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平成12(行ケ)210行政訴訟 商標権

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裁判所 東京高等裁判所
裁判年月日 平成12年12月5日
事件種別 民事
法令 商標権
商標法3条1項3号5回
キーワード 審決18回
無効1回
商標権1回
主文
事件の概要 1 特許庁における手続の経緯 被告は、「カライーカ」の文字を横書きしてなり、指定商品を旧第32類「食 肉、卵、食用水産物、野菜、果実、加工食料品(他の類に属するものを除く)」と する登録第2432634号商標(平成1年10月31日登録出願、平成4年7月 31日登録。以下「本件商標」という。)の商標権者である。

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判決文

平成12年(行ケ)第210号 審決取消請求事件(平成12年10月24日口頭
弁論終結)
判    決
   原      告      株式会社全珍
  代表者代表取締役       【A】
  訴訟代理人弁理士      【B】
   被       告      やまなか食品工業株式会社
   代表者代表取締役      【C】
  訴訟代理人弁理士       【D】
   同             【E】
    主    文
     原告の請求を棄却する。
     訴訟費用は原告の負担とする。
事    実
第1 請求
  特許庁が平成9年審判第1720号事件について平成12年4月20日にし
た審決を取り消す。
第2 前提となる事実(争いのない事実)
1 特許庁における手続の経緯
被告は、「カライーカ」の文字を横書きしてなり、指定商品を旧第32類「食
肉、卵、食用水産物、野菜、果実、加工食料品(他の類に属するものを除く)」と
する登録第2432634号商標(平成1年10月31日登録出願、平成4年7月
31日登録。以下「本件商標」という。)の商標権者である。
 原告は、平成9年2月6日、本件商標の登録無効の審判を請求し、特許庁は、平
成9年審判第1720号事件として、これを審理した結果、平成12年4月20日
に、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は同年5月2
2日に原告に送達された。
 2 審決の理由 
 別紙審決の理由の写しのとおり、本件商標は、「カライーカ」の文字を一体不可
分に書してなる造語であるから、商品の品質又は用途等を表示するものではなく、
それ自体自他商品の識別標識としての機能を果たすものであり、かつ、商品の品質
について誤認を生じさせるおそれはないものと認められるとして、本件商標は、商
標法3条1項3号及び4条1項16号に該当しないと認定、判断した。
第3 原告主張の審決取消事由の要点
 1 審決は、本件商標を構成する「カライーカ」の文字は、各文字が外観上まと
まりよく一体的に表現されてなるので、これを「カライ」の文字部分と「イーカ」
の部分とに分離して観察しなければならない理由はなく、「カライ」の文字部分が
「辛い」に通じる場合があるとしても、「イーカ」の文字部分が「烏賊」を意味す
るものとして、直ちに理解され、認識されるとはいい難いから、かかる構成におい
ては特定の商品又は商品の品質、用途等を具体的に表示するものとして理解されて
いるとはいえず、構成全体をもって一体不可分の造語を表現しているとみるのが自
然である、と判断しているが、この判断は誤りである。
 すなわち、本件商標の指定商品中には、烏賊を使用する加工食品が含まれてお
り、この加工食品に付された「カライーカ」に接した一般需要者は、「カライ」の
文字から「辛い」を直感するとともに、「イーカ」の文字から「烏賊」を直感する
ものであり、特にこの加工食品が「辛い味付けを施された烏賊を使用する加工食
品」である場合には、本件商標は、当該商品の品質を普通に用いられる方法で表示
する標章のみからなる商標であるというべきである。
 そして、審決は上記の判断に基づいて、本件商標は、「カライーカ」の文字を一
体不可分に書してなる造語であるから、「味覚が激しく辛い商品」の意味合いを容
易に想起させるものとはいい難い、と判断しているが、前提となった上記の判断に
誤りがあるのであるから、この判断が不当なことは明らかである。
 2 仮に、上記の判断が認められたとしても、審決は、次の点で誤っている。
 本件商標は、「激しく舌を刺激するような味である辛い」を「カライ」の文字で
表し、続いて「ー」でこの辛さを強調するとともに、「自己の疑問をそのまま表現
する助詞の『か』」を片仮名の「カ」で表したものであって、単に「味覚が激しく
辛い商品」という意味合いを示すにとどまり、商品の品質を普通に用いられる方法
で表示する標章のみからなる商標であり、審決は、この点を看過している。
 このことは、「コクナール」、「スグレータ」等のような標章で長音を除いて考
察した場合に、商品の品質、用途、効能等を表示するものと認められるときは、商
標法3条1項3号の規定に該当するという、商標審査基準からも裏付けられる。
 また、「KARAI~KA」(商願昭61ー9666号)及び「からい~か」
(商願昭62ー139233号)という先願商標の審査結果からも裏付けられる。
 これら商標審査基準や先願商標の審査結果を考慮すれば、たとえ造語であって
も、商品の品質、用途、効能等を表示するものと判断される場合もあり、「カライ
ーカ」はこれに該当するものである。
 審決は、この点を看過し、本件商標は、「カライーカ」の文字を一体不可分に書
してなる造語であるから、これより「味覚が激しく辛い商品」の意味合いを容易に
想起させるものとはいい難い、との誤った判断をしたものであり、不当である。
 そして、審決は、上記の誤った判断に基づいて、本件商標は、これをその指定商
品について使用しても、商品の品質又は用途等を表示するものではなく、それ自体
自他商品の識別標識としての機能を果たすものであり、かつ、商品の品質について
誤認を生じさせるおそれはないものと認定した点に違法がある。
 3 よって、本件商標が商標法3条1項3号及び4条1項16号に該当しないと
した審決は取り消されるべきものである。
第4 被告の反論の要点
 1 原告は、本件商標は、「カライ」と「イーカ」に分離されることを前提に、
「カライ」から「辛い」を、「イーカ」から「烏賊」を直感し、本件商標は、「辛
い味付けを施された烏賊」という意味を表示するにすぎない旨主張している。
 しかし、本件商標は、その構成各文字が外観上まとまりよく一体的に表現されて
なるものであり、これを「カライ」の文字部分と「イーカ」の文字部分とに分離し
て観察しなければならない理由はなく、「カライ」の文字部分が「辛い」に通じる
場合があるとしても、「イーカ」の文字部分が「烏賊」を意味するものとして直ち
に理解され、認識されるものとはいえない。本件商標は「カライイカ」ではなく、
「カライーカ」である点に留意する必要がある。
 よって、本件商標は「辛い味付けを施された烏賊」という意味を表示するにすぎ
ない内容表示商標とはいえず、原告の主張は誤りである。
 2 また、原告は、本件商標を「カライ」と「ー」と「カ」とに分離し、本件商
標は単に「味覚が激しく辛い商品」という意味を表示するにすぎない旨主張してい
る。
 しかし、上記の理由から、本件商標を「カライ」と「ー」と「カ」の3つに分離
する必然性はなく、よって、本件商標は単に「味覚が激しく辛い商品」という意味
を表示するにすぎない内容表示商標とはいえず、原告の主張は誤りである。
 そもそも、上記3つの分離が可能としても、「ー」が「辛さを強調」、「カ」が
「疑問助詞」であるとして、「味覚が激しく辛い商品」という意味が何故導けるの
か、被告には不明である。
 原告が指摘する「コクナール」、「スグレータ」の標章は、長音を除くと、「コ
クナル」(濃くなる)、「スグレタ」(秀れた)となり、商品の品質、用途、効能
等を表示するものといえるかもしれないが、本件商標は、長音を除くと、「カライ
カ」(「カライイカ」ではない。)となり、決して商品の品質等を表示するものと
はいえない。したがって、原告指摘の商標審査基準と本件商標が登録されたことに
は何ら矛盾はない。
 また、原告指摘の「KARAI~KA」(商願昭61-9666号)及び「から
い~か」(商願昭62-139233号)も、前者は「~」により「KARAI」
と「KA」が分離され、後者は「~」により「からい」と「か」が分離されている
もので、これらの標章が拒絶されたことと、本件商標が登録されたことには何ら矛
盾はない。
 3 被告の主張は、次の登録商標の存在によっても正当であるといえる。
  ① 商標登録第4265148号「めんたいか」(乙第1号証)
 この商標は「めんたいいか」ではない点に留意する必要がある。
  ② 商標登録第2502412号「おいしいか」(乙第2号証)
 この商標は「おいしいいか」ではない点に留意する必要がある。
  ③ 商標登録第4349092号「カラピリいーか」(乙第3号証)
 4 以上のとおり、本件商標は、商標法3条1項3号及び4条1項16号に該当
するものではなく、審決には何ら誤りはない。     理    

1 本件商標が、「カライーカ」の文字を横書きしてなり、指定商品を旧第32類
「食肉、卵、食用水産物、野菜、果実、加工食料品(他の類に属するものを除
く)」とするものであることは争いがないところ、甲第2号証によると、本件商標
を構成する「カライーカ」の文字は、同一の書体により同一の大きさで書されてお
り、外観上まとまりよく、一体的に表現されていることが認められる。
 そして、本件商標について、「カライ」の文字部分と「イーカ」の文字部分、又
は、「カライ」の文字部分と「ー」の文字部分と「カ」の文字部分とに、それぞれ
分離して観察すべき特段の理由はないから、本件商標は、その構成の全体をもっ
て、特定の意味を持たない一体不可分の造語であると認めるのが相当である。
2 したがって、これと同旨の判断によって、本件商標は、商品の品質又は用途等
を表示するものではなく、それ自体自他商品の識別標識としての機能を果たすもの
であり、かつ、商品の品質について誤認を生じさせるおそれはないものと認められ
るとして、本件商標は商標法3条1項3号及び4条1項16号に該当しないと認
定、判断した審決に誤りはない。
3 なお、原告は、本件商標「カライーカ」が「辛い味付けを施された烏賊」又は
「味覚が激しく辛い商品」を容易に想起させるものである旨主張するところ、「カ
ライーカ」から「辛い」、「烏賊」あるいは「辛い烏賊」を連想することがないで
はないとしても、一般的に取引者、需要者が本件商標に接した場合、それが単に原
告主張の上記意味を示すものとして理解するにすぎず、出所の識別標識としては認
識しないであろうと推認すべき根拠は見いだし難い。
 また、原告は、他の標章についての審査基準や審査例を挙げて、審決の上記の判
断がこれらと矛盾している旨主張しているが、原告が指摘する標章は、いずれも本
件商標とはその構成を異にしており、上記の判断の妨げとなるものではない。
4 結論
 以上のとおり、原告主張の審決取消事由は理由がなく、その他審決にはこれを取
り消すべき瑕疵は見当たらない。
 よって、原告の請求は理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり
判決する。
東京高等裁判所第18民事部
     裁判長裁判官   永  井  紀  昭
      裁判官   塩  月  秀  平
     裁判官  橋  本  英  史

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