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平成19(行ケ)10187審決取消請求事件

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裁判所 請求棄却 知的財産高等裁判所
裁判年月日 平成19年10月30日
事件種別 民事
当事者 被告特許庁長官
原告株式会社クロスメディア
法令 商標権
商標法3条1項6号7回
キーワード 審決20回
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事件の概要 本件は,原告が後記商標登録出願をしたところ,拒絶査定を受けたので,こ , ,れを不服として審判請求をしたが 特許庁が請求不成立の審決をしたことから その取消しを求めた事案である。

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判決文

判決言渡 平成19年10月30日
平成19年(行ケ)第10187号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 平成19年10月16日
判 決
原 告 株式会社クロスメディア
インフォメーションセンター
訴訟代理人弁理士 三 好 秀 和
同 岡 村 雅 一
同 須 永 浩 子
同 芦 田 望 美
被 告 特 許 庁 長 官
肥 塚 雅 博
指 定 代 理 人 寺 光 幸 子
同 山 口 烈
同 内 山 進
主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
特許庁が不服2006−19296号事件について平成19年4月16日に
した審決を取り消す。
第2 事案の概要
本件は,原告が後記商標登録出願をしたところ,拒絶査定を受けたので,こ
れを不服として審判請求をしたが,特許庁が請求不成立の審決をしたことから,
その取消しを求めた事案である。
争点は,本願商標が商標法3条1項6号にいう「需要者が何人かの業務に係
る商品又は役務であることを認識することができない商標」に当たるかである。
第3 当事者の主張
1 請求原因
(1) 特許庁における手続の経緯
原告は ,平成17年11月1日 ,後記商標登録出願 以下 本願」
( 「 という 。)
をした(甲1)ところ,平成18年6月14日付けで特許庁から拒絶理由通
知(甲2)を受けたので,平成18年7月25日付けで指定商品(指定役務)
の変更を内容とする手続補正(甲3の2)をしたが,平成18年7月28日
付けで拒絶査定(甲4)を受けた。そこで原告は,平成18年8月31日付
けでこれに対する不服の審判請求(甲5)をし,これを受けた特許庁は,同
請求を不服2006−19296号事件として審理した上,平成19年4月
16日 ,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は平
成19年4月27日原告に送達された。
(2) 商標の内容
ア 商標(標準文字)
Meta Media
イ 指定商品( 指定役務)前記手続補正後のもの。下線は判決で付記)

第9類
耳栓,加工ガラス(建築用のものを除く。 ,アーク溶接機,金属溶断機,電気

溶接装置,オゾン発生器,電解槽,検卵器,金銭登録機,硬貨の計数用又は選別
用の機械,作業記録機,写真複写機 ,手動計算機 ,製図用又は図案用の機械器具 ,
タイムスタンプ,タイムレコーダー,パンチカードシステム機械,票数計算機,
ビリングマシン,郵便切手のはり付けチェック装置,自動販売機,ガソリンステ
ーション用装置,駐車場用硬貨作動式ゲート,救命用具,消火器,消火栓,消火
ホース用ノズル,スプリンクラー消火装置,火災報知機,ガス漏れ警報器,盗難
警報器,保安用ヘルメット,鉄道用信号機,乗物の故障の警告用の三角標識,発
光式又は機械式の道路標識,潜水用機械器具,業務用テレビゲーム機,電動式扉
自動開閉装置,乗物運転技能訓練用シミュレーター,運動技能訓練用シミュレー
ター,理化学機械器具,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,測定機械
器具,配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電池,電気磁気測定
器,電線及びケーブル,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,電気
通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,磁心,抵抗線,電極,消防艇,
ロケット,消防車,自動車用シガーライター,事故防護用手袋,防じんマスク,
防毒マスク,溶接マスク,防火被服,眼鏡,家庭用テレビゲームおもちゃ,携帯
用液晶画面ゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD−RO
M,スロットマシン,ウエイトベルト,ウエットスーツ,浮袋,運動用保護ヘル
メット,エアタンク,水泳用浮き板,レギュレーター ,レコード,メトロノーム ,
電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電子回路及びCD−ROM,計算尺 ,
映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,録画済みビデ
オディスク及びビデオテープ,電子出版物
第35類
広告,トレーディングスタンプの発行,経営の診断又は経営に関する助言,市
場調査,商品の販売に関する情報の提供 ,ホテルの事業の管理 ,財務書類の作成 ,
職業のあっせん,競売の運営,輸出入に関する事務の代理又は代行,新聞の予約
購読の取次ぎ,速記,筆耕,書類の複製,文書又は磁気テープのファイリング,
電子計算機・タイプライター・テレックス又はこれらに準ずる事務用機器の操作,
建築物における来訪者の受付及び案内,広告用具の貸与,タイプライター・複写
機及びワードプロセッサの貸与,求人情報の提供,自動販売機の貸与
第42類
気象情報の提供,建築物の設計,測量,地質の調査,機械・装置若しくは器具
(これらの部品を含む 。)又はこれらの機械等により構成される設備の設計,デ
ザインの考案,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機・自
動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技
術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明,医薬品
・化粧品又は食品の試験・検査又は研究,建築又は都市計画に関する研究,公害
の防止に関する試験又は研究,電気に関する試験又は研究,土木に関する試験又
は研究,農業・畜産又は水産に関する試験・検査又は研究,機械器具に関する試
験又は研究,著作権の利用に関する契約の代理又は媒介,社会保険に関する手続
の代理,計測器の貸与,電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供,理
化学機械器具の貸与,製図用具の貸与
(3) 審決の内容
審決の内容は,別添審決写しのとおりである。その理由の要点は,本願商
標を前記指定商品及び指定役務中の「電子応用機械器具及びその部品」等の
コンピューターに関連する分野の商品又は役務に使用しても,これに接する
取引者・需要者は単に上記概念ないし理念の実現を目指す商品又は役務であ
ると認識するにとどまるから,自他識別標識としての機能を果たし得ず,商
標法3条1項6号に該当し商標登録を受けることができない,としたもので
ある。
(4) 審決の取消事由
しかしながら,本願商標である「Meta Media」の語が表すとこ
ろは極めて抽象的なものであり,これが,商品又は役務の具体的品質又は具
体的内容を認識させるものとは考えられないから,本願商標を指定商品及び
指定役務のいずれに使用しても自他の識別標識としての機能を果たし得るも
のであり,審決は以下に述べるとおり,違法として取り消されるべきである。
ア 審決は ,本願商標を構成する「Meta Media」の文字(語)が,
米国の科学者アラン・ケイ(Alan Curtis Kay,以下「ア
ラン・ケイ」という 。)が提唱した「コンピュータ」を定義した概念表示
としてコンピュータに関連する商品又は役務分野において普通に使用され
ていることを前提として,本願商標は,その指定商品及び指定役務中「電
子応用機械器具及びその部品 」「 電子出版物 」 「電子計算機のプログラ
・ ,
ムの設計・作成又は保守 」 「電子計算機の貸与 」 「電子計算機用プログ
, ,
ラムの提供」等のコンピュータに関連する分野の商品又は役務について使
用しても,これに接する取引者,需要者は,単に上記概念ないし理念の実
現を目指す商品又は役務であることを表したと認識するにとどまり,自他
識別標識としての機能を果たし得ないものと判断した。
しかし,本願商標を構成する「Meta Media」の語が,仮にア
ラン・ケイが提唱した「コンピュータ」を定義した概念表示としてコンピ
ュータに関連する商品又は役務分野において知られているとしても,他に
も「マルチメディア 」 「ハイパーメディア 」 「スーパーメディア」の各
, ,
語も,同様に「コンピュータ」を定義した概念表示として普通に使用され
ている。
しかも,上記各語は,いずれも「コンピュータ(電子計算機)」のメデ
ィアとしての優秀性・卓越性を抽象的に表現するにすぎず,本願商標を構
成する「Meta Media」の語が,指定商品中の特定の商品及び指
定役務中の特定の役務について,具体的品質・機能等及び特定の役務の具
体的質 内容)
( を表示するためのものとして使用されている事実はないし,
また慣用商標的に,コンピュータの同義語として普通に使用されていると
いう事実も見出すことができない。審決が認定した(特定の商品又は役務
に本願商標を使用しても,「これに接する取引者,需要者は,単に上記概

念ないし理念の実現を目指す商品又は役務であることを表したと認識する
にとどまるものであり」と認定・判断した部分(5頁6行∼7行)につい
ても,それが具体的にいかなる商品又は役務を指すのか明らかではない。
イ また「メタメディア」の語に関し,最近の携帯電話はその多機能化によ
り急速に普及し,これも「メタメディア」としての地位を既に確立してお
り,またテレビの世界においても,最近急速にアナログからデジタルへの
切り換えが進んでおり,インタラクティブ(双方向性の)なメディアとし
て,これも「メタメディア」に進化したとする見方がある。このように,
ひとりコンピュータのみが「メタメディア」であるわけではなく,実際に
も,「Meta Media」及び「メタメディア」の語がコンピュータ
を指称する語として,あるいは本願指定商品又は指定役務の具体的品質を
表す語として使用されている事実もない。
ウ そもそも,アラン・ケイは ,「Meta Media」の語によって,
コンピュータが,単なるメディアではなく,道具としての存在を超越して
いること,コンピュータが無限の可能性を秘めたブラック・ボックスであ
ることを抽象的に主張・表現しているにとどまり,コンピュータも特定の
具体的概念・理念で規定できるものではあり得ない。そうすると,具体的
な「上記概念ないし理念 」(5頁6行)の存在を想定する審決の認定・判
断は,前提において誤りである。
以上のとおり,「Meta Media」の語が表すところは,極めて
抽象的なものであり,これが商品や役務の具体的品質又は具体的質 内容)

を認識させるものとは,到底考えられない。
エ なお,「Meta Media」の語は英語であり,これを唱えたアラ
ン・ケイも米国人であるが,米国においては「METAMEDIA」の商
標が第2615450号として登録されている(甲7 )。指定商品は「レ
コード,録音済みのカセットテープ,CD,録画済みのビデオテープ,音
楽を組み込んだ双方向のシステム,音楽をフィーチャーしたコンピュータ
・ソフトウエア」である。米国におけるコンピュータの普及は我が国に劣
るものではないし,米国の需用者は我が国の需用者以上に「METAME
DIA」の語に慣れ親しんでいるところであるが,米国においては自他商
品(役務)の識別力が認められているにもかかわらず,英語を公用語とも
していない我が国において「Meta Media」の語が自他商品識別
機能を発揮し得ないとする理由はない。
オ さらに,本願商標の指定商品又は指定役務について ,「メタメディア」
の語が取引上,相当数の者により普通に使用されているとの事実,あるい
は特定の商品等を認識させる事実はないから,このような取引の実情を考
慮しても,本願商標は自他識別標識としての機能を果たしうる。
カ そうすると,本願商標は,上記商品又は役務はもとより,本願の指定商
品又は指定役務のいずれについて使用しても,自他商品(又は役務)の識
別標識としての機能を果たし得るものといわなければならないから,審決
の認定,判断は誤りであり取り消されるべきである。
2 請求原因に対する認否
請求原因(1),(2),(3)の各事実は認めるが,(4)は争う。
3 被告の反論
本願商標が商標法3条1項6号に該当するとした審決の認定,判断は正当で
あり,以下に述べるとおり原告主張の取消事由は理由がない。
(1) 本願商標の構成
本願商標は ,「Meta Media」の欧文字を標準文字で表してなる
ものであり ,「Meta」と「Media」の文字とを組み合わせてなるも
のと容易に看取されるものである。
そして,本願商標の構成中の「Meta」の文字は,「ギリシア語で『間
に』『後に 』『越える』の意の meta に由来する接頭語」であり,同じく「M
edia」の文字は, 媒体。手段。特に,マス‐コミュニケーションの媒

体。」を意味する語である(広辞苑第5版。乙1)。
(2) 「Meta Media」又は「メタメディア」の語
「Meta Media」の語について ,審決時(平成19年4月16日 )
より以前に,以下の文献に ,「Meta Media」又はその片仮名表記
である「メタメディア」の語は,米国の著名な科学者アラン・ケイの提唱し
たコンピュータの概念ないし理念を表示する用語として掲載され,また,以
下の新聞記事情報やインターネットの情報により「メタメディア」又は「m
etamedia」の語が「各種メディアを統合し,メディアを超越したも
の」程の意味合いで使用されているといえる。
ア 「2005−’06年版最新パソコン用語事典 」(平成16年11月1
日 株式会社技術評論社発行)の「メタメディア metamedia」
の項には,「Alan Kay氏が提唱した概念。各種メディアを統合し
たものとして想定された。コンピュータが,メディアを超えた最初のメデ
ィアだという考えである。」との記載がある(乙2 )。
イ 「超図解パソコン用語事典2002年版 」(2001年9月28日 株
式会社エクスメディア発行)の「メタメディア metamedia」の
項には,「Alan Curtis Kay氏が提唱した,
『コンピュータ
はあらゆるメディアを統合したものであり,また代替品になりうる』とい
う概念のこと。」との記載がある(乙3)。
ウ 「最新2002年版標準パソコン用語事典」(2001年8月6日第3
版第1刷 株式会社秀和システム発行)の「メタメディア meta m
edia」の項には, Alan
「 Curtis Kay(アラン・ケイ)
の提唱したコンピュータのこと。コンピュータは,メディアの垣根を越え
たはじめての存在であるという考えに基づく。コンピュータは複数のメデ
ィアを統合し,人間の使い易いかたちで,個人で活用できるようになると
いう。」との記載がある(乙4 )。
エ 「朝日現代用語『知恵蔵』2004 」(2004年1月1日 朝日新聞
社発行)の「メタメディア[metamedia]」の項には,「超メディ
ア.様々なメディアを統合する超越的な媒体.」との記載がある(乙5)。
オ http://www.jiten.com/dicmi/docs/k34/23195.htm 「メタメディア - マルチメ
ディア/インターネット事典」のタイトルの下,「メタメディア/Met
a−Media」の見出しで ,「音声,テキスト,画像,ビデオなどの既
成メディアを統合し,人が活用できるようにするという考え方で,あらゆ
るメディアを超えたメディアとしてコンピュータが存在するという Alan
C. Kay によって提唱された概念です 。」との記載がある(乙6 )。
カ http://www.big.or.jp/~mio/ga/dic/cdm_1.4/x70/cd35211.html 「 MioCity :
computing terms reference "terms"」のタイトルの下 ,【メタメディア】

[metamedia]」の見出しで,「画像,音声,テキストなど各種のメディアを
統合し,活用できるようにしたもの。アラン・ケイ( Alan Kay)により提唱
された概念で, コンピュータがメディアを超えた最初のメディアである』

という考え方。」との記載がある(乙7)。
キ http://biography.sophia-it.com/content/%E3%82%A2%E3%83%A9%E3%83%
B3%E3%83%BB%E3%82%B1%E3%82%A4 「アラン・ケイ (Alan Curtis
Kay)とは | 略歴・経歴・プロフィール | Smalltalk の開発者」のタイトル
の下,「アラン・ケイ」の見出しで,「アラン・ケイとは,米国の科学者で
ある。1940 年,マサチューセッツ州スプリングフィールドに生まれた。
オブジェクト指向プログラミング言語『 Smalltalk』の開発や,コンピュー
ターはメディアを超えたメディアであるという『メタメディア』の概念を
提唱したことなどで知られている。」との記載がある(乙8)。
ク http://www.online-fd.com/edunet/DB/024.html 「創造・学習・コンピュー
タ(喜多 一 )」のタイトルの下,「授業の概要」として「◆授業のテーマ
と目的:コンピュータはプログラミングすることで多様な機能を発揮でき
る万能の機械です。そして,それは様々なメディアを包含するメタメディ
アであり,創造のための強力なツールとなります 。」との記載がある(乙
9)。
ケ http://www.socc.sfc.keio.ac.jp/~cyber/work/report/envinf/ws/society.html 「第
1章 社会変革 」「計算機から思考支援ツールへ」のタイトルの下,「一方
ケイは 76 年,
『パーソナル・ダイナミック・メディア』という報告書をま
とめる。このなかで彼は ,『メタ・メディア』という概念を提唱。コンピ
ュータは言語を超えたメディアになりえる可能性を示唆する。コンピュー
タは可能性として,既存のメディアをシミュレートでき,さらにそれらを
組み合わせたりできるので,メタなメディアであるということである。」
(2頁26行∼29行)との記載がある(乙10)。
コ http://agrinfo.narc.affrc.go.jp/fs/cdrom/3syou/306st/t0602.htm 「 3.6.2 マルチ
メディア 」「( 2)マルチメディアとは」のタイトルの下 ,
・ 「コンピュータ
をあらゆるメディアの統合体として捉えること。これは抽象的で分かりに
くいが,コンピュータはプログラマブルであるために,ソフトウェアとし
て実現すれば,既存のメディアをすべてメタファーとして表現できるとす
る考え方である。いわゆるメタメディアあるいはハイパーメディアという
表現に近い。」との記載がある(乙11)。
サ http://rblog-biz.japan.cnet.com/takahito/2007/04/post_78e3.html「 ブログパブ
リッシングネットワークとその進化系を考える(2) −アート資本主義」

のタイトルの下 ,「■メタメディアとしてのブログ出版プラットフォーム
の産業的インパクトを考えながら現実的に製品をデザインすること」「…

電子流通やそのファイナンス支援など,『メタメディア』から生まれる様
々な産業を事前に想定しておくべきだろう。
」との記載がある(乙12)。
シ 1984年8月13日 日経産業新聞,17ページ 「パソコン(3)ど
のように付き合うか−まず入力方法を習得(入門先端技術 )」の見出しの
下,「コンピューターとは何か−この問いに,ひとことで答えることはで
きない。…情報を伝達するテレビ,ラジオ,電話,出版などのメディアを
まねすることもできる。あるときは電話になったり,本になったり,変身
自在である。この点では,スーパーメディアとかメタメディアという名称
がふさわしい。コンピューターは他の機械に比べて,この二つの特徴が際
立っている。」との記載がある(乙13)。
ス 1995年12月16日 日本経済新聞 地方経済面(東北B ),24
ページ 「通産省のソフトウエア育成事業,コムテック,選ばれる。」の
見出しの下 ,「…同社の研究テーマは『エージェントモデルに基づく統合
メタメディア環境の構築』 ,
で 二年後をめどに一般利用者に分かりやすく,
操作しやすいマルチメディアの構築を目指す。 との記載がある 乙14)
」 ( 。
セ 2007年1月25日 産経新聞SANKEIWEB 「メタメディア
としての携帯電話」のタイトルの下 ,「あらゆるメディアを超越し,包含
するメディアをメタメディアと言うが,携帯電話はメタメディアの道を突
き進んでおり,携帯電話という名称すらふさわしくないくらいだ。携帯電
話が日本でメタメディア化したのは,居住空間が狭く,モノを置くスペー
スが限られ,通勤時間が長い日本の事情が関係している。そのため,海外
では日本と同じようには推移していない。」との記載がある(乙15)。
ソ http://www.ntticc.or.jp/Archive/2002/Art_Bit_Collection/Works/index_j.html
「art.bit collection 2002 年 6 月 21 日(金)-8月 11
日(日)」の展示作品「2.音や映像を扱うプログラミング環境」のタイト
ルの下 ,「音や映像を取り込んだり,作りだしたり,再構成するためのソ
フトウエア環境.ここでのコンピュータは,様々なメディアを結合するメ
タメディアとして機能します.」の記載がある(乙16)。
(3) メディアの統合化が進められていること
ところで,近年コンピュータや情報通信分野においては,インターネット
や,映像,音声などのメディアの統合化や電子メールや携帯電話の統合化な
ど様々なメディアの統合化が進んでいるところであり,このことは,以下の
インターネットの記載からも明らかである。
ア http://www.nec.co.jp/press/ja/0109/1801.html「インターネットから音声ま
で様々なメディアを統合した付加価値サービスを実現するネットワーク・
アプリケーション・サーバの発売について」との記載がある(乙17)。
イ http://www.rikei.co.jp/product/ja/64.html「 NORTEL のマルチサービススイ
ッチ (MSS) 6400 シリーズは,多彩なメディアを統合する,次世代マル
チメディアネットワークの中核の ATM マルチサービススイッチです 。」
との記載がある(乙18)。
ウ http://www.earnet.co.jp/jp/feature.html「…映像・音声,アニメ機能も含む
パワーポイントスライド,その上を指し示すレーザーポインターの位置,
電子ホワイトボード,以上の複数メディアを統合し,受信用 PC 画面にお
いてリアルタイム・オンデマンド双方で同期化した情報の受信ができま
す。」との記載がある(乙19)。
エ http://www.okinawa-ct.ac.jp/dept/mi/index.html「 …情報処理技術と通信技
術の発展と融合のおかげで,情報のディジタル化を通して異なるメディア
を統合的に扱うこと,そして,膨大な情報を世界規模で伝達共有すること
が可能になりました。」との記載がある(乙20)。
オ http://www.t-kougei.ac.jp/i/info/gakubu/mediga.html「 このメディアの時代
を迎え,メディア画像学科はその核となる情報メディアと画像メディアを
統合的に教育・研究するために,これまでの光情報メディア工学科と画像
工学科両分野の技術基盤が融合して新たに誕生した新学科です。」との記
載がある(乙21)。
カ http://www.nri.co.jp/news/2001/010517.html「 iPostUCS』はボイスメール,

Fax,電子メール,携帯電話等のメッセージメディアを統合する,世界最
大のシェアを持つユニファイド・コミュニケーション・ソリューションで
す。」との記載がある(乙22)。
キ http://www.j-ts.com/「ビデオ・音声(会話)会議システム」のタイトル
の下に ,「従来の PSTN,ISDN から VoIP までメディアを統合したキャリ
アクラスのマルチポイント音声会議システム。 との記載がある 乙23)
」 ( 。
ク http://www.electori.co.jp/amx_ls/amx_02.html オーディオをはじめ,
「 DVD,
ビデオ,衛星放送,ケーブルテレビなど全てのメディアを統合し,ひとつ
のシステムとして構築できます 。」との記載がある(乙24)。
ケ http://plusd.itmedia.co.jp/broadband/0202/21/epstart.html「家電各社らが出資
するイーピーは 2 月 21 日,デジタル放送( BS デジタル/110 度 CS デジタ
ル) セットトップボックスに内蔵された HDD,インターネット,
, という 3
つのメディアを統合した世界初の蓄積型双方向サービス『 ep サービス』
を,今年 5 月から段階的に開始すると発表した」との記載がある 乙25)
( 。
コ http://allabout.co.jp/computer/digitalvideo/closeup/CU20060802A/ 8月2日,

日立製作所から, DVD メディアと HDD メディアを統合した『ハイブリ
ッドカム Wooo』を発表しました。そのハイブリッドカムの特徴をお伝え
しましょう。」との記載がある(乙26)。
サ http://wp.netscape.com/ja/navigator/v3.0/quicktime.html「 QuickTime はビデ
オ,音声,音楽,テキストなどさまざまなメディアを統合し,すでに何千
ものウェブ・サイトで用いられています。」との記載がある(乙27)。
シ http://www.jagat.or.jp/story_memo_view.asp?StoryID=5701「 Viewpoint
Experience Technology(VET)は,Web 上で 3D コンテンツや Flash,パノ
ラマ,静止画などの複数のメディアを統合できるツールである。」との記
載がある(乙28)。
ス http://www.nifty.com/webapp/digitalword/word/051/05143.htm「 …メディア
を統合する QuickTime,さらに第 3 レベルには API 群として,Mac OS 9
実行環境の Classic/ネイティブ環境の Carbon/開発環境の Cocoa,最上位に
GUI である『Aqua』が位置する。
」との記載がある(乙29)。
(4) まとめ
以上によれば「Meta Media」及び「メタメディア」の語は,ア
ラン・ケイの提唱した ,「コンピュータはあらゆるメディアを統合し,メデ
ィアを超越したもの」という概念ないし理念を表す用語として,我が国にお
いてコンピュータに関係する分野において広く知られ,「各種メディアを統
合し,メディアを超越したもの」程の意味合いで普通に使用されているとい
えるものである。
そして,コンピュータを中心とする情報通信分野において,各種情報の扱
いを簡便化し,膨大な情報を伝達共有するために,様々なメディアの統合化
が進められているところである。
そうすると,本願商標「Meta Media」を,その指定商品及び指
定役務中,コンピュータに関連する分野の商品及び役務,例えば,「電子応
用機械器具及びその部品 」 「電子出版物 」 「電子計算機のプログラムの設
, ,
計・作成又は保守 」 「電子計算機の貸与 」 「電子計算機用プログラムの提
, ,
供」等について使用しても,これに接する需要者は,ごく自然に,「コンピ
ュータはあらゆるメディアを統合し,メディアを超越したもの」の概念ない
し理念又はその意味合いを認識するというべきであり,本願商標は,自他商
品又は役務の識別力を欠き,商標としての機能を果たし得ないものといわざ
るを得ない。
したがって,本願商標は,その指定商品及び指定役務中,前記のとおり,
コンピュータに関連する分野の商品及び役務に使用しても,需要者が何人か
の業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標という
べきであるから,本願商標が,商標法3条1項6号に該当するとして登録す
ることができないとした審決の認定,判断に誤りはない。
第4 当裁判所の判断
1 請求原因(1)(特許庁における手続の経緯 ),(2)(商標の内容 ),(3)(審決
の内容)の各事実は,いずれも当事者間に争いがない。
2 本願商標の商標法3条1項6号該当性の有無
原告は,本願商標が,商標法3条1項6号にいう自他識別標識としての機能
を果たし得ない商標には当たらないと主張するので,以下検討する。
(1) 本願商標は,「Meta Media」の文字を標準文字で書してなると
ころ,広辞苑(第5版)によれば , メタ」 meta 】の項には,〔化〕 ギ
「 【 「 (
リシア語で『間に』 後に』 越える』の意のmetaに由来する接頭語)…」
『 『
と,「メディア 」【media】の項には「 mediumの複数形)媒体。

手段。特に,マス‐コミュニケーションの媒体。『マス・−』
」との記載がそ
れぞれある(乙1)。
(2) 本願商標の指定商品・指定役務は,前記第3,1,(2),イ記載のとおり
であるところ,判決下線付記のとおり,その中には「電子応用機械器具及び
その部品 」 「電子出版物 」 「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保
, ,
守 」 「電子計算機の貸与 」 「電子計算機用プログラムの提供」等のコンピ
, ,
ュータに関連する分野が含まれそれに関連する文献,インターネットの記載
には以下のとおりのものがある。
ア 「2005−’06年版最新パソコン用語事典 」(平成16年11月1
日第16版第1刷発行 発行所株式会社技術評論社)の「メタメディア
metamedia」の項には,「Alan Kay氏が提唱した概念。
各種メディアを統合したものとして想定された。コンピュータが,メディ
アを超えた最初のメディアだという考えである。」と記載されている(乙
2)。
イ 「超図解 パソコン用語事典2002年版」(2001年9月28日初
版発行 発行所株式会社エクスメディア)の「メタメディア metam
edia」の項には ,「Alan Curtis Kay氏が提唱した,
『コンピュータはあらゆるメディアを統合したものであり,また代替品に
なりうる』という概念のこと。」と記載されている(乙3)

ウ 「最新2002年版標準パソコン用語事典」(2001年8月6日第3
版第1刷 発行所株式会社秀和システム)の「メタメディア meta
media」の項には,「概念」との白抜き文字の記載のもと,「Alan
Curtis Kay アラン・ケイ)
( の提唱したコンピュータのこと 。
コンピュータは,メディアの垣根を越えたはじめての存在であるという考
えに基づく。コンピュータは複数のメディアを統合し,人間の使い易いか
たちで,個人で活用できるようになるという。 と記載されている 乙4)
」 ( 。
エ 「朝日現代用語『知恵蔵』2004 」(2004年1月1日発行 発行
所朝日新聞社)の「メタメディア[metamedia]」の項には,「超
メディア.様々なメディアを統合する超越的な媒体.」と記載されている
(乙5 )。
オ 「http://www.jiten.com/dicmi/docs/k34/23195.htm」「メタメディア−マルチ
メディア/インターネット事典」のタイトルの下 ,「メタメディア Me
ta−Media」の見出しで,「音声,テキスト,画像,ビデオなどの
既成メディアを統合し,人が活用できるようにするという考え方で,あら
ゆるメディアを超えたメディアとしてコンピュータが存在するという
Alan C. Kay によって提唱された概念です。」と記載されている(乙6)。
カ 「http://www.big.or.jp/~mio/ga/dic/cdm_1.4/x70/cd35211.html」 MioCity :

computing terms reference "terms"」のタイトルの下,【メタメディア】

[metamedia]」の見出しで,「画像,音声,テキストなど各種のメディアを
統合し,活用できるようにしたもの。アラン・ケイ( Alan Kay)により提唱
された概念で, コンピュータがメディアを超えた最初のメディアである』

という考え方。」と記載されている(乙7)。
キ 「 http://biography.sophia-it.com/content/%E3%82%A2%E3%83%A9%E3%83%
B3%E3%83%BB%E3%82%B1%E3%82%A4」「アラン・ケイ ( Alan Curtis
Kay)とは | 略歴・経歴・プロフィール | Smalltalk の開発者」のタイトル
の下,「アラン・ケイ 【英】 Alan Curtis Kay」の見出しで,「アラン・ケ
イとは,米国の科学者である。1940年,マサチューセッツ州スプリン
グフィールドに生まれた。オブジェクト指向プログラミング言語
『Smalltalk』の開発や,コンピューターはメディアを超えたメディアであ
るという『メタメディア』の概念を提唱したことなどで知られている。1
968年,理想的なコンピューターコンセプトとしての『 Dynabook』構
想を発表する。1972年に Xerox 社のパロアルト研究所に入る。パーソ
ナルコンピューターの原型となる『 ALTO』,オブジェクト指向プログラ
ミング言語である Smalltalk を開発した。…」等と記載されている(乙8)。
ク 「 http://www.online-fd.com/edunet/DB/024.html」「京都大学高等教育研究
開発推進センター 大学教育ネットワーク 創造・学習・コンピュータ
(喜多 一)」のタイトルの下 ,「授業の概要」として「◆授業のテーマと
目的:コンピュータはプログラミングすることで多様な機能を発揮できる
万能の機械です。そして,それは様々なメディアを包含するメタメディア
であり,創造のための強力なツールとなります。創造活動にとって,数学
や科学の知識は重要な素養ですが,コンピューターはそれを理解するため
の強力な支援ツールでもあります。…」と記載されている(乙9)。
ケ 「 http://www.socc.sfc.keio.ac.jp/~cyber/work/report/envinf/ws/society.html」
「Social Development」のタイトルの下,「第1章 社会変革 」「計算機か
ら思考支援ツールへ」として「…一方ケイは76年,『パーソナル・ダイ
ナミック・メディア』という報告書をまとめる。このなかで彼は ,『メタ
・メディア』という概念を提唱。コンピュータは言語を超えたメディアに
なりえる可能性を示唆する。コンピュータは可能性として,既存のメディ
アをシミュレートでき,さらにそれらを組み合わせたりできるので,メタ
なメディアであるということである。(2頁26行∼29行)と記載され

ている(乙10)。
コ「http://agrinfo.narc.affrc.go.jp/fs/cdrom/3syou/306st/t0602.htm」 3.6.2 マルチ

メディア」のタイトルの下, 2)
「( マルチメディアとは」として ,「・コ
ンピュータをあらゆるメディアの統合体として捉えること。これは抽象的
で分かりにくいが,コンピュータはプログラマブルであるために,ソフト
ウェアとして実現すれば,既存のメディアをすべてメタファーとして表現
できるとする考え方である。いわゆるメタメディアあるいはハイパーメデ
ィアという表現に近い。」と記載されている(乙11)。
サ 「 http://rblog-biz.japan.cnet.com/takahito/2007/04/post_78e3.html」 ブ ロ グ

パブリッシングネットワークとその進化系を考える(2)。−アート資本
主義」のタイトルの下,「■メタメディアとしてのブログ出版プラットフ
ォームの産業的インパクトを考えながら現実的に製品をデザインするこ
と」「ブログ出版取次業と言う以上,媒体開発や広告開発以外に,電子流

通やそのファイナンス支援など,『メタメディア』から生まれる様々な産
業を事前に想定しておくべきだろう。「■メタメディア生成の起源を
」 集
中と強み,社会変革の視点から見直してみる 」「■ブログ出版者向けのメ
タメディアとは? 新しいタイプの個人ポータルと言えるでしょう。」等
と記載されている(乙12)。
シ 1984年8月13日 日経産業新聞の17ページには, パソコン 3)
「 (
どのように付き合うか−まず入力方法を習得(入門先端技術)」の見出し
の下,「コンピューターとは何か−この問いに,ひとことで答えることは
できない。…情報を伝達するテレビ,ラジオ,電話,出版などのメディア
をまねすることもできる。あるときは電話になったり,本になったり,変
身自在である。この点では,スーパーメディアとかメタメディアという名
称がふさわしい。コンピューターは他の機械に比べて,この二つの特徴が
際立っている。 と記載されている(乙13,日経テレコン21,

https://telecom21.nikkei.co.jp/nt21 からの記事検索結果。。

ス 1995年12月16日 日本経済新聞 地方経済面(東北B ),24
ページには,「通産省のソフトウエア育成事業,コムテック,選ばれる。」
の見出しの下,「…同社の研究テーマは『エージェントモデルに基づく統
合メタメディア環境の構築』で,二年後をめどに一般利用者に分かりやす
く,操作しやすいマルチメディアの構築を目指す。 と記載されている(乙

14,日経テレコン21, https://telecom21.nikkei.co.jp/nt21 からの記事検
索結果。。

セ 2007年1月25日 産経新聞SANKEIWEB(産経新聞ウエブ
サイト, http://www.sankei.co.jp)には ,「メタメディアとしての携帯電話」
のタイトルの下 ,「あらゆるメディアを超越し,包含するメディアをメタ
メディアと言うが,携帯電話はメタメディアの道を突き進んでおり,携帯
電話という名称すらふさわしくないくらいだ。携帯電話が日本でメタメデ
ィア化したのは,居住空間が狭く,モノを置くスペースが限られ,通勤時
間が長い日本の事情が関係している。そのため,海外では日本と同じよう
には推移していない。」と記載されている(乙15)。
ソ 「http://www.ntticc.or.jp/Archive/2002/Art_Bit_Collection/Works/index_j.html」
「art.bit collection 2002年6月21日(金)−
8月11日(日)ギャラリーA,B」の展示作品「2.音や映像を扱うプ
ログラミング環境」のタイトルの下 ,「音や映像を取り込んだり,作りだ
したり,再構成するためのソフトウエア環境.ここでのコンピュータは,
様々なメディアを結合するメタメディアとして機能します .」と記載され
ている(乙16)。
(3) 以上の( 1)(2)の各事実を基に判断すると,本願商標は,ギリシャ語で「間
に」「後に」「越える」等を意味するmetaに由来する接頭語「Meta」
と,「媒体,手段,特にマス−コミュニケーションの媒体」を意味する「M
edia」の語を,その間に1文字分程度の間隔を空けて一連表記した商標
であり,その称呼は「メタメディア」と認められる。そして,これを一語と
し,あるいは一連表記した「metamedia」及び「メタメディア」な
いし「メタ・メディア」の語は,1976年(昭和51年)ころ,米国の科
学者でありオブジェクト指向プログラミング言語「Smalltalk」を開発したこ
とで知られるアラン・ケイが,「メタ・メディア」と称し,コンピュータが
メディアを統合し,あるいはメディアを超えた最初のメディアであると提唱
したことによって,そのような概念を指すものとしてコンピュータ関連分野
において広く知られるようになった。そして,その後もコンピュータ関連分
野においては上記概念あるいはコンピュータそのものを指す語として定着し
ているほか,場合によりメディアを統合しこれを超えるものを示す概念(例
えば上記(2)サ〔乙12〕,セ〔乙15〕など)としても,コンピュータ関連
分野及び関連するメディアの分野における需要者に対し審決時までに周知で
あったと認められる。そしてその理は,「M」の各文字を大文字とし,「Me
ta」と「Media」との間に間隔を置いた本願商標についても同様であ
るというべきである。
そうすると本願商標は,本件の指定商品・指定役務中のコンピュータに関
連する分野の商品又は役務(前記第3,1,(2)の判決下線付記部分)につ
いて使用されるときには,需要者が何人かの業務に係る商品ないし役務であ
ると認識することができないというべきであるから,自他識別標識としての
機能を果たし得ないというほかなく,商標法3条1項6号に該当する。
(4)ア 原告は,「Meta Media」の語は,指定商品中の特定の商品及
び指定役務中の特定の役務について,具体的品質・機能等及び特定の役務
の具体的質(内容)を表示するためのものとして使用されている事実はな
いし,また慣用商標的に,コンピュータの同義語として普通に使用されて
いるという事実も見出すことができないし,審決が需要者において本願商
標は概念ないし理念の実現を目指す商品又は役務であることを表したと認
識するにとどまるとした点についても,それが具体的にいかなる商品又は
役務を指すのか明らかではないと主張する。
しかし,原告が主張するように商品,役務の具体的な品質等を表すもの
ではなくとも,結局のところ本願商標が自他識別標識としての機能を果た
し得ないものであることに関しては上記(3)で説示したとおりであり,原
告の主張は採用することができない。
イ また原告は,「メタメディア」の語に関し,現在においてはコンピュー
タのみではなく,携帯電話もメタメディア化しているとするほか,テレビ
の世界においてもインタラクティブ(双方向)なメディアとしてメタメデ
ィアに進化したとの見方もあるとしてそれに沿う証拠を提出し(甲6),
「Meta Media」ないし「メタメディア」の語はコンピュータの
みを指すものではないとも主張する。
しかし,甲6のインターネットの記載( http://www.tatsuru.com/columns/
simple/26.html)をみても,「このときテレビは『情報を構成し,発信し,消
費に供する』メディアの段階から,『情報がどのようにして構成され,発
信され,商品化されるのかについての情報』を伝えるメタ・メディアの段
階に『進化』したのである。(2頁27行∼28行)とされているとおり,

「メタ・メディア」の語がメディアを超える概念として記載されているに
止まり ,「Meta Media」の語が自他識別機能を持つとの原告の
主張を裏付けるものとは言えないというべきである。加えて,上記(3)で
認定したとおり,現在において「Meta Media」ないし「メタメ
ディア」の語がコンピュータに限らずメディアを統合しこれを超えるもの
を示す概念等を指すものとして用いられているとしても,結局のところそ
れも抽象的な概念であって,本願商標が自他識別機能を有するとする根拠
とはなりえないものである。
また,上記( 2)アないしウ記載のとおり,コンピュータ関連の用語事典
等においては,「メタメディア」「metamedia 」「meta me
dia」の語は,コンピュータそのもの,あるいはコンピュータがメディ
アを統合しあるいはこれを超えるものとする概念であると記載されている
ことからすれば,本願商標の指定商品,指定役務に含まれるコンピュータ
関連分野においては,そのような概念として需用者に認識されることは上
記のとおりであって,原告の上記主張は採用することができない。
ウ さらに原告は,米国において「METAMEDIA」の商標が「録音(録
画)済みのカセットテープ・・・双方向のマルチメディア・音楽を搭載し
た電子計算機用ソフトウエア又はダウンロード可能な電子計算機用ソフト
ウエア,音楽とマルチメディアを合体する双方向の電子計算機,オンライ
ンを通じてダウンロード可能な音楽とマルチメディアを合体する双方向の
電子計算機用ソフトウエア」を指定商品及び(又は)役務として登録され
ており(甲7),米国の需要者はわが国以上に「MetaMedia」の
語に慣れ親しんでいる一方,英語が公用語でもない我が国では自他識別機
能がないとする理由はないとも主張する。
しかし,米国における商標の登録状況につきわが国において直接これを
参酌すべきとする根拠はないし,本願商標につき自他識別機能がないとす
る判断については上記( 3)のとおりである。原告の上記主張は採用するこ
とができない。
エ 原告は,本願商標の指定商品又は指定役務について「メタメディア」の
語が取引上,相当数の者により普通に使用されているとの事実,あるいは
特定の商品等を認識させる事実がないとの取引の実情を考慮すれば,本願
商標は自他識別標識としての機能を果たしうるとも主張する。
しかし,これまで「メタメディア」の語が本願商標の指定商品又は指定
役務について取引上使用されてきた事実,あるは特定の商品等を認識させ
るとの事実がないとしても,それが「Meta Media」の語につい
て自他識別標識としての機能を果たし得ないとする上記( 3)の認定を左右
するものではなく,原告の主張は採用できない。
3 結語
以上のとおり,原告主張の取消事由は理由がなく,本願商標が商標法3条1
項6号に該当するとした審決の認定判断に誤りはない。
よって,原告の請求は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判
決する。
知的財産高等裁判所 第2部
裁判長裁判官 中 野 哲 弘
裁判官 今 井 弘 晃
裁判官 田 中 孝 一

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