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Myリストに登録 第3章 特許法第29条の2参照ウィンドウに表示

最終更新 2008.12

特許法第29条の2参照ウィンドウに表示

特許出願に係る発明が当該特許出願の日前の他の特許出願又は実用新案登録出願であつて当該特許出願後に第六十六条第三項参照ウィンドウに表示の規定により同項各号に掲げる事項を掲載した特許公報(以下「特許掲載公報」という。)の発行若しくは出願公開又は実用新案法(昭和三十四年法律第百二十三号)第十四条第三項の規定により同項各号に掲げる事項を掲載した実用新案公報(以下「実用新案掲載公報」という。)の発行がされたものの願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲又は図面(第三十六条の二第二項参照ウィンドウに表示の外国語書面出願にあつては、同条第一項参照ウィンドウに表示の外国語書面)に記載された発明又は考案(その発明又は考案をした者が当該特許出願に係る発明の発明者と同一の者である場合におけるその発明又は考案を除く。)と同一であるときは、その発明については、 前条第一項参照ウィンドウに表示の規定にかかわらず、特許を受けることができない。ただし、当該特許出願の時にその出願人と当該他の特許出願又は実用新案登録出願の出願人とが同一の者であるときは、この限りでない。

Myリストに登録1. 第29条の2参照ウィンドウに表示の規定の趣旨

明細書又は図面に記載されている発明は、特許請求の範囲以外に記載されていても、特許掲載公報の発行又は出願公開により一般にその内容は公表される。したがって、たとえ先願の特許掲載公報の発行又は出願公開前に出願された後願であっても、その発明が先願の明細書又は図面に記載された発明と同一である場合には、特許掲載公報の発行又は出願公開をしても新しい技術を何ら公開するものではない。このような発明に特許を付与することは、新しい発明の公表の代償として発明を保護しようとする特許制度の趣旨からみて妥当ではないので、後願を拒絶すべきものとした。

Myリストに登録2. 第29条の2参照ウィンドウに表示

Myリストに登録2.1 特許出願に係る発明

特許出願に係る発明とは、「請求項に係る発明」をいう。

Myリストに登録2.2 当該特許出願の日前の他の特許出願又は実用新案登録出願であって当該特許出願後に特許掲載公報の発行若しくは出願公開又は実用新案掲載公報の発行がされたもの

(1)

他の特許出願又は実用新案登録出願(以下、「他の出願」という。)は、当該特許出願の出願日(優先権主張を伴う出願の場合は、優先権主張日)の前日以前に出願された特許出願又は実用新案登録出願であって、当該特許出願後に特許掲載公報の発行若しくは出願公開又は実用新案掲載公報の発行がされたものでなければならない。

(2)

他の出願が分割出願、変更出願又は実用新案登録に基づく特許出願の場合には、他の出願の出願日は遡及せず、現実の出願日である。

(3)

他の出願がパリ条約による優先権の主張を伴う出願である場合、その出願が優先期間内の出願であって優先権証明書を提出したものであれば、第一国出願の明細書等と我が国への出願時の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)とに共通して記載されている発明に関しては、第一国出願日に我が国へ出願があったものとして扱う。

(4)

国内優先権の主張の基礎とされた「先の出願」(第41条第1項参照ウィンドウに表示)の当初明細書等に記載された発明又は当該優先権の主張を伴う出願(以下「後の出願」という。)の当初明細書等に記載された発明について、先の出願又は後の出願を他の出願とする場合の取扱いは、以下のとおりとする。

後の出願と先の出願の双方の当初明細書等に記載された発明については、先の出願の出願日により先の出願を他の出願として第29条の2参照ウィンドウに表示の規定を適用する(第41条第2項参照ウィンドウに表示及び第3項参照ウィンドウに表示)。

ただし、先の出願が優先権の主張を伴う出願(パリ条約によるものを含む)である場合には、上記双方の当初明細書などに記載された発明のうち、当該先の出願の優先権の主張の基礎とされた出願の当初明細書等に記載された発明については、先の出願を他の出願として第29条の2参照ウィンドウに表示の規定は適用されない(第41条第2項参照ウィンドウに表示及び第3項参照ウィンドウに表示)。

後の出願の当初明細書等にのみ記載され、先の出願の当初明細書等に記載されていない発明については、後の出願の出願日により後の出願を他の出願として第29条の2参照ウィンドウに表示の規定を適用する(第41条第2項参照ウィンドウに表示及び第3項参照ウィンドウに表示)。

(5)

国内優先権の主張の基礎とされた先の出願又は後の出願を他の出願とする場合において、先の出願の当初明細書等にのみ記載され、後の出願の当初明細書等には記載されていない発明については、出願公開がされたものとみなされない(第41条第3項参照ウィンドウに表示)。したがって、第29条の2参照ウィンドウに表示の規定は適用されない。

Myリストに登録2.3 他の出願の当初明細書等に記載された発明又は考案

他の出願の当初明細書等に記載された発明又は考案とは、他の出願の当初明細書等に記載されている事項(注1)及び記載されているに等しい事項から把握される発明又は考案をいう。

「記載されているに等しい事項」とは、記載されている事項から他の出願の出願時における技術常識(注2)を参酌することにより導き出せるものをいう。

(注1)

他の出願の当初明細書等に記載されている事項は、その後の補正により削除されても第29条の2参照ウィンドウに表示の規定の適用には影響がない。

(注2)

技術常識とは、当業者に一般的に知られている技術(周知技術、慣用技術も含む)、又は経験則から明らかな事項をいう。

なお、「周知技術」とは、その技術分野において一般的に知られている技術であって、例えば、これに関し、相当多数の公知文献が存在し、又は業界に知れわたり、あるいは、例示する必要がない程よく知られている技術をいい、また、「慣用技術」とは、周知技術であって、かつ、よく用いられている技術をいう。

Myリストに登録2.4 請求項に係る発明が他の出願の当初明細書等に記載された発明又は考案と同一

「請求項に係る発明が他の出願の当初明細書等に記載された発明又は考案と同一」とは、請求項に係る発明の発明特定事項と他の出願の当初明細書等に記載された発明又は考案(以下、「引用発明」という。)の発明を特定するための事項とに相違点がない場合、又は相違点はあるがそれが課題解決のための具体化手段における微差である場合(実質同一)をいう。

Myリストに登録2.5 その発明又は考案をした者が当該特許出願に係る発明の発明者と同一

(1)

当該特許出願の請求項に係る発明の発明者、及び他の出願の明細書等に記載された発明の発明者は、「特別の事情」がない限り、願書に記載された発明者であると認定する。「特別の事情」とは、例えば、明細書中に別の発明者が記載されているような場合をいう。

(2)

発明者の同一は、各々の願書に記載された発明者の全員が表示上完全に一致していることを要するが、一致していない場合は実質的に判断し、その結果完全同一であることを要する。

(3)

なお、発明者が同一でないとの認定を覆すためには、出願人の主張のみでは不十分であり、その主張を裏付ける証拠(他の出願の発明者の宣誓書等)が必要である。

(4)

共同発明者といえるためには、発明完成までの過程の少なくとも一部分において、共同発明者の各々が技術的創作活動を相互補完的に行い、発明を完成するために有益な貢献をなしたことが必要である。

Myリストに登録2.6 当該特許出願の時にその出願人と当該他の特許出願又は実用新案登録出願の出願人とが同一

(1)

出願人同一の判断は当該特許出願の現実の出願時点で、他の出願と当該特許出願との出願人の異同によって行う。

(2)

出願人が複数である場合には、全員が完全に一致するとき出願人同一に該当する。

(3)

他の出願と当該出願との間に出願人の改称・相続・合併があって出願人が記載上一致しなくなった場合でも同一と認定する。

(4)

当該出願が分割出願又は変更出願であるときは、当該出願の出願日の遡及時点のもとの出願人を当該出願の出願人とする。

Myリストに登録3. 請求項に係る発明が他の出願の当初明細書等に記載された発明又は考案と同一か否かの判断の手法

特許請求の範囲に二以上の請求項がある場合には、請求項ごとに第29条の2参照ウィンドウに表示の要件の判断をする。

Myリストに登録3.1 請求項に係る発明の認定

請求項に係る発明の認定の仕方は、「第2章 1.5新規性の判断の手法」と共通である。

Myリストに登録3.2 他の出願の当初明細書等に記載された発明又は考案の認定

(1)

「他の出願の当初明細書等に記載された発明又は考案」とは、「他の出願の当初明細書等に記載されている事項(注1)」及び「他の出願の当初明細書等に記載されているに等しい事項」(他の出願の出願時における技術常識を参酌することにより当業者が他の出願の当初明細書等に記載されている事項から導き出せる事項)から当業者が把握できる発明又は考案をいう。

したがって、他の出願の当初明細書等に記載されている事項及び記載されているに等しい事項から当業者が把握することができない発明又は考案は「他の出願の当初明細書等に記載された発明又は考案」とはいえず、「引用発明」とすることができない。例えば、ある記載事項が他の出願の当初明細書等にマーカッシュ形式で記載された選択肢の一部であるときは、当該選択肢中のいずれか一のみを発明を特定するための事項とした発明を当業者が把握することができるか検討する必要がある。

(注1)

他の出願の当初明細書等に記載された事項は、その後の補正により削除されても、第29条の2参照ウィンドウに表示の規定の適用には影響がない。

(2)

また、ある発明又は考案が、当業者が当該他の出願の当初明細書等の記載及び他の出願の出願時における技術常識に基づいて、物の発明の場合はその物を作れ、また方法の発明の場合はその方法を使用できることが明らかであるように当該他の出願の当初明細書等に記載されていないときは、当該発明又は考案を「他の出願の当初明細書等に記載された発明又は考案」とすることができない。

したがって、例えば、他の出願の当初明細書等に化学物質名又は化学構造式により化学物質が示されている場合において、当業者が当該他の出願の出願時の技術常識を参酌しても、当該化学物質を製造できることが明らかであるように記載されていないときは、当該化学物質は「他の出願の当初明細書等に記載された発明」とはならない(なお、これは、当該化学物質が当該他の出願の請求項の選択肢の一部として含まれる場合に、その請求項が第36条第4項参照ウィンドウに表示の実施可能要件を満たさないことを意味しない)。

(3)

引用発明の認定における上位概念及び下位概念で表現された発明の取扱い

引用発明が下位概念で表現されている場合は、発明を特定するための事項として「同族的若しくは同類的事項、又は、ある共通する性質」を用いた発明を引用発明が既に示していることになるから、上位概念(注2)で表現された発明を認定できる。なお、第29条の2参照ウィンドウに表示の判断の手法として、引用発明が下位概念で表現されている場合でも、上位概念で表現された発明を認定せずに、対比、判断の際に、上位概念で表現された請求項に係る発明の第29条の2参照ウィンドウに表示を判断することができる。

引用発明が上位概念で表現されている場合は、下位概念で表現された発明が示されていることにならないから、下位概念で表現された発明は認定できない(ただし、技術常識を参酌することにより、下位概念で表現された発明が導き出せる場合(注3)は認定できる。)

(注2)

「上位概念」とは、同族的若しくは同類的事項を集めて総括した概念、又は、ある共通する性質に基づいて複数の事項を総括した概念をいう。

(注3)

概念上、下位概念が上位概念に含まれる、あるいは上位概念の用語から下位概念の用語を列挙することができることのみでは、下位概念で表現された発明が導き出せる(記載されている)とはしない。

Myリストに登録3.3 請求項に係る発明と引用発明との対比

(1)

請求項に係る発明と引用発明との対比は、請求項に係る発明の発明特定事項と引用発明の発明を特定するための事項との一致点及び相違点を認定して行う。

(2)

また、上記(1)の対比の手法に代えて、請求項に係る発明の下位概念と引用発明との対比を行い、両者の一致点及び相違点を認定することができる。

請求項に係る発明の下位概念には、発明の詳細な説明又は図面中に請求項に係る発明の実施の形態として記載された事項などがあるが、この実施の形態とは異なるものも、請求項に係る発明の下位概念である限り、対比の対象とすることができる。

この手法は、例えば、機能・特性等によって物を特定しようとする記載や数値範囲による限定を含む請求項における第29条の2参照ウィンドウに表示の判断に有効である。

(3)

なお、上記(1)及び第2章1.5.3(3)の手法に代えて他の出願の当初明細書等に記載された事項と請求項に係る発明の発明特定事項とを比較する場合には、他の出願の当初明細書等に記載されている事項と請求項に係る発明の発明特定事項とを対比する際に、他の出願の出願時の技術常識を参酌して記載されている事項の解釈を行いながら、一致点と相違点とを認定することができる。ただし、上記(1)及び第2章1.5.3(3)の手法による場合と判断結果が異なるものであってはならない。

(4)

独立した二以上の引用発明を組み合わせて請求項に係る発明と対比してはならない。

Myリストに登録3.4 請求項に係る発明が引用発明と同一か否かの判断

(1)

対比した結果、請求項に係る発明の発明特定事項と引用発明特定事項とに相違点がない場合は、請求項に係る発明と引用発明とは同一である。

請求項に係る発明の発明特定事項と引用発明特定事項とに相違がある場合であっても、それが課題解決のための具体化手段における微差(周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものではないもの)である場合(実質同一)は同一とする。

(2)

特許を受けようとする発明を特定するための事項に関して形式上又は事実上の選択肢(注)を有する請求項に係る発明については、当該選択肢中のいずれか一の選択肢のみを発明を特定するための事項と仮定したときの発明と引用発明との対比を行った場合に両者に相違点がないとき又は相違点はあるが実質同一であるときは、同一であるものとする。

なお、この取扱いは、どのような場合に先行技術調査を終了することができるかとは関係しない。

この点については「第Ⅸ部 審査の進め方」等を参照。

(注)

「形式上又は事実上の選択肢」については、第2章1.5.5(注1)を参照。

(3)

機能・特性等による物の特定を含む請求項についての取扱い

機能・特性等により物を特定しようとする記載を含む請求項であって、下記(ⅰ)又は(ⅱ)に該当するものは、引用発明との対比が困難となる場合がある。そのような場合において、引用発明の物との厳密な一致点及び相違点の対比を行わずに、審査官が、両者が同じ物であるとの一応の合理的な疑いを抱いた場合には、第29 条の2参照ウィンドウに表示 に基づく拒絶理由を通知する。出願人が意見書・実験報告書等により、両者が同じ物であるとの一応の合理的な疑いについて反論、釈明し、審査官の心証を真偽不明となる程度に否定することができた場合には、拒絶理由が解消される。出願人の反論、釈明が抽象的あるいは一般的なものである等、審査官の心証が変わらない場合には、第29条の2参照ウィンドウに表示に基づく拒絶査定を行う。

ただし、引用発明特定事項が下記(ⅰ)又は(ⅱ)に該当するものであるような発明を引用発明としてこの取扱いを適用してはならない。

(ⅰ)

当該機能・特性等が、標準的なもの、当該技術分野において当業者に慣用されているもの、又は慣用されていないにしても慣用されているものとの関係が当業者に理解できるもののいずれにも該当しない場合

(ⅱ)

当該機能・特性等が、標準的なもの、当該技術分野において当業者に慣用されているもの、又は慣用されていないにしても慣用されているものとの関係が当業者に理解できるもののいずれかに該当するが、これらの機能・特性等が複数組合わされたものが、全体として(ⅰ)に該当するものとなる場合

(注)

標準的なものとは、JIS(日本工業規格)、ISO規格(国際標準化機構規格)又はIEC規格(国際電気標準会議規格)により定められた定義を有し、又はこれらで定められた試験・測定方法によって定量的に決定できるものをいう。当業者に慣用されているものとは、当該技術分野において当業者に慣用されており、その定義や試験・測定方法が当業者に理解できるものをいう。

以下に、一応の合理的な疑いを抱くべき場合の例を示す。

請求項に係る発明の機能・特性等が他の定義又は試験・測定方法によるものに換算可能であって、その換算結果からみて同一と認められる引用発明が発見された場合

請求項に係る発明と引用発明が同一又は類似の機能・特性等により特定されたものであるが、その測定条件や評価方法が異なる場合であって、両者の間に一定の関係があり、引用発明の機能・特性等を請求項に係る発明の測定条件又は評価方法により測定又は評価すれば、請求項に係る発明の機能・特性等に含まれる蓋然性が高い場合

出願後に請求項に係る発明の物と同一と認められる物の構造が判明し、それが他の出願の当初明細書等に記載されていることが発見された場合

本願の明細書若しくは図面に実施の形態として記載されたものと同一又は類似の引用発明が発見された場合(例えば、実施の形態として記載された製造工程と同一の製造工程及び類似の出発物質を有する引用発明を発見したとき、又は実施の形態として記載された製造工程と類似の製造工程及び同一の出発物質を有する引用発明を発見したときなど)

引用発明と請求項に係る発明との間で、機能・特性等により表現された発明特定事項以外の発明特定事項が共通しており、しかも当該機能・特性等により表現された発明特定事項の有する課題若しくは有利な効果と同一又は類似の課題若しくは効果を引用発明が有しており、引用発明の機能・特性等が請求項に係る発明の機能・特性等に含まれる蓋然性が高い場合

なお、この特例の手法によらずに第29条の2参照ウィンドウに表示の判断を行うことができる場合には、通常の手法によることとする。

(4)

製造方法による生産物の特定を含む請求項についての取扱い

製造方法による生産物の特定を含む請求項においては、その生産物自体が構造的にどのようなものかを決定することは極めて困難な場合がある。そのような場合において、上記(3)と同様に、当該生産物と引用発明の物との厳密な一致点及び相違点の対比を行わずに、審査官が、両者が同じ物であるとの一応の合理的な疑いを抱いた場合には、第29条の2参照ウィンドウに表示に基づく拒絶理由を通知する。

ただし、引用発明特定事項が製造方法によって物を特定しようとするものであるような発明を引用発明としてこの取扱いを適用してはならない。

以下に、一応の合理的な疑いを抱くべき場合の例を示す。

請求項に係る発明と出発物質が類似で同一の製造工程により製造された物の引用発明を発見した場合

請求項に係る発明と出発物質が同一で類似の製造工程により製造された物の引用発明を発見した場合

出願後に請求項に係る発明の物と同一と認められる物の構造が判明し、それが他の出願の当初明細書等に記載されている発明又は考案であることが発見された場合

本願の明細書若しくは図面に実施の形態として記載されたものと同一又は類似の引用発明が発見された場合

なお、この特例の手法によらずに第29条の2参照ウィンドウに表示の判断を行うことができる場合には、通常の手法によることとする。

Myリストに登録4. 第29条の2参照ウィンドウに表示の規定に基づく拒絶理由通知

請求項に係る発明が、第29条の2参照ウィンドウに表示の規定により特許を受けることができないものであるとの心証を得た場合には、拒絶理由を通知する。

出願人はこれに対して意見書、実験報告等により反論、釈明をすることができる。

そしてそれらにより、請求項に係る発明が第29条の2参照ウィンドウに表示の規定により特許を受けることができない

ものであるとの審査官の心証を真偽不明になる程度まで否定できた場合には、拒絶理由は解消する。審査官の心証が変わらない場合には、第29条の2参照ウィンドウに表示の拒絶理由に基づく拒絶の査定を行う。

参考審判決

(1)

先願明細書等に記載された発明の認定

昭58(行ケ)95(判決言渡:60.9.30)

そして、明細書の記載を解釈するに当たり、その出願前の公知技術あるいは公知事実を参酌することは許されないわけではないが、それはあくまで当該明細書自体から知ることができる具体的内容に関連する場合に限られるものと解すべきであって、前記三、2に引用したような極めて抽象的記載についてまでかかる解釈方法を持ち込むことは、いたずらに明細書の記載内容を技術的に広く認めることとなり、後願者に対する関係で不当に有利に扱うこととなり相当とは認めがたい。したがって、鐘紡出願明細書の右記載は、本願発明につき 特許法29条2項参照ウィンドウに表示の進歩性を判断する場合は格別、同法29条の2第1項参照ウィンドウに表示により先願発明との同一性を判断するに当たっては参酌すべきものではない。

昭60(行ケ)43(判決言渡:62.1.28)

そうしてみると、引用例に前記のとおりポリアミド樹脂の例示としてナイロン66/6共重合体についての記載がある以上、その組成割合について明文の記載がなくとも、本願出願当時の技術水準に照らして、当業者としては本願発明で限定した範囲内における組成割合のナイロン66/6共重合体を直ちに想起することができるものというべきであるから、引用例には本願発明の右組成範囲のものが実質的に開示されていると認めるのが相当である。

昭59(行ケ)176(判決言渡:63.6.28)

・・・、引用例には情報の書込み手段に関する明示的な記載がない点(換言すれば、情報の読出し用に用いられている二本の情報線と二本のビット線を情報の書込みに兼用させる技術的手段の有無)で相違し、その他の構成は両者すべて一致するものである・・・。

・・・前述の情報の書込み及び読出しにおける常套手段を考慮すれば、引用例記載の・・・・二本のビット線に接続した二本の情報線は情報の書込みにも使用するものであることが実質的に記載されているものと解することができ、・・・。

昭61(行ケ)29(判決言渡:61.9.29)

原告は、両者の同一性は両者の対比のみにより判断すべきものであって、他の証拠による技術常識を援用して判断することは許されない旨主張する。しかし、明細書は当該発明に関するすべての技術を網羅してこれを説明しているものではなく、出願当時の当業者の技術常識を前提としたうえで作成されているのが通常であるから、特に明細書に記載がなくても、当該発明を理解するに当って当業者に有する技術常識を証拠により認定し、これを参酌することを禁ずべき理由はない。

(2)

対比・判断

昭61(行ケ)29(判決言渡:61.9.29)

または、原告は、審決が両発明が「実質的に同一」であると判断したことをとらえて、 特許法29条の2参照ウィンドウに表示に用いられていない「実質的」なる文言を使用して、両者の同一性を判断することは許されない旨主張する。しかし、対比すべき複数の発明間において、その構成、これにより奏せられる効果がすべて形式的に合致するということはおよそあり得ないところであり、要は両発明に形式的な差異があっても、その差が単なる表現上のものであったり、設計上の微差であったり、また、奏せられる効果に著しい差がなければ、両発明は技術的思想の創作として同一であると認めて差支えないのである。このような場合に両発明が実質的に同一であると称せられるのであり、 特許法29条の2参照ウィンドウに表示も同条所定の先願発明と後願発明が右の意味で実質的に同一であるときは後願発明は特許を受けることができないとする趣旨と解すべきである。

平元(行ケ)226(判決言渡:2.9.20)

前記のように本願発明のE構成と先願発明のe構成とは全くその構成を異にしており、加えてE構成が本願発明の特徴に関わるものであることも考慮すれば、構成を異にする技術的手段が慣用手段の関係にあることを理由に両者が実質上同一であるというためには、その前提として、両者の構成による技術的手段がいずれも、両発明が属する技術分野において多く用いられていることを要するものというべきである。・・・

また、被告は、本願発明における押え手段に係る構成の採用を、単なる均等手段の転換にすぎないとも主張する。しかし、前示のように、両者はその構成を基本的に異にするものである以上、被告主張のようにその奏する作用効果に何ら差異がないものと断定することは困難であるうえ、右のように両者が基本的に構成を異にし、かつ両者の構成による技術的手段に慣用性が認められない以上、仮に両者の構成による効果にさしたる差異がないとしても、そのことを故をもって、両者が単なる均等手段の関係にあるとして、構成の実質的同一性を肯定することは相当でない。

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