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平成10(行ケ)350行政訴訟 実用新案権

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裁判所 東京高等裁判所
裁判年月日 平成12年3月29日
事件種別 民事
法令 実用新案権
民事訴訟法61条1回
キーワード 審決40回
無効4回
実施2回
無効審判1回
主文
事件の概要

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判決文

平成10年(行ケ)第350号審決取消請求事件(平成12年3月22日口頭弁論
終結)
判     決
原      告    西部産業株式会社
代表者代表取締役    【A】
訴訟代理人弁護士    吉 武 賢 次
同           神 谷  巖
同    弁理士    【B】
同           【C】
被      告    【D】
訴訟代理人弁理士    【E】
主     文
特許庁が、平成9年審判第12666号事件について、平成10年9月1
8日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第1 当事者の求めた判決
1 原告
主文と同旨
2 被告
 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
第2 当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯
 被告は、考案の名称を「海苔乾燥装置」とする登録第1599195号実用
新案(昭和57年9月28日実用新案登録出願、昭和60年6月11日設定登録、
以下「本件考案」という。)の実用新案登録権者である。
 原告は、平成9年7月25日、本件考案につき、その登録を無効とする旨の
審判の請求をしたところ、被告は、平成10年6月5日、本件考案に係る明細書に
ついて訂正の請求(以下「本件訂正」という。)を行った。
 特許庁は、前記無効審判請求を平成9年審判第12666号事件として審理
した上、平成10年9月18日、「訂正を認める。本件審判の請求は、成り立たな
い。」との審決をし、その謄本は、同年10月21日、原告に送達された。

1 本件考案の要旨
 乾燥室1の正面開口部2から奥部に亘って正面開口部および奥部に設けた
チェンホイール6,6aを循環する間歇回動無端チェン3,3aを複数段に設け、
同チェン3,3aにそれぞれ海苔簀枠支持杆4を設け、上記チェン3,3aの下側
移行部に沿って海苔簀枠落下防止装置5,5aを設け、かつ上段側上記チェン3の
上記正面開口部チェンホイール6迂回部7から下段側上記チェン3aの上記正面開
口部チェンホイール6迂回部7との間に海苔簀枠上下反転下降誘導装置8を設けて
なる海苔乾燥装置(なお、審決は、「迂回部」をすべて「迂回路」と表示している
が、誤記と認められるので、訂正して記載する。)。
2 本件訂正後の本件考案(以下「訂正後考案」という。)の要旨
 乾燥室1の正面開口部2から奥部に亘って正面開口部および奥部に設けた
チェンホイール6,6aを循環する間歇回動無端チェン3,3aを複数段に設け、
同チェン3,3aにそれぞれ海苔簀枠支持杆4を設け、しかも、同チェン3,3a
のそれぞれは、海苔簀枠20を、上側移行部と下側移行部とでは、その姿勢が上下
方向反転した状態で移送するように構成し、上記チェン3,3aの下側移行部に沿
って海苔簀枠落下防止装置5,5aを設け、かつ上段側上記チェン3の上記正面開
口部チェンホイール6迂回部7から下段側上記チェン3aの上記正面開口部チェン
ホイール6迂回部7との間に海苔簀枠上下反転下降誘導装置8を設けてなる海苔乾
燥装置。
3 審決の理由
 審決は、別添審決書写し記載のとおり、本件訂正が、実用新案登録請求の範
囲を実質上拡張し、又は変更するものでなく、訂正後考案が、実願昭53-618
14号(実開昭54-163196号)のマイクロフィルム(審決甲第1号証、本
訴甲第4号証、以下「引用例1」という。)、実願昭53-148863号(実開
昭55-65994号)のマイクロフィルム(審決甲第2号証、本訴甲第5号証、
以下「引用例2」という。)及び特開昭57-26570号公報(審決甲第3号
証、本訴甲第6号証)に記載された考案(以下、そこに記載された各考案を「引用
例考案1」~「引用例考案3」という。)に基づいて、当業者がきわめて容易に考
案をすることができたとはいえないから、独立登録要件を満たすものであって、本
件訂正が認められ、訂正後考案が、引用例発明1~3に基づき当業者がきわめて容
易に考案をすることができたとはいえないから、請求人(本訴原告)の主張する理
由及び証拠方法によっては、訂正後考案を無効とすることができないとした。
第3 原告主張の審決取消事由の要点
 審決の理由中、本件考案及び訂正後考案の要旨の認定、本件訂正の適否の判
断の一部(審決書4頁2行~8頁1行。ただし、7頁6~9行を除く。)、請求人
(本訴原告)及び被請求人(本訴被告)の無効理由についての主張の認定(同11
頁8行~12頁13行)は、いずれも認める。
 審決は、訂正後考案の技術内容を誤認する(取消事由1)とともに、訂正後
考案と引用例考案3との相違点についての判断を誤った(取消事由2)結果、訂正
後考案が引用例考案2及び3に基づいてきわめて容易に考案をすることができたも
のとはいえず、独立登録要件を満たすから本件訂正が認められるとの誤った結論に
至ったものであるから、違法として取り消されなければならない。
1 取消事由1(訂正後考案の誤認)
 審決は、「本件考案(注、訂正後考案を指す。)の前記海苔簀枠上下反転下
降誘導装置8は、上段側チェン3の下側移行部から下段側チェン3aの上側移行部
に海苔簀枠を上下方向反転させて移す・・・海苔簀枠(ホルダー)を移す下段側チ
ェン(チェーンコンベヤ)の位置が、本件考案では、上側移送部であり」(審決書
8頁11行~9頁1行)と認定しているが、訂正後考案は、海苔簀枠を上段側間歇
回動無端チェンの下側移行部から下段側間歇回動無端チェンの上側移行部に移すこ
とを構成要件とはしていないから、上記認定は、訂正後考案の構成要件に基づいて
おらず誤りである。
 被告は、訂正後考案の上下段側の間歇回動無端チェン3、3aが、上側移行
部と下側移行部とで海苔簀枠20の姿勢が上下方向反転した状態で移送されるもの
であるから、各チェン3、3a間で海苔簀枠20が反転すれば、当然に海苔簀枠2
0の移し位置は上側移行部に限定されると主張する。
 しかし、訂正後考案では、上下段側の間歇回動無端チェン3、3aが上側移
行部と下側移行部とで海苔簀枠の姿勢が上下方向反転した状態で移送されるもので
はあるが、各チェン3、3a間で上下反転された海苔簀枠を下段側チェン3aの迂
回部のどこかに移送することにより、海苔簀枠が下段側チェン3aの上側移行部に
移送されるのであるから、各チェン3、3a間で海苔簀枠が反転すれば、当然に海
苔簀枠の移し位置が上側移行部に限定されるとはいえない。このことは、訂正後考
案の要旨に、「上段側上記チェン3の上記正面開口部チェンホイール6迂回部7か
ら下段側上記チェン3aの上記正面開口部チェンホイール6迂回部7との間に海苔
簀枠上下反転下降誘導装置8を設けてなる」と記載され、上下反転した海苔簀枠を
迂回部に移送するものに特定し、上側移行部に特定していないことからみても明白
である。
 また、被告は、訂正後考案で、迂回部と迂回部との間に海苔簀枠上下反転下
降誘導装置を設けたとは、海苔簀枠上下反転下降誘導装置が迂回部と別体の装置で
あるということに他ならないと主張する。
 しかし、訂正後考案の実用新案登録請求の範囲には、海苔簀枠上下反転下降
誘導装置の構成について、それが迂回部と別体のものである等、何の特定もなく、
上段側間歇回動無端チェン3の迂回部から、下段側間歇回動無端チェン3aの迂回
部へ、海苔簀枠を反転して下降誘導すれば足り、その反転のために下段側間歇回動
無端チェン3aのスプロケット懸回部(迂回部の一部)が使用されなくとも、差し
支えないのであるから、上記主張は、訂正後考案の要旨に基づかないものである。
2 取消事由2(相違点判断の誤り)
 審決は、訂正後考案と引用例考案3との比較において、「本件考案が、『上
段側上記チェン3の上記正面開口部チェンホイール6迂回部7から下役側上記チェ
ン3aの上記正面開口部チェンホイール6迂回部7との間に海苔簀枠上下反転下降
誘導装置8を設け』たものであるのに対し、甲第3号証記載のものは、『上段側上
記チェンの上記正面開口部チェンホイール迂回部から下段側上記チェンの上記正面
開口部チェンホイール迂回部との間に海苔簀枠下降誘導装置14を設け』たもので
ある点で、両者は相違するものの、その余の点では一致する。」(審決書7頁10
行~8頁1行)と認定し、両考案の相違点が、要するに、海苔簀枠を上段側チェン
から下段側チェンに移すに当たって、上下反転せずに移すか上下反転させて移すか
の違いのみであると指摘する。
 一方、引用例考案2には、乾燥室内に、海苔簀ホルダーを移送するチェーン
コンベヤを複数段に設け、上段側コンベヤの終端部(ここまでは、その前側枠棒が
チェーンコンベヤ24に設けられた係止突起f’のみで把持されて水平に移動させ
られてくる海苔簀ホルダー2の位置であり、その海苔簀ホルダー2が位置している
係止突起f’の開口部が終端開口部である。)と下段側コンベヤの始端部(ここか
らは、その後側枠棒がチェーンコンベヤ25に設けられた係止突起f’のみで把持
されて水平に移動させられる海苔簀ホルダー2の位置であり、その海苔簀ホルダー
2が位置している係止突起f’の開口部が始端開口部である。)との間に、スプロ
ケット懸回途中部と反転用チェーンコンベヤ42等からなる海苔簀枠上下反転移送
装置を設け、海苔簀枠を反転させて下段側コンベヤに移す構成が記載され、上段側
コンベヤから下段側コンベヤとの間に、海苔簀枠を上下反転させて移す海苔簀枠上
下反転移送装置を設ける構成が開示されている。
 したがって、この構成を引用例考案3と組み合わせることにより、訂正後考
案はきわめて容易に考案をすることができるものである。
 被告は、引用例考案2は、本来の迂回部であるスプロケット懸回部、始端開
口部及び終端開口部を含んでの迂回部であるから、本件考案のように上段側チェー
ンコンベヤの迂回部と下段側チェーンコンベヤの迂回部との間に、海苔簀枠の反転
装置があるものではないと主張する。
 しかし、引用例考案2の始端開口部も終端開口部も迂回部の一部であるか
ら、同考案の技術は、訂正後考案のように、上段側チェンの迂回部と下段側チェン
の迂回部との間に反転用チェーンコンベア42やスプロケット懸回部等からなる簀
枠反転装置を設けたものといえることが明白である。
したがって、審決が、「本件考案が、甲第2、3号証記載のものに基づいて
当業者がきわめて容易に考案できたものとは認められない。」(審決書9頁12~
15行)と判断したことは誤りである。
第4 被告の反論の要点
 審決の認定判断は正当であって、原告主張の審決取消事由はいずれも理由が
ない。
1 取消事由1について
 訂正後考案は、「乾燥室の正面開口部から奥部に亘って、
正面開口部及び奥部に設けたチェンホイールを循環する間歇回動無端チェンを
複数段に設けていること」、「チェンのそれぞれが、海苔簀枠を、上側移行部と下
側移行部とでは、その姿勢が上下方向反転した状態で移送するように構成している
こと」、「上段側チェンの迂回部から下段側チェンの迂回部との間に、海苔簀枠上
下反転下降誘導装置を設けていること」を主たる技術構成としており、上下段側の
間歇回動無端チェン3、3aが、上側移行部と下側移行部とで海苔簀枠20の姿勢
が上下方向反転した状態で移送されるものである。したがって、各チェン3、3a
間で海苔簀枠20が反転すれば、当然に海苔簀枠20の移し位置は上側移行部に限
定される。
 また、訂正後考案で、迂回部と迂回部との間に海苔簀枠上下反転下降誘導装
置を設けたとは、海苔簀枠上下反転下降誘導装置が迂回部と別体の装置であるとい
うことに他ならない。訂正後考案の実施例でも、迂回部とは別体に海苔簀枠上下反
転下降誘導装置が設けられている。
 したがって、訂正後考案についての審決の認定に誤りはない。
2 取消事由2について
 訂正後考案と引用例考案3との差異が、海苔簀枠を上下反転させて移すか、
上下反転させずに移すかの違いであること、引用例考案2に、海苔簀枠上下反転下
降誘導装置が開示されていることはいずれも認める。
 しかし、この海苔簀枠を反転させる装置は、下段コンベヤの始端部である迂
回部と一体に設けられており、この始端部に至るスプロケット懸回部もまた迂回部
であるから、上段コンベヤの終端部と下段コンベヤの始端部との間に設けられては
いない。いいかえれば、引用例考案2では、海苔簀枠反転装置が、下段コンベヤの
迂回部そのものであり、コンベアの始端部における迂回作動時に簀枠が上下反転さ
れる技術である。したがって、引用例考案2は、訂正後考案が要旨とする「上段側
チェンの迂回部と下段側チェンの迂回部との間に海苔簀枠上下反転下降誘導装置を
設けた構成」を有するものではない。
 そうすると、引用例考案2及び3から、訂正後考案がきわめて容易に考案で
きたものでないとする審決の判断(審決書9頁12~15行)に誤りはない。
第5 当裁判所の判断
1 取消事由1、2(訂正後考案の誤認及び相違点判断の誤り)について
 審決の理由中、本件考案及び訂正後考案の要旨の認定、本件訂正の適否の判
断の一部(審決書4頁2行~8頁1行。ただし、7頁6~9行を除く。)は、当事
者間に争いがない。
 原告は、訂正後考案が、海苔簀枠を上段側間歇回動無端チェンの下側移行部
から下段側間歇回動無端チェンの上側移行部に移すことを構成要件とはしていない
から、審決が、本件考案の前記海苔簀枠上下反転下降誘導装置8は、上段側チェン
3の下側移行部から下段側チェン3aの上側移行部に海苔簀枠を上下方向反転させ
て移す・・・海苔簀枠(ホルダー)を移す下段側チェン(チェーンコンベヤ)の位
置が、本件考案では、上側移送部であり」(審決書8頁11行~9頁1行)と認定
したことが誤りであると主張する。
 この点について、前示訂正後考案の要旨によれば、複数段に設けられた間歇
回動無端チェンが、海苔簀枠を上下反転した状態で移送する上側移行部と下側移行
部とを有し、上段側チェンの正面開口部チェンホイール及び迂回部と、下段側チェ
ンの正面開口部チェンホイール及び迂回部との間に、海苔簀枠上下反転下降誘導装
置が設けられていることを規定していると認められるものの、その上下反転下降誘
導装置に対して、間歇回動無端チェンを移送してきた海苔簀枠を受け渡し、また、
受け取る形態については全く特定されていないことが明らかである。
 したがって、間歇回動無端チェンの上側移行部、正面開口部チェンホイール
迂回部、下側移行部のいずれから、上下反転下降誘導装置に海苔簀枠を受け渡すの
か、また、上側移行部、正面開口部チェンホイール迂回部、下側移行部のいずれ
が、上下反転下降誘導装置から海苔簀枠を受け取るのかは、特定されていないか
ら、審決の上記認定は誤りといわなければならない。
 被告は、訂正後考案の主たる技術構成において、上下段側の間歇回動無端チ
ェンが、上側移行部と下側移行部とで海苔簀枠の姿勢を上下方向反転した状態で移
送され、各チェン間で海苔簀枠が反転することを理由に、当然、海苔簀枠の移し位
置は上側移行部に限定されると主張する。
 しかし、訂正後考案の要旨は、前示のとおり、上下反転下降誘導装置に対し
て、海苔簀枠を受け渡し、受け取る形態を特定するものではなく、仮に、上下反転
下降誘導装置に受け渡された海苔簀枠を、下段側間歇回動無端チェンの上記迂回部
(あるいは下側移行部)が受け取るとしても、訂正後考案の各技術構成と矛盾を生
じるものでもないから、被告の主張は失当でありこれを採用する余地はない。
 そうすると、審決が、訂正後考案について、海苔簀枠を上段側間歇回動無端
チェンの下側移行部から下段側間歇回動無端チェンの上側移行部に移すものと限定
した上で、引用例考案3との相違点の判断おいて、「海苔簀枠(ホルダー)を移す
下段側チェン(チェーンコンベヤ)の位置が、本件考案では上側移送部であり、甲
第2号証記載のもの(注、引用例考案2)では、下側移送部であり、これらの実施
例の構成も全く相違するものである。そうすると、甲第3号証記載のもの(注、引
用例考案3)も、乾燥室内の海苔簀枠は、本件考案と同じように上段側チェンの下
側移行部から下段側チェンの上側移行部に移されるものであるため、甲第2号証に
記載された反転用チェーンコンベヤを適用して、海苔簀枠を上段側チェンの下側移
行部から下段側チェンの上側移行部に反転して移すようにすることは、構成上当業
者といえども困難と認められ」(審決書8頁19行~9頁12行)と判断したこと
は誤りというほかない。
 この点について、被告は、引用例考案2において、海苔簀枠反転装置が、下
段コンベヤの始端部である迂回部と一体に設けられており、この始端部に至るスプ
ロケット懸回部もまた迂回部であって、上段コンベヤの終端部と下段コンベヤの始
端部との間に設けられてはいないから、訂正後考案が要旨とする「上段側チェンの
迂回部と下段側チェンの迂回部との間に海苔簀枠上下反転下降誘導装置を設けた構
成」を有するものではなく、引用例考案2及び3から、訂正後考案がきわめて容易
に考案できたものではないと主張する。
 しかし、引用例考案2に海苔簀枠上下反転下降誘導装置が開示されているこ
とは、当事者間に争いがなく、この上下反転下降誘導装置が、海苔簀枠(ホルダ
ー)を反転させて移すという機能を有することは、審決も認定する(審決書8頁1
8~19行)ところである。そうすると、引用例考案2の海苔簀枠反転装置が、具
体的には下段コンベヤの迂回部と一体に設けられた構成を開示するものと解して
も、同考案から、海苔簀枠を上下反転させて下降に誘導という技術思想を抽出する
こと自体が容易であることは明らかであり、また、引用例2(甲第5号証)の明細
書に基づいて具体的に検討してみても、海苔簀枠を受け取った海苔簀枠反転装置
が、これを上下反転させた後、例えば下段側チェンの迂回部に下降誘導させること
に、技術的な困難性はないものと認められる。
 したがって、引用例考案3が、「『上段側上記チェンの上記正面開口部チェ
ンホイール迂回部から下段側上記チェンの上記正面開口部チェンホイール迂回部と
の間に海苔簀枠下降誘導装置14を設け』たものである」(審決書7頁16~20
行)ことを前提として、この「海苔簀枠下降誘導装置」に代えて、引用例考案2が
開示する、海苔簀枠を上下反転させて移す機能を有する「海苔簀枠上下反転下降誘
導装置」という技術手段を用いることは、当業者にとってきわめて容易なことであ
り、被告の主張を採用することはできない。
 そうすると、審決が、「本件考案が、甲第2、3号証記載のものに基づいて
当業者がきわめて容易に考案できたものとは認められない。」(審決書9頁12~
15行)と判断したことは誤りといわなければならず、結局、本件訂正は、独立登
録要件を欠くものであるから、これを認めることはできない。
2 以上のとおり、審決が本件訂正を認めたことは誤りであり、この誤りが審決
の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから、審決は取り消しを免れない。
 よって、原告の本訴請求は理由があるから、これを認容することとし、訴訟
費用の負担につき、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のと
おり判決する。
   東京高等裁判所第13民事部
     裁判長裁判官 田 中 康 久
        裁判官 石 原 直 樹
        裁判官 清 水  節

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