平成19(ワ)22834損害賠償請求事件
判決文PDF
▶ 最新の判決一覧に戻る
裁判所 |
請求棄却 東京地方裁判所
|
裁判年月日 |
平成19年12月12日 |
事件種別 |
民事 |
当事者 |
被告住友石炭鉱業株式会社 原告株式会社イー・ピー・
|
法令 |
著作権
|
キーワード |
侵害2回 損害賠償2回
|
主文 |
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事件の概要 |
本件は,原告と被告間における訴訟である知財高裁平成19年(ネ)第1
0 015号事件の訴 訟(原審・東京 地裁平成18年( ワ)第2235 5号
〔本訴〕,同第26612号〔反訴〕事件。以下「知財高裁10015号事
件 訴訟」といい,同 事件の判決を「 知財高裁1001 5号事件判決」 とい
う。)において,同事件の被控訴人(被告)である本件訴訟の被告が,虚偽
の主張又は錯誤により誤った主張をしたため,裁判所を錯誤に陥らせ,知財
高裁10015号事件訴訟の控訴人(原告)である本件訴訟の原告の請求を
棄却する旨の判決をさせたとして,被告の知財高裁10015号事件訴訟に
おける上記行為は不法行為を構成すると主張して,不法行為に基づき,10
万円の損害金(及びこれに対する訴状送達の日の翌日から民法所定年5分の
割合による遅延損害金)の支払を求めている事案である。 |
▶ 前の判決 ▶ 次の判決 ▶ 著作権に関する裁判例
本サービスは判決文を自動処理して掲載しており、完全な正確性を保証するものではありません。正式な情報は裁判所公表の判決文(本ページ右上の[判決文PDF])を必ずご確認ください。
判決文
平成1 9年 12月12日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成1 9年 (ワ)第22834号 損害賠償請求事件
口頭弁 論終 結日 平成19年10月24日
判 決
神 奈川 県相模原市〈以下省略〉
原 告 株式会社イー・ピー・
ルーム
東 京都 港区〈以下省略〉
被 告 住友石炭鉱業株式会社
同訴訟代理人弁護士 冨 永 敏 文
同 尾 原 央 典
主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
被告は,原告に対し,金10万円及び平成19年9月13日から支払済み
ま で年 5分の割合による金員を支払え。
第2 事案 の概要
本件は,原告と被告間における訴訟である知財高裁平成19年(ネ)第1
0015号事件の訴訟(原審・東京地裁平成18年(ワ)第22355号
〔本訴〕,同第26612号〔反訴〕事件。以下「知財高裁10015号事
件訴訟」といい,同事件の判決を「知財高裁10015号事件判決」とい
う。)において,同事件の被控訴人(被告)である本件訴訟の被告が,虚偽
の主張又は錯誤により誤った主張をしたため,裁判所を錯誤に陥らせ,知財
高裁10015号事件訴訟の控訴人(原告)である本件訴訟の原告の請求を
棄却する旨の判決をさせたとして,被告の知財高裁10015号事件訴訟に
おける上記行為は不法行為を構成すると主張して,不法行為に基づき,10
万円の損害金(及びこれに対する訴状送達の日の翌日から民法所定年5分の
割 合に よる遅延損害金)の支払を求めている事案である。
1 原告 の主張
知財高裁10015号事件訴訟において,被告は,虚偽の主張又は錯誤に
より誤った主張をしたため,裁判所は,知財高裁10015号事件判決にお
い て, 次のとおり,誤った判断をした。
被告の上記行為は不法行為を構成し,原告は,これにより10万円の損害
を 被っ た。
したがって,原告は,被告に対して,不法行為に基づき,10万円の損害
賠 償の 請求をする。
(1) 知 財 高 裁 1 0 0 1 5 号 事 件 判 決 は , 第 4 の 1 ( 1 )に お い て , 「 被 告 は 原
告 に 対 し 放 電 プ ラ ズ マ 燒 結 機 の 発 注 を 行 っ た こ と を 認 め る こ と は で き ず,
原告と被告は,原告作成の設計図による製品を,原告が有限会社北栄興業
において製造して被告に納入する旨の合意(以下「本件製造納入合意」と
いう 。)をしたと認めることはできない。」旨の判断をした。
(2) 知 財 高 裁 1 0 0 1 5 号 事 件 判 決 は , 第 4 の 1 ( 2 )に お い て , 原 告 が 作 成
した,知財高裁10015号事件訴訟における甲8の1の図面(以下「本
件原告設計図」という。)は,表現上の創作性が認められないとして,本
件原 告設計図の著作物性を否定する旨の判断をした。
(3) 知 財 高 裁 1 0 0 1 5 号 事 件 判 決 は , 第 4 の 1 ( 3 )に お い て , 被 告 は , 本
件原 告設計図等の原本を騙取したものではない旨の判断をした。
( 4) 知 財 高 裁 1 0 0 1 5 号 事 件 判 決 は , 第 4 の 1 ( 4 )に お い て , 原 告 の し た,
被告 の横領による不法行為の主張を採用しない旨の判断をした。
(5) 知 財 高 裁 1 0 0 1 5 号 事 件 判 決 は , 第 4 の 1 ( 5 )に お い て , 「 原 告 の 署
名を切り取り,本件原告設計図に貼り付けたことを認めるに足りる証拠は
ない 。」旨の判断をした。
2 被告 の主張
知財高裁10015号事件判決が原告の主張のとおりの判断をしたことは
認 め る が , 同 判 決 に 誤 り は な い 。 ま た , 同 判 決 は , 被 告 の 行 為 で は な い か ら,
原 告の 主張は主張自体失当である。
第3 当裁 判所の判断
1 知財高裁10015号事件訴訟における原告の請求及びそれに対する裁判
所の判断の内容は,概略,以下のとおりである(甲8,裁判所に顕著な事
実 )。
(1) 知財高裁10015号事件訴訟において, 原告は次のとおりの主張 をし
(なお,以下の請求は,同訴訟における原告の請求の一部である。),被
告は ,原告の同主張をいずれも否認した。
ア 原告請求①
原告と被告は,本件製造納入合意をしたにもかかわらず,被告は,原
告作成の図面一式を株式会社X(以下「X」という。)に交付して,同
社に,放電燒結装置を製造させ,本件原告設計図を含む図面一式を被告
から詐欺に当たる手段で取得した。
被 告 の 上 記 行 為 は 本 件 製 造 納 入 合 意 の 債 務 不 履 行 に 当 た り , 原 告 は,
これにより少なくとも1億円の損害を被ったが,そのうちの一部請求と
して,5万円の請求をする。
イ 原告請求②
被告は,本件原告設計図の原告代表者署名部分を切り取り,被告の名
称欄を貼り付けて,設計図を作成し(以下「本件被告設計図」とい
う。),その上で,本件被告設計図を複写して,Xに交付した。
被告の上記行為は,本件原告設計図について原告が有する複製権及び
同一性保持権の侵害に当たり,原告は,同不法行為により15億円の損
害を被ったが,そのうちの一部請求として,5万円の請求をする。
ウ 原告請求③
被告は,被告の方式で図面番号を付したいから,本件原告設計図,部
品図を貸してくれと言って占有し,これを原告に返さずに騙し取り,原
告 に 損 害 を 被 ら せ た 。 被 告 の こ の 行 為 は , 詐 欺 に よ る 不 法 行 為 と な り,
原告は,同不法行為により15億円の損害を被ったが,そのうちの一部
請求として,5万円の請求をする。
エ 原告請求④
被告は,上記ウのとおり,各図面の原紙を原告から騙し取って占有し
ており,また,被告が占有する本件原告設計図により放電燒結装置を製
造販売したのであるから,被告には横領による不法行為が成立する。原
告は,同不法行為により15億円の損害を被ったが,そのうちの一部請
求として,5万円の請求をする。
オ 原告請求⑤
被告は,本件原告設計図の原告代表者署名部分を切り取り,被告の名
称 欄 を 切 り 貼 り し て , 本 件 被 告 設 計 図 を 作 成 し た が , 被 告 の 同 行 為 は,
私文書偽造に該当する。また,被告は,原告が被告から強いて使うよう
にと言って渡された用紙に,原告が鉛筆で作図した50枚の部品図の中
から,例えば一枚の図面を選んで,原告の署名を切り取り,本件原告設
計図に貼り付けて,原告の署名があるとするが,かかる行為は私文書偽
造に当たり不法行為が成立する。
原告は,被告の上記行為により15億円の損害を被ったが,そのうち
の一部請求として,5万円の請求をする。
(2) 知財高裁10015号事件判決の判断
ア 原告請求①に対して
被告が原告に対して,具体的な発注を行ったものと認めるに足りる証
拠 はないから,本件製造納入合意があったとは認められない。
したがって,原告請求①は理由がない。
イ 原告請求②に対して
本件原告設計図には表現上の創作性が認められないから,原告の著作
権 ( 複 製 権 , 同 一 性 保 持 権 ) 侵 害 の 主 張 は , そ の 前 提 を 欠 き 失 当 で あ る。
したがって,原告請求②は理由がない。
ウ 原告請求③に対して
被告が本件製造納入合意をしたと認めることはできず,また,原告も
記名押印した本件取引基本契約(知財高裁10015号事件訴訟におけ
る甲6)の第19条には,原告が作成した図面等の所有権は被告に帰属
する旨の規定が存在するから,各図面の原紙の所有権は被告に帰属する
ことを原告も同意していたのであり,原告が平成6年10月14日に被
告から図面コピー1式の送付を受けた際やその後においても,上記原紙
を 返 し て も ら っ て い な い 旨 直 ち に 異 議 を 申 し 出 た 形 跡 も な い こ と か ら,
被告の詐欺行為を認めることはできない。
したがって,原告請求③は理由がない。
エ 原告請求④に対して
前 記 ウ の 説 示 に 照 ら し て , 原 告 請 求 ④ に 係 る 原 告 の 主 張 は 採 用 で き ず,
原告請求④は理由がない。
オ 原告請求⑤に対して
本件全証拠によっても,原告が被告から強いて使うようにと言って渡
された用紙に,原告が鉛筆で作図した50枚の部品図の中から,例えば
一枚の図面を選んで,原告の署名を切り取り,本件原告設計図に貼り付
け た こ と を 認 め る に 足 り る 証 拠 は な い か ら , 原 告 請 求 ⑤ は 理 由 が な い。
2 原告は,知財高裁10015号事件訴訟において,被告が,虚偽又は錯誤
により誤った主張をしたため,知財高裁10015号事件判決において誤っ
た 判断 がなされた旨主張する。
そこで,検討するに,原告が上記判決において誤った判断をしたと主張す
る 部分 に係る原告の主張は,前記1( 1 )のとおりであり,これに対し,被 告 は,
同 主張をすべて否認 し,また,知財高裁10015号事件判決は,前記1 ( 2 )
のとおりの判断をしたものと認められるところ,本件において,被告の上記
主張が虚偽又は錯誤により誤ったものであること,及び知財高裁10015
号事件判決の上記判断が,被告が同主張の立証として提出した証拠を誤って
採 用し たためになされたものであることを窺わせる証拠は一切ない。
したがって,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求は理由
が ない から,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。
東 京地方裁判所民事第29部
裁判長裁判官 清 水 節
裁判官 佐 野 信
裁判官 國 分 隆 文
最新の判決一覧に戻る