ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 平成30(行ケ)10136 審決取消請求事件
| 裁判所 | 請求棄却 知的財産高等裁判所 |
|---|---|
| 裁判年月日 | 平成31年2月28日 |
| 事件種別 | 民事 |
| 当事者 | 被告Y 原告X |
| 法令 |
商標権 商標法4条1項19号8回 商標法4条1項7号2回 商標法4条1項15号2回 商標法4条1項10号1回 |
| キーワード | 審決13回 無効4回 実施2回 商標権2回 侵害1回 無効審判1回 |
| 主文 | 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。 |
| 事件の概要 | 1 特許庁における手続の経緯等 被告は,以下の商標(登録第5825232号。以下「本件商標」という。) の商標権者である(甲1,乙6)。 商 標 別紙記載のとおり 登録出願日 平成27年8月25日 登録査定日 平成28年1月7日 設定登録日 平成28年2月12日 指 定 役 務 第37類「コンクリートスラブ・床・道路・舗装等の建造 物の修理工事・リフティング工事・再ならし工事・再支持 工事,土木一式工事,コンクリートの工事」 原告及びメインマーク株式会社(以下「メインマーク社」という。)は, 平成29年6月1日,本件商標について商標登録無効審判を請求した(乙6)。 特許庁は,上記請求を無効2017-890033号事件として審理を行 い,平成30年5月17日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審 決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同月25日,原告及び |
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平成31年2月28日判決言渡
平成30年(行ケ)第10136号 審決取消請求事件
口頭弁論終結日 平成31年1月22日
判 決
原 告 X
訴訟代理人弁護士 河 部 康 弘
同 藤 沼 光 太
訴訟代理人弁理士 龍 華 明 裕
同 長 賀 部 雅 子
被 告 Y
訴訟代理人弁護士 堀 籠 佳 典
同 岡 田 健 太 郎
訴訟代理人弁理士 穂 坂 道 子
同 村 上 晃 一
主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30
日と定める。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
特許庁が無効2017-890033号事件について平成30年5月17日にした審決を取り消す。
第2 事案の概要
1 特許庁における手続の経緯等被告は,以下の商標(登録第5825232号。以下「本件商標」という。)の商標権者である(甲1,乙6)。商 標 別紙記載のとおり登録出願日 平成27年8月25日登録査定日 平成28年1月7日設定登録日 平成28年2月12日指定役務 第37類「コンクリートスラブ・床・道路・舗装等の建造物の修理工事・リフティング工事・再ならし工事・再支持工事,土木一式工事,コンクリートの工事」原告及びメインマーク株式会社(以下「メインマーク社」という。)は,平成29年6月1日,本件商標について商標登録無効審判を請求した(乙6)。特許庁は,上記請求を無効2017-890033号事件として審理を行い,平成30年5月17日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同月25日,原告及びメインマーク社に送達された。原告は,平成30年9月19日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。本件審決の理由の要旨本件審決の理由は,別紙審決書(写し)のとおりである。その要旨は,本件商標は,以下のとおり,商標法4条1項7号,10号,15号及び19号のいずれにも該当しないから,本件商標の登録は,これらの規定に違反してされたものとはいえず,同法46条1項の規定により無効とすべきでないというものである。商標法4条1項15号該当性について請求人(原告及びメインマーク社。以下同じ。)が,「建物やコンクリートの床の傾きの修正,既存建物の地盤改良工事等の土木工事」の役務について使用する,「メインマーク」の片仮名からなる商標(以下「引用商標1」という。)及び「mainmark」の欧文字からなる商標(以下「引用商標2」という。)は,いずれも,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,請求人の業務に係る役務を表示するものとして,我が国の取引者,需要者の間に,広く認識されていたと認めることはできないものである。そうすると,本件商標をその指定役務について使用した場合に,これに接する取引者,需要者が,本件商標から引用商標1及び2を連想,想起するようなことはなく,その指定役務が請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように,その役務の出所について混同を生ずるおそれはないから,本件商標は,商標法4条1項1号に該当しない。商標法4条1項10号該当性について及び登録査定時において,我が国の取引者,需要者の間で,請求人の業務に係る役務を表すものとして,広く認識されていたとは認められないものであるから,本件商標は,商標法4条1項10号に該当しない。商標法4条1項19号該当性について引用商標1及び2は,いずれも,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国及び外国の取引者,需要者の間で,請求人の業務に係る役務を表す語として,広く認識されていたとは認められないものである。そして,不正の目的についても,被請求人(被告。以下同じ。)が,本件商標を使用して請求人の業務を妨害しているなどの事実は見いだせないし,他に,本件商標が不正の利益を得る目的,他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用をするものと認めるに足る具体的事実を見いだすことができない。したがって,本件商標は,商標法4条1項19号に該当しない。商標法4条1項7号該当性について被請求人が,引用商標1及び2と同一又は類似する本件商標の登録出願をし,登録を受ける行為が「公の秩序や善良の風俗を害する」という公益に反する事情に該当するものということはできないから,本件商標は,商標法4条1項7号に該当しない。取消事由引用商標2に基づく商標法4条1項19号該当性の判断の誤り
第3 当事者の主張
1
(原告の主張)
ニュージーランドにおける引用商標2の周知性ア MainmarkグループについてMainmarkグループは,1988年(昭和63年)にオーストラリアで設立された「THE MAINMARK CORPORATION PTY.LIMITED」,2014年(平成26年)6月20日にニュージーランドで設立された「MAINMARK GROUNDENGINEERING(NZ)LIMITED」,2015年(平成27年)6月2日にオーストラリアで設立された「MAINMARK GROUND ENGINEERING PTY LTD」,平成13年7月5日に日本で設立されたメインマーク社(設立当時の商号「メインマーク・ジャパン株式会社」)等を構成員とする企業グループである。原告は,Mainmarkグループのオーナーである。Mainmarkグループは,ウレタン樹脂の注入による小規模建築物を対象とした液状化による床,地盤等の沈下傾斜修復工事を業としている。イ 需要者Mainmarkグループの業務に係る役務の主な需要者は,ウレタン樹脂を使用して建物やコンクリートの床の傾きの修正工事をする土木工事業界の者又はその工事の注文者であり,取引者は,建築士,建設業者等の専門家である。ウ ニュージーランドにおける売上高及び市場シェアMainmarkグループは,ニュージーランドにおいて,本件商標の登録出願前から,液状化対策事業を実施している。Mainmarkグループ全体のニュージーランドにおける売上高(甲107の1・訳文甲107の2)は,2013年度(平成25年度)が2351万2000豪ドル(22億0841万1624円。同年の年間為替レート1豪ドル93.927円換算),2014年度(平成26年度)が1478万2000豪ドル(14億4780万8208円。同年の年間為替レート1豪ドル97.944円で換算),2015年(平成27年)1月から8月までが1607万1000豪ドル(9億3856万7828円。同年の年間為替レート1豪ドル87.602円で換算)(以上,合計45億9478万7660円)である。ニュージーランドの経済規模に照らすと,2013年度(平成25年度)の上記売上高は,東証一部上場企業(建設業)並みの水準である。2013年(平成25年)から数年間のニュージーランドにおける液状化対策事業の市場規模は500億円程度(甲112ないし114)であるから,Mainmarkグループは,本件商標の登録出願前の時点において,9.19%(45億9478万7660円÷500億円)の市場シェアを有していた。に照らすと,本件商標の登録出願当時,取引者の間では,引用商標2はMainmarkグループの業務に係る役務を表示するものとして周知であったといえる。エ 工事の施工実績等Mainmarkグループは,2011年(平成23年)2月に発生したニュージーランド地震で被災した「クライストチャーチ・アート・ギャラリー」の震災復旧工事を施工した。Mainmarkグループは,2016年(平成28年)6月30日,イギリスのロンドンで開催された「2016年グランド・エンジニアリング・アワード」において,上記震災復旧工事(水平化工事)で「最優秀国際プロジェクト賞」を受賞した(甲4)。ニュージーランド地震発生から約5年後にMainmarkグループが上記賞を受賞したのは,「クライストチャーチ・アート・ギャラリー」の震災復旧工事がニュージーランド地震の象徴ともいえるものであり,関心が高かったためであり,Mainmarkグループによる同工事の施工が,ニュージーランドの液状化対策業界において話題となったことは想像に難くない。Mainmarkグループは,2013年(平成25年)6月7日,鹿島建設の子会社である日本法人のケミカルグラウト株式会社(以下「ケミカルグラウト」という。)との間で,液状化対策事業に関し,業務提携をした(甲112ないし114)。ニュージーランドに拠点を有していないケミカルグラウトがMainmarkグループと業務提携を行ったのは,Mainmarkグループがニュージーランド国内で液状化対策のスペシャリストとして知られており,受注が十分に見込めると判断したからにほかならない。2014年(平成26年)10月ころに発行されたアメリカ合衆国の建築関係の業界誌「THE American Surveyor」(甲126の1・訳文甲126の2)において,「MainmarkGround Engineering」は,地盤の持上げや傾斜の補正修正工事を行うために,議会の国際入札を勝ち取った。Mainmark(メインマーク)は,住宅及び商業ビルにおけるこの仕事では,広範囲にわたる経験を有している。」などの記事が掲載された。このようにニュージーランドから遠いアメリカ合衆国で話題になっているのであるから,実際に工事が行われたニュージーランドでは,比較にならないほど有名になっていると考えるのが自然である。ニュージーランドの登録建設業専門家協会(RMBA)発行の雑誌「BUILDING TODAY」のウェブページ(甲127の1・訳文甲127の2)には,「メインマーク(Mainmark)は,強く,全世界で30年以上も信頼されてきた折り紙付きの歴史があり,結果ニュージーランド,オーストラリア,日本及びタイにおいて何千ものプロジェクトを行うに至ったのである。」との記事が掲載されている。この記事の内容は,Mainmarkグループが,ニュージーランドにおいて,需要者及び取引者に周知であることの証左である。オ まとめ以上のとおり,Mainmarkグループは,ニュージーランドにおいて,引用商標2を使用して多数の液状化対策工事を施工し,高い売上高及び市場シェアを得ていること,ニュージーランド地震の象徴ともいえる「クライストチャーチ・アート・ギャラリー」の震災復旧工事を施工したこと,建築関係の専門雑誌においても豊富な経験と高い技術をもつ企業として紹介されていること,日本の企業からも業務提携の相手方とされていることなどからすれば,引用商標2は,Mainmarkグループの役務を表示するものとして,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,ニュージーランドにおいて,需要者である建設業界の関係者又はその工事の注文者の間で,広く認識されていたものである。被告の不正の目的ア メインマーク社は,平成13年7月5日に設立され,設立時の商号は「メインマーク・ジャパン株式会社」であったが,平成19年6月5日に「ウレテックジャパン株式会社」に商号変更し,さらに,平成27年7月1日に現商号の「メインマーク株式会社」に商号変更した。被告は,メインマーク社の設立時の代表取締役であったが,平成15年3月21日に退任し,アップコン株式会社(以下「アップコン」という。)を設立し,その代表取締役に就任した。その後,被告は,平成27年8月25日,本件商標の登録出願をした。イ ①被告が本件商標の登録出願をしたのは,メインマーク社が現商号の「メインマーク株式会社」に商号変更をしたわずか56日後であること,②アップコンとメインマーク社は,ウレタン樹脂の注入による小規模建築物を対象とした液状化による床,地盤等の沈下傾斜修復工事を主たる業務とする日本に2社しかない企業であり,アップコンとメインマーク社ひいてはMainmarkグループは,完全な競業関係にあること,③被告は,メインマーク社のオーナーである原告に大きな不満を持ってメインマーク社を退社し,アップコン設立後,メインマーク社とアップコンとの間で営業秘密を巡る確執が生じていたことからすると,被告は,メインマーク社が現商号に商号変更をしたが,商標登録出願が未了であることを奇貨として,引用商標2と類似の本件商標の登録出願をし,被告がいつでも商標権侵害を理由としてメインマーク社を訴えることができる状況を作出し,これによって,アップコンとMainmarkグループの構成員であるメインマーク社との競争を優位に進めようとしたものといえる。このような競業他社の排除を目的とする本件商標の登録出願は,他人に損害を加える目的その他の「不正の目的」(商標法4条1項19号)によるものといえる。小括以上によれば,本件商標は,Mainmarkグループの業務に係る役務を表示するものとしてニュージーランドの需要者の間に広く認識されている商標である引用商標2と類似の商標であって,不正の目的をもって使用をするものといえるから,商標法4条1項19号に該当する。したがって,本件商標は同号に該当しないとした本件審決の判断は誤りであるから,本件審決は取り消されるべきである。
(被告の主張)
引用商標2のニュージーランドにおける周知性の主張に対しア 売上高及び市場シェアに係る主張に対し原告がMainmarkグループの売上高及び市場シェアの根拠として挙げる売上高一覧表(甲107の1)は,作成日等が不明であり,客観的で信頼できる会計資料とはいえない。また,引用商標2の使用態様,広告宣伝の状況,取引書類等についての証拠は提出されておらず,引用商標2の具体的な使用態様等を離れた売上高をもって,引用商標2の周知性を論じることは無意味である。イ 工事の施工実績等に係る主張に対しMainmarkグループが「2016年グランド・エンジニアリング・アワード」で受賞したことや,ニュージーランド地震が人々に知られていたからといって,引用商標2がニュージーランドにおいて周知性を獲得したことの根拠になるものではない。また,甲112ないし114の業界新聞で,ケミカルグラウトと業務提携したと紹介されているのは,「ウレテックグループ」であり,Mainmarkグループの記載はない。甲126の1は,アメリカ合衆国で発行された建築関係の業界誌において,ニュージーランドのクライストチャーチ市において地震で傾いた美術館を水平補正する工事が行われたことを紹介する記事において,「Mainmark Ground Engineering」が受注業者として記載されていることを示すものに過ぎない。また,甲127の1は,雑誌のウェブサイトの記事において,「Mainmark Ground Engineering」が一度取り上げられたことを示すものに過ぎない。したがって,甲126の1及び甲127の1は,引用商標2がニュージーランドにおいてMainmarkグループの業務に係る役務を表示するものとして周知になっていたことの根拠にならない。ウ まとめ以上のとおり,引用商標2がニュージーランドにおいて周知性を獲得したことの裏付けはなく,
(原告の主張)
は失当である。被告の不正の目的の主張に対し引用商標2がニュージーランドにおいてMainmarkグループの業務に係る役務を表示するものとして周知であるとはいえないこと,原告が「Mainmarkグループ」として主張する事業主体は,主に「ウレテックグループ」として活動していたこと,「Mainmark」の語は,主要な商標という意味の英語として様々な場面で使用されていること(甲81,87ないし96),被告が本件商標を不正に使用してメインマーク社の業務を妨害している事実はないことなどからすれば,被告に「不正の目的」がないことは明らかである。小括以上によれば,本件商標が商標法4条1項19号に該当しないとした本件審決の判断に誤りはないから,原告主張の取消事由は理由がない。
第4 当裁判所の判断
ニュージーランドにおける引用商標2の周知性について認定事実証拠(甲2ないし4,62,63,101ないし107,112ないし114,118,119,125ないし129,乙2ないし5(枝番のあるものは枝番を含む。))及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。原告は,1988年(昭和63年)5月5日,オーストラリアにおいて,「THE MAINMARK CORPORATION PTY.LIMITED」を設立し,その代表者に就任した(乙2)。同社は,2018年(平成30年)9月19日に「THE URETEK CORPORATION PTY.LIMITED」に名称を変更した(乙2)。原告は,2014年(平成26年)6月20日,ニュージーランドにおいて,「MAINMARK GROUND ENGINEERING(NZ)LIMITED」を,2015年(平成27年)6月2日,オーストラリアにおいて,「MAINMARK GROUND ENGINEERING PTY LTD」を設立し,それぞれの代表者に就任した(乙3,5)。メインマーク社は,平成13年7月5日,地盤沈下修正工事及び地盤改良工事に関する施工技術のノウハウの賃貸及び販売等を目的として,日本で設立され(設立時の商号「メインマーク・ジャパン株式会社」),平成19年6月5日に「ウレテックジャパン株式会社」に商号変更し,さらに,平成27年7月1日に現商号の「メインマーク株式会社」に商号変更した(甲62,63)。「THE URETEK CORPORATION PTY.LIMITED」(旧名称・「THE MAINMARK CORPORATION PTY.LIMITED」),「MAINMARK GROUND ENGINEERING(NZ)LIMITED」,「MAINMARK GROUND ENGINEERING PTY LTD」及びメインマーク社は,特殊ウレタン注入工法である「ウレテック工法」による地盤対策エンジニアリング(建物沈下修正工事から地盤対策工事,液状化対策工事,災害復旧工事まで)を行うグループ企業として,オーストラリアのシドニーにヘッドクォーターを置く,Mainmarkグループ(Mainmark Group)を形成している。2011年(平成23年)2月22日,ニュージーランドのカンタベリー地方でニュージーランド地震が発生し,クライストチャーチ市が被災地となった。メインマーク社のウェブサイト(甲4)には,「2016年6月30日,イギリスのロンドンで開催された「2016年グランド・エンジニアリング・アワード」で,メインマーク・グループがニュージーランドで行った「クライストチャーチ・アート・ギャラリー」の震災復旧工事(水平化工事)が「最優秀国際プロジェクト賞」の栄誉に輝きました。」との記事が掲載されている。平成25年6月10日付けの建設工業新聞(甲112)において,「ケミカルグラウトは,ニュージーランドなどで地盤改良事業を展開するウレテックグループ(X代表)と,液状化対策事業で業務提携した。」,「7日に東京都港区のケミカルグラウト本社で業務提携の調印式を行った。」,「受注活動は,クライストチャーチ市に本社を置くウレテック・グラウンド・エンジニアリングと共同で実施する。」,「両社は,当面の市場規模で500億円を超えるともいわれる液状化対策事業で連携し,10%のシェア獲得を目指す。 などと記載した記事が掲載された。」同日付けの建設産業新聞(甲113)及び建設通信新聞(甲114)にも,上記とおおむね同内容の記事が掲載された。アメリカ合衆国で発行された雑誌「THE American Surveyor」(2014年(平成26年)10月ころ発行。甲126の1・訳文甲126の2)に,「Mainmark Ground Engineering(メインマーク グラウンド エンジニアリング)は,地盤の持上げや傾斜の補正修正工事を行うために,議会の国際入札を勝ち取った。Mainmark(メインマーク)は,住宅及び商業ビルにおけるこの仕事では,広範囲にわたる経験を有している。」,「このプロジェクトは2013年8月にMainmark(メインマーク)と共に開始し,Mainmark(メインマーク)は,ギャラリーの地下駐車場に広範囲にわたるプロジェクトの司令塔を設置し,そこから全ての作業が行われた。」との記事が掲載された。ニュージーランドの登録建設業専門家協会(RMBA)発行の雑誌「BUILDING TODAY」のウェブサイト(甲127の1・訳文甲127の2)には,「Mainmark(メインマーク)は,強く,全世界で30年以上も信頼されてきた折り紙付きの歴史があり,結果ニュージーランド,オーストラリア,日本及びタイにおいて何千ものプロジェクトを行うに至ったのである。」との記事が掲載されている。引用商標2のニュージーランドにおける周知性の有無原告は,Mainmarkグループは,ニュージーランドにおいて,「mainmark」の欧文字からなる引用商標2を使用して多数の液状化対策工事を施工し,高い売上高及び市場シェアを得ていること,ニュージーランド地震の象徴ともいえる「クライストチャーチ・アート・ギャラリー」の震災復旧工事を施工したこと,建築関係の専門雑誌においても豊富な経験と高い技術を持つ企業として紹介されていること,日本の企業からも業務提携の相手方とされていることなどからすれば,引用商標2は,Mainmarkグループの役務を表示するものとして,本件商標の登録出願時(登録出願日平成27年8月25日)及び登録査定時(登録査定日平成28年1月7日)において,ニュージーランドにおいて,需要者である建設業界の関係者又はその工事の注文者の間で,広く認識されていた旨主張するので,以下において判断する。ア ニュージーランドにおける引用商標2の使用態様について引用商標2が,Mainmarkグループの役務を表示するものとして,ニュージーランドの需要者の間に広く認識されていたというためには,引用商標2が,Mainmarkグループの業務に係る役務に使用された結果,自他役務識別機能ないし自他役務識別力を獲得するに至り,Mainmarkグループの役務であることを表示するものとして,ニュージーランド国内の需要者の間に広く認識されるに至ったことが必要であり,このことは,Mainmarkグループそのものが需要者の間に広く認識されていたかどうかとは別個の問題である。しかるところ,本件においては,引用商標2がニュージーランドにおいてMainmarkグループの業務に係る役務について具体的にどのように使用されていたのか,その具体的な使用態様を認めるに足りる証拠はない。イ ニュージーランドにおける売上高及び市場シェアについて原告は,Mainmarkグループのニュージーランドにおける売上高及び市場シェアに照らすと,本件商標の登録出願当時,取引者の間では,引用商標2はMainmarkグループの業務に係る役務を表示するものとして周知であった旨主張する。そこで検討するに,原告は,Mainmarkグループのニュージーランドにおける液状化対策事業に係る売上高を記載した書面として,Mainmarkグループのオーストラリア法人のA経理長の作成に係る書面(甲107の1)を提出するところ,同書面には,「Mainmarkの売上高」と題する表に,2003年から2017年までの会計年度ごとに,ニュージーランド及びオーストラリアの売上高とされる数字が記載されている。しかしながら,上記書面は,作成日付が記載されていない上に,作成経緯も明らかではなく,通常業務として作成された会計の資料とは認められないものであり,作成に際し依拠した原資料も明らかではなく,記載内容を裏付けるに足りる資料も提出されていないから,その信用性は低いといわざるを得ず,同書面がMainmarkグループの売上高を正確に記載したものであるとは認められない。他にMainmarkグループの売上高を認めるに足りる証拠はない。また,仮にMainmarkグループの売上高が上記書面記載のとおりであったとしても,Mainmarkグループによる引用商標2のニュージーランドにおける具体的な使用態様を示す証拠はないから,引用商標2がMainmarkグループの役務であることを表示するものとして需要者の間に広く認識されるに至ったことを裏付けることはできない。したがって,原告の上記主張は採用することができない。ウ 工事の施工実績等について企業が,2011年(平成23年)2月22日発生したニュージーランド地震で被災した「クライストチャーチ・アート・ギャラリー」の震災復旧工事(水平化工事)を施工したことが認められる。しかしながら,上記震災復旧工事の施工に関し,引用商標2が具体的にどのように使用されていたのか具体的な使用態様を示す証拠はないから,上記震災復旧工事の施工の事実によって,引用商標2がMainmarkグループの役務であることを表示するものとして需要者の間に広く認識されるに至ったことを裏付けることはできない。年6月10日付けの建設工業新聞(甲112),建設産業新聞(甲113)及び建設通信新聞(甲114)において,ケミカルグラウトと「ウレテックグループ(X代表)」との液状化対策事業での業務提携に関する記事が掲載されたが,これらの記事の記載内容から,引用商標2がMainmarkグループの業務に係る役務を表示するものとして,ニュージーランドにおいて広く認識されていたことを裏付けることはできない。文の雑誌及びウェブサイトの記事には,Mainmarkが地盤の持上げや傾斜の補正修正工事の広範囲にわたる経験を有していること,Mainmarkはニュージーランドなどにおいて何千ものプロジェクトを行うに至ったことなどについての記載があるが,そのことを裏付ける具体的な情報は記載されておらず,これらの記事の記載内容から,引用商標2がMainmarkグループの業務に係る役務を表示するものとして,ニュージーランドにおいて広く認識されていたことを認めることはできない。このほか,ニュージーランドの「Geotech Consulting Ltd.」在籍の地盤エンジニア主任B作成の陳述書(甲73・訳文甲74)中には,「mainmark」という名称が地盤工学業界においてよく知られており,この名称は,Mainmarkグループの同義語として認識されている旨の記載部分があるが,上記記載部分を裏付ける客観的な証拠はないことに照らすと,上記記載部分を直ちに措信することはできない。他に引用商標2が本件商標の登録出願時及び登録査定時においてMainmarkグループの業務に係る役務を表示するものとしてニュージーランドの需要者の間に広く認識されていたことを認めるに足りる証拠はない。小括以上によれば,引用商標2が本件商標の登録出願時及び登録査定時においてMainmarkグループの業務に係る役務を表示するものとしてニュージーランドの需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。したがって,その余の点について判断するまでもなく,本件商標が商標法4条1項19号に該当するものと認めることはできない。結論以上の次第であるから,本件商標が商標法4条1項19号に該当しないとした本件審決の判断に誤りはなく,原告主張の取消事由は理由がない。他に本件審決を取り消すべき違法は認められない。したがって,原告の請求は棄却されるべきものである。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 大 鷹 一 郎
裁判官 山 門 優
裁判官 筈 井 卓 矢
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