ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 平成14(行ケ)250 行政訴訟 意匠権
| 裁判所 | 東京高等裁判所 |
|---|---|
| 裁判年月日 | 平成14年10月29日 |
| 事件種別 | 民事 |
| 法令 |
意匠権 意匠法9条1項1回 |
| キーワード | 審決17回 無効5回 意匠権2回 刊行物1回 無効審判1回 |
| 主文 | |
| 事件の概要 |
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平成14年(行ケ)第250号 審決取消請求事件 (平成14年9月5日口頭弁
論終結)
判 決
原 告 ケージーパルテック株式会社
訴訟代理人弁護士 山上和則、西山宏昭
被 告 A
訴訟代理人弁理士 亀井弘勝、稲岡耕作、川崎実夫
主 文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
特許庁が無効2000-35650号事件について平成14年4月11日にした審決を取り消す。
第2 事案の概要
本件は、意匠登録を無効とした審決に対して、意匠権者(原告)が審決の取消しを求めている事案である。 1 特許庁における手続の経緯等 原告は、登録第930663号の類似第3号の意匠(本件登録意匠)の意匠権者である。本件登録意匠は、平成7年2月6日に意匠登録出願され(意願平7-28号)、意匠に係る物品を「戸車用レール材」として、平成8年3月12日に設定登録されたものである。本件登録意匠の形態は、別紙1のとおりである。 本件登録意匠について、被告から無効審判の請求がされ、特許庁は、これを無効-35650号事件として審理し、平成14年4月11日に「登録第93号の類似3号意匠の登録を無効とする。」との審決をし、その謄本を平成年4月23日に原告に送達した。 2 審決の理由の要旨 【要約】本件登録意匠は、①その出願日(平成7年2月6日)前に出願された意願平6-16270号の意匠(引用意匠、別紙2参照)に類似し、また、②その本意匠とする登録第930663号意匠(別紙3参照)に類似しないから、(旧)意匠法9条1項及び同法10条1項の規定に違反して登録されたものであって、同法条1項1号に該当する。 【審決の判断】 Ⅰ.本件登録意匠について Ⅰ.1 本件登録意匠の構成要素を摘記すれば、次の①~⑦の点を挙げることができる。 ① ウイング状の鍔を有している点。 ② 中央に溝を有している点。 ③ 外側に鋸歯状突起を有している点 ④ レール全体の高さと幅の寸法比が非常に似通っている点。 ⑤ 中央の溝の上に左右対称の内向きに下がるように戸車転動面を形成している点。 ⑥ 「レール裏面中央に浅い溝状部を形成している点。 ⑦ 「溝の底面中央に細い条溝を形成している点。 (上記①を構成要素①といい、②ないし⑦についても同様に表記する。) Ⅰ.2 上記①~④については、当事者間に争いがなく、審判甲1号証の一、二(Der Gro e H fele 1980年版表紙及びコラム4の写し、コラム4の写真)及び審判甲第2号証(TROLA technic写し)からも明らかなように、それがこの種の物品におけるありふれた態様であると認められる。 Ⅰ.3 上記⑤の「中央の溝の上に左右対称の内向きに下がるように戸車転動面を形成している点」については、以下に示すように、本件登録意匠の出願日である平成7年2月6日以前に出願された他の意匠、あるいは刊行物所載の他の意匠にも認められるものであって、本件登録意匠を特徴付ける態様とはなし得ないものである。・意願平6-16270号意匠(引用意匠。平成9年6月19日拒絶確定、別紙2 参照) ・実用新案登録第3001761号(審決添付別紙5) Ⅰ.4 上記⑥の「レール裏面中央に浅い溝状部を形成している点」については、該溝状部の態様がこの種物品の裏面等にいわゆる「肉盗み」として施される常套的手法を用いて形成される典型的なものであるため、やはり本件登録意匠を特徴付ける態様とはなし得ないものである。 Ⅰ.5 上記⑦の「溝の底面中央に細い条溝を形成している点」については、該条溝がありふれた罫書き溝の域を出ないものであるため、意匠の構成要素として特筆すべきものはない。 Ⅰ.6 してみると、本件登録意匠は、これを全体的に特徴付ける新規な構成要素を具備していないものであるとみなさざるを得ない。 Ⅱ 本件登録意匠と意願平6-16270号意匠の類否 Ⅱ.1 本件登録意匠と引用意匠とを対比すると、両意匠は、意匠に係る物品が一致し、本件登録意匠の前記構成要素のうち、①、②、④及び⑤の構成要素が共通し、さらに、各部の寸法比率については、④のレール全体の高さと幅の寸法比に加えて、「レール全幅に対する溝幅の寸法比を約10:3程度とし、溝の幅と深さが同程度の断面視略矩形状としている点」までも共通し、戸車転動面については、
⑤の中央の溝の上に左右対称の内向きに下がるように戸車転動面を形成している点に加えて、「戸車転動面の傾斜角度」までも共通するものである。 Ⅱ.2 これらの共通点のうち、①のウイング状の鍔を有している点、②の中央に溝を有している点及び⑤の中央の溝の上に左右対称の内向きに下がるように戸車転動面を形成している点、及びこれらの各態様が協調して表出する態様は、両意匠の構成要素の大部分を占めるものであって、全体的に見れば、意匠の骨格を成すものであり、これに④のレール全体の高さと幅の寸法比を端緒とする各部間の寸法比率における共通性が加味されることによって意匠の基調が形成され、両意匠間に強い類似性をもたらしているものと認められる。 Ⅱ.3 一方、両意匠には、③の「外側に鋸歯状突起を有している」か否か、
⑥の「レール裏面中央に浅い溝状部を形成している」か否か、及び⑦「溝の底面中央に細い条溝を形成している」か否かの相違点が認められる。 Ⅱ.4 しかしながら、これらの相違点に係る本件登録意匠の態様については、前項で述べたとおりであり、いずれも本件登録意匠を特徴付ける態様とは成し得ず、各共通点からもたらされる類似性を凌ぐものではない。 Ⅱ.5 すなわち、本件登録意匠は、引用意匠に類似するものと認められる。 Ⅲ 本件登録意匠と本意匠の類否 Ⅲ.1 本件登録意匠と本意匠を対比すると、両者は意匠に係る物品が一致し、形態については、次に示す共通点と相違点が認められる。 [共通点] (1)全体的な構成態様について、溝形鋼状レールの開口部両縁にウイング状の鍔を形成し、溝の上縁部に傾斜する戸車転動面を形成し、外側壁面に断面視鋸歯状の抜け止めを形成している点。 (2)鍔の基本形を平板状とし、外側上縁部に面取りを施している点。 (3)レールの全幅を全高の2倍程度としている点。 [相違点] (1)溝の態様について、本件登録意匠においては、戸車転動面を緩斜面とし、底部両隅を細幅の傾斜面とし、溝全体の断面形状を深さと幅が同程度の略矩形状としているのに対し、本意匠においては、戸車転動面をやや急斜面とし、底部両隅の側壁に断面視円弧状の窪みを形成し、溝全体の断面形状を深さが幅の2倍強ある断面視略Y字形状としている点。 (2)外側壁面の態様について、本件登録意匠においては、壁面全体に鋸歯状の抜け止めを均一に配置しているのに対し、本意匠においては、壁面の上方約1/程度を平坦面としてその中央に楔状の切り込みを設け、下方約2/3程度の部分に鋸歯状の抜け止めを配置している点。 (3)レール裏面の態様について、本件登録意匠においては、裏面中央に浅い溝状部を形成しているのに対し、本意匠においては、裏面全体を平坦面としている点。 (4)側壁の肉厚と溝幅の寸法比率について、本件登録意匠においては、側壁を含む全体の肉厚を溝幅の1/2弱の薄手のものとしているのに対し、本意匠においては、側壁の肉厚を溝幅と略同程度で、他の部分の略3倍程度ある厚手のものとしている点。 Ⅲ.2 上記の共通点及び相違点について検討すると、共通点(1)に示す態様は、意匠全体の骨格を成すものではあるが、多分に抽象的な共通性であり、これに共通点(2)及び(3)に示す態様を加味したとしても、戸車転動面を除けば、その態様はこの種の物品においてありふれたものであると認められる。 Ⅲ.3 戸車転動面についても、相違点(1)に示すように、その傾斜角に明らかな差異が認められることを考慮すれば、これらの共通点からもたらされる類似性は、各相違点に示す両意匠の差異を圧倒するほどのものとは認められない。 Ⅲ.4 これに対し、相違点(1)に示す本意匠の「戸車転動面をやや急斜面とし、底部両隅の側壁に断面視円弧状の窪みを形成し、溝全体の断面形状を深さが幅の2倍強ある断面視略Y字形状としている」態様は、その出願前に例を見ないものであり、これに相違点(4)に示す「側壁の肉厚を溝幅と略同程度で、他の部分の略3倍程度ある厚手のものとしている」態様が加わることによって、本意匠には、本件登録意匠とは明らかに異なる特有の基調が形成されているものと認められる。 Ⅲ.5 さらに、相違点(2)に示す外側壁面の態様、及び相違点(3)に示すレール裏面の態様における差異は、両意匠の基調の違いを一層際立たせる効果をもたらしており、この基調の違いは、各共通点からもたらされる類似性を凌駕するものであると認められる。 Ⅲ.6 すなわち、本件登録意匠は、本意匠とする登録第930663号意匠に類似しないものと認められる。 Ⅳ むすび 以上のとおりであって、本件登録意匠は、本意匠とする自己の登録意匠に類似せず、しかも本件登録意匠の出願日に先行する他の出願に係る意匠(引用意匠)に類似するものであるから、(旧)意匠法第9条第1項及び同法第10条第1項の規定に違反して登録を受けたものであり、同法第48条第1項第1号に該当する。
第3 原告主張の取消事由の要点
1 本件登録意匠と引用意匠との類否判断の誤り(取消事由1) 本件登録意匠が「外側に鋸歯状突起を有している」点(審決認定の構成要素③)は、本件登録意匠を特徴づける重要な態様の1つであるのに、審決は、これを「この種の物品におけるありふれた態様である」とし、中央の溝の上に左右対称の内向きに下がるように戸車転動面を形成している点と外側壁面に断面視鋸歯状の抜け止めを形成している点とを総合的に評価しなかった。本件登録意匠は、外側に鋸歯状突起を有する点において、鋸歯状突起を有しない引用意匠とは非類似の意匠と評価されるべきである。 2 本件登録意匠と本意匠との類否判断の誤り本件登録意匠と本意匠とは、傾斜した戸車転動面と外側側面に断面視鋸歯状の抜け止めの存在という共通点によって類似していると評価されるべきである。両者を非類似とした審決の判断は誤っている。
第4
(被告の主張)
の要旨 審決の認定判断に誤りはなく、
(原告の主張)
は失当である。
第5 当裁判所の判断
1 本件登録意匠、本件登録意匠の本意匠及び引用意匠本件登録意匠(930663号の類似3)は、意匠に係る物品を「戸車用レール材」とし、その形態を別紙1本件登録意匠図面記載のとおりとしたものである。引用意匠(意願平6-16270号意匠)及び本件登録意匠の本意匠(登録9306号意匠、以下単に「本意匠」という。)は、それぞれ、別紙2、別紙3のとおりの形態のものである。 2 本件登録意匠と引用意匠との類否 (1)本件登録意匠と引用意匠との類否については、当裁判所も審決と同様の理由(前記第2の2のⅡ参照)により、両意匠は類似すると判断をするものである。 (2)原告は、本件登録意匠において「外側に鋸歯状突起を有している」点は、意匠を特徴づける重要な態様の1つであり、この点に関する本件登録意匠と引用意匠との差異は、両意匠を非類似とするものである旨主張する。しかし、戸車レール材に外側に鋸歯状突起を設けた点は、審決添付別紙2に示された審判甲第1、第2号証の意匠にも見られるように、この種物品におけるありふれた形態と認められるものであって、看者の注意を惹くものということができず、全体として観察すると、原告主張の鋸歯状突起の有無を考慮しても、なお、本件登録意匠と引用意匠との間には強い共通性が看取されるというべきである。
(原告の主張)
は採用することができない。 3 本件登録意匠と本意匠との類否 (1)本件登録意匠と本意匠との類否については、当裁判所も審決と同様の理由(前記第2の2のⅢ.2ないし5)により、本意匠には本件登録意匠とは明らかに異なる特有の基調が形成されており、両意匠は非類似であると判断するものである。 (2)原告は、ア.審決は引用意匠との対比においては本件登録意匠の構成要素⑥「レール裏面中央に浅い溝状部を形成している点」が意匠の構成要素となり得ないと認定する一方で、本意匠との対比においては、「相違点(3)に示すレール裏面の態様における差異(注-裏面中央に浅い溝状部を形成しているか否か)は、両意匠の基調の違いを一層際だたせる効果をもたらしており、この基調の違いは、各共通点からもたらされる類似性を凌駕する」という、矛盾する認定を行っており、明白な誤りがある、イ.本意匠や本件登録意匠に施された傾斜した転動面は、それ自体従前にないものであり、きわめて重要な構成要素となっているとともに、看者に強烈な印象を与える部分であるから、戸車転動面の傾斜角度がいか様であろうと、溝が断面視Y字形状であれば、傾斜角度の差異は戸車転動面がもたらす印象を凌駕するものではない、ウ.外側壁面に断面視鋸歯状の抜け止めが存在している点も両意匠の類似性を裏付ける、などと主張する。 しかし、
(原告の主張)
は、結局、意匠を構成する各部分に個別的に着目したときの両意匠の共通性を取り上げて、両意匠は類似すると主張しているものにすぎないと解される。両意匠を全体観察によって対比すると、本意匠は、溝全体の断面形状を深さが幅の2倍強ある断面視略Y字状としたものであるのに対して、本件登録意匠は、溝全体の断面形状を深さと幅が同程度の断面視略矩形状ないしU字状としたものであって、両意匠には意匠の基調において明らかな差異が認められるのであり、原告が主張する上記ア.ないしウ.の点を勘案しても、前記(1)の判断は動かない。 4 結論 以上のとおりであるから、本件登録意匠と引用意匠との類否、及び本件登録意匠と本意匠との類否についての審決の判断に誤りを認めることはできず、原告主張の取消事由1及び2はいずれも理由がない。 よって、原告の請求を棄却することとし、主文のとおり判決する。東京高等裁判所第18民事部 裁判長裁判官 永 井 紀 昭 裁判官 古 城 春 実裁判官 田 中 昌 利(別紙)別紙1本件登録意匠別紙2引用意匠別紙3本意匠
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