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Myリストに登録 第2章 発明の単一性の要件

最終更新 2007.3

特許法第37条参照ウィンドウに表示

二以上の発明については、経済産業省令で定める技術的関係を有することにより発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するときは、一の願書で特許出願をすることができる。

特許法施行規則第25条の8

特許法第三十七条参照ウィンドウに表示の経済産業省令で定める技術的関係とは、二以上の発明が同一の又は対応する特別な技術的特徴を有していることにより、これらの発明が単一の一般的発明概念を形成するように連関している技術的関係をいう。

2 前項に規定する特別な技術的特徴とは、発明の先行技術に対する貢献を明示する技術的特徴をいう。

3 第一項に規定する技術的関係については、二以上の発明が別個の請求項に記載されているか単一の請求項に択一的な形式によって記載されているかどうかにかかわらず、その有無を判断するものとする。

(説明)

特許法第37条参照ウィンドウに表示及び特許法施行規則第25条の8は、特許協力条約に基づく規則の第13規則(以下、「PCT第13規則」という。)の規定振りを参考に規定したものである。

Myリストに登録1. 発明の単一性の要件

Myリストに登録1.1 特許法第37条参照ウィンドウに表示の規定の趣旨

相互に技術的に密接に関連した発明について、それらを一つの願書で出願できるものとすれば、出願人による出願手続の簡素化・合理化、第三者にとっての特許情報の利用や権利の取引の容易化が図られるとともに、特許庁にとってはまとめて効率的に審査を行うことが可能となる。こうした観点を踏まえ、第37条参照ウィンドウに表示は、別出願ともなし得る異なる二以上の発明について、一の願書で出願できる範囲を規定したものである。

Myリストに登録1.2 関係条文の説明

(1)

特許法第37条参照ウィンドウに表示

第37条参照ウィンドウに表示は、二以上の発明が発明の単一性の要件を満たす場合には、これらの発明を一の願書で特許出願できる旨を規定したものであり、その要件としては、二以上の発明が一定の「技術的関係」を有すべきことを規定し、「技術的関係」の具体的要件については、経済産業省令(施行規則第25条の8)に委任している。

(2)

特許法施行規則第25条の8第1項

施行規則第25条の8第1項は、「技術的関係」を、二以上の発明が「単一の一般的発明概念を形成するように連関している」技術的関係と規定している。

ここで、「単一の一般的発明概念」とはPCT第13規則で規定された「a single general inventive concept」に対応するものである。

この項は、さらに、「単一の一般的発明概念を形成するように連関している」技術的関係について、「二以上の発明が同一の又は対応する特別な技術的特徴を有している」ことにより形成されると規定している。これは、二以上の発明が単一の一般的発明概念を形成するように連関している技術的関係にあるかどうかは、これらの発明が同一の又は対応する特別な技術的特徴を有しているかどうかで判断することを示すものである。

(3)

特許法施行規則第25条の8第2項

施行規則第25条の8第2項では、同条第1項の「特別な技術的特徴」とは「発明の先行技術に対する貢献を明示する技術的特徴をいう」と規定している。これは、「技術的特徴」が「特別」であるためには、この「技術的特徴」によって発明の「先行技術に対する貢献」がもたらされるものでなければならないことを意味する。

ここで、「技術的特徴」は、出願人が発明を特定するために必要な事項として請求項に記載した事項(発明特定事項)のうち、発明を技術的に特定する事項に基づいて把握する。

また、発明の「先行技術に対する貢献」とは、先行技術との対比において発明が有する技術上の意義をいう。

(4)

特許法施行規則第25条の8第3項

施行規則第25条の8第3項は、上記の発明の単一性の判断を、発明が個別の請求項に記載されているか単一の請求項内に択一的な形式で記載されているかに関係なく行うことを明確にするものである。

Myリストに登録2. 発明の単一性の判断

Myリストに登録2.1 発明の単一性の判断対象

発明の単一性の要件は、特許請求の範囲に記載された発明どうしの関係で判断する。

通常は、「請求項に係る発明」どうしの関係で判断する。

一の請求項において発明特定事項が形式上又は事実上の選択肢(以下、「選択肢」という。)で表現されている場合には、各選択肢どうしの関係についても発明の単一性を判断する。

Myリストに登録2.2 基本的な考え方

発明の単一性は、二以上の発明が同一の又は対応する特別な技術的特徴を有しているかどうかで判断する。すなわち、一の発明の一の特別な技術的特徴に対し、その他のすべての発明のそれぞれの特別な技術的特徴が同一の又は対応するものであるかどうかで判断する(注1、2)。ここで、特別な技術的特徴が「同一」の場合と「対応する」場合とを峻別する必要はなく、いずれともいえる場合がある。

(注1)

「特別な技術的特徴が同一の又は対応するもの」であるか否かは実質的に判断するものとし、単なる表現上の異同にとらわれないよう留意する。

(注2)

二以上の発明が「特別な技術的特徴が対応するもの」であるとされる例には、特定構造のねじ山を有するボルトとナットなどがある。

具体的には、次のように判断する。

まず、明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「明細書等」という。)の記載並びに出願時の技術常識に基づいて、それぞれの発明の「特別な技術的特徴」を把握し、これらの「特別な技術的特徴」が同一の又は対応するものであるかどうかを判断する。同一の又は対応する特別な技術的特徴が存在しないときは、発明の単一性の要件を満たさない。

上記の判断により発明の単一性の要件を満たすとされる場合でも、「特別な技術的特徴」としたものが発明の先行技術に対する貢献をもたらすものでないことが明らかとなった場合には、ほかに同一の又は対応する特別な技術的特徴が存在しない限り、事後的に発明の単一性の要件を満たさなくなる。

ここで、「発明の先行技術に対する貢献をもたらすものでないことが明らかとなった場合」とは、次の①~③のいずれかに該当する場合である。

「特別な技術的特徴」とされたものが先行技術(注3)の中に発見された場合

「特別な技術的特徴」とされたものが一の先行技術に対する周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものではない場合

「特別な技術的特徴」とされたものが一の先行技術に対する単なる設計変更であった

場合
(注3)

「先行技術」とは第29条第1項各号参照ウィンドウに表示に該当する発明を意味し、本願の出願時に公開されていないものは含まない。

Myリストに登録3. 発明の単一性の要件の判断類型

以下に発明の単一性の要件の判断類型を示す。これらの判断類型では、典型的な場合について、発明の単一性の考え方を上記の基本的な考え方に基づいて具体的に示した(注)。

なお、判断類型中の事例では、請求項に係る発明は先行技術に対する貢献をもたらす技術的特徴を含むことを前提として説明している。

(注)

一の判断類型だけではなく、複数の判断類型に同時にあてはまることもある。

Myリストに登録3.1 基本的な判断類型

Myリストに登録3.1.1 同一の特別な技術的特徴を有する場合

二以上の発明が、同一の特別な技術的特徴を有している場合は、発明の単一性の要件を満たす。

例1:
請求項1:

高分子化合物A(酸素バリアー性のよい透明物質)

請求項2:

高分子化合物Aからなる食品包装容器

(説明)

高分子化合物Aが先行技術に対する貢献をもたらすから、請求項1及び2は同一の特別な技術的特徴を有する。

例2:
請求項1:

光源からの照明光を一部遮光する照明方法

請求項2:

光源と光源からの照明光を一部遮光する遮光部を備えた照明装置

(説明)

照明光を一部遮光する点が先行技術に対する貢献をもたらすから、請求項1及び2は同一の特別な技術的特徴を有する。

Myリストに登録3.1.2 対応する特別な技術的特徴を有する場合

二以上の発明の間で、先行技術との対比において発明が有する技術上の意義が共通若しくは密接に関連している場合又は特別な技術的特徴が相補的に関連している場合は、それぞれの発明が対応する特別な技術的特徴を有しているといえるから、発明の単一性の要件を満たす。

例1:
請求項1:

窒化ケイ素に炭化チタンを添加してなる導電性セラミックス

請求項2:

窒化ケイ素に窒化チタンを添加してなる導電性セラミックス

(説明)

発明全体としてみれば、請求項1、2の特別な技術的特徴は、それぞれ、炭化チタン、窒化チタンであり、両者は窒化ケイ素からなるセラミックスに導電性を付与する点で、先行技術との対比において発明が有する技術上の意義が共通している。なお、この例で、先行技術との対比において技術上の意義が共通、又は密接に関連しているといえなくなった場合は、発明の単一性の要件を満たさない。

例2:
請求項1:

映像信号を通す時間軸伸長器を備えた送信機

請求項2:

受信した映像信号を通す時間軸圧縮器を備えた受信機

請求項3:

映像信号を通す時間軸伸長器を備えた送信機と、受信した映像信号を通す時間軸圧縮器を備えた受信機とを有する映像信号の伝送装置

(説明)

請求項1、2の特別な技術的特徴は、それぞれ、時間軸伸長器を備えること、時間軸圧縮器を備えることであるが、両者の機能は、それぞれ、時間軸を伸長し映像信号を送信すること、時間軸を圧縮し映像信号を受信することであり、両者は相補的に関連している。また、請求項3は、請求項1、2の特別な技術的特徴である時間軸伸長器と時間軸圧縮器の双方を含むものであり、請求項1、2に係る発明と密接に関連している。

Myリストに登録3.2 特定の関係にある場合の判断類型

Myリストに登録3.2.1 物とその物を生産する方法、物とその物を生産する機械、器具、装置、その他の物

「物を生産する方法や、物を生産する機械、器具、装置、その他の物」(以下、「生産方法又は生産装置等」という。)が、「物」の生産に適している場合は発明の単一性の要件を満たす。

「生産方法又は生産装置等」が「物」の生産に「適している」とは、例えば、「生産方法又は生産装置等」の特別な技術的特徴により、原材料から「物」の特別な技術的特徴(その「物」自体の場合を含む)への変化が必然的にもたらされることをいう。

この場合、「生産方法又は生産装置等」の特別な技術的特徴のもたらす、発明の先行技術に対する貢献は、その「物」の特別な技術的特徴をもたらすことであるから、それぞれの特別な技術的特徴のもたらす、発明の先行技術に対する貢献は密接に関連しており、両者は同一の又は対応する特別な技術的特徴を有する関係にある。

なお、「生産方法又は生産装置等」により、その「物」以外の物も生産される場合であっても、その「物」の生産に適しているものであれば発明の単一性の要件は満たされる。

ここで、「物を生産する機械、器具、装置、その他の物」における「その他の物」には、触媒、微生物など、他の原料、被加工体などに作用してそれに変化を生じさせ生産物を得るものすべてが含まれ、機械、器具、装置に限定されない。

例1:
請求項1:

下部に拡大球根部を設けた基礎ぐい

請求項2:

爆薬の爆破により地中に空洞を形成した後、その内部にコンクリート材料を流し込む拡大球根部の造成方法

(説明)

請求項2の特別な技術的特徴である、爆薬の爆発により地中に空洞を形成した後、その内部にコンクリート材料を流し込む工程は、請求項1の特別な技術的特徴である拡大球根部を必然的にもたらすものであるから、請求項2の造成方法は請求項1の基礎ぐいの生産に適している。

例2:
請求項1:

特定構造のクラッチ板

請求項2:

特定構造の摩擦板の製法

(説明)

請求項2の製法は、請求項1の特別な技術的特徴である特定構造部分を必然的にもたらすものであるから、請求項2の製法は請求項1のクラッチ板の生産に適している。

例3:
請求項1:

チタン合金Xからなるメガネフレーム

請求項2:

窒化物Yをコーティングしたチタン合金Xからなるメガネフレーム

請求項3:

チタン合金Xを一体成形するメガネフレームの製法

請求項4:

チタン合金Xを一体成形した後窒化物Yを蒸着するメガネフレームの製法

(説明)

請求項1、2の特別な技術的特徴はチタン合金Xからなるメガネフレームである。そして、請求項3、4の製法は、請求項1、2の特別な技術的特徴であるチタン合金Xからなるメガネフレームを必然的にもたらすものである。したがって、請求項3、4の製法は請求項1、2のメガネフレームの生産に適している。

Myリストに登録3.2.2 物とその物を使用する方法、物とその物の特定の性質を専ら利用する物

「物を使用する方法」が「物」の使用に適している場合、発明の単一性の要件を満たす。

「物を使用する方法」が「物」の使用に「適している」とは、例えば、「物を使用する方法」の特別な技術的特徴が、「物」の特別な技術的特徴の特有な性質・機能を使用していることをいう。

この場合、「物を使用する方法」の特別な技術的特徴のもたらす、発明の先行技術に対する貢献は、その「物」の特別な技術的特徴の特有な性質・機能を使用することであるから、それぞれの特別な技術的特徴のもたらす、発明の先行技術に対する貢献は密接に関連しており、両者は同一の又は対応する特別な技術的特徴を有する関係にある。

「物の特定の性質を専ら利用する物」の特別な技術的特徴が「物」の特別な技術的特徴の特定の性質を専ら利用している場合、発明の単一性の要件を満たす。

この場合、「物の特定の性質を専ら利用する物」の特別な技術的特徴のもたらす、発明の先行技術に対する貢献は、その「物」の特別な技術的特徴の特定の性質を専ら利用することであるから、それぞれの特別な技術的特徴のもたらす、発明の先行技術に対する貢献は密接に関連しており、両者は同一の又は対応する特別な技術的特徴を有する関係にある。

例1:
請求項1:

物質A

請求項2:

物質Aによる殺虫方法

(説明)

請求項2の殺虫方法は、請求項1の物質Aの殺虫性という特有の性質を使用しているものであるから、請求項2の殺虫方法は、請求項1の物質Aを使用することに適している。

例2:
請求項1:

物質A

請求項2:

物質Aからなる除草剤

(説明)

請求項2の特別な技術的特徴である物質Aからなる除草剤は、請求項1の物質Aの除草性という特定の性質を専ら利用しているものである(注)。

(注)

請求項2の特別な技術的特徴は物質Aと把握することも可能であり、このように把握した場合には、請求項1、2は3.1.1で示した同一の特別な技術的特徴を有する関係にあるともいいうる。

例3:
請求項1:

化合物A(化合物Bの中間体として有用)

請求項2:

化合物Aを他の化合物と反応させて化合物Bを製造する方法

請求項3:

化合物Aの製造方法

(説明)

請求項2の製造方法は、請求項1の化合物Aの、他の化合物と反応させることで化合物Bをもたらすという特有の性質を利用したものであるから、請求項2の製造方法は、請求項1の化合物Aの使用に適している。また、請求項3の製造方法は請求項1の化合物Aの生産に適したものである。したがって、請求項1~3は発明の単一性の要件を満たす。

例4:
請求項1:

ポリヌクレオチドXを含む組換微生物

請求項2:

ポリヌクレオチドX

請求項3:

ポリヌクレオチドXを含む組換微生物を培養してポリペプチドAを製造する方法

(説明)

請求項1、2の特別な技術的特徴はポリヌクレオチドXであり共通している。請求項3の製造方法は、ポリヌクレオチドXのポリペプチドA生成機能という特有の性質を使用しているものであるから、請求項3の製造方法は請求項1、2のポリヌクレオチドXの使用に適している。

例5:
請求項1:

混合室に対して接線方向の燃料入口を備えた燃料バーナーA

請求項2:

燃料バーナーAの混合室に対して燃料を接線方向に流入させる工程を含むカーボンブラックの製造方法

請求項3:

混合室に対し接線方向の燃料入口を形成する工程を含む燃料バーナーAの製造方法

(説明)

請求項2のカーボンブラックの製造方法は、請求項1の特別な技術的特徴である混合室に対して接線方向の燃料入口の特有の機能を利用しているものであるから、請求項2のカーボンブラックの製造方法は、請求項1の燃料バーナーAの使用に適しているものである。また、請求項3の燃料バーナーAの製造方法は、請求項1の特別な技術的特徴である混合室に対して接線方向の燃料入口を必然的にもたらしているものであるから、請求項3の燃料バーナーAの製造方法は請求項1の燃料バーナーAの製造に適している。したがって、請求項1~3は発明の単一性の要件を満たす。

Myリストに登録3.2.3 物とその物を取り扱う方法、物とその物を取り扱う物

「物を取り扱う方法や、物を取り扱う物」(以下「取り扱い方法又は取り扱う物」という。)が「物」の取り扱いに適している場合、発明の単一性の要件を満たす。

「取り扱い方法又は取り扱う物」が「物」の取り扱いに「適している」とは、例えば、「取り扱い方法又は取り扱う物」の特別な技術的特徴が、「物」の特別な技術的特徴に対して外的な作用を施すことにより機能を必然的に維持又は発揮させ、基本的にはその「物」を本質的に変化させないことをいう。

この場合、「取り扱い方法又は取り扱う物」の特別な技術的特徴のもたらす、発明の先行技術に対する貢献は、その「物」の特別な技術的特徴の機能を必然的に維持又は発揮させることであるから、それぞれの特別な技術的特徴のもたらす、発明の先行技術に対する貢献は密接に関連しており、両者は同一の又は対応する特別な技術的特徴を有する関係にある。

その「物」以外の物の取り扱いにも適用可能な場合であっても、その「物」の取り扱いに適しているものであれば発明の単一性は満たされる。

例1:
請求項1:

特定構造のプレハブハウス

請求項2:

特定構造のプレハブハウスの収納方法

(説明)

請求項2の収納方法は、請求項1の特別な技術的特徴である特定構造に外的な作用を施すことにより、請求項1の特定構造が有する収納性改善という機能を必然的に発揮させるものであるから、請求項2の収納方法は請求項1のプレハブハウスの取り扱いに適している。

例2:
請求項1:

物質A

請求項2:

物質Aを特定の圧力、温度、気体成分比率の状況下で保存する方法

(物質Aは特有の性質を有しているが、非常に不安定であり容易に分解する。)

(説明)

請求項2の保存方法は請求項1の物質Aの特有の性質を必然的に維持するものであるから、請求項2の保存方法は請求項1の物質Aの取り扱いに適している。

Myリストに登録3.2.4 方法とその方法の実施に直接使用する機械、器具、装置、その他の物

「方法の実施に直接使用する機械、器具、装置、その他の物(以下、「実施に使用する装置等」という。)」が、「方法」の実施に直接使用することに適している場合、発明の単一性の要件を満たす。

「実施に使用する装置等」が「方法」の実施に直接使用することに適しているとは、例えば、「実施に使用する装置等」の特別な技術的特徴が「方法」の特別な技術的特徴の実施に直接使用されることをいう。

この場合、「実施に使用する装置等」の特別な技術的特徴がもたらす、発明の先行技術に対する貢献は、その「方法」の発明の特別な技術的特徴を実施することであるから、それぞれの特別な技術的特徴のもたらす、発明の先行技術に対する貢献は密接に関連しており、両者は同一の又は対応する特別な技術的特徴を有する関係にある。

その「方法」以外の方法の実施に直接使用できる場合であっても、その「方法」の実施に直接使用することに適しているものであれば発明の単一性の要件は満たされる。

また、「物の実施に直接使用する機械、器具、装置、その他の物」における「その他の物」は、装置類に限定されず、それ以外の触媒、微生物、原料、被加工体など、方法の実施に直接使用するものはすべて含まれる。

例1:
請求項1:

セメントに氷の細粒を骨材と共に混入し、型に流し込むコンクリート製品の製法

請求項2:

氷の破砕部及び破砕された氷とセメント、骨材とを混合する混合部とを有する特定構造の装置

(説明)

請求項2の装置は、請求項1の特別な技術的特徴である、セメントに氷の細粒と骨材を共に混入する方法の実施に直接使用されるものであるから、請求項2の装置は請求項1の製法の実施に直接使用することに適している。

例2:
請求項1:

特定の手順よりなる水深測定方法

請求項2:

特定構造を有する対象物距離測定装置

(説明)

請求項2の装置は請求項1の方法の実施以外にも使用できるものであるが、請求項1の特別な技術的特徴である特定の手順からなる水深測定方法の実施に直接使用されるものであるから、請求項1の方法の実施に直接使用することに適したものである。

例3:
請求項1:

中間体Aを酸化することによる最終生成物Zの製造法

請求項2:

化合物Xと化合物Yを反応させて中間体Aを製造し中間体Aを酸化することによる最終生成物Zの製造法

請求項3:

中間体A

(説明)

請求項1、2の特別な技術的特徴は、中間体Aを酸化することにより最終生成物Zを製造する工程であり、共通している。請求項3の中間体Aは、請求項1、2の特別な技術的特徴である上記工程の実施に直接使用されるものであるから、請求項3の中間体Aは請求項1、2の製造方法に直接使用することに適している。

Myリストに登録3.3 マーカッシュ形式

請求項がマーカッシュ形式で記載されている場合にも、各選択肢間で、同一の又は対応する特別な技術的特徴を有しているか否かで、請求項内の単一性が判断される。

特に、マーカッシュ形式で記載された請求項が化合物の択一的記載である場合、以下の要件(ⅰ)及び(ⅱ)が満たされれば、各選択肢は同一の又は対応する特別な技術的特徴を有する関係にある。

(ⅰ)

すべての選択肢が共通の性質又は活性を有しており、

かつ、

(ⅱ)

(a) 共通の化学構造が存在する、すなわちすべての選択肢が重要な化学構造要素を共有している、

又は、

(b) 共通の化学構造が判断基準にならない場合、すべての選択肢が、その発明の属する技術分野において一群のものとして認識される化学物質群に属する。

上記(ⅱ)(a)の「すべての選択肢が重要な化学構造要素を共有している」とは、複数の化学物質が、その化学構造の大きな部分を占める共通した化学構造を有しているような場合をいい、また化学物質がその化学構造のわずかな部分しか共有しない場合においては、その共有されている化学構造が従来の技術からみて構造的に顕著な部分を構成する場合をいう。化学構造要素は一つの部分のことも、互いに連関した個々の部分の組合せのこともある。

なお、マーカッシュ形式の選択肢の場合において、マーカッシュ選択肢の少なくとも一つが先行技術の中に発見された場合などは、発明の単一性の要件を満たすかどうか再考する。上記(ⅱ)(b)の「一群のものとして認識される化学物質群」とは、請求項に係る発明の下で同じように作用するであろうことが、その技術分野における知識から予想される化学物質群をいう。言い換えると、この化学物質群に属する各化学物質を互いに入れ換えても同等の結果が得られる、ということである。

Myリストに登録3.4 中間体と最終生成物

中間体に関する発明と最終生成物に関する発明とが単一性を満たすためには、以下の要件(ⅰ)及び(ⅱ)が満たされなければならない。

(ⅰ)

中間体と最終生成物が同一又は技術的に密接に関連している新規な構造要素を有する、

すなわち、

(a) 中間体と最終生成物の化学構造において先行技術の中には発見されないような基本骨格が共通している、

又は、

(b) 両物質の化学構造が技術的に相互に密接に関連している。

(ⅱ)

中間体と最終生成物の間に技術的な相互関連性がある、すなわち、最終生成物が、中間体から直接製造される、又は、同一の主要な構造要素を含む少数の別の先行技術の中には発見されないような中間体を経て製造される。

構造が不明な場合でも、中間体と最終生成物が単一性を満たすことがある。例えば、構造が明らかな中間体と構造が不明な最終生成物、又は、構造が不明な中間体と構造が不明な最終生成物が単一性を満たすことがある。

このような場合に単一性を満たすためには、例えば、中間体が最終生成物と同一の主要な構造要素を含んでいる、又は、中間体が最終生成物に主要な構造要素を組み込むというように、中間体と最終生成物の構造が技術的に相互に密接に関連していることを示す十分な証拠がなければならない。

一つの最終生成物の製造のための異なるプロセスで使用される別々の中間体に同一の主要な構造要素がある場合には、最終生成物及び別々の中間体に関する発明は、主要な構造要素が同一の又は対応する特別な技術的特徴であるため、単一性を満たす。

中間体及び最終生成物が共に化合物の群を成すように請求項に記載されている場合、各中間体化合物は請求項に係る最終生成物のうちの一つの化合物に対応していなければならない。ただし、最終生成物のいくつかは中間体の群の中に対応する化合物がない場合もあるので、二つの群は完全に一致する必要はない。

最終生成物を製造するために使用されることに加えて、中間体が他の効果を有する又は他の活性を示すことは、単一性の判断に影響を及ぼすものではない。

Myリストに登録4. 審査の進め方

Myリストに登録4.1 基本的な考え方

(1)

発明の単一性の要件を満たすかどうかは、特許請求の範囲の最初に記載された発明(注)と他の発明との間で判断し、特許請求の範囲の最初に記載された発明、及び当該発明との間で発明の単一性の要件を満たす一群の発明を、発明の単一性の要件以外の要件についての審査対象とする(以下、本章において、「発明の単一性の要件以外の要件についての審査対象」を単に「審査対象」という。)。

特許請求の範囲の最初に記載された発明との間で発明の単一性の要件を満たさない発明については、審査対象とせずに、発明の単一性の要件違反の拒絶理由を通知する。

特許請求の範囲の最初に記載された発明が特別な技術的特徴を有しない場合は、下記4.2に従って審査対象を決定する。

(注)

請求項1に係る発明。請求項1の発明特定事項が選択肢で表現されている場合には、原則として最初の選択肢を選んで把握される発明。ただし、マーカッシュ形式で記載された化学物質に係る発明等の場合には、実施例等の記載を考慮して、適切な選択肢を選んで把握される発明を、最初に記載された発明とする。

(2)

発明の単一性の要件が独立形式請求項の間で満たされている場合、独立形式請求項に係る発明は、特別な技術的特徴を有しているので、それらを引用する引用形式請求項に係る発明も、通常同一の特別な技術的特徴を有しており、引用形式請求項によって単一性の欠如の問題を生ずることは少ないと考えられる。したがって、通常、まず独立形式請求項どうしの対比で発明の単一性の有無を判断するのが効率的である。

しかし、例えば、発明特定事項のうちの一つを置換する引用形式請求項のように、発明の単一性の判断に影響するものもあり得るので、そのような引用形式請求項については注意を要する。

Myリストに登録4.2 特許請求の範囲の最初に記載された発明が特別な技術的特徴を有しない場合の審査対象

特許請求の範囲の最初に記載された発明が特別な技術的特徴を有しない場合には、当該発明と他の発明との間で、同一の又は対応する特別な技術的特徴を見出すことができないため、発明の単一性の要件を満たすとはいえない。しかしながら、第37条参照ウィンドウに表示が出願人等の便宜を図る趣旨の規定であることを考慮し、このような場合であっても、例外的に、以下の手順により審査対象となる発明については、発明の単一性の要件を問わないこととする。審査対象とならない発明がある場合には、発明の単一性の要件違反の拒絶理由を通知する。

[審査対象の決定手順]

特許請求の範囲の最初に記載された発明の発明特定事項をすべて含む(注)同一カテゴリーの請求項に係る発明のうち、請求項に付した番号の最も小さい請求項に係る発明について、特別な技術的特徴の有無を判断する。

(注)

発明の「発明特定事項をすべて含む」場合には、当該発明に別の発明特定事項を付加した場合に加え、当該発明について一部又は全部の発明特定事項を下位概念化した場合や、当該発明について発明特定事項の一部が数値範囲である場合に、それをさらに限定した場合等も含まれる。

既に特別な技術的特徴の有無を判断した請求項に係る発明が特別な技術的特徴を有しない場合には、次に、直前に特別な技術的特徴の有無を判断した請求項に係る発明の発明特定事項をすべて含む同一カテゴリーの請求項に係る発明のうち、請求項に付した番号の最も小さい請求項に係る発明を選択して、特別な技術的特徴の有無を判断する。

②の手順を特別な技術的特徴を有する発明が発見されるまで繰り返し、特別な技術的特徴を有する発明が発見されれば、それまでに特別な技術的特徴の有無を判断した発明(a)、及び当該特別な技術的特徴を有する発明の発明特定事項をすべて含む同一カテゴリーの発明(b)を、審査対象とする。

②の手順において、次に特別な技術的特徴の有無を判断しようとする請求項に係る発明が、直前に特別な技術的特徴の有無を判断した発明に技術的な関連性の低い技術的特徴を追加したものであり、かつ当該技術的特徴から把握される、発明が解決しようとする具体的な課題も関連性の低いものである場合には、更に特別な技術的特徴の有無を判断することなく、それまでに特別な技術的特徴の有無を判断した発明を審査対象とする。

③又は④で審査対象とした発明について審査を行った結果、審査が実質的に終了している他の発明(例えば、カテゴリー表現上の差異があるだけの発明)についても、審査対象に加える。

上記手順において、請求項の発明特定事項が選択肢で表現されている場合(多数項引用形式の場合を含む。)には、選択肢ごとに把握される発明が、当該選択肢の順序でそれぞれ別の請求項として記載されているものとして取り扱う。発明特定事項をすべて含むか否かの判断においては、請求項が形式的に独立形式であるか引用形式であるかにとらわれずに判断する。

審査対象

Myリストに登録4.3 特許請求の範囲の最初に記載された発明が特別な技術的特徴を有しない場合の審査の進め方の例

例1:
請求項1:

超電導コイルを冷媒に浸漬して冷却する超電導コイルの冷却方法

請求項2:

前記冷媒は液体ヘリウムである請求項1記載の超電導コイルの冷却方法

請求項3:

さらに冷凍機を用いて超電導コイルを冷却する請求項2記載の超電導コイルの冷却方法

請求項4:

銅板を介して、冷凍機の冷却ステージと超電導コイルを熱的に接続した請求項3記載の超電導コイルの冷却方法

請求項5:

冷凍機の冷却ステージに超電導コイルを直接接触させた請求項3記載の超電導コイルの冷却方法

進め方1

(説明)

請求項1に係る発明が特別な技術的特徴を有しないため、4.2の手順に従い、審査対象を決定する。

請求項1に係る発明の発明特定事項をすべて含んだ請求項2に係る発明に追加された「液体ヘリウム」は、請求項1に係る発明の技術的特徴である「冷媒」を下位概念化したものであり、技術的特徴が密接に関連しているため、請求項2に係る発明について特別な技術的特徴の有無を判断する。この例では、請求項2に係る発明も特別な技術的特徴を有しないため、次に、請求項2に係る発明の発明特定事項をすべて含んだ請求項3に手順を進める。請求項3に係る発明に追加された「冷凍機」から把握される解決しようとする具体的な課題は、超電導コイルの冷却に関するものであり、請求項2に係る発明が解決しようとする課題と密接に関連するため、請求項3に係る発明についても特別な技術的特徴の有無を判断する。

(ⅰ)

請求項3に係る発明が特別な技術的特徴を有する場合には、それまでに特別な技術的特徴の有無を判断した請求項1~3に係る発明、及び、請求項3に係る発明の発明特定事項をすべて含んだ請求項4及び5に係る発明について、発明の単一性の要件を問わずに審査対象とする。

(ⅱ)

一方、請求項3に係る発明が特別な技術的特徴を有しない場合には、当該発明の発明特定事項をすべて含む請求項のうち請求項に付した番号の最も小さい請求項4に手順を進める。請求項4に追加された「銅板」から把握される解決しようとする具体的な課題は、超電導コイルの冷却効率を高めることにあり、請求項3に係る発明が解決しようとする課題と密接に関連するため、請求項4に係る発明についても特別な技術的特徴の有無を判断した後、それまでに特別な技術的特徴の有無を判断した請求項1~4に係る発明について、審査対象とする。特別な技術的特徴を有しない請求項3に係る発明の発明特定事項をすべて含む請求項の中で請求項に付した番号が最小でない請求項5に係る発明は審査対象とせず、請求項1~4に係る発明についての審査結果と併せて、発明の単一性の要件違反の拒絶理由を通知する。

例2:
請求項1:

チタン合金を用いて軽量化したことを特徴とするメガネフレーム

請求項2:

βチタン合金を用いて軽量化したことを特徴とするメガネフレーム

請求項3:

請求項2記載のメガネフレームを有するとともに、プラスチック材料Yを用いて耐衝撃性を向上させたレンズを有するメガネ

進め方2

請求項1に係る発明は特別な技術的特徴を有しないため、4.2の手順に従い審査対象を決定する。

請求項1に係る発明の発明特定事項をすべて含んだ請求項2に係る発明に追加された「βチタン合金を用いたメガネフレーム」は、請求項1に係る発明の技術的特徴である「チタン合金を用いたメガネフレーム」を下位概念化したものであり、技術的特徴が密接に関連しているため、請求項2に係る発明について特別な技術的特徴の有無を判断する。この例では、請求項2に係る発明も特別な技術的特徴を有しないため、次に請求項2の発明特定事項をすべて含んだ請求項3に手順を進める。請求項3に係る発明に追加された「プラスチック材料Yを用いたレンズ」は、請求項2に係る発明と関連性の低い技術的特徴であり、かつ当該技術的特徴から把握される発明が解決しようとする課題も、請求項2に係る発明が解決しようとする課題と関連性が低いものとなっている。このため、請求項3に係る発明は審査対象とせず、特別な技術的特徴の有無を判断した請求項1及び2に係る各発明についての審査結果と併せて、発明の単一性の要件違反の拒絶理由を通知する。

Myリストに登録4.4 留意事項

(1)

上記4.1から4.2に示したところに照らして、審査対象とならない請求項に係る発明がある場合には、その発明を拒絶理由通知において明示するとともに審査対象とならない理由を記載する。

(2)

発明の単一性の要件(第37条参照ウィンドウに表示)は、拒絶理由(第49条参照ウィンドウに表示)ではあるが、無効理由(第123条参照ウィンドウに表示)とはされていない。これは、第37条参照ウィンドウに表示が出願人、第三者及び特許庁の便宜のための規定であり、他の拒絶理由と比較すると、発明に実質的に瑕疵があるわけではなく、二以上の特許出願とすべきであったという手続き上の瑕疵があるのみであるので、そのまま特許されたとしても直接的に第三者の利益を著しく害することにはならないからである。このような事情に鑑み、4.1に示したところに照らして審査対象となる発明について審査を行った結果、審査が実質的に終了している他の発明や、特許請求の範囲の最初に記載された発明との間で発明の単一性の要件を満たすか否かが簡単には判別できない発明については、発明の単一性の要件を必要以上に厳格に適用することがないようにする。

Myリストに登録5. 事例集

事例集の利用上の留意点

(1)

本事例集は、第37条参照ウィンドウに表示の規定に基づく発明の単一性に関する運用を説明する目的で作成したものである。そのため、事例における特許請求の範囲等の記載は、発明の単一性の説明を容易にするため、簡略化するなどの修正が加えられており、必ずしも模範的なものとはなっていない点に留意されたい。

(2)

事例1~27及び37~43は、各請求項に係る発明がそれぞれ別発明を構成し、また原則として、新規性及び進歩性も有しているものと仮定して、発明の単一性の要件についてのみ解説を行っている。また、事例28~36における解説は、特許請求の範囲の最初に記載された発明が特別な技術的特徴を有しない場合について解説を行っている。なお、同一とされる発明について複数の請求項を記載することは、第36条第5項参照ウィンドウに表示の規定により当然に許容される。

(3)

本事例集に収録された事例の中には、「3.発明の単一性の判断類型」に示す判断類型のうちの複数の判断類型に同時に該当するものも含まれているが、その場合には、いずれか一の判断類型にのみ着目して解説している。

〔事例 1〕同一の特別な技術的特徴を有するもの

【発明の名称】

セラミック材料、及び、該材料よりなる中子の溶解法

【特許請求の範囲】

1.セラミック材料内に水素供与基を含有する物質を包含させ、そしてセラミック材料を無水苛性アルリ浴中に浸漬することを特徴とする苛性アルカリ溶液に攻撃を受け易い物品内からセラミック材料を溶解する方法。

2.水素供与基を含有する物質を包含させたセラミック材料よりなる中子を有する軽金属又は軽合金鋳物を、該鋳物が冷えないうちに無水苛性アルカリと接触させ、鋳物の熱により融解した無水苛性アルカリの浴中に浸漬することを特徴とする軽金属又は軽合金鋳物の、セラミック材料よりなる中子を溶解する方法。

【発明の詳細な説明】の抜粋

本発明は苛性アルカリ溶液による攻撃を受け易い物品内からセラミック材料、及び該材料よりなる中子を溶解する方法に関する。

従来、ニッケル及びコバルトをベースとする合金鋳物のセラミック材料よりなる中子は、苛性アルカリ溶液中で溶解することにより除去されているが、軽金属又は軽合金鋳物は苛性アルカリ溶液に浸されるので、該方法は適用できない。本発明においてセラミック材料中に水素供与基を包含させることにより、無水苛性アルカリ浴中で軽金属又は軽合金鋳物は侵されずセラミック材料のみを選択的に溶解することが可能となった。なお、請求項2において「鋳物が冷えないうちに無水苛性アルカリと接触させ」るのは鋳物の熱を利用して無水苛性アルカリを溶解するためである。

[解 説]

「セラミック材料内に水素供与基を含有する物質を包含させ、無水苛性アルカリ浴中に浸漬する」点は、請求項1及び請求項2に係る発明に共通している。「セラミック材料内に水素供与基を含有する物質を包含させ、無水苛性アルカリ浴中に浸漬する」ことは、軽金属又は軽合金鋳物は侵されずセラミック材料のみを選択的に溶解することが可能になったという先行技術に対する貢献をもたらすものであり、特別な技術的特徴と言える。したがって、請求項1及び請求項2に係る発明は、同一の特別な技術的特徴を有し、単一性の要件を満たす。

〔事例 2〕同一の技術的特徴を有するもの

【発明の名称】

異形断面形状フィラメント、フィラメント糸条及び編織物

【特許請求の範囲】

1.横断面がV字型若しくはC字型の断面形状を有し、かつ該断面凸側外周のほぼ中央部に切欠状のくびれ部を有し、該くびれ部の肉厚tと最大肉厚tとが

0.40t≦t≦0.95t〔但し、a≦t≦b a、bは正の定数〕

を満足する異形断面フィラメント。

2.請求項1記載の異形断面フィラメントを流体乱流処理し、その後緊張熱処理した潜在嵩高性マルチフィラメント糸条。

3.請求項1記載の異形断面フィラメントからなる編織物。

【発明の詳細な説明】の抜粋及び図面

本発明は絹繊維のような光沢を有し、不透明度に優れると共に、ドライ感を有し、ふくらみ感、柔軟性等の点で極めて絹繊維に近い風合を有する布帛(編織物)の製造を可能にする異形断面フィラメント、これを用いて得られる糸及び編織物を提供する。

フィラメント

[解 説]

請求項1に記載された異形断面フィラメントは、請求項1、2及び3に係る発明に共通している。請求項1に記載された異形断面フィラメントは、絹繊維に近い風合を有する布帛の製造を可能にしたという先行技術に対する貢献をもたらすものであり、特別な技術的特徴と言える。したがって、請求項1、請求項2及び請求項3に係る発明は、同一の特別な技術的特徴を有し、単一性の要件を満たす。

〔事例 3〕同一の特別な技術的特徴を有するもの

【発明の名称】

低摩擦ファイバーベアリング面に用いる撚り糸及びそれを用いたベアリング

【特許請求の範囲】

1.体積比で多くとも50%TFEの割合よりなるTFE細糸(10)と高温度用ナイロンの合糸(11)を含む撚り糸で、撚り糸のTFE細糸に対して、ナイロン合糸が芯となって弛く撚られており、合成樹脂が弛く撚られた合撚糸中に全体にわたって流れ込むことのできる低摩擦ファイバーベアリング面に用いる撚り糸。(第1図参照)

2.体積比で多くとも50%TFEの割合よりなるTFE細糸(10)、(13′)と高温度用ナイロンの合糸(11)、(13″)を含む撚り糸で、撚糸のTFE細糸に対して、ナイロン合糸が、芯となって弛く撚られたものが、ベアリング面(15)に露出しており、該撚り糸と実質的に親和し、かつ連続した空所のない固体を形成している硬化された合成樹脂(14)をすべり面に有するベアリング。(第1、2、3図参照)

【発明の詳細な説明】の抜粋及び図面

本発明は、低摩擦ファイバーベアリング及びファイバーを構成する撚り糸に関するものである。本発明の目的は、ベアリング面に低摩擦ファイバーのための補強材を備え、それによって破損を起こしやすい個所における回転に対してTFE細糸がより確実に保持されるようにすることである。

低摩擦を得るための従来の四ふっ化エチレン(TFE)細糸を用いたベアリングでは、最大負荷又はそれを越えた負荷がかかると、極端な摩耗及び急速な破壊が発生する。しかも負荷を加えたり、あるいは温度が上昇すると機械的機能が低下するため、最高作業温度は極端に制御される。

ナイロン

[解 説]

「体積比で多くとも50%TFEの割合よりなるTFE細糸と高温度用ナイロンの合糸を含む撚り糸で、撚糸のTFE細糸に対して、ナイロン合糸が、芯となって弛く撚られたもの」は、請求項1及び請求項2に係る発明に共通している。「体積比で多くとも50%TFEの割合よりなるTFE細糸と高温度用ナイロンの合糸を含む撚り糸で、撚糸のTFE細糸に対して、ナイロン合糸が、芯となって弛く撚られたもの」は、破損を起こしやすい個所における回転に対してTFE細糸がより確実に保持されるという先行技術に対する貢献をもたらすものであり、特別な技術的特徴と言える。したがって、請求項1及び請求項2に係る発明は、同一の特別な技術的特徴を有し、単一性の要件を満たす。

〔事例 4〕同一の特別な技術的特徴を有するもの

【発明の名称】

液化ガス貯蔵用地下タンク用アンカー及び液化ガス貯蔵用地下タンク

【特許請求の範囲】

1.アンカー主材(10)と、アンカー主材(10)の中間部分を包含しかつ柔軟な支承板(16)を挟持した筒状密閉部材(12)を有する固定金具(11)とからなり、固定金具(11)はその端部に係止される定着板(14)を介してアンカー主材(10)を緊張保持することを特徴とする液化ガス貯蔵用地下タンク用アンカー。(第1図参照)

2.タンク側壁(3)の下方に底版(5)を配設し、底版(5)の周縁部には、側壁(3)の下面(3a)に対接する水平端面(5a)と側壁(3)の下部内面(3b)に対接する垂直端面(5b)を形成し、側壁(3)の下方内部から底版(5)の周縁内部へ請求項1記載のアンカー(9)を間隔をおいて埋設したことを特徴とする液化ガス貯蔵用地下タンク。(第2図参照)

【発明の詳細な説明】の抜粋及び図面

この発明は、液化ガス貯蔵用地下タンク用アンカーと、それを用いた液化ガス貯蔵用地下タンクに関する。

この種のものとしては、タンク側壁と底版を両者間に延長する鋼材で結合したものが公知であるが、底版をタンク側壁下面から分離する方向に荷重が加わった場合、底版が大きく移動し、止水板が破壊し、地下水が浸入凍結する恐れがあった。

タンク

[解 説]

請求項1に記載されたアンカーは、請求項1及び請求項2に係る発明に共通している。請求項1に記載されたアンカーは、加重方向に係わらず破壊を防止できるという先行技術に対する貢献をもたらすものであり、特別な技術的特徴と言える。したがって、請求項1及び請求項2に係る発明は、同一の特別な技術的特徴を有し、単一性の要件を満たす。

〔事例 5〕同一の特別な技術的特徴を有するもの

【発明の名称】

第四級アンモニウム化合物およびその使用方法

【特許請求の範囲】

1.次式で示される第四級アンモニウム化合物。

第四級アンモニウム化合物

2.細菌及び真菌から選ばれる微生物に、有効量の請求項1に記載の第四級アンモニウム化合物を適用することよりなる、上記微生物の発育および増殖を阻止する方法。

3.セルロースパルプ繊維スラリーに……請求項1に記載の第四級アンモニウム化合物を添加することにより、ウェブの繊維間結合を低下させる方法。

【発明の詳細な説明】の抜粋

この発明は新規な第四級アンモニウム化合物、ならびにこれらを微生物抑制剤及び離解剤として使用することに関する。

[解 説]

請求項1、請求項2及び請求項3に係る発明の特別な技術的特徴は、すべて請求項1に記載された第四級アンモニウム化合物であり、同一である。したがって、請求項1、請求項2及び請求項3に係る発明は、単一性の要件を満たす。

〔事例 6〕同一の技術的特徴を有するもの

【発明の名称】

溶銑脱硫方法及び溶銑脱硫剤

【特許請求の範囲】

1.カルシウムカーバイド粉末に××質量%の油を混合したものを、搬送ガスの流れと一緒に該ガスに対して……kg/m3の割合で溶銑の浴面下に吹込むことを特徴とする溶銑脱硫方法。

2.カルシウムカーバイド粉末に××質量%の油を混合してなる溶銑脱硫剤。

【発明の詳細な説明】の抜粋

本発明は、インゼクション法による溶銑の脱硫処理時に脱硫剤としてカルシウムカーバイド粉末に油を混合したものを使用することにより、脱硫効率の向上をはかった溶銑脱硫方法及び前記混合物からなり溶銑、溶鋼等の溶銑脱硫剤に関する。

前記油はガソリン、灯油、植物油、動物油、ロウ類であり、これを含む脱硫剤が溶湯の浴面下に吹込まれた際迅速にガス化してカルシウムカーバイドの粒子を破壊するとともに粒子の群を散らす作用を有するので、溶湯中の硫黄と反応する表面が増加する。また、迅速なガス化の結果として溶湯の攪拌が良好となり、脱硫反応が一層完全になる。さらに、油は溶湯中で脱硫に都合のよい還元状態を生ずるのに寄与し、この点でも脱硫効率の向上が期待される。

カルシウムカーバイド粉末への油の混合割合は……の理由で××質量%とする。

前記混合物中で、油はカルシウムカーバイド粒子が消化しその表面に水酸化カルシウムを生じ、そのために粉末物質の流れがよくなり、搬送ガス量(m3)に対して混合物を……kg/m3という高い割合で吹込むことが可能となり、使用ガス量が少なくてすみ、また前記脱硫効率の向上によるカルシウムカーバイド粉末の使用量の減少とも相まって、脱硫処理時の溶湯の温度低下を小さくすることができる。

[解 説]

「カルシウムカーバイド粉末に××質量%の油を混合してなる溶銑脱硫剤」は、請求項1及び請求項2に係る発明に共通している。「カルシウムカーバイド粉末に××質量%の油を混合してなる溶銑脱硫剤」は、カルシウムカーバイト粉末の表面に水酸化カルシウムが生じることにより粉末物質の流れをよくするという先行技術に対する貢献をもたらすものであり、特別な技術的特徴と言える。したがって、請求項1及び請求項2に係る発明は、同一の特別な技術的特徴を有し、単一性の要件を満たす。

〔事例 7〕同一の技術的特徴を有するもの

【発明の名称】

除草性を有する化合物

【特許請求の範囲】

1.式

式1

の化合物。

2.式

式2

の化合物。

【発明の詳細な説明】の抜粋

本発明は、基本骨格を共通する2つの新規な化合物に関するものである。両化合物は同様の除草性を有することが確認されている。

[解 説]

化学物質の発明において、発明特定事項が化学構造である場合、共通の新規な基本骨格があり、両化学物質が共通の性質又は活性を有していれば、両化学物質は同一の特別な技術的特徴を有していると言える。

この例においては、共通の新規な基本骨格

式3

があり、また、両化合物は、除草性を有するものであるから、同一の特別な技術的特徴を有している。

したがって、請求項1及び請求項2に係る発明は、単一性の要件を満たす。

〔事例 8〕技術上の意義が共通、又は密接に関連しているもの

【発明の名称】

多軸冷却装置

【特許請求の範囲】

1.中空室を各々有する第1、第2の主軸装置(1、11)及び該第1、第2の主軸装置(1、11)にて発生する熱量を放散する第1、第2の放熱装置(8、81)を備え、前記中空室で気化する作動液体の蒸気を各々前記第2、第1の放熱装置(81、8)に案内する蒸気管(10、101)及び前記第1、第2の放熱装置(8、81)で凝縮液化する作動液体を各々第1、第2の主軸装置の中空室に案内する液管(12、121)を介して、前記第1、第2の主軸装置(1、11)と前記第1、第2の放熱装置(8、81)とを交互に直列に接続したことを特徴とする多軸冷却装置。(第1図参照)

2.中空室を各々有する第1、第2の主軸装置(1、11)及び該第1、第2の主軸装置(1、11)にて発生する熱量を放散する単一の放熱装置(8)を備え、前記中空室で気化する作動液体の蒸気を前記放熱装置(8)に案内する蒸気管(10、101)及び前記放熱装置(8)で凝縮液化する作動液体を中空室に案内する液管(12、121)を介して、前記第1、第2の主軸装置(1、11)を各々前記放熱装置(8)と接続したことを特徴とする多軸冷却装置。(第2図参照)

【発明の詳細な説明】の抜粋及び図面

両発明は工作機械において、複数の主軸装置等の軸受部を冷却する多軸冷却装置に関する。この種のものとしては、主軸装置の各々に放熱装置を設けたものがあるが、主軸装置毎に熱変形、歪量が異なるため、主軸相互の位置変動により、加工精度が低下するという欠点があった。

放熱装置

[解 説]

請求項1及び請求項2に係る発明が、先行技術との対比において有する技術上の意義は、どちらも複数の主軸装置等の軸受部を冷却する多軸冷却装置において、主軸装置の熱変形、歪量を均一化することであり、共通している。よって、請求項1及び請求項2に係る発明は、単一性の要件を満たす。

〔事例 9〕技術上の意義が共通、又は密接に関連しているもの

【発明の名称】

ガス自動遮断装置

【特許請求の範囲】

1.バルブ(3)に係合させたバイメタル(4)と、バイメタル(4)にバーナーの温度を伝えるための受熱板(14)とを有し、バイメタル(4)の温度が低下したときに前記バイメタル(4)の変形によりバルブ(3)が閉じることを特徴とするガス自動遮断装置。(第1図参照)

2.永久磁石(19、21)と、この永久磁石(19、21)の磁石線の通路となる少なくとも2個のサーモフェライト(20、22、23)と、これらのサーモフェライト(20、22、23)の磁気吸着力で開閉位置を保持されるバルブ(25)と、前記サーモフェライト(20、22、23)にバーナーの温度を伝える受熱板(31)とを有し、……前記サーモフェライト(20、22、23)は磁性消失温度が異なることを特徴とするガス自動遮断装置。(第2図参照)

【発明の詳細な説明】の抜粋及び図面

この発明は、気体燃料を用いるガス器具等において、燃焼中に風やふきこぼれ等によって不用意に消炎したとき、温度の低下を感知して自動的にガスを遮断する安全装置に関する。

この種のものとしては、商用電源で作動する複雑な電子回路を用いた装置が公知であるが、漏電等による二次災害の発生が心配される欠点があった。

ガス器具

[解 説]

請求項1及び請求項2に係る発明が、先行技術との対比において有する技術上の意義は、どちらも、温度の低下により作動する機械的機構により自動的にガスを遮断できるようにしたことであり、共通する。よって、請求項1及び請求項2に係る発明は、単一性の要件を満たす。

〔事例 10〕技術上の意義が共通、又は密接に関連しているもの

【発明の名称】

前照灯装置

【特許請求の範囲】

1.反射鏡と、この反射鏡のほぼ焦点位置に水平に保持され直流点灯される一本の高圧放電灯(7)と、この高圧放電灯(7)のアークに対して略直角方向に磁界をかける磁界印加手段(8、9)と、上記高圧放電灯(7)のアーク電流の向きを切り換える電流方向切換手段(27、28)とを有することを特徴とする前照灯装置。(第1、2図参照)

2.反射鏡と、この反射鏡のほぼ焦点位置に水平に保持され直流点灯される一本の高圧放電灯(3)と、この高圧放電灯(3)のアークに対して略直角方向に磁界をかける磁界印加手段(4、5)と、この磁界印加手段(4、5)で印加される磁界のベクトル量を可変制御する制御手段(6、7)とを有することを特徴とする前照灯装置。(第1、3図参照)

【発明の詳細な説明】の抜粋及び図面

この発明は、対向車がある場合に減光されたすれ違いビームと通常走行時のための走行ビームとを切り換えることができる前照灯装置に関する。

この種のものとしては、すれ違いビーム用ランプと走行ビーム用ランプを使用して両ランプを切換え点灯させるものが公知である。

近年、省エネルギーの観点から光変換効率の高いランプの使用が望まれており、そのために高圧放電灯を用いることが考えられている。しかしながらそのまま両ランプに高圧放電灯を使用した場合従来の電球と異なり、放電灯の構造上点灯装置がかさばり重量もかさむという欠点があった。

前照灯

[解 説]

請求項1及び請求項2に係る発明が、先行技術との対比において有する技術上の意義は、どちらも、ただ一本の高圧放電灯を使用して、そのアークを上下方向に曲げるようにし、前照灯装置の小型軽量化を図ったことであり、共通している。したがって、請求項1及び請求項2に係る発明は、単一性の要件を満たす。

〔事例 11〕特別な技術的特徴が相補的に関連しているもの

【発明の名称】

伝動ベルト及びプーリー

【特許請求の範囲】

1.各ベルト歯が歯面と歯底面の接続部に凹円筒面状の応力軽減部(23)を有し、前記応力軽減部(23)は前記歯(14)の全外周の1/2の40~60%の外周を持つ歯付ベルト。(第1図参照)

2.プーリー歯(16)の各々が歯先の肩部(33)に凸円筒面を有し、……片側の凸円筒面は前記歯(16)の全外周の1/2の40~60%の外周をもつ歯付プーリー。(第2図参照)

【発明の詳細な説明】の抜粋及び図面

この発明は歯付ベルト及び歯付プーリーからなるベルト伝導装置において、該歯付ベルトのベルト歯の剪断破壊を防止するために該ベルト歯の歯面と歯面底の接続部を特定の寸法の円筒面とするとともに、これに対応して該歯付ベルトに噛合する歯付プーリーの歯先の肩部を同様の円筒面として、該歯付ベルトの剪断強度を向上させたものである。この種のベルト伝動装置のベルト歯は台形のものが公知であるが、歯元部(ベース部)に発生する応力集中によってベルト歯が剪断破壊する欠点があった。

プーリー

[解 説]

請求項1に係る発明の「歯の全外周の1/2の40~60%の外周をもつ凹円筒面」及び請求項2に係る発明の「歯の全外周の1/2の40~60%の外周をもつ凸円筒面」は相補的に関連している。これらは、歯付ベルトのベルト歯の剪断破壊を防止するという先行技術に対する貢献をもたらすものであるから、特別な技術的特徴と言える。したがって、請求項1及び請求項2に係る発明は、対応する特別な技術的特徴を有し、単一性の要件を満たす。

〔事例 12〕特別な技術的特徴が相補的に関連しているもの

【発明の名称】

画像信号の送信装置および受信装置

【特許請求の範囲】

1.入力画像信号をそれぞれ異なる予測関数で符号化する複数の予測符号器(12-1~12-N)と、……得られた各予測符号化信号中から選択された最も適中率の高い最適予測符号化信号をランレングス符号化するランレングス符号器(17)と、……識別回路(18)から出力される、前記最適予測符号化信号の予測関数を表す識別信号を、前記ランレングス符号器(17)からの出力信号に付加して送出する送出制御回路(19)とを備えたことを特徴とする画像信号の送信装置。(第1図参照)

2.予測符号化され、さらにランレングス符号化された画像信号とこれに付加された、前記予測符号化時の予測関数を表す識別信号とを受信する受信回路(31)と、該回路(31)から出力される画像信号をランレングス復号化するランレングス復号器(33)と、該復号器(33)の出力をそれぞれ異なる予測関数で復号する複数の予測の復号器(35-1~35-N)と、……前記各予測復号器(35-1~35-N)の復号出力のうち、前記識別信号に対応する復号出力のみを選択して取出す選択手段(36)とを備えたことを特徴とする画像信号の受信装置。(第2図参照)

【発明の詳細な説明】の抜粋及び図面

本発明は高い圧縮を行って信号を伝送する信号伝送方式に関するものである。

公衆通信回線の解放により、限られた帯域内で高能率にファクシミリ等の画像信号を伝送する手法の開発が望まれている。現在では、1または0の連続する長さを符号化するランレングス符号化方式が一般に行われているが、高い圧縮率を得ることはできない。本発明は予測符号化器を複数用い、その中でもっとも適中率の高い予測符号化器の出力をさらにランレングス符号化を行って伝送するもので、極めて高い圧縮率を得ることができる。

FAX1
FAX2

[解 説]

請求項1に係る発明の「入力画像信号をそれぞれ異なる予測関数で符号化する複数の予測符号器(12-1~12-N)と、……得られた各予測符号化信号中から選択された最も適中率の高い最適予測符号化信号をランレングス符号化するランレングス符号器(17)と、……識別回路(18)から出力される、前記最適予測符号化信号の予測関数を表す識別信号を、前記ランレングス符号器(17)からの出力信号に付加して送出する送出制御回路(19)」及び請求項2に係る発明の「予測符号化され、さらにランレングス符号化された画像信号とこれに付加された、前記予測符号化時の予測関数を表す識別信号とを受信する受信回路(31)と、該回路(31)から出力される画像信号をランレングス復号化するランレングス復号器(33)と、該復号器(33)の出力をそれぞれ異なる予測関数で復号する複数の予測の復号器(35-1~35-N)と、……前記各予測復号器(35-1~35-N)の復号出力のうち、前記識別信号に対応する復号出力のみを選択して取出す選択手段(36)」は、相補的に関連している。これらは、予測符号化器を複数用い、ランレングス符号化方式の圧縮率を向上させたという先行技術に対する貢献をもたらすものであるから、特別な技術的特徴と言える。したがって、請求項1及び請求項2に係る発明は、対応する特別な技術的特徴を有し、単一性の要件を満たす。

〔事例 13〕物とその物を生産する物

【発明の名称】

ブラインドナットの回り止め構造

【特許請求の範囲】

1.塑性変形可能な材料から構成される中空円筒体(36)からなり、前方内径部に雌ねじ(12)を有し、後方端部にフランジ部(14)を有するブラインドナット(10)の回り止め構造であって、被締結部材(16)の取付孔周面(22)から半径外方向に切欠いた凹溝(24)を該被締結部材(16)に設け、ブラインドナット中間壁部(34)を該取付孔凹溝(24)を含む半径外方向へ膨出して形成した膨出部(38)と前記凹溝(24)との嵌合によりブラインドナット(10)の空転を阻止するブラインドナットの回り止め構造。(第1、2図参照)

2.被締結部材に予形成されたブラインドナット取付孔(22)の内周面に接するロッド状ガイド部(26)と、該ガイド部(26)の後方に配され該取付孔(22)に挿入可能なフランジ部(30)と、該フランジ部(30)の外周前縁部に半径外方向に突出して形成され15~40の刃先角を有する刃(32)とからなる、ブラインドナットの回り止め構造用凹溝付取付孔(22)を形成するための工具。(第3、4図参照)

【発明の詳細な説明】の抜粋及び図面

この発明は、被締結部材に固着されたブラインドナットに、大トルクが加えられても、ブラインドナットの空転が阻止されるブラインドナットの回り止め構造に関する。

従来のブラインドナットは、インパクトレンチ等を使用したボルト締めによりブラインドナットに大きなトルクが加えられたりすると、一旦カシメにより固着されたブラインドナットが空転するような欠点が生じた。

この発明は、被締結部材側の取付孔に形成した凹溝とブラインドナットの回り止め構造とを組み合わせることにより、ブラインドナットの空転を防止するものであり、第3、4図に示す工具は、該凹溝付取付孔(22)の形成に特に適したものである。

ナット

[解 説]

請求項2に係る発明の特別な技術的特徴は、「フランジ部(30)の外周前縁部に半径外方向に突出して形成され15~40の刃先角を有する刃(32)」であり、請求項1に係る発明の特別な技術的特徴は、「被締結部材(16)の取付孔周面(22)から半径外方向に切欠いた凹溝(24)」である。請求項2に係る発明の特別な技術的特徴は、請求項1に係る発明の特別な技術的特徴への変化を必然的にもたらすものである。したがって、請求項2の工具は、請求項1の回り止め構造の製造に適しており、請求項1及び請求項2に係る発明は、単一性の要件を満たす。

〔事例 14〕物とその物を生産する物

【発明の名称】

抗生物質A/16686およびそれを生産する微生物

【特許請求の範囲】

1.塩酸塩の形態で、A)224~226℃において溶融する白色結晶性物質であり、……C)51.73%の炭素、6.34%の水素、9.96%の窒素、5.84%の塩素(合計含量)、4.74%の塩素イオン、及び1%の残部の近似元素組成、……F)比施光度、〔α〕D24=+49.7°、……J)6N塩酸中で110℃において6時間加水分解した後、少なくとも次の認められたアミノ酸の存在を示すアミノ酸分析:オルニチン、アスパラギン酸、……を特徴とする抗生物質A/16686。

2.グルコース・アスパラギン寒天培地上で胞子嚢を生産せず抗生物質A/16686の生産能を有するアクチノプラネス・フィリッピネンシスに属する微生物。

【発明の詳細な説明】の抜粋

本発明は、抗バクテリア活性を有する抗生物質A/16686及び抗生物質A/16686生産能を有する新規微生物アクチノプラネス・フィリッピネンシス(Actinoplanes philippinensis)に関する。

本発明の抗生物質/16686は新規なグリコペプチド系抗生物質である。この抗生物質はアクチノプラネス・フィリッピネンシスに属する菌(NRRL5462)を培養することにより製造される。

[解 説]

請求項2の微生物は、請求項1の抗生物質の生産に適している。したがって、請求項1及び請求項2に係る発明は、単一性の要件を満たす。

〔事例 15〕物とその物を生産する物

【発明の名称】

点火トリガパルス発生装置およびその磁化装置

【特許請求の範囲】

1.ピックアップコイル装置(13)と環状の永久磁石部材(18)とからなり、該永久磁石部材(18)は軸方向に離隔した第1及び第2の磁化された部分を有し、前記第1及び第2の磁化部分の各々は、一方向の一定磁気レベルに半径方向に磁化された半円周部分と、反対方向の一定磁気レベルに半径方向に磁化された半円周部分との間に鋭い磁束反転の区域(24)、(25)を画成し、かつ前記第1及び第2の磁化部分は互いに反対方向に磁化されていることを特徴とする、内燃機関の駆動軸に装着される点火トリガパルス発生器。(第1図、第2図参照)

2.環状の磁石材料の外周の半分に当接する軸方向に整列した第1及び第2の極を有するコの字形断面の極部材(33)と、該極部材(33)の内外面に沿って配置された磁化用コイル(37)と、該コイル(37)に選択された極性及び一定値の電流を供給するための電源装置とからなる、内燃機関のための点火トリガパルス磁束発生器を形成する環状永久磁石部材(18)の磁化装置(31)、(32)。(第3図参照)

【発明の詳細な説明】の抜粋及び図面

この発明は、駆動軸に装着された発電機を有する船外発動機等において、2シリンダエンジン用のコンデンサ放電点火装置へ供給するトリガパルスの発生器に関し、環状永久磁石の軸方向に離隔した2部分及び直径を挟んで対向した2部分で互いに半径方向に反対極性となるように磁化し、異極間に磁束反転区域(24)、(25)を画成することにより、ピックアップコイルから急峻なトリガパルスを得るものである。そのための磁化装置は、環状磁石材料を前述の極性となるように着磁する構成になっており、環状磁石材料を駆動軸に組付け後に使用される。

従来は、パルス発生器の組立体を発電器の下端に連結していたため、発動機の軸を長くする必要があり、外形が大きくなるばかりでなく、急峻なトリガパルスが得られなかった。また組立て時に永久磁石が着磁されていると、他の部品等を吸着して作業性が悪い欠点があった。

磁化装置

[解 説]

請求項2の磁化装置は、請求項1のパルス発生器における環状の永久磁石部材をパルス発生器の組立て後に着磁するものであり、請求項1のパルス発生器の製造に適している。したがって、請求項1及び請求項2に係る発明は、単一性の要件を満たす。

〔事例 16〕物とその物を生産する方法

【発明の名称】

回転溶剤抽出装置と回転溶剤抽出装置のロータのセル・アセンブリの現場組立法

【特許請求の範囲】

1.ロータ軸に複数本の半径方向に延出している上部支持ビーム(12)と下部支持ビーム(14)を有し、隣接する上下4本のビーム間にロータのセルが形成されている回転溶剤抽出装置において、セル・アセンブリ(16)は、

(a)上部及び下部位置決め要素(40)、内側及び外側位置決め要素(42、44)を備える側壁部材(20)が上部支持ビームと下部支持ビームに取り付けられていること、

(b)内壁部材(18)が前記側壁部材間に取り付けられていること、

(c)外壁部材(22)が前記側壁部材間に取り付けられていること、

(d)切妻部材(60)が隣接セルの対向する側壁部材上に取り付けられていること、

からなる回転溶剤抽出装置(第2、3図及び第4図参照)

2.ロータ軸に複数本の半径方向に延出している上部支持ビーム(12)と下部支持ビーム(14)を有し、隣接する上下4本のビーム間にロータのセルが形成されている回転溶剤抽出装置のロータのセルアセンブリ(16)の現場組立法において、

(a)まず、内側及び外側位置決め要素(42、44)を備える側壁部材(20)を、その上部及び下部位置決め要素

(40)に合わせて上部支持ビーム及び下部支持ビームにそれぞれ位置決めし、取り付けること、

(b)次いで、内壁部材(18)を前記側壁部材の内側位置決め要素に合わせて、側壁部材間に取り付けること、

(c)更に外壁部材(22)を前記側壁部材の外側位置決め要素に合わせて側壁部材間に取り付けること、からなる回転溶剤抽出装置のロータのセル・アセンブリの現場組立法。

【発明の詳細な説明】の抜粋及び図面

本発明は、回転溶剤抽出装置と回転溶剤抽出装置のロータのセル・アセンブリの現場組立法に関し、詳しくは、現場組立のためにいつでも作業現場に出荷できる状態にある内壁、外壁及び側壁部材からなるロータのセル・アセンブリを備えた上記抽出装置とその装置におけるロータのセル・アセンブリの組立の改良方法に関する。本発明の現場組立法により、簡単にそして確実に作業現場で回転溶剤抽出装置にセルを組み入れることができる。

切妻部材は、隣接セル間に液体が落下しないためと隣接セルへ液体が移動するのを助けるために設けられたもので、本発明の現場組立法は、切妻形以外の形状の部材を有する回転溶剤抽出装置にも適用し得る。

回転1
回転2

[解 説]

請求項2の現場組立方法は、請求項1の回転溶剤抽出装置の生産に適している。したがって、請求項1及び請求項2に係る発明は、単一性の要件を満たす。

〔事例 17〕物とその物を生産する方法

【発明の名称】

キーボードスイッチ及びその製造方法

【特許請求の範囲】

1.金属板(1)の表面の所定箇所に金属板(1)表面より突出するエラストマー樹脂からなる絶縁部(2)を設け、該絶縁部(2)以外の部分を電気接点部(3)とした電極板(4)と、該電気接点部(3)に対向する位置に薄膜電極(6)を設けた基板(5)とを、対向させて積層一体化してなるキーボードスイッチ。(第1図参照)

2.金属板(11)の表面の所定箇所の凹部に充填され、金属板(11)表面より突出するエラストマー樹脂からなる絶縁部(12)を設け、該絶縁部(12)以外の部分を電気接点部(13)とした電極板(14)と、該電気接点部(13)に対向する位置に薄膜電極(16)を設けた基板(15)とを対向させて積層一体化してなるキーボードスイッチ。(第3図参照)

3.金属板(1)の表面に、エラストマー樹脂に対して親和性のない材料からなるマスク層(8)を形成し、次いで露出した金属板(1)表面にエラストマー樹脂を被着し、その後該マスク層(8)を除去してエラストマー樹脂からなる所定の突出絶縁部(2)と、それ以外の電気接点部(3)とを有する電極板(4)を形成し、該電極板(4)と薄膜電極(6)を有する基板(5)とを、電気接点部(3)と薄膜電極(6)とが対向するよう積層一体化させることを特徴とするキーボードスイッチの製造方法。(第1、2図参照)

4.金属板(11)の表面にエラストマー樹脂に対して親和性のない材料からなるマスク層(18)を形成し、露出した金属板(11)表面をエッチングして凹部を設けたのち、該凹部にエラストマー樹脂をマスク層(18)の表面に至るまで充填し、次いで該マスク層(18)を除去してエラストマー樹脂からなる所定の突出絶縁部(12)と、それ以外の電気接点部(13)とを有する電極板(14)を形成し、該電極板(14)と薄膜電極(16)を有する基板(15)とを、電気接点部(13)と薄膜電極(16)とが対向するよう積層一体化させることを特徴とするキーボードスイッチの製造方法。(第3、4図参照)

【発明の詳細な説明】の抜粋及び図面

本発明は、キーボードスイッチ及びその製造方法に関する。

従来の押しボタンを用いたキーボードスイッチは構造が複雑であるため製造に手間がかかり、さらにその体積特に厚さは比較的大きなものであり、軽量化を特徴とする電卓等のキーボードスイッチとしては不適当であった。

また、圧電性高分子フィルムやフィルム上に導電性インクで電極を設けたものなどのフィルム類を用いたものは簡単な構造でその厚さも薄いものであるが、使用する圧電性高分子フィルムや導電性インキの抵抗値が大きいため、スイッチの接触抵抗が大となり、大電流を流すような場合には不適当なものであった。

本発明によるキーボードスイッチは、使用時には電極板上面を単に指で軽く押圧することにより、その直下に相当するエラストマー樹脂部分が圧縮され、電気接点(3)が薄膜電極(6)と接触して通電し、スイッチが作動するものである。

エラストマー1
エラストマー2

[解 説]

(1)「金属板の表面より突出するエラストマー樹脂からなる絶縁部」が請求項1及び請求項2に係る発明に共通している。「金属板の表面より突出するエラストマー樹脂からなる絶縁部」は、エラストマー樹脂部分が圧縮され、電気接点(3)が薄膜電極(6)と接触して通電し、スイッチが作動するという機構によりキーボードスイッチを軽量化したという先行技術に対する貢献をもたらすものであるから、請求項1及び請求項2に係る発明は、同一の特別な技術的特徴を有する。

(2)請求項3及び請求項4の製造方法は、請求項1及び請求項2の特別な技術的特徴である「金属板の表面より突出するエラストマー樹脂からなる絶縁部」への変化を必然的にもたらすものであるから、請求項1及び請求項2のキーボードスイッチの製造に適している。

(3)請求項3及び請求項4に係る発明が、先行技術との対比において有する技術上の意義は、どちらも「金属板の表面より突出するエラストマー樹脂からなる絶縁部」を製造することであり、共通している。

したがって、請求項1から請求項4に係る発明は、単一性の要件を満たす。

〔事例 18〕

物とその物を使用する方法、物とその物の特定の性質を専ら利用する物

【発明の名称】

シクロプロパンカルボン酸エステル誘導体、それを含有する殺虫剤及びそれを使用する殺虫方法

【特許請求の範囲】

1.一般式(1)

一般式

で表されるシクロプロパンカルボン酸エステル誘導体。

2.請求項1記載の少なくとも1つの化合物を有効成分として含有する殺虫剤。

3.昆虫の駆除が望まれる場所に請求項1記載の少なくとも1つの化合物の有効量を施用する殺虫方法。

【発明の詳細な説明】の抜粋

この発明は、殺虫活性を示し、その活性が持続するビフェニル単位のベンゼン環上に置換基を有する{1,1′-ビフェニル}-3-イル-メチル-3-(2,2-ジハロエテニル)-2,2-ジメチルシクプロパンカルボキシレート類、それを含む殺虫剤及びそれを施用する昆虫の殺虫方法に関する。

[解 説]

請求項2の殺虫剤は、請求項1のシクロプロパンカルボン酸エステル誘導体の殺虫活性を専ら利用する物である。

請求項3の方法は、請求項1のシクロプロパンカルボン酸エステル誘導体及び請求項2の殺虫剤を使用する方法である。

したがって、請求項1、請求項2及び請求項3に係る発明は、単一性の要件を満たす。

〔事例 19〕物とその物を取り扱う物

【発明の名称】

学習用磁気カード及びカード式レコーダ

【特許請求の範囲】

1.カードの走行方向の上流側を質問等の問いかけ部分、続く下流側を該問いかけ部分に対する返答部分とした記録又は記録可能な磁気トラック(5)を有し、上記問いかけ部分と返答部分との間に上記カードを一時停止させる切欠き部(7)を形成した学習用磁気カード。(第1図参照)

2.カードの移送経路(22)に臨んでカードの有無乃至はカードに形成せられた切欠きを検出する検出部材(45)と、該検出部材の動作に関連してカード駆動系を制御せしめる電源スイッチ(44)とよりなる一時停止装置を備えたカード式レコーダ。(第2図参照)

【発明の詳細な説明】の抜粋及び図面

本発明は記録部分を切欠きを介して二分した学習用磁気カード及びその移送経路にカードを挿入せる時点でカード自体の前側エッジにより検出部材(45)を介して電源スイッチ(44)をオンしカードを移送させ、カードの切欠き(7)が検出部材(45)の位置に達したとき、電源をオフし、ポーズ状態とし、さらにカードの後側エッジを押圧することでポーズ状態を解除することができるカード式レコーダに関する。

カード

[解 説]

請求項2に係る発明の特別な技術的特徴である「カードの移送経路(22)に臨んでカードの有無乃至はカードに形成せられた切欠きを検出する検出部材(45)と、該検出部材の動作に関連してカード駆動系を制御せしめる電源スイッチ(44)とよりなる一時停止装置」は、請求項1に係る発明の特別な技術的特徴である「カードを一時停止させる切欠き部(7)」に対して外的な作用を施すことにより機能を必然的に発揮させるものである。したがって、請求項2のカード式レコーダは、請求項1の学習用磁気カードの取り扱いに適しており、請求項1及び請求項2に係る発明は、単一性の要件を満たす。

〔事例 20〕物とその物を取り扱う方法

【発明の名称】

カセット及び同カセットを投影機に挿入しかつ取出す方法

【特許請求の範囲】

1.投影マスク(14)を保護する着脱自在のカバー(16、18)と、一方のカバー(16)に形成されてカセットの内部と外部との間で気体を流通せしめる気体通路(68)と、同気体通路内に設けたノーマルクローズド弁とからなるカセット。(第1図参照)

2.カセットのマスク(14)面にカバー(16、18)を取付け、カセット内を真空にすることによってマスク(14)を外気から保護し、該カセットを投影機の受容区域内に配置し、その中でカセットの真空を排除し、カバー(16、18)を取外し、カセットを投影場所へ前進させ投影終了後、カセットを前記受容区域内へ戻し、カバー(16、18)を取付け、カセット内を真空にした後、受容区域内から取出すことを特徴とするカセットを投影機内へ挿入しかつ取出す方法。(第2図参照)

【発明の詳細な説明】の抜粋及び図面

この発明は、半導体焼付用の投影マスクとマスク像をシリコン基板上に投影する投影機に関する投影マスクはゴミ等の付着防止の為カバーで保護する必要があり、又カバー開閉も投影機内で自動的に行う必要がある。

カセット

[解 説]

請求項2の方法は、請求項1のカセットのカバーの脱着と共にカセットの投影機内への挿入・取出しを自動的に行ってカセットの機能を発揮させるものであり、請求項1のカセットを取り扱いに適している。

したがって、請求項1及び請求項2に係る発明は、単一性の要件を満たす。

〔事例 21〕方法とその方法の実施に直接使用する物

【発明の名称】

断熱材を形成する方法及びその方法に使用する混合用ガン

【特許請求の範囲】

1.面と面の間の空洞部に、合成高分子の発泡粒子、合成高分子ラテックス結合剤及び結合した合成高分子発泡粒子に難燃性を付与する有機臭素含有化合物からなる混合物を導入することを特徴とする難燃性断熱材を形成する方法。

2.吸引室(4)内に高圧気体噴射口(3)を設け、該高圧気体噴射口(3)正面に噴射管(1)を連設し、該吸引室(4)内側方の該高圧気体噴射口(3)付近に合成高分子の発泡粒子を吸引する吸引管(6)を枝状に連設し、該噴射管の先端の噴射口(2)と接近する位置にラテックス結合剤及び難燃剤が導入される噴射部(5)を設けたことを特徴とする混合用ガン。

【発明の詳細な説明】の抜粋及び図面

本発明は、中間に空間を有する面と面との間の熱伝導を少なくするのが望ましい場所、例えば建築構造物における断熱に関する。

発泡ポリスチレンビーズは気泡構造を有するので、空洞部の断熱に適当である。しかし、それらはカサ密度が非常に低く、自由流動性を有するために空洞内にそれらを保持して空洞壁の接合部又は欠陥部から漏出するのを防止するのが困難なことが多い。本出願人によって開発されたこの問題の解決方法は、発泡ポリスチレンビーズを合成高分子ラテックス結合剤で被覆することである。この方法によると、上記ラテックス結合剤が発泡ポリスチレンビーズの流動を阻止し、発泡ポリスチレンビーズが開口部から流出するのを防止することができる。

本発明のさらに特徴とするところによれば、合成高分子の発泡粒子がラテックス結合剤流及び難燃剤流と所望の割合で混合され、生成混合物がガンの噴射口(2)より空洞内に送られる混合用ガンを使用して空洞部に導入される。

上記混合用ガンでは、高分子の発泡粒子が噴射管(1)の噴射口(2)に接近した位置でラテックス結合剤流及び難燃剤流と混合されたのち、直ちに噴射口(2)より噴射される。したがって、長い噴射管を用いて空洞内に挿入される部分を長くしても、上記混合物が噴射管(1)の内壁に付着するおそれが少なく、連続的にかつ均質に空洞内に充填される。

また、上記混合用ガンは、予め壁面に接着剤を塗布しておき、施工面に上記混合物を吹付けて防音及び防水性のある壁面を構成するための混合吹付ガンとしても用いることができる。

混合用ガン1
混合用ガン2

[解 説]

請求項2の混合用ガンは、請求項1の方法以外の方法にも適用できるが、請求項1の方法の実施に適している。したがって、請求項1及び請求項2に係る発明は単一性の要件を満たす。

〔事例 22〕方法とその方法の実施に直接使用する物

【発明の名称】

テレビジョン画像信号の伝送・表示方法および送信、受信装置

【特許請求の範囲】

1.テレビジョン画像信号を画面中央部では時間軸伸長し、画面周辺部では時間軸圧縮し、かつ時間軸伸長された画面中央部でのテレビジョン画像信号に適した比較的狭い占有周波数帯域で送信し、受信側において受信テレビジョン信号を元の時間軸に復元して表示するようにしたことを特徴とするテレビジョン画像信号の伝送・表示方法。

2.……撮像手段の偏向を非直線的に制御し、該撮像手段から得られる送信テレビジョン画像信号の時間軸を画面中央部では伸長し、画面周辺部では圧縮する制御手段を備えたテレビジョン画像信号の送信装置。

3.……受信テレビジョン信号の時間軸を画面中央部では圧縮し、画面周辺部では伸長する時間軸変換回路を備えたテレビジョン画像信号の受信装置。

【発明の詳細な説明】の抜粋

従来、テレビジョン画面の走査は、テレビジョンカメラ及び受像機等の画像表示装置の双方ともに、水平、垂直の両方向とも直線的速度で行い、画面上の位置の如何に拘りなく一定の解像度となるようにしていた。したがって、将来実現が期待される高品位テレビジョンのように画面の走査線数を増大させた場合には、テレビジョン画像信号の伝送に要する周波数帯域幅が従来の数倍乃至十数倍になるので、その実現が困難となる。

本発明によれば、画像表示面における中央部と周辺部とに対する視覚特性の相違を利用して、高品位のカラーテレビジョン画像信号を狭帯域の伝送路により安定に伝送し得る。

[解 説]

請求項2及び3の送信装置及び受信装置は、請求項1の伝送・表示方法における特別な技術的特徴である、テレビジョン画像信号の画面中央部での時間軸の伸長、画面周辺部での圧縮及びその復元を行うために直接使用する装置である。

請求項2の「撮像手段から得られる送信テレビジョン画像信号の時間軸を画面中央部では伸長し、画面周辺部では圧縮する制御手段」及び請求項3の「受信テレビジョン信号の時間軸を画面中央部では圧縮し、画面周辺部では伸長する時間軸変換回路」は相補的に関連するものである。これらは、画像表示面における中央部と周辺部とに対する視覚特性の相違を利用して、高品位のカラーテレビジョン画像信号を狭帯域の伝送路により安定に伝送し得るという先行技術に対する貢献をもたらすものであり、特別な技術的特徴と言える。したがって、請求項2及び請求項3は、対応する特別な技術的特徴を有する。

よって、請求項1、請求項2及び請求項3に係る発明は、単一性の要件を満たす。

〔事例 23〕方法とその方法の実施に直接使用する物

【発明の名称】

トンネル拡大掘削工法及び拡大シールド機

【特許請求の範囲】

1.シールド工法により施工した既設トンネル(3)内の拡大予定区域に対して、その一部を切り拡げて掘削を行い、当該切り拡げ部分(6)に前記既設トンネル(3)の外周部を掘削する拡大シールド機(18)を組み立て設置し、既設のトンネル覆工(2)を順次取り外しながら前記既設トンネル(3)に沿って拡大シールド機(18)を推進して拡大部を構築することを特徴とするトンネル拡大掘削工法。(第1図参照)

2.推進方向の切羽全面を拡大シールド機(22)に設置した動力式掘削機(22a)を用いて掘削することを特徴とする請求項1記載のトンネル拡大掘削工法。(第2図参照)

3.拡大シールド機(18)であって、その内周部に一次シールドセグメント(2)に沿って前記拡大シールド機(18)を案内するガイドプレート(12)を有するとともに、拡大トンネルの内面に装着された二次セグメント(19)より反力を得て前記拡大シールド機(18)を推進させるジャッキ(15)を具備してなる拡大シールド機。(第1図参照)

4.請求項3記載の拡大シールド機において、拡大シールド機(22)の推進面には、一次シールドセグメント(21)の外周囲で前記拡大シールド機(22)の円周方向に往復回動する回転式カッター(22a)を設けてなる拡大シールド機。(第2図参照)

【発明の詳細な説明】の抜粋及び図面

この発明は、トンネルの途中に所定間隔毎に拡大掘削部を設けるトンネル拡大掘削工法及びそのトンネル掘削工法に使用する拡大シールド機に関するものである。

従来この種の工法として、通常径のトンネル掘削を行った後拡大予定区域に対して地上から立坑を設け、この立坑を利用して拡大部分の構築を行うものが知られている。

トンネル

[解 説]

(1)請求項3は、方法の発明である請求項1の実施に直接使用する機械の発明である。したがって、請求項1及び請求項3に係る発明は、単一性の要件を満たす。

(2)請求項1及び請求項3の独立請求項間で単一性の要件を満たし、また、請求項2は請求項1と、請求項4は請求項3と、それぞれ同一の特別な技術的特徴を有する関係にあるので、請求項1から請求項4は、単一性の要件を満たす。

〔事例 24〕マーカッシュ形式

【発明の名称】

ポリヘキサメチレンテレフタレート誘導体

【特許請求の範囲】

1.一般式

化合物

の化合物。

ただし、Xは、ず1又は図2

50≦n≦100

【発明の詳細な説明】の抜粋
図3と既知のポリヘキサメチレンテレフタレートのエンドCOOH基のエステル化により得られる化合物は、熱劣化を起こす遊離COOH基の数が少なくなっているために熱劣化抵抗特性を持っている。

一方、成分成分を含むビニル化合物と既知のポリヘキサメチレンテレフタレートのエンドCOOH基のエステル化により得られる化合物は、不飽和モノマーと混合し(付加反応)、硬化させたとき、硬化樹脂の原料となる。

[解 説]

成分成分を含むビニル化合物により得られる選択肢は熱劣化抵抗特性を持っておらず、この請求項に含まれるすべての選択肢は、共通の性質又は活性を有しているとは言えない。したがって、請求項1に係る発明は、単一性の要件を満たさない。

〔事例 25〕中間体と最終生成物

【発明の名称】

チアゾロ〔2,3-b〕キナゾリン誘導体及びその製造用の中間体

【特許請求の範囲】

1.一般式〔Ⅰ〕

化合物

〔式中、R1はメチルチオ又はメチルスルフィニル基を表す〕の化合物。

2.一般式〔Ⅱ〕

化合物

〔式中、R1はメチルチオ又はメチルスルフィニル基を表し、R2は低級アルキル基を表す〕の化合物。

【発明の詳細な説明】の抜粋

本発明は、抗アレルギー活性を有する一般式〔Ⅰ〕で示されるチアゾロ〔2,3-b〕キナゾリン誘導体、及びその製造に有用な中間体である一般式〔Ⅱ〕で示されるチアゾロ〔2,3-b〕キナゾリン誘導体に関する。

一般式〔Ⅰ〕の化合物は、一般式〔Ⅱ〕の化合物を加水分解することにより容易に製造される。

[解 説]

請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明である最終生成物の中間体である。そして、両化合物は、新規な基本骨格

化合物

が共通している。さらに、請求項1の化合物は、請求項2の化合物から直接製造されるものであるから、請求項1及び請求項2に係る発明は、単一性の要件を満たす。

〔事例 26〕方法とその方法の実施に直接使用する物

【発明の名称】

防錆のための塗装方法及びそれに使用する物

【特許請求の範囲】

1.防錆物質Xを含む塗料を、圧縮空気を使用して霧状にする工程、電極配置Aを使用して霧状塗料を静電的に帯電させる工程及び当該塗料を塗装される物品に噴霧する工程からなる防錆のための塗装方法。

2.防錆物質Xを含む塗料。

3. 電極配置Aからなる帯電装置。

【発明の詳細な説明】の抜粋

本発明は、防錆効果が高く、かつ、塗装むらの生じにくい塗装方法である。従来、防錆物質を噴霧することにより、防錆塗装を行う方法は知られていた。しかし、いずれの方法も防錆効果の低い物質を塗装していたので、塗装による防錆効果は低く、また、複雑な構造の物品に塗装する場合は塗装むらが生じていた。本発明では、防錆効果の高い、新規な物質Xを塗料とすることで防錆効果を高めるとともに、霧状にした塗料を帯電させることにより、塗装むらも生じにくくしている。また霧状物質を効率よく帯電させるための電極配置Aも新規なものである。

[解 説]

請求項1及び請求項2に係る発明は、「防錆物質X」という同一の特別な技術的特徴を有する。また、請求項1及び請求項3に係る発明は、「電極配置Aからなる帯電装置」という同一の特別な技術的特徴を有する。

しかし、請求項2及び請求項3に係る発明で、共通する事項はなく、同一の特別な技術的特徴を有するものではない。また、相補的に関連する事項もなく、発明の技術上の意義が共通又は密接に関連しているとも言えないので、対応する特別な技術的特徴を有するものでもない。したがって、請求項1、2及び3に係る発明は、単一性の要件を満たさない。

〔事例 27〕事後的に単一性の要件を満たさなくなるもの

【発明の名称】

液晶表示装置

【特許請求の範囲】

1. 線状光源からの光源光を導光板の側面から入射し、該導光板の上面から出射した該光源光を液晶パネルに照射する液晶表示装置において、

(1a)上記導光板は上記線状光源から離れるに従い厚さが薄くなるくさび形とされ、

(1b)上記液晶パネルの電圧無印加時の液晶層と同じ複屈折特性を有する柱状スペーサが設けられるとともに、ノーマリーブラック表示タイプとし、

(1c)上記導光板の上記線状光源が設けられた上記側面以外の側面に反射層が設けられることを特徴とする液晶表示装置。

2. 線状光源からの光源光を導光板の側面から入射し、該導光板の上面から出射した該光源光を液晶パネルに照射する液晶表示装置において、

(2a)上記導光板は上記線状光源から離れるに従い厚さが薄くなるくさび形とされ、

(2b)上記液晶パネルの電圧無印加時の液晶層と同じ複屈折特性を有する柱状スペーサが設けられるとともに、ノーマリーブラック表示タイプとし、

(2c)上記導光板から出射された上記光源光を平行光に近づけるプリズムアレイが該導光板と上記液晶パネルとの間に配置されることを特徴とする液晶表示装置。

【発明の詳細な説明】の抜粋及び図面

本発明は、従来の線状光源からの光源光を導光板の側面から入射し、該導光板の上面から出射した該光源光を液晶パネルに照射する液晶表示装置の性能を向上したものである。まず、導光板をくさび形としたことにより、液晶パネルに対して垂直に入射する光を多くすることができる。また、ノーマリブラック表示としたことで、黒表示時のスペーサ部における光抜けを防止できる。さらに、請求項1に係る発明においては、導光板の側面に反射層を設けたので、導光板の側面からの漏洩光を減らすことができ、光源光の利用効率が向上した。

請求項2に係る発明においては、プリズムアレイにより光源光を平行光に近づけたので、パネル全面で均一な表示を実現できた。

プリズムアレイ

[先行技術調査の結果]

文献1には、線状光源からの光源光を導光板の側面から入射し、該導光板の上面から出射した該光源光を液晶パネルに照射する液晶表示装置において、上記導光板は上記線状光源から離れるに従い厚さが薄くなるくさび形とされたものが記載されている。

文献2には、ノーマリブラック表示タイプの液晶表示パネルにおいて、スペーサ部における光抜けを防止するため、電圧無印加時の液晶層と同じ複屈折特性を有する柱状スペーサを設けたものが記載されている。

[解 説]

請求項1及び2に係る発明は、(a)導光板を線状光源から離れるに従い厚さが薄くなるくさび形とした点及び(b)液晶パネルの電圧無印加時の液晶層と同じ複屈折特性を有する柱状スペーサが設けられるとともに、ノーマリーブラック表示タイプとした点で共通する。

しかしながら、(a)導光板を線状光源から離れるに従い厚さが薄くなるくさび形とした点は文献1に記載されており、(b)液晶パネルの電圧無印加時の液晶層と同じ複屈折特性を有する柱状スペーサが設けられるとともに、ノーマリーブラック表示タイプとした点は文献2に記載されており、どちらも公知である。また、(a)導光板を線状光源から離れるに従い厚さが薄くなるくさび形とした点及び(b)液晶パネルの電圧無印加時の液晶層と同じ複屈折特性を有する柱状スペーサが設けられるとともに、ノーマリーブラック表示タイプとした点は、技術的な関連性がまったくなく、それらを組み合わせたものは特別な技術的特徴とは言えない。

よって、請求項1及び2に係る発明は同一の特別の技術的特徴を有しているとは言えない。さらに、ほかに同一の又は対応する特別な技術的特徴が存在するとも認められない。

したがって、請求項1及び2に係る発明は、単一性の要件を満たさない。

〔事例 28〕最初に記載された発明が特別な技術的特徴を有しない場合の事例

【発明の名称】

自閉式引戸装置

【特許請求の範囲】

1.間口の上部に傾斜して取り付けられる上レールと、上レール内を走行する戸車と、戸車に連結されて上レールより吊設される扉から構成され、扉が自重によって自動的に閉鎖するように構成された自閉式の引戸装置において、扉が間口を閉鎖する際に、引戸の閉鎖速度を調整する制動装置を備えたことを特徴とする自閉式引戸装置。

2.制動装置は、上レールの近傍に取り付けられたエアシリンダ(8)である請求項1に記載の自閉式引戸装置。(第1図参照)

3.制動装置は、上レールに取り付けられたラック(4)と、戸車の近傍に取り付けられた制動用ピニオン(22)である請求項1に記載の自閉式引戸装置。(第2図参照)

【発明の詳細な説明】の抜粋

従来、間口上部に取り付けた上レールから吊り下げられるタイプの引戸装置において、上レールを傾斜して取り付けることで、扉の自重を用いて自動的に閉鎖されるようにしたものが知られている。

しかし、このような引戸装置においては、扉が閉鎖する際、自重によって次第にスピードを増すため、扉が閉鎖端に達した際、勢いよく戸枠に衝突して騒音が発生する。また、指などが挟まれることもあり危険であるという問題があった。

本発明は、このような問題を解決するため、引戸装置の閉鎖速度を調整する制動装置を設けたものである。

引戸装置

[先行技術調査の結果]

文献1には、間口の上部に傾斜して取り付けられる上レールと、上レール内を走行する戸車と、戸車に連結されて上レールより吊設される扉から構成され、扉が自重によって自動的に閉鎖するように構成された自閉式引戸装置において、扉が間口を閉鎖する際の速度を調整する目的で、摩擦車と摩擦板を設けたものが記載されている。

[解 説]

文献1に記載の「摩擦車と摩擦板」は「制動装置」の一種であるため、請求項1に係る発明は文献1に記載されている。

したがって、請求項1に係る発明は特別な技術的特徴を有しないため、4.2[審査対象の決定手順]に従って審査対象となる発明を決定する。同手順により、請求項1に係る発明の発明特定事項をすべて含む同一カテゴリーの請求項2に係る発明は審査対象に加える。なお、請求項2に記載の「制動装置は、上レールの近傍に取り付けられたエアシリンダ(8)である」は周知技術又は慣用技術ではなく、かつ、単なる設計変更でもないため、請求項2に係る発明は、文献1に記載の先行技術に対する貢献をもたらすものであり、特別な技術的特徴を有する。

一方、請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明の発明特定事項をすべて含む同一カテゴリーの発明の中で請求項の番号が最も小さいものでない。さらに、請求項3に係る発明は、制動装置に関し請求項2に係る発明とは技術的に異なる限定がなされており、これは別途先行技術調査・審査を必要とするため、請求項1及び2に係る発明を審査した結果、審査が実質的に終了しているものでもない。したがって、請求項3に係る発明については、審査対象とせずに、発明の単一性の要件違反の拒絶理由を通知する。

クレーム図

〔事例 29〕最初に記載された発明が特別な技術的特徴を有しない場合の事例

【発明の名称】

汚水高度処理装置

【特許請求の範囲】

1. 紫外線を中心とする波長のパルス光を発する高出力ランプが設置されている光反応槽よりなる汚水高度処理装置。

2. 前記光反応槽に光触媒が存在していることを特徴とする請求項1記載の汚水高度処理装置。

3. 前記光反応槽の上流側に酸化剤添加機構が設けられていることを特徴とする請求項2記載の汚水高度処理装置。

4.光反応槽の流出水を当該光反応槽に返送する返送ラインが設けられていることを特徴とする請求項3記載の汚水高度処理装置

【発明の詳細な説明】の抜粋

本発明は、難分解性CODを高濃度に含む汚水に対して、高出力の紫外線を中心とする波長の光を照射して汚水を高効率に処理する装置に関する。本発明によれば、光を高出力で照射するため、光の到達距離が長く高い処理効果が得られ、かつ、光の照射を間欠的に短時間に行うため、瞬間的な照射強度は非常に強いものの電力消費量は極めて小さく、処理に要するコストは低い。また、光触媒を内在させた場合には、光によって励起された光触媒の作用によって生成するヒドロキシラジカル等のラジカルが汚染物質と反応して酸化分解反応が生じるといった効果が得られる。さらに、酸化剤を添加すると当該酸化剤の作用による酸化分解反応が生じるといった効果が得られる。そして、光反応槽流出水の少なくとも一部を該光反応槽へ返送する返送ラインを設けることにより、光反応槽において処理できなかった未反応物質の少なくとも一部を再び光反応槽で処理するため、より高い処理効果が得られる。

[先行技術調査の結果]

請求項1、2に係る発明の汚水高度処理装置は、文献1に記載されており、既に公知である。

[解説]

請求項1に係る発明が特別な技術的特徴を有しないため、4.2[審査対象の決定手順]に従って審査対象となる発明を決定する。請求項1に係る発明の発明特定事項をすべて含む同一カテゴリーの請求項2に係る発明も、文献1により新規性が欠如しており、特別な技術的特徴を有しない。請求項2に係る発明の発明特定事項をすべて含む同一カテゴリーの請求項3に係る発明に新たに追加された「前記光反応槽の上流側に酸化剤添加機構が設けられていること」という技術的特徴から把握される課題は、酸化剤による汚染物質分解の高効率化であり、これは請求項2に係る発明の難分解性CODを高濃度に含む汚水の処理の高効率化という課題と密接に関連している。このため、請求項3に係る発明について特別な技術的特徴の有無を判断する。請求項3に記載の「前記光反応槽の上流側に酸化剤添加機構が設けられていること」は周知技術又は慣用技術ではなく、かつ、単なる設計変更でもないため、請求項3に係る発明は、先行技術に対する貢献をもたらすものであり、特別な技術的特徴を有する。したがって、請求項1~3に係る発明及び請求項3に係る発明の発明特定事項をすべて含む同一カテゴリーの発明である請求項4に係る発明について、発明の単一性の要件を問わずに審査対象とする。

クレーム

〔事例 30〕最初に記載された発明が特別な技術的特徴を有しない場合の事例

【発明の名称】

脚立

【特許請求の範囲】

1.左右一対の支柱(2)に踏桟(3)を架設した一組の脚体(1)を有し、該一組の脚体(1)を枢軸(4)を介して回動可能に連結し、かつ前記脚体(1)の両側を支持する左右一対の補強脚(6)を備えた脚立において、前記枢軸(4)に左右一対の補強脚(6)を回動可能に連結し、該補強脚(6)の端部(7)を前記脚体間の接地面に設置可能にしたことを特徴とする脚立。

2.前記補強脚(6)を前記脚体間の外側の接地面に設置可能にした請求項1記載の脚立。

3.前記補強脚(6)の端部(7)を伸縮可能とし、前記脚体間の接地面の内外方向へ位置調整可能にした請求項2記載の脚立。

4.前記枢軸(4)に支持金具(8)を回動可能に連結し、前記支持金具(8)と補強脚(6)の上端部を係脱可能に連結した請求項1記載の脚立。

5.前記各脚体(1)の所定の踏桟(3)に補強脚(6)を挟持可能な脚ホルダ(9)を設け、前記補強脚(6)を折り畳み後の脚体(1)の間に配置した請求項3記載の脚立。

6.前記一対の脚体(1)を連結部(5)により同一面上に連結し、該連結部(5)から前記補強脚(6)を脚体平面と交差方向に下方に突出し、該補強脚(6)の端部(7)を接地面に設置可能にした請求項3記載の脚立。

【発明の詳細な説明】の抜粋及び【図面】

本発明は、脚立の部品点数を低減し簡単な構成で安価に製作でき、脚立の安定性を向上し、その転倒を防止して安全性を確保し、脚立の天板上での作業を促し、また梯子の使用上の利便性を向上するとともに、既設の脚立や梯子の改変に容易に応じられ、しかも不使用時には補強脚をコンパクトに折り畳め、また積み重ね保管時の踏桟を保護し得るようにした脚立に関する。

本発明は、左右一対の支柱(2)に踏桟(3)を架設した一組の脚体(1)を有し、該一組の脚体(1)を枢軸(4)を介して回動可能に連結し、かつ前記脚体(1)の両側を支持する左右一対の補強脚(6)を備えた脚立において、前記枢軸(4)に左右一対の補強脚(6)を回動可能に連結し、該補強脚(6)の端部(7)を伸縮可能とし、前記脚体間の接地面に設置可能にしたので、一方の脚体(1)を支持する従来の補強脚(6)に比べて、脚立の安定性が向上し、その転倒を防止して安全性を確保することができる。

脚立 脚立

[先行技術調査の結果]

請求項1及び2に係る発明の脚立は文献1に記載されており既に公知である。文献1には「補強脚の端部を伸縮可能とし、前記脚体間の接地面の内外方向へ位置調整可能にすること」は記載されていない。

[解説]

請求項1に係る発明が特別な技術的特徴を有しないため、4.2[審査対象の決定手順]に従って審査対象となる発明を決定する。請求項1に係る発明の発明特定事項をすべて含む同一カテゴリーの請求項2に係る発明も、文献1により新規性が欠如しており、特別な技術的特徴を有しない。

請求項2に係る発明の発明特定事項をすべて含む同一カテゴリーの発明である請求項3に記載の「補強脚の端部を伸縮可能とし、前記脚体間の接地面の内外方向へ位置調整可能にすること」は周知技術又は慣用技術ではなく、かつ、単なる設計変更でもない。このため、請求項3に係る発明は、先行技術に対する貢献をもたらすものであり、特別な技術的特徴を有する。したがって、請求項1~3に係る発明、及び請求項3に係る発明の発明特定事項をすべて含む同一カテゴリーの発明である請求項5及び6に係る発明について、発明の単一性の要件を問わずに審査対象とする。

請求項4に係る発明は、請求項1に係る発明の発明特定事項をすべて含む同一カテゴリーの発明の中で請求項の番号が最も小さいものでなく、請求項3に係る発明の発明特定事項をすべて含むものでもない。さらに、「前記枢軸(4)に支持金具(8)を回動可能に連結し、前記支持金具(8)と補強脚(6)の上端部を係脱可能に連結した」という記載が追加されており、これは別途先行技術調査・審査を必要とするため、請求項1、2、3、5及び6に係る発明を審査した結果、審査が実質的に終了しているものでもない。したがって、請求項4に係る発明については審査対象とせずに、発明の単一性の要件違反の拒絶理由を通知する。

クレーム

〔事例 31〕最初に記載された発明が特別な技術的特徴を有しない場合の事例

【発明の名称】

太陽熱集熱器

【特許請求の範囲】

1.太陽熱を吸収する集熱板(1)と、該集熱板(1)の近傍に配置され、前記集熱板(1)からの熱を受ける熱伝達媒体が流れる集熱管(2)と、該集熱管(2)の背後に設けられた保温材(3)とを具備する太陽熱集熱器であって、前記集熱板(1)から前記集熱管(2)への伝熱を熱伝導性ゴム(4)を用いて行なうことを特徴とする太陽熱集熱器。

2.前記熱伝導性ゴムは、中間部が集熱板(1)に当接する集熱管(2)の背部側の円周面に密着するとともに、両端部が集熱板(1)に当接した熱伝導性ゴムシート(4)であることを特徴とする請求項1記載の太陽熱集熱器。

3.前記熱伝導性ゴムは、エチレン-プロピレン系ポリマー100重量部に対し、平均粒径10~150μmのグラファイト、平均粒径0.1~10μmのアルミニウム粉末及びチタネート系カップリング剤を合計で1~30重量部を含有してなることを特徴とする請求項1記載の太陽熱集熱器。

4.前記集熱板(1)と前記保温材(3)との間に輻射防止部材(5)を設けたことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の太陽熱集熱器。

5.前記集熱板(1),集熱管(2),保温材(3)は箱体内に設けられ、箱体(6)の開口部にはカバーガラス(7)を設け、前記カバーガラス(7)の箱体内側の面には、熱エネルギーの吸収・再放射率の低いLow-E処理が施されていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の太陽熱集熱器。

【発明の詳細な説明】の抜粋及び【図面】

本発明は、太陽熱を吸収する集熱板(1)と、集熱板(1)の近傍に配置され、集熱板(1)からの熱を受ける熱伝達媒体が流れる集熱管(2)と、集熱管(2)の背後に設けられた保温材(3)とを具備する太陽熱集熱器であって、集熱板(1)から集熱管(2)への伝熱を熱伝導性ゴムシート(4)を用いて行なうものである。本発明によれば、集熱板(1)から集熱管(2)への伝熱を、弾性を有する熱伝導性ゴムを用いて行なうことにより、好ましくは集熱管(2)の円周面に熱伝導性ゴムシート(4)を密着させることで、集熱板(1)と熱伝導性ゴム、および、熱伝導性ゴムと集熱管(2)との接触面積が増え、集熱板(1)から集熱管(2)への熱伝導効率が向上し、集熱効率が向上する。また、熱伝導性ゴムを、エチレン-プロピレン系ポリマー100重量部に対し、平均粒径10~150μmのグラファイト、平均粒径0.1~10μmのアルミニウム粉末及びチタネート系カップリング剤1~30重量部を含有することにより熱伝導効率が向上し、集熱効率が向上する。また、本発明によれば、集熱板(1)と保温材(3)との間に輻射防止部材(5)を設けたことにより、集熱板(1)から保温材(3)への輻射による熱損失が減り、集熱効率が向上する。また、箱体(6)の開口部に、熱エネルギーの吸収・再放射率の低いLow-E処理が施されたカバーガラス(7)を設けたことにより集熱板(1)からの熱放射が抑制され、集熱効率が向上する。

箱

[先行技術調査の結果]

請求項1に係る発明の太陽熱集熱器は、文献1に記載されており、既に公知である。

[解説]

請求項1に係る発明が特別な技術的特徴を有しないため、4.2[審査対象の決定手順]に従って審査対象となる発明を決定する。請求項1に係る発明の発明特定事項をすべて含む同一カテゴリーの請求項2に記載の「前記熱伝導性ゴムは、中間部が集熱板(1)に当接する集熱管(2)の背部側の円周面に密着するとともに、両端部が集熱板(1)に当接した熱伝導性ゴムシート(4)からなること」は周知技術又は慣用技術ではなく、かつ、単なる設計変更でもない。このため、請求項2に係る発明は先行技術に対する貢献をもたらすものであり、特別な技術的特徴を有する。

したがって、請求項1、2に係る発明に加え、請求項2に係る発明の発明特定事項をすべて含む同一カテゴリーの請求項4、5に係る発明を審査対象とする。

一方、請求項3に係る発明及び当該発明の発明特定事項をすべて含む発明については、請求項1に係る発明の発明特定事項をすべて含む同一カテゴリーの発明の中で請求項の番号が最も小さいものでなく、請求項2に係る発明の発明特定事項をすべて含むものでもない。さらに、請求項3に係る発明には熱伝導性ゴムの組成に関する技術的特徴が含まれており、これは別途先行技術調査・審査を必要とするため、上記審査対象の発明を審査した結果、実質的に審査が終了しているものでもない。したがって、請求項3に係る発明及び当該発明の発明特定事項をすべて含む発明については、審査対象とせず、発明の単一性の要件違反の拒絶理由を通知する。

なお、この事例においては、請求項2、4-2、5-4-2及び5-2に係る発明について進歩性欠如の拒絶理由が発見され、その結果、同一の引用文献に基づく同旨の拒絶の理由によって、請求項4-1、請求項5-4-1及び請求項5-1についても審査が実質的に終了しているため、これらについても審査対象に加える。

[多数項引用形式の場合の発明の表記]

例えば、「請求項4-2」は、多数項引用形式の請求項4において選択的に引用される請求項のうち、請求項2を引用する発明を示す。

クレーム

〔事例 32〕最初に記載された発明が特別な技術的特徴を有しない場合の事例

【発明の名称】

床構造

【特許請求の範囲】

1.上部に受け部(6)を有する根太(2)と、前記根太(2)上に載置され、両側面に長尺方向の溝(5)が形成された長尺状の床板(3)と、前記床板(3)の溝(5)に嵌合した状態で、前記根太(2)の前記受け部(6)を挟み込んで、前記床板(3)を前記根太(2)に固定する床板固定具(4)と、を有する床構造。

2.前記床板固定具(4)は、前記根太(2)に向かって打ち込まれて、前記受け部(6)を挟み込むことを特徴とする請求項1記載の床構造。

3.前記床板は木質であり、かつ、ロールコーターを用いて電子線硬化型樹脂を床板表面に圧入浸透させた後、硬化させて形成した、表面塗装を有することを特徴とする請求項2記載の床構造。

4.前記床板は、電子線硬化型樹脂のオリゴマーとして、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、又はこれらアクリレートとシリコンアクリレートとの混合物を、架橋剤として、多官能性アクリレートモノマー又は多官能性メタクリレートモノマーを使用したことを特徴とする請求項3記載の床構造。

【発明の詳細な説明】の抜粋及び【図面】

本発明は、根太上に複数の床板を敷設するための床構造に関する。

本発明は、床構造の施工後でも必要な床板だけを容易に交換することができ、板材の固定具を根太にねじ止めする必要がなく、目地も自由に設定できる床構造の提供を目的とする。

本発明の床構造は、上部に受け部(6)を有する根太(2)と、根太(2)上に載置され、両側面に長尺方向の溝(5)が形成された長尺状の床板(3)と、床板(3)の溝5に嵌合した状態で、根太(2)の受け部(6)を挟み込んで、床板(3)を根太(2)に固定する床板固定具(4)と、を有する。

また、床板表面の耐久性を向上させるために、床板は木質とし、ロールコーターを用いて電子線硬化型樹脂を床板表面に圧入浸透させた後、硬化させて表面塗装を形成することができる。電子線硬化樹脂を床板に浸み込むよう圧入浸透させたことにより、単に床板表面に当該電子線硬化樹脂を塗布した場合よりも、床板表面の耐久性を飛躍的に向上させることができる。そして、電子線硬化型樹脂のオリゴマーとして、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、又はこれらアクリレートとシリコンアクリレートとの混合物を使用し、架橋剤として、多官能性アクリレートモノマー又は多官能性メタクリレートモノマーを使用することが好ましい。

床構造

[先行技術調査の結果]

請求項1及び2に係る発明の床構造は、文献1に記載されており、既に公知である。

[解説]

請求項1に係る発明が特別な技術的特徴を有しないため、4.2[審査対象の決定手順]に従って審査対象となる発明を決定する。請求項1に係る発明の発明特定事項をすべて含む同一カテゴリーの請求項2に係る発明も、文献1により新規性が欠如しており、特別な技術的特徴を有しない。

請求項2に係る発明の発明特定事項をすべて含む同一カテゴリーの請求項3に係る発明に追加された技術的特徴は、電子線硬化樹脂の圧入浸透を特徴とした床板の表面塗装に関するものであるのに対し、請求項2に係る発明の技術的特徴は、根太上への床板の固定に関するものであり、両者は技術的な関連性が低い。また、請求項3に係る発明の当該技術的特徴から把握される、床板表面の耐久性向上という課題も、請求項2に係る発明の、施工後の床板交換の容易化という課題と関連性が低い。

このため、請求項1、2に係る発明は審査対象とするが、請求項3、4に係る発明については審査対象とせずに、発明の単一性の要件違反の拒絶理由を通知する。

クレーム

〔事例 33〕最初に記載された発明が特別な技術的特徴を有しない場合の事例

【発明の名称】

冷媒及び冷凍装置

【特許請求の範囲】

1.沸点が-50℃~0℃の範囲にある飽和炭化水素を混合した混合物からなることを特徴とする冷媒。

2.前記混合物はプロパン(C)とブタン(C10)の混合物であって、その混合比を1.6~4.5:1としたことを特徴とする請求項1記載の冷媒。

3.前記混合比を1.8~2.5:1としたことを特徴とする請求項2記載の冷媒。

4.請求項3記載の冷媒を用いることを特徴とする冷凍装置。

5.前記冷凍装置の圧縮機構部の鉄系摺動部品は、鉄と硫黄とを主成分とする化合物層を 1×10-3μm ~50μm の厚さで形成してなる表面層、またはビッカース硬度が 400以上で、かつ厚さが 2μm以上の表面硬化層を摺動表面に有することを特徴とする請求項4記載の冷凍装置。

6.冷凍機油としてナフテン系鉱油、パラフィン系鉱油及び合成油から選ばれた少なくとも1つを用いることを特徴とする請求項5記載の冷凍装置。

【発明の詳細な説明】の抜粋及び【図面】

本発明は、代替フロン冷媒として、オゾン分解係数と地球温暖化係数が共に低い飽和炭化水素からなる冷媒を採用するとともに、冷凍装置の信頼性および安全性を向上させるため、圧縮機構部の耐久性を高め、信頼性の高い冷凍機油(潤滑油)を封入してなる冷凍装置に関するものである。本発明において、飽和炭化水素は沸点が-50℃~0℃の範囲にあるプロパン(C)及びブタン(C10)であり、それらの混合比が1.6~4.5:1、好ましくは1.8~2.5:1であるものが使用できる。

また、冷凍装置の圧縮機構部において、鉄系摺動部品の摺動部を表面処理し、鉄と硫黄とを主成分とする化合物層を 1×10-3μm ~50μm の厚さで形成してなる表面層、またはビッカース硬度が 400以上で、かつ厚さが 2μm以上の表面硬化層としたことにより、安定した摺動特性を維持され、耐久性が向上した。さらに、冷凍装置に使用する冷凍機油として信頼性が高く、安価なナフテン系鉱油、パラフィン系鉱油及び合成油を採用し、摺動部材の信頼性を向上させた。

[先行技術調査の結果]

請求項1~3に係る発明の冷媒は、文献1に記載されており、既に公知である。

[解説]

請求項1に係る発明が特別な技術的特徴を有しないため、4.2[審査対象の決定手順]に従って審査対象となる発明を決定する。請求項1に係る発明の発明特定事項をすべて含む同一カテゴリーの請求項2に係る発明、請求項2に係る発明の発明特定事項をすべて含む同一カテゴリーの請求項3に係る発明も文献1により新規性が欠如しており、特別な技術的特徴を有しない。さらに、請求項3に係る発明の発明特定事項をすべて含む同一カテゴリーの請求項4に係る発明は、文献1に記載の冷媒を採用した冷凍装置であって、文献1に記載された先行技術に周知技術を付加したものにすぎず、新たな効果を奏するものでもないため特別な技術的特徴を有しない。

請求項4に係る発明の発明特定事項をすべて含む同一カテゴリーの請求項5に係る発明に新たに追加された技術的特徴は、圧縮機構部における摺動部の表面処理に関するものであるのに対し、請求項4に係る発明の技術的特徴は、冷凍装置の冷媒の組成に関するものであり、両者は技術的な関連性が低い。また、請求項5に係る発明の当該技術的特徴から把握される、圧縮機構部の摺動特性を維持し、耐久性を高めるという課題も、請求項4に係る発明のオゾン分解係数と地球温暖化係数が共に低い冷媒を採用するという課題と関連性が低い。このため、請求項1~4に係る発明は審査対象とするが、請求項5、6に係る発明については審査対象とせずに、発明の単一性の要件違反の拒絶理由を通知する。

クレーム

〔事例 34〕最初に記載された発明が特別な技術的特徴を有しない場合の事例

【発明の名称】

有機電解質二次電池

【特許請求の範囲】

1.正極活物質としてLiMO(Mは遷移金属元素のうちの1つもしくは2つ以上である)を用いた正極と負極とを有することを特徴とする有機電解質二次電池。

2.Mとして、少なくともNi及びCoを含むことを特徴とする、請求項1記載の有機電解質二次電池。

3.正極活物質がLiNi(1-x-y)CoMn(ただし、0<x<1、0<y<1、x+y<1)であることを特徴とする、請求項2記載の有機電解質二次電池。

4.負極として、平均粒径が10μm~40μmであって、短軸と長軸の比が1対2以上である楕円体の黒鉛粒子を用いることを特徴とする、請求項3に記載の有機電解質二次電池。

【発明の詳細な説明】

本発明は、デジタルカメラ等の携帯型電子機器の電源として用いられる有機電解質二次電池に関する。かかる有機電解質二次電池においては、正極活物質として、一般式LiMO(Mは遷移金属元素のうちの1つもしくは2つ以上である)を用いることにより、エネルギー密度の優れたものが得られる。上記正極材料を構成する酸化物として、好ましくはMとして、少なくともNi及びCoを含むものが、より好ましくはLiNi(1-x-y)CoxMny(ただし、0<x<1、0<y<1、x+y<1)で表される複合酸化物を用いる。特に、LiNi(1-x-y)CoxMny(ただし、0<x<1、0<y<1、x+y<1)で表される複合酸化物を用いた場合、さらにサイクル特性も優れた有機電解質二次電池を得ることができる。

また、有機電解質二次電池の負極として、平均粒径が10μm~40μmであって、短軸と長軸の比が1対2以上である楕円体の黒鉛粒子が好適である。楕円体の黒鉛粒子を用いることで粒子の配向が乱雑となり、高率放電特性や低温特性の面で有利である。

[先行技術調査の結果]

請求項1~3に係る発明の有機電解質二次電池は、文献1に記載されており、既に公知である。

[解説]

請求項1に係る発明が特別な技術的特徴を有しないため、4.2[審査対象の決定手順]に従って審査対象となる発明を決定する。請求項1に係る発明の発明特定事項をすべて含む同一カテゴリーの請求項2に係る発明、請求項2に係る発明の発明特定事項をすべて含む同一カテゴリーの請求項3に係る発明も文献1により新規性が欠如しており、特別な技術的特徴を有しない。

請求項3に係る発明の発明特定事項をすべて含む同一カテゴリーの請求項4に係る発明に追加された技術的特徴は、負極に用いる粒子の形状に関するものであるのに対し、請求項3に係る発明の技術的特徴は、正極の活物質の種類に関するものであり、両者は技術的な関連性が低い。また、請求項4に係る発明の当該技術的特徴から把握される、高率放電特性や低温特性を実現するという課題も、請求項3に係る発明の、エネルギー密度とサイクル特性が優れたものを実現するという課題と関連性が低い。このため、請求項1~3に係る発明は審査対象とするが、請求項4に係る発明については審査対象とせずに、発明の単一性の要件違反の拒絶理由を通知する。

クレーム

〔事例 35〕最初に記載された発明が特別な技術的特徴を有しない場合の事例

【発明の名称】

光通信装置及び光通信方法

【特許請求の範囲】

1. 可視光を発光する可視光発光部と、赤外線を発光する赤外線発光部と、可視光と赤外線のいずれかの発光を制御することによりデータ信号を発信する発信部とを備えた光通信装置。

2. 前記発信部は、前記可視光発光部又は赤外線発光部の発光する光の強度を変調する変調部を有することを特徴とする請求項1記載の光通信装置。

3. 前記発信部はさらに、光通信装置付近の光度を測定する光度測定部と、当該光度測定部の測定結果に応じて、赤外線によるデータ信号の発信モードと、可視光によるデータ信号の発信モードを切り換える切り換え部を有することを特徴とする、請求項2記載の光通信装置。

4. 前記可視光発光部は照明灯であることを特徴とする、請求項3記載の光通信装置。

5. 前記光通信装置は、さらに、衛星信号を受信してデータ信号を取得する衛星通信部と、当該データ信号から緊急度情報を抽出して所定値と比較する緊急度判定部と、当該緊急度判定部により緊急度が所定値より高いと判定された場合には、現在発信中のデータ信号の送信を中断し、当該衛星信号を緊急度に応じて所定期間繰り返して送信する緊急信号送信制御部を有することを特徴とする請求項4記載の光通信装置。

6. 昼間は、赤外線の強度をデータ信号に応じて変調することによりデータ信号を送信し、夜間は、可視光の強度をデータ信号に応じて変調することによりデータ信号を送信することを特徴とする、光通信方法。

【発明の詳細な説明】の抜粋及び【図面】

本発明は、照明設備を有する道路において、自動車等の移動端末に各種情報を提供する場合、夜間は点灯している照明灯を利用してデータを送信し、照明灯が消灯している昼間は照明設備が備える赤外線を用いてデータを送信することにより、照明設備を有効利用でき、かつ省電力化が可能な光通信装置に関する。照明設備は光度計により光度を測定し、光度が所定の光度以下になると照明灯を点灯する。光通信装置は、照明灯が点灯している間は、照明灯を強度変調することによりデータを送信する。

また、本発明の光通信装置は、防災センターから衛星を介して送られる緊急災害情報を移動端末に送信する機能も有している。衛星を介して送られてくるデータには緊急度を示す情報が付加されており、光通信装置は、衛星を介して受信したデータの緊急度が所定値以上の場合には、当該データを他のデータに優先して繰り返し移動端末に送信する。

防災システム

[先行技術調査の結果]

請求項1~4に係る発明の光通信装置は、文献1に記載されており、既に公知である。

[解説]

請求項1に係る発明が特別な技術的特徴を有しないため、4.2[審査対象の決定手順]に従って審査対象となる発明を決定する。請求項1に係る発明の発明特定事項をすべて含む同一カテゴリーの請求項2に係る発明、請求項2、3に係る発明の発明特定事項をそれぞれすべて含む同一カテゴリーの請求項3、4に係る発明も文献1により新規性が欠如しており、特別な技術的特徴を有しない。

請求項4に係る発明の発明特定事項をすべて含む同一カテゴリーの請求項5に係る発明に追加された技術的特徴は、データ内容に応じた送信順序の入れ替えに関するものであるのに対し、請求項4に係る発明は、照明灯を利用した信号発信手段の光度に応じた切り替えに関するものであるため、両者は技術的な関連性が低い。また、請求項5に係る発明の当該技術的特徴から把握される、緊急度の高いデータを移動端末に確実に送信できるようにするという課題も、請求項4に係る発明の、照明設備をデータ発信に有効利用して省電力化を図るという課題と関連性が低い。このため、請求項5に係る発明は審査対象としない。

請求項6に係る発明は、請求項3に係る光通信装置の発明を方法の発明として記載したものであり、請求項3に係る発明を審査した結果、審査が実質的に終了しているため審査対象に加える。したがって、請求項1~4及び6に係る発明を審査対象とし、請求項5に係る発明については審査対象とせずに、発明の単一性違反の拒絶理由を通知する。

クレーム

〔事例 36〕最初に記載された発明が特別な技術的特徴を有しない場合の事例

【発明の名称】

スケジュール管理装置

【特許請求の範囲】

1.スケジュール表領域とソフトウェア部品を表示する表示手段と、GUI画面上の任意の位置を指定する入力手段と、当該入力手段の指示に基づいてソフトウェア部品を移動させる移動手段と、前記スケジュール表領域と前記ソフトウェア部品との重ねあわせを検出する検出手段を設けたことを特徴とするスケジュール管理装置。

2.前記入力手段は、トラックボールであることを特徴とする請求項1記載のスケジュール管理装置。

3.前記入力手段は、タッチパッドであることを特徴とする請求項1記載のスケジュール管理装置。

4.電子番組表取得部と、前記スケジュール表領域と重なった前記ソフトウェア部品の種類が電子番組表の部品である場合に録画予約信号を送信する送出部を有することを特徴とする請求項2又は3記載のスケジュール管理装置。

5. 電子番組表の放送内容に基づいて、予約番組の録画終了時刻を延長する延長手段を設けたことを特徴とする請求項4記載のスケジュール管理装置。

6.コンピュータを、入力手段の指示に基づいて表示手段に表示されたソフトウェア部品を移動させる移動手段と、表示手段に表示されたスケジュール表領域と前記ソフトウェア部品との重ねあわせを検出する検出手段として機能させるためのプログラム。

7.請求項6記載のプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体。

【発明の詳細な説明】

本発明は、簡略化されたスケジュール操作手段を有するスケジュール管理装置に関する。

本発明のスケジュール管理装置では、GUI画面上の任意の位置を指定する入力手段と、スケジュール表領域、メンバ選択部品、カレンダ部品を表示するGUI表示手段を備え、メンバ選択部品としては部署、氏名等のソフトウェア部品、カレンダ部品として月日を示すソフトウェア部品が表示され、これらソフトウェア部品は移動可能に構成されている。また、スケジュール管理装置はソフトウェアにより制御されており、入力手段の指示に基づいてソフトウェア部品を移動させる移動手段、スケジュール表領域と前記ソフトウェア部品との重ねあわせを検出する検出手段、スケジュール表領域と重なったソフトウェア部品の種類に応じて処理を行う処理部を有する。

まず、スケジュール表領域に、4月13日(今日)の「K君」と「S君」のスケジュールを表示したい場合には、メンバ選択部品から「ESグループ」のソフトウェア部品を選択、移動し、スケジュール表領域に重ね合わせる。検出手段は、メンバ選択部品のメンバを示すソフトウェア部品が重なったことを検出し、その結果を処理部に通知する。処理部では「K君」と「S君」のスケジュールをスケジュール表領域に表示する。

次に、この二人の4月21日のスケジュールを見たい場合には、カレンダ部品から「4月21日」を選択、移動し、スケジュール表領域に重ね合わせる。検出手段は、カレンダ部品のソフトウェア部品が重なったことを検出し、その結果を処理部に通知する。処理部では「K君」と「S君」の「4月21日」のスケジュールをスケジュール表領域に表示する。

さらに、このスケジュール管理装置をビデオ録画装置のリモコンとしても使用することができる。すなわち、このスケジュール管理装置に、電子番組表取得部と、スケジュール表領域と重なったソフトウエア部品の種類が電子番組表の部品である場合に録画予約信号を送信する送出部を設け、予約したい番組に相当するソフトウェア部品がスケジュール表領域に重ね合わせられた場合に、スケジュール表領域に予約時間を表示するとともに、送出部がビデオの予約信号を送信する。なお、野球番組の次の番組を予約するような場合には、自動的に録画時間を30分間延長して録画予約することができる。

予約

[先行技術調査の結果]

請求項1に係る発明のスケジュール管理装置は、文献1に記載されており、既に公知である。

[解説]

請求項1に係る発明が特別な技術的特徴を有しないため、4.2[審査対象の決定手順]に従って審査対象となる発明を決定する。請求項1に係る発明の発明特定事項をすべて含む同一カテゴリーの請求項2に記載の「トラックボール」は周知技術であり、新たな効果を奏するものでもないため、請求項2に係る発明も特別な技術的特徴を有しない。

請求項2に係る発明の発明特定事項をすべて含む同一カテゴリーの請求項4に係る発明に新たに追加された技術的特徴は、電子番組表を用いた録画予約に関するものであるのに対し、請求項2に係る発明の技術的特徴は、スケジュール操作手順に関するものであり、両者は技術的な関連性が低い。

請求項4に係る発明の当該技術的特徴から把握される、スケジュール管理装置において録画予約を可能とするという課題も、請求項2に係る発明のスケジュール操作の簡略化という課題と関連性が低い。このため、請求項4に係る発明は審査対象としない。

なお、この事例においては、請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明を審査した結果、審査が実質的に終了しているため審査対象に加える。さらに、請求項6、7に係る発明も、請求項1に係る発明に対し末尾等表現上の差異があるのみで実質的に同じ発明であり、請求項1に係る発明を審査した結果、審査が実質的に終了しているため、審査対象に加える。

したがって、請求項1、2、3、6、7に係る発明は審査対象とし、請求項4に係る発明及び当該発明の発明特定事項をすべて含む請求項5に係る発明については、審査対象とせずに、発明の単一性の要件違反の拒絶理由を通知する。

クレーム

〔事例 37〕バイオテクノロジー発明の単一性に関する事例

【発明の名称】

ポリヌクレオチド

【特許請求の範囲】

1. 配列番号1-10のDNA配列から選択される単離されたポリヌクレオチド。

【発明の詳細な説明】の概要

本発明は、ヒト肝臓cDNAライブラリーから得られた400~500bpのcDNAに関する。これらのポリヌクレオチドは構造的に異なっており、完全長cDNAを取得するためのプローブとして使用することができる。しかし、完全長cDNAがコードするタンパク質の機能、生物学的活性については何ら明らかではない。なお、これらポリヌクレオチドは互いに相同性がない。

[先行技術調査の結果]

利用可能な先行技術は存在しない。

[解 説]

請求項1記載のポリヌクレオチドが、すべての選択肢において共通の性質又は活性を有し、かつ、その共通の性質又は活性に不可欠である重要な構造要素を共有している場合には、同一の又は対応する特別な技術的特徴を持っていると判断される。

この事例では、配列番号1-10のすべてのポリヌクレオチドが、共通の性質又は活性を共有していることを明細書は開示していない。各配列はそれ自身が対応する完全長cDNAを単離することができるプローブとして機能する可能性があると明細書に開示されているに過ぎない。そして、配列番号1-10のポリヌクレオチドにおいては相同性がないから、配列番号1から導かれるプローブは、配列番号2-10から導かれるプローブから単離されるであろう完全長cDNAを単離するために使用することはできない。

さらに、これらのポリヌクレオチドには相同性がないから、共通の構造、すなわち、重要な構造要素を共有していない。ポリヌクレオチドの糖-リン酸骨格は、すべてのポリヌクレオチド分子で共有されているので、重要な構造要素であるとは認められない。よって、請求項1記載の10個のポリヌクレオチドは、重要な構造要素を共有しておらず、同一の又は対応する特別な技術的特徴を持っているとは判断されない。

なお、単にポリヌクレオチドが同じ由来から得られただけでは、発明の単一性の要件を満たさない。なぜならば、これらのポリヌクレオチドは共通の性質又は活性を共有しておらず、かつ、共通の重要な構造要素も共有していないからである。これら2つの要件が両方とも満足されず、請求項1記載のポリヌクレオチドは、発明の単一性の要件を満たさない。

〔事例 38〕バイオテクノロジー発明の単一性に関する事例

【発明の名称】

ポリヌクレオチド

【特許請求の範囲】

1. 配列番号1-10のDNA配列から選択される単離されたポリヌクレオチド。

【発明の詳細な説明】の概要

本発明は、ヒト肝臓cDNAライブラリーから得られた400~500bpのcDNAに関する。請求項1記載のポリヌクレオチドは、共通の重要な構造要素を共有し、かつ、該構造要素は疾病Yの患者の肝細胞においてのみ発現されているmRNAに対応している。なお、この対応するmRNAは健常者の肝細胞には発現していない。

[先行技術調査の結果]

利用可能な先行技術は存在しない。請求項1記載のポリヌクレオチドにおいて共有されている構造要素は出願前に特定されておらず、当該構造要素に対応するmRNAを発現する遺伝子と疾病Yの患者とに有意な関係があることも認識されていない。

[解 説]

請求項1記載のポリヌクレオチドが、すべての選択肢において共通の性質又は活性を有し、かつ、その共通の性質又は活性に不可欠である重要な構造要素を共有している場合には、同一の又は対応する特別な技術的特徴を有していると判断される。

この事例では、配列番号1-10のポリヌクレオチドは、共通の性質、すなわち、疾病Yの患者のみに発現しているmRNAに対応していることを明細書は開示している。さらに、配列番号1-10のポリヌクレオチドは、この共通する性質に不可欠である重要な構造要素、つまり、疾病Yの患者のmRNAを検出することができる共通した重要な構造要素を共有している。この両方の条件が満足されているため、請求項1に記載されたポリヌクレオチドは、発明の単一性の要件を満たしている。

〔事例 39〕バイオテクノロジー発明の単一性に関する事例

【発明の名称】

一塩基多型(SNPs)

【特許請求の範囲】

1. 以下の特定位置の1つにおいて、一塩基多型変化を有している配列番号1を含む単離された核酸分子。

 
多型 特定位置 配列番号1からの変化
10
27
157
234
1528
3498
13524
14692
【発明の詳細な説明】の概要

配列番号1記載の核酸分子は、22,930塩基の長さを有している。しかし、多型1-8のSNPsは特徴付けられておらず、共通する性質又は活性は何ら開示されていない。

[先行技術調査の結果]

配列番号1の核酸分子は既に先行技術文献に記載されているが、特定の機能は開示されていない。

[解 説]

請求項1記載のポリヌクレオチドが、すべての選択肢において共通の性質又は活性を有し、かつ、その共通の性質又は活性を発揮するために不可欠である重要な構造要素を共有している場合には、同一の又は対応する特別な技術的特徴を有していると判断される。

この事例では、多型1-8のSNPsのすべてが共通の性質又は活性を有していることを明細書は開示していない。すべての部位特異変異が配列番号1の核酸分子上に見られるという事実によって、発明の単一性の要件は満たされない。なぜなら、配列番号1の核酸分子は先行技術文献に記載されており、請求項1に記載されたSNPsの間に、機能的な関係も存在していないからである。したがって、請求項1記載のSNPsは、発明の単一性の要件を満たさない。

〔事例 40〕バイオテクノロジー発明の単一性に関する事例

【発明の名称】

大腸菌に対する抗体を誘導することができる融合タンパク質

【特許請求の範囲】

1. 配列番号1、2又は3を有するポリペプチドに結合している、キャリアタンパク質Xを含む融合タンパク質。

【発明の詳細な説明】の概要

キャリアタンパク質Xが1,000個のアミノ酸からなるタンパク質であり、血流における当該融合タンパク質の安定性を向上させる機能を有する。配列番号1、2又は3は、大腸菌の異なる抗原領域から単離された小さな免疫原性エピトープである(10-20残基の長さ)。しかし、配列番号1、2又は3は互いに重要な構造要素を共有していない。

[先行技術調査の結果]

タンパク質Xの構造及びそのキャリアタンパク質としての機能は先行技術により公知であり、大腸菌に対する抗体を誘導することができる融合タンパク質も公知である。

[解 説]

請求項1記載の融合タンパク質が、すべての選択肢において共通の性質又は活性を有し、かつ、その共通の性質又は活性に不可欠である重要な構造要素を共有している場合には、同一の又は対応する特別な技術的特徴を有していると判断される。

この事例では、融合タンパク質に共有されている共通構造は、キャリアタンパク質Xのみである。この融合タンパク質は、大腸菌に対する特異的な抗体を誘導するという共通の性質を有しているが、このキャリアタンパク質X単独で免疫することだけでは、この共通の性質を発揮することはできず、そのためには、配列番号1、2又は3のポリペプチドが要求される。

この場合、3つの融合タンパク質が共通の性質を有することだけでは、発明の単一性の要件を満たすために不十分である。なぜなら、共通の性質を与える配列番号1、2又は3のポリペプチドは、重要な構造要素を共有していないからである。また、キャリアタンパク質Xという共通構造は、大腸菌に対して抗体を誘導するという共通の性質をもたらすものではなく、大腸菌に対して特異的な抗原反応を誘導する融合タンパク質は先行技術により知られているからである。したがって、請求項1記載の融合タンパク質は、発明の単一性の要件を満たさない。

〔事例 41〕バイオテクノロジー発明の単一性に関する事例

【発明の名称】

脱水素酵素をコードする核酸分子

【特許請求の範囲】

1. 配列番号1、2又は3から選択される単離された核酸分子。

【発明の詳細な説明】の概要

脱水素酵素をコードする3つの核酸分子は、活性部位及びこれら脱水素酵素の機能の両方を規定する保存モチーフ配列を含んでいる。これら3つの核酸分子は、それぞれ異なる由来(マウス、ラット、ヒト由来)から単離されたものである。3つの核酸分子は、全体としてみたとき、核酸配列及びアミノ酸配列レベルにおける相同性が高い(85~95%の同一性)。

[先行技術調査の結果]

配列番号1の核酸分子に対して高い類似性(例えば90%)を持つサルから単離された脱水素酵素をコードする核酸分子は既に公知である。このサルの核酸分子は脱水素酵素の触媒部位を規定する保存モチーフを有している。

[解 説]

請求項1記載の核酸分子が、すべての選択肢において共通の性質又は活性を有し、かつ、その共通の性質又は活性に不可欠である重要な構造要素を共有している場合には、同一の又は対応する特別な技術的特徴を有していると判断される。

しかしながら、この事例では、脱水素酵素をコードし、共通の構造要素を有する核酸分子は、他の由来(サル)から既に単離され、公知となっている。請求項1記載の核酸分子間に存在する機能上及び構造上の共通性は、先行技術に対する貢献をもたらすものでなければならないので、この共通点は特別な技術的特徴であるとはいえない。したがって、請求項1記載の核酸分子は、発明の単一性の要件を満たさない。

〔事例 42〕バイオテクノロジー発明の単一性に関する事例

【発明の名称】

スクリーニング方法とその方法により特定された化合物

【特許請求の範囲】

1. 受容体Rのアンタゴニストとなる化合物を特定するための方法であって、以下の工程を含む方法。

工程1:外膜上に受容体Rを発現している細胞と天然リガンドを接触させる工程、

工程2:前記のリガンドに結合している前記細胞を化合物のライブラリーから選択された候補化合物と接触させる工程、及び

工程3:天然リガンドの結合状態における変化を観察する工程。

2. 化学式1を有する化合物X。

3. 化学式2を有する化合物Y。

4. 化学式3を有する化合物Z。

【発明の詳細な説明】の概要

受容体Rとその天然リガンドは医薬のターゲットとして認識されている。受容体Rに対してアンタゴニストとなる化合物は、治療において有用であろう生理学的効果が期待されている。本発明の目的は、コンビナトリアル化合物のライブラリーから、さらにスクリーニング及び試験の基礎となるリード化合物を特定することである。ここで、ライブラリーは、構造的に異なる多くの可能性のある化合物を提供するものである。請求項1記載の方法は、受容体Rに対する天然リガンドの結合の生理学的効果への影響を与える化合物を特定することにおいて有用である。実際には、化合物X、Y及びZがそのような作用を有する化合物として特定されたが、これらの化合物は重要な構造要素を共有していない。そして、請求項2~4に記載された化合物の構造とアンタゴニスト機能との関係、及び、化合物のアンタゴニスト機能と受容体Rの構造との関係は共に不明である。

[先行技術調査の結果]

受容体R、その生物学的機能、その天然リガンドは既に公知であるが、受容体Rのアンタゴニストとして機能する化合物は知られていない。

[解 説]

請求項1記載の方法の特別な技術的特徴は、スクリーニングアッセイにおいて、リガンドの結合に対する候補化合物の影響を観察する工程である。請求項2~4に記載された化合物X、Y又はZには、同一の又は対応する特別な技術的特徴のいずれも存在しない。

請求項1のスクリーニング方法は、請求項2~4に記載された化合物X、Y及びZの製造方法ではなく、これらを使用する方法でもない。受容体Rのアンタゴニストとして機能するために要求される化合物の特定構造に関する示唆がない場合には、請求項1記載のスクリーニング方法と請求項2~4に記載された化合物を連関する単一の一般的発明概念が存在するとはいえない。したがって、発明の単一性の要件を満たさない。

なお、請求項2~4記載の化合物に関する発明の単一性を検討すると、化合物X、Y及びZが、すべての選択肢において共通の性質又は活性を有し、かつ、その共通の性質又は活性を発揮するために不可欠である重要な構造要素を共有している場合には、同一の又は対応する特別な技術的特徴を有していると判断される。

化合物X、Y及びZは受容体Rのアンタゴニストとして機能するという共通の性質を有しているが、共通の重要な構造要素については何の示唆もないので、同一の又は対応する特別な技術的特徴が開示されているとはいえない。したがって、請求項2~4記載の化合物は、発明の単一性の要件を満たさない。

〔事例 43〕バイオテクノロジー発明の単一性に関する事例

【発明の名称】

インターロイキン1及びそれをコードするDNA

【特許請求の範囲】

1. 配列番号1のアミノ酸配列を有する単離されたインターロイキン1。

2. 請求項1記載のインターロイキン1をコードする単離されたDNA分子。

【発明の詳細な説明】の概要

本発明はリンパ球の活性化に関係する水溶性のサイトカインであるインターロイキン1に関する。インターロイキン1は、本発明で初めて単離精製される。配列番号1は該インターロイキン1のアミノ酸配列を示し、配列番号2はインターロイキン1をコードするDNA分子の塩基配列を示している。

[先行技術調査の結果]

利用可能な先行技術はない。

[解 説]

請求項2に記載されたDNA分子は先行技術に対する貢献をもたらすインターロイキン1をコードしているので、インターロイキン1とそれをコードするDNAは、対応する特別な技術的特徴を共有している。したがって、請求項1及び2は、発明の単一性の要件を満たす。

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