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平成11(ネ)2199実用新案権に基づく販売差止等請求控訴事件

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裁判所 大阪高等裁判所
裁判年月日 平成12年2月23日
事件種別 民事
法令 実用新案権
キーワード 無効審判4回
無効4回
審決3回
実施2回
実用新案権1回
差止1回
主文
事件の概要

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判決文

平成一一年(ネ)第二一九九号実用新案権に基づく販売差止等請求控訴事件(原審・
大阪地方裁判所平成九年(ワ)第七八一一号)
          判    決
    控訴人(原告)         株式会社アテックス
    右代表者代表取締役       【A】
    右訴訟代理人弁護士       筒  井     豊
    右補佐人弁理士         【B】
    被控訴人(被告)        有限会社天美製作所
    右代表者代表取締役       【C】
    右訴訟代理人弁護士       村  林  隆  一
    同               松  本     司
    同               岩  坪     哲
    右補佐人弁理士         【D】
          主    文
      一 本件控訴を棄却する。
      二 控訴費用は控訴人の負担とする。
          事実及び理由
第一 控訴の趣旨
 一 原判決を取り消す。
 二 被控訴人は、原判決別紙(一)記載の物件を輸入し、及び販売してはならな
い。
 三 被控訴人は、控訴人に対し、一億一七八七万五〇〇〇円及び内八二〇〇万円
については平成九年八月二三日から、内三五八七万五〇〇〇円については平成一〇
年八月一日から各完済まで年五分の割合による金員を支払え。
 四 訴訟費用は第一・二審とも被控訴人の負担とする。
第二 事案の概要
一 次に付加する他は、原判決「事実及び理由」中の「第二 事案の概要等」「第
三 争点」「第四 当事者の主張」に記載のとおりであるから、これを引用する。
 二 控訴理由の要旨
  1 本件考案の「前端」「後端」の意義について
  原判決は、本件考案(請求項6記載の考案)の構成要件Dの前ベッド半体2の
「前端」及び後ベッド半体3の「後端」の意義について、本件公報の記載からは、
一定の広がりを持つ部分を指すのか、それぞれの先端部分を指すのかは明確でない
とし、無効審判請求事件の手続経緯を検討した上で、右の「前端」及び「後端」と
は、各ベッド半体の先端部分(一定の広がりを持たないという意味において、略
「端縁(エッジ)」の意味に解していると思われる。)を指すと解するのが相当で
あると判示した。
 しかし、原審でも主張したように、本来本件考案において引張バネの張架位置を
表す「前端」「後端」は、その実施態様から考えても、ある程度の広がりを持った
部分を意味するものであり、「端縁(エッジ)」というように限定した意味に解さ
なければならない理由はない。
 さらに、原判決が判示する無効審判請求事件の手続経緯を検討しても、原判決の
ように解さなければならない合理的理由はない。すなわち、原判決が引用する実験
報告書(甲四二)の「考察」に記載された内容は、控訴人が作成したものとはい
え、その内容は趣旨不明であるし、無効審判請求事件の審決書(乙五二)の理由中
に記載されている「先端」の意義も、厳密に「端縁」の意味で用いられているとは
いえず、ある程度の広がりを持つことまでを否定するものではないと解される。
  2 不正競争防止法違反について
 原判決が被控訴人商品と控訴人商品との各形態を比較した類似点及び相違点に関
する判示内容については争わないが、両商品の形態が実質的に同一であることを否
定した原判決の判示は、折り畳み式ベッド一般については通用しても、全く新しい
商品である控訴人商品の形態について正当に評価したものとはいえない。
 すなわち、控訴人商品の特徴が、片手で倒立V字状に折り畳めるという機能とそ
の機能を実現するための機構を備える点にあることは明らかであるとともに、少な
くともその機能を実現するための機構が商品の形状の一部として客観的に現れてい
る。しかして、「商品の形態」は、単なる「形状」よりも広い概念であり、右のよ
うに、商品の形状が変化することがその商品の特徴をなす場合において、右形状の
変化が視覚的に認め得るものであるときは、商品の形態には、右のような変化の態
様も含まれると解すべきである。
 また、本件においては、右のような控訴人商品の形態上の特徴に重点を置いて、
被控訴人商品との対比がなされるべきである。
第三 当裁判所の判断
 一 当裁判所も、控訴人の本件請求はいずれも理由がないものと判断する。
   その理由は、次に付加・訂正する他は、原判決「事実及び理由」中の「第 
 五 当裁判所の判断」に記載のとおりであるから、これを引用する。
 二 原判決の訂正等
  1 原判決四一頁五行目から同四二頁六行目までを次のとおり改める。
   「そこで、本件公報の他の記載中の「前端」「後端」に関連する記載を検討
すると、次のような記載のあることが認められる。すなわち、
   【課題を解決するための手段】欄には、『後端位置に支持台枠を備え、後ベ
ッド半体の後端部を上下揺動自在として該支持台枠に枢着した。』『また、前ベッ
ド半体の前端部に、固定支脚を垂設すると共にその下端に車輪を設けた。』との記
載(段落【0006】)、
【実施例】欄には、『前ベッド半体2の前端部に、左右一対の固定支脚
16、16を垂設すると共に、その下端に車輪17を設ける。』との記載(段落【001
8】)
    右のように、「前端」「後端」ないしは「前端部」「後端部」は、技術思
想としては、バネの張架位置を示すとともに、固定支脚及び車輪の付設位置をも示
しているものと認められる。
    ところで、本件考案は、前ベッド半体と後ベッド半体を折り畳んで側面視
倒立V字型とする構成を採用するに当たり、第1・第2引張バネ33・34を張架して
その弾発力から生ずる上昇力を利用することにより、楽に手で折り畳むことができ
るとの作用効果を奏するものである。
    そして、『前ベッド半体2の前端部に、左右一対の固定支脚16、16を垂設
すると共に、その下端に車輪17を設ける』のは、それによって、前後ベッド半体の
展開及び折畳みの際、車輪が床等の載置面を転動して、前後ベッド半体等の重量が
支持されるとの作用を奏し、手でベッド半体を折り畳む作業を有効に補助する効果
を有するからである(段落【0006】【0010】、なお請求項6参照)。
しかも、前後ベッド半体を折り畳んで側面視倒立V字型とした際、前ベッ
ド半体の前端部と後ベッド半体の後端部とは背面(底面)がほぼ重なり合う位置に
近接することが予定されているから、前端部に垂設された固定支脚とその下端に設
けられた車輪とは、折り畳んだ際、後ベッド半体の後端部の外側(下方)に配置さ
れることが当然の前提となっているものと考えられる(そうでなければ、右固定支
脚と車輪とが後ベッド半体の後端部(下部)に衝突する形となり、折畳みを完成す
ることができない。)
そうすると、右固定支脚の付設位置は、前ベッド半体の前部の先端に限ら
れるということになるから、これに前記(2)の「前ベッド半体2の前端(固定支脚
16)」との記載とを合わせると、本件公報にいう「前端」の意義は、右の意味、す
なわち、前ベッド半体の文字どおり前部の先端をいうものと解するのが相当である
(それに伴い、「後端」も後ベッド半体の文字どおり後部の先端をいうものと解す
ることになる。)。
 もっとも、前記の「後端位置に支持台枠を備え、後ベッド半体の後端部を上下揺
動自在として該支持台枠に枢着した」との記載等に照らすと、「後(前)端位置」
「後(前)端部」の用語は、控訴人が主張するように、一定の幅を有する位置(部
分)を意味するといえなくはないが、それは、「後(前)端」に「位置」又は
「部」が付加されたためというべきであるから、前示の認定と矛盾するものとはい
えない。」
2 原判決四二頁七行目「そこで次に」を「のみならず」に改め、同四三頁四行目
の「原告は、」の次に「平成一〇年五月一一日の口頭審理期日において」を加え、
同六行目の「右事件の審判廷において」を「右期日において」に改める。
  3 原判決四八頁三行目の次に改行して次のとおり加える。
「また、控訴人は、甲四四の陳述書を提出して、前記の審判手続中で控訴人が『前
端とは前ベッド半体の先端部であり、後端とは後ベッド半体の先端をいう。』と釈
明したのは、ベッド半体の中間部を含まないことを明らかにする趣旨であったにす
ぎないなどと主張するが、この主張も、前記認定の審判手続の経緯に照らして、到
底採用することができない。」
 4 原判決五三頁五行目から同五四頁一〇行目までを次のとおり改める。
   「(1) ベッド前部及び後部のパイプの形状について
      被控訴人商品のパイプ(前後宮パイプ)のうち前ベッド半体の前端部
に垂直に付設されているのは、右側面視で幅広U字型の部材をベッド幅より少し狭
く逆に伏せた形状で、そのパイプ上部中央部分に、細いパイプで漢字の「山」字を
おおむね象った装飾を接合してあり、下端はベッド半体の下部に張り出している。
また、後ベッド半体の後端部に垂直に付設されているのは、左側面視で前宮パイプ
よりさらに狭い幅広U字型の部材を逆に伏せた形状で、下端はベッド半体の下部に
張り出している。
      これに対し、控訴人商品のパイプ(前後宮パイプ)は、前ベッド半体
の前端部にのみ垂直に付設され、その形状は右側面視で半円状の部材を伏せた形
で、円弧の上部(一部)が後ベッド半体の上部に張り出し、下端はベッド半体の下
部に張り出している。
    (2) 脚部の形状(キャスターの配置等)
      被控訴人商品の脚部(支持脚)の形状は、前部は前宮パイプの左右下
端がそのまま脚部となり、その最下部に上下に並んだ二個のキャスターが付され、
下のキャスターは床に接するとともに外にも張り出し、上のキャスターは外にのみ
張り出している。なお、前宮パイプの上部中央にもキャスターが一個付されてい
る。後部は後宮パイプの下端がそのまま脚部となり、脚部の終端に直接キャスター
が付されている。
      これに対し、控訴人商品の脚部(支持脚)の形状は、前部は前宮パイ
プの左右下端がそのまま脚部となり、脚部の終端に直接キャスターが付されてい
る。後部は後ベッド半体の左右側面枠に台形の支持脚台を枢着し、その下端に前後
方向に水平杆を渡し、その両端にそれぞれ一個ずつ(左右合計四個)のキャスター
が付されている。
    (3) 張架バネの形状
      被控訴人商品の第一・第二引張バネは前後ベッド半体底面の各左右側
面に付されたバネ取付部材各二本と中間支持脚中央との間に張架されて、概ねY字
形をしているのに対し、控訴人商品の第一・第二引張バネは前後ベッド半体底面の
前後各先端部中央と中間支持脚中央との間に張架されて、一直線となっている。」
5 原判決五四頁一一行目「(3)」を「(4)」に改め、同五八頁九行目「アイディ
ア」の次に「ないし商品の作用効果」を加える。 
 三 控訴理由について
1 控訴理由1について
 控訴人は、当審でも、本件考案の「前端」「後端」の意義について、重ねて前記
第二の二1のように主張するが、その主張に理由がないことは、既に説示したとこ
ろ(引用に係る原判決第五の一1及び本判決前記二1、2、3)から明らかであ
る。
 なお、控訴人は、無効審判請求事件の審決書(乙五二)の理由中(一三丁)に記
載されている「先端」の意義は、厳密に「端縁」の意味で用いられてはいないとも
主張するが、右審決書の文脈からみて、控訴人主張のように解する余地はなく、右
の主張も失当である。
2 同2について
(一) 控訴人は、本件控訴人商品のように、商品の形状が変化することがその商品
の特徴をなす場合において、右形状の変化が視覚的に認め得るものであるときは、
商品の形態には右のような変化の態様も含まれると解すべきであると主張するが、
その主張が採用の限りでないことは、引用に係る原判決第五の二4で説示のとおり
である。
(二) また、控訴人は、控訴人商品のような新規商品について形態の対比判断をす
るときは、新規な特徴点である、手で倒立V字型に折り畳めるという機能を果たす
ための機構に関係する形態的特徴に重点を置いて比較すべきであるとも主張する。
 たしかに、新規商品の特徴とされる機能が形態上に客観的に現われているとき
は、その形態が取引者・需要者の目を引く重要な構成部分と見ることができ、対比
上もその形態を重視すべきであると考えられる。しかし、本件において、控訴人商
品が新規とされる特徴点は、前後ベッド半体の中央部を手で持ち上げることによっ
て側面視倒立V字型に折り畳むことができる点にあるが、折畳みベッド自体は前後
両端を持ち上げることによって側面視V字型に折り畳むことができる商品がすでに
販売されているから、控訴人商品の形態で新規といえる点は、主に折畳み後の形状
が倒立V字型になる点とそのためにベッド底面に引張バネを一直線に張架した点、
そして、それに伴い前後支持脚にキャスターを付設した点にあるに止まるというべ
きである。
 そうであれば、右の新規な特徴とされる点は控訴人商品全体の形態上に占める比
率はさほど大きなものではなく、被控訴人商品と対比した場合、前記認定の具体的
形態上の共通点・相違点に照らすと、前後宮パイプ(ないしは枕止め枠)、支持脚
(及びキャスター)、マット等の形状・模様等の相違点は取引者・需要者の目から
見て商品の選択上無視できない差異といえるから、両商品の形態が実質的に同一で
あると判断することはできない。
 四 以上の次第で、控訴人の請求を棄却した原判決は相当であって本件控訴は理
由がない。
   よって、主文のとおり判決する。
  (口頭弁論終結日 平成一一年一〇年二八日)
    大阪高等裁判所第八民事部
        裁判長裁判官    鳥  越  健  治
           裁判官    小  原  卓  雄
           裁判官    川  神     裕

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