平成15(行ケ)239行政訴訟 特許権
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裁判所 |
東京高等裁判所
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裁判年月日 |
平成15年10月14日 |
事件種別 |
民事 |
法令 |
特許権
特許法36条4項2回 民事訴訟法62条1回
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キーワード |
審決9回 特許権1回 優先権1回
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主文 |
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事件の概要 |
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判決文
平成15年(行ケ)第239号 特許取消決定取消請求事件
平成15年10月14日口頭弁論終結
判 決
原 告 旭硝子株式会社
訴訟代理人弁理士 萩 原 亮 一
同 渡 部 崇
同 石 川 祐 子
同 内 田 明
被 告 特許庁長官 今井康夫
指定代理人 高 梨 操
同 鴨 野 研 一
同 一 色 由美子
同 涌 井 幸 一
主 文
1 特許庁が異議2001-70265号事件について平成15年4月
18日にした決定を取り消す。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
1 原告の請求
(1) 主文第1項と同旨
(2) 訴訟費用は被告の負担とする。
2 当事者間に争いのない事実
(1) 特許庁における手続の経緯
原告は,発明の名称を「熱線遮断膜」とする特許第3068924号(平成
2年11月29日に日本国においてした出願に基づく優先権を主張して,平成3年
11月20日出願。平成12年5月19日設定登録。以下「本件特許」といい,そ
の発明を「本件発明」という。請求項の数は2である。)の特許権者である。
本件特許の請求項1,2の双方につき,特許異議の申立てがあり,特許庁
は,これを異議2001-70265号事件として審理し,その結果,平成15年
4月18日,「特許第3068924号の請求項1ないし2に係る特許を取り消
す。」との決定(以下「本件取消決定」という。)をし,平成15年5月12日
に,その謄本を原告に送達した。
(2) 審決の理由
本件審決の理由は,要するに,本件特許出願は,平成6年法律第116号に
よる改正前の特許法36条4項及び5項2号所定の要件を満たしていないから,本
件特許は,拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものである,
というものである。
(3) 訂正審決の確定
原告は,本訴係属中,平成15年6月10日付けで,本件特許出願の願書に
添付した明細書につき,特許請求の範囲に係るものを含む訂正の審判を請求した。
特許庁は,これを訂正2003-39114号事件として審理し,その結果,平成
15年9月5日に上記訂正を認める審決(以下「本件訂正審決」という。)をし,
これが確定した。
(4) 本件訂正審決による特許請求の範囲に係る訂正の内容
(ア) 本件訂正審決による訂正前の特許請求の範囲
「【請求項1】基体上に酸化物膜,Agを主成分とする膜,酸化物膜,と順
次積層された少なくとも(2n+1)層(n≧1)からなる熱線遮断膜において,
該熱線遮断膜のX線回折図における立法晶Agの(111)回折線の積分幅βi
(°)が180λ/(dπcos θ)≦βi≦180λ/(dπcos θ)+
0.15の範囲にあることを特徴とする熱線遮断膜。ただし,d(Å)はAgを主
成分とする膜の膜厚,λ(Å)は測定X線波長,θはブラッグ角を示す。
【請求項2】前記Agを主成分とする膜と酸化物膜との界面に,Agの結晶
性の不完全性を低減させる介在層が形成されていることを特徴とする請求項1に記
載の熱線遮断膜」
(イ) 本件訂正審決による訂正後の特許請求の範囲(下線部が訂正個所であ
る。)
「【請求項1】基体上にZnO膜,Agを主成分とする膜,ZnO膜が(2
n+1)層(n≧1)順次積層された熱線遮断膜において,前記各Agを主成分と
する膜の膜厚は80~160Åであり,該熱線遮断膜のX線回折図における立法晶
Agの(111)回折線の積分幅βi(°)が180λ/(dπcos θ)≦β
i≦180λ/(dπcos θ)+0.15の範囲にあることを特徴とする白濁
や白色斑点が形成されていない熱線遮断膜。ただし,d(Å)はAgを主成分とす
る膜の膜厚,λ(Å)は測定X線波長,θはブラッグ角を示す。
【請求項2】前記Agを主成分とする膜と酸化物膜との界面に,Agの結晶
性の不完全性を低減させる介在層が形成されていることを特徴とする請求項1に記
載の熱線遮断膜」
3 当裁判所の判断
前記当事者間に争いのない事実の下では,本件特許請求の範囲請求項1,2に
ついて,平成6年法律第116号による改正前の特許法36条4項及び5項2号所
定の要件を満たしていない特許出願に対してなされた特許であることを理由にこれ
を取り消した本件取消決定の取消しを求める訴訟の係属中に,特許請求の範囲の減
縮を含む訂正の審判の請求がなされ,特許庁は,同請求を認めるとの本件訂正審決
をし,これが確定した,ということができる。本件取消決定は,これにより,結果
として,判断の対象となるべき発明の認定を誤ったことになる。この誤りが本件取
消決定の結論に影響を及ぼすことは明らかである。したがって,本件特許請求の範
囲請求項1,2に係る特許を取り消した本件取消決定は,取消しを免れない。
4 以上によれば,本訴請求は理由がある。そこで,これを認容し,訴訟費用の負
担については,原告に負担させるのを相当と認め,行政事件訴訟法7条,民事訴訟
法62条を適用して,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第6民事部
裁判長裁判官 山 下 和 明
裁判官 設 樂 隆 一
裁判官 阿 部 正 幸
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