特許法第46条の2
実用新案登録出願は特許出願へ出願の変更をすることが認められているが、実用新案登録出願は実体審査を経ることなく登録されるので、実際に出願の変更をすることができる期間は非常に短い。技術動向の変化等により特許への変更を行いたいときであっても、変更の機会が制限されているため、実用新案登録後にも所定の要件の下で、その登録に基づいて特許出願を行うことができることとしたものである。
実用新案登録に基づく特許出願ができる者は、実用新案権者である(第46条の2第1項)。
ただし、実用新案権者は、専用実施権者、質権者又は通常実施権者があるときは、これらの者の承諾を得ることが必要である(第46条の2第4項)。
次の場合を除き、実用新案登録に基づく特許出願をすることができる。
実用新案登録に係る実用新案登録出願の日から3年を経過したとき(第46条の2第1項第1号)
実用新案登録出願人又は実用新案権者から実用新案技術評価の請求があったとき(同第2号)
実用新案登録出願人又は実用新案権者でない者がした実用新案技術評価の請求があった旨の最初の通知を受けた日から30日を経過したとき(同第3号)
実用新案登録について請求された無効審判について、最初に指定された答弁書提出期間を経過したとき(同第4号)
実用新案登録に基づく特許出願が、その登録に係る実用新案登録出願の時にしたものとみなされるためには、次の二つの実体的要件を満たしていなければならない。
特許出願に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項が、当該特許出願の基礎とされた実用新案登録の願書に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内にあること(第46条の2第2項)
特許出願に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項が、当該特許出願の基礎とされた実用新案登録に係る実用新案登録出願の出願当初の明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内にあること
特許出願に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項が「実用新案登録の願書に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面」又は「実用新案登録出願の出願当初の明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面」に記載した事項の範囲内のものであるか否かの判断は、新規事項の判断と同様に行う(新規事項の判断については、「第Ⅲ部第Ⅰ節 新規事項」を参照。)。
(1)の要件において、実用新案登録後に明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面の訂正があったときは、「訂正後の」明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面が、実用新案登録の願書に添付した明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面となる。
上記「2. 実用新案登録に基づく特許出願の要件」を満たす実用新案登録に基づく特許出願は、実用新案登録に係る実用新案登録出願の時にしたものとみなされる(第46条の2第2項)が、次の場合については現実に出願手続をした時に出願したものとして扱う(第46条の2第2項ただし書
)。
実用新案登録に基づく特許出願に係る発明と、基礎とした実用新案登録に係る考案とが同一であっても、実用新案登録に基づく特許出願は特許法第39条第4項の拒絶理由には該当しない(同項かっこ書)。