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平成15(行ケ)382行政訴訟 特許権

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裁判所 東京高等裁判所
裁判年月日 平成15年12月25日
事件種別 民事
法令 特許権
キーワード 刊行物11回
審決6回
特許権1回
進歩性1回
主文
事件の概要

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判決文

平成15年(行ケ)第382号 特許取消決定取消請求事件
平成15年12月25日判決言渡,平成15年12月18日口頭弁論終結
     判    決
 原      告  大同特殊鋼株式会
 訴訟代理人弁理士  伊藤浩二
 被      告  特許庁長官 今井康夫
 指定代理人     金 公彦,大黒浩之,高木 進,大橋信彦
     主    文
 特許庁が異議2002-72099号事件について平成15年7月1日にした決
定を取り消す。
 訴訟費用は各自の負担とする。
     事実及び理由
第1 原告の求めた裁判
 主文第1項同旨の判決。
第2 事案の概要
 1 特許庁における手続の経緯
 原告は,本件特許第3267069号「アーク炉用集塵装置」の特許権者であ
る。本件特許は,平成6年9月19日に特許出願され,平成14年1月11日に設
定登録がされた。本件特許について特許異議の申立てがあり(異議2002-72
099号),平成15年1月27日付けで訂正請求がされ,平成15年7月1日,
「訂正を認める。本件特許の訂正後の請求項1~5に係る特許を取り消す。」との
決定があり,その謄本は同年7月28日原告に送達された。
 2 設定登録時の特許請求の範囲の記載
【請求項1】 バグフィルタ式集塵機の下流側に設けられた排風機によりアーク炉か
ら排煙を直接吸引する直接集塵系統と,バグフィルタ式集塵機に設けられた排風機
により前記アーク炉の建家の天上フードから排煙を間接的に吸引する建家集塵系統
を備えたアーク炉用集塵装置において,直接集塵系統の排風機の下流側を建家集塵
系統のバグフィルタ式集塵機の上流側に切換可能に連通し,直接集塵系統より吸引
された排煙を建家集塵系統のバグフィルタ式集塵機にも通過させて大気中に放出し
得るようにしたことを特徴とするアーク炉用集塵装置。
【請求項2】 直接集塵系統の排風機の下流側に排煙中のダスト濃度を検出する装置
を設けた請求項1に記載のアーク炉用集塵装置。
【請求項3】 建家集塵系統のバグフィルタ式集塵機の下流側に排煙中のダスト濃度
を検出する装置を設けた請求項1または2に記載のアーク炉用集塵装置。
【請求項4】 直接集塵系統のバグフィルタ式集塵機の上流側に水スクラバーを設け
た請求項1に記載のアーク炉用集塵装置。
【請求項5】 直接集塵系統および/または建家集塵系統のバグフィルタ式集塵機の
上流側に消石灰粉末等のプレコート剤を吹き込むようにした請求項1に記載のアー
ク炉用集塵装置。
 3 平成15年1月27日付け訂正による特許請求の範囲の記載(下線部分が訂
正箇所)
【請求項1】第1のバグフィルタ式集塵機の下流側に設けられた第1排風機により
アーク炉から排煙を直接吸引する直接集塵系統と,第2のバグフィルタ式集塵機に
設けられた第2排風機により前記アーク炉の建家の天井フードから排煙を間接的に
吸引する建家集塵系統を備えたアーク炉用集塵装置において,直接集塵系統の第1
排風機の下流側と建家集塵系統の第2のバグフィルタ式集塵機の上流側とを連通路
により連通させると共に,該連通路に第1ダンパを設け,第1排風機の下流側分岐
路に第2ダンパを設け,第1ダンパを開けることで直接集塵系統より吸引された排
煙を第2のバグフィルタ式集塵機の上流側に切換可能にし,直接集塵系統より吸引
された排煙を第2のバグフィルタ式集塵機にも通過させて大気中に放出し得るよう
にしたことを特徴とするアーク炉用集塵装置。
【請求項2】直接集塵系統の第1のバグフィルタ式集塵機の下流側に排煙中のダス
ト濃度を検出する装置を設けた請求項1に記載のアーク炉用集塵装置。
【請求項3】建家集塵系統の第2のバグフィルタ式集塵機の下流側に排煙中のダス
ト濃度を検出する装置を設けた請求項1または2に記載のアーク炉用集塵装置。
【請求項4】直接集塵系統の第1のバグフィルタ式集塵機の上流側に水スクラバー
を設けた請求項1に記載のア一ク炉用集塵装置。
【請求項5】直接集塵系統および/または建家集塵系統のバグフィルタ式集塵機の
上流側に消石灰粉末等のプレコート剤を吹き込むようにした請求項1に記載のアー
ク炉用集塵装置。
 4 後記訂正審決による特許請求の範囲の記載(下線部分が前記3との対比にお
ける訂正箇所。請求項3~5は削除)
【請求項1】 第1のバグフィルタ式集塵機の下流側に設けられた第1排風機によ
りアーク炉から排煙を直接吸引する直接集塵系統と,第2のバグフィルタ式集塵機
に設けられた第2排風機により前記アーク炉の建家の天井フードから排煙を間接的
に吸引する建家集塵系統を備えたアーク炉用集塵装置において,直接集塵系統の第
1排風機の下流側と建家集塵系統の第2のバグフィルタ式集塵機の上流側とを連通
路により連通させると共に,該連通路に第1ダンパを設け,第1排風機の下流側分
岐路に第2ダンパを設け,第1ダンパを開けることで直接集塵系統より吸引された
排煙を第2のバグフィルタ式集塵機の上流側に切換可能にし,直接集塵系統より吸
引された排煙を第2のバグフィルタ式集塵機にも通過させて大気中に放出し得るよ
うにし,直接集塵系統の第1のバグフィルタ式集塵機の下流側に排煙中のダスト濃
度を検出する装置を設け,第1のバグフィルタ式集塵機から排出される排煙中のダ
スト濃度を常時監視することで第1,第2ダンパを開閉操作し必要に応じて該排煙
を第2のバグフィルタ式集塵機に再通過させるとともに,直接集塵系統および/ま
たは建家集塵系統のバグフィルタ式集塵機の上流側に消石灰粉末等のプレコート剤
を吹き込むホッパを設けたことを特徴とするアーク炉用集塵装置。
【請求項2】 第1のバグフィルタ式集塵機の下流側に設けられた第1排風機によ
りアーク炉から排煙を直接吸引する直接集塵系統と,第2のバグフィルタ式集塵機
に設けられた第2排風機により前記アーク炉の建家の天井フードから排煙を間接的
に吸引する建家集塵系統を備えたアーク炉用集塵装置において,直接集塵系統の第
1排風機の下流側と建家集塵系統の第2のバグフィルタ式集塵機の上流側とを連通
路により連通させると共に,該連通路に第1ダンパを設け,第1排風機の下流側分
岐路に第2ダンパを設け,第1ダンパを開けることで直接集塵系統より吸引された
排煙を第2のバグフィルタ式集塵機の上流側に切換可能にし,直接集塵系統より吸
引された排煙を第2のバグフィルタ式集塵機にも通過させて大気中に放出し得るよ
うにし,直接集塵系統の第1のバグフィルタ式集塵機の下流側に排煙中のダスト濃
度を検出する装置を設け,第1のバグフィルタ式集塵機から排出される排煙中のダ
スト濃度を常時監視することで第1,第2ダンパを開閉操作し必要に応じて該排煙
を第2のバグフィルタ式集塵機に再通過させるとともに,直接集塵系統の第1のバ
グフィルタ式集塵機の上流側に直接集塵系統の排煙を水噴霧により急冷する水スク
ラバーを設け,直接集塵系統および/または建家集塵系統のバグフィルタ式集塵機
の上流側に消石灰粉末等のプレコート剤を吹き込むホッパを設けたことを特徴とす
るアーク炉用集塵装置。
 5 決定の理由の要点
 平成15年1月27日付け訂正は適法であり,その訂正後の請求項1に係る発明
は,下記刊行物1,2,4に記載された発明に基づいて,訂正後の請求項2に係る
発明は,下記刊行物1~4に記載された発明に基づいて,訂正後の請求項3に係る
発明は,下記刊行物1~4に記載された発明に基づいて,訂正後の請求項4に係る
発明は,下記刊行物1,2,4に記載された発明に基づいて,訂正後の請求項5に
係る発明は,下記刊行物1,2,4,5に記載された発明に基づいて,いずれも当
業者が容易に発明をすることができたものであって,これらの特許は拒絶の査定を
しなければならない特許出願に対してされたものと認める。
    記
 刊行物1:実願昭57-123156号(実開昭59-29700号)のマイク
ロフィルム
 刊行物2:特開昭56-64284号公報
 刊行物3:特公昭60-54085号公報
 刊行物4:実公昭53-40496号公報
 刊行物5:特開平4-45827号公報
 6 訂正審決の確定
 原告は,本訴提起後の平成15年9月19日,本件特許につき,特許請求の範囲
の減縮等を目的として,明細書の訂正をする審判を請求したところ(訂正2003
-39200号),平成15年11月26日,当該訂正を認める旨の審決があり確
定した。
第3 原告主張の決定取消事由
 決定は,訂正審決による訂正前の請求項に基づき(平成15年1月27日付け訂
正請求に基づき)各請求項の発明の要旨を認定し,これに基づき上記刊行物に記載
の発明との対比において各請求項の発明の進歩性を否定しているが,訂正審決によ
る訂正後の特許請求の範囲の構成は平成15年1月27日付け訂正請求による訂正
後の特許請求の範囲の構成よりも限定されたものであるから,特許請求の範囲の減
縮等を目的とする訂正を認める審決が確定したことにより,決定は,結果的に本件
発明の要旨の認定を誤ったことになり,違法となったものである。
第4 当裁判所の判断
 原告主張の事由により決定は取り消されるべきものであり,本訴請求は理由があ
る。よって,訴訟費用の負担につき行訴法7条,民訴法62条を適用して,主文の
とおり判決する。
 東京高等裁判所第18民事部
         裁判長裁判官 塚   原   朋   一
            裁判官 塩   月   秀   平
裁判官 古   城   春   実

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