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平成19(行ケ)10185審決取消請求事件

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裁判所 審決取消 知的財産高等裁判所
裁判年月日 平成20年3月25日
事件種別 民事
当事者 被告株式会社ペンタくん
原告株式会社パスコ 日本コンピュータグラフィック株式会社笹本摂,山口健司,薄葉健司
対象物 地図データ作成方法及びその装置
法令 特許権
特許法29条2項4回
特許法36条5項1号3回
特許法123条2回
キーワード 審決182回
無効25回
実施21回
分割11回
無効審判9回
進歩性8回
特許権3回
侵害2回
刊行物2回
優先権1回
主文 1 特許庁が無効2006−80175号事件について平成19年4月17日にした審決を取り消す。
2 訴訟費用は,補助参加について生じた費用は補助参加人の負担とし,その余の費用は被告の負担とする。
事件の概要 1 特許庁における手続の経緯 (1) 被告は,発明の名称を「地図データ作成方法及びその装置」とする特許第 2770097号(平成4年3月5日出願〔特願平4−48706号〕。優先権主 張平成3年6月24日。平成10年4月17日設定登録。以下「本件特許」とい う。)の特許権者である(甲1の2)。 (2) 原告らは,平成18年9月6日,被告を被請求人として,本件特許を無効 とすることを求めて審判の請求をし,補助参加人が被請求人(被告)のために参加 した。特許庁は,上記請求を無効2006−80175号事件として審理した上, 平成19年4月17日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,そ の謄本は同月26日,原告らに送達された。 2 発明の要旨 (1) 平成11年4月20日付け訂正請求書による訂正後の明細書(甲1の2, 乙9の2。以下,図面も含めて「本件訂正明細書」という。)の特許請求の範囲の 請求項1及び2の記載(以下,それぞれの請求項に記載された発明を「本件特許発 明1」,「本件特許発明2」といい,それらをあわせて「本件特許発明」とい

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判決文

平成19年(行ケ)第10185号 審決取消請求事件

平成20年3月25日判決言渡,平成20年1月22日口頭弁論終結

判 決

原告 株式会社パスコ

原告 日本コンピュータグラフィック株式会社

両名訴訟代理人弁護士 上谷清,永井紀昭,萩尾保繁,仁田睦郎,

笹本摂,山口健司,薄葉健司

同弁理士 水谷好男

被告 株式会社ペンタくん

訴訟代理人弁護士 長谷川純,藤井陽子

同弁理士 鹿股俊雄

補助参加人 有限会社エン企画

訴訟代理人弁護士 野口明男,三好豊,飯塚卓也

主 文

1 特許庁が無効2006−80175号事件について平成19年4月

17日にした審決を取り消す。

2 訴訟費用は,補助参加について生じた費用は補助参加人の負担とし,

その余の費用は被告の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

主文第1項と同旨。

第2 当事者間に争いがない事実

1 特許庁における手続の経緯

(1) 被告は,発明の名称を「地図データ作成方法及びその装置」とする特許第号(平成4年3月5日出願〔特願平4−48706号〕。優先権主張平成3年6月24日。平成10年4月17日設定登録。以下「本件特許」という。)の特許権者である(甲1の2)。

(2) 原告らは,平成18年9月6日,被告を被請求人として,本件特許を無効とすることを求めて審判の請求をし,補助参加人が被請求人(被告)のために参加した。特許庁は,上記請求を無効2006−80175号事件として審理した上,平成19年4月17日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は同月26日,原告らに送達された。2 発明の要旨

(1) 平成11年4月20日付け訂正請求書による訂正後の明細書(甲1の2,乙9の2。以下,図面も含めて「本件訂正明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1及び2の記載(以下,それぞれの請求項に記載された発明を「本件特許発明1」,「本件特許発明2」といい,それらをあわせて「本件特許発明」という。)【請求項1】地形図等の原図を読み取って得られるラスターデータからベクトルデータを作成した後,該ベクトルデータを線端を示す点データを含む二次元の線データに変換し,それらの二次元線データを座標上の線分に変換し,該線分を所定方向に接続し,終点が始点と一致したときはそれらの線分からなる面データの閉領域データを自動的に作成し,終点が始点と一致しないときはそれらの線分からなる面データを自動的に作成して,該面データの前記不連続となる始点及び終点を報知表示し,該不連続点から任意の点又は線へ接続する線データを入力に基づいて生成することにより該面データに対応する閉領域データを作成し,上記各閉領域データに属性データを付与可能にして該閉領域データを記憶,表示又は印刷する地図データ作成方法。【請求項2】地形図等の原図を読み取って得られるラスターデータからベクトルデータを作成するベクトルデータ作成手段と,該ベクトルデータ作成手段により出力されるベクトルデータを線端を示す点データを含む二次元の線データに変換する二次元線データ作成手段と,該二次元線データ作成手段により出力される二次元線データを座標上の線分に変換する線分作成手段と,該線分作成手段により出力される線分を所定方向に接続し,終点が始点と一致したときはそれらの線分からなる面データの閉領域データを自動的に作成し,終点が始点と一致しないときはそれらの線分からなる面データを自動的に作成する面データ作成手段と,該面データ作成手段が作成した面データの不連続となる前記始点及び終点を報知表示する不連続点報知表示手段と,該不連続点報知表示手段による報知表示に基づいて前記始点及び終点から任意の点又は線へ接続する線データを生成すべく該接続線データを入力する入力装置と,該入力装置による入力に基づいて前記不連続となる始点及び終点を有する面データに対応する閉領域データを作成し,上記各閉領域データに属性データを付与可能にして該閉領域データを記憶,表示又は印刷する記憶表示印刷手段と,を有することを特徴とする地図データ作成装置。

(2) 本件特許発明1は次のように分説される(以下,分説された各構成要件を単に「構成要件1A」などという。)。1A 地形図等の原図を読み取って得られるラスターデータからベクトルデータを作成した後,1B 該ベクトルデータを線端を示す点データを含む二次元の線データに変換し,1C それらの二次元線データを座標上の線分に変換し,1D 該線分を所定方向に接続し,終点が始点と一致したときはそれらの線分からなる面データの閉領域データを自動的に作成し,終点が始点と一致しないときはそれらの線分からなる面データを自動的に作成して,1E 該面データの前記不連続となる始点及び終点を報知表示し,1F 該不連続点から任意の点又は線へ接続する線データを入力に基づいて生成することにより該面データに対応する閉領域データを作成し,1G 上記各閉領域データに属性データを付与可能にして該閉領域データを記憶,表示又は印刷する1H 地図データ作成方法。3 審決の理由

(1) 審決の理由の概要審決は,別紙審決のとおり,本件特許発明についての特許法29条2項の適用については本件特許の現実の出願日(平成4年3月5日)が基準となるした上で,本件特許発明は,同日より前に頒布された刊行物である「ARC/INFO Users Guide, Ver.5 Vol.1, Vol.2」(審判甲2。審判請求の際に提出されたのは上記標題の文書の一部であるが,以下,上記標題の文書全体について,審決を引用する場合も含めて「甲2文献」という。)に記載された発明(以下,審決を引用する場合も含めて「甲2発明」という。)等に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえず,また,特許法36条5項1号,2号(平成6年法律第116号による改正前のもの。同条項については以下同じ。)の違反もないなどとして,本件特許発明に係る特許を無効とすることはできないとした。

(2) 審決が認定した甲2発明の要旨(42頁第2段落)「『地図を表示するグラフィック端末を有しており,地図をスキャニングして,ラスター値を一連の座標に変換(ラスターベクトル変換)し,フィーチャーを定義してトポロジーを生成し,トポロジーエラーを発見して訂正し,カバレッジフィーチャーに属性を付与することを特徴とするカバレッジの自動化。』の発明」

(3) 審決が認定した本件特許発明1と甲2発明の一致点及び相違点(43頁最終段落∼44頁第4段落)ア 一致点「地形図等の原図を読み取って得られたラスターデータからベクトルデータを作成した後,ベクトルデータから,フィーチャーを定義してトポロジーを生成し,トポロジーエラーを発見して訂正することを特徴とする地図データの作成方法。」イ 相違点(ア) 相違点1「本件特許発明1が『ベクトルデータを線端を示す点データを含む二次元の線データに変換し,それらの二次元線データを座標上の線分に変換』して面データの作成処理に供するのに対し,甲2発明は,ラスター値を一連の座標に変換する(ラスターベクトル変換)して得られたデータ,すなわちベクトルデータをフィーチャーを定義しトポロジーを生成する処理に供するものであるが,このベクトルデータを二次元の線データに変換して,二次元の線データを座標上の線分に変換し,この座標上の線分からフィーチャーを定義してトポロジーを生成する構成を有していない点。」(イ) 相違点2「本件特許発明1が『各閉領域データに属性データを付与可能にして該閉領域データを記憶,表示又は印刷する』のに対し,甲2発明が,地図を表示するグラフィック端末を有しており,『カバレッジフィーチャーに属性を付与する』点。」(ウ) 相違点3「本件特許発明1が『線分を所定方向に接続し,終点が始点と一致したときはそれらの線分からなる面データの閉領域データを自動的に作成し,終点が始点と一致しないときはそれらの線分からなる面データを自動的に作成して,該面データの前記不連続となる始点及び終点を報知表示し,該不連続点から任意の点又は線へ接続する線データを入力に基づいて生成することにより該面データに対応する閉領域データを作成』する構成を有するのに対し,甲2発明は,フィーチャーを定義してトポロジーを生成し,トポロジーエラーを発見して訂正するものであるが,その具体的な処理について甲2文献には記載されていない点。」

第3 原告ら主張の審決取消事由

審決は,本件特許発明1の認定を誤り(取消事由1),甲2発明の認定を誤り(取消事由2),本件特許発明1と甲2発明の一致点,相違点の認定を誤り(取消事由3),本件特許発明1と甲2発明の相違点3についての判断を遺脱し(取消事由4),本件訂正明細書の記載不備についての判断を誤り(取消事由5),本件特許は無効とはいえないとの誤った結論に至ったものであり,違法であるから,取り消されるべきである。

1 取消事由1(本件特許発明1の認定の誤り)

(1) 審決は,本件特許発明1の構成要件1Dの後半部分の「(該線分を所定方

向に接続し,)終点が始点と一致しないときはそれらの線分からなる面データを自動的に作成して」について,及び,構成要件1Eの「該面データの前記不連続となる始点及び終点を報知表示し」について,その要旨の認定を誤った。すなわち,審決は,形式的には,本件特許発明1の要旨は,特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとしながら,相違点3についての判断に照らすと,実質的には,本件特許発明の要旨を以下に述べるように誤って認定した。

(2) 審決は,相違点3の認定判断に当たって,本件特許発明1が,「線分を所

定方向に探索して孤立点(本件特許発明1の不連続となる始点及び終点)を求める」(審決46頁15行目∼16行目)ものであり,かつ,「閉ループとして抽出されなかった図形」の孤立点のみを抽出するものであると認定して,甲2発明等との対比を行っており,本件特許発明1の要旨の認定に当たり,「(線分を所定方向に接続し,)終点が始点と一致しないときはそれらの線分からなる面データを自動的に作成」(構成要件1Dの後半部分)とは,「線分を所定方向に接続して孤立点を検索して抽出」することであり,「該面データの前記不連続となる始点及び終点を報知表示し」(構成要件1E)とは,「当該検索により抽出した孤立点を報知表示するものである」として,本件特許発明1の要旨を認定した。しかし,構成要件1Dの後半部分は,「(線分を所定方向に接続し,)終点が始点と一致しないときはそれらの線分からなる面データを自動的に作成」というものであり,線分を所定方向に接続し,接続された線分の終点の点種を判別し,次に接続する線分がない孤立点であった場合に,接続処理を終了して,当該線分の組合せデータを「面データ」として格納することを発明の内容として特定していて(本件訂正明細書の段落【0025】∼【0027】),線分を所定方向に接続して孤立点を検索して抽出することを発明の内容としているものではない。なお,構成要件1D前半や構成要件1Fにおける「作成」との用語は,データを記憶媒体に記憶することまで含んでいることは明らかであり,用語の統一が要求される特許明細書の用語の解釈として,構成要件1D後半の閉じていない「面データを自動的に作成」の「作成」も面データを記憶・格納することまで意味する。また,構成要件1Eは,「該面データの前記不連続となる始点及び終点を報知表示」するというものであって,当該報知表示の具体的手段ないしアルゴリズムを発明の内容として特定するものではない。したがって,報知表示の対象となる孤立点の検索方法がいかなる方法であっても,閉じていない「面データ」(線分の組合せデータ)の中に存在している不連続点ないし孤立点を報知表示すれば,当該構成要件は充足される。この構成要件は,線分を所定方向に接続して当該孤立点を検索するか,あるいは,すべてのノードのデータをチェックして接続されるアークの数をカウントして当該孤立点を検索するのかなどの具体的手段を問うものではないし,検索手段の相違により抽出される孤立点が異なるわけでもない。本件訂正明細書の発明の詳細な説明においても,線分を所定方向に接続して孤立点を検索する方法は一切記載されていない。むしろ,場面は異なるが,孤立点か否かを判別する手段として,点データへ接続する線分の本数を検出する方法が段落【0042】に記載されていて,構成要件1Eにおける不連続点(孤立点)の検出も,段落【0042】と同様,すべてのノード・データをチェックして接続する線分の本数をカウントして検出する方法がとられていると考えるのが自然である。

2 取消事由2(甲2発明の認定の誤り)

(1) 審決は,甲2文献に,「地図を表示するグラフィック端末を有しており,

地図をスキャニングして,ラスター値を一連の座標に変換(ラスターベクトル変換)し,フィーチャーを定義してトポロジーを生成し,トポロジーエラーを発見して訂正し,カバレッジフィーチャーに属性を付与することを特徴とするカバレッジの自動化。」(審決42頁6行目∼11行目)の発明が記載されていると認定したが,審決は,甲2文献に記載されている発明の多くの構成を看過していて,誤りである。

(2) 甲2文献からは,以下のとおりの発明が認定できる(以下,分説された構

成を単に「構成A´」などという。)。A´ 地形図等の原図をスキャニングして得られるラスター値を,ラスター・ベクトル変換により一連の座標に変換するB´ 該ベクトルデータを,ARC/INFOのカバレッジに変換し,C´ CLEANコマンドによってアークの交点にノードを付してアークノードトポロジーを構築し,アークの接点及び線端点にも同様の処理を行い,D´ アークを右回り方向に接続し,アークが閉じている場合にはポリゴンを作成し,E´ NODEERRORSコマンドやARCEDITによって,「閉じていないポリゴン」と「接続していないライン」をダングリングノードとしてエラー表示し,F´ ダングリングノード等のエラーを発見したら,ARCEDITによるデジタイザー入力によりエラー訂正し,アークを編集した後に再度CLEAN若しくはBUILDコマンドを実行して,トポロジーを更新し,G´ CLEAN若しくはBUILDコマンドにより各フィーチャーの属性を記憶するためのフィーチャー属性テーブルを作成し,地図データの「解析」,「データ管理」,「表示と変換」及び印刷等を行うH´ 地図データ作成方法。

(3) 審決が認定した甲2発明のうち,「地図をスキャニングして,ラスター値

を一連の座標に変換(ラスターベクトル変換)し」との構成は,上記の構成A´に相当し,審決が認定した甲2発明のうち,「フィーチャーを定義してトポロジーを生成し」は,上記構成C´中の「アークノードトポロジーを構築」及び構成D´中の「ポリゴンを作成」に相当する。審決が認定した甲2発明のうち,「トポロジーエラーを発見して訂正し」は,上記構成E´及び構成F´を,より抽象的に認定したものである。もっとも,審決は,その具体的な処理方法についての認定を看過している。審決が認定した甲2発明のうち,「カバレッジフィーチャーに属性を付与する」は,上記構成G´の「CLEAN若しくはBUILDコマンドにより各フィーチャーの属性を記憶するためのフィーチャー属性テーブルを作成」に相当し,審決が認定した甲2発明のうち,「カバレッジの自動化」は,上記の構成H´に相当する。なお,甲2文献は,ARC/INFO Ver.5(以下「本件システム」という。)のユーザーズガイドであるところ,本件システムは,ラスターデータから取得したベクトルデータを本件システムで読み込んでカバレッジに変換することができないというものではなく,スキャニングとラスター/ベクトル変換で得られる座標データからカバレッジを作成できた。また,甲2文献は,CLEAN等のコマンドでポリゴントポロジーを生成する前にポリゴンごとにラベルポイントとユーザーIDを入力しておく方法のほかに,CREATELABELSコマンドを使用して,ポリゴントポロジー生成後(閉領域データ完成後)にラベルポイントとユーザーIDを自動的に一括付与する方法を開示している。したがって,審決が認定した甲2発明である,「地図を表示するグラフィック端末を有しており,地図をスキャニングして,ラスター値を一連の座標に変換(ラスターベクトル変換)し,フィーチャーを定義してトポロジーを生成し,トポロジーエラーを発見して訂正し,カバレッジフィーチャーに属性を付与することを特徴とするカバレッジの自動化。」は,上記構成A´,構成C´中の「アークノードトポロジーを構築」すること,構成D´中の「ポリゴンを作成」すること,構成E´並びに構成F´を抽象的に表現した構成(トポロジーエラーを発見して訂正し),構成G´の「CLEAN若しくはBUILDコマンドにより各フィーチャーの属性を記憶するためのフィーチャー属性テーブルを作成」,及び,構成H´に相当する。

(4) しかし,審決は,① 構成B´である該ベクトルデータを,ARC/INFOのカ

バレッジに変換する構成,② 構成C´のうち,CLEANコマンドによってアークの交点にノードを付す構成,③ 構成D´のうち,「アークを右回り方向に接続し,アークが閉じている場合に」ポリゴンを作成するものであるとの構成,④ 甲2発明の「フィーチャーを定義してトポロジーを生成し」が,具体的には,「NODEERRORSコマンドやARCEDITによって,『閉じていないポリゴン』と『接続していないライン』をダングリングノードとしてエラー表示し」(構成E´),「ダングリングノード等のエラーを発見したら,ARCEDITによるデジタイザー入力によりエラー訂正し,アークを編集した後に再度CLEAN若しくはBUILDコマンドを実行して,トポロジーを更新」(構成F´)する処理を行うものであるとの構成,⑤ 構成G´のうち,「(ARC/INFOが)地図データの『解析』,『データ管理』,『表示と変換』及び印刷等を行うものであること」を,それぞれ看過した。

①については,甲2文献のVol.1の1−4頁,Vol.1の4−7頁,「DXFARCコマン

ド」についての説明(Vol.2 訳文の209∼215頁 Appendix F),「DLGARCコマンド」の説明(Vol.2 訳文の192∼200頁 Appendix D),「SCITEXLINE,SCITEXPOINT,SCITEXPOLY」についての説明(Vol.2 訳文の481∼487頁・Appendix G),ARC/INFOカバレッジのAATファイルのデータ例(Vol.2 訳文の11頁,135頁等)等の記載から,「(地図をスキャニングして得られるラスターデータから変換した)ベクトルデータを,ARC/INFOのカバレッジに変換」する構成(構成B´)を認定できる。補助参加人は,上記を否定し,本件システムでは,「キー値」の入力が必要である旨主張するが,ラスター/ベクトル変換(自動入力方式)では,人為的判断を介さずベクトルデータを抽出し,1レコードとして納めるデータをどこからどこまでとするかについてもあらかじめ定められたルールに従い自動的に認識するから,補助参加人がいうような「キー値」の入力は不要であり,また,上記のようにして得られたものは,1レコードの線データの集合という形でベクトルデータが保持される点で,デジタイザ入力のものと同一のものである。

②について,甲2文献のVol.2の126頁∼128頁の記載から,「CLEANコマンド」に

よってアークの交点にノードを付してアークノードトポロジーを構築し,アークの接点及び線端点にも同様の処理を行う構成(構成C´)を認定できる。「ノード」には,「アークの終点(端点)」と,アークとノードとの接続関係等のトポロジーデータである「ノード・トポロジー」 の意味がある。本件システムでは,入力段階で複数の線データ(1レコードのデータ,アーク)としてベクトルデータが保存される以上,既に各アーク(1レコードの線データ)の線端点は入力済みで,CLEANコマンドは,「アークの終点(端点)」という意味でのノードを付すことはない。しかし,このコマンドにより,未入力の交点にはノード(アークの端点)を作成した上,すべてのノード(アークの端点)に対し,内部番号を付し,かつ,アークノードトポロジー(ノードとアークの接続情報等のデータ)を構築するから,すべての「ノード」に対して,「ノード・トポロジー」を作成するといえる。いずれにせよ,本件特許発明1と本件システムに相違はなく,構成要件1Cに相当する構成が甲2文献に開示されている。

③について,甲2文献のVol.1の5−7頁の記載に,特開平1−274285号

公報(甲47),特開平1−282685号公報(甲9)から認められるとおり,線分を一定の方向に選択・接続する技術が当時の技術常識(周知技術)であったことを参酌すれば,「アークを右回り方向に接続し,アークが閉じている場合にはポリゴンを作成」する構成(構成D´)を認定できる。また,線分の接続に当たっては,特開平1−282685号公報(甲9)に照らしても,端点と線分との接続情報を利用することは,周知技術ないし技術常識である。したがって,甲2文献がアーク・ノード・トポロジーを構築することやその具体的なデータ内容を開示していれば,当業者は,同データを利用して線分の接続処理を行っていることが理解できるのであり,その構成が実質的に開示されている。

④について,甲2文献のvol.1の10−2頁,10−4頁,10−6頁,10−

頁から10−10頁の記載から,「NODEERRORSコマンドやARCEDITによって,『閉じていないポリゴン』と『接続していないライン』をダングリングノードとしてエラー表示」する構成(構成E´),及び,「ダングリングノード等のエラーを発見したら,ARCEDITによるデジタイザー入力によりエラー訂正し,アークを編集した後に再度CLEAN若しくはBUILDコマンドを実行して,トポロジーを更新」する構成(構成F´)を認定できる。

⑤について,甲2文献の「BUILD」コマンドの説明(Vol.2 訳文の113頁),

「CLEAN」コマンドの説明(Vol.2 訳文の125頁),「CREATELABELS」コマンドの説明(Vol.2 訳文の165∼167頁),Vo.1の1−4頁の記載から,「地図データの『解析』,『データ管理』,『表示と変換』及び印刷等を行なう」構成(構成G´)を認定できる。

3 取消事由3(一致点,相違点の認定の誤り)

(1) 審決は,本件特許発明1と甲2発明は,「地形図等の原図を読み取って得

られたラスターデータからベクトルデータを作成した後,ベクトルデータから,フィーチャーを定義してトポロジーを生成し,トポロジーエラーを発見して訂正することを特徴とする地図データの作成方法。』である点で一致し,「相違点1」ないし「相違点3」の点で相違すると認定するが,誤りである。

(2) 審決は,「本件特許発明1が『ベクトルデータを線端を示す点データを含

む二次元の線データに変換し,それらの二次元線データを座標上の線分に変換』して面データの作成処理に供するのに対し,甲2発明は,ラスター値を一連の座標に変換する(ラスターベクトル変換)して得られたデータ,すなわちベクトルデータをフィーチャーを定義しトポロジーを生成する処理に供するものであるが,このベクトルデータを二次元の線データに変換して,二次元の線データを座標上の線分に変換し,この座標上の線分からフィーチャーを定義してトポロジーを生成する構成を有していない点。」を相違点1と認定したが,誤りである。甲2文献には,「(地図をスキャニングして得られるラスターデータから変換した)ベクトルデータを,ARC/INFOのカバレッジに変換」する構成(構成B´),及び,「CLEANコマンドによってアークの交点にノードを付してアークノードトポロジーを構築し,アークの接点及び線端点にも同様の処理を行」う構成(構成C´)が開示されている。そして,これらの構成B´及び構成C´は,本件特許発明1の「ベクトルデータを線端を示す点データを含む二次元の線データに変換」(構成要件1B),及び「それらの二次元線データを座標上の線分に変換」(構成要件1C)とそれぞれ一致する。したがって,審決が認定した相違点1は相違点としては存在せず,審決の相違点の認定は誤りである。

(3) 審決は,「本件特許発明1が『各閉領域データに属性データを付与可能に

して該閉領域データを記憶,表示又は印刷する』のに対し,甲2発明が,地図を表示するグラフィック端末を有しており,『カバレッジフィーチャーに属性を付与する』点。」を相違点2と認定したが,誤りである。本件特許発明1の「各閉領域データに属性データを付与可能に」する構成と,甲発明の「カバレッジフィーチャーに属性を付与する」ことは,明らかに一致する。そして,甲2文献には,構成G´の「地図データの『解析』,『データ管理』,『表示と変換』及び印刷等を行なう」構成も開示されていて,この構成は,本件特許発明1の「該閉領域データを記憶,表示又は印刷する」構成(構成要件1G)と一致する。したがって,審決が認定した相違点2は相違点としては存在せず,審決の相違点の認定は誤りである。

(4) 審決は,「本件特許発明1が『線分を所定方向に接続し,終点が始点と一

致したときはそれらの線分からなる面データの閉領域データを自動的に作成し,終点が始点と一致しないときはそれらの線分からなる面データを自動的に作成して,該面データの前記不連続となる始点及び終点を報知表示し,該不連続点から任意の点又は線へ接続する線データを入力に基づいて生成することにより該面データに対応する閉領域データを作成』する構成を有するのに対し,甲2発明は,フィーチャーを定義してトポロジーを生成し,トポロジーエラーを発見して訂正するものであるが,その具体的な処理について甲2文献には記載されていない点。」を相違点3として認定したが,誤りである。ア 本件特許発明1の「線分を所定方向に接続し,終点が始点と一致したときはそれらの線分からなる面データの閉領域データを自動的に作成」(構成要件1Dの前半部分)に相当する構成について,甲2発明には,「アークを右回り方向に接続し,アークが閉じている場合にはポリゴンを作成」する構成(構成D´)が開示されていて,この構成D´と,本件特許発明1の構成要件1Dの前半部分とは一致する。審決は,甲2発明は,「フィーチャーを定義してトポロジーを生成」(これは,構成D´の「ポリゴンを作成」に相当する。)するが,その具体的な処理は記載されていないと認定したが,甲2文献には,「ポリゴン(フィーチャートポロジー)」の作成にあたって,「アークを右回りに接続し,アークが閉じている場合に」ポリゴンを作成するという具体的な処理が実質的に開示されている。したがって,この点について,両発明の相違点とした審決の認定は,明らかに誤りである。イ 本件特許発明1の「該面データの前記不連続となる始点及び終点を報知表示し」(構成要件1E)及び「該不連続点から任意の点又は線へ接続する線データを入力に基づいて生成することにより該面データに対応する閉領域データを作成」(構成要件1F)に相当する構成について,甲2文献には,「NODEERRORSコマンドやARCEDITによって,『閉じていないポリゴン』と『接続していないライン』をダングリングノードとしてエラー表示」する構成(構成E´),及び,「ダングリングノード等のエラーを発見したら,ARCEDITによるデジタイザー入力によりエラー訂正し,アークを編集した後に再度CLEAN若しくはBUILDコマンドを実行して,トポロジーを更新」する構成(構成F´)が開示されており,この構成E´及び構成F´と,本件特許発明1の構成要件1E及び1Fは一致する。審決は,甲2発明は,「トポロジーエラーを発見して訂正する」するものではあるがその具体的な処理は記載されていない旨認定したが,甲2文献には,構成E´及び構成F´として認定できる具体的な処理が開示されている。したがって,この点について,両発明の相違点とした審決の認定は,明らかに誤りである。ウ 本件特許発明1と甲2発明の相違点は,甲2文献には「終点が始点と一致しないときはそれらの線分からなる面データを自動的に作成して」(構成要件1Dの後半部分)が,開示されていない点のみである。この相違点は,本件特許出願時の当業者にとって単なる設計的事項であり,容易に想到し得るものである。すなわち,構成要件1Dの「面データ」は,単に線分を所定方向に接続することによって構成される一本以上の線分の組合せを意味するにすぎない。面データの閉領域データ(本件システムのポリゴンに相当)を作成するに際し,所定方向に接続していく構成を採用した場合,所定方向への線分の接続を複数回行って終点と始点が一致した場合には,当該線分の組合せがそのまま面データの閉領域データ(ポリゴン)として保存されるところ,このような作業の目標が達成されるか否かは工程の途中では不明であるから,終点と始点が一致しない場合にも,終点と始点が一致しないということが判明するまでは,当該線分の組合せを一時的に保存することになる。ポリゴン(面データの閉領域データ)を作成するに際し,アークを右回り方向に接続していく甲2発明においても,終点と始点が一致するか否かが判明するまでの間,接続していった線分の組合せデータを一時的に保存しているはずである。本件システムでは,終点と始点が一致しなかった場合には,ポリゴンを作成しないから,一時的に保存していた当該線分の組合せデータを削除しているものと推認される。しかし,上記のような線分の組合せデータ(閉じていない面データ)を保存せずに削除しても,「閉じていないポリゴン」と「接続していないライン」の端点(孤立点)をダングリングノードとしてエラー表示し,当該エラーを入力により修正してポリゴン(面データの閉領域データ)を作成することは,技術的に可能であり,実際,本件システムにおいては,そのような構成が採用されている。したがって,一時的に保存していた線分の組合せを別のファイルに保存して,当該面データを修正してポリゴン(面データの閉領域データ)を作成する(本件特許発明1の構成)か,一時的に保存していた線分の組合せデータを削除し,元の線データを修正(閉じるべき図形を閉じた)後に,改めて線分を所定方向に接続してポリゴン(面データの閉領域データ)を作成する(甲2発明の構成)かは,単なる設計的事項であり,当業者が容易に想到し得る構成にすぎない。実際,これらの構成の相違によって,格別な効果上の相違はない。また,この点が設計事項であることは,公知技術である発明(MARIS)(甲)において,線分を所定方向に接続する方法と同等であるといえるベクトル境界追跡によって抽出されるベクトル列が,ポリゴン(閉ループをなした連結ベクトル列)のみならず,終点と始点が一致していないベクトル列も「アーク」型認識セグメントとして抽出・保存されていることからも(甲7の1485頁左欄14行目∼右欄2行,1487頁右欄2∼11行等),明らかである。なお,「閉じていない面データ」を作成しなくても,線分の自動接続を完了することは可能で,当業者であれば,容易にその具体的手段を想到し得る。ある線分群について,線分を接続していき,最初の線分の始点と現在対象となっている線分の終点が一致するか,又は,現在対象となっている線分の終点が孤立点であれば次の線分群に処理を移行するというアルゴリズムを採用すれば,対象範囲内のすべての線分に対し接続処理を行うことができる。

4 取消事由4(判断遺脱)

審決は,相違点3の判断に当たり,本件特許発明1の構成要件1Dの後半部分及び構成要件1Eに係る構成と,甲2発明と周知技術の組合せ発明に係る構成が異なると認定しただけで,いきなり本件特許発明1が進歩性を有するとの結論を導いていて,両構成の異なる点が,当業者にとって容易に想到し得たか否かについての判断がされていない。これは判断遺脱であり,審決は違法であって,取り消されるべきである。

5 取消事由5(記載不備についての認定判断の誤り)

(1) 原告(無効審判請求人)らが,本件特許発明1の「ベクトルデータを二次

元の線データに変換する」について,ベクトルデータ,線データは2次元であり,これらとの差異が明らかでないとして,本件訂正明細書が記載不備であるとしたのに対し,審決は,「『二次元の線データ』なる概念は,線データ画像処理用Lファイル2aから読み出したベクトルデータから,一連の折れ線を抽出して閉面データ画像処理用Dファイル2bに格納したものについて,他の線データと区別するために『二次元の線データ』という表現を用いたものと認められ,線データと技術的な相違はなく,明りょうでないとはいえない。地図データは一般に二次元図形からなるものであり,特定の線データについて『二次元の線データ』と称することにより,明りょうでなくなるとはいえない。そして,この『二次元の線データ』については,発明の詳細な説明に記載されたものである。」(28頁4行目∼10行目)としたが,誤りである。

(2) 「二次元の線データ」の意義につき,被告(被請求人)は,「単に座標の

羅列に過ぎない線データを,その構成座標XYの他に,始点と終点の点データ番号と,始点と終点に出入りする他の線データの有無や,その本数の情報を有するなど,二次元的関係の構造的な枠組みを有した線データに変換」したものであると説明する。補助参加人は,「『二次元の線データ』とは,例えばDLGファイルのようなアーク・ノード構造化が可能な形式のファイル(明細書においては『閉面データ画像処理用Dファイル2b』と称されている)に書き込まれた線データをいうのであって,線データ画像処理用Lファイル2aに記録されているベクトルデータと異なり,面データの作成が可能なデータという意味で『二次元の線データ』という語を用いたものである。」と説明する。本件特許発明に係る特許権の侵害が問題となった訴訟の判決においては,「構成要件1Bの『二次元の線データ』とは,閉領域データを構成し得ない単なるベクトルデータ(構成要件1A)とは異なり,閉領域データを構成し得る線データを指すものと解釈することができる。」とする。このように,当業者である被告と補助参加人の間でさえ,「二次元の線データ」の意義の説明は異なっており,また,そのいずれの説明も,審決が認定した「二次元の線データ」の意義とは異なり,さらに,裁判所と特許庁の間でも,「二次元の線データ」の意義は,異なる意味に解釈されている。このように,同じ明細書の記載に基づいているにもかかわらず,構成要件1Bの「二次元の線データ」の意義は当事者や判断機関によって様々に解釈されており,一律に定まらないのであり,「二次元の線データ」の意義は明りょうでない。

(3) 審決が認定した「二次元の線データ」の意義は,本件訂正明細書の【00

】の「Lファイル2aの要素数1∼nに分割された線データを解析し,折線,交点等を認識して二次元の線データに変換し,」との記載の「交点等を認識して」の部分を完全に無視したものであり,誤っている。すなわち,特許請求の範囲の記載からはその意味が一義的に明らかでない「二次元の線データ」の意義は,明細書の発明の詳細な説明を参酌して解釈すべきところ,審決は,本件訂正明細書の【0013】の記載を根拠としながら,そのうち「折線」の認識だけを取り上げて,「交点」の認識は全く無視して,上記の意義を導いたものであり,明らかに不当である。

第4 被告の反論

1 取消事由1(本件特許発明1の認定の誤り)に対して

原告らは,審決が本件特許発明1の要旨の認定を誤ったと主張して,審決の「相違点3」についての判断の記載を挙げるが,本件特許発明1及び2の認定に際して,甲2文献等を用いることや審決における相違点3の判断の記載を用いることはあり得ない。元来,発明の要旨認定は特許請求の範囲及び発明の詳細な説明に記載された範囲内で行われるものであり,原告らの上記主張は,本件特許発明1及び2の要旨認定において,本件訂正明細書の詳細な説明で引用すらされていない甲2文献を持ち出した上,本来なら,認定には全く関係のない容易想到性の判断,しかも,原告ら自身の独自の見解が反映された容易想到性の判断を入れ込んでいるもので,明らかに失当である。したがって,本件特許発明1及び2は,本件訂正明細書の「特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される」(審決3頁下から5行目∼4頁下から8行目)ものであるとした審決における本件特許発明の認定に何ら誤りはない。

2 取消事由2(甲2発明の認定の誤り)に対して

(1) 原告らは,甲2文献から,構成A´∼H´からなる発明が認定できるとし

て,審決の甲2発明の認定が誤りである旨主張するが,失当である。

(2) 原告らの主張する甲2発明の構成は原告ら独自の解釈に基づくものである。

また,原告らが挙げる「CLEAN」等の各種コマンドは,「ARC/INFO Vol.2」の「コマンドリファレンス」において,コマンドの紹介として記載されているだけのものであり,本件特許発明の地図データ作成方法の一部分として指摘されているわけではない。原告らは,それぞれのコマンドが有する機能のうち自ら適当と思うものを選択し,これを羅列的に記載しただけである。そして,甲2文献には,それらのコマンドをどの段階で用いて地図を作成するのかなどの全体的な具体的な地図作成方法についての記述は全く存在しないから,「ARC/INFO Vol.1」と「コマンドリファレンス」としての「ARC/INFO Vol.2」から,甲2発明を原告ら主張のように認定する根拠はない。甲2文献である,「ARC/INFO Users Manual Ver.5 Vol.1」及び「同Vol.2(コマンドリファレンス)」を当時の当業者が読んで,原告らが主張する構成A´∼H´の方法を採用することは不可能であった。現に,本件システムでは,地図データの入力方法として,スキャナー画像を使用せず,デジタイザを使用していた。原告らが,甲2発明として,構成A´∼H´のような発明が記載されているとすることは,本件出願後に得た知識を用いて,後に適宜に認定したものである。いずれにせよ,審決における甲2発明の認定は,甲2文献から「地図データ作成方法」の発明を,明確に把握できる範囲で認定したものであり,基本的に誤りはない。

3 取消事由3(一致点,相違点の認定の誤り)に対して

(1) 原告らは,審決が相違点を誤って認定した旨主張するが,審決に原告ら主

張の相違点の認定の誤りはなく,原告らの主張は失当である。原告らは,甲2文献に記載されている内容を本件特許発明1の内容に合致させて適当な部分を抜き出し,記載の類似をもって甲2発明と本件特許発明1が一致することを主張するものであり,不当である。むしろ,審決は,認定した相違点のほかに,重要な相違点を看過している。

(2) 原告らは,審決が認定した相違点1は相違点1としては存在しないとして,

甲2文献には,構成要件1Bの「ベクトルデータを線端を示す点データを含む二次元の線データに変換し」や構成要件1Cの「それらの二次元線データを座標上の線分に変換し」と一致する構成が記載されている旨主張する。しかし,構成要件1Bの「ベクトルデータを線端を示す点データを含む二次元の線データに変換し」が記載されていると原告らが主張する箇所の記載をみても,ラスターデータからベクトルデータを作成した「そのベクトルデータ」を,二次元の線データに変換することを記載したものはない。原告らが挙げる記載は,単に本件システムが,他の多くのソフトのデータと互換性があり,その多くのデータを利用することができるということを示しているにすぎない。また,構成要件1Cの「それらの二次元線データを座標上の線分に変換し」が記載されていると原告らが主張する箇所の記載をみても,それは,「CLEAN」というコマンドの内容についての記載であって,データ作成方法のシステムについての記載ではない。また,その説明では,ラスターデータからベクトルデータに変換し,かつこれを二次元の線データに変換したそのデータを,処理するという記載がないから,「CLEAN」には,構成要件1Cのうち,「それらの」二次元線データの部分の記載がない。とりわけ,構成要件1A∼1Cによれば,構成要件1Cの段階で処理される二次元線データは単なる座標点列としての位置データであるが,CLEANの説明では,こうしたデータを処理する旨の記載がない。また,「CLEAN」の説明では,線分を作成するとともに,「各マークの左右の内部ポリゴン番号を設定する」ことになっているから,これを実行する場合,各線分(アーク)の左右のポリゴンが設定されるという作業を行っているのであり,構成要件1Cの構成とは別の処理を行っている。したがって,「CLEAN」のコマンドは構成要件1A∼1Bの処理を行った後のデータの変換を示したものではなく,また,構成要件1Cの,「それらの」二次元線データを座標上の線分に変換するという内容の処理を行っているものではない。

(3) 原告らは,審決が認定した相違点2は存在しないとして,本件特許発明1

の各閉領域データに属性データを付与可能にする構成と甲2発明の「カバレッジフィーチャーに属性を付与すること」は一致し,甲2発明の「地図データの解析,データ管理,表示と変換及び印刷等を行う」という構成は,本件特許発明1の「該閉領域データを記憶,表示,印刷する」構成と一致する旨主張する。本件特許発明1と甲2発明では,閉領域データを作成し,これに属性を付与可能とするという構成では一致する。しかし,本件特許発明1では,閉領域データを作成した後に属性を付与可能とするのに対し,甲2発明では,カバレッジの入力段階で属性を付与可能とするという点で全く異なる構成であり,審決が,本件特許発明1と甲2発明が相違点2において相違するとしたことは,結果的に相当である。すなわち,本件特許発明1の構成要件1Gは,構成要件1A∼1Fの構成によって面データを閉領域データとして完成した後で,属性データを付与可能として,閉領域データの記憶,表示又は印刷をする方法である。これに対し,甲2発明は,ステップ2の「カバレッジをデジタイズする」段階,すなわち,位置データの入力段階において,既にポリゴンを作成し,そのポリゴン内部にラベルポイント(代表点)を任意の希望の位置に設置してポリゴンを特定し,属性を付与可能としているのであって,閉領域データを完成し,その後に属性を付与可能とする本件特許発明の構成要件1Gの構成とは全く異なる。

(4) 原告らは,審決が認定した相違点3のうち,甲2文献には本件特許発明1

の構成要件1Dの後半部分は開示されていないが,他に相違点は存在しないとして,甲2発明の「アークを右回り方向に接続し,アークが閉じている場合にはポリゴンを作成」する構成と本件特許発明1の構成要件1D前半は一致し,甲2発明の「NODEERRORSコマンドやARCEDITによって『閉じていないポリゴン』と『接続していないライン』をダングリングノードとしてエラー表示する」構成及び「ダングリングノード等のエラーを発見したらARCEDITによるデジタイザ入力によりエラーを訂正し,アークを編集した後に再度CLEANもしくはBUILDコマンドを実行してトポロジーを更新する」構成と,本件特許発明1の構成要件1E及び1Fが一致する旨主張する。しかし,甲2文献には,「アークを右回り方向に接続し,アークが閉じている場合にはポリゴンを作成する構成」は記載されていない。本件特許発明に係る特許権の侵害が主張された訴訟(別件訴訟)においては,原告(別件訴訟の被告)の使用する地図データ作成方法について,原告らが主張する方法が「イ号方法」として認定されているが,これは甲2文献のみからでなく弁論の全趣旨から認定されたものである。かつて,原告らは,別件訴訟において,「イ号方法」について,ポリゴンを作成する方法の開示を拒み,その方法はESRI社が企業秘密としているので開示できないと主張立証したのであって,別件訴訟では,企業秘密であるから開示できないと主張し,本件では,甲2文献に既に開示されているという主張は一貫性を欠き,許されるものではない。また,甲2文献には,ポリゴン作成方法のアルゴリズム,すなわち,「アークを右回り方向に接続し,アークが閉じている場合には,ポリゴンを作成する」という方法を開示した記載は一切ない。甲2文献には,ポリゴンは,「アークの数とポリゴンの境界線を規定するアークのリストによって定義される」との記載があるだけで,アークのリストを,「右まわりにかつ連続して」定義するとか,ポリゴンの定義の方法として右まわりに連続して閉領域を作るとは記載されておらず,ポリゴンの作成方法について「アークを所定方向に接続して」という構成は記載されていない。そして,ポリゴンのアークリスト(ポリゴンのトポロジ)を自動的に作成・更新するためのコマンドであるCLEAN及びBUILDの説明においても,いずれのコマンドでもコマンドを実行する前に原則として各ポリゴンにラベルポイントが存在することが前提とされており,甲2文献に記載されているポリゴン作成方法が,本件特許発明1の構成と異なることが示されている。また,原告らはダングリングノードとしてエラー表示する構成は,本件特許発明の構成要件1Eの構成と一致すると主張するが,甲2発明では,ダングリングノードの訂正は,カバレッジをデジタイズした(位置データを入力する)後の段階で,かつフィーチャーを定義し,トポロジーを作成する前の段階で実行されるものである。これに対し,構成要件1Eは,所定方向に接続して閉領域データを作成することに不成功に終わったとき,不連続点となる始点及び終点を報告表示するのであり,甲2発明と本件特許発明1の構成はこの点において異なる。さらに,原告らは,甲2発明のダングリングノード等のエラーに対するARCEDITのコマンドによるエラーの訂正及びその後のCLEAN等の処理は本件特許発明1の構成要件1Fの構成と一致すると主張する。しかし,甲2発明では,ダングリングノードの訂正は,ダングリングノードを発見した後の段階で実行され,またフィーチャーを定義し,トポロジを作成する前の段階で実行され,ポリゴンを定義しトポロジを作成する前にダングリングノードを訂正している。これに対し,構成要件1Fの構成は所定方向に接続して閉領域データを作成することに不成功に終わった後に不連続点を表示して訂正をするのであり,甲2発明と本件特許発明1はこの点で全く異なる。

(5) 本件特許発明1と甲2発明は,「地形図等の原図に依拠して得られる情報

から座標上の線分(アーク)を作成し,一連の座標上の線分から面データの閉領域データ(ポリゴン)を作成し,閉領域データを作成できない場合にはデータを修正して閉領域データを作成することを特徴とする地図データ作成方法」である点で一致する。他方,①本件特許発明1では,地形図等の原図からデータ入力のための基図の作成を必要不可欠の構成とはしておらず,直接原図からラスターデータを読み取って,これからベクトルデータを作成するのに対し,甲2発明では,基図を作成して,基図のすべてのポリゴンが閉じているかを確認し,かつ,基図のポリゴン内にユーザーIDを付与する等,基図に準備作業を要する点(相違点1),②本件特許発明1では,ラスターデータから単なる座標点列としてのベクトルデータを取得し,このベクトルデータを線端を示す点データを含む二次元の線データに変換し,それらの二次元線データを座標上の線分に変換するという工程で途中に接点や交点を持たないアークが作成されるのに対し,甲2発明では,基図における特徴点についてデジタイザカーソルで一点一点カーソルボタンを押して位置座標を特定すると同時に,キー値を入力しながら,座標とラベルポイントを付与するという工程でアークが作成される点,また,本件特許発明1では,データ入力に際し,閉領域データを特定するための番号を付与せず,閉領域がすべて完成したときに属性データを付与可能とするのに対し,甲2発明では,基図にユーザーIDを持つラベルポイントを付与し,データ入力の際に領域データを既に作成し,その領域データ内の任意の位置に個のラベルポイントを付与してユーザーIDを付与して,基図のユーザーIDと一致させる点(相違点2),③本件特許発明1では,ラスターデータから取得されるベクトルデータの性質は単なる座標点列としてのベクトルデータであるのに対し,甲2発明では,基図からデジタイザ入力によって取得されるデータの性質は,キー値情報が付与されていることから,線分の開始点及び終了点の位置座標のほかに各端点と線分との接続情報が含まれた構造化データ(アーク)であり,また,本件特許発明1は,閉領域データを作成するにあたり,閉領域データを特定して属性を付与するためのラベルポイントがあらかじめ付与されないのに対し,甲2発明では,閉領域データの作成の際に,あらかじめ領域データ内の任意の位置に,基図のユーザーID及びラベルポイントに対応するラベルポイントとユーザーIDが付与される点(相違点3),④本件特許発明1では,「該線分を所定方向に接続し,終点が始点と一致したときはそれらの線分からなる面データの閉領域データを自動的に作成」するのに対し,甲2発明では,その方法が具体的に開示されている記載はない点(相違点4),⑤本件特許発明1では,「終点が始点と一致しないときはそれらの線分からなる面データを自動的に作成して,該面データの前記不連続となる始点及び終点を報知表示し,該不連続点から任意の点又は線へ接続する線データを入力に基づいて生成することにより該面データに対応する閉領域データを作成」するのに対し,甲2発明では,その方法が具体的に開示されていない点(相違点5)で,それぞれ相違する。そして,これらの相違点からも,本件特許発明1と甲2発明は全く異なる発明であり,本件特許発明1は,甲2発明によって示唆さえもされていない。

4 取消事由4(判断遺脱)に対して

原告らは,審決には,相違点3の判断について,判断遺脱がある旨主張するが,失当である。審決は,本件特許発明1の線分を所定方向に接続し,終点が始点と一致しないときはそれらの線分からなる面データを自動的に作成して,面データの不連続となる始点及び終点を報知表示し,不連続点から任意の点又は線へ接続する線データを入力することを促す構成について,甲2文献その他の引用文献に記載されておらず,示唆も認められないとして,本件特許発明1は,甲2発明と同一ではなく,また,甲2文献等に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえないとしているのであり,容易想到性についての判断をしていて,原告らが主張するような判断遺脱はなく,原告ら主張の根拠は不明である。

5 取消事由5(記載不備についての認定判断の誤り)に対して

(1) 原告らは,「二次元の線データ」の意義について,被告(被請求人),補

助参加人,別件地裁判決の間でも,説明内容が異なっており,各当事者が一致しないことに示されるように,二次元の線データの意義は明りょうでないとし,また,審決の認定が誤っている旨主張するが,失当である。

(2) 被告の構成要件1Bについての説明は,「二次元の線データに変換する」

というのは,Lファイル2aからDファイル2bに変換することを指すのであり,これについては,本件訂正明細書の段落【0015】∼【0022】までに記載されているとおりである。ここでは,Lファイルに格納されていたデータ(これは単なる点列データである。)を読み込み,これをDファイルに書き出してDファイルに格納する経過が記載されている。この

(被告の主張)

は,補助参加人の「二次元の線データに変換し」の主張とも合致するものであり,また,地裁判決とも概ね合致しており,「二次元の線データに変換し」の記載内容について,当事者等の間で主張が異なることはない。そして,審決も「線データ画像処理用Lファイル2aから読み出したベクトルデータから,一連の折れ線を抽出して閉面データ画像処理用Dファイル2bに格納したものについて他の線データと区別する為に『二次元線データ』という表現を用いた」としており,「一連の折れ線を抽出して」と一例を挙げて説明しているだけで,被告や補助参加人と同様の判断を示している。

(3) 本件訂正明細書には,「折線,交点等を認識して二次元の線データに変換

し」との記載もあるが,構成要件1Bの段階で,構成要件1Cの交点分割を行うはずがないことからも,これは,本件訂正明細書の段落【0016】及び図14に例示されているように,既に交点で分割済みの線データや未分割の折れ線などの線データの多様な在り方に対応して「折線・交点等を読み込んで二次元の線データ変換」するという程度の意味であることは明らかである。

第5 補助参加人の主張(補助参加人は,共同訴訟的補助参加をする旨申し出てい

る。)

1 取消事由1(本件特許発明1の認定の誤り)に対して

(1)ア 原告らは,構成要件1Dの後半部分について,審決が,構成要件1Dを

「線分を所定方向に接続して孤立点を検索して抽出するもの」であると認定している旨主張するが,審決は,構成要件1Dに「孤立点の検索」まで含むとは認定していない。原告らが掲げる審決の箇所は,甲2文献の孤立点の報知表示に関する記載と対比されていることから,構成要件1Eに関して述べたものである。イ 原告らは,構成要件1Dの後半について,線分を所定方向に接続し,接続された線分の終点の点種を判別し,次に接続する線分がない孤立点であった場合に,接続処理を終了して,当該線分の組合せデータを「面データ」として格納すること」である旨主張する。しかし,原告らは,作成された閉じていない面データを「格納する」として,構成要件1Dにおいて,面データが記憶媒体に記憶されることを要するとするが,文言上「作成」と記載されていることなどから,誤りである。ウ しかし,審決の構成要件1Dについての認定は誤りである。審決は,相違点3についての判断部分の記載に照らすと,本件特許発明1の構成要件1Eには,構成要件1Dで作成された閉ループとして抽出されなかった図形(閉じていない面データ)と関係付けて端点のチェック・報知表示を行うものであり,端点の検索のために,閉じていない面データが,ハードディスク等の記憶媒体に記憶されていることを前提としていると解される。しかし,本件特許発明1の構成要件1Dにおいては,閉じていない面データが「作成」されれば足り,メモリ中に一時的にでも存在すればよいのであって,記憶媒体に記憶されることは要しない。閉じていない面データを「作成」する技術的意義は,面データ作成を全自動化するため,不連続部分の存在によって処理が窮してしまうことのないようにする点にあるのであり,すべての線分の接続処理が完了すれば,閉じていない面データを廃棄しても構わない。

(2)ア 原告らは,構成要件1Eについて,審決が,(構成要件1D後半の)検

索により抽出した孤立点を報知表示するものと認定したとして,その認定の誤りを主張するが,審決の理解を誤っている。審決が認定する構成要件1D後半の構成は,閉じていない面データの孤立点を抽出するものではないから,「これにより抽出した孤立点を報知表示する」こともあり得ない。なお,原告らは,構成要件1Eについて,その報知表示の時まで,閉じていない面データが残存するものとしているが,構成要件1Dは,閉じていない面データが作成され,メモリ中に一時的にでも存在することとなれば足り,閉じていない面データが構成要件1Eの際に残存している必要はない。イ 審決は,相違点3についての判断部分の記載に照らすと,構成要件1Eの「該面データの前記不連続となる始点及び終点を報知表示し」について,閉ループとして抽出されなかった図形(閉じていない面データ)と関係付けて,線分を所定方向に探索して孤立点を求めるものととらえている。しかし,構成要件1Eは,何らかの方法で孤立点を検索し,閉じていない面データの不連続点に相当する点を報知表示するものであれば足りるのであって,必ずしも閉じていない面データを利用して孤立点を検索するものである必要はない。審決はこの点でも本件特許発明1の要旨の理解を誤っている。

2 取消事由2(甲2発明の認定の誤り)に対して

(1) 審決の甲2発明の認定には重大な誤りがあるが,審決の甲2発明の認定の

誤りをいう原告らの主張も誤りである。

(2) 本件特許発明1の構成要件1B,構成要件1C及び構成要件1Dに対応す

る甲2発明の構成についてア 審決は,本件特許発明1の構成要件1B,構成要件1C及び構成要件1Dに対応する甲2発明の構成を「フィーチャーを定義してトポロジーを生成し」と認定している。ここで,審決は,甲2発明が,ラスター/ベクター変換で得られたベクトルデータから自動的に「フィーチャー定義」できるとしているが,明らかな誤りである。本件特許発明1は,ラスターデータから取得したベクトルデータ(XY座標)だけから面データを自動的に作成できるようにした点に重要な技術的意義があるのに対し,甲2文献には,ラスターデータから取得したベクトルデータ(XY座標)のみから面データを自動的に作成する技術の開示はない。甲2文献の「There are seven steps used for coverage automation in ARC/INFO」(vol.1の10−2頁)との記載は,「ARC/INFOにおけるカバレッジの自動化は7つのステップからなります。」と訳されているが,「automation」を「自動化」と訳したのは誤訳であり,「automation」とは「the use of machines to dowork that was previously done by people」(従前は人が行っていた作業を行うために機械を使用すること(Oxford Advanced Lerner’s Dictionary seventh edition)の意味にすぎず,「自動化」を意味するものではないし,そこに列挙されている具体的な作業内容を見ても,「automation」の語が「自動化」の意味でないことは自明である。そして,本件特許発明1の出願当時の本件システムにおいて,ラスターデータより得られたベクトルデータから「フィーチャーを定義してトポロジーを作成」するためには,キー値の入力が必要になるのであり,このキー値の付与は一つ一つ手作業で行う必要があったから,ラスターデータより得られたベクトルデータから「フィーチャーを定義してトポロジーを作成」することを自動的に行うことは,不可能であった。そして,ARC/INFOを開発・製造・販売する会社の日本における総代理店である原告らが,「オートデジタイズ」手法により得られたデータは面的な認識ができないなどと報告を行っているなどの事実(丙5の1,丙7)は,ベクトルデータ作成の自動化が,当時の従来技術の技術水準では困難だったことを示す。イ 原告らが主張する甲2発明の内容は誤っている。(ア) 原告らは,甲2文献に,構成B´として,「該(ラスターベクトル変換により得られた)ベクトルデータを,ARC/INFOのカバレッジに変換し,」との構成が開示されている旨主張する。しかし,本件特許発明1の構成要件1Bにいう「該ベクトルデータ」は,構成要件1Aの「ベクトルデータ」そのものを意味するから,ラスターデータから直接取得し得るベクトルデータ(XY座標点列)がそのまま二次元線データへ変換されなければならず,少なくとも,そのベクトルデータに手作業で情報を付加入力したようなデータは含まれない。また,本件特許発明1は,ラスターデータから取得したベクトルデータから面データとしての属性付与が可能なデータを自動的に作成するものであるから,既に面データとしての属性付与が可能となっているデータも「ベクトルデータ」に含まれない。甲2文献には,スキャニングによって得られたラスターデータからベクターデータに変換して読み込むとの方法はそもそも記載されていない。本件システムにおいて,座標データを入力するためには,座標点のデータだけではなく,個々の座標点ごとに「キー値」も一緒に読み込まれなければならないが,地図をスキャニングして得られるラスターデータからベクターデータへの変換で得られるのはXYの座標点列データだけであって,少なくとも,アークの始点,終点,中間点,あるいはカーブであるといったデータが作成されるものではないから,座標データが単なる座標点データであるとすれば,少なくともそのままで本件システムで読み込めるものではない。したがって,原図をスキャニングしたラスターデータからベクトルデータを取得する技術は周知技術であるが,本件システムのユーザーズガイドである甲2文献は,そのベクトルデータをそのまま,キー値を加えることなしに本件システムに読み込む技術を開示するものではない。原告らが,構成B´が開示されていると主張する根拠として挙げる甲2文献に記載されたコマンドは,いずれもスキャニングによって得られたラスターデータから得られるベクトルデータをカバレッジに変換するコマンドではない。(イ) 原告らは,甲2文献に,構成C´として,「CLEANコマンドによってアークの交点にノードを付してアークノードトポロジーを構築し,アークの接点および線端点にも同様の処理を行うもの」が開示されている旨主張しているが,甲2文献において,CLEANコマンドによって「線端点」にもノードが付されるという開示はされていない。すなわち,本件システムでは,座標点をデジタイザ等で入力する当初から,端点についてはノードを示すキー値,中間点については中間点を示すキー値,カーブであればそれを示すキー値を入力するという技術思想で一貫していて,入力されたアークに端点のノードがないというケースはそもそも想定されておらず,このような技術思想を知る当業者が,本件システムのユーザーズガイドである甲2文献の記載に接しても,線端点のノードは当初から設けられていると考えるのが通常であるから,これがCLEANコマンドによって新たに付されるとは読めず,この構成について,開示があるとはいえない。CLEANコマンドについては,「CLEANはまたノードに番号をつけ,各アークの開始ノードと終了ノード・・・を設定します。」(甲2文献のVol.2 訳文の128頁)との記載があるが,これは,各アークとの関係で,どちらのノードが「始点」でどちらのノードが「終点」であるかを記録するという趣旨の記載にすぎないことは明らかであり,もともとノードのなかった線端点に新たなノードを発生させることを記載したものではない。ウ 本件特許発明1における「該線分を所定方向に接続」(構成要件1D)の意味は,端点に接続する線分の情報を利用して,次々に線分を所定方向に選択して線分番号をリストアップすることで面データを作成するものである。甲2文献にこれに相当する構成の開示があるかどうかを判断するに当たっては,端点に接続する線分情報を利用して線分の所定方向接続を行い面データを作成するという技術思想が開示されているか否かを判断する必要があるところ,甲2文献には,閉領域データを構成する複数の線分が所定方向に選択されてリスト化されているという事実の開示はともかく,そのリストの作成に当たって,線分と端点の接続関係を利用して面データを自動作成するという技術は開示されていない。

(3) 本件特許発明1の構成要件1Gに対応する甲2発明の構成について

審決は,本件特許発明1の構成要件1Gに対応する甲2発明の構成として「カバレッジフィーチャーに属性を付与することを特徴とする」との構成を認定した。しかし,構成要件1Gの「閉領域データに属性データを付与可能に」するとは,閉領域データに当該領域を識別するための番号等を付与することをいう。これは閉領域データに属性を付与するための前提となる処理であって,属性付与それ自体とは全く異なる。そして,これは,甲2文献に記載されたフィーチャー属性テーブルの作成と全く異なるものである。すなわち,面データが作成されこれに属性情報が付与されるためには,面データの図形情報(面データ及びその構成線分のトポロジー情報や座標情報等)と属性情報とが作成され,かつ,両者が関連づけられる必要があり,この図形情報と属性情報とを関連付けるものが識別番号であり,これを付与することが構成要件1Gの「属性データを付与可能に」することの意義である。これに対し,本件システムにおいて,本件特許発明1における上記識別番号と対応するものは「ポリゴンユーザーID」であり,このポリゴンユーザーIDが図形情報と属性情報とを関連付けるのに用いられる。したがって,甲2発明において,「属性データを付与可能に」することに対応する構成は,ポリゴンユーザーIDの付与,すなわちラベルポイントの入力にほかならない。そして,本件システムにおいて,フィーチャー属性テーブルの作成とは,既にラベルポイントが入力されてポリゴンユーザーIDが付与されていることを前提として,ポリゴンの面積や周囲長等を記録した図形情報としてのポリゴン属性テーブルを作成することをいうのであって,本件特許発明1の「属性データを付与可能に」することと概念を全く異にする。また,本件特許発明1は,面データ作成前のデータ入力段階で識別番号を付与していた従来の考え方を覆し,面データを作成しエラーを修正した後に識別番号を付与して属性データを付与可能にすることによって,上記エラーに起因する属性データの漏洩を防止するという技術的意義を有している。すなわち,どの時点で「属性データを付与可能に」するのかが本件特許発明1の技術的意義の観点から非常に重要である。一方,フィーチャー属性テーブルがどの時点で作成されるかは,本件特許発明1の技術的意義の有無とは無関係であるから,本件特許発明1の技術的意義と無関係な「フィーチャー属性テーブルの作成」が,「属性データを付与可能に」する構成に対応する構成でないことは明らかである。したがって,審決が構成要件1Gに対応する構成として「カバレッジフィーチャーに属性を付与すること」を認定したことは誤りであり,審決は構成要件1Gに対応する構成を欠いている。そして,図形情報を記憶するためのフィーチャー属性テーブルを作成することと(構成G´),図形情報と属性情報とを共通の識別番号を用いて具体的に対応させるため,面データに識別番号を付与すること(構成要件1G)とが異なることは明らかであり,これが対応することをいう原告らの主張は明らかに失当である。

3 取消事由3(一致点,相違点の認定の誤り)に対して

(1) 審決及び原告らは,本件特許発明1及び甲2発明の認定を誤り,その結果,

相違点の認定も誤っている。

(2) 相違点1について

ア 審決は,相違点1を認定したが,甲2発明の認定に重大な誤りがあるために,相違点の本質を見誤っている。本件特許発明1と甲2発明の差異は,単にフィーチャーを座標上の線分から作成するか,あるいは,ベクトルデータから作成するかにあるのではない。本件特許発明1は,ベクトルデータから二次元の線データ,座標上の線分を経て面データを作成することにより,ベクトルデータからトポロジーを自動生成して面データの自動作成を可能にするものである。これに対し,甲2発明はベクトルデータ(XY座標)のみからトポロジー情報を自動的に生成するのではなく,トポロジーは,データ入力の際に入力者が手作業で入力する必要があった。したがって,本件特許発明1でベクトルデータからトポロジー情報を得るために行われる,二次元の線データへの変換,座標上の線分への変換といった過程を経るものではない。本件特許発明1は,二次元の線データ,座標上の線分といった過程を経ることによって,初めてベクトルデータのみから面データを自動的に作成することが可能になった点に大きな進歩性があるのであり,そのことにこそ本件特許発明1と甲2発明との本質的な相違が存在する。イ 原告らは,本件特許発明1の構成要件1Bと甲2発明の構成B´,本件特許発明1の構成要件1Cと甲2発明の構成C´とが対応し,本件特許発明1と甲2発明との間に相違点は存在しないという。しかし,原告らは,甲2発明の認定を誤っている。原告らが主張する甲2発明の構成B´は甲2文献のどこにも開示されていないし,構成C´についても,アークの線端点にノードを付するという構成は全く開示がない。

(3) 相違点2について

審決は,相違点2を認定したところ,そのうち,閉領域データの記憶,印刷の点は相違点として評価するほどのものではない。しかし,審決の相違点2に係る構成については,属性データを付与可能にする段階がいつかという点に相違点がある。すなわち,「属性データを付与可能に」するとは,属性情報を連結するための識別番号等を閉面データに付与することを意味するところ,甲2発明において,識別番号(ポリゴンユーザーID)が付与され属性データが付与可能になるのはラベルポイントを付与した時点であり,ラベルポイントが付与されるのは面データの作成前である。これに対し,本件特許発明1においては,構成要件1Dによって面データが作成された後に識別番号が付与されるのであり,本件特許発明1と甲2発明とは識別番号が付与される段階が明らかに異なる。本件特許発明1と甲2発明の相違点はその点に存在する。原告らは,この点につき,本件特許発明1と甲2発明との間に相違点はない旨主張しているが,上記のとおり両者の間には大きな相違点が存在する。

(4) 相違点3について

ア 審決は,相違点3を認定したところ,審決が相違点として認定した構成のうち,「線分を所定方向に接続し」の箇所,及び,「終点が始点と一致しないときはそれらの線分からなる面データを自動的に作成して」の箇所については,甲2文献に具体的な処理は記載されていないという意味で,審決の認定に誤りはない。他方,審決が相違点として認定した構成のうち,「終点が始点と一致したときはそれらの線分からなる面データの閉領域データを自動的に作成し,」の箇所,及び,「該不連続点から任意の点または線へ接続する線データを入力に基づいて生成することにより該面データに対応する閉領域データを作成」の箇所は,甲2文献に開示されている。イ 原告らは,「線分を所定方向に接続し」の点につき,線分を一定の方向に選択・接続する技術が技術常識(周知技術)であるとし,この点が相違点であることを否定する。しかし,本件特許発明1の「線分を所定方向に接続」する構成は,単に線分を接続することに意義があるのではなく,接続に当たり,各端点における線分の接続情報(トポロジー情報)を利用して,次に接続する線分を選択するという技術思想を有するものである。すなわち,本件特許発明1の実施例においては,線分を接続する前に,点に接続する線分を記録した点データを構築し,線分の接続に際してはその点データを用いて接続を行っていくのであるが,これにより同一面を構成する線分の効率的なリストアップが可能となる。これに対し,原告らが技術常識の根拠とする各公知技術は,いずれも線分の接続に際して,端点に接続する線のデータを用いて接続を行っていくものではない。そのため,それらは,本件特許発明1の構成要件1Dの接続の処理とは全く異なった構成を開示するものであって,構成要件1Dの「線分を所定方向に接続」する処理について具体的処理の開示はないから,「線分を所定方向に接続し」の箇所が公知技術であるという原告らの主張は誤りである。

(5) 審決は,本件特許発明1と甲2発明の相違点を看過していて,本件特許発

明の進歩性についての判断過程に誤りがあるが,進歩性を肯定した結論に誤りはなく,審決の判断は,これを取り消すほどの違法性はない。ア 本件特許発明1の構成要件1Bは,ラスターデータから取得したベクトルデータをそのまま二次元の線データに変換するものであるのに対し,甲2文献には,スキャニングによって得られたラスターデータから作成した,本件特許発明1にいう「ベクトルデータ」をそのまま読み込む手段の開示はされていない。本件システムにおいて,座標入力を行うためには,座標値にキー値を付して入力を行う必要があるが,ラスター・ベクトル変換によって得られた座標データにはキー値が付されていないため,これをそのまま本件システムに読み込むことはできない。本件特許の出願時においては,座標データ入力に先立ち,あらかじめ地図データ同士の相関関係(トポロジー)を構築し,座標データ入力の際,定められたトポロジーも含めて座標データ入力するのが当業者の技術常識であった。これに対し,本件特許発明は,座標点列としてのXY座標だけから面データを生成するものであり,面データ生成に当たり,従来必要と考えられていたトポロジー情報,その元となるトポロジー要素の入力を一切要しないのであり,この点において技術常識を覆したもので,進歩性がある。甲2文献記載の技術は,すべての座標の入力の都度,キー値というトポロジーデータを人為的に入力することを要するもので,従来技術の域を出るものではない。そして,本件特許発明では,キー値を必要としない結果,データ入力方法の違い,地図データの入力及び修正に当たっての必要なデータ量の違い,データ修正作業の分担の可否などの点で,顕著な作用効果を有する。イ 本件特許発明1の構成要件1Cは,線分の接点,交点及び線端点にノードを付して,二次元の線データを座標上の線分に変換するものである。これに対し,甲2文献には,CLEANコマンドにより線分同士の交点にノードを付す技術の開示はあるが,線端点にノードを付与する技術はない。なお,本件特許発明1の構成要件Aは,1レコードの開始点・終了点を入力するものではあっても,ノードを入力するものではない。本件システムは,アークの座標入力の際にキー値を入力し,線分の分岐点,接点及び始点・終点等を示すノードとそれ以外の中間点を区別しながらデータ入力し,その情報を用いて他のトポロジーを生成するという技術思想を採用し,ノードが設けられるべき線分の始点と終点部分は,当初からノードとして入力されるという技術思想に基づいているのであり,本件特許発明1のように,ノード(端点)と中間点を区別することなくベクトルデータの線データを入力し,その後線端点に端点のデータを付すことは,本件システムの技術思想と相容れず,線端点に端点のデータを付す本件特許発明1の構成は容易に想到することができるものではない。ウ 本件特許発明1の構成要件1Dは,線分を所定方向に接続し,最初の線分の始端と最後の線分の終端が一致すれば,閉領域データを作成し,一致しなければ閉じていない面データを作成して接続を終了する。これに対し,甲2文献には,線分接続の結果,閉領域データが作成されることは開示されているが,閉じていない面データが作成されることは開示されていない。甲2文献記載のデータ入力技術は,地図データ同士の相関関係(トポロジー)を構築する前にデジタイジングエラーを修正してしまうという思想に立脚していて,本件特許発明1の構成は,この技術思想と全く相容れない。また,閉じていない面データを作成するという構成は,ベクトルデータからの面データ作成の全面的自動化を達成する過程でその必要性が認識されたものであり,面データ作成の自動化という発想とは無縁の甲2文献の記載からは,本件特許発明の構成は到底容易に想到することができるものではない。

4 取消事由4(判断遺脱)に対して

(1) 審決は,相違点1の容易想到性につき,フィーチャーの定義をベクトルデ

ータから直接行うか,線分データから行うかは,当業者が適宜選択する事項である等といった理由で,簡単に容易想到性を肯定している。しかし,本件特許発明1は,ベクトルデータから二次元の線データ,座標上の線分を経て面データを作成することにより,トポロジー情報を自動的に作成して,面データの自動作成を可能にするものであり,この点において甲2発明と決定的な相違がある。したがって,フィーチャーの定義をベクトルデータから直接行うか,座標上の線分から行うかは,当業者が適宜選択する事項ではなく,相違点1は当業者において容易に想到し得るものではない。また,従来はトポロジー情報の入力は人手によらなければできないという考え方が地図作成業界の常識となっており(明示型トポロジーの観念),これをコンピュータによって自動的に生成するという発想は従来の常識を大幅に転換したものである(暗示型トポロジーの観念)。この観点からも,当業者がトポロジー情報を自動作成する構成を発想することについては阻害要因があり,相違点1は容易に想到し得るものではない。

(2) 審決は,相違点2について,地図データを構成する図形要素について,属

性を付与すること,図形要素データを記憶すること,印刷することは普通に行われる程度のことであり,また,図形要素として閉領域データがあることは広く知られていることであるとして,相違点2が容易に想到できたものであると判断している。しかし,本件特許発明1と甲2発明との相違点は,単に閉領域データを記憶・印刷する点にあるのではなく,面データの識別番号を付与する作業を面データ作成後に行うか,面データ作成前に行うかの点にある。そして,本件特許発明の出願当時,識別番号の付与は,面データの入力に際して行うことが常識となっていて,面データの作成後に識別番号を付与するという構成は当業者が容易に想到し得るものではない。また,本件特許発明1は,面データの作成後に識別番号を付与することによって,面データの属性情報の漏洩を防止することができるのであり,本件特許発明の構成と甲2発明の構成とは機能に大きな差があり,この点からも,本件特許発明1の構成は,容易に想到し得るものではない。

(3) 甲2発明には,本件特許発明1の構成要件1Dにおける「線分を所定方向

に接続」する構成につき具体的な処理方法の開示がなく,また,「終点が始点と一致しないときはそれらの線分からなる面データを自動的に作成」する構成の開示もない。そして,「線分を所定方向に接続」する構成につき,本件特許発明1では端点における線の接続データを利用して接続することによって接続する線分の重複を避けて効率的な接続を可能にするという機能がある。また,終点が始点と一致しない場合に閉じていない面データを作成する構成がなければ,コンピュータは線分接続が完了したか否かを判断することができないから,線分の自動接続を完了することができない。すなわち,「終点が始点と一致しないときはそれらの線分からなる面データを自動的に作成」する構成は線分の自動接続を完了することを可能にする独自の技術的意義があるのであり,容易に想到し得るものではない。

5 取消事由5(記載不備についての認定判断の誤り)に対して

原告らは,本件特許発明1の請求項に記載された「二次元の線データ」の意味について審決の認定が誤っているとした上,その意味が明りょうでないとして本件特許発明について,本件訂正明細書の記載不備を主張する。しかし,審決は,「二次元の線データ」の意義を「線データ画像処理用Lファイル2aから読み出したベクトルデータから,一連の折れ線を抽出して平面データ画像処理用Dファイル2bに格納したもの」と認定している。審決の認定する意味は,補助参加人が主張する「二次元の線データ」の意義,すなわち,「アーク・ノード構造化が可能な形式のファイルに書き込まれた線データ」と全く同じである。また,原告らは,審決が認定する「二次元の線データ」の意味が,本件訂正明細書に記載された「Lファイル2aの要素数1∼nに分割された線データを解析し,折れ線,交点等を認識して二次元の線データに変換し」との記載を無視したものであり誤っていると主張するが,審決がいう「一連の折れ線を抽出」には折れ線の認識と交点の認識の両方が含まれるのであり,審決は何ら「交点等を認識して」の記載を無視したものではない。

第6 当裁判所の判断

1 取消事由1(本件特許発明1の認定の誤り)について

(1) 原告らは,審決が本件特許発明1の認定を誤ったと主張する。

原告らは,審決が,本件特許発明1の構成要件1Dの後半部分及び構成要件1Eにつき,実質的にその要旨の認定を誤ったと主張する。本件においては,甲2発明の認定の誤りや本件特許発明1と甲2発明の一致点,相違点の認定の誤りについても取消事由として主張されているところ,本件特許発明1の要旨は,それに対応して認定されるべき甲2発明の認定及び本件特許発明1と甲2発明の一致点,相違点の認定等の前提であり,また,特許請求の範囲の記載の文言が一義的に明確でないことからも,事案にかんがみ,まず,本件特許発明1の要旨について,構成要件1A∼1Hに分けて検討することとする。

(2) 本件訂正明細書には,以下の記載がある。

ア 「上記地域や地点毎に属性を付与した地図情報をコンピュータに記憶させるには,先ず,デジタイザ等を用い,手作業で地図上の区域や地点の縁に沿って入力端末を移動させ,この入力端末の移動データを区域や地点の輪郭線を表す面データとしてコンピュータに入力したのち,その面データに属性を付与していた。また,等高線による地形のみを描いた地図等も,土木・測量用として広く使用されている。このような地図は,ときに応じて修正・更新を行う必要がある。このような地図もコンピュータに読み取らせ,図形の歪みを自動的に直す等の補正を行っている。このような場合のコンピュータ処理では,上記のような面データの概念がなく,単に線を表すベクトルデータとして取り扱われ,説明文等を付加して表示することはできても,図形データに属性を付与するということはできない。又,線データの「切れ」などの自動検出が出来ず,又,家形のような直角部を有するベクトル認識対象にあっては,例えば当該家形が6画形であれば6本の線データに分解されて,一本の折れ線データに一括して自動的にベクトル化する事は出来ない為,地形図のような大量かつ重畳的な原図データから直接ベクトル処理した後で家形や道路等を種別分けする作業は著しく困難であり,予め各々のトレース図の作成を必要とする状況にある。」(段落【0004】∼【0005】)イ 「【従来技術の問題点】上述のデジタイザによる面データの入力は,例えば,沖縄県,鳥取県等の縮尺1/25000の土地利用状況図を作成するとしても,それぞれおよそ10万個もの面データが必要とされる。これらの面データの入力は上述したように全て手作業によって入力されるものであるが,コンピュータ処理において,上述のようにして入力された一つ一つの面データに,後の処理で属性を割り当てるためには,それぞれの面データが閉面を構成していなければならない。・・・このため,上述のデジタイザによる面データの入力作業は熟練を要し,極めて手数のかかる作業である。従って,人件費が地図情報作成コストの50%以上,ときには90%を占めるとさえいわれ,その総体的費用は極めて高価である。また,手数がかかるため面データ完成までの期間も数か月という長期にわたる。このため実務に供される管理資料としは,対応が遅れるという問題があった。また,単なる線データをコンピュータに記憶させても,面データを作成することができないと,上述した地域や地点毎の属性を付与することができない。従って,属性によって管理する地図情報として用いることができない。このように,従来は,地図の輪郭線データを手作業で入力しなければならず,また,線データを自動的に読み取ることができるものは,その後の属性付与の処理ができないという状態であり,又,線の「切れ」の自動検出や,直角部を有するベクトル化対象物の一本の折れ線への自動一括長ベクトル化も出来ないという状況であり,一貫して自動的に地図情報を作成する方法も装置も存在しなかった。」(段落【0006】∼【0008】)ウ 「【発明の目的】本発明は,上記従来の実情に鑑みてなされたものであり,その目的とするところは,地域や地点毎に属性を付与可能なように保存した地図情報を大幅に効率良く自動的に作成することが容易にできる地図データ作成方法及び装置を提供することである。【発明の要点】本発明は上記目的を達成するために,地形図等の原図を読み取って得られるラスターデータから二次元のベクトル線データを作成し,このベクトル線データから少なくとも点データ,線データからなる面データを作成し,この面データを構成する線データの不連続点を入力により点データ又は線データに接続して閉領域面データを作成し,この閉領域面データを入力により付与される属性データ別に記憶,表示または印刷するようにし,上記不連続点の接続に際しては,例えば複数の接続修正装置で行うようにし,不連続点には不連続点であることを報知する記号を付して表示するようにしたことを要点とする。」(段落【0009】∼【0】)エ 「【実施例】以下,本発明の実施例について,図面を参照しながら説明する。図1は本発明に係わる一実施例の構成図である。」(段落【0011】)オ 「【0012】同図において,画像ベクトル線データ発生装置1は,地形図等の原図,あるいは,例えば図6(a)に示すような回路配線画像等を自動的に読み込んで画像に対応する電気信号を発生するイメージスキャナ1−1,そのイメージスキャナ1−1から入力される電気信号からディジタル・イメージ信号を生成するパターン認識モジュール1−2,パターン認識モジュール1−2により生成されたディジタル・イメージ信号から細線データを抽出しベクトルデータを作成して,例えば図6(b)に示す線データ画像作成処理を行う線データ画像処理装置1−3,及びその線データ画像処理装置1−3により作成されたベクトルデータを後述する線データ画像処理用Lファイル2aとして記憶するRAM(I) 1−4からなっている。」(段落【0012】)カ 「データ変換装置2は,その入力側に画像ベクトル線データ発生装置1が接続され,また出力側には閉領域・属性データ作成装置3が接続されている。そして,画像ベクトル線データ発生装置1から線データ画像処理用Lファイル2aを読み出して,そのLファイル2aの要素数1∼nに分割された線データを解析し,折線,交点等を認識して二次元の線データに変換し,詳しくは後述する閉面データ画像処理用Dファイル2bの点データ及び二次元の線データとして閉領域・属性データ作成装置3へ出力する。」(段落【0013】)キ 「また,図2(b) の閉面データ画像処理用Dファイル2bは,同図(a) の線データ画像処理用Lファイル2aとは全く異なるファイル構成であり,閉領域データを取り扱うための,例えばDLGファイルと同様な構成になっている。すなわち,ファイル構成を示すデータを格納するヘッダー部2b−1,折れ線の頂点や線端を示す点データを格納する点データ部2b−2,閉領域の少なくとも1つの属性を示すデータを格納する領域データ部2b−3,及び,線データを格納する線データ部2b−4からなっている。」(段落【0018】)ク 「続いて,図3に,データ変換装置2の内部構成を示す。同図に示すように,データ変換装置2は,マイクロプロセッサからなるCPU31と,プログラムが格納されたROM(Read Only Memory)32からなる。CPU31は,ROM32に格納されたプログラムに基づいて線データ画像処理用Lファイル2aのデータを閉面データ画像処理用Dファイル2bに変換する。次に,上記線データ画像処理用Lファイル2aのデータを閉面データ画像処理用Dファイル2bに変換するCPUの処理動作を図4及び図5のフローチャートを用いて説明する。なお,この処理は特には図示しないレジスタi及びjを用いて行われる。」(段落【0019】∼【0020】)ケ 「次に,上記面データの作成処理について,図5に示すフローチャートを用いて説明する。先ずステップS51で,上記閉面データ画像処理用Dファイル2bに作成した線データを読み出して,線分に分解する。この線分への分解処理は,上記読み出した線データを,他の線データとの接点,交点で分割して,途中に接点や交点を持たない線分に細分し,それらの各線分に線分番号を付与する処理である。」(段落【0023】)コ 「続いてステップS52に進み,上記の線分の始点又は終点の点種を決定する。この処理は,上記線データを途中に接点や交点を持たない線分に細分する際,細分の基となった線分の始点又は終点が,孤立点(他の線データへの接続なし),分岐点(接点),又は中間点(折れ線の頂角)のいずれであったかを記録する処理である。」(段落【0024】)サ 「次に,ステップS53で,それらの線分を始点及び終点に基づいてソートし,続いてステップS54で,それらソートした線分を一定方向に接続していく。この接続方向は,時計回り,逆時計回りいずれでもよい。線分の終点が分岐点であった場合,接続される同一始点を有する線分が複数存在する。上記接続方向が予めいずれか一定方向へ定められていることにより,それらの複数の線分の中から,共に面データを構成する線分を自動的に選択して接続することができる。」(段落【0025】)シ 「そして,ステップS55では,接続された線分の終点の点種を判別し,最初の線分の始点と同一の座標であるか,または次に接続する線分がない孤立点であった場合は,接続処理を終了してステップS56に進む。」(段落【002】)ス 「ステップS56では,接続された一連の線分によって構成された面データに面データ番号を付与して閉面データ画像処理用Dファイル2bに再格納する。上記ステップS55で,接続された線分の終点の点種が最初の線分の始点と同一の座標ではなく,また,孤立点でもないときはステップS54に戻って次の線分を接続する。」(段落【0027】)セ 「そして,同図矢印A,B,・・・Fで示される線の不連続部を所定のマークを点滅させる等して告知し,その線の不連続部が正しく閉じるように,キーボード3−3の特には図示しないカーソルキー若しくはキーボード3−3等に接続された不図示のマウス端末等により修正入力が可能なようになっている。このように修正,補完されて正しい閉領域面データとなった線データは再び閉面データ画像処理用Dファイル2bの線データ部2b−4に格納されると共に,同ファイルの点データ部2b−2の対応する点データも自動的に修正されて再格納される。」(段落【0029】)ソ 「上記のようにして作成された閉領域のみからなる地図図形データには,キーボード3−3を用いて閉領域で示される各地域や地点を特定するために,それら地図上の閉領域に,例えば図8に示すような番号(丸で囲んで示す)が自動的に一括して順次付与される。そして,この番号が同ファイルの領域データ部2b−3の対応する位置に格納される。さらに,この番号に対して属性を示すデータを入力することにより番号により特定された地域や地点に属性が付与される。この属性データも同様に同ファイルの領域データ部2b−3の対応する位置に格納され,これにより所定の地図情報は完成する。」(段落【0030】)

(3) 構成要件1A(「地形図等の原図を読み取って得られるラスターデータか

らベクトルデータを作成した後」)について特許請求の範囲及び明細書の発明の詳細な説明において,用語は,その有する普通の意味で使用し,かつ,明細書及び特許請求の範囲全体を通じて統一して使用しなければならないが,特定の意味で使用する場合には,意味を定義して使用することができるところ,「ラスターデータ」及び「ベクトルデータ」について,本件訂正明細書に特段の定義はない。しかし,本件における当事者らの主張に照らしても,本件特許発明1の技術分野において,「ラスターデータ」は,「1つ1つの画素の集合で表現されるデータ」などと説明され,「ベクトルデータ」は,「位置と形状がXY座標で表現されたデータ」などと説明される一般的な用語であると認められ,本件特許発明1においても,そのような普通の意味のものとして使用されていると認めることができる。なお,「ラスターデータ」から「ベクトルデータ」を作成する方法については,次の(4)で検討することとする。

(4) 構成要件1B(「該ベクトルデータを線端を示す点データを含む二次元の

線データに変換し」)についてア 構成要件1Bは,上記の「ベクトルデータ」を「二次元の線データ」に変換することを規定し,また,「二次元の線データ」が線端を示す点データを含むことを規定している。イ 構成要件1Bの「該ベクトルデータ」は,構成要件1Aの「ベクトルデータ」であると理解できるが,「ベクトルデータ」から変換される「線端を示す点データを含む二次元の線データ」は,地形図等を読み取って得られる本件特許発明1におけるベクトルデータ自体が「二次元」の「線データ」といえるものであることなどから,変換前の「ベクトルデータ」と何が異なるかが特許請求の範囲の記載からは一義的に明らかでない。そして,本件訂正明細書の発明の詳細な説明においても,「二次元の線データ」についての直接的な定義はない。もっとも,発明の詳細な説明の実施例の説明には,ベクトルデータである「線データ画像処理用Lファイル2a」(前記(2)オ)を読み出して,「要素数1∼nに分割された線データを解析し,折線,交点等を認識して二次元の線データに変換し」(同カ)との記載があり,その「二次元の線データ」が「閉面データ画像処理用Dファイル2bの点データ及び二次元の線データ」となり(同カ),その「閉面データ画像処理用Dファイル2b」に作成した線データを読み出して,後記(5)のとおり,線分への分解を行うという構成要件1Cに規定する工程が行われている(同ケ)。そうすると,「二次元の線データ」は,構成要件1Aの「ベクトルデータ」から,その後の処理に使用するために変換されたデータについて,これを「ベクトルデータ」とは区別する意味で,「二次元の線データ」といっているものと理解することができる。ウ 構成要件1Aは,「ラスターデータ」から「ベクトルデータ」の作成を規定するが,その作成の方法について規定するものではなく,また,構成要件1Bは,「ベクトルデータ」を「二次元の線データ」に変換することを規定するが,その変換の方法について規定するものではない。上記の作成,変換について,構成要件1Dが「自動的に」「面データの閉領域データ」,「面データ」を作成すると規定するのに対し,特許請求の範囲の記載において,「自動的」な作成,変換を規定するものではない。ここで,本件特許発明1の技術的意義について,これをみると,本件訂正明細書の発明の詳細な説明によれば,本件特許発明1は,属性を付与された地図情報を効率よく自動的に作成することが容易にできる地図データ作成方法,装置を提供することを目的とするものであるとされ(前記(2)ウ),従来技術として,デジタイザを使用した入力により面データを作成する方法が挙げられるとともに,これが手数,費用等がかかるなどの欠点があったこと,「単なる線データ」は,「面データ」と扱われなかったことが記載(同イ)されている。これに,本件訂正明細書の【発明の要点】(同ウ)の記載や構成要件1Cの「座標上の線分」が途中に接点等を有さない線分とされ(後記(5)),構成要件1Dの「面データ」がその「座標上の線分」の組合せとされること(後記(6))も総合すると,本件特許発明1は,「閉領域面データ」を作成するに当たって,デジタイザによる入力ではなく,「ラスターデータ」から作成した,線データである「ベクトルデータ」を利用し,それを「二次元の線データ」に変換し,さらにそれを交点等を有さない線分である「座標上の線分」に変換し,閉面を構成していないときも含めてその「座標上の線分」の組合せを「自動的」に作成し,線分の組合せが閉面を構成していないときは,不連続点を報知して,容易に属性データ付与可能な閉領域面データを作成するというものであると認められる。他方,本件訂正明細書においても,「ラスターデータ」から,途中に接点等を有さない線分である「座標上の線分」を作成,変換する過程について,従来技術との関係で新たな課題を解決したことが記載されているものではない。そうすると,前記の従来技術として記載されたところとの対比においても,本件特許発明1については,「ラスターデータ」を利用して,途中に接点等を有さない線分である「座標上の線分」を作成することができれば,本件特許発明の課題を解決することができると認められるのであって,「ラスターデータ」から「座標上の線分」を作成するまでの過程自体が課題とされたものではなく,上記工程については,その工程を経ていれば,その工程の過程において人手を利用する作業工程を含むとしても,本件特許発明1の技術思想に直ちに反するものとは認められない。したがって,本件特許発明1において,「ラスターデータ」から「ベクトルデータ」,「ベクトルデータ」から「二次元の線データ」,「二次元の線データ」から「座標上の線分」を作成,変換する過程において,それを機械により自動的に行うことが考えられるのであるが,本件特許発明1は,そのような場合に限られず,その作成,変換過程において,人手を利用するものを直ちに除外するものではないと解され,また,このことは,これらの作成,変換について,「自動的」に行うという規定が特許請求の範囲に規定されていないこととも整合する。本件訂正明細書においては,実施例において,「ラスターデータ」から「ベクトルデータ」の作成については,原図を自動的に読み込んで画像に対応する電気信号を発生させるイメージスキャナを用い,パターン認識モジュールによりディジタル・イメージ信号を生成し,そのディジタル・イメージ信号から,細線データを抽出してベクトルデータを作成する処理が記載され(同オ),「ベクトルデータ」から「二次元の線データ」の変換については,CPU31が,ベクトルデータに対応する「線データ画像処理用Lファイル2a」から「二次元の線データ」を含む「閉面データ画像処理用ファイルD2b」に変換を行い,その処理動作を表すものとして図4のフローチャートのステップとして記載されていて(同ク),「二次元の線データ」から「座標上の線分」への変換についてもフローチャートが記載されるなどして(同ケ),いずれも,人手を利用することが直接,記載されているものではないが,これらは,データの作成,変換についての一実施例として記載されたものと認められる。エ 被告は,構成要件1Bが,Lファイル2aからDファイル2bに変換することをいう旨主張する。本件訂正明細書の実施例においては,Lファイル2a及びDファイル2bとの名称のファイルが記載され,その構成が規定されている(前記

(2)キ等)が,それらのファイル名やその定義が特許請求の範囲に記載されたもの

ではなく,構成要件1Bについて,明細書の実施例として記載された具体的なファイルに限定してその変換をいうものでないことは明らかである。オ 補助参加人は,本件特許発明1と甲2発明の相違点を主張するに当たり,構成要件1Bは,ラスターデータから取得したベクトルデータをそのまま二次元の線データに変換するものであると主張する(前記第5の2(2)イ(ア)等)。上記主張のうち,構成要件1Bが「ラスターデータから取得したベクトルデータ」を「二次元の線データ」に変換して作成するものであることは認められるが,上記ウのとおり,その作成の方法について,例えば,自動的に行うとか,機械的に行うとかの特段の限定がないものである。補助参加人は,ラスターデータから取得したベクトルデータをそのまま二次元の線データに変換しなければ「該ベクトルデータ」ではないとするのであるが,ラスターデータから取得したベクトルデータを利用し,そこに,手作業による入力なども含まれる何らかの変換を行って,「二次元の線データ」に変換することも,構成要件1Aで作成されたベクトルデータを利用しているといえるから,「該ベクトルデータ」の変換であって,構成要件1Bに含まれる。補助参加人の主張は,採用できない。

(5) 構成要件1C(「それらの二次元線データを座標上の線分に変換し,」)

についてア 構成要件1Cの「二次元線データを座標上の線分に変換」は,前記構成要件1Bにおいて規定されている「二次元の線データ」を「座標上の線分」に変換することを規定する。しかし,ベクトルデータがそもそも座標で表現されたものであって,それを「二次元の線データ」に変換し,さらにそれを変換したという「座標上の線分」という用語が,本件特許発明1の技術分野において,普通の用語であるとか,技術常識により定まるものとは認められず,「座標上の線分」の意味も,データを座標上の線分に変換するとの意味も一義的に明らかでない。イ 本件訂正明細書に,「座標上の線分」や,「二次元線データを座標上の線分」に変換することの定義はないし,座標上の線分との用語も記載されていない。本件訂正明細書の実施例における説明のうち,段落【0023】から【002】には,面データの作成処理についての説明があり,ステップS51で,「二次元の線データ」である「閉面データ画像処理用Dファイル2b」に作成した線データを読み出して,「線分」に分解すること,この処理は,「線データ」を,他の線データとの接点,交点で分割して,途中に接点や交点を持たない線分に細分することが記載され,ステップS52では,上記細分化された線分の始点,終点が,他の線データへの接続がない孤立点,接点である分岐点,折れ線の頂角である中間点のいずれかを決定し,記録することが記載され,ステップS53で,それらの線分を始点及び終点に基づいてソートし,ステップS54でソートした線分を一定方向に接続していくことが記載されている(前記(2)ケ∼サ)。上記の実施例における説明のうち,ステップS54以下は,線分を一定方向に接続していくことが記載されているところ,構成要件1Dが線分の所定方向への接続を定めるものであることから,構成要件1Dに対応し得るものと理解できるが,構成要件1Cが記載する「二次元線データを座標上の線分に変換し」について,本件訂正明細書の発明の詳細な説明においても,「座標上の線分」という用語がそもそも用いられていないのであるから,本件訂正明細書を参酌しても,その内容が直ちに明らかになるものではない。もっとも,構成要件1Cは「二次元線データ」から変換された後のものが「線分」であることを規定するところ,ステップS51には,「二次元の線データ」を利用して,「線分」に分解することが記載されており,ステップS54が「線分」を所定方向に接続していくことを規定し,構成要件1Dに対応し得ることからも,構成要件1Cの「線分」は,ステップS51にいうような,他の線データとの接点,交点で分割して,途中に接点や交点を持たない線分であると理解することができるので,構成要件1Cの「二次元線データを座標上の線分に変換」とは,「二次元の線データ」について,途中に接点や交点を持たない線分とする工程であると一応理解することができる。ウ 他方,上記実施例では,ステップS51の後に,構成要件1Dに対応し得るステップS54までの間に,ステップS52,53が記載されていて,それらのステップにおいて,ステップS51により細分化された線分について,さらに,線分の始点等の性質を「決定」,「記録」し,また,線分を「ソート」することが記載されている。しかし,上記工程については,構成要件1Cの「二次元線データを座標上の線分に変換」という,「座標上の線分に変換」という工程に文言上,直ちに含まれるものではないし,また,そもそも,「座標上の線分に変換」することの定義は本件訂正明細書にもないのであり,明細書の記載を参酌しても,特許請求の範囲に記載された「座標上の線分に変換」とは,上記イのとおり,途中に接点や交点を持たない「線分」に変換するものと理解できる以上,線分に変換した後の,線分に変換するのとは別の工程として記載されている,線分の始点等の性質を「決定」,「記録」することなどが,構成要件1Cの「二次元線データを座標上の線分に変換」という工程に直ちに含まれるものであるとは認められない。

(6) 構成要件1Dの前半(「該線分を所定方向に接続し,終点が始点と一致し

たときはそれらの線分からなる面データの閉領域データを自動的に作成し,」)についてア 構成要件1Dの前半は,「所定」との意味が,「定まっていること。定まってあること。」(広辞苑第6版)という普通の用語であり,本件訂正明細書においても,「・・・線分を一定方向に接続していく。この接続の方向は,時計回り,逆時計回りのいずれでもよい。」として,「所定」に対応するものとして,「一定方向」に接続していくと記載されていることにも照らしても,構成要件1Cの「座標上の線分」について,あらかじめ定められた一定の接続方向に接続していって,その終点と始点が一致したときは,それらの線分の組合せについて,面データの閉領域データとして,これを自動的に作成するものであることを規定していると認められる。そして,ここでいう「線分からなる面データ」とは,構成要件1Dの後半で,始点と終点が一致しないときにも「線分からなる面データ」が作成されることからも,線分を所定方向に接続することによって構成される一本以上の線分の組合せをいうものと解することができる。イ 補助参加人は,「該線分を所定方向に接続」するとは,線分の端点が有する他の線分との接続情報を利用して,所定方向の線分を次々に選択していくことである旨主張する(前記第5の2(2)ウ等)。しかし,本件訂正明細書の記載を参酌しても,特許請求の範囲の「所定方向に接続」という用語について,あらかじめ定められた一定の接続方向に接続すると解釈することができるだけであり,「所定方向に接続」とは接続の方向を定めている規定であることが明らかであるから,本件訂正明細書の実施例において線分の端点が有する接続情報を利用することが示唆されていたとしても,それが「所定方向に接続」との用語により表されているとは到底認められず,構成要件1Dが,接続について,一定方向に接続していくということを超えて,どのような方向で接続していくかや,接続に当たり,どのような情報を利用するかを直接規定するものとは認められない。もっとも,上記のとおり,構成要件1Dは,線分の端点が有する他の線分との接続情報を利用して接続することを直接規定するものとは認められないが,技術常識に基づいて,本件特許発明1のように最終的に閉じた面データを作成する目的で線分を接続するに当たっては,線分の終点等の性質を利用していると当業者が理解する場合には,そのような理解を前提として発明の対比や相違点に係る容易想到性の判断がされることがあり得るが,その場合には,発明の対比や相違点に係る容易想到性の判断においても,そのような理解を導くこととなった技術常識の存在が前提となる。

(7) 構成要件1Dの後半(「終点が始点と一致しないときはそれらの線分から

なる面データを自動的に作成して,」)についてア 上記(6)及び本件訂正明細書の記載に照らせば,構成要件1Dの後半は,「座標上の線分」について,あらかじめ定められた一定の接続方向に接続していって,その始点と終点が一致しないとき,それらの線分の組合せについても,面データとして,これを自動的に作成するものであると理解することができる。なお,ここでは,データの「作成」をすることが規定されているのであり,構成要件が規定するのはデータの「作成」であり,「記憶」等ではない。イ 構成要件1Dの後半について,原告らは,審決の認定が誤りである旨主張し,補助参加人も,審決の認定が誤りである旨主張する。これらについては,後記(11)で検討する。

(8) 構成要件1E(「該面データの前記不連続となる始点及び終点を報知表示

し,」)についてア 本件特許発明1は,「座標上の線分」をあらかじめ定められた一定の接続方向に接続していって,その始点と終点が一致しないときでも,それらの線分の組合せを面データとして作成するのであるが,構成要件1Eは,そのような線分の組合せにおいて,不連続となる始点と終点について,知らせるための表示を行うものであると認められる。本件特許発明1において,構成要件1Dまでが面データ,すなわち,線分の組合せの作成に係る構成であるが,構成要件1Eは,そのように作成された線分の組合せについて,始点と終点が一致していないときに,これを「不連続となる始点及び終点」として,報知表示することを規定しているのであって,構成要件1Dが規定している,線分を「所定方向に接続」するという工程とは別個の工程である。報知表示するためにどのように「不連続となる始点及び終点」を発見するかが,特許請求の範囲において一義的に直接,記載されているものではないし,その発見のために,線分の「所定方向の接続」などの作業を規定するものではない。そして,本件訂正明細書の第1の実施例には,「不連続となる始点及び終点」を発見するための具体的な手法についての記載はなく,第2の実施例とされているものにおいては,不連続部の修正作業に関連し,点データへ接続する線分の本数を検出して孤立点を検出することが記載されている(段落【0042】)。イ 構成要件1Eの「不連続となる始点及び終点」について,具体的に特許請求の範囲には,「終点と始点が一致しない」としか規定せず,そもそも,始点と終点をどのような方法で決定するかが明らかでないので,どのような点を「不連続となる始点及び終点」とするかが,必ずしも一義的かつ明確に決まるものではない。しかし,本件訂正明細書の実施例において,ステップS55で,他の線データへの接続がなく,点データから出る線データが一本のみである「孤立点」であれば,ステップS56に進むとしていること(前記(2)シ),第2の実施例とされているものにおいて,「検出された孤立点(不連続点)座標)」(段落【0038】)として,孤立点を不連続点と記載していること,他方,「分岐点(接点)」(前記

(2)コ)として挙げられている点を「不連続となる始点及び終点」とすることにつ

いての記載,示唆はないし,「分岐点」のように複数の線分に接続する点を不連続となる始点,終点とするような始点,終点の決定方法をあえて想定する根拠が実施例も含めた本件訂正明細書に記載されているものでないことに照らすと,「不連続となる始点及び終点」は,点データから出る線データが一本のみである孤立点と一致するものと一応認められる。ウ 構成要件1Eについて,原告らは,審決の認定が誤りである旨主張し,補助参加人も,審決の認定が誤りである旨主張する。これらについては,後記(11)で検討する。

(9) 構成要件1F(「該不連続点から任意の点又は線へ接続する線データを入

力に基づいて生成することにより該面データに対応する閉領域データを作成し」)について構成要件1Fの「該不連続点」とは,構成要件1D,1Eなどに照らしても,所定方向に接続していった線分の組合せにおいて,始点と終点が一致しないときのそれら「始点」,「終点」をいい,報知表示されている点であって,構成要件1Fは,それらの点について,任意の点,又は線に接続する線データを入力して,これを生成し,これについて,その線分の組合せについて,始点と終点が一致する線分の組合せである閉領域データを作成することを規定しているものと解釈できる。ここで,構成要件1Eと同様,この工程は,線分の「所定方向の接続」を規定する構成要件1Dとは別個の工程であり,線データの入力について,線分の「所定方向の接続」と同様の工程を経ることが規定されているものではない。

(10) 構成要件1G(「上記各閉領域データに属性データを付与可能にして該閉

領域データを記憶,表示又は印刷する。」)についてア これは,構成要件1D前半において自動的に作成された閉領域データ及び構成要件1Fにおいて作成された閉領域データについて,属性データを付与することが可能になるようにし,閉領域データについて,記憶,表示,印刷することを規定しているものと解される。構成要件1Gにおける「属性データを付与可能」とすることについて,実施例には,閉領域に,番号が自動的に一括して順次付与されること,番号に対して属性を示すデータを入力することにより,番号により特定された地域や地点に属性が付与されることが記載されているが(前記(2)ソ),これは,閉領域データに属性データを付与可能にする一方法を示したものと理解でき,属性データを付与可能にする方法が,上記実施例のように,番号を自動的に一括して順次付与することなどによりされるものに限定されるものとは認められない。

(11)ア 本件特許発明1の要旨は上記のとおり認定することができるところ,審

決は,本件特許発明1の要旨として,特許請求の範囲に記載された事項により特定されるとしている(3頁最終段落∼4頁第1段落)。しかし,審決の相違点3の判断においては,相違点3に係る本件特許発明1の構成の容易想到性の判断をするに当たり,本件特許発明1の要旨について,特許請求の範囲の記載と異なった形で認定していると解釈できる部分がある。イ 相違点3についての判断部分において,審決には,以下の記載がある(4頁第7段落∼46頁第1段落)。(ア) 「複数の線分からなる図形について,線分を隣接関係に基づいて右回り等の所定の向きで追跡し,閉ループを構成する線分群を求めることは,甲7−9号証に記載されているように,図形処理の分野において周知である。また,甲2号証の2には,ダングリングエラーのノードを表示することについて記載されている。ダングリングエラーとは単一のアークのみが接続されているノードであり,本件明細書の孤立点に相当する概念である。そして,図形編集において,閉じているべき図形が閉じていなかった際に,閉じた図形となるよう編集する課題は,一般的にあるといえる。」(イ) 「しかしながら,具体的手段として,線分を所定方向に接続し,終点が始点と一致しないときはそれらの線分からなる面データを自動的に作成して,面データの不連続となる始点及び終点を報知表示し,不連続点から任意の点又は線へ接続する線データを入力することを促す構成については,甲2文献,甲2号証の2,甲7−9号証のいずれにも記載されておらず,示唆も認められない。」(ウ) 「仮に,甲2発明に,上述した周知技術,技術常識,甲2号証の2に記載の発明を組み合わせると,複数の線分が接続されてループというトポロジーを構成したフィーチャーとして閉ループを抽出する機能,トポロジーエラーとして孤立点を抽出して表示する機能,閉じているべき図形が閉じていなかったときに編集するための機能が個々に設けられることとなる。」(エ) 「そして,この組合せによって得られた発明においては,まず,閉ループの抽出を行い,孤立点のチェックと報知表示を行い,閉じるべき図形を閉じるように編集する処理を行うことが想定されるが,孤立点のチェックと報知表示を行う際には,閉ループとして抽出されなかった図形であるか否かとは無関係に,全ての孤立点がチェックされ報知表示され,その後編集処理がされることとなり,本件特許発明1の構成とは異なるものとなることは明らかである。」(オ) 「甲2文献の DRAWENVIRONMENT における孤立点すなわちダングリングノードは,単一のアークのみの端点になっているノードであり,必ずしも本件特許発明1の不連続となる始点及び終点(詳細な説明における「孤立点」,「不連続点」)と一致しない。」(カ) 「また,本件特許発明1の,線分を所定方向に探索して孤立点を求めることについても甲2文献には記載されていない。」(キ) 「甲2文献のエラーノードについては,ノードに接続されるアーク(線分)の数に注目していることからみて(甲2文献, NODEERRORS notes :Danglingnodes- nodes that are not shared with any other arc. Pseudo Nodes - nodes that are sharedby only two arcs.)ノードのデータを検索して接続されるアークの数をカウントしてチェックしているに留まると考えるのが自然である。」ウ 上記イ(エ)において,審決は,孤立点のチェック,報知表示について,閉ループとして抽出されなかった図形であるか否かと無関係に孤立点がチェックされるものを本件特許発明1の構成と異なると記載していて,本件特許発明1について,閉ループとして抽出されなかった図形と孤立点のチェックを関係付けている。しかし,前記(8)のとおり,報知表示するためにどのように「不連続となる始点及び終点」を発見するかが,特許請求の範囲に一義的に直接,記載されているものではないし,発明の詳細な説明においてもその具体的な手法の記載はなく,第2の実施例とされているものにおいては,不連続部の修正作業に関連し,点データへ接続する線分の本数を検出して孤立点を検出することが記載されている。これらによれば,本件特許発明1は,閉ループとして抽出されなかった図形と孤立点のチェックを関係付けることまで規定したものと限定することはできない(なお,原告は,報知表示の対象となる孤立点の検索方法がいかなる方法であっても,閉じていない面データの中に存在している不連続点ないし孤立点を報知表示すれば,当該構成要件は充足されるとし,補助参加人も,何らかの方法で孤立点を検索し,閉じていない面データの不連続点を報知表示すれば足りる旨主張する。)。また,上記イ(オ)において,審決は,甲2文献のダングリングノートと本件特許発明1の不連続となる始点及び終点が一致しないことを述べている。ここで,本件特許発明1の不連続となる始点及び終点については,必ずしも明確ではないのであるが,前記(8)イのとおり,本件特許発明1において,「不連続となる始点及び終点」は,点データから出る線データが一本のみである孤立点と一致するものと一応認められ,そうすると,これは,単一のアークのみのノードとなっているものであるから,甲2文献のダングリングノードと同じものとなる。さらに,上記イ(カ)においては,審決は,本件特許発明1が,孤立点を求めるために線分を所定方向に探索することを前提としていると解釈できるが,前記( 8)のとおり,構成要件1Eにおいて,不連続となる始点及び終点の報知表示に当たり,線分を所定方向に接続することによって,不連続点を求めることが規定されているものではない。エ 上記に照らすと,審決は,実質的に,本件特許発明1の要旨を誤って認定しており,これらは,その内容に照らしても,審決の結論に影響を及ぼすものである。

(12) したがって,原告ら主張の取消事由1は理由がある。

2 取消事由2(甲2発明の認定の誤り)について

(1) 原告らは,審決は,甲2文献に記載されている発明の多くの構成を看過し

て甲2発明を認定したとして,審決の甲2発明の認定が誤りである旨主張する。

(2) 甲2文献は,「ARC/INFO Users Guide, Ver.5 Vol.1, Vol.2」であり,地

理データの入力,処理,解析,表示に利用される地理情報システムである「ARC/INFO Ver.5」(本件システム)のユーザーズガイド(マニュアル)である。本件システムは,「その特色は,データモデル,GIS機能,モジュール設計,様々なデータを統合する能力,適用業務に特有な画面メニューとのユーザーインターフェースを開始するためのユーティリティ,第四世代マクロ言語(AML),多数のリレーショナルデータベース管理システムの統合を可能にするオープンアークテクチャー,様々なグラフィック・ハードウェアを持つ多くのタイプのコンピュータで操作できる能力にあります。」(甲2文献の vol.1の1−1頁)と説明されている。そのユーザーズガイド(マニュアル)である甲2文献は,2巻(Vol.1及び Vol.)からなるもので,いずれの巻も極めて大部のものである。なお,本件特許については,平成10年12月26日に無効審判請求がされ(無効平10−35672号),請求不成立の審決が確定しているところ,同審判においても,甲2文献が,本件特許に係る発明が特許法29条2項に違反したものである こ と の 証 拠 と し て 提 出 さ れ た が , 上 記 審 判 請 求 に お い て は , 甲 2 文 献 は,「 NODEERRORS」というコマンドに関する記述が本件特許発明の面データの不連続となる始点及び終点を報知表示する構成に対する公知文献として引用されていた。

(3) 原告(無効審判請求人)らが,本件の無効審判請求書において,無効理由

として掲げ,審決が甲2発明を認定するために引用した甲2文献の記載は以下のとおりである(甲2,弁論の全趣旨)。ア 「ARC/INFOにおけるカバレッジの作成手順の7つのステップを以下に示します。1.デジタイジングのためのマップシートを用意します。2.カバレッジをデジタイザー入力します。3.デジタイジングエラーを発見して訂正します。4.フィーチャーを定義し,トポロジーを生成します。5.トポロジーエラーを発見して訂正します。6.カバレッジフィーチャーに属性を付与します。7.属性コーディングミスを発見して訂正します。」(甲2文献のvol.1の−2頁18行目∼24行目)イ 「グラフィック端末は,地図を表示したり,画面のカーソルを使用して対話式で座標を入力するために使用します。カーソルの動きは,端末キーボード上のジョイディスク,サムホイール,アローキーによって制御します。グラフィック端末に直接,接続しているグラフィックスタブレット又はマウスによって制御することもできます。」 (同1−17頁16行目∼20行目)ウ 「スキャニング(走査)地図をスキャニングして,ラスター値(ON/OFF)を一連の座標に変換する(ラスターベクトル変換です)装置によって実行されます。ARC/INFOはそのような座標を,デジタイザーで入力された座標と同じように取り扱います。)(同4−6頁14行目∼18行目)エ 「ポリゴンは,その境界線を形成するアークの番号と,アークのリストによって定義されます。下の例のポリゴン2は,ポリゴン内の島を含めて,ポリゴンを定義する4本のアークをもちます。次に,島を適する(判決注:「定義する」の誤記と認める。)アークがあげられるということを示すために,アークのリストの中の“0”が含まれています。アークの向きが,リストの中のアーク番号に付く記号を決められます。すなわち,“−”という記号は,閉じたポリゴンループを作るには,そのアークが逆向きにならなければならないことを意味しています。」(同−7頁14行目∼20行目)

(4) 審決が引用した甲2文献の上記記載に基づけば,甲2文献には,少なくと

も,審決が認定したような,「『地図を表示するグラフィック端末を有しており,地図をスキャニングして,ラスター値を一連の座標に変換(ラスターベクトル変換)し,フィーチャーを定義してトポロジーを生成し,トポロジーエラーを発見して訂正し,カバレッジフィーチャーに属性を付与することを特徴とするカバレッジの自動化。』の発明」が記載されていると認めることができる。

(5) 原告らは,審決が,甲2発明の認定に当たり,甲2文献に記載された多く

の構成を看過した旨主張する。特許を無効にすることについて審判を請求(特許法123条)する者は,請求の趣旨,理由を記載した請求書を提出しなければならず,所定の要件を満たした場合を除き,同請求書の補正はその要旨を変更することができない(同法131条,条の2)。また,審判においては,当事者等が申し立てていない理由も審理することができるが,その場合には,所定の手続を経る必要がある(同法153条)。このようにして,審判請求の理由が当事者等に明確にされ,審判手続において,特定された無効原因をめぐって主張等がされ,審理判断もその争点に限定してされる。また,同一の事実及び証拠に基づいては,特許無効審判の確定審決の登録後は再び審判の請求をすることができないこと(同法167条)に照らしても,どのような事実が審理判断の対象となるかが明確にされなければならない。以上によれば,頒布された刊行物に記載された発明の存在に基づき,特許法29条2項違反の無効(同法123条1項2号)を理由として特許の無効が主張されるときには,どのような発明に基づく主張であるかが明確にされる必要があり,また,法が定める所定の手続を経る場合を除き,審判請求書において特許法29条2項違反の無効を主張する理由とした発明について,その発明をその後変更することは許されない。1つの文献に複数の発明が記載されていることも少なくなく,また,文献自体が大部で,そこに多数の発明が記載されているような場合もあるのであるから,審判請求書において,文献の名称としては記載されていても,具体的には無効理由として引用されていない発明について,その後,審判請求の理由とすることは,法によって許されない,理由の要旨を変更するものとなる場合がある。もっとも,審判請求書に引用されていない記載を一切参照することができないとまではいえない。可能な限り,審判請求書によって無効審判請求人が主張する発明の内容が明確になることが望ましいのであるが,引用箇所等の語句の意味や審判請求書で主張されている発明の思想,背景,内容を理解するため,審判請求書や審判請求書における引用箇所の記載に接した当業者が通常参照するような箇所,技術文献等を参照してその発明を理解することは,審判請求書で主張されている発明の内容を明らかにするものと評価できるものであり,審判請求書で主張されている発明の内容を変更等するものではないとすることが相当である。

(6) 原告らは,審決が甲2発明の認定において,① 構成B´(該ベクトルデ

ータを,ARC/INFOのカバレッジに変換する構成),② 構成C´のうち,「CLEANコマンドによってアークの交点にノードを付す」構成,③ 構成D´のうち,「アークを右回り方向に接続し,アークが閉じている場合に」ポリゴンを作成するものであること,④ 「フィーチャーを定義してトポロジーを生成し」が,具体的には,「NODEERRORSコマンドやARCEDITによって,『閉じていないポリゴン』と『接続していないライン』をダングリングノードとしてエラー表示し」(構成E´),「ダングリングノード等のエラーを発見したら,ARCEDITによるデジタイザー入力によりエラー訂正し,アークを編集した後に再度CLEAN若しくはBUILDコマンドを実行して,トポロジーを更新」(構成F´)する処理を行うものであること,⑤ 構成G´のうち,「(ARC/INFOが)地図データの『解析』,『データ管理』,『表示と変換』及び印刷等を行う」ものであることを,それぞれ看過しているとして,その根拠として,甲2文献における各記載を挙げる。しかし,甲2及び弁論の全趣旨に照らしても,上記構成が記載されているとして原告らが挙げる甲2文献の各箇所(前記第3の2(4)参照)の多くは,原告らが,審判請求書において,特許法29条2項違反の無効を主張する理由とした発明が記載されているとして挙げた箇所ではなく,したがって,審判請求書において,本件の訴訟において原告らが挙げる各箇所の記載に基づいて甲2文献に記載されている発明の構成が主張されたものとは認められない。確かに,上記(3)アは,「カバレッジ」のステップ全体を概観するものであり,その個々のステップにおける具体的なコマンド等に基づく処理は,甲2文献の様々な箇所において説明されている。しかし,原告らが主張するのが,各ステップとして説明されているステップの意味を明らかにするというものであれば,上述(5)のとおり,甲2文献の他の箇所を参照することもあり得るが,原告らが甲2発明の内容として主張しているのは,それを超えて,そのステップにおいて行われることが考え得る各種の操作について,その具体的な処理動作等をいうものである。このことに,原告らが,甲2発明の根拠として主張する箇所が,大部のマニュアルである甲2文献の様々な箇所の記載や図面等にわたるものであること(前記第3の2(4)参照),したがって,そのような様々な箇所に分散して記載されているものを総合したといえる発明について,審判請求書によって主張されていたとはいえないことに照らせば,原告らが主張する構成について,これを甲2発明の構成としなかった審決に原告ら主張の誤りはない。他方,当裁判所の審理においては,補助参加人が,原告らの主張する甲2発明の内容について,詳細な反論を行っているところではあるが,上記のとおり,無効審判請求において,どのような発明に基づく無効の主張であるかは明確にされる必要があり,所定の手続を経ずにその発明を変更することができないのであるから,訴訟における主張にかかわらず,当裁判所における審理において,審判において審理の対象となったのとは異なる発明について,これを審理の対象とすることができるものではない。なお,原告らは,甲2文献に,「 CLEAN コマンド」によって,アークの交点にノードを付してアークノードトポロジーを構築し,アークの接点及び線端点にも同様の処理を行う構成(構成C´)が認定できると主張する。甲2文献のうち,「 CLEAN コマンド」を説明する箇所は,審判請求時にも提出されていたと認められる(甲2)。しかし,同箇所には,「CLEAN はアーク間の交点を見つけ,アークを分析し,交点にノード(アークの終点)を作成します。」との記載はあるが,アークの接点及び線端点にも同様の処理を行うことが直接的に記載されているものではない。そして,審決は,相違点の判断においては,「ベクトルデータに含まれる一連の折れ線を分割して線分を得ること」が図形処理の分野において普通に行われる程度のこととしている(45頁第1段落)のであって,審決が,直接的には記載がない原告ら主張の構成を甲2発明の構成として認定せず,相違点の判断において,当該技術分野において普通に行われるとしたことが誤りであるとはいえない。また,原告らは,構成D´のうち,「アークを右回り方向に接続し,アークが閉じている場合に」ポリゴンを作成するものであるとの構成が甲2文献に開示されていると主張する。そして,その根拠として,原告らは技術常識と甲2文献のvol.1の5−7頁を挙げる。甲2文献の同頁は審判請求時にも提出されていたと認められる(甲2)が,同頁には,「アークを右回り方向に接続し,アークが閉じている場合に」ポリゴンを作成することが明確に記載,解説されているものではなく,技術常識を用いて,同頁に記載された図やそこに記載された符号,数字等の意味について解釈を重ねた場合に,原告ら主張のような構成を読み取ることが仮に可能であるとしても,審決は,相違点の判断において,複数の線分からなる図形について,線分を隣接関係に基づいて所定の向きで追跡し,閉ループを構成する線分群を求めることが図形処理の分野において周知であるとしていて(前記1(11)イ(ア)),甲2発明につき「トポロジーを生成」すると認定するにとどめ,明確に記載されていない構成については,これを記載していないものとして,相違点について上記のような判断を行うことが,直ちに甲2発明の認定の誤りになるものではない。

(7) 補助参加人は,原告らと異なる理由に基づき,審決の甲2発明の認定が誤

りである旨主張する。補助参加人の主張は,審決に対する取消事由としてされたものではないが,甲2発明の認定は,本件特許発明1と甲2発明の一致点,相違点の認定の前提となるものであり,その認定の誤りが取消事由として主張されていることにかんがみ,以下検討する。ア 補助参加人は,審決が「フィーチャーを定義してトポロジーを生成し」と認定したのに対し,甲2発明が,ラスター/ベクトル変換で得られたベクトルデータから自動的にフィーチャーを定義できると誤認している主張する。しかし,甲2文献の「4.フィーチャーを定義し,トポロジーを生成します。」(前記( 3)ア)という記載に照らしても,審決が「フィーチャーを定義してトポロジーを生成し」と認定したことが直ちに誤りであるということはできず,また,審決は,「フィーチャーを定義してトポロジーを生成し」と認定しているのであって,甲2発明として,ラスター/ベクトル変換で得られたベクトルデータから自動的にフィーチャーを定義できるとの発明を認定したとは認められない。イ 補助参加人は,審決が構成要件1Gに対応する構成として「カバレッジフィーチャーに属性を付与すること」を認定したことは誤りであり,審決は構成要件Gに対応する構成を欠いている旨主張する。しかし,閉領域データへの属性の付与の観点に注目して,審決が,本件特許発明と対応する甲2発明として,「カバレッジフィーチャーに属性を付与すること」を認定したことに誤りはなく,また,審決は,相違点2として,「本件特許発明1が『各閉領域データに属性データを付与可能にして該閉領域データを記憶,表示又は印刷する』のに対し,甲2発明が,地図を表示するグラフィック端末を有しており,『カバレッジフィーチャーに属性を付与する』点。」を認定しているのであり,審決の甲2発明及び相違点3の認定に誤りはない。

(8) したがって,審決の甲2発明の認定に誤りはなく,原告らの取消事由2は

理由がない。

3 取消事由3(一致点,相違点の認定の誤り)について

(1) 原告らは,審決が,本件特許発明1と甲2発明の一致点,相違点の認定を

誤った旨主張する。審決は,相違点3に係る本件特許発明1の構成について,前記1のとおり,実質的にその認定を誤って容易想到性の判断をしたものであるが,相違点3について,審決における説示としては,本件特許発明1について,その特許請求の範囲の記載を挙げるとともに,甲2発明について,それに対応する具体的な処理の記載がないとしているのであるから,そのような相違点3の認定に誤りがあるものではない。

(2) 原告らは,審決が認定した相違点1は,相違点でない旨主張する。

しかし,その根拠とするところは,甲2文献に構成B´及び構成C´が記載されているというものであるところ,これは,取消事由2の甲2発明の認定の誤りで原告らが主張したところと同じであるが,原告らの甲2発明の認定の誤りについての主張が採用できない(前記2)のであるから,原告らの主張は前提を欠くものである。なお,相違点1に関連し,被告は,本件特許発明1と甲2発明は,地形図等の原画から「座標上の線分」を作成するまでの過程が相違するとして,それらを「相違点2」,「相違点3」(被告が相違点とする5つのうちの1つ。前記第4の3

(5))の一内容として挙げる。また,補助参加人は,本件特許発明1の構成要件1

Bは,ラスターデータから取得したベクトルデータをそのまま二次元の線データに変換するものであるのに対し,甲2文献にはそのような手段の開示はなく,甲2文献では,キー値というトポロジーデータを人為的に入力する必要があることを主張する(前記第5の3(2)等)。しかし,審決の相違点1は,「面データ」の作成処理に供する「座標上の線分」までの変換過程等を本件特許発明1と甲2発明の相違点としてとらえたものであるところ,前記1(4)ウのとおり,本件特許発明1において,「ラスターデータ」から「座標上の線分」の作成,変換過程において,それをどのような方法で行うかの限定はないと認められるし,それらの各過程において人手を利用するものも含まれる。仮に,甲2文献に記載されたシステム(本件システム)において,ラスターデータを変換する過程で,「キー値」の入力の過程を経るとしても,本件特許発明1において,「ラスターデータ」から「座標上の線分」の作成,変換過程をどのように行うかの限定はなく,本件特許発明1の技術思想において,「座標上の線分」を作成するまでの過程自体が課題とされたものではないから,「キー値」の入力の過程を経ることが,直ちに本件特許発明1と甲2発明の相違点となるものとは認められない。なお,被告は,他に,本件特許発明1と甲2発明が「基図」の要否等において異なるとしてこれを「相違点1」として挙げるが,審決は,「地図」のスキャニングによってラスターデータを得る発明を甲2発明としていて,その認定に誤りはなく,その「地図」は本件特許発明1の「地形図等の原図」に相当するものであるから,被告主張の「相違点1」は認められない。

(3) 原告らは,審決が認定した相違点2は,相違点でない旨主張する。このう

ち,甲2文献に構成G´が開示されていることをいう部分は,取消事由2の甲2発明の認定の誤りで原告らが主張したところと同じであり,上記2と同じ理由で,原告らの主張は前提を欠くものである。また,本件特許発明1の「各領域データに属性データを付与可能に」する構成と甲2発明の「カバレッジフィーチャーに属性を付与する」構成が同じであるとする部分は,本件特許発明1が,属性の付与自体でなく,属性データを付与可能にするとの構成であることからも,本件特許発明1と甲2発明の上記構成は異なるのであり,これが同じことをいう原告らの主張は採用できない。なお,相違点2に関連し,被告は,本件特許発明1では,閉領域データを作成した後に属性を付与可能とするのに対し,甲2発明では,カバレッジの入力段階で属性を付与するという点で異なる旨主張し(前記第4の3( 3)等),これを「相違点」,「相違点3」(被告が相違点として掲げる5つのうちの2つ。前記第4の3

(5))の一内容として挙げ,また,補助参加人は,本件特許発明1と甲2発明は,

属性データを付与可能にする段階に相違がある旨主張する(前記第5の3( 3)等)。本件特許発明1については,構成要件1Fまでで作成された閉領域データについて,属性データを付与可能にしているものであるが,審決の「本件特許発明1が『各閉領域データに属性データを付与可能にして・・・」との相違点2の認定においても,そのように,構成要件1Fまでで作成された閉領域データについて,属性データを付与可能にすることを前提としていると解されるのであり,この構成について,審決は甲2発明との相違点としているのであるから,審決の相違点2の認定に誤りはない。

(4) 原告らは,審決が認定した相違点3のうち,相違点でない構成がある旨主

張する。しかし,その根拠とするところは,甲2文献に構成D´,構成E´及び構成F´が記載されているというものであるところ,これは,取消事由2の甲2発明の認定の誤りで原告らが主張したところと同じであり,上記2と同じ理由で,原告らの主張は前提を欠くものである。なお,相違点3に関連し,被告は,面データの閉領域データの作成や,終点が始点と一致しないときの線分からなる面データの作成とその後の報知表示,閉領域データの作成について,「相違点4」及び「相違点5」(被告が相違点として5つ掲げるもののうちの2つ。前記第4の3(5))として挙げる。しかし,審決は,これらを相違点3として,正しく相違点として認定していると認められる。また,補助参加人は,本件特許発明1の「線分を所定方向に接続」する構成は,接続に当たり,各端点における線分の接続情報(トポロジー情報)を利用して次に接続する線分を選択するという技術思想を有する旨主張する。しかし,前記1( 6)のとおり,構成要件1Dが線分の端点が有する他の線分との接続情報を利用して接続することを直接規定するものとは認められない。技術常識に基づいて,本件特許発明1について,閉じた面データを作成する目的で線分の接続を接続するために線分の終点等の性質を利用していると当業者が理解する場合には,本件特許発明1は,そのように理解されることとなるが,その場合には,発明の対比や相違点に係る容易想到性判断においても,そのような理解を導くこととなった技術常識の存在が前提となる。

(5) なお,被告は,本件特許発明1と甲2発明の5つの相違点を挙げて,本件

特許発明1と甲2発明は全く異なる発明であり,本件特許発明1は甲2発明によって示唆さえもされていない旨主張し(前記第4の3( 5)),補助参加人は,本件特許発明1に当業者が容易に想到することができず,審決は,本件特許発明1と甲2発明の相違点を看過していて,本件特許発明の進歩性についての判断過程に誤りがあるが,進歩性を肯定した結論に誤りはない旨主張する(前記第5の3( 5),同第の4( 1)ないし(3))。被告,補助参加人の上記主張については,無効審判請求を不成立とした審決について,判断過程に誤りがあるとしても,その結論が正しいことを理由として,本件の審決取消請求訴訟について,原告らの請求の棄却を求めるものと解することができる。本件の審判においては,甲2発明に基づいて本件特許発明1に容易に想到することができるか否かが,現実に争われ,審理判断の対象となっていた。このことに,本件の審決取消請求訴訟においては,原告らは,審決の容易想到性判断の誤りそのものを取消事由として主張するものではないが,本件特許発明1の認定の誤り,甲発明の認定の誤りなどを主張して,甲2発明に基づいては本件特許発明1を容易に想到することができないとした審決の判断の誤りを主張していると解されることを併せ考慮すると,本件の審決取消請求訴訟においては,甲2発明に基づいて本件特許発明1に容易に想到することができたか否かが審理の対象となっているというべきであり,審決とは別の判断過程により審決の結論を維持することができるとの主張は,上記のとおり審理の対象となっている事項についての主張ということができ,本件の審決取消請求訴訟において,その当否を審理することができるものというべきである。もっとも,審決の取消訴訟において,審決が審理判断したのと同一の発明に基づき,審決と異なる判断過程に基づいて審決の結論を維持することができる旨の主張がされた場合,裁判所が必ずその当否を審理判断しなければならないというものではない。特許を無効にすることにつき,裁判所に対し直接これを求めることはできず,特許無効審判制度(特許法123条)が設けられている趣旨,訴訟において当事者が主張する判断過程と審決の判断との違いの内容や当事者の主張状況等に照らし,裁判所は,相当と認める場合には,審決と異なる判断過程に基づいて審決の結論を維持することができる旨の主張の当否を判断することができるにとどまるものというべきである。本件において,前記1のとおり,審決は,相違点3の判断に当たり,本件特許発明1の要旨を実質的に誤って認定しているのであり,容易想到性判断の前提となる本件特許発明1の要旨について審決に誤りが認められること,そして,本件特許発明1の要旨が一義的に明確ではないことから,当裁判所は,その要旨を認定し(前記1),容易想到性判断の前提となる本件特許発明1の要旨について,この認定に基づき,相違点についての判断がされることが期待されること,審決の判断の結論が正しいことをいう被告,補助参加人の主張のうち,少なくとも,審決の相違点の認定に誤りがあることを前提とする部分については,前記(2)ないし(4)の説示のとおり理由がないのであり,これらを考慮すると,本件においては,当裁判所は,本件特許発明1の認定,甲2発明の認定を行い(前記1,2),また,原告らから審決の判断過程の誤りの理由として主張されている一致点,相違点の認定について,特許請求の範囲の記載を用いる形で認定している審決の一致点,相違点の認定に誤りがないことを示す(前記(1)ないし(4))が,相違点に係る容易想到性判断については,判断を示さず,審決の本件特許発明1の要旨の認定に実質的に誤りがあり,この誤りは審決の結論に影響を及ぼすものであることを理由として,審決を取り消すことが相当である。

(6) 以上によれば,審決の相違点の認定に誤りはなく,原告ら主張の取消事由

は理由がない。

4 取消事由4(判断遺脱)について

(1) 審決は,相違点3の判断に当たり,本件特許発明1の構成要件1Dの後半

部分及び構成要件1Eに係る構成と,甲2発明と周知技術の組合せ発明に係る構成が異なると認定しただけで,いきなり,本件特許発明1の進歩性肯定という結論を導いていて,両構成の異なる点が,当業者にとって容易に想到し得たか否かについての判断がされていないとして,審決に判断遺脱である旨主張する。

(2) 審決には,甲2技術と周知技術等を組み合わせたとしても本件特許発明1

の構成とは異なったものとなるとの記載がある(前記1(11)イ(エ))。しかし,そのように,発明の組合せを行った結果が本件特許発明1と異なった構成となるとされるものについて,さらに,対象となる発明との相違点を抽出して,それに係る構成に容易に想到できたかを必ず判断しなければならないものではないことは明らかで,審決には原告らが主張するような判断遺脱はなく,原告らの主張は,採用し難い。

(3) したがって,原告ら主張の取消事由4は理由がない。

5 取消事由5(記載不備についての認定判断の誤り)について

原告らは,本件特許発明1の「二次元の線データ」について,特許法36条5項号に違反する旨主張する。しかし,構成要件1Bの「二次元の線データ」は,前記1(4)の説示に照らしても,当業者であれば,構成要件1Aの「ベクトルデータ」から,その後の処理に使用するために変換されたデータについて,これを「ベクトルデータ」とは区別する意味で「二次元の線データ」といっているものと,普通に理解でき,これは,発明の詳細な説明に記載されたもので,明りょうでないとはいえない。「二次元の線データ」の意義について,複数の解釈が主張等されたことが,上記判断を直ちに左右するものではない。なお,原告らの主張中には,審決の「二次元の線データ」についての解釈を争う部分があり,この主張は,「二次元の線データ」について特許法36条5項1号に違反していることをいう取消事由5を理由付けるものではないが,「二次元の線データ」については,上記のように,構成要件1Aの「ベクトルデータ」から,その後の処理に使用するために変換されたデータについて,これを「ベクトルデータ」とは区別する意味で「二次元の線データ」といっているものと解釈できるものである。したがって,原告ら主張の取消事由5は理由がない。

6 以上によれば,審決は,実質的に本件特許発明1の要旨の認定を誤っており,

この誤りは審決の結論に影響を及ぼすものであるから,原告ら主張の取消事由1は理由があり,主文のとおり,判決する。知的財産高等裁判所第1部裁判長裁判官 塚 原 朋 一裁判官 宍 戸 充裁判官 柴 田 義 明

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