平成13(行ケ)406行政訴訟 特許権
判決文PDF
▶ 最新の判決一覧に戻る
裁判所 |
東京高等裁判所
|
裁判年月日 |
平成15年4月22日 |
事件種別 |
民事 |
法令 |
特許権
特許法39条4項2回 民事訴訟法62条1回
|
キーワード |
審決4回 特許権1回
|
主文 |
|
事件の概要 |
|
▶ 前の判決 ▶ 次の判決 ▶ 特許権に関する裁判例
本サービスは判決文を自動処理して掲載しており、完全な正確性を保証するものではありません。正式な情報は裁判所公表の判決文(本ページ右上の[判決文PDF])を必ずご確認ください。
判決文
平成13年(行ケ)406号 特許取消決定取消請求事件
口頭弁論終結日 平成15年4月22日
判 決
原 告 松屋製菓株式会社
訴訟代理人弁護士 杉 本 進 介
訴訟代理人弁理士 若 原 誠 一
被 告 特許庁長官 太 田 信一郎
指定代理人 齋 藤 真 由 美
同 種 村 慈 樹
同 森 田 ひ と み
同 涌 井 幸 一
同 一 色 由 美 子
同 大 橋 良 三
主 文
1 特許庁が異議2001-70345号事件について平成13年7月30
日にした異議の決定を取り消す。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
1 原告の請求
(1) 主文1項と同旨。
(2) 訴訟費用は被告の負担とする。
2 当事者間に争いのない事実
(1) 特許庁における手続の経緯
原告は,発明の名称を「飴菓子及び飴菓子の製造方法」とする特許3071
386号の特許(平成7年10月4日出願,平成12年5月26日設定登録,以下
「本件特許」といい,その発明を「本件発明」という。)の特許権者である。
本件特許につき,請求項1及び2に対して特許異議の申立てがなされ,特許
庁は,これを異議2001-70345号事件として審理した。原告は,同審理の
過程で,平成13年6月26日,本件特許の出願の願書に添付された明細書(甲第
1号証はその内容が記載された特許公報である。以下「本件明細書」という。)の
訂正の請求をした。特許庁は,平成13年7月30日,この訂正(以下「本件第1
訂正」という。)を認めた上で,「特許第3071386号の請求項1ないし2に
係る特許を取り消す。」との決定をし,同年8月18日に,その謄本を原告に送達
した。
(2) 決定の理由
決定の理由は,要するに,請求項1及び2のいずれについても,本件発明
は,特許法39条4項の規定及び同法29条2項の規定に違反して登録されたもの
であるから,取り消されるべきである,とするものである。
(3) 原告は,本訴が係属中の平成15年2月14日付けで,本件明細書の訂正を
することについて審判を請求し,特許庁は,これを訂正2003-39027号事
件として審理し,その結果,平成15年3月25日に上記訂正(以下「本件第2訂
正」という。)をすることを認める旨の審決(以下「本件訂正審決」という。)を
し,これが確定した。
3 本件第1訂正前の本件特許の特許請求の範囲(甲第1号証・特許公報に記載の
もの)
「【請求項1】内核部分と外被部分とよりなる飴菓子であって,
上記内核部分は,固型の黒砂糖であり,
上記外被部分は,少なくとも黒砂糖と水飴とを加熱溶融混合した飴であり,
加熱されて流動性を有する状態で上記内核部分に被覆されるものであることを特徴
とする飴菓子。
【請求項2】少なくとも黒砂糖と水飴とを加熱溶融混合して高温にしかつ流
動性を持たせる第1の工程と,
この第1の工程でできた黒飴を冷却する第2の工程と,
この第2の工程で冷却された黒飴を練合する第3の工程と,
この第3の工程でできた黒飴の中に固型の状態の生の黒砂糖を巻き込んで棒
状に整形する第4の工程と,
この第4の工程で棒状に整形された飴を複数の小塊に切断して整形して冷却
する第5の工程とを備えたことを特徴とする飴菓子の製造方法。」
4 本件第1訂正後の本件特許の特許請求の範囲(下線部が訂正された箇所であ
る。)
「【請求項1】内核部分と外被部分とよりなる飴菓子であって,上記内核部
分は,固型の黒砂糖であり,上記外被部分は,少なくとも黒砂糖と水飴とを加熱溶
融混合した飴であり,加熱されて流動性を有する状態で上記内核部分に被覆される
ものであり,これら内核部分の上記固型の黒砂糖と,外被部分の上記黒砂糖と水飴
とが加熱溶融混合した飴とが混ざり合って,当該内核部分と外被部分との境に混合
部分が形成されることを特徴とする飴菓子。
【請求項2】少なくとも黒砂糖と水飴とを加熱溶融混合して高温にしかつ流
動性を持たせる第1の工程と,この第1の工程でできた黒飴を冷却する第2の工程
と,この第2の工程で冷却された黒飴を練合する第3の工程と,この第3の工程で
できた黒飴の中に固型の状態の生の黒砂糖を巻き込んで棒状に整形する第4の工程
と,この第4の工程で棒状に整形された飴を複数の小塊に切断して整形して冷却す
る第5の工程と,を備え,この第4の工程または第5の工程において,上記黒飴と
この黒飴の中に巻き込まれた上記生の黒砂糖とが混ざり合って,当該黒飴と生の黒
砂糖との境に混合部分が形成されることを特徴とする飴菓子の製造方法。」
5 本件第2訂正後の本件特許の特許請求の範囲(下線部が本件第1訂正後のもの
と比較した場合の訂正箇所である。)
「【請求項1】内核部分と外被部分とよりなる飴菓子であって,
上記内核部分は,精製されたままで他の成分が混入されていない,セ氏5
0度~200度に加熱された固型の生の黒砂糖であり,
上記外被部分は,少なくとも黒砂糖と水飴とを加熱溶融混合した飴であ
り,セ氏100度~300度に加熱されかつ流動性を持たせた後,冷却され粗熱が
取られて練合され,粘度が高くなってまだ流動性を有する状態で上記内核部分に被
覆されるものであって,この被覆は当該粗熱が取られて当該内核部分の固型の黒砂
糖を溶かす程の高温ではない状態で行われ,
これら内核部分の上記固型の黒砂糖と,上記黒砂糖と水飴とが加熱溶融混
合された後,冷却され粘度が高くなってこの黒砂糖を溶かす程ではない状態の上記
外被部分の黒飴とが混ざり合って,当該内核部分と外被部分との境に両者が混じり
合った混合部分が形成されることを特徴とする飴菓子。
【請求項2】 少なくとも黒砂糖と水飴とをセ氏100度~300度で加熱
溶融混合して高温にしかつ流動性を持たせる第1の工程と,
この第1の工程でできた黒飴を冷却して粗熱を取る第2の工程と,
この第2の工程で冷却された黒飴を練合する第3の工程と,
この第3の工程でできた黒飴であって,上記第2の工程の冷却によって,
粘度が高くなってまだ流動性を有する状態の当該黒飴の中に,精製されたままで他
の成分が混入されていない,セ氏50度~200度に加熱された固型の状態の生の
黒砂糖を巻き込んで棒状に整形する第4の工程であって,当該黒飴は上記冷却によ
って当該黒砂糖を溶かす程の高温ではない状態で当該黒砂糖を巻き込み,
この第4の工程で棒状に整形された飴を複数の小塊に切断して整形して冷
却する第5の工程と,を備え,
この第4の工程または第5の工程において,上記冷却され粘度が高くなっ
て黒砂糖を溶かす程ではない状態の黒飴と,この黒飴の中に巻き込まれた上記生の
黒砂糖とが混ざり合って,当該黒飴と生の黒砂糖との境に両者が混じり合った混合
部分が形成されることを特徴とする飴菓子の製造方法。」
6 当裁判所の判断
上記の当事者間に争いのない事実によれば,本件第2訂正前の本件特許の請求
の範囲(本件第1訂正後の特許請求の範囲)請求項1及び2の記載に基づき,それ
ぞれに係る発明を認定し,これを前提に,特許法39条4項及び同法29条2項の
規定に違反して登録された特許であることを理由に,上記各請求項につき本件特許
を取り消した決定の取消しを求める訴訟の係属中に,当該特許に係る特許請求の範
囲の減縮を含む訂正の審判が請求され,特許庁は,これを認める審決(本件訂正審
決)をし,これが確定したということができる。
決定は,これにより,結果として,上記各請求項のいずれについても判断の対
象となるべき発明の要旨の認定を誤ったことになり,この誤りが上記各請求項のい
ずれについても決定の結論に影響を及ぼすことは明らかである。したがって,決定
は,全部,取消しを免れない。
7 以上によれば,本訴請求は理由がある。そこで,これを認容し,訴訟費用の負
担については,原告に負担させるのを相当と認め,行政事件訴訟法7条,民事訴訟
法62条を適用して,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第6民事部
裁判長裁判官 山 下 和 明
裁判官 設 樂 隆 一
裁判官 阿 部 正 幸
最新の判決一覧に戻る