特許法第46条(注)
(注)ただし、拒絶すべき旨の最初の査定の謄本の送達が平成 21年 3月 31日以前である意匠登録出願においては、第 46条第 2項及び第 3項の「三月」は、「三十日」に読み替える。
出願人が、出願形式(特許出願、実用新案登録出願又は意匠登録出願)の選択を誤ったり、もとの出願を出願した後に事業計画を変更した等の理由により、出願後に他のより有利な出願形式に改めたいと考える場合が生ずることがある。そこで、出願の変更を認め、新たな出願はもとの出願の時にしたものとみなすものである。
本章においては、主に実用新案登録出願から特許出願に変更する場合について説明し、意匠登録出願から特許出願に変更する場合については、「3.2 意匠登録出願から特許出願への変更に関する留意点」の項で説明する。
以下、特に断りのない限り、「もとの出願」を「原出願」といい、「新たな特許出願」を「変更出願」という。
出願の変更をすることができる者は、原出願の出願人又はその承継人である。すなわち、原出願の出願人又はその承継人と、変更出願の出願人とは変更出願の出願時に一致していなければならない(第46条第1項)。
変更出願が原出願の時にしたものとみなされるためには、次の二つの実体的要件を満たしていなければならない。
変更出願の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項が、変更直前の原出願の明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内にあること
変更出願の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項が、原出願の出願当初の明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内にあること
変更出願の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項が、「変更直前の原出願の明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面」又は「原出願の出願当初の明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面」に記載した事項の範囲内にあるか否かの判断は、新規事項の判断と同様に行う(新規事項の判断については、「第Ⅲ部第Ⅰ節 新規事項」を参照。)。
ただし、原出願の明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面を補正することができるとき(実用新案登録出願をしてから政令で定める期間)にする変更出願については、(2)の要件が満たされれば(1)の要件が満たされることを要しない。
出願の変更とは、原出願と変更された後の出願との間の出願形式の変更であることから、上記(1)の要件を満たす必要がある。また、変更出願が原出願の時にしたものとみなされるという第46条第5項において準用する第44条第2項
に規定する出願の変更の効果を考慮すると、上記(2)の要件も満たす必要がある。
ただし、原出願の明細書、実用新案登録出願請求の範囲又は図面を補正することができるときにする変更出願については、変更直前の原出願の明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面に記載していない事項であっても、原出願の出願当初の明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面に記載した事項については、原出願の補正をすれば、上記事項を原出願の明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面に記載した事項とした上で、要件(1)及び(2)が満たされるように変更出願を行うことができるから、要件(2)が満たされれば要件(1)は満たされることを要しないとするのが相当である。
上記「2. 出願の変更の要件」をみたす変更出願は、原則として原出願の時に出願したものとみなされるが、次の場合については現実に出願手続をした時に出願したものとして扱う(第46条第5項において準用する第44条第2項
)。
次の場合を除き、変更出願をすることができる。
意匠権の設定登録後
意匠登録出願について最初の拒絶査定の謄本の送達があった日から3月(注1)(第46条第3項により延長されたときは、その期間)を経過した後
意匠登録出願の日から3年(注2)を経過した後(最初の拒絶査定の謄本の送達があった日から3月以内(注1)の期間を除く)
拒絶すべき旨の最初の査定の謄本の送達が平成21年3月31日以前である意匠登録出願においては、「3月」を「30日」に読み替える。
原出願の出願日が平成13年10月1日以降の変更出願に適用。それより前は7年。
「2.2 実体的要件」において、「明細書、実用新案登録請求の範囲又は図面」を「願書の記載又は願書に添付した図面等」と読み替えて判断する。
(参考:東京高判平14.10.9、平13(行ケ)311号審決取消請求事件「収納ボックス」, 東京高判平10.1.20、平6(行ケ)153号審決取消請求事件「フード付外着」)