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平成29(行ケ)10175審決取消請求事件

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裁判所 請求棄却 知的財産高等裁判所
裁判年月日 平成30年2月19日
事件種別 民事
当事者 被告TAC株式会社生田哲郎
原告X長沢美智子
法令 商標権
商標法50条3回
商標法50条1項1回
商標法2条3項4号1回
キーワード 許諾23回
審決14回
商標権3回
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事件の概要 1 特許庁における手続の経緯等 ⑴ 被告は,以下の商標(登録第4622187号)の商標権者である。(甲1) 登録商標:別紙商標目録記載のとおり(以下「本件商標」という。) 登録出願:平成13年4月18日 設定登録:平成14年11月22日 指定商品:第9類「電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記 憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープその他の周辺機器を含む),その他 の電子応用機械器具,録画済みビデオディスク及びビデオテープ」 指定役務:第35類「広告,トレ-ディングスタンプの発行,経営の診断及び指 導,市場調査,商品の販売に関する情報の提供,ホテルの事業の管理,職業のあっ せん,競売の運営,輸出入に関する事務の代理又は代行,新聞の予約購読の取次ぎ, 書類の複製,速記,筆耕,電子計算機・タイプライター・テレックス又はこれらに 準ずる事務用機器の操作,文書又は磁気テープのファイリング,建築物における来 訪者の受付及び案内,広告用具の貸与,タイプライター・複写機及びワ-ドプロセ ツサの貸与」

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判決文

平成30年2月19日判決言渡

平成29年(行ケ)第10175号 審決取消請求事件

口頭弁論終結日 平成30年1月22日

判 決

原 告 X

同訴訟代理人弁護士 長 沢 幸 男

長 沢 美 智 子

増 田 智 彦

藤 浪 郁 也

同 弁理士 林 栄 二

小 野 寺 隆

被 告 T A C 株 式 会 社

同訴訟代理人弁護士 名 越 秀 夫

生 田 哲 郎

佐 野 辰 巳

中 所 昌 司

吉 浦 洋 一

主 文

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1 請求

特許庁が取消2016-300405号事件について平成29年8月15日にした審決を取り消す。

第2 事案の概要

1 特許庁における手続の経緯等

⑴ 被告は,以下の商標(登録第4622187号)の商標権者である。(甲1)登録商標:別紙商標目録記載のとおり(以下「本件商標」という。)登録出願:平成13年4月18日設定登録:平成14年11月22日指定商品:第9類「電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープその他の周辺機器を含む),その他の電子応用機械器具,録画済みビデオディスク及びビデオテープ」指定役務:第35類「広告,トレ-ディングスタンプの発行,経営の診断及び指導,市場調査,商品の販売に関する情報の提供,ホテルの事業の管理,職業のあっせん,競売の運営,輸出入に関する事務の代理又は代行,新聞の予約購読の取次ぎ,書類の複製,速記,筆耕,電子計算機・タイプライター・テレックス又はこれらに準ずる事務用機器の操作,文書又は磁気テープのファイリング,建築物における来訪者の受付及び案内,広告用具の貸与,タイプライター・複写機及びワ-ドプロセツサの貸与」

第38類「移動体電話による通信,テレックスによる通信,電子計算機端末によ

る通信,電報による通信,電話による通信,ファクシミリによる通信,無線呼出し,テレビジョン放送,有線テレビジョン放送,ラジオ放送,報道をする者に対するニュ-スの供給,電話機・ファクシミリその他の通信機器の貸与」

第42類「求人情報の提供」

⑵ 原告は,平成28年6月10日,特許庁に対し,商標法50条1項の規定に

基づく本件商標の商標登録の取消しを求める審判を請求し,当該請求は同月27日に登録された。

⑶ 特許庁は,これを取消2016-300405号事件として審理し,平成2

年8月15日,「本件審判の請求は,成り立たない。」とする別紙審決書(写し)記載の審決をし(以下「本件審決」という。),その謄本は,同月24日,原告に送達された。

⑷ 原告は,平成29年9月22日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起

した。

2 本件審決の理由の要旨

本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりである。要するに,被告の子会社である株式会社TACプロフェッションバンク(以下「訴外会社」という。)が,平成27年11月25日に発行した「東日本版 会計業界 就職ガイド CAREER2015winter」と題する冊子(以下「本件冊子」という。甲16)に,本件商標が表示されている事実及び同社が本件冊子を頒布した事実が認められ,これにより,本件審判の請求の登録前3年以内(以下「要証期間」という。)に,日本国内において,本件商標の通常使用権者が,本件審判請求に係る指定役務のうちの「求人情報の提供」について,本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたことを証明したものといえるから,本件商標の登録は,商標法50条の規定により取り消すことはできない,というものである。

3 取消事由

商標法50条所定の使用の事実を認定した誤り

第3 当事者の主張

〔

(原告の主張)

〕

1 通常使用権者の認定の誤り

本件審決は,平成17年7月19日付けの商標使用許諾覚書(以下「本件覚書」という。乙1)を根拠として,被告が訴外会社に対して本件商標の通常使用権を許諾したものと認定した。しかし,本件覚書は,被告が平成17年7月19日当時,訴外会社への本件商標の使用許諾の事実がないにもかかわらず,これがあったかのようにして作成されたものであり,本件覚書に記載された契約が存在したという事実についての証明力は,皆無である。被告も,本件訴訟において,本件覚書は平成17年7月19日に作成されたものではなく,本件審判に先立って原告が請求した本件商標の不使用取消審判事件(以下「前審判」という。)における特許庁への応答のために,被告が作成したものであることを認めている。仮に親子会社間であっても,商標権の独占的使用許諾を行うに当たっては,内部統制上,権利関係を明確化することが必要であるから,何らかの書面が取り交わされるのが通常である。また,仮に書面が作成されなかったとしても,当該使用許諾を決定するに当たっては,会社としての意思決定がされるはずであり,取締役会決議の議事録等の証拠が存在するはずである。ところが,本件においては,使用許諾は行われていなかったことから,そのような証拠は存在しなかった。そこで,被告は,やむを得ず,日付を遡らせて,平成17年7月19日を作成日とし,作成名義を当時の被告及び訴外会社の代表者とした,偽造書面(本件覚書)を作成し,本件審判において,同日に作成されたものとして証拠提出したものである。また,本件覚書に記載された商標使用許諾契約の内容をみても,①本件覚書の記載に相当する専用使用権の設定登録がされていない,②本件覚書に記載された許諾する指定商品・役務の範囲,使用権の範囲に係る使用態様が,本件審判における被告の特許庁長官に対する報告(甲22)と整合しない,③被告は,赤字の「資格の学校/TAC」(「/」は改行箇所を示す。以下同じ。)から成る商標について,指定役務を第42類「求人情報の提供」等として商標権を取得しており,訴外会社は本件冊子において上記商標を用いているにもかかわらず,本件覚書において使用許諾の対象とされていないなどの,矛盾点等が存在する。

2 社会通念上同一と認められる商標の認定の誤り

本件審決は,本件冊子に赤色で「資格の学校」の文字が表示されているところ,この文字部分は,単独で自他役務の識別標識としての機能を果たすものであり,本件商標と社会通念上同一であると認定した。しかし,本件冊子に表示されている標章は,赤字で「資格の学校/TAC」の文字を表示するものである。同標章は,「資格の学校」及び「TAC」の文字が同色及び同一の共通したフォントで構成され,全体として「資格の学校であるTAC」との一体的な観念が生じ得る態様であり,本件商標とは,構成される文字,称呼,観念及び外観が異なっている。また,被告及び訴外会社は,取引上,「資格の学校/TAC」という標章を不可分一体的に使用しており,「資格の学校」のみを単独で使用した事実は証拠上見受けられない。さらに,被告は,「資格の学校/TAC」という標章について,本件商標とは別個に商標登録をしている。このため,「資格の学校/TAC」の表示のうち「資格の学校」の文字部分が,単独で自他役務の識別標識としての機能を果たし得るとはいえない。訴外会社は,上記の表示を一体的に使用しているものであり,「求人情報の提供」について,「資格の学校」の部分のみをその出所の識別標識として使用していた事情は認められない。「資格の学校/TAC」の表示のうちの「資格の学校」の部分だけを取り出して判断するべきではなく,本件商標と「資格の学校/TAC」の表示とは,社会通念上同一とは認められない。

3 商標の使用の認定の誤り

本件審決は,訴外会社が作成した「会計業界合同就職説明会」の資料(甲17)に,本件冊子の配布方法,読者対象等が記載されていることを根拠として,本件冊子が頒布された事実を認定した。しかし,甲17に記載されている事項は,その時点での配布の予定を示したものにすぎず,本件冊子が実際に甲17記載の配布方法で配布されたことを認めるには十分でない。

4 使用役務の認定の誤り

本件審決は,本件冊子に求人に関する募集要項等が記載されていることをもって,訴外会社が,本件冊子によって「求人情報の提供」という役務を提供していると判断した。しかし,本件冊子は,「求人情報の提供」の役務ではなく,第41類「セミナー企画・運営又は開催」に属する役務である,会計業界の合同就職説明会の開催のための付随的な資料であり,説明会に出展する税理士事務所・会計事務所・コンサルティング会社の情報を「インデックス」として掲載したものである。各社の求人に関する募集要項は,上記事務所,会社等の情報であり,頒布された需要者及び取引者は,合同就職説明会に参加するための資料として本件冊子を参照することから,本件冊子は,就職説明会を離れて独立して商取引の目的たり得るものではない。したがって,本件冊子に本件商標が表示されたとしても,それは,「求人情報の提供」についての使用ではない。〔

(被告の主張)

〕

1 通常使用権者の認定

被告は,遅くとも,訴外会社が新住所に移転して稼働し始めた平成17年7月1日には,同社に対し,本件商標の使用を許諾した。なお,本件覚書の作成日は平成28年2月12日であり,作成者は被告である。本件覚書は,前審判のために作成されたが,この審判請求は取り下げられたため,特許庁に提出されず,被告社内において保管されていた。その後,原告から本件審判請求が提起されたため,被告は,本件覚書を本件審判における証拠として提出したが,その際,本件覚書の作成日を平成17年7月19日と誤解して主張したものである。

2 社会通念上同一と認められる商標

本件冊子に表示されている標章は,その構成上,可分的にも十分認識されるものであり,その意味で本件商標と社会通念上同一である。また,本件商標は,指定役務第42類「求人情報の提供」との関係では,識別標識としての機能を有している。

3 商標の使用の認定

本件冊子は,甲17に記載された読者対象に対し,甲17に記載された配布方法により頒布されている。

4 本件商標の使用役務についての認定判断

本件冊子は,会計業界の合同就職説明会以外にも,甲17記載の配布方法で広く税務関係の求職者に配布されており,特定の合同就職説明会の付随的な資料ではない。

第4 当裁判所の判断

1 認定事実

⑴ 後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。ア 訴外会社の業務内容等被告は,昭和55年12月に設立された,国家試験その他資格試験等の教育などを目的とする株式会社である。訴外会社は,平成13年5月に,被告が全ての議決権を有する子会社として設立された株式会社であり,職業紹介事業,労働者派遣事業,求人広告サイト運営,求人情報誌の発行,就職支援イベント運営などを営んでいる。また,訴外会社の代表取締役(2名)は,被告の取締役副社長及び被告の取締役であり,他の役員(取締役1名,監査役1名)は,被告の代表取締役社長及び被告の監査役である。被告は,人材紹介等の人材事業を本格的に立ち上げるために,訴外会社を設立したものであり,同社を設立後,従来被告本体で行っていた人材事業を全面的に同社に移管した。(甲18,19,21の5,21の6,23,39~41)イ 会計業界合同就職説明会の開催訴外会社は,平成27年12月18日から同月20日にかけて,東京,名古屋及び大阪において各1日ずつ,税理士試験合格者等を対象とする,会計業界合同就職説明会(以下「本件就職説明会」という。)を開催した。(甲17)ウ 本件冊子の発行訴外会社は,平成27年11月25日頃,本件冊子を発行した。本件冊子には,本件就職説明会の開催日時,会場,参加方法等が記載されているほか,「求人情報」として,合計60の税理士法人,公認会計士事務所等について,「社名,勤務地,本件就職説明会参加の有無,TACキャリアナビ(訴外会社が運営する求人情報サイト)掲載の有無,雇用区分,実務経験の要否,応募資格」等が記載された「インデックス」,上記税理士法人等の募集要項の詳細等が掲載されている。また,本件冊子は,税理士試験の合格者,科目合格者及び学習者,日商簿記試験の合格者,学習者等を読者対象とするものであり,全国の被告校舎に積み置く,TAC税理士通信講座の受講生に送付する,TAC税理士講座ガイダンスにて配布するなどの方法で,上記読者対象に配布された。本件冊子の表紙の右側下部には,赤字で「資格の学校」の標章が付されている(以下「本件使用標章」という。)。(甲16,16の2,17,21の6)

⑵ 原告の主張について原告は,甲17(訴外会社が,本件就職説明会の配布資料の社内データを出力したもの)に記載されている事項は,その時点での配布の予定を示したものにすぎず,本件冊子が実際に甲17記載の配布方法で配布されたことを認めるには十分でない旨主張する。しかし,甲17には,訴外会社が平成27年11月27日に本件冊子を1万50部発行する予定であること,本件冊子の「読者対象」を「税理士(合格者,科目合格者,学習者),日商簿記(合格者,学習者)など」とし,「配布方法」を「全国のTAC校舎に積み置き,TAC税理士通信講座受講生に送付,TAC税理士講座ガイダンスにて配布」とすることが記載されており,その内容に特段不自然な点はない。また,本件冊子は,現に発行されているところ,本件冊子が上記の方法で配布されなかったことをうかがわせる事情は存在しない。したがって,前記⑴ウのとおり,本件冊子は配布されたものと認められ,原告の主張は採用できない。

2 取消事由(商標法50条所定の使用の事実を認定した誤り)について⑴ 本件商標の通常使用権者ア 前記1⑴のとおり,①訴外会社は,被告が全ての議決権を有する子会社であり,被告の代表取締役社長,取締役副社長等の役員が訴外会社の役員を兼務していること,②被告は,人材紹介等の人材事業を本格的に立ち上げるために,訴外会社を設立したものであり,同社を設立後,従来被告本体で行っていた人材事業を全面的に同社に移管し,訴外会社は,職業紹介事業,労働者派遣事業,求人広告サイト運営,求人情報誌の発行,就職支援イベント運営などを営んでいること,③訴外会社は,平成27年11月25日頃,本件就職説明会の開催日時や,税理士法人,公認会計士事務所等の求人情報が掲載された本件冊子を発行し,その表紙に本件使用標章が付されていることが認められる。また,被告は,本件審判において,特許庁に対し,被告は訴外会社の設立以来,本件商標の全ての指定商品及び指定役務について,使用地域を日本国内,使用期間を本件商標の有効期間中,使用内容を「本件商標を付した商品又は役務の製造,販売,輸出,提供等」として使用を許諾していた旨報告している(甲22)。これらの事実関係によれば,被告は,本件冊子が発行される前に,訴外会社に対し,指定役務「求人情報の提供」について,本件商標の通常使用権を,少なくとも黙示に許諾していたものと認められる。イ 原告の主張について原告は,本件覚書は,被告が訴外会社への本件商標の使用許諾の事実がないにもかかわらず,これがあったかのようにして作成されたものであり,本件覚書を根拠として,同社が本件商標の通常使用権者であると認定した本件審決は誤りである旨主張する。確かに,被告は,本件審判において,本件覚書の作成者及び作成時期について,本件訴訟における主張と異なる事実を主張していたものであり,この点は,被告も認めているところである。また,被告は,本件商標の使用許諾に当たって被告と訴外会社が取り交わした書面や,当該使用許諾を決定する取締役会の議事録等の証拠を提出していない。さらに,本件覚書に記載された本件商標の使用許諾の内容(乙)と,本件審判において被告が特許庁長官に報告した本件商標の使用許諾の内容(甲22)との間には,原告の主張するとおり整合しない点がある。しかし,前記1⑴に認定した訴外会社の設立経緯,業務内容,被告との資本関係及び人的関係等に照らすと,被告が訴外会社に対して指定役務「求人情報の提供」について本件商標の通常使用権を許諾することは,不自然ではない。また,上記のような関係にある親会社から子会社に対して商標の使用を許諾する場合にも,常に何らかの書面が作成されるとまではいえないし,訴外会社に本件商標の使用を許諾することが,被告にとって「重要な財産の処分」(会社法362条4項1号)に当たり,取締役会の決議を要するものであることを認めるに足りる証拠はない。さらに,本件覚書の内容と甲22の報告内容とは,細部において整合しない点はあるものの,本件商標を「求人情報の提供」の目的で使用することを許諾するという点では,一致している。したがって,原告の主張する事情を考慮しても,本件覚書が,被告が訴外会社への本件商標の使用許諾の事実がないにもかかわらず,これがあったかのようにして作成されたものであるとまでは認められず,前記アのとおり,被告は訴外会社に対して本件商標の通常使用権を少なくとも黙示に許諾していたものと認めるのが相当である。また,原告は,そのほかにもるる主張するが,同様に前記アの認定を左右するものではなく,採用できない。⑵ 本件冊子における本件商標の使用の有無ア 本件冊子の表紙には,赤字で「資格の学校」の標章(本件使用標章)が付されている。そして,本件使用標章は,本件商標と同様,赤字でゴシック体風に表されている「資格の学校」の文字からなり,各文字が等間隔で並んでおり,「シカクノガッコウ」という称呼を生じ,「資格の学校」という観念を生じるものであることから,本件商標と社会通念上同一の商標であると認められる。イ 原告の主張について原告は,本件冊子に付されている標章は「資格の学校/TAC」であり,本件商標とは構成される文字,称呼,観念及び外観が異なるものである,そのうちの「資格の学校」の部分だけを取り出して本件商標と比較するべきではなく,本件商標と社会通念上同一とは認められない旨主張する。確かに,本件冊子の表紙には,本件使用標章の下に,赤字で「TAC」の文字が表示されており,「資格の学校」及び「TAC」の文字部分は,いずれも赤色の同色であり,文字部分の横幅は同じであって,縦幅は前者が後者の半分程度となっている(甲16)。また,被告は,「資格の学校」と「TAC」を赤字で2段に記載した標章についても,商標登録していることが認められる(登録第4685633号。甲38)。一方,本件冊子に付されている「資格の学校」の部分と「TAC」の部分とは,文字の大きさが異なる上,上下に分かれており,両者の間には間隔が設けられているものであって,両者は,必ずしも不可分一体の構成をなすものとまではいえない。したがって,本件冊子には,「資格の学校/TAC」という標章のみならず,「資格の学校」の標章及び「TAC」の標章も付されているというべきである。原告の主張する事情を考慮しても,本件商標と社会通念上同一の商標が使用されているとの認定が左右されるものではなく,原告の主張は採用できない。

⑶ 「求人情報の提供」としての使用の有無ア 前記1⑴のとおり,①訴外会社は,職業紹介事業,労働者派遣事業,求人広告サイト運営,求人情報誌の発行,就職支援イベント運営などを営んでいること,②訴外会社は,平成27年11月25日頃,本件冊子を発行し,その表紙に赤字で「資格の学校」の標章を付していること,③本件冊子には,「求人情報」として,合計60の税理士法人,公認会計士事務所等について,「社名,勤務地,本件就職説明会参加の有無,TACキャリアナビ掲載の有無,雇用区分,実務経験の要否,応募資格」等が記載された「インデックス」,上記税理士法人等の募集要項の詳細等が掲載されていること,④本件冊子は,税理士試験の合格者,科目合格者及び学習者,日商簿記試験の合格者,学習者等を読者対象とするものであり,全国の被告校舎に積み置く,TAC税理士通信講座の受講生に送付する,TAC税理士講座ガイダンスにて配布するなどの方法で,上記読者対象に配布されたことが認められる。そして,これらの事実によれば,訴外会社は,本件冊子の配布によって,「求人情報の提供」という役務を提供しているものと認められる。イ 原告の主張について原告は,本件冊子は,「求人情報の提供」の役務ではなく,本件就職説明会の開催のための付随的な資料であり,本件冊子に本件商標が付されたとしても,それは「求人情報の提供」についての使用ではない旨主張する。しかし,訴外会社の業務内容や,本件冊子の記載事項,読者対象,配布方法等に照らし,同社が本件冊子の配布によって「求人情報の提供」という役務を提供しているものと認められることについては,前記アのとおりである。本件冊子に,本件就職説明会の開催日時,会場,参加方法等が記載されているとしても,上記認定事実や,本件冊子は,上記「インデックス」及び税理士法人等の募集要項の詳細のために多くの頁を割いていること(甲16,16の2)などに鑑みると,本件冊子は,本件就職説明会のための資料であるのみならず,「求人情報の提供」のための資料でもあるというべきであって,原告の主張は採用できない。

⑷ 小括以上によれば,本件商標の通常使用権者である訴外会社は,要証期間内に,日本国内において,本件商標の指定役務である「求人情報の提供」に係る本件冊子に,本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付して頒布したものであり,かかる行為は,「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付したものを用いて役務を提供する行為」(商標法2条3項4号)に該当するものと認められる。

3 結論よって,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。知的財産高等裁判所第4部

裁判長裁判官 髙 部 眞 規 子

裁判官 山 門 優

裁判官 片 瀬 亮

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