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平成19(行ケ)10366審決取消請求事件

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裁判所 請求棄却 知的財産高等裁判所
裁判年月日 平成20年6月18日
事件種別 民事
当事者 被告特許庁長官
原告株式会社SNKプレイモア
対象物 ゲーム機における画像処理方法(ただし,出願時
法令 特許権
特許法29条2項4回
キーワード 審決40回
進歩性8回
新規性3回
実施2回
分割1回
優先権1回
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事件の概要 1 本件は,発明の名称を「ゲーム機における画像処理方法 (ただし,出願時」 の名称は「ゲーム機における画像処理方法及び当該方法を実行可能なプログラ ムを記憶した記憶部 )とする後記特許につき株式会社エス・エヌ・ケイ(以」 下「訴外会社」という)が出願し,その後同社(破産管財人)から権利の譲渡 を受けて出願人としての地位を承継した原告が拒絶査定を受けたので,これを , ,不服として審判請求をしたが 特許庁から請求不成立の審決を受けたことから その取消しを求めた事案である。

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判決文

判決言渡 平成20年6月18日

平成19年(行ケ)第10366号 審決取消請求事件

口頭弁論終結日 平成20年6月11日

判 決

原 告 株式会社SNKプレ イモア

訴訟代理人弁理士 岩 永 和 久

同 永 田 健 太 郎

被 告 特 許 庁 長 官

肥 塚 雅 博

指 定 代 理 人 西 山 昇

同 井 上 健 一

同 内 山 進

主 文

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

特許庁が不服2006−19626号事件について平成19年9月4日にした審決を取り消す。

第2 事案の概要

1 本件は,発明の名称を「ゲーム機における画像処理方法 」(ただし,出願時の名称は「ゲーム機における画像処理方法及び当該方法を実行可能なプログラムを記憶した記憶部」)とする後記特許につき株式会社エス・エヌ・ケイ(以下「訴外会社」という)が出願し,その後同社(破産管財人)から権利の譲渡を受けて出願人としての地位を承継した原告が拒絶査定を受けたので,これを不服として審判請求をしたが,特許庁から請求不成立の審決を受けたことから ,その取消しを求めた事案である。2 争点は,上記本願が特開平6−259573号公報(発明の名称「3次元グラフィックスデータ生成装置,出願人 大阪瓦斯株式会社,公開日 平成6年9月16日,甲1。以下この文献を「引用例」といい,そこに記載された発明を「引用発明」という)との関係で進歩性を有するか(特許法29条2項),である。

第3 当事者の主張

1 請求原因

(1) 特許庁における手続の経緯

訴外会社は,優先権主張を平成10年3月16日(日本)として,平成10年12月24日にした原出願(特願平10−366725号)からの分割出願として,平成12年6月9日,名称を「ゲーム機における画像処理方法及び当該方法を実行可能なプログラムを記憶した記憶部」とする発明について特許出願(特願2000−173231号,請求項の数2,以下「本願」という。甲7。公開公報〔特開2001−28064号〕は甲4)をし,その後訴外会社から原告(旧商号 株式会社プレイモア)が権利の譲渡を受け,平成13年12月14日付けで特許庁に対し名義変更届(甲5)を提出したところ,特許庁から拒絶理由通知を受けたので,原告は,平成18年3月3日付けで,発明の名称を「ゲーム機における画像処理方法」と改称し特許請求の範囲の変更(請求項の数1)等を内容とする補正(以下「本件補正」という。甲3)をしたが,平成18年8月1日付けで拒絶査定を受けた。そこで原告は,これに対する不服の審判請求をしたので,同請求は不服2006−19626号事件として係属したが,特許庁は,平成19年9月4日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は平成19年9月26日原告に送達された。

(2) 発明の内容

本件補正後の請求項の数は前記のとおり1であるが,その内容は次のとおりである(下線は補正部分。以下この発明を「本願発明」という。。)「 請求項1】【 ゲームプログラムやゲームプレーヤのゲーム入力操作によって進行するゲームに応じて,その都度,ゲーム機内で演算処理手段により3次元の演算処理を行い,前記ゲーム機のゲーム画面に映像を表現するゲーム機における画像処理方法であって,前記演算処理手段が,ワールド座標系に複数のオブジェクトを配置するステップと,前記演算処理手段が,ワールド座標系に配置された前記複数のオブジェクトから,ゲームプレーヤのゲーム入力操作に応じて特定のオブジェクト又はその特定のオブジェクトの特定の部位を適宜変更しつつ選定し,この選定した特定のオブジェクト又はその特定のオブジェクトの部位にピントが合うように設定するステップと,前記演算処理手段が,前記ピントが合うように設定された特定のオブジェクト又は特定のオブジェクトの特定の部位から奥行きに応じて漸次強くなるぼかし処理を他のオブジェクトに施すステップとを含み,上記ステップを繰り返し,前記ゲーム画面に前記オブジェクトが動くような動画表現を行うことを特徴とするゲーム機における画像処理方法。」

(3) 審決の内容

ア 審決の内容は,別添審決写しのとおりである。その理由の要点は,本願発明は,その出願前に頒布された前記引用例に記載された発明(引用発明)及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたから,特許法29条2項により特許を受けることができない,としたものである。イ なお審決は,上記判断をするに当たり,本願発明と引用発明との一致点及び相違点を次のとおり認定した。[一致点]「演算処理手段により3次元の演算処理を行い,画面に映像を表現する画像処理方法であって,前記演算処理手段が,ワールド座標系に複数のオブジェクトを配置するステップと ,前記演算処理手段が,ワールド座標系に配置された前記複数のオブジェクトから,入力操作に応じて特定のオブジェクト又はその特定のオブジェクトの特定の部位を選定し,この選定した特定のオブジェクト又はその特定のオブジェクトの部位にピントが合うように設定するステップと,前記演算処理手段が,前記ピントが合うように設定された特定のオブジェクト又は特定のオブジェクトの特定の部位から奥行きに応じて漸次強くなるぼかし処理を他のオブジェクトに施すステップとを含むことを特徴とする画像処理方法。」である点。[相違点]本願発明が,「ゲームプログラムやゲームプレーヤのゲーム入力操作によって進行するゲームに応じて,その都度,ゲーム機内で」演算処理を行い,「ゲーム機のゲーム画面に」映像を表現し,「ゲームプレーヤのゲーム入力操作に応じて特定のオブジェクト又はその特定のオブジェクトの特定の部位を適宜変更しつつ」選定し,演算処理手段にて行われる各処理の「ステップを繰り返し」「ゲーム画面に前記オブ,ジェクトが動くような動画表現を行う」ことを特徴とする ,「ゲーム機における」画像処理方法であるのに対し,引用発明は,特にゲーム機を対象としたものではなく,上記各構成を備えていない点。

(4) 審決の取消事由

しかしながら,以下に述べる次第により,審決は違法として取り消されるべきである。ア 取消事由1(相違点についての判断の誤り)(ア) 審決は,本願発明と引用発明との相違点について,「引用発明も,VR(仮想現実)技術に適用可能なものであり,…引用発明を前記周知のゲーム装置における画像処理方法に適用すること…は,当業者が容易になし得たことである」(6頁23行∼30行)と判断した。a しかし引用発明は ,「CAD,VR(仮想現実)技術等に用いられる3次元グラフィックスデータを生成する装置に関するもの」であり(甲1,段落【0001】,ゲーム装置における画像処理方法に適用)できることについては記載も示唆もなく,引用発明を周知のゲーム装置における画像処理方法に適用することが当業者にとり容易であるとはいえない。b また引用発明は,「注視点入力手段5から,…注視するであろうと思われる点を入力する」(甲1,段落【0029】)との記載からして3次元画像を作成する際に注視点を予め推測しておくものであるが,ゲーム装置における画像処理方法では,引用発明のような「注視点」(=「注視するであろうと思われる点」)は,映像データを非常に多数用意しておく必要のある本願発明のようなゲーム装置における画像処理方法としては非現実的である(本願補正明細書〔甲3〕,段落【0013】。)さらに引用発明は ,「各画面毎 」 「予め各画面に付いて…指定する,方法」との記載(甲1,段落【0029 】 ,) 【0051 】)から,静止画像を対象とするもの,あるいは,少なくとも各画面ごとに指定操作が可能なスピードでコマ送りされている画像を対象とするものであるところ,ゲーム装置における画像処理方法では動作画像を対象として,しかも1秒間に50枚から60枚の表示を行う「動画表現 」(本願補正明細書〔甲3 〕,段落【0017】)を行うため ,「各画面」について注視点を指定することは不可能であり,そのように「各画面」について注視点を指定せずともゲームプレーヤによる特定の1回の指定で「注視点」の指定が継続されるものである。c 引用発明では,注視点指定のための入力操作を要する一方,周知のゲーム装置における画像処理方法においては,ゲーム進行のための 操「作手段から(の)入力信号」であるから,本願発明とは入力の対象も著しく異なる。d このように,引用発明に周知のゲーム装置における画像処理方法 甲(3)を適用することを妨げる事情が存在する。(イ) また引用発明において行われる演算処理は,審決の認定した本願発明と引用発明との一致点記載のとおり ,「演算処理手段が,ワールド座標系に複数のオブジェクトを配置するステップと,前記演算処理手段が,ワールド座標系に配置された前記複数のオブジェクトから,入力操作に応じて特定のオブジェクト又はその特定のオブジェクトの特定の部位を選定し,この選定した特定のオブジェクト又はその特定のオブジェクトの部位にピントが合うように設定するステップと,前記演算処理手段が,前記ピントが合うように設定された特定のオブジェクト又は特定のオブジェクトの特定の部位から奥行きに応じて漸次強くなるぼかし処理を他のオブジェクトに施すステップと 」(審決5頁下10行∼下3行)からなる一連の処理を意味するところ,ここで「注視点」(=「注視するであろうと思われる点」)となる「特定のオブジェクト又はその特定のオブジェクトの特定の部位」を「入力操作に応じて」予め「各画面に付いて…指定して」決めておくものである(甲1,段落【0029】【005,1】 。)一方,本願発明は,「ゲームプレーヤのゲーム入力操作に応じて特定のオブジェクト又はその特定のオブジェクトの特定の部位」が決められるものであり,「動画表現」されている画面において ,「各画面に付いて…指定して」決めるものではなく ,「ゲームプレーヤのゲーム入力操作に応じて」決めることから,予測不可能なゲーム進行に応じた動画表現にピント惚けを考慮したものである。このように,引用発明と本願発明とは異なるものであり,これは本願補正明細書(甲3)の段落【0006】記載の通りである。(ウ) また引用発明において行われる演算処理を,動画表現を行う周知のゲーム装置に適用したとしても,1秒間に50枚から60枚の映像表示をする動画表現を行う演算処理のステップを繰り返すことは,現実的なゲーム装置のスペックからして非現実的な処理となるところから,引用発明は,ぼかし処理の基点となる対象(オブジェクト)が予め決められているものなので,これを周知技術に適用することは困難である。したがって,引用発明において行われる演算処理からは,『ゲームプ「ログラムやゲームプレーヤのゲーム入力操作によって進行するゲームに応じて,その都度,ゲーム機内で』行い,前記演算処理の『ステップを繰り返し』,引用発明における3次元画像の表示方法として『ゲーム画面に前記オブジェクトが動くような動画表現を行う』ように構成すること」は,当業者が容易になし得たことであるとはいえない。(エ) また引用発明では,注視点を入力しないとピントの惚けを考慮した画像を生成できないところ,本願発明は「ゲームプレーヤのゲーム入力操作に応じて…適宜変更しつつ選定し,この選定した特定のオブジェクト…にピントが合うように設定」することから ,「ゲームプレーヤ」による特定のゲーム入力操作で「特定のオブジェクト又はその特定のオブジェクトの特定の部位」の選定が継続されるもので,ピントの惚けを考慮するために引用発明のような注視点の入力を必須とするものではない。そうすると,この点の相違を単なる設計事項であるとする審決の認定は誤りである。(オ) 上記のとおり,引用発明と本願発明との相違点について,引用発明を周知のゲーム装置における画像処理方法に適用することについては阻害事由があり,審決の判断は誤りである。イ 取消事由2(本願発明の作用効果についての判断の誤り)(ア) 審決は,「本願発明の奏する作用効果も,引用発明及び周知技術の奏する作用効果から当業者が予測できる以上の格別のものともいえない」(6頁下2行∼末行)と判断した。(イ) しかし,本願発明の奏する作用効果は,「予測不可能なゲーム進行に応じた動画表現にピントの惚けを考慮 」(甲3,段落【0006 】)することによって,「ゲームプレーヤにゲームを行い易く,リアリテイのある画像演出を提供する」(段落【0042】)ことにある。これに対して引用発明の奏する作用効果は,「少なくとも注視点に付いてはピントを合わせ,その他の部分に付いてはぼかすことができるので,従来の3次元グラフィックスデータに比べて格段の現実感,立体感を表現する」(甲1,段落【0055】)ことにある。また,審決の摘示する周知技術(甲2,特開平6−348860号公報。発明の名称「画像合成装置およびこれを用いたゲーム装置 」,出願人 株式会社ナムコ,公開日 平成6年12月22日)の奏する作用効果は,「…3次元オブジェクトの凹凸のある面を少ないポリゴンの組合わせで表現し,しかも高画質で立体感のある画像を合成する… 」 段落【0(085】)ことにある。このように,本願発明は 予測不可能なゲーム進行に応じた動画表現」「を対象としているが,引用発明及び周知技術はかかる点に鑑みていないことから,本願発明は,引用発明及び周知技術からは予測できない効果がある。(ウ) よって,審決は本願発明の格別の作用効果を看過しており,その誤りは審決の結論に影響を及ぼすものであるから,審決は取り消されるべきである。(エ) なお,本願に対応する米国,韓国及び台湾の特許出願は,米国特許公報6,890,263,大韓民国登録特許公報10−0320053及び中華民国専利公告公報478943に示されるように,登録になっている。これらの米国,韓国及び台湾における特許出願が登録された理由をその出願経過から推察すると,3D技術においては,出願経過に引用された引用例から明らかなように特定のオブジェクトにピントが合うようにぼかし処理を行う技術は公知であるが,これらは何れも操作する人間の意志でピントを合わせるものであり,本願発明のようにソフト側,ゲーム機側が操作する人間の意志に関わりなく特定のオブジェクトに自動的にピント合わせを行う処理に新規性及び進歩性があるものと理解されたものと考えられる。審判において特許庁が提示した一連の証拠(参考資料も含む)の何れにも,上記の発明の動機付け及び技術的思想は一切存在しておらず,又そのための具体的手段も一切記載されていない以上,いかに当業者といえども上記一連の証拠に基づいて本件発明を容易に想到し得るものではないから,本願発明は,特許法29条2項に該当せず,特許を付与し得るのに十分な進歩性を有しているものである。請求原因に対する認否請求原因(1)ないし(3)の各事実は認めるが,同(4)は争う。被告の反論審決の認定判断に誤りはなく,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。

(1) 取消事由1に対し

ア(ア) 審決は「プレーヤが操作する操作手段からの入力信号と,ゲームプログラムとに基づき,仮想3次元空間内において3次元オブジェクトを表現するための演算処理を行い,得られた表示画像をゲーム画面として形成しディスプレイにリアルタイム表示するゲーム装置は,当業者に周知である」(6頁12行∼15行)とし,「また,仮想3次元空間内における3次元オブジェクトをリアルタイムで操作及び表示する技術は,一種のVR(仮想現実)技術であるといえる。(6頁21行∼22行)と」して,周知のゲーム装置における画像処理方法がVR(仮想現実)技術の分野に属するものと説明している。また,より現実感のある画像を表示することは,VR(仮想現実)技術の分野において普通の技術課題であり,VR(仮想現実)技術の分野に属する周知のゲーム装置における画像処理方法にも,より現実感のある画像を表示するという課題は当然あるといえるから ,「従来の3次元グラフィックスデータに比べて格段の現実感,立体感を表現する」(甲1,段落【0055 】)という効果を奏する引用発明を周知のゲーム装置における画像処理方法に適用する動機はあったといえる。また引用発明の適用対象であるVR(仮想現実)技術の分野と,周知のゲーム装置における画像処理方法の属する技術分野とは共通し,かつ,引用発明は,周知のゲーム装置における画像処理方法が有する技術課題を解決する方法といえるから,審決が「引用発明も,VR(仮想現実)技術に適用可能なものであり,…引用発明を前記周知のゲーム装置における画像処理方法に適用すること…は,当業者が容易になし得たことである。(6頁23行∼30行)とした判断に誤りはない。」(イ) また原告は,引用発明は「各画面」について3次元画像を「作成する際」に注視点を「予め」推測又は指定しておくものであるとの解釈を前提として,引用発明を周知のゲーム装置の「動画表現」を行うための画像処理方法として適用することは「非現実的」で,適用を妨げる事情があると主張している。しかし,甲1(引用例)の段落【0024】には ,「この注視点は,後に述べるように,色々な決定の仕方がある。」と記載され,注視点を指定する具体的な方法として,同段落【0049】には,「その人間の頭部には,公知の3次元上の注視点を検出できる注視点検出手段8が付けられており,常時その人間の注視点が検出される。」と記載されている。また,「注視点入力手段」に関しては,同段落【0050】には,「そのような注視点検出手段8によって検出された注視点は,注視点入力手段5に入力される。」と記載され,同段落【0051】には ,「予め各画面に付いて,画像データ作成者が指定する方法」とともに ,「3次元グラフィック画像を見た人が,指定する方法」が例示されている。そうすると引用発明は,その注視点の指定方法として,3次元画像の作成とは独立して,作成された画像を鑑賞しながら常時その人間の注視点を検出する注視点検出手段によって注視点を指定する方法も含むものであるから ,「各画面」について3次元画像を「作成する際」に,注視点を「予め」推測又は指定しておくものに限定されないことは明らかであり,原告が,引用発明は,「各画面」について3次元画像を「作成する際」に,注視点を「予め」推測又は指定しておくものである,と解釈したことは誤りである。(ウ) また原告は,本願発明は 注視点の入力を必須とするものではない」「と主張するが,本願発明における ,「ゲームプレーヤのゲーム入力操作に応じて特定のオブジェクト又はその特定のオブジェクトの特定の部位を適宜変更しつつ選定し,この選定した特定のオブジェクト又はその特定のオブジェクトの部位にピントが合うように設定するステップ」は,ゲームプレーヤのゲーム入力操作に応じて選定して行う処理であることから,操作する人間の意志に関わりなく行う処理とはいえない。これは本願補正明細書(甲3)に「加えて,前記ピントが合うと設定される特定のオブジェクト又は特定のオブジェクトの特定の部位は,前記ゲーム機のゲームプレーヤの操作に応答して適宜変更される 。(段落」【0021 】 ,) 「ここで,視線センサ6を用い,これによってゲームプレーヤのモニター5上における視点の位置を追跡しながら,その視点の位置に基いてピントを設定し,次に詳細に説明するぼかし処理を行うようにする」(段落【0033】)との記載からも明らかである。そうすると本願発明における ,「ゲームプレーヤのゲーム入力操作に応じて特定のオブジェクト又はその特定のオブジェクトの特定の部位を適宜変更しつつ選定」する処理は,繰り返しオブジェクトを配置する各画面に対して,注視点を入力し指定する処理を含むことは明らかであり,また甲1 引用例 )( において ,注視点を指定する方法として例示された,頭部に検出手段を付け常時その人間の注視点を検出する方法は,注視点を適宜変更しつつ選定が継続される注視点指定方法ということができるから,審決が「引用発明において,注視点入力手段5による注視点の入力を,『ゲームプレーヤのゲーム入力操作に応じて特定のオブジェクト又はその特定のオブジェクトの特定の部位を適宜変更しつつ選定』するように行う点は,当業者が必要に応じて適宜採択し得る設計事項にすぎない。(6頁31行∼34行)と判断したことに誤りはない。」イ 審決は「プレーヤが操作する操作手段からの入力信号と,ゲームプログラムとに基づき,仮想3次元空間内において3次元オブジェクトを表現するための演算処理を行い,得られた表示画像をゲーム画面として形成しディスプレイにリアルタイム表示する 」(審決6頁12行∼15行)周知のゲーム装置における画像処理方法について,「そして,このようなゲーム装置は,各種処理がリアルタイムで行われるから,操作手段から入力信号が与えられるたびに,3次元オブジェクトを操作及び表示するための演算処理が繰り返し行われることにより,前記3次元オブジェクトが動くような動画表現が得られることは当業者に明らかである。(6頁17行∼20」行)と説明し,「ゲーム装置」と「ゲーム機」とは単なる表現上の差異であり,また,ゲーム装置における画像処理方法の演算処理がゲーム装置内で行われることは明らかな事項であることを踏まえると,周知のゲーム装置における画像処理方法は,仮想3次元空間内において3次元オブジェクトを表現するための演算処理である,3次元オブジェクトを操作及び表示するための演算処理を「ゲームプログラムやゲームプレーヤのゲーム入力操作によって進行するゲームに応じて,その都度,ゲーム機内で」行い,前記演算処理のステップを繰り返し ,「ゲーム画面にオブジェクトが動くような動画表現を行う」ものといえる。一方, 引用発明において行われる演算処理」 審決6頁25行)が, 演「 ( 「算処理手段が,ワールド座標系に複数のオブジェクトを配置するステップと,前記演算処理手段が,ワールド座標系に配置された前記複数のオブジェクトから,入力操作に応じて特定のオブジェクト又はその特定のオブジェクトの特定の部位を選定し,この選定した特定のオブジェクト又はその特定のオブジェクトの部位にピントが合うように設定するステップと,前記演算処理手段が,前記ピントが合うように設定された特定のオブジェクト又は特定のオブジェクトの特定の部位から奥行きに応じて漸次強くなるぼかし処理を他のオブジェクトに施すステップと 」(審決5頁下10行∼下3行)からなる一連の処理を意味し,VR(仮想現実)技術の分野において,当該処理が仮想3次元空間内において3次元オブジェクトを表現するための演算処理といえることは明らかである。そして,前記のとおり引用発明の適用対象であるVR(仮想現実)技術の分野と,周知のゲーム装置における画像処理方法の属する技術分野とは共通し,かつ,引用発明は,周知のゲーム装置における画像処理方法が有する,より現実感のある画像を表示するという技術課題を解決する方法であり,一方で,所定の演算処理を同じ技術分野における共通する機能を実現する演算処理に適用することは当業者の通常の創作能力の発揮といえるから,周知のゲーム装置における画像処理方法の仮想3次元空間内において3次元オブジェクトを表現するための演算処理に,同様の処理を行う前記「引用発明において行われる演算処理」を適用し,前記「引用発明において行われる演算処理」を「ゲームプログラムやゲームプレーヤのゲーム入力操作によって進行するゲームに応じて,その都度,ゲーム機内で」行い,前記「引用発明において行われる演算処理」のステップを繰り返し,「ゲーム画面にオブジェクトが動くような動画表現を行う」うことは当業者が容易になし得たことといえる。したがって,審決の「引用発明において行われる演算処理を『ゲームプログラムやゲームプレーヤのゲーム入力操作によって進行するゲームに応じて,その都度,ゲーム機内で』行い,前記演算処理の『ステップを繰り返し』,引用発明における3次元画像の表示方法として『ゲーム画面に前記オブジェクトが動くような動画表現を行う』ように構成することは,当業者が容易になし得たことである。(6頁24行∼30行)との判断に誤」りはない。ウ 原告は,本願発明は「オブジェクトを配置するステップ」が「進行するゲームに応じて,その都度,演算処理を行」われることから,ゲームプログラムやゲームプレーヤによるゲーム入力操作によって移動可能なオブジェクトにおいて,オブジェクトの位置によってぼかし処理が異なるためその都度のぼかし処理を可能とするものであり,引用発明と本願発明とは異なるものであるとも主張するが,「オブジェクトを配置するステップ」が「進行するゲームに応じて,その都度,演算処理を行」われる点については,審決6頁1行∼9行で相違点として認定し,これにつき相違点についての判断において判断しており,この点に関する審決の認定・判断に誤りはない。

(2) 取消事由2に対し

ア まず本願発明には,ゲーム進行について ,「ゲームプログラムやゲームプレーヤのゲーム入力操作によって進行する」と記載されているが,特に予測不可能なゲーム進行を行うための具体的な手順については記載されていない。そして,プレーヤが操作する操作手段からの入力信号と,ゲームプログラムとに基づき,仮想3次元空間内において3次元オブジェクトを表現するための演算処理を行い,前記3次元オブジェクトが動くような動画表現を得られる周知のゲーム装置におけるゲーム進行は,本願発明と同様に ゲ「ームプログラムやゲームプレーヤのゲーム入力操作によって進行する」ものといえるから,周知のゲーム装置における画像処理方法も,本願発明と同様に 予測不可能なゲーム進行に応じた動画表現」「 を行うものといえる。一方,周知技術に適用される引用発明の奏する作用効果は,「少なくとも注視点に付いてはピントを合わせ,その他の部分に付いてはぼかすことができるので,従来の3次元グラフィックスデータに比べて格段の現実感,立体感を表現する」(甲1,段落【0055】)ことにあり ,「現実感」と「リアリテイ」とが単に表現上の差異であることを踏まえると,引用発明及び周知技術に基づいて想到が容易であった本願発明において,「予測不可能なゲーム進行に応じた動画表現にピントの惚けを考慮」することによって,「リアリテイのある画像演出を提供する」という作用効果は十分に予測可能なものというべきである。イ また,ゲーム装置を,ゲームプレーヤーにゲームを行い易く構成することは当業者が当然なすべき課題であるから,引用発明及びゲーム装置における画像処理方法に関する周知技術に基づいて想到が容易であった本願発明において,ゲームプレーヤーにゲームを行い易くするという作用効果は格別のものとはいえない。ウ したがって ,「本願発明の奏する作用効果も,引用発明及び周知技術の奏する作用効果から当業者が予測できる以上の格別のものともいえない。」(6頁下2行∼下1行)とした審決の判断に誤りはない。

(3) なお原告は,本願発明の容易想到性について,3D技術においては,出

願経過に引用された引用例から明らかなように特定のオブジェクトにピントが合うようにぼかし処理を行う技術は公知であるが,これらは何れも操作する人間の意志でピントを合わせるものであり,本願発明のようにソフト側,ゲーム機側が操作する人間の意志に関わりなく特定のオブジェクトに自動的にピント合わせを行う処理に新規性及び進歩性があるものと理解されたものと考えられ,本件審判において被告が提示した一連の証拠の何れにも,上記の発明の動機付け及び技術的思想は一切存在しておらず,そのための具体的手段も一切記載されていない以上,当業者といえども本願発明を容易に想到し得るものではないから,本願発明は,特許法29条2項に該当せず,特許を付与し得るのに十分な進歩性を有しているとも主張する。しかし本願発明におけるピント合わせは,「ゲームプレーヤのゲーム入力操作に応じて特定のオブジェクト又はその特定のオブジェクトの特定の部位を適宜変更しつつ選定し,この選定した特定のオブジェクト又はその特定のオブジェクトの部位にピントが合うように設定する 」(審決1頁下1行∼2頁3行)処理であり,ゲームプレーヤのゲーム入力操作に応じる処理が「操作する人間の意志に関わりなく」行う処理とはいえないから ,「ソフト側,ゲーム機側が操作する人間の意志に関わりなく特定のオブジェクトに自動的にピント合わせを行う処理」を前提とした原告主張は,本願発明に基づくものではなく,失当である。なお,本願発明における,ゲームプレーヤのゲーム入力操作に応じたピント合わせが ,「操作する人間の意志に関わりなく」行う処理といえないことは,本願補正明細書(甲3)の「加えて,前記ピントが合うと設定される特定のオブジェクト又は特定のオブジェクトの特定の部位は,前記ゲーム機のゲームプレーヤの操作に応答して適宜変更される。(段落【0021】, こ」 )「こで,視線センサ6を用い,これによってゲームプレーヤのモニター5上における視点の位置を追跡しながら,その視点の位置に基いてピントを設定し,次に詳細に説明するぼかし処理を行うようにする」(段落【0033】)との記載からも明らかである。そして,引用発明を周知のゲーム装置における画像処理方法に適用する動機付けについて,本願発明が,引用発明及び周知のゲーム装置における画像処理方法に基づいて容易想到であることについても上記のとおりである。

第4 当裁判所の判断

請求原因(1)(特許庁における手続の経緯 ),(2)(発明の内容 ),(3)(審決の内容)の各事実は,いずれも当事者間に争いがない。取消事由1(相違点についての判断の誤り)について

(1)ア 原告は,審決が引用発明を周知のゲーム装置における画像処理方法に適用し ,本願発明の構成とすることは容易になし得たと判断した点につき,引用発明は,CAD,VR(仮想現実)技術等に用いられる3次元グラフィックスデータを生成する装置に関するものであって,ゲーム装置における画像処理方法に適用できるとの記載も示唆もない旨主張する。イ(ア) 審決がゲーム装置における画像処理方法の周知例として挙げた前記甲2(特開平6−348860号公報。発明の名称「画像合成装置およびこれを用いたゲーム装置」,出願人 ナムコ,公開日 平成6年12月22日)には,従来技術に関し以下の記載がある。「 従来の技術】従来,コンピュータグラフィックスの技術を用い擬【似3次元画像を合成するリアルタイム表示型画像合成装置が知られており,例えば各種のビデオゲームや,飛行機及び各種乗物用の操縦シュミレータ等に幅広く用いられている。(段落【0002 】」 )「ドライブゲームを例にとれば,3次元オブジェクト310はレーシングカーであり,仮想3次元空間300内には,この他に道路,家などの背景を表す各種の3次元オブジェクトが配置されている。」(段落【0004】)「そして,プレイヤー312が,操作パネル314に設けられたハンドル等により,回転,並進等の操作を行うと,装置はこの操作信号に基づいてレーシングカーである3次元オブジェクト310の回転,並進等の情報をリアルタイム演算する。そして,この3次元オブジェクト300及びその他の3次元オブジェクトは,視点座標系の透視投影面316上に透視投影変換され,擬似3次元画像318として表示される。この結果,プレイヤー312は,自身の操作によりレーシングカーである3次元オブジェクト300をリアルタイムに回転,並進することが可能となり,擬似3次元空間を仮想シミュレートできることとなる。(段落【0005】」 )(イ) 上記によれば,甲2の従来技術の記載に例示されているドライブゲームでは,ゲーム装置における画像処理として,道路,家などの背景を表す各種の3次元オブジェクトが配置された仮想3次元空間内で,仮想的なレーシングカーである3次元オブジェクトを,ゲームのプレーヤーにおいて操作パネルに設けられたハンドル等をリアルタイムに操作可能にすることにより,疑似3次元空間を仮想シミュレートして表示させるための処理が行われることが示されている。そこからも明らかなように,ゲーム装置などに適用される3次元グラフィックデータを生成する装置における演算処理は,一種の仮想現実 V(R)技術ということができる。ウ(ア) また上記甲2には,リアリティー,すなわち画像の現実感を高めることに関して以下の記載がある。・ …建物のリアリティーを高めるためには…」「 (段落【0009】)・ …窓,玄関,廂のある建物310を,リアリティーをもたして表現「するためには…」(段落【0010】)・ …複数の視点位置に対してよりリアリティーに富んだ高品質の画像「をリアルタイムで合成することができる。(段落【0023】」 )・ …ゲーム画面内に多数のオブジェクトを登場させ,変化に富んだリ「アリティーの高いゲーム画面をリアルタイムで合成することができる。(段落【0024】」 )・ …複雑かつ変化に富んだリアリティーの高い画像を…」「 (段落【0039】)・ …立体感のあるリアリティの高い画像を簡単に合成することができ「る。(段落【0046】」 )・ …立体感が損われず,高いリアリティーを有することとなる。 (段「 」落【0052】)・ …よりリアリティに富んだ画像を形成することができる。 段落 0「 」( 【

083 】。)(イ) 上記からすると,一般に仮想現実に関する技術分野において,より現実感のある画像を表示することは極めて普通の技術課題であり,仮想現実技術に属する周知のゲーム装置における画像処理方法にも,より現実感のある画像表示を行うとの課題があることが明らかである。エ(ア) 一方,甲1(引用例)には以下の記載がある。・【発明が解決しようとする課題】しかしながら,これら各種の方法「では,未だ十分立体感,現実感を表現出来ていない。更に一層立体感,現実感を表現できる方法の開発が期待されている。 (段落」【0006】)・ 本発明は,このような従来の立体感,現実感表現方法の課題を考「慮し,従来の3次元グラフィックス画像より更に一層立体感,現実感のある画像を作り出せる3次元グラフィックスデータ生成装置を提供することを目的とするものである。(段落【0007】」 )・【発明の効果】「 …本発明は,注視点に基づき ,所定の規則に従って,3次元グラフィックスデータを,少なくとも注視点に付いてはピントを合わせ,その他の部分に付いてはぼかすことができるので,従来の3次元グラフィックスデータに比べて格段の現実感,立体感を表現することの出来る3次元グラフィックスデータの生成装置を提供することが出来る。(段落【0055】」 )(イ) 上記によれば,引用発明は3次元グラフィック画像において従来よりも格段の現実感,立体感を表現することができるとの効果を奏するものであるから,このような引用発明を周知のゲーム装置における画像処理方法に適用する十分な動機付けがあるということができる。オ 上記の検討によれば,引用発明の適用対象である仮想現実技術と,周知のゲーム装置における画像処理方法とでは,仮想現実技術として技術分野が共通し,また引用発明も周知のゲーム装置における画像処理方法が有する技術的課題を解決する方法であるといえることから,引用発明を周知のゲーム装置における画像処理方法に適用することにより本願発明の構成とすることは当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)にとり容易であるとした審決の判断に誤りはない。

(2)ア 原告は引用発明の記載された甲1では,注視点について「入力操作に応じて 」予め 各画面について…指定して」「 おくとの記載があることから ,引用発明では注視点を予め推測しておくものであるとして,このような構成はゲーム装置における画像処理方法としては非現実的であり,引用発明は静止画像,あるいは各画面ごとに指定操作が可能なスピードでコマ送りされている画像を対象とするものであって動画表現は不可能である,また引用発明は注視点指定のための入力操作を要する一方,周知のゲーム装置における画像処理方法ではゲーム進行のための操作手段からの入力信号であるところから,両者は入力の対象が著しく異なり,引用発明に周知のゲーム装置における画像処理方法を適用することを妨げる事情があるなどと主張する。イ そこで検討すると,甲1には,上記(1)エ(ア)に加え,以下の記載がある。・ 図1は本発明にかかる3次元グラフィックスデータ生成装置の一実施「例を示すブロック図である。(段落【0019 】」 )・ 注視点入力手段5は,注視点を入力するためのキーボード,マウス,「CRT表示器等である。フレーム入力手段1の機器を兼ねることも可能である。ここに,注視点とは,人間が画面を見たとき,その注視する位置を意味する。この注視点は,後に述べるように,色々な決定の仕方がある。(段落【0024】」 )・ 他方,注視点入力手段5から,各画面毎人間が注視するであろうと思「われる点を入力する。そして,現実感付与手段6が,その注視点に基づき,上記3次元グラフィックスデータを次の様にしてぼかす。 (段」落【0029】)・ 表示手段7は,この3次元グラフィックスデータを入力し,画面に表「示する 。(段落【0047 】」 )・ そして,人間はその画面を観賞する。(段落【0048】「 」 )・ さらに,その人間の頭部には,公知の3次元上の注視点を検出できる「注視点検出手段8が付けられており,常時その人間の注視点が検出される。注視点検出手段8としては,例えば,「両眼赤外線オプトメーター,A,B(1991),ヒューマン・インタフェース・シンポジウム」資料に開示されたものなどである。(段落【0049】」 )・ そのような注視点検出手段8によって検出された注視点は,注視点入「力手段5に入力される。そして,順次上述のようにして現実感付与手段6によって利用される。(段落【0050】」 )・ なお,本発明の注視点入力手段としては,上述のようなものの他に,「予め各画面に付いて,画像データ作成者が指定する方法,あるいは,3次元グラフィック画像を見た人が,指定する方法,あるいは画面の中央と決めておく方法等他の注視点入力手段であってもかまわない。」(段落【0051】)ウ また,【図1】の記載は以下のとおりである。エ 上記イ,ウの記載によれば,甲1(引用例)における注視点には様々な決定の仕方があり,それら注視点の指定方法の一つとして,3次元画像の「作成」とは独立して作成された画像を鑑賞しつつ常時その人間の注視点を検出する公知の注視点検出手段によって注視点を指定する方法をも含むものと認められる。そうすると,引用発明が注視点を予め入力しておくものであるとする原告の主張は前提を欠くというべきであり,引用発明を周知のゲーム装置における画像処理方法に適用することを妨げる事情も存しないというべきである。また,通常のゲーム装置は,例えばゲーム用コントローラなどによるプレーヤーのゲーム入力操作に応じてゲームのための各種の処理を行うものであるから,引用発明を周知のゲーム装置に適用する場合,プレーヤーの注視点を入力する手段として,何らかのプレーヤーのゲーム入力操作を利用することは設計的事項にすぎないといえる。以上の検討によれば,原告の上記主張は採用することができない。

(3)ア また原告は,引用発明において行われる演算処理を動画表現を行う周知のゲーム装置に適用しても,1秒間に50枚から60枚の映像表示をする動画表現を行う演算処理のステップを繰り返すことは非現実的な処理となるところから ,引用発明はぼかし処理の基点となる対象 オブジェクト)(が予め決められているものであり,周知技術に適用することは困難であるとも主張する。しかし上記(2)において検討したとおり,引用発明の記載された甲1には,ぼかし処理の基点となる注視点について,様々な注視点入力手段を用いることが開示されており,注視点を処理の進行に応じてリアルタイムに決めることも排除されていない。したがって,上記( 2)で検討したのと同様に,引用発明において注視点が予め決められたものであることを前提とする原告の主張は,前提を欠き採用することができない。イ(ア) 原告は,引用発明では注視点を入力しないとピントの惚けを考慮した画像を生成できないが,本願発明は「ゲームプレーヤのゲーム入力操作に応じて…適宜変更しつつ選定し,この選定した特定のオブジェクト…にピントが合うように設定」することから,「ゲームプレーヤ」による特定のゲーム入力操作で「特定のオブジェクト又はその特定のオブジェクトの特定の部位」の選定が継続されるもので,ピントの惚けを考慮するために引用発明のような注視点の入力を必須とするものではないから,この点の相違を単なる設計事項であるとする審決の認定は誤りであるとも主張する。(イ) この点に関し本願補正明細書(甲3)には,以下の記載がある。・ 加えて,前記ピントが合うと設定される特定のオブジェクト又は「特定のオブジェクトの特定の部位は,前記ゲーム機のゲームプレーヤの操作に応答して適宜変更される 。(段落【0021】」 )・ …ここで,視線センサ6を用い,これによってゲームプレーヤの「モニター5上における視点の位置を追跡しながら,その視点の位置に基いてピントを設定し,次に詳細に説明するぼかし処理を行うようにすると,個々のゲームプレーヤにとってよりリアルな映像を提供することができ,ゲームの娯楽性を増大させることができる。(段落【0033】」 )(ウ) 上記(イ)の記載によれば,本願発明における,「ゲームプレーヤのゲーム入力操作に応じて特定のオブジェクト又はその特定のオブジェクトの特定の部位を適宜変更しつつ選定」する処理(請求項1の記載)は,繰り返しオブジェクトを配置する各画面に対して,注視点を入力し指定する処理を含むことは明らかである。また,甲1において,注視点を指定する方法として例示された,頭部に検出手段を付け常時その人間の注視点を検出する方法(段落【0049】)は,注視点を適宜変更しつつ選定が継続される注視点指定方法ということができる。したがって,原告の上記主張は前提を欠くものであり,審決が「引用発明において,注視点入力手段5による注視点の入力を,『ゲームプレーヤのゲーム入力操作に応じて特定のオブジェクト又はその特定のオブジェクトの特定の部位を適宜変更しつつ選定』するように行う点は,当業者が必要に応じて適宜採択し得る設計事項にすぎない。 (6」頁下6行∼下3行)と判断したことに誤りはない。取消事由2(本願発明についての作用効果についての判断の誤り)(1)ア 原告は,本願発明の作用効果は「予測不可能なゲーム進行に応じた動画表現にピントの惚けを考慮」することによって ,「ゲームプレーヤにゲームを行い易く ,リアリテイのある画像演出を提供する」ことにある一方 ,引用発明及び周知技術はかかる点に鑑みていないことから,本願発明は,引用発明及び周知技術からは予測できない効果を見出すことができると主張する。イ(ア) 本願補正明細書(甲3)には以下の記載がある。・ 本明細書において,前述した『動画表現』とは,例えば1秒間に「50枚から60枚の表示を前記表示手段よって行うことを指し,このように短時間に複数の映像を表示させることにより,ゲームプレーヤは,前記表示手段を視認することにより,表示手段に表示されるオブジェクトが動いていると認識することができる 。 段」(落【0017】)・ 前記ぼかし処理としては,本願出願人によりなされた特願平8−「337439号等や,コンピュータグラフィック技術における影面処理等の公知の技術が適用できるが,そのぼかし処理が前記動画表現を行うにあたり所定の時間内に演算処理が行える処理であることが必要である。(段落【0019】」 )・ つぎに,前記ぼかし処理について説明する。図3に示す(A)は「ぼかし処理を行わないで表示した画像を示し ,(B)は,ぼかし処理を施した画像を示している。図3(B9)のピントは前から2番目の赤ちゃんのオブジェクトAにピントが合っているとして表現された映像である。前記ぼかし処理は,各オブジェクトを表現するピクセルの輝度を奥行きに応じて変化させることにより表現されている。つまり,図4に示すようにワールド座標系に配置される任意のピクセルOを想定する,このピクセルOが前記投影面12に表現される場合,隣接するピクセルは8つ存在するが,この8つのピクセルの中で最も輝度の影響を受けやすい最も近接した上下左右のピクセルQ,S,U,Wの4つのピクセルを考慮する。(段落【0034 】」 )・ そして,ピクセルOの前記カラー情報記憶部2Dに記憶された原「データによる輝度a,ピクセルQの輝度であるb,ピクセルSの輝度であるc,ピクセルUの輝度であるd,ピクセルWの輝度であるeに基づき,ぼかし処理を行ったピクセルOの輝度pを前記レンダリング処理1B−4で画像演算処理手段1Bが演算により求める。(段落【0035】」 )・ 具体的には,ピントが合ったと設定されたピクセルから各ピクセ「ルの奥行き情報の奥行き値を比較し,この奥行き差の絶対値に応じて,隣接するピクセルから受ける影響の度合いを5段階に分け,k=1の時が最も周りの輝度影響を受け,他の隣接する4つの輝度と完全な平均値となるようにし,k=5の時をそのピクセルの原データの輝度がそのまま反映されるようにしている 。 段落 0」( 【

036 】)・ これを式で表わすと,p=(aK+bm+cm+dm+em)/「5但し,m=(5−k)/4から前記輝度Oが計算により求められる。(段落【0037 】」 )・ 前述したぼかし処理の場合,投影面12がピントが合うと設定さ「れた奥行き値(ゼロ)ということになる。つまりこの場合,ピントが合っていると設定される特定のオブジェクトの特定部位が,投影面12の奥行きと一致している場合を想定している。勿論,このようにピントが合っていると設定される特定のオブジェクトの特定部位が投影面12に一致しないものにもこの発明は適用できる。例えば,図2に示すように,投影面12の中心12Aと視点11を結んだ直線Lと交わるオブジェクト(図2におけるオブジェクト16)にピントが合っていると設定した場合には,そのオブジェクト16については全くぼかし処理をしないで,そのオブジェクト16の前記直線Lと交わった箇所を基準として,奥行き値の差大きさにより漸次強くなるぼかし処理を施すようにすることもできる。前記投影面12の中心12Aに投影される画像情報が,最終的に前記モニター5の略中央に配置されることになる。」(段落【0038】)・ また,各ピクセルごとにそのピクセルの奥行き値に基づいたぼか「し処理を行っても良いが,各オブジェクトに基準の奥行き値(例えば,その立体の重心に位置する箇所)を比較し,オブジェクトごとに一定のぼかし処理を行うように構成してもよい 。 段落 0」( 【039】)・ 以上のようなぼかし処理に限らず,この発明は他のぼかし処理を「採用してもよく,要はピントの合っている特定のオブジェクト又はその特定のオブジェクトの特定箇所からの奥行きの違いを,モニター5上に表現出来る方法であれば,奥行き値に応じて漸次強度の異なる周知のディザ加工を施すなど任意である。なお,『奥行き』に関しては,特定のオブジェクト又はその特定のオブジェクトの特定箇所に対して,プラスの方向に処理するか,マイナスの方向に処理するか,ということで ,自在に設定することができる。」(段落【0040】)(イ) 上記によれば,原告の主張する本願発明における予測不可能なゲーム進行に応じた動画表現との点についても,極めて抽象的な記載しかなく,またリアリティのある画像演出をするためのピントの惚けをもたらすぼかし処理についても,実施例に特定の計算式に基づく演算方法についての開示はあるものの,この特定の具体的なぼかし処理の方法のみに限定されるものでもない。ウ また上記2(1)イ,ウの記載から明らかなように,周知のゲーム装置は,ゲームのプレーヤーによるリアルタイムな操作に応じて,変化に富んだゲーム画面を表示するものであるから,周知のゲーム装置においても本願発明と同様に,予測不可能なゲーム進行に応じた動画表現を行うものであるほか,引用発明の作用効果も「…格段の現実感,立体感を表現する」ことにある(甲1,段落【0055】)ことも併せ考えると,リアリティのある画像演出を提供するとの原告の主張する本願発明の作用効果も,引用発明及び周知技術の奏する作用効果から十分に予測可能なものであると認められる。また,ゲームプレーヤーにゲームを行い易く構成することは,当業者が当然なすべき課題であるから,格別のものとはいえないというべきである。エ 上記の検討によれば,審決が「本願発明の奏する作用効果も,引用発明及び周知技術の奏する作用効果から当業者が予測できる以上の格別のものともいえない。(6頁下2行∼下1行)とした点について誤りはな」い。(2) 原告は,引用発明は予測可能な進行に応じたピントの惚けを考慮した発明であるから,予測不可能なゲーム進行に応じたピントの惚けを考慮する本願発明とは相容れず,かつ,引用発明では動画表現を行いつつゲームプレーヤのゲーム入力操作に応じて特定のオブジェクトを各画面について指定することは不可能であり,また引用発明の構成で画像を非常に多数用意しておき ,差し替えるとすることは物理的には可能であるが,非現実的な処理となることは明らかであるとも主張する。しかし,引用発明が各画面について3次元画像を作成する際に,特定のオブジェクトである注視点を予め定めておくものであるとの原告の主張が前提を欠くことは上記2で検討したとおりであり,また引用発明を周知のゲーム装置の画像処理方法に適用することが困難といえないことも上記2で検討したとおりである。そして,ピントの惚けを考慮することにより画像表現にリアリティを付加することを内容とする引用発明を,予測不可能なゲーム進行に応じた動画表現を行う周知のゲーム装置の画像処理方法に適用することにより,リアリティのある画像演出を提供するという作用効果については予測可能なものと認められる。原告の主張は採用することができない。その他の原告主張について(1) 原告は,米国,韓国及び台湾における特許出願が登録された理由をその出願経過から推察すると,ソフト側,ゲーム機側が操作する人間の意志に関わりなく特定のオブジェクトに自動的にピント合わせを行う処理に新規性及び進歩性があるものと理解されたものと考えられる,証拠の何れにも上記の発明の動機付け及び技術的思想もそのための具体的手段も記載されていない以上,本願発明は,進歩性を有しているとも主張する。(2) しかし,本願発明のピント合わせが, 操作する人間の意志に関わりなく」「行うものとはいえないことは,本願補正明細書(甲3)に「…ピントが合うと設定される…特定の部位は,前記ゲーム機のゲームプレーヤの操作に応答して適宜変更される。 (段落【0021】 ,」 ) 「…視線センサ6を用い,…その視点の位置に基いてピントを設定し,…ぼかし処理を行うようにする 」 段(落【0033】)と記載されていることからも明らかである。本願発明が引用発明及び周知技術に照らし進歩性を有しないことも上記2,3で検討したとおりであり,原告の主張は採用することができない。結語以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所 第2部

裁判長裁判官 中 野 哲 弘

裁判官 今 井 弘 晃

裁判官 清 水 知 恵 子

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