ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 平成25(ワ)30485 特許権侵害差止等請求事件
裁判所 | 請求棄却 東京地方裁判所 |
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裁判年月日 | 平成26年3月6日 |
事件種別 | 民事 |
当事者 | 被告株式会社NTTドコモ 原告アテンションシステム株式会社 |
法令 |
特許権 特許法100条1項1回 |
キーワード | 特許権29回 侵害18回 差止10回 損害賠償7回 実施2回 |
主文 | 本件訴えを却下する。訴訟費用は原告の負担とする。事 実 1 原告代表者は,「被告は,持主いない電話番号売買禁止の売上利益目的機を使用し,譲渡し,貸し渡し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。被告は,情報通信と無線通話の実施に対し,持主いない電話番号売買禁止の売上利益目的機及び口座引落を廃棄せよ。被告は,原告に対し,9万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め,別紙「請求の原因」のとおり請求の原因を述べた。 2 被告代理人は,本案前として,主文と同旨の判決を求め,別紙「本案前の主張」のとおりその主張を述べ,本案として,「原告の請求をいずれも棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め,請求の原因に対し,「請求の原因1のうち,原告及び被告が株式会社であることは認めるが,その余の事実は否認する。同2のうち,原告が本件特許権を有していることは認めるが,その余の事実は否認する。同3及び同4の各事実は否認する。」と述べた。理 由 1 被告の主張に鑑み,職権をもって判断する。(1) 当裁判所に顕著な事実に,証拠(乙1ないし6)及び弁論の全趣旨を総合すれば,次の事実が認められる。ア 原告は,平成21年,被告による「P-08A」,「N-08A」,「P-10A」,「SH-05A」,「F-09A」,「N-07A」,「P-07A」,「SH-06A」,「N-09A」,「P-09A」,「HT-03A」,「T-01A」,「SH-07A」という型番号の携帯電話機(以下「被告製品1」という。)の製造,販売,販売の申出が本件特許権を侵害すると主張して,被告に対し,その製造等の差止め及び廃棄並びに損害賠償を求める訴えを大阪地方裁判所に提起した(同裁判所平成21年(ワ)第11480号)。大阪地方裁判所は,平成22年4月22日,原告が主張する被告製品1の具体的構成は明らかでなく,本件特許発明と対比するに足りる被告製品1の構成が全く主張,立証されていないので,本件特許発明と被告製品1とを対比することすらできず,被告製品1が本件特許発明の技術的範囲に属すると認めることはできないと判示して,原告の請求を棄却する旨の判決を言い渡した。原告は,これに対して控訴し,その際に差止め及び廃棄等の請求を変更したが,知的財産高等裁判所は,平成22年9月29日,控訴を棄却するとともに,原告が控訴審で変更した請求を棄却する旨の判決を言い渡し,さらに,原告は,これに対して上告及び上告受理申立てをしたが,同裁判所は,平成22年12月6日に上告受理申立てを却下する旨の決定をし,最高裁判所は,平成23年2月1日に上告を棄却する旨の決定をして,原告の請求を棄却した第一審判決及び控訴審判決が確定した。イ 原告は,平成22年,被告による「第1の呼び出し番号と第2の呼び出し番号」を無断で記憶した携帯電話機(以下「被告製品2」という。)の販売の申出が本件特許権を侵害すると主張して,被告に対し,その販売と無線通信料等口座振替決済の無料化及び損害賠償を求める訴えを大阪地方裁判所に提起した(同裁判所平成22年(ワ)第17304号)。大阪地方裁判所は,平成23年3月29日,原告に釈明を求めたにもかかわらず,本件特許発明の解釈,本件特許権を侵害する製品の具体的構成,被告の具体的侵害行為について,具体的に主張立証しないと判示して,原告の請求を棄却する旨の判決を言い渡した。原告は,これに対して控訴せず,上記判決は,そのころ確定した。ウ 原告は,平成25年,被告による持主いない電話番号記憶SH-05D携帯電話機(以下「被告製品3」という。)の販売,販売の申出が本件特許権を侵害すると主張して,被告に対し,その使用等の差止め及び廃棄並びに損害賠償を求める訴えを東京地方裁判所に提起した(同裁判所平成25年(ワ)第11550号)。東京地方裁判所は,平成25年9月27日,原告に対して被告製品3の構成と本件特許発明との対比について具体的に主張するよう釈明を求めたにもかかわらず,被告製品3の構成を具体的に明らかにせず,本件特許発明の構成要件と被告製品3の構成とを対比することもできないと判示して原告の請求を棄却する旨の判決を言い渡した。原告は,これに対して控訴せず,上記判決は,そのころ確定した。エ 原告は,平成25年11月19日,訴状を当裁判所に提出して,本件訴訟を提起し,その後,同月26日付及び同年12月2日付補正書を提出した。同日付補正書の「第3 本件特許発明と被告製品との対比」の項には「本件特許発明の構成要件と被告製品の構成とを対比する。構成要件A 繋ぐ符号番号販売技術 よって,被告製品は,本件特許発明の技術的範囲に属する。」との記載があることから,裁判長は,同月5日,これについて,「記載が足りているのか否かを明らかにし,足りていないのであれば,その記載を加えた書面を提出すること」との内容の補正を促したところ,原告は,同月10日付,同月11日付,同月16日付及び平成26年2月6日付補正書を提出し,さらに,同月20日付準備書面(2)を提出したが,その記載は,「本件特許発明の構成要件と被告製品の構成とを対比する。本件特許発明の構成要件Aは,コンピュータ呼出繋ぐ符号番号販売技術有している。被告製品の構成aは,コンピュータ呼出しできないN-08D機。上記のとおり,被告製品は,本件特許発明の構成要件Aを充足するから,被告製品の構成aは,本件特許発明の構成要件Aを充足する。よって,被告製品は,本件特許発明の技術的範囲に属する。」(平成25年12月10日付補正書),「本件特許発明の構成要件と被告製品の構成とを対比する。本件特許発明の構成要件Aは,コンピュータ呼出繋ぐ符号番号販売技術有している。被告製品の構成aは,コンピュータ呼出しできないN-08D機。上記のとおり,被告製品は,本件特許発明の構成要件Aを充足するから,被告製品の構成aは,本件特許発明の構成要件Aを充足する。よって,被告製品は,本件特許発明の技術的範囲に属する。」(平成25年12月11日付補正書),「本件特許発明の構成要件と被告製品の構成とを対比する。本件特許発明の構成要件Aは,繋ぐ符号番号販売技術を有する。被告製品の構成aは,持主いない電話番号売買禁止N-08D機である。上記のとおり,被告製品は,本件特許発明の構成要件Aを充足するから,被告製品の構成aは,本件特許発明の構成要件Aを充足する。よって,被告製品は,本件特許発明の技術的範囲に属する。」(平成25年12月16日付補正書),「本件特許発明の構成要件と被告製品の構成とを対比する。本件特許発明の構成要件Aは,繋ぐ符号番号販売技術を有する。被告製品の構成aは,持主いない電話番号売買禁止N-08D機である。上記のとおり,被告製品は,本件特許発明の構成要件Aを充足するから,被告製品の構成aは,本件特許発明の構成要件Aを充足する。よって,被告製品は,本件特許発明の技術的範囲に属する。」(平成26年2月6日付補正書),「本件特許発明の構成要件と被告製品の構成とを対比する。本件特許発明の構成要件Aは,繋ぐ番号販売技術を有する。被告製品の構成aは,持主いない電話番号売買禁止の売上利益目的機である。上記のとおり,被告製品は,本件特許発明の構成要件Aを充足するから,被告製品の構成aは,本件特許発明の構成要件Aを充足する。よって,被告製品は,本件特許発明の技術的範囲に属する。」(平成26年2月20日付準備書面(2))というものであって,被告製品の具体的構成を特定しない。そして,原告は,同日付準備書面(2)において,被告製品を「N-08D機」から「売上利益目的機」に変更し,同月20日の本件口頭弁論期日において,「売上利益目的機」が通信機全般を指すものであると釈明したが,その具体的構成を特定しない。(2) 上記(1)認定の事実によれば,原告は,本件訴訟までに,被告に対し,3回にわたり,被告による携帯電話の製造等が本件特許権を侵害すると主張して,その差止め及び廃棄並びに損害賠償を求める訴訟を提起してきたが,本件訴訟も,同様に,被告による「売上利益目的機」の製造等が本件特許権を侵害すると主張して,その差止め及び廃棄並びに損害賠償を求めるものである。ところで,原告は,被告製品1ないし3の具体的構成を特定しないし,また,本件においても,目的物である「売上利益目的機」の具体的構成を特定しないのであって,結局のところ,原告は,被告の製品について,その具体的構成によることなく,本件特許発明の技術的範囲に属するとし,被告がこれを製造等しているだけで,本件特許権を侵害するとの主張を繰り返しているにすぎない。そして,以上のような経緯に鑑みれば,原告が自ら又は裁判所の問いに答えて,「売上利益目的機」なる目的物の具体的構成を特定することは不可能又は著しく困難であって,およそ,これを期待することはできない。しかも,被告は,本件訴訟により応訴を強いられているのであり,殊に原告が目的物である「売上利益目的機」の具体的構成を特定せず,かつ,特定することを期待することができない中での応訴の負担は,決して小さくない。これらの事情に照らすと,本件訴えは,訴権の濫用であって,訴訟上の信義則に反するといわざるを得ないから,不適法であると認められる。 2 よって,本件訴えは,不適法であるからこれを却下することとして,主文のとおり判決する。東京地方裁判所民事第47部裁判長裁判官 高 野 輝 久裁判官 三 井 大 有裁判官 藤 田 壮(別紙)請求の原因 1 当事者(1) 原告は,情報通信と無線通話とを可能にするコンピュータ呼出繋ぐ番号販売技術特許権を保有している株式会社である。(2) 被告は,売上利益目的機の情報通信料口座引落契約行為が電子メール等又は無線通話を「繋ぐ番号販売技術」特許権を侵害した株式会社である。 2 原告の特許権(1) 本件特許権原告は,次の特許権(以下「本件特許権」という。)を有している。ア 登 録 番 号 特許第3010152号イ 発明の名称 通信不正傍受阻止システムウ 出 願 日 平成9年12月19日エ 出 願 番 号 特願平9-365392オ 登 録 日 平成11年12月3日(2) 本件特許発明本件特許権の特許請求の範囲請求項1の発明(以下「本件特許発明」という。)は,次のとおりである。「繋ぐ番号販売技術」 3 被告の行為(1) 行為被告は,平成12年2月から現在まで,情報通信と無線通話の実施に対し,持主いない電話番号売買禁止の売上利益目的機(以下「被告製品」という。)を業として,製造し,販売の申出をしている。(2) 被告製品持主いない電話番号売買禁止の売上利益目的機である。 4 本件特許発明と被告製品との対比以上を前提に,本件特許発明の構成要件と被告製品の構成とを対比する。本件特許発明の構成要件Aは,繋ぐ番号販売技術を有する。被告製品の構成aは,持主いない電話番号売買禁止の売上利益目的機である。上記のとおり,被告製品は,本件特許発明の構成要件Aを充足するから,被告製品の構成aは,本件特許発明の構成要件Aを充足する。よって,被告製品は,本件特許発明の技術的範囲に属する。よって,原告は,被告に対し,特許法100条1項,2項に基づいて,被告製品の販売等の差止め及び口座引落廃棄を,民法709条,特許法102条3項に基づいて,損害賠償金9万円及びこれに対する不法行為の後の日である訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求める。(別紙)本案前の主張 1 蒸し返し訴訟ないし訴権の濫用(1) 第一次訴訟原告は,本件特許権に基づき,被告に対し,大阪地方裁判所に,特許権侵害差止等請求事件を提起した(平成21年(ワ)第11480号)。これについて,第一審判決が,平成22年4月22日に下され,原告の請求はいずれも棄却された。判決書9頁3項で指摘されているとおり,原告は,裁判所の求めにもかかわらず,具体的な特許権侵害の主張立証をしなかった。原告は,知的財産高等裁判所に控訴を提起し(平成22年(ネ)第10048号),控訴審で請求を変更したが,同裁判所は,平成22年9月29日,本件控訴を棄却する,控訴人が当審で変更した請求を棄却する,との判決を下した。判決書3頁で指摘されているとおり,控訴人(原告)の主張は,それを最大限善解するとしてもまた,本件特許発明の特許請求の範囲及び明細書の記載に基づかない主張であるか,証拠によって認めることのできない主張であることは明らかであって,採用することができないものであった。原告は,上告及び上告受理申立てをしたが,上告受理申立て(平成22年(ネ受)第10028号)は知的財産高等裁判所が平成22年12月6日に却下し,上告事件(平成22年(オ)第2016号)は最高裁判所が平成23年2月1日に上告を棄却した。これにより,原告の請求をいずれも棄却した判決は確定した。(2) 第二次訴訟原告は,本件特許権に基づき,被告に対し,大阪地方裁判所に,損害賠償等請求事件を提起した(平成22年(ワ)第17304号)。これについて,第一審判決が,平成23年3月29日に下され,原告の請求はいずれも棄却された。判決書5頁3項(2)で指摘されているとおり,原告は,裁判所が釈明を求めたにもかかわらず,本件特許発明の解釈,本件特許権を侵害する製品の具体的構成,被告の具体的侵害行為について,ほとんど具体的な主張立証をしなかった。上記判決に対して,原告は控訴せず,原告の請求をいずれも棄却した判決は確定した。(3) 第三次訴訟原告は,本件特許権に基づき,被告に対し,東京地方裁判所に,特許権侵害差止等請求事件を提起した(平成25年(ワ)第11550号)。これについて,第一審判決が,平成25年9月27日に下され,原告の請求はいずれも棄却された。判決書5頁下から3行目から末行で指摘されているとおり,原告は,裁判所が釈明を求めたにもかかわらず,被告製品の具体的構成と本件特許発明との対比について具体的な主張をしなかった。上記判決に対して,原告は控訴せず,原告の請求をいずれも棄却した判決は確定した。(4) 本件訴訟原告は,今回,本件特許権に基づき,被告に対し,東京地方裁判所に,特許権侵害差止等請求事件を提起したが,これは同じ特許権に基づく4回目の訴訟である。原告の主張を見れば明らかなとおり,特許権侵害の具体的主張を全くしていない。(5) 蒸し返し訴訟ないし訴権の濫用原告は,原告が本件特許権を保有していることと,被告が携帯端末機を販売及び販売の申出をしているということのみをもって,本件訴訟を提起したと言わざるを得ない。原告は,被告が携帯端末機を販売及び販売の申出をしていることのみに基づいて,被告を相手に4度,特許権侵害訴訟を提起したものである。今回の本件訴訟に至っては,原告はその請求が認められるはずのないことを十分承知し,被告に応訴の負担を課すことのみを目的にして訴訟提起したと認められ,原告の本訴提起は不法行為をも構成する。原告による本件訴訟提起は,蒸し返し訴訟ないし訴権の濫用であり,また,不法行為をも構成するものであり,却下すべきである。 2 請求内容の不確定請求の趣旨第1項及び第2項の請求内容は意味不明ないし請求内容が確定できないから,却下すべきである。 |
事件の概要 |
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