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平成15(行ケ)269特許取消決定取消請求事件

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裁判所 東京高等裁判所
裁判年月日 平成16年11月22日
事件種別 民事
法令 特許権
特許法29条の22回
キーワード 審決6回
特許権2回
訂正審判1回
優先権1回
主文
事件の概要

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判決文

平成15年(行ケ)第269号 特許取消決定取消請求事件
平成16年11月15日口頭弁論終結
     判    決
 原 告 メルク・パテント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフ
ツング
 訴訟代理人弁護士 清永利亮,弁理士 葛和清司,井上洋一
 被 告  特許庁長官 小川洋
 指定代理人 岩瀬眞紀子,板橋一隆,後藤圭次,一色由美子,大橋信彦,井出英
一郎
     主    文
 特許庁が異議2000-71142号事件について平成15年2月4日にした決
定中特許を取り消した部分を取り消す。
 訴訟費用は各自の負担とする。
     事実及び理由
 以下において特許請求の範囲を引用する場合,「および」は「及び」に,「また
は」は「又は」に統一して表記した。
第1 原告の求めた裁判
 主文第1項同旨の判決。
第2 事案の概要
 1 特許庁における手続の経緯
 原告は,本件特許第2951400号「フルオロベンゼン誘導体及び液晶相」の
特許権者である。本件特許は,1990年9月3日(パリ条約による優先権主張1
989年9月6日,ドイツ国)を国際出願日として特許出願され,平成11年7月
9日に特許権の設定登録がされ,その後,特許異議の申立てがあり(異議2000
-71142号),取消しの理由が通知され,その指定期間内である平成13年3
月29日に訂正請求(後日取下げ)がなされた後,再度の取消しの理由が通知さ
れ,その指定期間内である平成14年9月17日に訂正請求がされた。
 平成15年2月4日,「訂正を認める。特許第2951400号の請求項1ない
し16及び19,20に係る特許を取り消す。同請求項17,18に係る特許を維
持する。」との決定があり,その謄本は同月26日原告に送達された。
 2 決定の理由の要点
 平成14年9月17日付け訂正は適法であるが,先願当初明細書(特願平1-5
4150号の願書に最初に添付された明細書)には,平成14年9月17日付け訂
正による請求項1記載の発明1ないし16及び19,20と同一の発明が記載され
ているので,これらは,特許法29条の2の規定により特許を受けることができな
い。
 一方,平成14年9月17日付け訂正による請求項17,18記載の発明に係る
特許については,特許異議申立ての理由及び証拠によっては,その特許を取り消す
ことができない。
 3 訂正審決の確定
 原告は,本訴提起後の平成16年8月30日,本件特許につき,特許請求の範囲
の減縮等を目的として,明細書の訂正をする審判を請求したところ(訂正2004
-39207号),平成16年10月8日,当該訂正を認める旨の審決があり確定
した。
 4 平成14年9月17日付け訂正による特許請求の範囲の記載(決定が基礎と
した特許請求の範囲の記載)
1.式I
              
〔式中,Rは,Hであり,あるいはRは,炭素原子1~15個を有するアルキル基
又はアルケニル基であり,この基は,非置換であるか,あるいは置換基として1個
のCN又はCF3を有するか,あるいは置換基として少なくとも1個のハロゲンを
有しており,そしてこれらの基中に存在する1個又は2個以上のCH2基は,場合
によりそれぞれ相互に独立して,O原子が相互に直接に結合しないものとして,-
O-,-S-, ,-CO-,-CO-O-,-O-CO-又は-O-CO-
O-により置き換えられていてもよく,A1及びA2は,それぞれ相互に独立して,
  (a)トランス-1,4-シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個のC
H2基又は隣接していない2個以上のCH2基はまた,-O-及び(又は)-S-に
より置き換えられていてもよい),
  (b)1,4-フェニレン基,
  (c)1,4-シクロヘキセニレン,1,4-ビシクロ〔2.2.2〕オクチ
レン,ピペリジン-1,4-ジイル,ナフタレン-2,6-ジイル,デカヒドロナ
フタレン-2,6-ジイル及び1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6
-ジイルよりなる群からの基
 であり,上記の基(a)及び基(b)は,場合によりCN又はフッ素により置換
されていてもよく,
 Z1及びZ2は,それぞれ相互に独立して,-CO-O-,-O-CO-,-CH2
O-,-OCH2-,CH2CH2-,-CH=CH-,-C≡C-又は単結合であ
り,あるいは基Z1及び基Z2のうちの一つはまた,-(CH2)4-又は-CH=C
H-CH2CH2-であることができ,
  Lは,Fであり,
  mは,0,1又は2であり,
  Yは,F又はClであり,そして
  Qは,単結合,-CF2-,-OCF2-又は-OCHF-である,ただし,次
の化合物を除く,
  (a)4-プロピル-4′-(3,5-ジフルオロ-4-デフルオロメトキシ
フェニル)-トランス,トランス-ビシクロヘキシル
 
式中R1はそれぞれ炭素原子1~10個を有するアルキル基である〕
  で示されるフルオロベンゼン誘導体。
2.式Iで示される化合物を液晶媒体の成分として使用する方法。
3.少なくとも2種の液晶成分を含有する液晶媒体であって,式Iで示される化合
物のうちの少なくとも1種を含有することを特徴とする液晶媒体。
4.式I″
    
〔式中,Rは,Hであり,あるいはRは,炭素原子1~15個を有するアルキル基
又はアルケニル基であり,この基は,非置換であるか,あるいは置換基として1個
のCN又はCF3を有するか,あるいは置換基として少なくとも1個のハロゲンを
有しており,そしてこれらの基中に存在する1個又は2個以上のCH2基は,場合
によりそれぞれ相互に独立して,O原子が相互に直接に結合しないものとして,-
O-,-S-, ,-CO-,-CO-O-,-O-CO-又は-O-CO-
O-により置き換えられていてもよく,
A1及びA2は,それぞれ相互に独立して,
  (a)トランス-1,4-シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個のC
H2基又は隣接していない2個以上のCH2基はまた,-O-及び(又は)-S-に
より置き換えられていてもよい),
  (b)1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個又は2個のCH基はま
た,Nにより置き換えられていてもよい),
  (c)1,4-シクロヘキセニレン,1,4-ビシクロ〔2.2.2〕オクチ
レン,ピペリジン-1,4-ジイル,ナフタレン-2,6-ジイル,デカヒドロナ
フタレン-2,6-ジイル及び1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6
-ジイルよりなる群からの基
であり,上記の基(a)及び基(b)は,場合によりCN又はフッ素により置換さ
れていてもよく,
Z1及びZ2は,それぞれ相互に独立して,-CO-O-,-O-CO-,-CH2O
-,-OCH2-,CH2CH2-,-CH=CH-,-C≡C-又は単結合であ
り,あるいは基Z1及び基Z2のうちの一つはまた,-(CH2)4-又は-CH=C
H-CH2CH2-であることができ,
  Lは,Fであり,
  mは,0,1又は2であり,
  Yは,F又はClであり,そして
  Qは,単結合,-CF2-,-OCF2-又は-OCHF-である,
 で示されるフルオロベンゼン誘導体の1種又は2種以上に加え,さらなる構成要
素として4~30種の成分を含有する液晶媒体。
5.さらなる構成要素が7~25種の成分であることを特徴とする,請求項4に記
載の液晶媒体。
6.さらなる構成要素が下記式1~5;
  R′-L-E-R″        1
  R′-L-COO-E-R″    2
  R′-L-OOC-E-R″    3
  R′-L-CH2CH2-E-R″  4
  R′-L-C≡C-E-R″    5
  式1,式2,式3,式4及び式5において,L及びEは同一又は異なることが
でき,相互に独立して,それぞれ,-Phe-,Cyc-,-Phe-Phe-,
-Phe-Cyc-,-Cyc-Cyc-,-Pyr-,-Dio-,-G-Ph
e-及び-G-Cyc-ならびにそれらの鏡像基からなる群からの二価の基であ
り,Pheは1,4-フェニレンであり(この基は非置換であるか,又はフッ素で
置換されている),Cycはトランス-1,4-シクロヘキシレン又は1,4-シ
クロヘキセニレンであり,Pyrはピリミジン-2,5-ジイル又はピリジン-
2,5-ジイルであり,Dioは1,3-ジオキサン-2,5-ジイルであり,そ
してGは2-(トランス-1,4-シクロヘキシル)-エチル,ピリミジン-2,
5-ジイル,ピリジン-2,5-ジイル又は1,3-ジオキサン-2,5-ジイル
であり,R′及びR″は相互に独立して,それぞれ,8個までの炭素原子を有する
アルキル,アルケニル,アルコキシ,アルコキシアルキル,アルケニルオキシ又は
アルカノイルオキシであるか,又は,R″は,-F,-Cl,-NCS又は-
(O)iCH3-(k+l)FkCll(式中,iは,0又は1であり,そしてk+l
は,1,2又は3である)である,
で示される化合物から選択されることを特徴とする,請求項4又は5に記載の液晶
媒体。
7.さらなる構成要素として,式1~5のうちの2つから選択される化合物を含有
することを特徴とする,請求項6に記載の液晶媒体。
8.LがCyc又はPheであり,EがPhe-Cycである構成要素を含有する
ことを特徴とする,請求項6に記載の液晶媒体。
9.LがPheであることを特徴とする,請求項8に記載の液晶媒体。
10.L及びEがCyc,Phe及びPyrからなる群から選択されたものである
式1~5の化合物の1種又は2種以上と,L及びEのうちのひとつの基がCyc,
Phe及びPyrからなる群から選択され,他の基が-Phe-Phe-,-Ph
e-Cyc-,-Cyc-Cyc-,-G-Phe-及び-G-Cyc-からなる
群から選択されたものである式1~5の化合物の1種又は2種以上とを同時に含む
ことを特徴とする,請求項6に記載の液晶媒体。
11.式I″の化合物を複数種含有することを特徴とする,請求項4~10のいず
れかに記載の液晶媒体。
12.式I″の化合物を3,4又は5種含有することを特徴とする,請求項11に
記載の液晶媒体。
13.(a)式I″の化合物1種又は2種以上を5~90%,
  (b)R″が-F,-Cl,-NCS又は-(O)iCH3-(k+l)FkCll
である式1~5から選択される化合物を10~80%(グループB)及び
  (c)R′及びR″が夫々互いに独立して,炭素原子1~8個を有するアルキ
ル,アルケニル,アルコキシ,アルコキシアルキル,アルケニルオキシ又はアルカ
ノイルオキシである式1~5から選択される化合物を0~30%(グループA)含
有することを特徴とする,請求項6に記載の液晶媒体。
14.L及びEのうちのひとつの基がフッ素で置換された1,4-フェニレンを含
む,式1~5から選択される化合物を含有することを特徴とする,請求項13に記
載の液晶媒体。
15.式I″の化合物とグループBの化合物とからなることを特徴とする,請求項
13に記載の液晶媒体。
16.式I″の化合物と式
    
の化合物とからなるものを除く,請求項4~15のいずれかに記載の液晶媒体。
17.式I″の化合物を40%より多く含有することを特徴とする,請求項4~1
6のいずれかに記載の液晶媒体。
18.式I″の化合物の割合が45~90%であることを特徴とする,請求項17
に記載の液晶媒体。
19.請求項3~18のいずれかに記載の液晶媒体を含有することを特徴とする,
液晶表示素子。
20.誘電体として,請求項3~18のいずれかに記載の液晶媒体を含有すること
を特徴とする,電気光学表示素子。
 5 訂正審判請求の訂正内容(特許請求の範囲の訂正箇所)
 設定登録時の特許請求の範囲の記載は省略するが,後記6における訂正後の特許
請求の範囲は,以下のように訂正されたものである。
(ⅰ)設定登録時の特許請求の範囲の請求項1における,
「(b)1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個又は2個のCH基はま
た,Nにより置き換えられていてもよい)」
を,
「(b)1,4-フェニレン基」
 と訂正する。
(ⅱ)設定登録時の特許請求の範囲の請求項1の末尾における,
 「式中R1はそれぞれ炭素原子1~10個を有するアルキル基である〕
  で示されるフルオロベンゼン誘導体。」
 を,
 「(式中R1はそれぞれ炭素原子1~10個を有するアルキル基である)
 (c)A1及びA2が,同一又は異なって,いずれもトランス-1,4-シクロヘキシレ
ン基,1,4-フェニレン基,ピリミジン-2,5-ジイル基又は1,3-ジオキサン-
2,5-ジイル基であり,かつQ-YがFである化合物,
 (d)A2が,1,4-シクロヘキセニレン基であり,かつQ-YがFである化合
物。〕
  で示されるフルオロベンゼン誘導体。」
 と訂正する。
(ⅲ)設定登録時の特許請求の範囲の請求項4の末尾における,
  「する液晶媒体。」
  を,
  「し,さらなる構成要素が下記式1~5;
     R′-L-E-R″         1
     R′-L-COO-E-R″     2
     R′-L-OOC-E-R″     3
     R′-L-CH2CH2-E-R″   4
     R′-L-C≡C-E-R″     5
   式1,式2,式3,式4及び式5において,L及びEは同一又は異なること
ができ,相互に独立して,それぞれ,-Phe-,Cyc-,-Phe-Phe
-,-Phe-Cyc-,-Cyc-Cyc-,-Pyr-,-Dio-,-G-
Phe-及び-G-Cyc-ならびにそれらの鏡像基からなる群からの二価の基で
あり,Pheは1,4-フェニレンであり(この基は非置換であるか,又はフッ素
で置換されている),Cycはトランス-1,4-シクロヘキシレン又は1,4-
シクロヘキセニレンであり,Pyrはピリミジン-2,5-ジイル又はピリジン-
2,5-ジイルであり,Dioは1,3-ジオキサン-2,5-ジイルであり,そ
してGは2-(トランス-1,4-シクロヘキシル)-エチル,ピリミジン-2,
5-ジイル,ピリジン-2,5-ジイル又は1,3-ジオキサン-2,5-ジイル
であり,R′及びR″は相互に独立して,それぞれ,8個までの炭素原子を有する
アルキル,アルケニル,アルコキシ,アルコキシアルキル,アルケニルオキシ又は
アルカノイルオキシであるか,又は,R″は,-F,-Cl,-NCS又は-
(O)iCH3-(k+l)FkCll(式中,iは,0又は1であり,そしてk+l
は,1,2又は3である)である,
  で示される化合物から選択され,
 (a)式I″の化合物1種又は2種以上を5~90%,
 (b)R″が-F,-Cl,-NCS又は-(O)iCH3-(k+l)FkCllで
ある式1~5から選択される化合物を10~80%(グループB)及び
 (c)R′及びR″が夫々互いに独立して,炭素原子1~8個を有するアルキ
ル,アルケニル,アルコキシ,アルコキシアルキル,アルケニルオキシ又はアルカ
ノイルオキシである式1~5から選択される化合物を0~30%(グループA)含
有し,
  しきい値電圧が,1.66V以下であることを特徴とする,液晶媒体。」
  と訂正する。
(ⅳ) 設定登録時の特許請求の範囲の請求項6及び請求項13を削除し,それぞ
れ以下の項数を繰り上げ「6,・・・13,・・・」と訂正する。
(ⅴ)設定登録時の特許請求の範囲の,
  1)請求項7中の,「請求項6」を,「請求項4」に,
  2)請求項8中の,「請求項6」を,「請求項4」に,
  3)請求項9中の,「請求項8」を,「請求項7」に,
  4)請求項10中の,「請求項6」を,「請求項4」に,
  5)請求項11中の「請求項4~10」を「請求項4~9」に,
  6)請求項12中の「請求項11」を「請求項10」に,
  7)請求項14中の「請求項13」を「請求項4」に,
  8)請求項15中の「請求項13」を「請求項4」に,
  9)請求項16中の「請求項4~15」を「請求項4~13」に,
  10)請求項17中の「請求項4~16」を「請求項4~14」に,
  11)請求項18中の「請求項17」を「請求項15」に,
  12)請求項19中の「請求項3~18」を「請求項3~16」に,
  13)請求項20中の「請求項3~18」を「請求項3~16」に,
 それぞれ訂正する。
 6 訂正審決による特許請求の範囲の記載(下線部分が,設定登録時からの訂正
箇所であり,そのうち2重下線部分は,前記4の平成14年9月17日付けの訂正
からの訂正箇所)
1.式I
   
 〔式中,Rは,Hであり,あるいはRは,炭素原子1~15個を有するアルキル
基又はアルケニル基であり,この基は,非置換であるか,あるいは置換基として1
個のCN又はCF3を有するか,あるいは置換基として少なくとも1個のハロゲン
を有しており,そしてこれらの基中に存在する1個又は2個以上のCH2基は,場
合によりそれぞれ相互に独立して,O原子が相互に直接に結合しないものとして,
-O- ,-S- , ,-CO-,-CO-O-,-O-CO-又は-O-
CO-O-により置き換えられていてもよく,
  A1及びA2は,それぞれ相互に独立して,
  (a)トランス-1,4-シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個のC
H2基又は隣接していない2個以上のCH2基はまた,-O-及び(又は)-S-に
より置き換えられていてもよい),
  (b)1,4-フェニレン基,
  (c)1,4-シクロヘキセニレン,1,4-ビシクロ〔2.2.2〕オクチ
レン,ピペリジン-1,4-ジイル,ナフタレン-2,6-ジイル,デカヒドロナ
フタレン-2,6-ジイル及び1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6
-ジイルよりなる群からの基
 であり,上記の基(a)及び基(b)は,場合によりCN又はフッ素により置換
されていてもよく,
  Z1及びZ2は,それぞれ相互に独立して,-CO-O-,-O-CO-,-C
H2O-,-OCH2-,CH2CH2-,-CH=CH-,-C≡C-又は単結合
であり,あるいは基Z1及び基Z2のうちの一つはまた,-(CH2)4-又は-CH
=CH-CH2CH2-であることができ,
  Lは,Fであり,
  mは,0,1又は2であり,
  Yは,F又はClであり,そして
  Qは,単結合,-CF2-,-OCF2-又は-OCHF-である,ただし,次
の化合物を除く,
  (a)4-プロピル-4′-(3,5-ジフルオロ-4-デフルオロメトキシ
フェニル)-トランス,トランス-ビシクロヘキシル
   

式中R はそれぞれ炭素原子1~10個を有するアルキル基である
  で示されるフルオロベンゼン誘導体。
2.式Iで示される化合物を液晶媒体の成分として使用する方法。
3.少なくとも2種の液晶成分を含有する液晶媒体であって,式Iで示される化合
物のうちの少なくとも1種を含有することを特徴とする液晶媒体。
4.式I″
     
 〔式中,Rは,Hであり,あるいはRは,炭素原子1~15個を有するアルキル
基又はアルケニル基であり,この基は,非置換であるか,あるいは置換基として1
個のCN又はCF3を有するか,あるいは置換基として少なくとも1個のハロゲン
を有しており,そしてこれらの基中に存在する1個又は2個以上のCH2基は,場
合によりそれぞれ相互に独立して,O原子が相互に直接に結合しないものとして,
-O-,-S-, ,-CO-,-CO-O-,-O-CO-又は-O-CO
-O-により置き換えられていてもよく,
  A1及びA2は,それぞれ相互に独立して,
  (a)トランス-1,4-シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個のC
H2基又は隣接していない2個以上のCH2基はまた,-O-及び(又は)-S-に
より置き換えられていてもよい),
  (b)1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個又は2個のCH基はま
た,Nにより置き換えられていてもよい),
  (c)1,4-シクロヘキセニレン,1,4-ビシクロ〔2.2.2〕オクチ
レン,ピペリジン-1,4-ジイル,ナフタレン-2,6-ジイル,デカヒドロナ
フタレン-2,6-ジイル及び1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6
-ジイルよりなる群からの基
 であり,上記の基(a)及び基(b)は,場合によりCN又はフッ素により置換
されていてもよく,
  Z1及びZ2は,それぞれ相互に独立して,-CO-O-,-O-CO-,-C
H2O-,-OCH2-,CH2CH2-,-CH=CH-,-C≡C-又は単結合
であり,あるいは基Z1及び基Z2のうちの一つはまた,-(CH2)4-又は-CH
=CH-CH2CH2-であることができ,
  Lは,Fであり,
  mは,0,1又は2であり,
  Yは,F又はClであり,そして
  Qは,単結合,-CF2-,-OCF2-又は-OCHF-である,
 で示されるフルオロベンゼン誘導体の1種又は2種以上に加え,さらなる構成要
素として4~30種の成分を含有
  
  
液晶媒体。
5.さらなる構成要素が7~25種の成分であることを特徴とする,請求項4に記
載の液晶媒体。
6.さらなる構成要素として,式1~5のうちの2つから選択される化合物を含有
することを特徴とする,請求項4に記載の液晶媒体。
7.LがCyc又はPheであり,EがPhe-Cycである構成要素を含有する
ことを特徴とする,請求項4に記載の液晶媒体。
8.LがPheであることを特徴とする,請求項7に記載の液晶媒体。
9.L及びEがCyc,Phe及びPyrからなる群から選択されたものである式
1~5の化合物の1種又は2種以上と,L及びEのうちのひとつの基がCyc,P
he及びPyrからなる群から選択され,他の基が-Phe-Phe-,-Phe
-Cyc-,-Cyc-Cyc-,-G-Phe-及び-G-Cyc-からなる群
から選択されたものである式1~5の化合物の1種又は2種以上とを同時に含むこ
とを特徴とする,請求項4に記載の液晶媒体。
10.式I″の化合物を複数種含有することを特徴とする,請求項4~9のいずれ
かに記載の液晶媒体。
11.式I″の化合物を3,4又は5種含有することを特徴とする,請求項10に
記載の液晶媒体。
12.L及びEのうちのひとつの基がフッ素で置換された1,4-フェニレンを含
む,式1~5から選択される化合物を含有することを特徴とする,請求項4に記載
の液晶媒体。
13.式I″の化合物とグループBの化合物とからなることを特徴とする,請求項
4に記載の液晶媒体。
14.式I″の化合物と式
    
  の化合物とからなるものを除く,請求項4~13のいずれかに記載の液晶媒
体。
15.式I″の化合物を40%より多く含有することを特徴とする,請求項4~1
4のいずれかに記載の液晶媒体。
16.式I″の化合物の割合が45~90%であることを特徴とする,請求項15
に記載の液晶媒体。
17.請求項3~16のいずれかに記載の液晶媒体を含有することを特徴とする,
液晶表示素子。
18.誘電体として,請求項3~16のいずれかに記載の液晶媒体を含有すること
を特徴とする,電気光学表示素子。
第3 原告主張の決定取消事由
 決定は,訂正審決による訂正前の請求項に基づき(平成14年9月17日付け訂
正請求に基づき)各請求項の発明の要旨を認定して,特許法29条の2により,先
願当初明細書には,平成14年9月17日付け訂正による請求項1記載の発明1な
いし16及び19,20と同一の発明が記載されていると認定判断したが,訂正審
決による訂正後の特許請求の範囲の構成は平成14年9月17日付け訂正請求に基
づく構成よりも限定されたものであるから,特許請求の範囲の減縮等を目的とする
訂正を認める審決が確定したことにより,決定中特許を取り消した部分は,結果的
に本件発明の要旨の認定を誤ったことになり,違法となったものである。
第4 当裁判所の判断
 原告主張の事由により決定中特許を取り消した部分は取り消されるべきものであ
り,本訴請求は理由がある。よって,訴訟費用の負担につき行訴法7条,民訴法6
2条を適用して,主文のとおり判決する。
 東京高等裁判所知的財産第4部
       裁判長裁判官    塚  原  朋  一
          裁判官 塩  月  秀  平
裁判官 髙  野  輝  久

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