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平成14(行コ)157行政訴訟 特許権

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裁判所 東京高等裁判所
裁判年月日 平成14年10月21日
事件種別 民事
法令 特許権
キーワード 特許権45回
主文
事件の概要

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判決文

平成14年(行コ)第157号 手続却下処分取消請求控訴事件(原審・東京地方
裁判所平成13年(行ウ)第385号) 
(平成14年9月11日口頭弁論終結)
          判    決
      控訴人(原告)     アールエス イノベーション アクテイボ
ラグ
      同訴訟代理人弁護士   神 田 英 一
      同           大 川 淳 子
      被控訴人(被告)    特許庁長官太田信一郎
      同指定代理人      松 下 貴 彦
      同           菊地原 正 彦
      同           佐 藤 一 行
      同           真 鍋 伸 行
          主    文
     1 本件控訴をいずれも棄却する。
     2 控訴費用は、控訴人の負担とする。
          事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
 1 控訴人
  (1) 原判決を取り消す。
 (2) 被控訴人が平成12年4月17日に、控訴人の特許第2066435
号特許権に係る平成11年9月28日付け特許料納付書についてした手続却下処分
を取り消す。
  (3) 被控訴人が平成12年4月25日に、控訴人の特許第2066435
号特許権に係る平成11年11月16日付け特許料納付書(補充)についてした手
続却下処分を取り消す。
 (4) 訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人の負担とする。
2 被控訴人
  主文と同旨
第2 事案の概要
 1 控訴人は、特許第2066435号の特許権(平成8年6月24日設定登
録、以下「本件特許権」という。)について、平成10年5月25日、特許権の移
転登録を得たが、本件特許権について、特許法(以下「法」という。)108条2
項所定の特許料の納付期限(以下「特許料納付期限」という。)を平成10年10
月4日とする第4年分の特許料が納付されず、また、法112条1項所定の6か月
の特許料追納期間(以下「特許料追納期間」という。)が経過する平成11年4月
4日までに第4年分の特許料及び割増特許料が納付されなかったために、本件特許
権は、同条4項の適用により第4年分の特許料納付期限である平成10年10月4
日を経過した時にさかのぼって消滅したものとみなされ、この第4年分の特許料の
不納付を理由として、平成11年6月16日付けで登録の抹消がされた。
 控訴人は、平成11年9月28日、本件特許権について、第4年分の特許料を納
付する旨の特許料納付書(以下「本件納付書」という。)により、3万0300円
を被控訴人に納付したのに対して、被控訴人が、同年10月7日付けで「権利消滅
後の年分に係わる特許料の納付」であることを理由とする却下理由通知を発したと
ころ、控訴人は、同年11月16日、第4年分の特許料についての特許料納付書
(補充)(以下「本件補充納付書」という。)により、さらに3万0300円を被
控訴人に納付した。
 これに対して、被控訴人は、平成12年4月17日、上記却下理由通知の事由が
解消されていないことを理由として、本件納付書について手続却下処分を行い、同
月25日、本件納付書が手続却下処分になったことを理由に、本件補充納付書につ
いて手続却下処分を行ったため(以下、上記両却下処分を「本件各却下処分」とい
う。)、控訴人は、同年6月22日、本件各却下処分に対する異議申立てをした
が、被控訴人が平成13年9月12日、いずれもこれを棄却した。
 そこで、控訴人は、本訴を提起して、控訴人がした上記の特許料の納付手続に
は、法112条の2の特許料及び割増特許料の追納による特許権の回復の規定が適
用されるべきであり、控訴人のした上記の特許料納付手続は適法であると主張し、
被控訴人がした本件各却下処分の取消しを求めた。
 原判決は、本件特許権については、第4年分の特許料について、特許料納付期限
内に特許料の納付がされず、特許料追納期間の経過する平成11年4月4日までに
特許料及び割増特許料の追納がなかったために、法112条の規定により特許料納
付期限である平成10年10月4日を経過した時にさかのぼって消滅したものとみ
なされるところ、控訴人は、法112条の2第1項が規定する6か月の特許権回復
期間(以下「特許権回復期間」という。)の経過する平成11年10月4日までに
第4年分の特許料及び割増特許料の納付をしていないのであるから、本件特許権の
消滅については回復の余地はなく、本件特許権は確定的に消滅している以上、たと
え本件各却下処分を取り消したとしても、本件特許権が回復される余地はないか
ら,本件訴えは訴えの利益を欠くとして、本件訴えをいずれも却下した。
 2 本件の争いのない事実、争点についての当事者の主張は、次のとおり当審に
おける控訴人の主張の要点を付加するほか、原判決の「事実及び理由」中の「第2
 事案の概要」に記載のとおりである(但し、原判決5頁3行目から4行目の「特
許権の回復に何ら言及しないまま、」を「特許権の回復に何ら言及しないまま(特
許権の回復を受けようとするのであれば、特許料納付書に法112条の2第1項の
規定による特許料及び割増特許料の追納である旨を記載する必要がある(法施行規
則69条、様式第70の〔備考〕2参照))、」と、同7頁6行目から7行目の
「6か月以内に、原特許権者が特許料及び割増特許料を追納した場合」を「6か月
以内である場合」と改める。)。
3 当審における控訴人の主張の要点
 (1) 原判決は、本件特許権について、法112条の2第1項が規定する特
許権回復期間の経過する平成11年10月4日までに第4年分の特許料及び割増特
許料の納付がされていないから、本件特許権の消滅については回復の余地はない旨
断じている。
  (2) しかし、本件では、特許権回復期間内(平成11年10月4日まで)
である平成11年9月28日に本件納付書が提出され、金額に不足はあったもの
の、特許料及び割増特許料の納付がされているのである(以下「本件納付」とい
う。)。そして、本件納付における特許料及び割増特許料の不足分3万0300円
については、特許権回復期間経過後に納付されたものであるが、かかる補正は禁止
されていないし、特許庁の実際の取扱いにおいても、特許料の追納額に不足があっ
た場合に、追納期間経過後であっても、不足分を追納すれば追納期間内の追納とし
て有効な手続として認められている(甲第26号証)。
 このように、本件納付における不足分が特許権回復期間経過後に追納されたこと
は、補正可能な形式的な瑕疵にすぎないのであり、それをもって特許料及び割増特
許料が特許権回復期間内に納付されなかったと断じることはできない。また、本件
納付は、特許権を回復するためにされた納付手続であった以上、特許料のみでな
く、特許料及び割増特許料を納付する趣旨であったのは明白である。逆に、特許料
及び割増特許料の納付の趣旨でないというのであれば、それを裏付ける積極的な理
由付けが必要であるが、本件ではそのような理由は存しない。
 したがって、この点について吟味することなく、特許権回復期間内に所定の特許
料及び割増特許料の納付がないと断じた原判決の判断には重大な瑕疵がある。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も、本件特許権については、法112条の2第1項が規定する特許
権回復期間が経過する平成11年10月4日までに、第4年分の特許料及び割増特
許料の追納がされていないから、本件特許権の消滅については回復の余地はなく、
本件特許権は確定的に消滅しており、本件各却下処分の取消しを求める本件訴えは
訴えの利益を欠くものであると判断するが、その理由は、次のとおり控訴人の当審
における主張の要点に対する判断を付加するほか、原判決が「事実及び理由」中の
「第3 当裁判所の判断」として説示するとおりである(但し、原判決8頁24行
目から25行目の「6か月以内に、原特許権者が特許料及び割増特許料を追納した
こと」を「6か月以内であること」と、同9頁12行目の「第4年」を「第4年
分」と、同13行目の「のみを納付手続をした」を「のみの納付手続をした」と改
め、同14行目から15行目の「特許料のみの納付であるから」の次に「特許権回
復期間内に割増特許料の追納がない限り、」を加え、同24行目の「及び」を
「を、また、同月25日に」と改める。)。
2 控訴人は、控訴人が平成11年9月28日に本件納付書により行った本件納
付は、特許料及び割増特許料を納付する趣旨であり、その不足分について、特許権
回復期間経過後の補正が禁止されることはない旨主張している。
 しかしながら、甲第2号証の1、第8ないし第10号証の各1、2、乙第3号
証、第5号証及び弁論の全趣旨によれば、本件納付書による本件納付がされた経緯
及びその納付の趣旨について、次のとおり認められる。すなわち、本件特許権は、
ストックホルムス トレイド カンパニー アクテイボラグ社が出願し、設定登録
を得て、その後、同社からプロコート イノベーション アクテイボラグ社、イン
ダストリアル プロパティ オブ スカンジナビア アクティボラグ社を経由して
控訴人に譲渡されたものであるところ、本件特許出願の復代理人であったA弁理士
は、プロコート イノベーション アクテイボラグ社に特許証を送付する際に、本
件特許権の第4年分の特許料納付期限は平成10年10月4日であるにもかかわら
ず、誤って平成11年10月4日である旨を伝え、さらに、A弁理士は、平成11年
7月8日付けの書簡で、控訴人の在スウェーデンの代理人に対し、本件特許権の第
4年分の特許料納付期限は平成11年10月4日である旨を再度伝えた上、第4年
分の特許料を納付するか否かを問い合わせ、控訴人から、第4年分の特許料を納付
する旨の指示を受けたために、控訴人を代理して、平成11年9月28日に本件納
付書によって特許料のみの納付手続をしたものと認められる。
 そして、法112条の適用により消滅したものとみなされた特許権について法1
12条の2の適用を受けて特許権の回復を得ようとする場合には、特許料納付書
に、法112条の2第1項の規定による特許料及び割増特許料の追納である旨を記
載しなければならないところ(法施行規則69条、様式第70の〔備考〕2)、甲
第6号証によれば、平成11年9月28日付けの本件納付書は、書類名として「特
許料納付書」、納付年分として「第4年分」、特許料の表示の納付金額として「3
0,300円」と表記されているだけで、法112条の2第1項の規定による特許料
及び割増特許料の追納であることは何ら記載されていないものであることが認めら
れる。そして、弁論の全趣旨によれば、本件において特許権回復期間が経過する日
である平成11年10月4日までの間に、本件納付書による特許料の納付が法11
2条の2第1項の規定による特許料及び割増特許料を追納する趣旨であることをう
かがわせる書面や、その旨補正する書面は提出されておらず、また、上記特許料以
外の納付もされず、割増特許料の追納はされていないことが認められる。
 以上によれば、本件納付書による本件納付について、法112条の2第1項の規
定に基づく特許料及び割増特許料の追納であると解する余地がないことは明らかで
あり、本件納付書による本件納付は、特許料及び割増特許料を納付する趣旨のもの
であり、その不足分について、特許権回復期間経過後の補正が禁止されることはな
い旨の控訴人の上記主張は、その前提を欠き、理由がない。そして、上記のとお
り、本件では、法112条の2第1項所定の特許権回復期間が経過する平成11年
10月4日までに特許料及び割増特許料の追納がされなかったのであるから、本件
特許権は回復されることなく、確定的に消滅したものといわざるを得ず、この点に
関する原判決の認定、判断に誤りはない。
 (なお、控訴人は、本件納付書による本件納付の後、遅滞なく補正の指示等があ
れば、控訴人は特許権回復期間内に不足分を追納することができた旨主張するが、
被控訴人が控訴人主張の義務を負担すると解すべき根拠がないばかりでなく、上記
のとおり、本件納付が法112条の2第1項所定の特許料及び割増特許料の追納で
あると解することはできないから、控訴人主張の不足分の追納の余地はないという
べきである。したがって、控訴人の上記主張は理由がない。)
第4 結論
 以上の次第で、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからいずれも棄却す
ることとして、主文のとおり判決する。
    東京高等裁判所第3民事部
    裁判長裁判官   北  山  元  章
裁判官   青  柳     馨
           
           裁判官   橋  本  英  史

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