平成12(行ケ)113行政訴訟 特許権
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裁判所 |
東京高等裁判所
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裁判年月日 |
平成12年11月28日 |
事件種別 |
民事 |
法令 |
特許権
特許法29条2項1回 民事訴訟法61条1回
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キーワード |
審決5回 特許権2回 進歩性1回
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主文 |
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事件の概要 |
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判決文
平成12年(行ケ)第113号 取消決定取消請求事件
平成12年11月28日口頭弁論終結
判 決
原 告 株式会社新素材総合研究所
代表者代表取締役 【A】
訴訟代理人弁理士 【B】
同 【C】
同 【D】
同 【E】
被 告 特許庁長官 【F】
指定代理人 【G】
同 【H】
同 【I】
同 【J】
主 文
特許庁が平成10年異議第72263号事件について平成12年1月27日にし
た決定を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 原告
主文と同旨
2 被告
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
第2 当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯
原告は、発明の名称を「内容物入り容器」とする特許2675075号の特許
(昭和63年6月10日出願、平成9年7月18日特許権設定登録、以下「本件特
許」といい、その発明を「本件発明」という。)の特許権者である。
氏原さち及びテルモ株式会社は、本件発明に係る特許につき特許異議の申立て
をし、特許庁は、同請求を平成10年異議72263号として審理した。原告は、
この審理の過程において、平成11年1月18日、本件発明について、訂正請求を
したが(以下、この訂正請求を「本件訂正請求」という。)、訂正拒絶理由通知を
受けたため、平成11年4月27日に手続補正書を提出した(以下、「本件補正」
という。)。特許庁は、審理の結果、平成12年1月27日、「特許第26750
75号の特許を取り消す。」との決定をし(以下「本件決定」という。)、その謄
本を同年3月8日に原告に送達した。
2 本件発明の特許請求の範囲
(1) 特許公報記載の特許請求の範囲
「(請求項1)イージーピールオープン性を有するシールを隔離手段とし
て、複数の室に隔離されたポリオレンフィン系樹脂製の袋状の容器と該複数の室に
隔離して封入された内容物とから成り、使用時に該容器の外部からの操作により該
隔離手段を剥離し、該複数の室を連通することによって、該内容物を外気にさらす
ことなく混合することができる内容物入りの容器であって、該容器を形成するシー
トの周縁シール部の直接接着に関与する少なくとも一部の樹脂が該隔離手段の直接
接着に関与する樹脂と同一であり、該隔離手段に関与する樹脂が少なくとも溶融開
始温度が異なる2種類以上のポリオレフィン系の樹脂から成る樹脂混合物であるこ
とを特徴とする内容物入りの容器。
(請求項2)該容器の本体シートが該樹脂混合物を最内層に有する多層シー
トであることを特徴とする特許請求の範囲第1項に記載の内容物入りの容器。
(請求項3)該樹脂混合物に混合された少なくとも1種類の樹脂が、隣接す
る層を構成する樹脂の少なくとも1種類の樹脂と実質的に同じ樹脂であることを特
徴とする特許請求の範囲第2項に記載の内容物入りの容器。
(請求項4)該多層シートの最大肉厚層を形成する樹脂が直鎖状低密度ポリ
エチレン系の樹脂であることを特徴とする特許請求の範囲第2項または第3項に記
載の内容物入りの容器。
(請求項5)該樹脂混合物を形成する2種類以上のポリオレフィン系の樹脂
のうち、溶融開始温度の高い方の樹脂の混合比率が10重量%~90重量%である
ことを特徴とする特許請求の範囲第1項ないし第4項の何れかに記載の内容物入り
の容器。
(請求項6)該樹脂混合物を形成する2種類以上のポリオレフィン系の樹脂
のうち、溶融開始温度の最も低い樹脂と最も高い樹脂の溶融開始温度差が8℃以上
であることを特徴とする特許請求の範囲第1項ないし第5項の何れかに記載の内容
物入りの容器。
(請求項7)該樹脂混合物に混合された少なくとも1種類の樹脂が該最内層
に隣接する層を形成する直鎖状低密度ポリエチレン系の樹脂よりも8℃以上高い溶
融開始温度を有する樹脂であることを特徴とする特許請求の範囲第4項ないし第6
項の何れかに記載の内容物入りの容器。
(請求項8)該樹脂混合物を構成する樹脂のうち溶融開始温度が低い樹脂の
少なくとも1種類が直鎖状低密度ポリエチレン系の樹脂であって、ポリプロピレン
系の樹脂を20~80重量%の割合で混合した混合物であることを特徴とする特許
請求の範囲第1項ないし第6項の何れかに記載の内容物入りの容器。
(請求項9)該内容物が体内に注入するための医薬品であって、少なくとも
該内容物を排出するためのポートと該容器を吊り下げるための懸垂用部分を有し、
オートクレーブ滅菌されていることを特徴とする特許請求の範囲第1項ないし第7
項の何れかに記載の内容物入りの容器。」
(2) 本件訂正請求に係る特許請求の範囲(下線部分が訂正請求に係る部分であ
る。)
「(請求項1)(イ).イージーピールオープン性を有するシールを隔離手
段として、複数の室に隔離されたポリオレフィン系樹脂製の袋状の容器と該複数の
室に隔離して封入された内容物とから成り、使用時に該容器の外部からの操作によ
り該隔離手段を剥離し、該複数の室を連通することによって、該内容物を外気にさ
らすことなく混合することができる内容物入りの容器であって、
(ロ).該容器を形成するシートの周縁シール部の直接接着に関与する樹脂
が該隔離手段の直接接着に関与する樹脂と同一であり、
(ハ).該隔離手段に関与する樹脂が少なくとも溶融開始温度が異なる2種
類以上のポリオレフィン系の樹脂から成る樹脂混合物であり、
(ニ).該ポリオレフィン系の樹脂が直鎖状低密度ポリエチレンの樹脂とポ
リプロピレン系の樹脂とからなり、
(ホ).該直鎖状低密度ポリエチレンの樹脂と該ポリプロピレン系の樹脂と
の混合重量比率が2/8~8/2の範囲であり、
(ヘ).該内容物が体内に注入するための医薬品を含み、該医薬品は該容器
と共にオートクレーブ滅菌されている
ことを特徴とする内容物入り容器。」
(3) 本件補正に係る特許請求の範囲(下線部分が補正に係る部分である。)
「(請求項1)(イ).イージーピールオープン性を有するシールを隔離手
段として、複数の室に隔離されたポリオレフィン系樹脂製の袋状の容器と該複数の
室に隔離して封入された内容物とから成り、使用時に該容器の外部からの操作によ
り該隔離手段を剥離し、該複数の室を連通することによって、該内容物を外気にさ
らすことなく混合することができる内容物入りの容器であって、
(ロ).該容器を形成するシートの周縁シール部の直接接着に関与する樹脂
が該隔離手段の直接接着に関与する樹脂と同一であり、
(ハ).該隔離手段に関与する樹脂が少なくとも溶融開始温度が異なる2種
類以上のポリオレフィン系の樹脂から成る樹脂混合物であり、
(ニ).該ポリオレフィン系の樹脂が直鎖状低密度ポリエチレンの樹脂とポ
リプロピレン系の樹脂とからなり、
(ホ).該直鎖状低密度ポリエチレンの樹脂と該ポリプロピレン系の樹脂と
の混合重量比率が2/8~8/2の範囲であり
(ヘ).該容器の本体シートが該樹脂混合物を最内層に有する多層シートで
あり、該樹脂混合物に混合された少なくとも1種類の樹脂が、隣接する層を構成す
る樹脂の少なくとも1種類の樹脂と実質的に同じ樹脂であり、
(ト).該内容物が体内に注入するための医薬品を含み、該医薬品は該容器
と共にオートクレーブ滅菌されている
ことを特徴とする内容物入り容器。」
3 本件決定の理由の要点
別紙決定書の理由の写しのとおりであり、要するに、①本件補正は、訂正請求
書の要旨を変更するものであるから、平成6年法律第116号附則6条1項により
準用される特許法120条の4第3項において準用する同法131条2項の規定に
適合せず、当該補正は認められない、②本件訂正請求に係る発明は、引用例記載の
発明から当業者が容易に発明することができたものであるから、同法29条2項に
より特許出願の際独立して特許を受けることができないものであり、この訂正は同
法120条の4第3項で準用する同法126条4項に適合しないので、当該訂正
は、認められない、②本件発明は、引用例記載の発明から当業者が容易に発明する
ことができたものであるから、本件発明の特許は、特許法29条2項に違反してさ
れたものとして、取り消されるべきであるとしたものである。
4 本件決定後の訂正審決による特許請求の範囲の訂正
(1) 原告は、本件決定後である平成12年7月5日に本件発明に係る明細書の
訂正をすることについて審判を請求し、特許庁は、同請求を訂正2000-390
73号事件として審理した結果、同年9月19日に上記訂正を認める旨の審決(以
下「本件訂正審決」という。)をし、本件訂正審決は確定した。
(2) 本件訂正審決による訂正後の特許請求の範囲の記載は次のとおりである
(下線部分が訂正に係る部分である。)。
「(請求項1)(A).イージーピールオープン性を有するシールを隔離手
段として、複数の室に隔離されたポリオレフィン系樹脂製の袋状の容器と該複数の
室に隔離して封入された内容物とから成り、使用時に該容器の外部からの操作によ
り該隔離手段を剥離し、該複数の室を連通することによって、該内容物を外気にさ
らすことなく混合することができる内容物入りの容器であって、
(B).該容器を形成するシートの周縁シール部の直接接着に関与する樹脂
が該隔離手段の直接接着に関与する樹脂と同一であり、
(C).該隔離手段に関与する樹脂が少なくとも溶融開始温度が異なる2種
類以上のポリオレフィン系の樹脂から成る樹脂混合物であり、
(D).該ポリオレフィン系の樹脂が直鎖状低密度ポリエチレン系の樹脂と
ポリプロピレン系の樹脂とからなり、
(E).該直鎖状低密度ポリエチレン系の樹脂と該ポリプロピレン系の樹脂
との混合重量比率が2/8~8/2の範囲であり、
(F).該容器の本体シートが該樹脂混合物を最内層に有する多層シートで
あり、
(G).該内容物が体内に注入するための医薬品を含み、
(H).該容器はオートクレーブ滅菌されている
ことを特徴とする内容物入り容器。
(請求項2)(I).該樹脂混合物に混合された少なくとも1種類の樹脂
が、隣接する層を構成する樹脂の少なくとも1種類の樹脂と実質的に同じ樹脂であ
ることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の内容物入り容器。
(請求項3)(J).該隣接する層を構成する樹脂が、直鎖状低密度ポリエ
チレン系の樹脂であることを特徴とする特許請求の範囲第2項記載の内容物入り容
器。
(請求項4)(K).該多層シートの最大肉厚層を形成する樹脂が直鎖状低
密度ポリエチレン系の樹脂であることを特徴とする特許請求の範囲第2または第3
項記載の内容物入り容器。
(請求項5)該樹脂混合物を形成する2種類以上のポリオレフィン系の樹脂
のうち、溶融開始温度の最も低い樹脂と最も高い樹脂の溶融開始温度差が8℃以上
であることを特徴とする特許請求の範囲第1項ないし第4項の何れかに記載の内容
物入りの容器。
(請求項6)少なくとも該内容物を排出するためのポートと該容器を吊り下
げるための懸垂用部分を有することを特徴とする特許請求の範囲第1項ないし第5
項の何れかに記載の内容物入りの容器。」
第3 当裁判所の判断
1 以上の事実によれば、本件決定は、結果的に、本件発明の技術内容を誤って
認定したことになり、この誤りが、同技術内容と先行技術とを対比して本件発明の
進歩性を否定した決定の結論に影響を及ぼすことは明らかである。したがって、本
件決定は、違法であって、取消しを免れない。
2 よって、本訴請求を認容することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴
訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第6民事部
裁判長裁判官 山 下 和 明
裁判官 山 田 知 司
裁判官 阿 部 正 幸
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