平成16(行ケ)42審決取消請求事件
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裁判所 |
東京高等裁判所
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裁判年月日 |
平成16年12月27日 |
事件種別 |
民事 |
法令 |
特許権
特許法29条2項4回 特許法17条の21回 特許法126条4項1回
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キーワード |
刊行物44回 分割35回 審決16回 実施10回
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主文 |
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事件の概要 |
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判決文
平成16年(行ケ)第42号 審決取消請求事件
平成16年12月20日口頭弁論終結
判 決
原 告 A
被 告 特許庁長官 小川洋
指定代理人 金公彦,大黒浩之,大野克人,立川功,大橋信彦,井出英一郎
主 文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 原告の求めた裁判
「特許庁が不服2002-20299号事件について平成15年12月15日に
した審決を取り消す。」との判決。
第2 事案の概要
本件は,特許出願をした原告が,拒絶査定を受けたので,査定に対する審判を請
求したところ,審判の請求は成り立たないとの審決があったため,審決の取消しを
求めた事案である。
1 特許庁における手続の経緯
(1) 原告は,平成6年4月19日,発明の名称を「ミキシングエレメント及びそ
の製造方法」とする特許出願をし,平成14年2月25日,発明の名称を「廃ガス
処理装置」に変更するなど,明細書を補正した。
(2) 原告は,平成14年8月27日付けの拒絶査定を受けたので,同年10月1
7日,拒絶査定に対する審判を請求し(不服2002-20299号事件として係
属),同年11月18日,明細書を補正(以下「本件補正」という。)した。
(3) 特許庁は,平成15年12月15日,本件補正を却下するとともに,「本件
審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,平成16年1月6日,その謄本を
原告に送達した。
2 特許請求の範囲の記載
(1) 本件補正前のもの
【請求項1】 流体の通流方向が鉛直下方のミキシングエレメントを備え液体と
気体とを混合して気体中の含有物質を液体中に移動させる静止型流体混合器と,こ
の静止型流体混合器の下方に配置され前記静止型流体混合器から排出された液体を
貯留すると共に新液が供給されるタンクと,このタンク内の液体を前記静止型流体
混合器の頭部に供給して前記静止型流体混合器に循環供給する循環手段と,前記静
止型流体混合器内の雰囲気から気体と液体とを分離して前記気体は排出し前記液体
は前記タンク内に返戻する気液分離手段とを有し,前記ミキシングエレメントは,
流体が通流する筒状の通路管と,前記通路管の内側に配設され前記通路管の内部に
複数個の流体通路を形成する羽根体と,を有し,前記羽根体は,前記通路管の中心
部に位置する部分が切欠かかれていて前記羽根体により仕切られた流体通路が前記
通路管の中心部で連通していることを特徴とする廃ガス処理装置。
【請求項2】 流体の通流方向が鉛直下方のミキシングエレメントを備え液体と
気体とを混合して気体中の含有物質を液体中に移動させる静止型流体混合器と,こ
の静止型流体混合器の下方に配置され前記静止型流体混合器から排出された液体を
貯留すると共に新液が供給されるタンクと,このタンク内の液体を前記静止型流体
混合器の頭部に供給して前記静止型流体混合器に循環供給する循環手段と,を有す
る1ユニットを複数ユニット鉛直方向に連結して配置し,前記タンク内の液体をそ
の下方のユニットの静止型流体混合器の頭部に供給する配管を有し,前記ミキシン
グエレメントは,流体が通流する筒状の通路管と,前記通路管の内側に配設され前
記通路管の内部に複数個の流体通路を形成する羽根体と,を有し,前記羽根体は,
前記通路管の中心部に位置する部分が切欠かかれていて前記羽根体により仕切られ
た流体通路が前記通路管の中心部で連通していることを特徴とする廃ガス処理装
置。
(2) 本件補正後のもの(下線を付した部分が補正箇所である。)
【請求項1】 流体の通流方向が鉛直下方のミキシングエレメントを備え液体と
気体とを混合して気体中の含有物質を液体中に移動させる静止型流体混合器と,こ
の静止型流体混合器の下方に配置され前記静止型流体混合器から排出された液体を
貯留すると共に新液が供給されるタンクと,このタンク内の液体を前記静止型流体
混合器の頭部に供給して前記静止型流体混合器に循環供給する循環手段と,前記静
止型流体混合器内の雰囲気から気体と液体とを分離して前記気体は排出し前記液体
は前記タンク内に返戻する気液分離手段とを有し,前記ミキシングエレメントは,
流体が通流する筒状の通路管と,前記通路管の内側に配設され前記通路管の内部に
複数個の流体通路を形成する羽根体と,を有し,前記羽根体は,前記通路管の中心
部に位置する部分が切り欠かれていて前記羽根体により仕切られた流体通路が前記
通路管の中心部で連通しており,前記羽根体と筒状の前記通路管とは,夫々別体で
成形した後,前記羽根体を前記通路管の内面に接合して組み立てられていることを
特徴とする廃ガス処理装置。
【請求項2】 流体の通流方向が鉛直下方のミキシングエレメントを備え液体と
気体とを混合して気体中の含有物質を液体中に移動させる静止型流体混合器と,こ
の静止型流体混合器の下方に配置され前記静止型流体混合器から排出された液体を
貯留すると共に新液が供給されるタンクと,このタンク内の液体を前記静止型流体
混合器の頭部に供給して前記静止型流体混合器に循環供給する循環手段と,を有す
る1ユニットを複数ユニット鉛直方向に連結して配置し,前記タンク内の液体をそ
の下方のユニットの静止型流体混合器の頭部に供給する配管を有し,前記ミキシン
グエレメントは,流体が通流する筒状の通路管と,前記通路管の内側に配設され前
記通路管の内部に複数個の流体通路を形成する羽根体と,を有し,前記羽根体は,
前記通路管の中心部に位置する部分が切り欠かれていて前記羽根体により仕切られ
た流体通路が前記通路管の中心部で連通しており,前記羽根体と筒状の前記通路管
とは,夫々別体で成形した後,前記羽根体を前記通路管の内面に接合して組み立て
られていることを特徴とする廃ガス処理装置。」
3 審決の理由の要旨
審決の理由は,以下のとおりであるが,要するに,本件補正後の請求項1に記載
された発明(以下「本願補正発明1」という。)は,引用刊行物に記載された発明
に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条
2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができないものであっ
て,本件補正は,特許法159条1項において準用する同法53条1項の規定によ
り却下すべきものであり,また,本件補正前の請求項1に記載された発明(以下
「本願発明1」という。)は,引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容
易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許
を受けることができない,というのである。
(1) 本件補正についての補正却下の決定
ア 補正の目的の適否・新規事項の有無について
本件補正は,特許法17条の2第3項及び第4項2号の規定に適合する。
イ 独立特許要件について
そこで,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明1」とい
う。)が,特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについ
て検討する。
(ア) 引用刊行物記載の発明
本件出願の日前である平成5年7月2日に頒布された「特開平5-168882
号公報」(本訴甲3。以下「引用刊行物」という。)の記載に基づいて,引用刊行
物に記載された発明を,本願請求項1の記載に則って記載すると,引用刊行物に
は,
「流体の通流方向が鉛直下方の物質移動装置を備え液体と気体とを混合して気体中
の含有物質を液体中に移動させる排ガス処理装置と,この排ガス処理装置の下方に
配置され前記排ガス処理装置から排出された液体を貯留すると共に新液が供給され
るタンクと,このタンク内の液体を前記排ガス処理装置の頭部に供給して前記排ガ
ス処理装置に循環供給するポンプと,前記タンク内の雰囲気から気体と液体とを分
離して前記気体は排出し前記液体は前記タンク内に返戻する気液分離装置とを有
し,前記物質移動装置は,流体が通流する筒状の通路管と,前記通路管の内側に配
設され前記通路管の内部に複数個の流体通路を形成する羽根体と,を有し,前記羽
根体は,前記通路管の中心部に位置する部分が切り欠かれていて前記羽根体により
仕切られた流体通路が前記通路管の中心部で連通しており,前記羽根体と筒状の前
記通路管とは,夫々別体で成形した後,前記羽根体を前記通路管の内面に接合して
組み立てられていることを特徴とする排ガスの処理装置」の発明(以下「引用刊行
物記載の発明」という)が記載されているといえる。
(イ) 対比
引用刊行物(6)の記載からみて,引用刊行物記載の「排ガスの処理装置」は,
「本発明を,SiCl4,SiH2Cl2,SiH4,SiF4,PH3,AsH3,B2H6等の光ファイバー製造工
場,半導体製造工場から排出される排ガスの処理装置に適用した場合の実施例」し
たものであるから,「廃ガス処理装置」に係るものである。
(判決注:ここで引用された「引用刊行物(6)」の該当部分は,次のとおり)
「図4は,本発明を,SiCl4,SiH2Cl2,SiH4,SiF4,PH3,AsH3,B2H6等の光ファイバ
ー製造工場,半導体製造工場から排出される排ガスの処理装置に適用した場合の実
施例を示すブロック図である。排ガスは,本発明の実施例に係る物質移動装置11
を配置した排ガス処理装置12内に導入されてその排ガス中のSiCl4,SiH4等の物質
は気体と液体との混合接触により気相側から液相側に移動される。排ガス処理装置
12には,その下方に配設されたタンク15が連結されており,このタンク15は
デミスター,サイクロン又は充填塔等の気液分離装置16に連結されている。この
気液分離装置16において気体と液体とが分離され,液休(「液体」の誤記と認め
られるので,以下「液体」と認定する)はタンク15に返戻される。この気液分離
装置16からの排出ガスは排風機17を介して大気中に放出される。タンク15内
の水溶液は適宜バルブ18,19を開にして排水処理工程に排出されると共に,適
宜タンク15内に新液が補給される。処理装置12には,その頭部にスプレーノズ
ル13が配設されており,このノズル13にはポンプ14によりタンク15内の液
体が供給される。従って,この液体はノズル13により処理装置12内に噴射さ
れ,次いでタンク15内に集められた後,ポンプ14によってノズル13に供給さ
れるというように,循環使用される。この液体は,排ガス中の物質により適宜,酸
性又はアルカリ性等の水溶液が選択使用される。次に,処理装置12の構造につい
て説明する。この処理装置12内には,図1に示すように,螺旋状の右捻り及び左
捻りの羽根体を所定位置に複数個配置して構成される物質移動装置1が配設されて
いる。このように構成された排ガス処理装置12においては,SiH4,SiCl4,PH3等を
含有する排ガスが処理装置12の上部から処理装置12内に供給される。また,ポ
ンプ14によりタンク15から汲み上げられた水溶液が処理装置12の頭部に配設
されたスプレーノズル13を介して処理装置12内に噴射される。この排ガス及び
水溶液は,物質移動装置11内を並流で通流する間に螺旋状に右及び左に回転す
る。排ガス及び水溶液は,分割,合流,転移,せん断作用を繰り返しながら,気体
と液体とが高効率で混合接触される。これにより,排ガス中のSiH4,SiCl4等の物質
は,液体との化学反応により,水溶液中に溶解,吸収される。また,この化学反応
により生成する微細なSiO2粒子は水溶液中に捕捉される。吸収,捕捉された物質
は,水溶液と共に下方に配設されたタンク15内に集められる。排ガスは気液分離
装置16に送給され,ガス気流中に存在する小径の飛沫は気液分離装置16により
ガスと液体とに分離され,液体はタンク15内に返戻される。なお,この気液分離
装置16の頭部又は下部にスプレーノズルを配設して,このノズルを介して水溶液
を装置16内に噴射することにより,含有物質の捕集効率が一層高くなる。又,保
守管理も容易になる。タンク15内の水溶液はポンプ14により循環使用される。
タンク15内の水溶液がSiO2粒子,塩酸等を含有してその濃度が高くなると,バル
ブ18,19を開にすることにより,タンク15内の水溶液は適宜排水処理工程に
排出される。また,タンク15内には,適宜新液が補給される。SiH4,SiCl4等の物
質が除去された清浄な排ガスは排風機17により大気中に放出される。」
(以上,審決の「引用刊行物(6)」の該当部分)
そして,(ア)に記載のとおり,引用刊行物記載の発明における「物質移動装置」
は,「流体の通流方向が鉛直下方」であって,「流体が通流する筒状の通路管と,
前記通路管の内側に配設され前記通路管の内部に複数個の流体通路を形成する羽根
体と,を有し,前記羽根体は,前記通路管の中心部に位置する部分が切り欠かれて
いて前記羽根体により仕切られた流体通路が前記通路管の中心部で連通しており,
前記羽根体と筒状の前記通路管とは,夫々別体で成形した後,前記羽根体を前記通
路管の内面に接合して組み立てられている」ものであり,「排ガス処理装置」は,
「物質移動装置を備え液体と気体とを混合して気体中の含有物質を液体中に移動さ
せる」ものであるから,当該「物質移動装置」及び「排ガス処理装置」は,本願補
正発明1における「ミキシングエレメント」及び「静止型流体混合器」にそれぞれ
相当する。
また,引用刊行物記載の発明における「タンク」,「ポンプ」及び「気液分離装
置」は,本願補正発明1における「タンク」,「循環手段」及び「気液分離手段」
にそれぞれ相当する。
そうすると,本願補正発明1と引用刊行物記載の発明とを比較すると,両者は,
「流体の通流方向が鉛直下方のミキシングエレメントを備え液体と気体とを混合し
て気体中の含有物質を液体中に移動させる静止型流体混合器と,この静止型流体混
合器の下方に配置され前記静止型流体混合器から排出された液体を貯留すると共に
新液が供給されるタンクと,このタンク内の液体を前記静止型流体混合器の頭部に
供給して前記静止型流体混合器に循環供給する循環手段と,気体と液体とを分離し
て前記気体は排出し前記液体は前記タンク内に返戻する気液分離手段とを有し,前
記ミキシングエレメントは,流体が通流する筒状の通路管と,前記通路管の内側に
配設され前記通路管の内部に複数個の流体通路を形成する羽根体と,を有し,前記
羽根体は,前記通路管の中心部に位置する部分が切り欠かれていて前記羽根体によ
り仕切られた流体通路が前記通路管の中心部で連通しており,前記羽根体と筒状の
前記通路管とは,夫々別体で成形した後,前記羽根体を前記通路管の内面に接合し
て組み立てられていることを特徴とする廃ガス処理装置」である点で一致し,前者
においては,「気液分離手段」が「静止型流体混合器内の雰囲気から気体と液体と
を分離」するものであるのに対して,後者においては「気液分離装置」が「タンク
内の雰囲気から気体と液体とを分離」するものである点で相違している。
(ウ) 審決の判断
上記相違点について検討すると,引用刊行物記載の発明における「気液分離装
置」は,「排ガス中のSiH4,SiCl4等の物質」が「水溶液中に溶解,吸収」
され,「微細なSiO2粒子」が「水溶液中に捕捉」された後の「排ガス」が送給
されるものであって,「ガス気流中に存在する小径の飛沫」を「ガスと液体とに分
離」するものである。
すなわち,引用刊行物記載の発明の「気液分離装置」は,排ガス処理されて浄化
された後のガスの「ガス気流中に存在する小径の飛沫」を「ガスと液体とに分離」
するものである。
そしてその場合,当該「気液分離装置」を,処理後のガスが貯留する部分の雰囲
気から気体と液体とを分離するよう構成すべきことは,当業者にとって明らかであ
る。
また,引用刊行物記載の発明における排ガス処理されて浄化された後のガスが貯
溜する部分は,装置の構成,装置内におけるガスの流通方向等により「タンク」内
あるいは「排ガス処理装置」内等に変化し得るものであるが,そのような変化によ
り何ら格別な効果を奏するものでもないから,当該部分を装置内のどの部位に設け
るかは,装置の設計時に当業者が適宜選択し得る設計的事項であるといえる。
そうすると,引用刊行物記載の発明において,「気液分離装置」を「排ガス処理
装置内の雰囲気から気体と液体とを分離」するものとすることは,当業者が必要に
応じて適宜なし得る設計的事項であるといえ,故に,本願補正発明1は,引用刊行
物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであ
る。
(エ) 独立特許要件のむすび
したがって,本願補正発明1は,引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が
容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特
許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。
ウ 補正却下の決定のむすび
以上のとおりであるから,本件補正は,特許法17条の2第5項により同条第4
項2号において準用する特許法126条4項の規定に適合しないものであるから,
上記手続補正は,特許法159条1項において準用する特許法53条1項の規定に
より却下すべきものである。
(2) 本願発明について
ア 引用刊行物記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は,前記(1)イ(ア)に記
載したとおりである。
イ 対比・判断
本願発明1は,本願補正発明1から,「ミキシングエレメント」の限定事項であ
る「前記羽根体と筒状の前記通路管とは,夫々別体で成形した後,前記羽根体を前
記通路管の内面に接合して組み立てられている」という構成を省いたものである。
そうすると,本願発明1の構成要件を全て含み,更に他の構成要件を付加したも
のに相当する本願補正発明1が,前記(1)イ(ウ)に記載したとおり,引用刊行物に記
載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,
本願発明1も,同様の理由により,引用刊行物に記載された発明に基づいて,当業
者が容易に発明をすることができたものである。
ウ むすび
以上のとおり,本願発明1は,引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が
容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特
許を受けることができない。
第3 当事者の主張の要点
1 原告主張の取消事由
審決は,引用刊行物に記載された発明の認定を誤り,本願補正発明1との一致点
の認定を誤った結果,相違点を看過し,上記相違点に基づく顕著な効果を看過し
て,本願補正発明1が,引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発
明をすることができたとの誤った判断をしたものであり,この判断の誤りは結論に
影響するから,審決は,取り消されるべきである。
(1) 本願補正発明1と引用刊行物に記載された発明との一致点の認定の誤り,相
違点の看過
審決は,引用刊行物に記載された「物質移動装置」が「羽根体と筒状の通路管と
は,夫々別体で成形した後,前記羽根体を前記通路管の内面に接合して組み立てら
れている」と認定し,本願補正発明1と引用刊行物に記載された発明とが,この点
で一致していると認定したが,誤りである。
引用刊行物に記載された「物質移動装置」は,複数個に分割された半円筒状の通
路管の内面に羽根体を接合した後,分割通路管の分割面同士を接合して円筒状にし
たものである。これに対し,本願補正発明1のミキシングエレメントは,「前記羽
根体と筒状の前記通路管とは,夫々別体で成形した後,前記羽根体を前記通路管の
内面に接合して組み立てられている」との構成(以下「構成a」という。)のとお
り,まず,羽根体と筒状(半割り状ではない)の通路管とを別体で成形し,その
後,筒状の通路管の内面に羽根体を接合するのであって,通路管の内面に羽根体を
接合するときには,通路管は筒状になっており,通路管の内面に羽根体を接合した
後に,通路管の分割面同士を接合するというような工程は存在しない。
(2) 顕著な効果の看過
引用刊行物に記載された「物質移動装置」は,半割りの通路管の内面に羽根体を
接合したものであるから,半割りの通路管を接合した後に,断面が真円とならない
ので,歪みが生じやすい上,羽根体を多数設けることができないので,混合効率の
向上に限界がある。これに対し,本願補正発明1のミキシングエレメントは,構成
aにあるとおり,羽根体と通路管とを別体で成形し,通路管の内面に羽根体を接合
して組み立てるのであって,その結果,製造が容易であること,大口径のものを容
易に低コストで製造することができること,混合効率を向上させるために,多数の
羽根体を通路管の内側に配設したものの製造が容易になることなど,引用刊行物に
記載された「物質移動装置」では得られない優れた効果を奏する。
2 被告の反論
審決の認定,判断に誤りはないから,原告の主張する取消事由は理由がない。
(1) 本願補正発明1と引用刊行物に記載された発明との一致点の認定の誤り,相
違点の看過に対して
引用刊行物に記載された「物質移動装置」は,複数個に分割された半円筒状の通
路管の内面に羽根体を接合した後,分割通路管の分割面同士を接合して円筒状にし
たものである。そして,構成aの記載それ自体に照らしても,さらに,本件補正後
の明細書の発明の詳細な説明及び図面の記載を参酌しても,本願補正発明1のミキ
シングエレメントにおける「通路管」が長手方向に分割されたものでないとはいえ
ず,また,本願補正発明1において,「羽根体」を「通路管」内面に接合した後
に,「通路管」の分割面同士を接合するような工程が存在しないともいえないか
ら,本願補正発明1は,複数個に分割された通路管の内壁面の所定の位置に,螺旋
状の「羽根体」を接合し,次に,分割された「通路管」同士を「分割面」で接合し
て製造する方法を含むものである。
そうすると,引用刊行物に記載された「物質移動装置」も,また,本願補正発明
1の「構成a」を有することになるのである。
(2) 顕著な効果の看過に対して
本願補正発明1のミキシングエレメントと引用刊行物に記載された「物質移動装
置」とは,構成が相違するものではないから,本願補正発明1が顕著な効果を奏す
るということはできない。
第4 当裁判所の判断
1 本願補正発1明と引用刊行物に記載された発明との一致点の認定の誤り,相
違点の看過について
(1) 引用刊行物(甲3)には,「【請求項7】 長手方向に複数個に分割された
通路管の内壁部に複数個の螺旋状の羽根体を所定の位置に接合する工程と,この通
路管の分割面同士を接合する工程とを有していることを特徴とする物質移動装置の
製造方法」(1欄20ないし23行)と記載され,その製造方法について,「先
ず,複数個に分割された半円筒状の通路管2a,2bの内壁面の所定の位置に,螺
旋状の羽根体3,4を接着,溶接等の手段により接合し,次に,半円筒状の通路管
2a,2b同士を分割面8で溶接等の手段により接合する」(3欄40ないし44
行)と記載されている。そして,添付された【図2】及び【図3】(物質移動装置
の断面図)には,分割面8が記載されている。
以上の記載によれば,引用刊行物の物質移動装置は,羽根体の接合時における通
路管の形状が,半円筒など円筒を複数個に分割した形状のものであって,それらの
内壁部に羽根体を接合し,それらの分割面同士を接合して筒状の通路管とする方法
によって製造されるものであると認められるところ,このような引用刊行物の物質
移動装置の製造方法は,装置における通路管の形状が筒状となるように製造する方
法であると把握することができる。
(2) ところで,原告は,本願補正発明1のミキシングエレメントにおいては,ま
ず,羽根体と筒状(半割り状ではない)の通路管とを別体で成形し,その後,筒状
の通路管の内面に羽根体を接合するのであって,通路管の内面に羽根体を接合する
ときには,通路管は筒状になっており,通路管の内面に羽根体を接合した後に,通
路管の分割面同士を接合するというような工程は存在しないと主張する。そこで,
以下,本願補正発明1のミキシングエレメントにおいて,羽根体の接合時における
通路管の形状が筒状のものに限定されるものであるか否かについて,判断する。
ア 構成a,すなわち「前記羽根体と筒状の前記通路管とは,夫々別体で成形し
た後,前記羽根体を前記通路管の内面に接合して組み立てられている」との構成の
「筒状の前記通路管」は,その前に記載されたミキシングエレメントにおける「流
体が流通する筒状の通路管」に対応することは明らかであるから,構成aは,「前
記羽根体とミキシングエレメントにおける流体が流通する筒状の通路管とは,夫々
別体で成形した後,前記羽根体を前記通路管の内面に接合して組み立てられてい
る」と言い換えることができる。
そして,言い換えた構成aの「前記通路管」は,「ミキシングエレメントにおけ
る流体が流通する筒状の通路管」を示すものであるのか,「夫々別体で成形した後
の通路管」を示すものであるのかについては必ずしも明らかではないところ,いず
れであるとしても,構成aには,羽根体の接合時における通路管の形状が筒状であ
ることを規定する記載はない。
そうであれば,構成aのミキシングエレメントの製造方法は,通路管の形状に関
しては,ミキシングエレメントにおける通路管の形状が筒状であることを規定する
にとどまるものであって,構成aの記載自体からは,羽根体の接合時における通路
管の形状が筒状のものに限定されると認めることはできない。もとより,特許請求
の範囲の他の記載にもそのような限定はない。
イ そこで,さらに,本願補正明細書の記載において,羽根体の接合時の通路管
の形状が筒状のものに限定されると認められるか否かについて,検討する。
(ア) 本願補正明細書(甲2,4,8)の発明の詳細な説明及び図面には,ミキシ
ングエレメントの製造方法に関して,補正後の請求項1及び2の構成を記載する段
落【0012】,段落【0013】のほか,以下の記載がある。
a 【作用】の項の記載
「従来のミキシングエレメントは,筒状の通路管と螺旋状の羽根体とが一体的に
形成されている。これに対し,本発明のミキシングエレメントは,筒状の通路管と
螺旋状の羽根体とは夫々別体で形成されているので,混合効率を向上させる羽根体
の個数を容易に増設させることができ,また,大口径の流体混合器の製造が容易に
なり,製造コストも安価となる。」(段落【0016】)
「一方,本発明に係る,ミキシングエレメントの製造方法においては,筒状の通
路管と螺旋状の羽根体とは,夫々別体で製造される。筒状の通路管の内側に螺旋状
の羽根体を溶接,接着及び溶着,係止等の手段により接合されることで,容易にミ
キシングエレメントが製造される。」(段落【0017】)
「このようにして製造された複数個のミキシングエレメントをパイプ内に配置,
またはミキシングエレメント同士を接合することにより静止型流体混合器が完成す
る。本発明によれば,混合効率の極めて高い流体混合器が容易にそして低コストで
製造できる。また,大口径の流体混合器も低コストで製造できる。」(段落【00
19】)
b 【実施例】の項の記載
「次に,本発明に係るミキシングエレメントの製造方法の1実施例について添付
の図面を参照して具体的に説明する。」(段落【0056】)
「このミキシングエレメント1,8の製造方法は,筒状の通路管2及び9と,こ
の通路管2及び9の内側に,別体で製造された螺旋状の羽根体3,4,及び10,
11とを接合して製造される。」(段落【0057】)
「また,長手方向に複数個に分割された筒状の通路管92a,92bと,この通路
管92a,92bの内側に,別体で製造された複数個の螺旋状の羽根体93,94と
を接合し,この分割された通路管92a,92bの分割面95a,95b同士を接合
してミキシングエレメント96を製造してもよい。この製造方法により,多数個の
羽根体を有するミキシングエレメントが容易に製造される。」(段落【005
8】)
「次に,図24は,90°右回転型ミキシングエレメントの製造過程を説明する
ための部分拡大説明図である。所望の直径及び長さを有する筒状の通路管と別体で
製造された羽根体とを接合して,本発明に係るミキシングエレメントを製造する方
法について,図24を参照して具体的に説明する。」(段落【0067】)
「前記ミキシングエレメント(図1参照)と同様に,ミキシングエレメント11
1は,筒状の通路管112の内側に90°右回転型の螺旋状の羽根体113を有し
ている。羽根体113は,通路管112の内側に,溶接又は接着,あるいは溶着又
は係止等の手段により,接合部114に接合される。…
前記の製造方法により,ミキシングエレメントは容易に製造される。又,大口径
のミキシングエレメントが容易に低コストで製造可能となる。更に,混合効率の向
上に寄与する多数の羽根体を筒状の通路管の内側に配設したミキシングエレメント
(図25参照)の製造が容易になる。この場合,通路管の長手方向の全長に亘って
複数個に分割された通路管を使用することで,更にミキシングエレメント115の
製造は容易に低コストで製造可能となる。」(段落【0068】)
そして,図16ないし図20には,段落【0056】ないし段落【0058】に
記載された内容が図で示され,図24,図25には,段落【0067】,段落【0
068】に記載された内容が図で示されている。
c 【発明の効果】の項の記載
「別体で羽根体を製造することにより,大口径の混合器の製造が極めて容易に,
低コストで製造できる。」(段落【0070】)
(イ) 以上の記載に基づき検討する。
a 【作用】の項の記載について
段落【0016】は,「筒状の通路管と螺旋状の羽根体とが一体的に形成されて
いる」従来のミキシングエレメントに対して,「本発明のミキシングエレメント
は,筒状の通路管と螺旋状の羽根体とは夫々別体で形成されている」として,本願
補正発明1は,ミキシングエレメントの通路管と羽根体とが「一体的」ではなく,
「夫々別体で形成されている」ことに改良点があり,次いでその改良点による作用
が記載されている。そして,ここに記載されている作用は,ミキシングエレメント
における通路管の形状が筒状のものであれば足りるから,段落【0016】の記載
があることをもって,羽根体の接合時における通路管の形状が筒状のものに限定さ
れるということはできない。
また,段落【0017】に記載された2か所の「筒状の通路管」との記載は,ミ
キシングエレメントにおける通路管の形状が筒状であることを意味するものである
とも,羽根体の接合時における通路管の形状が筒状であることを意味するものであ
るとも考えられるから,段落【0017】の記載があることをもって,羽根体の接
合時における通路管の形状が筒状のものに限定されるということはできない。
さらに,段落【0019】に記載された作用は,ミキシングエレメントにおける
通路管の形状が筒状のものであれば足りるから,段落【0019】の記載があるこ
とをもって,羽根体の接合時における通路管の形状が筒状のものに限定されるとい
うこともできない。
b 【実施例】の項の記載について
段落【0057】には,筒状の通路管2及び9の内側に,別体で製造された羽根
体とを接合してミキシングエレメントを製造する方法が記載されており,図16,
17には,筒状の通路管2,9が切れ目のない円筒であることが記載されている。
そうすると,ここには,羽根体の接合時における通路管の形状が筒状であるミキシ
ングエレメントの製造方法が記載されているということができる。
しかし,段落【0056】ないし段落【0058】の記載及び図16ないし図2
0は,「本発明のミキシングエレメントの製造方法の1実施例」,すなわち,本願
補正発明1のミキシングエレメントの製造方法の1つの態様を具体的に説明するも
のであるから,この中に,羽根体の接合時における通路管の形状が筒状であるミキ
シングエレメントの製造方法が記載されているとしても,このことから,直ちに,
羽根体の接合時における通路管の形状が筒状のものに限定されると認めることはで
きない。
そして,段落【0058】には,「長手方向に複数個に分割された筒状の通路管
92a,92b」の内側に,別体で製造された螺旋状の羽根体とを接合してミキシ
ングエレメントを製造する方法が記載されていて,筒状の通路管92a,92bが
「長手方向に複数個に分割された」ものであって,それらの「分割面95a,95
b同士を接合」することが明記されており,かつ,図20には,通路管92a,9
2bが半円筒であることが図示されているから,これらの記載によれば,「本発明
に係るミキシングエレメントの製造方法の1実施例」の中には,羽根体の接合時に
おける通路管の形状が筒状でないミキシングエレメントの製造方法が含まれている
と認められる。
さらに,段落【0067】,段落【0068】及び図24,図25は,「所望の
直径及び長さを有する筒状の通路管と別体で製造された羽根体とを接合して,本発
明に係るミキシングエレメントを製造する方法」について,具体的に説明するもの
であるが,段落【0068】には,「更に,…多数の羽根体を筒状の通路管の内側
に配設したミキシングエレメント(図25参照)の製造が容易になる。この場合,
通路管の長手方向の全長に亘って複数個に分割された通路管を使用することで,更
にミキシングエレメント115の製造は容易に低コストで製造可能となる。」と記
載されており,この記載によれば,「筒状の通路管と別体で製造された羽根体とを
接合して,本発明に係るミキシングエレメントを製造する方法」には,羽根体の接
合時における通路管の形状が「通路管の長手方向の全長に亘って複数個に分割され
た」もの,例えば半円筒(図24,25)であるミキシングエレメントの製造方法
が包含されることが認められる。
そうすると,本願補正発明1のミキシングエレメントの製造方法は,通路管の形
状に関しては,ミキシングエレメントにおける形状が筒状であることを規定するに
とどまり,羽根体の接合時における通路管の形状が筒状のものに限定されるという
ことはできない。
c 【発明の効果】の項において
段落【0070】の記載は,「別体で羽根体を製造すること」の効果をいうにす
ぎないから,この記載があるからといって,羽根体の接合時における通路管の形状
が筒状のものに限定されるということはできない。
(ウ) そうすると,本願補正明細書の発明の詳細な説明及び図面の記載を参酌して
も,本願補正発明1のミキシングエレメントの製造方法は,通路管の形状に関して
は,ミキシングエレメントにおける形状が筒状であることを規定するにとどまり,
羽根体の接合時における通路管の形状が筒状のものに限定されるとは認めることが
できない。
ウ 以上によれば,本願補正発明1のミキシングエレメントは,ミキシングエレ
メントにおける通路管の形状が筒状のものである製造方法で製造されるものである
と認められる。そして,上記(1)のとおり,引用刊行物の物質移動装置は,羽根体の
接合時における通路管の形状が,半円筒など円筒を複数個に分割した形状のもので
あって,それらの内壁部に羽根体を接合し,それらの分割面同士を接合して筒状の
通路管とする方法によって製造されるものであるところ,このような引用刊行物の
物質移動装置の製造方法は,装置における通路管の形状が筒状のものになるように
製造する方法であると把握することができるのであって,本願補正発明1の構成a
の記載に即して表現すれば,「羽根体と筒状の通路管とは,夫々別体で成形した
後,前記羽根体を前記通路管の内面に接合して組み立てられている」ものというこ
とができる。
そうすると,本願補正発明1と引用刊行物に記載された発明とが構成aにおいて
一致するとした審決の認定に,誤りはない。
(3) なお,原告は,本件補正明細書の発明の詳細な説明及び図面に,羽根体の接
合時における通路管の形状が,筒状のものと半円筒など長手方向に分割された形状
のものとの両方が記載されているとしても,後者は,補正により削除された発明に
ついて記載されたものであるから,これを参酌することは誤りであると主張する。
確かに,甲2,4,及び8によれば,平成14年2月25日の補正及び本件補正
において,例えば,本願明細書の請求項6,段落【0014】,段落【0018】
を削除するなど,羽根体の接合時における通路管の形状が長手方向の全長に亘って
複数個に分割された形状である方法についての記載部分の一部を削除していること
が認められる。しかし,本願補正発明1の実施例に関する段落【0068】の記載
は上記補正によっても維持されているし,構成aのミキシングエレメントの製造方
法は,上記(2)のとおり,通路管の形状に関しては,ミキシングエレメントにおける
通路管の形状が筒状であることを規定するにとどまるものであって,構成aの記載
自体からは,羽根体の接合時における通路管の形状が筒状のものに限定されると認
めることはできず,このことは,本願補正明細書の発明の詳細な説明及び図面の記
載からも裏付けられるのである。
そうすると,半円筒など長手方向に分割された形状のものが,補正により削除さ
れた発明のみについて記載されたものであるということはできず,原告の上記主張
は,採用することができない。
(4) したがって,取消事由(1)は,理由がない。
2 顕著な効果の看過について
原告は本願補正発明1のミキシングエレメントの製造方法が羽根体の接合時にお
ける通路管の形状が筒状である製造方法で製造されたものであることを前提に,審
決は本願補正発明1の顕著な効果を看過すると主張する。
しかし,本願補正発明1のミキシングエレメントの製造方法は上記製造方法に限
定されるものではないことは,上記1のとおりである。本願補正発明1のミキシン
グエレメントは,引用刊行物の物質移動装置と同じ製造方法によるものであると認
められるのであるから,この製造方法の差異に基づく効果に差異があるとは認めら
れない。
原告の主張は,本願補正発明1に包含される1実施例に基づく効果をいうにすぎ
ないから,これを採用することはできず,したがって,取消事由(2)も,理由がな
い。
第5 結論
以上のとおりであって,原告の主張する審決取消事由は理由がないから,原告の
請求は棄却されるべきである。
東京高等裁判所知的財産第4部
裁判長裁判官 塩 月 秀 平
裁判官 田 中 昌 利
裁判官 髙 野 輝 久
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