の2枚の底蓋7,8が備えられている。また,ボック
ス本体2は4隅に支脚5を有している。従って,地上に置かれた状
態では,底蓋7,8の下面が地上から支脚5の長さ相当分だけ浮上
するようになっている。更にボックス本体2の下部には,フォーク
リフトのフォークF(図1の仮想線参照)を差し込むことが可能な
フォークポケット形成用の2本の角筒体6が平行に配設されている。
両角筒体6は前記排出用開口4を横切って水平に延在されており,
収容物の引っかかりを防止するために,排出用開口4(ボックス本
体2内)を横切る部位の上面が山形に形成されている。なお,以下
の説明では,便宜上,フォークFの挿入方向を前後方向,それに直
交する方向を左右方向といい,フォーク差し込み口側(図1の左側)
を前側という。従って,底蓋7,8については,一方を前側の底蓋
7といい,他方を後側の底蓋8という 。(段落【0011】
」 )
・ 「…このため,底蓋7,8のロックが解除されて前後の底蓋7,8
が下方へ回動し,排出用開口4が開放されることになる。従って,収
容物が荷台に排出される。(段落【0023】
」 )
(イ) 図面(かっこ内は【図面の簡単な説明】の記載である)
・ 【図1】(本実施の形態に係るボックス型パレットの全体を示す側
面図であり,底蓋の開放状態が実線で示されている。)
(ウ) 上記(ア),(イ)によれば,ボックス型パレットにおいて,排出用の
開口を開閉する観音開き式の底蓋が示され(段落【0011】,底蓋が

回動して排出用開口が開放されることにより収容物が荷台に排出される
構成が示されている(段落【0023 】)が,このボックス型パレット
においても底蓋は開閉して収容物を排出することはできるものの,開放
時においてボックスを支持する役割を果たすものではない。
カ 上記ウ∼オによれば,甲3にはステップが回動することは記載されてい
るが,ステップが開口部を閉鎖して開口部に収容された部品の飛び出しを
防止する機能を有するものではない。また甲7,11のようなコンテナや
パレットにおいて,底面を開口できるようにすることが周知技術であると
しても,ホースリールにおいて開口部の閉鎖開口を行うことを開示するも
のではなく,ホースリールのフレームの脚部が移動して開口部の開口や閉
鎖を行うことを開示ないし示唆するものでもない。
そうすると,本件特許発明2は,甲2,3,7,11に基づき容易に発
明できたということはできず,これと同旨の審決に誤りはない。
(2) これに対し原告は,甲7,11は,フレームの底面に設けた開口部に対
し,底面板や底蓋を展開状態と,部品の飛び出しを防止する状態との間で開
閉させることは周知技術であり,必要に応じ,適宜採用し得るものであるか
ら,甲2の本体(本件特許発明2のフレームに相当)の底部に甲3のステッ
プを取り付ける際に,甲7,11のような周知技術の構造を採用することは ,
ホースリールの分野では容易であり,本件特許発明2は容易に想到し得たと
主張する。
しかし,甲2発明,甲3発明は,本件特許発明2と同じくホースリールに
関する発明であるものの,本件特許発明2の課題である店頭販売時に重ねて
陳列することを可能にし省スペース化を図ること,及び開口部を脚部により
閉鎖して開口部内に収容した構成部品の飛び出しを防止する点に関しては何
ら記載がなく,本件特許発明2のようにホースリールのフレームの脚部が移
動して開口部の開口や閉鎖を行うことを想到するための動機付けもないか
ら,甲7,11のコンテナ,パレットの底面に設けた開口部について,底面
板や底蓋を,展開状態と部品ないし内容物の飛び出しを防止する状態との間
で開閉することが周知であるとしても,それを採用することが容易とはいえ
ない。
さらに,甲7,11には,本件特許発明2の,フレームの脚部によりフレ
ーム底面の開口部を展開状態と閉鎖状態との間で開閉することにより,閉鎖
しない位置に取り付けた場合にはケースの起立状態の安定化が図れ,開口部
を閉鎖した位置においては開口部内に収容された構成部品の飛び出しを防止
するという技術思想は,記載も示唆もされていないから,甲2の本体の底部
に,甲3のステップを取り付ける際に甲7,11の周知技術を採用したとし
ても,本件特許発明2の構成が想到されるわけではないというべきであるか
ら,原告の上記主張は採用することはできない。
4 結語
以上のとおりであるから,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。
よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所 第2部
裁判長裁判官 中 野 哲 弘
裁判官 今 井 弘 晃
裁判官 清 水 知 恵 子

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