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平成30(ネ)10080不正競争行為差止等請求控訴事件

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裁判所 控訴棄却 知的財産高等裁判所 東京地方裁判所
裁判年月日 平成31年2月21日
事件種別 民事
当事者 控訴人(一審被告)株式会社エルピオ島﨑嘉成
被控訴人(一審原告)日本瓦斯株式会社西本強
法令 不正競争
キーワード 差止6回
損害賠償3回
侵害1回
主文 1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事件の概要 かは,原判決に従い,原判決に「原告」とあるのを「被控訴人」と,「被告ジェステ ック」とあるのを「ジェステック」と,「被告エルピオ」とあるのを「控訴人」と適 宜読み替える。また,原判決の引用部分の「別紙」をすべて「原判決別紙」と改め る。) 1(1) 本件は,LPガス販売業者である被控訴人が,競業者である一審被告株式 会社ジェステック(以下「ジェステック」という。)及び控訴人(以下,ジェステッ クと控訴人を併せて「控訴人ら」という。)に対し,控訴人らが自社から被控訴人へ の契約切替えを希望する顧客らに対し,これを阻止するための資料(いわゆる防戦 資料)として,被控訴人の営業上の信用を害する虚偽の事実が記載された資料を交 付して同事実を告知した行為が,不競法2条1項15号の規定する不正競争行為に 該当すると主張し,控訴人らに対し,同法3条1項に基づく虚偽事実の告知・流布 の差止め,同法4条に基づく損害賠償(ジェステックにつき,550万円及びこれ に対する不法行為の後の日[訴状送達の日の翌日]である平成28年8月19日か ら支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金,控訴人につき,880 万円及びこれに対する上記と同様の遅延損害金の各支払)並びに同法14条に基づ

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判決文

平成31年2月21日判決言渡
平成30年(ネ)第10080号 不正競争行為差止等請求控訴事件
(原審・東京地方裁判所 平成28年(ワ)第26282号)
口頭弁論終結日 平成30年12月19日
判 決

控訴人(一審被告) 株 式 会 社 エ ル ピ オ

同訴訟代理人弁護士 武 田 祐 介
島 﨑 嘉 成

被控訴人(一審原告) 日 本 瓦 斯 株 式 会 社

同訴訟代理人弁護士 久 保 利 英 明
西 本 強
田 口 洋 介
主 文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 控訴の趣旨
1 原判決のうち,控訴人の敗訴部分を取り消す。
2 上記部分につき,被控訴人の請求を棄却する。
第2 事案の概要(以下,用語の略称及び略称の意味は,本判決で付するもののほ
かは,原判決に従い,原判決に「原告」とあるのを「被控訴人」と,
「被告ジェステ
ック」とあるのを「ジェステック」と,
「被告エルピオ」とあるのを「控訴人」と適

宜読み替える。また,原判決の引用部分の「別紙」をすべて「原判決別紙」と改め
る。)
1(1) 本件は,LPガス販売業者である被控訴人が,競業者である一審被告株式
会社ジェステック(以下「ジェステック」という。)及び控訴人(以下,ジェステッ
クと控訴人を併せて「控訴人ら」という。)に対し,控訴人らが自社から被控訴人へ
の契約切替えを希望する顧客らに対し,これを阻止するための資料(いわゆる防戦
資料)として,被控訴人の営業上の信用を害する虚偽の事実が記載された資料を交
付して同事実を告知した行為が,不競法2条1項15号の規定する不正競争行為に
該当すると主張し,控訴人らに対し,同法3条1項に基づく虚偽事実の告知・流布
の差止め,同法4条に基づく損害賠償(ジェステックにつき,550万円及びこれ
に対する不法行為の後の日[訴状送達の日の翌日]である平成28年8月19日か
ら支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金,控訴人につき,880
万円及びこれに対する上記と同様の遅延損害金の各支払)並びに同法14条に基づ
く謝罪広告の掲載を求めた事案である。
(2) 原判決は,控訴人らに対する虚偽事実の告知・流布の差止請求を認容すると
ともに,損害賠償請求について,ジェステックに対して165万円,控訴人に対し
て220万円及びこれらに対するいずれも平成28年8月19日から各支払済みま
で年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し,その余の請求をい
ずれも棄却したところ,控訴人のみが控訴を提起した(原判決のうち,謝罪広告の
掲載を求める部分は,当審における審判の対象とはなっていない。。

2 前提事実(証拠及び弁論の全趣旨より認められる事実)
次のとおり補正するほかは,原判決3頁17行目から9頁3行目記載のとおりで
あるから,これを引用する。
(1) 原判決3頁18行目「被告ら」を「控訴人」と改める。
(2) 原判決3頁20行目から6頁8行目までを削除する。
(3) 原判決6頁9行目「(4)」を「(2)」と,8頁17行目「(5)」を「(3)」と,それ

ぞれ改める。
(4) 原判決7頁22行目「被告会社エルピオ」を「控訴人」と改める。
(5) 原判決8頁19行目から21行目までを以下のとおり改める。
「ア 本件資料3(甲6の7)には,以下の各記載(以下,順に「本件記載3」
などという。)がある。
(ア) 本件記載3
「こんな事実が待ち受けています。それでも続けますか・・・?」
「値上げ推移の例」(以下「本件料金推移表」という。)
契約時単価 230円 値上げ
2011年1月 280円 50円
2012年4月 350円 70円
2012年10月 370円 20円
2013年4月 400円 30円
2013年9月 440円 40円
2014年1月 490円 50円
2014年8月 520円 30円
(イ) 本件記載4
「既存のお客様は・・・」
「安売りした分の元を早く取るために,切替後は輸入価
格に関係なく値上げを繰返し,凄まじい勢いで前のガス会社より大幅に高くなる!!」
(ウ) 本件記載5
「こんなケースも・・・・」
「10月の従量料金値上げ,さらには11月に基本料
金の値上げも!!」」
3 争点
(1) 控訴人による本件資料3~5各一式の交付の有無
(2) 営業上の信用を害する虚偽の事実の告知の有無
(3) 差止めの必要性の有無

(4) 控訴人の故意・過失の有無
(5) 被控訴人の損害額
第3 争点に関する当事者の主張
争点に関する当事者の主張は,原判決を下記1のとおり補正し,下記2のとおり
当審における当事者の補充主張を加えるほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第
3 争点に関する当事者の主張」に記載のとおりであるから,これを引用する。
1 原判決の補正
(1) 原判決9頁23行目,10頁23行目から24行目の各「アップロード」を
それぞれ「掲載」と改める。
(2) 原判決11頁2行目から15頁9行目までを削除する。
(3) 原判決15頁10行目「(3) 本件記載3(被告ら関係)」を「(1) 本件記載
3」と改める。
(4) 原判決17頁4行目「被告ジェステック」を「控訴人」と改める。
(5) 原判決17頁9行目から23行目までを削除する。
(6) 原判決18頁10行目「横須賀訴訟」を「ガス料金の値上げに関して平成2
1年に消費者が被控訴人を被告として横浜地方裁判所横須賀支部に提起した訴訟(以
下「横須賀訴訟」という。」と改める。

(7) 原判決18頁22行目「本件記載4」を「本件記載3」と改める。
(8) 原判決19頁1行目「(4) 本件記載4(被告ら関係) を
」 「(2) 本件記載4」
と改める。
(9) 原判決19頁26行目「上記記載」を「本件記載4」と改める。
(10) 原判決20頁4行目から13行目までを削除する。
(11) 原判決20頁19行目から20行目の「平成26年10月」を「同年10
月」と改める。
(12) 原判決20頁22行「平成28年2月」を「同月」と改める。
(13) 原判決21頁21行目「上記(3)」を「前記(1)」と改める。

(14) 原判決21頁23行目「(5) 本件記載5(被告ら関係)」を「(3) 本件記
載5」と改める。
(15) 原判決22頁5行目から15行目までを削除する。
(16) 原判決22頁24行目「(6) 本件記載6(被告エルピオ関係)」を「(4) 本
件記載6」と改める。
(17) 原判決25頁18行目,22行目,26頁8行目,10行目,12行目,
27頁1行目,4行目,16行目の各「被告ら」をそれぞれ「控訴人」と改める。
(18) 原判決25頁18行目「本件各資料」を「本件資料3~5」と改める。
(19) 原判決25頁19行目「特に」を「なお,」と改める。
(20) 原判決25頁21行目「被告ら」を削除する。
(21) 原判決25頁25行目「被告ジェステックが」から26行目「告知・流布
すること,」までを削除する。
(22) 原判決26頁1行目「いずれも」を削除する。
(23) 原判決26頁2行目から3行目までを削除する。
(24) 原判決26頁15行目から16行目までを削除する。
(25) 原判決26頁23行目「信用が」を「信用を」と改める。
(26) 原判決26頁24行目から26行目までを削除する。
(27) 原判決27頁5行目から6行目の「被告ジェステックについては500万
円,被告エルピオについては」を削除する。
(28) 原判決27頁7行目から14行目までを削除する。
(29) 原判決27頁23行目から28頁12行目までを削除する。
2 当審における当事者の補充主張
(控訴人の主張)
(1) 争点(1)(控訴人による本件資料3~5各一式の交付の有無)について
ア 原判決は,控訴人が,被控訴人にLPガス供給契約の申込みをした各顧
客の自宅を訪問し,本件資料3~5各一式を交付したと認定するが,同資料の中に

は,ジェステックの従業員が逮捕されたという新聞記事(甲6の4)や,通常,被
控訴人の顧客が所持しているガス供給申込書兼切替業務委任状(甲6の6,甲7の
3,甲8の3)等も含まれており,顧客が見ても,LPガス供給契約の切替えを中
止する動機になり得ない資料も含まれているから,原判決は誤った推認を行ってい
る。
イ 原判決は,LPガス業界において,顧客が競合他社に契約を切り替える
際に,いわゆる防戦資料を顧客に交付し,他社への切替えを思いとどまるように説
得するという営業手法が採られることを認定しつつも,法務部門のアクセス可能な
社内掲示板に防戦資料が半年以上掲載されなかったことは,本件資料3~5を交付
したとの認定を左右するものではないとしているが,被控訴人の法務課長の指示が
あってから約半年にわたって何らの資料のやり取りがされていないというのは極め
て不自然であり,原判決には事実誤認がある。
ウ 以上より,控訴人の各担当者は,本件資料3~5の一部(甲6の3~7,
甲7の3~6,甲8の3~6)を交付しておらず,控訴人の各担当者が交付した資
料は,被控訴人の評価とは無関係な担当者の名刺や控訴人の資料等にとどまるので
あり,原判決には事実誤認がある。
(2) 争点(2)(営業上の信用を害する虚偽の事実の告知の有無)について
ア 本件摘示事実4が虚偽ではないこと
原判決は,顧客の中にはガスの輸入価格の下降局面において値下げされていない
者がいたとしても,そのことから直ちに被控訴人のガス料金の値上げが,ガスの輸
入価格と無関係であるということはできない,また,一部の顧客についてガスの輸
入価格と連動しないことから,ガスの輸入価格と無関係の値上げが行われていると
いうことはできない旨認定し,本件摘示事実4は虚偽であるとするが,一部の顧客
についてガスの輸入価格と連動しない値上げがなされているのであれば,正にガス
の輸入価格と無関係の値上げが行われていることにほかならない。
また,原判決は,ガス料金の値上げを行う際に顧客の個別的事情をも考慮するこ

とは当然であり,かかる考慮をしていることをもって,輸入価格に関係ない値上げ
と評価することもできないと認定するが,個別的事情を考慮して値上げしているこ
とは,正に輸入価格に関係ない値上げをしていることにほかならない。
以上の点を看過して本件摘示事実4を虚偽と認定した原判決には事実誤認がある。
イ 本件摘示事実3~6が,被控訴人の営業上の信用を害するものではない
こと
原判決は,本件資料3~5記載の本件摘示事実3~6が,控訴人の営業上の信用
を害するものであるとするが,仮に控訴人が本件資料3~5を交付したとして,A
は単純に,控訴人の方が,料金が安くなることを理由に切替えをとどまっている(丙
46)顧客が切替えの勧誘があった際に切替えを選択するかとどまるかについては,

料金が安くなるか否かによるところが大きく,本件資料3~5による被控訴人の信
用低下を理由として切替えを思いとどまるものではないから,本件摘示事実3~6
は,被控訴人の営業上の信用を害するおそれがないものである。
控訴人の営業担当者の感覚としても,資料だけをポストに投函してもあまり効果
はなく,実際に顧客に会って切替えの撤回に応じてくれる顧客は,せいぜい10%
から40%程度であって(丙45等) 切替えをとどまってくれる顧客があまりいな

いことからも,被控訴人の営業上の信用を害するおそれはないといえる。
(3) 争点(5)(被控訴人の損害額)について
原判決は,本件資料3を交付されたAが,実際に被控訴人への切替えを取り止め
たとの事実が認められると認定し,その他の事情を考慮し,被控訴人が受けた無形
的損害の賠償額としては200万円が相当であるとするが,前記(2)イのとおり,A
は控訴人の交付した資料によって切替えをとどまったわけではなく,単純に,控訴
人の方が,料金が安くなることを理由に切替えをとどまったにすぎない(丙46)。
そうすると,本件資料3を交付されたAが実際に被控訴人への切替えを取り止めた
との事実を一つの考慮要素とした原判決には事実誤認がある。
(被控訴人の主張)

(1) 争点(1)(控訴人による本件資料3~5各一式の交付の有無)について
控訴人は,控訴人の担当者は,本件資料3~5の一部を顧客に交付していないと
主張するが,原判決は,控訴人の上記主張を以下の①~⑥のとおりの理由で排斥し
ている。控訴人はこれらに対して全く反論していない。
① 本件資料3~5にはホチキス留めされていた跡がある。
② 顧客に資料を交付したB自身の陳述書(丙43の5)にも顧客に対する資
料は名刺も含めていつもホチキスで留めていたと記載されている。
③ 本件資料4及び5の1枚目には
「下記資料を拝見して下さい!!」とあり,
各資料には他の資料が添付されていたことが推認される。
④ 本件資料3~5を構成する各書面はその記載内容等から防戦資料としての
性質を有する。
⑤ 競合他社の資料が誤って交付されたことをうかがわせる事情は存在しない。
⑥ したがって,本件資料3~5は控訴人が一連一体の書面として交付したも
のである。
(2) 争点(2)(営業上の信用を害する虚偽の事実の告知の有無)について
ア 本件摘示事実4が虚偽であることについて
原判決は,本件摘示事実3~6が全て虚偽であると認定しているか
ら,控訴人が敗訴部分の全部取消しを求める以上,控訴人としては,本件摘示事実
3~6の全てが虚偽ではないことを主張立証する必要がある。
しかし,控訴人が「虚偽ではない」と主張しているのは,本件摘示事実4のうち
の「輸入価格とは無関係に・・・値上げを」するという点のみであり,本件摘示事
実3,5,6が虚偽であることについては争っていない。
そうすると,仮に,控訴人の主張が採用されたとしても,本件摘示事実3~6の
うち,ほとんどの事実が虚偽であることには変わりがなく,かつ,この部分だけで
も被控訴人の営業上の信用が害されることは明らかである。

価格変動の意思決定には一定の時間を要する。また,事業者として
は,輸入価格の値上げ後,しばらくの間は輸入価格の上昇分を現行価格で吸収すべ
く努力するのが通常である。したがって,輸入価格の高騰の影響が料金の値上げに
反映される程度や時期は,顧客によって異なり,完全に一致しないことは当然にあ
り得ることであり,そうであるからといって,その値上げが輸入価格と無関係な値
上げであると評価することはできない。
また,輸入価格と無関係な値上げがされているかの判断は,被控訴人の本社エネ
ルギー企画部が輸入価格の動向を見てガス料金を決定していることなどからすると,
値上げの実例として示された証拠を総合して,決定されたガス料金が,全体的に,
大きな流れとしてみて(=マクロ的にみて)輸入価格と無関係であるかどうかが検
討されるべきである。
したがって,ミクロ的に一部の顧客のガス料金と輸入価格を比較して,ガス料金
の値上げのタイミングや値上げ幅が輸入価格に連動していないとする控訴人の主張
は誤りである。
イ 本件摘示事実3~6が,被控訴人の営業上の信用を害するか又はその
おそれがあることについて
控訴人は,顧客は料金が安くなるか否かによってガス会社を選択しており,被控
訴人の信用低下を理由にガス会社を切り替えるわけではなく,本件資料3~5によ
る被控訴人の営業上の利益の侵害又はそのおそれはないと主張する。
しかし,控訴人によって虚偽の告知がされた事実は,控訴人自身,ガス会社の選
択の理由として挙げている「ガス料金」に関する事実である。これに関する虚偽の
事実を本件資料3~5の交付によって告知されたのであるから,被控訴人の営業上
の信用が害されたことは明らかであって,控訴人の主張は失当である。
(3) 争点(5)(被控訴人の損害額)について
控訴人は,Aの陳述書(丙46)を根拠に,Aは,控訴人の料金が安いことを理

由に切替えをとどまったにすぎないと主張する。
しかし,Aは原審で証人尋問がされておらず,Aの陳述書(丙46)は,反対尋
問を経たものではない上,上記陳述書には,本件資料3を被控訴人の従業員である
Cに渡したことを否定する記載があるなど,明らかに客観的事実に反している部分
があるから,上記陳述書の信用性はおよそ認められない。
虚偽事実を記載した本件資料3~5を交付するという行為態様は,悪質であって
自由競争として許される範囲を逸脱しており,被控訴人の営業上の信用が大きく害
されている。
第4 当裁判所の判断
当裁判所も,被控訴人の控訴人に対する請求は,原判決別紙告知内容目録2記載
の事実の告知・流布の差止めを求め,損害金220万円及びこれに対する不法行為
の後の日である平成28年8月19日から支払済みまで民法所定の年5分の割合に
よる遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がないから棄却す
べきものと判断する。その理由は,下記1のとおり原判決を補正し,下記2のとお
り当審における控訴人の補充主張に対する判断を示すほかは,原判決「事実及び理
由」欄の「第4 当裁判所の判断」に記載のとおりであるから,これを引用する。
なお,証人尋問はすべて原審において行われたものである。
1 原判決の補正
(1) 原判決28頁16行目から20行目までを以下のとおり改める。
「ア 被控訴人の法務課長は,平成27年11月13日,支店長,部長及び管理
監督者に対し,被控訴人を誹謗中傷する資料等を入手した場合には,これを添付し
て社内掲示板に書込みをする旨の指示をしていた。これを受けて,被控訴人の東関
東支店長は,平成28年4月18日,同支店に所属する被控訴人従業員らに対し,
上記の場合には,入手した資料を添付して支店掲示板に書き込むように改めて指示
をした。(甲55,80,C証人,D 証人)」
(2) 原判決29頁6行目,21行目,30頁9行目,14行目の各「アップロー

ド」をそれぞれ「掲載」と改める。
(3) 原判決29頁8行目「(甲56,」から9行目までを以下のとおり改める。
「(甲56,59,60,甲65の1~9,甲68,71,80,甲81の1・2)」
(4) 原判決29頁16行目「往訪」を「訪問」と改める。
(5) 原判決29頁19行目「同月18日」を「同月22日」と改める。
(6) 原判決29頁23行目「(甲57,」から24行目までを以下のとおり改める。
「(甲57,63,64,甲66の1~13,甲69,72,80,甲84の1・
2)」
(7) 原判決30頁7行目「同月19日」を「同年4月19日」と改める。
(8) 原判決30頁9行目「同月23日」を「同月22日」と改める。
(9) 原判決30頁10行目「同月19日頃」を「同年3月19日頃」と改める。
(10) 原判決30頁11行目「(甲58,」から12行目までを以下のとおり改め
る。
「(甲58,61,62,甲67の1~13,甲70,73,80,甲83の1・
2)」
(11) 原判決30頁20行目から31頁9行目までを以下のとおり改める。
「ア しかし,Cが本件資料3をスキャンして作成したとするPDFファイルを
印刷した書面(甲65の1~9)を見ると,甲65の1の左上にホチキスの針があ
ることをはっきりと確認できる上,甲65の2~9には,ホチキス留めされたまま
折り曲げられてスキャンされた際に生じたと思料される折り目がある。
また,Eが本件資料4をスキャンして作成したとするPDFファイルを印刷した
書面(甲66の1~13)及びDが本件資料5をスキャンして作成したとするPD
Fファイルを印刷した書面(甲67の1~13)のうち,甲66の1~13,甲6
7の2~13にもその左上にホチキス留めされた跡と思しきものがある。
これらに加えて,Bの陳述書(丙43の5頁)には,顧客に交付する資料は名刺
も含めていつもホチキスで留めていたと記載されていることを併せ考えると,本件

資料3~5(甲6の1~9,甲7の1~6,甲8の1~7)は,いずれも当初から
ホチキス留めされて一体となっており,それを被控訴人の従業員らが,Aらから取
得したものと推認される。
イ また,控訴人が交付を争っていない甲6の2には,一部上場企業の代理店・
協力業者を名乗るセールス(ブローカー)が,悪質な手口で営業活動を行っている
旨の記載があるところ,控訴人が交付を争っている甲6の3には,(被控訴人が)

協力会社という名目のブローカーを雇っており,,
」「協力会社の営業(俗に言うブロ
ーカー) との記載があり,
」 これは上記甲6の2の記載と相通じる内容のものといえ
る。
同様に,控訴人が交付を争っていない甲7の2,甲8の2には「格安料金で勧誘
されてLPガス販売店を切り替えたけれど,気がつけば元の料金より高くなってい
た・・・・・・。このような例が多数報告されています。」と記載されているところ,
これは被控訴人が切替え後に値上げをする旨が記載された,控訴人が交付を争って
いる甲7の4~6,甲8の4~6の記載と一致するものである。
以上のように,本件資料3~5について,控訴人が交付を争っていない書面と交
付を争っている書面との間に,内容的に見て共通性,一体性のあるものが存在して
いることからしても,本件資料3~5(甲6の1~9,甲7の1~6,甲8の1~
7)が一体として交付されたものであることが推認される。
ウ 以上からすると,控訴人は,本件資料3~5各一式をAらに交付したと認め
るのが相当であり,これと異なる証人B及び証人Fの各証言は採用することができ
ない。」
(12) 原判決31頁12行目「(甲6の6,7の3,8の3)」を「(甲6の6,甲
7の3,甲8の3)」と改める。
(13) 原判決31頁15行目から24行目までを以下のとおり改める。
「しかし,上記新聞記事(甲6の4)は,その見出しに,
「ガス契約で虚偽説明容
疑」とあり,しかも同見出しに黄色でマーカーが引かれているものであるところ,

控訴人と被控訴人の顧客が,LPガスの需要者という一般消費者であることからす
ると,上記見出し部分にのみ注目することは相当程度あり得るものである。そして,
上記見出しは,LPガス販売業者の一部が「特定商取引に関する法律」に違反する
営業を行っていることが記載された書面(甲6の2)や被控訴人が契約切替え後に
値上げを繰り返すことなどが記載された書面(甲6の3・5・7)と相まって,顧
客に対し,被控訴人が虚偽説明などの不当な営業活動を行っているかのような印象
を与えるものである。
また,被控訴人の顧客が通常所持しているとされるガス供給申込書兼切替業務委
任状(甲6の6,甲7の3,甲8の3)についても,契約当初の料金,取次業者の
名称,「本販売価格は,お申し込み時のものです。」という記載がマーカーや丸印で
強調されたものであり,被控訴人が契約切替え後に値上げを繰り返すことなどが記
載された書面(甲6の3・5・7,甲7の4~6,甲の8の4~6)と相まって,
被控訴人のガス料金について値上げの可能性があることを示唆するものといえる。」
(14) 原判決32頁16行目から19行目まで以下のとおり改める。
「 しかし,前記 1(1)のとおり,被控訴人の東関東支店長は,平成28年4月1
8日に,被控訴人を誹謗中傷した資料を入手した場合には,同資料を支店掲示板に
書き込むように指示をし,本件資料3~5は,Cらによって同日から翌19日まで
の間に相次いで支店掲示板に掲載され,その後,同月22日に同支店長により法務
部門もアクセスできる社内掲示板に掲載されたと認められるのであり,その経緯に
ついて不自然な点はないし,本件資料3~5が,入手後長期間にわたって被控訴人
の社内掲示板に掲載されなかったということもない。」
(15) 原判決33頁17行目「6か月以内」を「一定期間内」と改める。
(16) 原判決34頁4行目「(甲3」から5行目までを「(甲31,76,丙1)」
と改める。
(17) 原判決34頁9行目から36頁3行目までを削除する。
(18) 原判決36頁4行目「(4) 本件記載3(被告ら関係)」を「(2) 本件記載3」

と改める。
(19) 原判決36頁15行目から18行目までを以下のとおり改める。
「 甲6の7に記載された本件料金推移表に関し,被控訴人がした値上げに関
する証拠の中で,本件料金推移表のとおりの推移をたどった顧客が存在することを
示すものは一つもない。また,控訴人らは,甲6の7やそれとほぼ同様の甲2の3
を自ら交付していたのであるから,本件料金推移表のとおりの推移をたどった顧客
が実在する場合には,それを裏付ける証拠を提出できるものと思料されるが,控訴
人らはそのような証拠を何ら提出していない。」
(20) 原判決36頁24行目,37頁26行目,46頁10行目,12行目の各
「被告ら」をそれぞれ「控訴人」と改める。
(21) 原判決37頁1行目「丙5~10」 「丙5の1,
を 丙6~10」と改める。
(22) 原判決37頁4行目から5行目「前記判示のとおりである。 までを以下の

とおり改める。
「前記判示のとおり,本件料金推移表のとおりの値上げの推移をたどった顧客は
存在しないと認められる。」
(23) 原判決37頁23行目「値上げが」を「値上げを」と改める。
(24) 原判決38頁2行目「本件資料」を「本件資料3~5」と改める。
(25) 原判決38頁3行目「インターネット上閲覧可能」を「インターネット上
で閲覧可能」と改める。
(26) 原判決38頁7行目から8行目「本件料金推移表」から同行目の「あるか
ら,」までを以下のとおり改める。
「本件料金推移表の摘示する実例は存在しなかったと認められるのであるから,」
(27) 原判決38頁10行目「(5) 本件記載4(被告ら関係)」を「(3) 本件記載
4」と改める。
(28) 原判決38頁21頁「6か月未満の」を「一定期間が経過していない」と
改める。

(29) 原判決39頁4行目の「原告のガス料金の推移」の後に「(甲5,15,7
8)」を加える。
(30) 原判決39頁8行目「実例」の後に (甲2の2,
「 甲7の5,甲16,23,
28~30,34,乙3の1~4,乙4の1・3・5,乙5の1・2,丙2~4,丙
5の1・3・5,丙6~18)を加える。
(31) 原判決39頁9行目「平成25年4月」の次の「同年10月」を「同年9
月」と改める。
(32) 原判決39頁11行目「時期に当たり」,13行目「時期に当たる」,23
行目「いうことができる」のそれぞれ後に「(甲31,76,丙1)」を加える。
(33) 原判決39頁18行目から19行目,21行目の各「平成26年10月」を
それぞれ「同年10月」と改める。
(34) 原判決41頁6行目「(6) 本件記載5(被告ら関係)」を「(4) 本件記載5」
と改める。
(35) 原判決41頁10行目「本件資料を作成した被告ら」を「甲6の7及び甲
2の3を作成又は交付した控訴人ら」と改める。
(36) 原判決41頁22行目から42頁3行目までを削除する。
(37) 原判決42頁4行目「(7) 本件記載6(被告エルピオ関係)」を「(5) 本件記
載6」と改める。
(38) 原判決42頁12行目(本件摘示事実6
「 (ⅲ)を(本件摘示事実6
」「 (ⅲ)」

と改める。
(39) 原判決42頁13行目から14行目,24行目,26行目「お客様営業時
格安価格」をそれぞれ「お客様営業時格安料金」と改める。
(40) 原判決43頁7行目から12行目までを以下のとおり改める。
「しかし,本件記載6の直下に,あたかも上に記載された値上げの当事者である
かのように記載された顧客(お客様番号:951113)の実際の従量料金の推移
は,本件記載6の値上げ推移とは異なっている(甲10)。これに加えて,本件記載

6が記載された資料(甲7の5,甲8の5)を交付していた控訴人が,本件摘示事
実6(ⅰ)の存在を裏付ける証拠を何ら提出していないことからすると,本件摘示
事実6(ⅰ)は虚偽であると認められる。」
(41) 原判決44頁15行目「存在しないことは前記判示のとおりであり」 「存

在するとは認められず」と改める。
(42) 原判決44頁20行目「おこなわれる」を「行われる」と改める。
(43) 原判決45頁22行目から24行目までを以下のとおり改める。
「前記2のとおり,控訴人は,原判決別紙告知内容目録記載2の各事実の告知を
行い,これらの事実は,被控訴人の営業上の信用を害するものであるということが
できる。」
(44) 原判決46頁3行目「(甲1,2,6~8,12,13,乙9,丙57)」
を「(甲1の1~6,甲2の1~7,甲6の1~9,甲7の1~6,甲8の1~7,
甲12の1~3,甲13,乙9の1・2,丙57)」と改める。
(45) 原判決46頁8行目「不競法1条2項15号」 「不競法2条1項15号」

と改める。
(46) 原判決46頁15行目から17行目を以下のとおり改める。
「 したがって,控訴人が,原判決別紙告知内容目録2記載の事実を第三者に対
して告知・流布することを差し止める必要がある。」
(47) 原判決46頁18行目から21行目までを以下のとおり改める。
「4 争点(4)(控訴人の故意・過失の有無)について
本件資料3~5に記載された虚偽の事実が被控訴人の営業上の信用を害すること
は,前記判示のとおりであり,控訴人は本件資料3~5を被控訴人の顧客に対して
交付しているのであるから,故意又は少なくとも過失があると認められる。」
(48) 原判決46頁23行目から47頁9行目までを削除する。
(49) 原判決47頁10行目「(2)」を「(1)」と,24行目「(3)」を「(2)」とそれ
ぞれ改める。

(50) 原判決47頁19行目「資料4及び5」 「本件資料4及び5」
を と改める。
(51) 原判決47頁25行目から26行目「15万円,」までを削除する。
(52) 原判決48頁2行目から6行目までを削除する。
(53) 原判決48頁7行目から16行目までを以下のとおり改める。
「 6 よって,控訴人に対する被控訴人の請求は,不競法3条1項に基づき原判
決別紙告知内容目録2記載の事実の告知・流布の差止めを求め,同法4条に基づく
損害賠償として220万円及びこれに対する不法行為の後の日(訴状送達の日の翌
日)である平成28年8月19日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による
遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが,その余は理由がない。」
2 当審における控訴人の補充主張に対する判断
(1) 控訴人は,①ジェステックの従業員が逮捕されたという新聞記事や被控訴
人の顧客が通常所持しているガス供給申込書兼切替業務委任状が本件資料3~5に
含まれていること,②被控訴人の法務課長から指示があってから約半年にわたって
被控訴人の社内掲示板において資料のやり取りがされておらず,極めて不自然であ
ることからすると,控訴人は本件資料3~5の一部(甲6の3~7,甲7の3~6,
甲8の3~6)を交付していないと主張する。
ア しかし,①について,控訴人が指摘する各資料が,いずれも顧客におい
て契約の切替えを中止する動機になり得ることは,前記のとおり補正の上引用する
原判決31頁15行目~24行目のとおりであって,そのような各資料が含まれて
いたからといって,控訴人が本件資料3~5を交付したとの前記認定が左右される
ものではない。
イ 上記②について,前記のとおり補正の上引用する原判決28頁16行目
~30頁15行目のとおり,本件資料3~5は,入手後,比較的速やかに被控訴人
の社内掲示板に掲載されていて,その経緯についても不自然な点はなく,控訴人が
本件資料3~5を交付したとの前記認定が左右されるものではない。
ウ 以上からすると,控訴人の上記主張は採用することができない。

(2) 控訴人は,原判決が,一部の顧客についてガスの輸入価格と連動しない値
上げがされていることやガス料金の値上げを行う際に顧客の個別的事情を考慮する
ことを認定しておきながら,輸入価格に関係ない値上げをしているという事実を認
定しないことは誤りであり,本件摘示事実4は虚偽ではないと主張する。
しかし,前記のとおり補正の上引用する原判決38頁26行目~39頁17行目
のとおり,被控訴人のガス料金は,ガスの輸入価格と概ね連動しているものと認め
られ,本件摘示事実4のうち,
「輸入価格とは無関係に顧客のガス料金の値上げをし
ている。」という点が虚偽であるとする原判決の認定に誤りはない。そして,一部の
顧客についてガスの輸入価格と連動しない値上げがされていることやガス料金の値
上げを行う際に顧客の個別的事情を考慮することが,この原判決の認定を左右する
ものでないことは,前記のとおり補正の上引用する原判決40頁13行目~25行
目が判示するとおりである。
したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
(3) 控訴人は,顧客が切替えをするかどうかの決め手となるのは,料金の安さ
であり,実際に資料を交付しても被控訴人への切替えの撤回に応じてくれる顧客が
あまりいないことからすると,本件摘示事実3~6は被控訴人の営業上の信用を害
するおそれのないものであると主張する。
しかし,本件摘示事実3~6は,いずれも,ガス料金という,LPガス供給契約
を締結するに当たり,顧客の関心が最も高いと思料される事項について,被控訴人
が値上げを繰り返すなどの事実を摘示するものであり,その内容からして被控訴人
の営業上の信用を害するものということができ,控訴人が主張する顧客の切替えの
動機や実際に切替えの撤回に応じる顧客がどの程度いるのかということが上記判断
を左右するものではない。
したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
(4) 控訴人は,Aの陳述書(丙46)からすると,Aは,実際には料金が安くな
ることを理由に被控訴人への切替えを思いとどまったのであって,Aが本件資料3

を交付されて切替えを取りやめたとの事実を損害額を定める考慮要素とした原判決
には事実誤認があると主張する。
しかし,本件資料3に記載された本件摘示事実3~5は,それを目にした消費者
が,被控訴人への切替えをためらうような内容のものといえるから,Aの切替え撤
回の動機の一つに,本件摘示事実3~5があったと考えるのが自然であり,それに
反するAの陳述書(丙46)は信用性を欠くものである。
したがって,Aが被控訴人への切替えを思いとどまったことは,損害額を定める
に当たって考慮することができるものであって,控訴人の上記主張は採用すること
ができない。
第5 結論
以上の次第で,原判決は相当であるから,本件控訴を棄却することとして,主文
のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第2部


裁判長裁判官

森 義 之


裁判官

佐 野 信


裁判官

熊 谷 大 輔

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