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平成30(ワ)29036不正競争行為差止等請求事件

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裁判所 一部認容 東京地方裁判所東京地方裁判所
裁判年月日 令和2年11月11日
事件種別 民事
当事者 原告株式会社ドクターシーラボ
被告ツーウェイワールド株式会社
法令 不正競争
キーワード 侵害22回
差止7回
損害賠償2回
主文 1 被告は,別紙被告商品目録記載の外箱及び容器を使用し,同外箱及び容器を15
2 被告は,別紙被告商品目録記載の商品を廃棄せよ。
3 被告は,原告に対し,309万4066円及びこれに対する平成30年9月
14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 原告のその余の請求を棄却する。20
5 訴訟費用はこれを10分し,その3を原告の負担とし,その余を被告の負担
6 この判決は,第1項及び第3項に限り,仮に執行することができる。
事件の概要 1 本件は,原告が,被告に対し,被告は,訴訟承継前の原告及び原告(以下, 訴訟承継前の原告も含めて「原告」という。)の商品等表示として需要者の間 に広く認識されている毛穴ケア用の化粧水の外箱及び容器と類似するデザイ ン,形状等の外箱及び容器を使用し,同種の商品を譲渡等することにより,原 告商品と混同を生じさせたところ,被告の同行為は不正競争防止法(以下「不10 競法」という。)2条1項1号所定の不正競争行為に該当すると主張して,不 競法3条1項及び2項に基づき,商品等表示の使用,同商品等表示を使用した 商品の譲渡及び譲渡のための展示の差止め並びに同商品の廃棄を求めるととも に,不競法4条に基づき,損害賠償金710万3946円及びこれに対する訴 状送達の日の翌日である平成30年9月14日から支払済みまで民法(平成215 9年法律第44号による改正前)所定の年5分の割合による金員の支払を求め る事案である。

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判決文

令和2年11月11日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

平成30年(ワ)第29036号 不正競争行為差止等請求事件

口頭弁論終結日 令和2年9月18日

判 決

株式会社ドクターシーラボ訴訟承継人

原 告 株式会社ドクターシーラボ

同訴訟代理人弁護士 浅 村 昌 弘

松 川 直 樹

和 田 研 史

被 告 ツーウェイワールド株式会社

同訴訟代理人弁護士 中 重 克 巳

山 田 康 成

同補佐人弁理士 新 保 斉

主 文

1 被告は,別紙被告商品目録記載の外箱及び容器を使用し,同外箱及び容器を

使用した商品を譲渡し,譲渡のために展示してはならない。

2 被告は,別紙被告商品目録記載の商品を廃棄せよ。

3 被告は,原告に対し,309万4066円及びこれに対する平成30年9月

14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

4 原告のその余の請求を棄却する。

5 訴訟費用はこれを10分し,その3を原告の負担とし,その余を被告の負担

とする。

6 この判決は,第1項及び第3項に限り,仮に執行することができる。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

1 主文第1項及び第2項と同旨2 被告は,原告に対し,710万3946円及びこれに対する平成30年9月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。3 訴訟費用は被告の負担とする。4 仮執行宣言

5 第2 事案の概要1 本件は,原告が,被告に対し,被告は,訴訟承継前の原告及び原告(以下,訴訟承継前の原告も含めて「原告」という。)の商品等表示として需要者の間に広く認識されている毛穴ケア用の化粧水の外箱及び容器と類似するデザイン,形状等の外箱及び容器を使用し,同種の商品を譲渡等することにより,原告商品と混同を生じさせたところ,被告の同行為は不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項1号所定の不正競争行為に該当すると主張して,不競法3条1項及び2項に基づき,商品等表示の使用,同商品等表示を使用した商品の譲渡及び譲渡のための展示の差止め並びに同商品の廃棄を求めるとともに,不競法4条に基づき,損害賠償金710万3946円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成30年9月14日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前)所定の年5分の割合による金員の支払を求める事案である。2 前提事実(当事者間に争いがない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨により認定できる事実。なお,本判決を通じ,証拠を摘示する場合には,特に断らない限り,枝番を含むものとする。)

(1) 当事者ア 原告は,化粧品,健康食品等の製造,販売等を目的とする株式会社である。原告は,令和2年6月1日,訴訟承継前の原告を吸収合併し,商号を「株式会社シーズ・ホールディングス」 「株式会社ドクターシーラボ」からに変更した。イ 被告は,化粧品等の製造,販売,輸出入等を目的とする株式会社である。

(2) 原告商品の製造,販売等原告は,平成24年3月30日以降,別紙原告商品目録記載の外箱(以下「原告外箱」という。)及び容器(以下「原告容器」という。)を毛穴ケア用の化粧水(商品名「LaboLabo Super-Keana Lotion 毛穴ローション」。以

5 下「原告商品」という。)に使用し,同商品を製造,販売している。(甲3)

(3) 被告商品の製造,販売等ア 被告は,平成29年10月から平成30年5月にかけて(乙9~11),別紙被告製品目録記載の外箱(以下「被告外箱」という。)及び容器(以下「被告容器」という。)を毛穴ケア用の化粧水(商品名「Juliette RayKEANA LOTION 毛穴化粧水」。以下「被告商品」という。)に使用し,同商品を製造,販売するとともに,販売のために展示した。イ 被告は,平成30年6月以降,被告商品の販売はしていない。(乙9~11)3 争点

(1) 原告外箱及び原告容器の周知性の有無(争点1)

(2) 外箱及び容器の類否(争点2)

(3) 混同の有無(争点3)

(4) 差止め及び廃棄請求の可否(争点4)

(5) 故意又は過失の有無(争点5)

(6) 損害額(争点6)

第3 争点に関する当事者の主張

1 争点1(原告外箱及び原告容器の周知性の有無)について

〔

(原告の主張)

〕以下の事情によれば,原告外箱及び原告容器は,遅くとも被告商品の販売前である平成29年9月30日頃までには,原告商品の需要者である国内の化粧品関係の取引業者及び訪日外国人を含む美容に関心の高い女性を中心とした一般消費者の間において,商品等表示として周知なものとなっており,その状況は,現在に至るまで継続している。

(1) 原告商品の需要者

被告は,原告商品の主たる需要者は中国人等の外国人であると主張するが,

5 原告商品が国内で多数販売,宣伝広告されており,原告外箱及び原告容器に

付されている文字も日本語であることに照らすと,原告商品の需要者は,中国国内の需要者に限られず,国内の美容に関心の高い女性を中心とした一般消費者(ただし,訪日外国人も含む。)である。原告商品の需要者が中国国内の需要者に限られないことは,下記(3)の原告商品の国内における販売数や下記(4)の同商品の国内における市場占有率等からも裏付けられる。

(2) 雑誌等での紹介

原告商品は,発行部数の多い雑誌等(甲6~31),テレビ番組「ワールドビジネスサテライト」(甲32),各種ウェブサイト(甲33~45)において,多くの場合原告商品の画像とともに,紹介されている。また,原告自身も,原告のウェブサイト等(甲3,46~49)において,同商品を宣伝・広告している。原告商品を紹介した雑誌等には,外箱及び容器の画像が掲載等されたもの(甲32,34),原告商品の商品名及び容器の写真が掲載されたもの(甲6~22,24~28,31,35,40,41,45,46)などが含まれており,需要者は原告商品の外箱及び容器を認識することができた。

(3) 販売実績

原告商品は,平成24年3月30日にデザインをリニューアルして発売されて以来,長期間にわたり販売されており,平成24年8月1日から平成30年3月31日までの出荷本数は,2473万3405本である(甲5)。平成24年3月30日以来の原告商品の売上げは,第15期(平成24年8月~)が約6万本,第16期(平成25年8月~)が約7万本,第17期(平成26年8月~)が約40万本,第18期(平成27年8月~)が約380万本,第19期(平成28年8月~)が約1100万本であり,毎年増加している(甲5)。

5 原告商品の平成29年3月及び同年6月~10月の国内での販売本数の

合計は,主要な取引先である株式会社井田両国堂(以下「井田両国堂」という。)に対する130万4028本も含め389万6044本,同時期における国外での販売数量は合計384万3560本であり(甲58),同期間の総販売本数に対する国内での販売本数の比率は約50%である。また,ウェブサイト「Dream News」に掲載された平成28年6月21日付けの記事(甲35)には「販売累計本数360万本突破」との記載がある。

(4) 原告商品の国内における市場占有率等

ア 市場調査専門会社である株式会社富士経済の調査結果(甲62の1(132頁),甲62の2(133頁)。以下「甲62の調査結果」ということがある。)によると,原告が製造,販売している「ラボラボ」ブランドの商品の拭き取り化粧水分野における平成28年の国内の市場占有率は9.5%で2位,平成29年の市場占有率は11.5%で2位,平成30年の市場占有率(見込み)は14.0%で2位である。「ラボラボ」ブランドの商品のうち,拭き取りタイプの化粧水は,原告商品のみである(甲63)から,この数字は,原告商品の販売実績を示すものである。なお,「拭き取り」化粧水とは,ファッションやビューティ関連の記事を取り扱うウェブサイト「by.S」にも記載があるとおり,洗顔やクレンジングで落としきれなかった汚れを拭き取るタイプの化粧水のことであり(甲64(2頁)),同サイトでも,お勧め商品の一つとして原告商品が挙げられている(同9頁)ことから明らかなように,原告商品は我が国における拭き取り化粧水の代表的製品の一つである。原告商品が拭き取り化粧水の代表的製品であることについては,上記調査結果における製品分類別の市場規模推移に関する説明(甲62の1(129頁))においても,拭き取り化粧水について原告商品のみに言及があることからも明らかである。

5 イ また,拭き取り化粧水を含む全種化粧水の価格帯別動向において,20

16~2017年における「1000~2000円未満」の「価格帯実績/構成比」が大幅拡大となった原動力の一つとして原告商品が取り上げられている(甲62の1(133頁))。ウ 以上のとおり,原告商品は平成28年から平成30年にかけて,国内市場における化粧水の「拭き取り」カテゴリにおいて非常に高いシェアを占めているだけでなく,同カテゴリの代表的製品として市場調査会社や化粧水の専門家に評価されており,また,全カテゴリを含めた化粧水における「1000~2000円未満」の価格帯においても高いシェアを占めている。原告商品は,現在も有名小売店の各店舗において高い売上順位を維持しており(甲65),原告商品の市場占有率は引き続き高い傾向のまま推移すると考えられる。

(5) 原告商品の訪日外国人に対する売上げランキング等

原告商品は,総合免税店「ラオックス」が主催する「ジャパン・ショッピング・アワード(JSA)」において,平成28年に訪日旅行者の間で人気急上昇した商品ランキングの「コスメ・美容のTOP5」部門で1位となった(甲67)。また,株式会社IWの調査によれば「大手激安小売店DK」において訪日した中国人が平成29年9月に購入した商品の売上ランキングで原告商品は5位となった(甲68)。さらに,「中国トレンドEXPRESS」が調べた,訪日中国人が日本で購入した化粧水のランキング(平成31年3月27日~同年4月30日)によると原告商品は9位であった(甲69)。以上のとおり,平成28年から現在まで原告商品は訪日外国人に対する売上げについても高い順位を維持している。

(6) 原告商品に対する口コミ評価等

5 「日本最大のコスメ・美容総合サイト」である「@cosme」において,令

和元年5月29日時点で原告商品に対するクチコミは80件あるところ,これらのクチコミ評価で平均4. (最高7点)6点 の得点を得ている(甲70)。また,一般消費者の質問に対して,他の一般消費者が回答した内容をもとに商品等のランキングを掲載するウェブサイト「G-Ranking」においてなされた「角質や毛穴汚れをスッキリ!拭き取り化粧水のおすすめを教えて」なる質問において,原告商品をすすめたユーザー数が1位となっているなど,高い評価を得ている(甲71)。さらに,「美白な美肌になるためのコスメ活用術」を提供しているウェブサイト「美白の神様」における「開き毛穴に効くおすすめ化粧水2019!毛穴レス人気ランキング」において,原告商品は4位となっている。また,同資料によればクチコミによる評価は最高評価である☆「5」に対し,☆「4.0」となっている(甲72)。〔

(被告の主張)

〕以下の事情によれば,原告外箱及び原告容器は,商品等表示として需要者の間に周知なものといえない。

(1) 原告商品の需要者

原告商品の売上げの推移によれば,原告商品の主たる需要者は中国人等の外国人観光客である。甲62の調査結果も,原告商品が爆発的に売れたのは中国人女優のSNSにおける紹介である旨を指摘し,原告商品の売れ行きは,インバウンド需要により増大したと分析している。

(2) 雑誌等での紹介

ア 原告商品を紹介する雑誌等は,日本人を対象とするものであるので,原告商品の主要な購買層である中国人等の外国人がこれらの雑誌等を読んで購買に及んだとは考えられず,これらの媒体は原告商品の周知性を立証する事実とはなり得ない。

5 また,原告が挙げるテレビ番組,ウェブサイト等には,原告商品が中国

で人気であることなどが紹介されているにすぎず,日本ではあまり知られていないという記載もある(甲34)。イ 原告が周知性の根拠として挙げる雑誌に掲載された写真には,原告商品ではないもの(甲16の1,23の1,29の1,30の1)が含まれ,その他の写真も,いずれも原告容器の写真であって,店舗に陳列されて需要者が直接目にする原告外箱の写真は一切ない。同様に,原告が周知性の根拠として挙げるウェブサイト等の写真のほとんどは,原告商品かどうか明らかではないもの(甲41),原告外箱も原告容器も写っていないもの(甲33,36,38,39,42~44,47,49),原告容器は写っているものの,原告外箱は写っていないもの(甲3,46,48)などであり,少なくともこれらの証拠から原告外箱が需要者の間に広く認識されていたということはできない。

(3) 販売実績

原告が主張する日本国内の取引先である井田両国堂への出荷本数は,原告商品の全出荷数の約5%にすぎず,このことは,原告商品に関心のある消費者層は主として中国などの外国の消費者であり,国内での販売数は多くないことを示している。

(4) 原告商品の国内における市場占有率等

拭き取り化粧水自体は,「保湿・柔軟」,「収れん」及び「拭き取り」の3つある化粧水の分類の一つにすぎない。拭き取り化粧水の販売金額の全化粧水に占める割合も,甲62の調査結果によれば,化粧水全体の6.9%にとどまる(甲62の2)。このように,

(原告の主張)

する市場占有率は,拭き取り化粧水という限られた分野の市場占有率が高いと主張するものにすぎず,原告商品の化粧水全体に対する国内シェアは低いというべきである。

5 (5) 原告商品に対する口コミ評価等

実際のところ,原告商品は,化粧水全体のインターネットのランキングでは,原告も引用する「日本最大のコスメ・美容の総合サイト」である「@cosme」の化粧水ランキングにおいて,50位以内にすら入っていない(乙2)。また,「300万人のLIPSユーザー」が選ぶ,人気化粧水ランキング50選でも,原告商品は,ランキングに入っていない(乙3)。さらに,原告商品がターゲットとする毛穴ケア化粧水のランキングに限定しても,「@cosme」の毛穴ケア化粧水のランキングでは,原告商品は15位までのランキングに入っていない(乙4)。このほか,「Travel Book 女子旅」「毛穴の悩みにおすすめ!化粧水の口コミランキング15選」(乙5),「MOSS.」「毛穴ケアにおすすめの市販化粧水12選【2019】ドラッグストアで買えるプチプラから人気のデパコス化粧水まで」(乙6)においても,原告商品はランキング入りしていない。なお,拭き取り化粧水に限定したインターネットのランキングでも,「@cosme」の拭き取り化粧水のランキングにおいて,7位にすぎない(乙7)。

2 争点2(外箱及び容器の類否)について

〔

(原告の主張)

〕原告外箱及び原告容器のデザイン等の類否に関する

(原告の主張)

は,別紙「外箱及び容器のデザイン等の類否に関する当事者の主張」の「

(原告の主張)

」欄記載のとおりである。原告商品と被告商品の外箱及び容器には同別紙記載のとおりの共通点があり,両商品の外観は需要者に対して上品かつスタイリッシュな観念を生じさせる点でも共通するのに対し,被告の指摘する相違点はわずかな違いにすぎず,視覚

5 的に認識しづらいものであるため,時と場所を異にした離隔的観察の下では,

両商品の外箱及び容器は,いずれも全体として類似する。〔

(被告の主張)

〕原告外箱及び原告容器のデザイン等の類否に関する

(被告の主張)

は,別紙「外箱及び容器のデザイン等の類否に関する当事者の主張」の「

(被告の主張)

」欄記載のとおりである。原告商品と被告商品には同別紙記載のとおりの相違点があるのに対し,原告が主張する共通点はありふれたもの又は需要者に強い印象を与えないものであり,両商品の外箱及び容器が類似しているということはできない。

3 争点3(混同の有無)について

〔

(原告の主張)

〕原告商品と被告商品の外箱及び容器は相当程度類似していることに加え,原告と被告は,美容に関心の高い女性を中心に化粧品を販売する競業者であり,両商品は同価格帯の化粧品で競合していることなどを考慮すると,被告が被告外箱及び被告容器を被告商品に使用して同商品を販売することにより,需要者の間に混同が生じていることは明らかである。〔

(被告の主張)

〕争う。被告外箱及び被告容器には被告商品のブランド名が明記されており,ドクターシーラボのロゴや十字型のロゴマークと誤認するとは考え難いので,需要者において両商品を混同するおそれはない。

4 争点4(差止め及び廃棄請求の可否)について

〔

(原告の主張)

〕

(1) 営業上の利益の侵害のおそれの有無

(被告の主張)

を前提とすると,被告は,被告商品2589本,被告商品の製造以外に用途のないボトルラベル2000枚以上及び組立前の被告外箱35

5 75個をいまだ廃棄せずに保管しているというのであるから,被告が,将来,

被告商品を再度販売することによって,原告の営業上の利益を侵害するおそれは十分にある。

(2) 廃棄請求

原告が廃棄を求めているのは,被告外箱及び被告容器に貼られたボトルラベルが含まれる被告商品であって,被告容器内から取り出された内容物やボトルラベルが分離された容器の廃棄を求めているわけではないので,被告商品の廃棄は,侵害の停止又は予防に必要なものである。〔

(被告の主張)

〕

(1) 営業上の利益の侵害のおそれの有無について

被告は,遅くとも平成30年9月までに,被告商品の取扱店舗から被告商品を全て回収し,現在,被告商品の製造,販売をしておらず,今後も,製造,販売する予定はないので差止めを求める必要がない。

(2) 廃棄請求について

被告商品は,外箱,容器,容器に貼られたボトルラベル及び容器内の液体から組成されるところ,そのうち,容器と同容器内の液体に関しては,外箱及びボトルラベルとの分離が可能であり,ボトルラベル分離後の容器については他の用途への転用も考えられるところである。したがって,原告が,被告外箱や被告容器に貼られたボトルラベルの廃棄のほかに,被告容器や被告容器内の液体の廃棄まで求めるのは過大な請求である。

5 争点5(故意又は過失の有無)について

〔

(原告の主張)

〕原告と競争関係にある被告は,被告商品の製造販売前に周知となっていた原告外箱及び原告容器を意図的に模倣し,類似する外箱及び容器を被告商品に使用して同商品を販売したのであるから,原告の営業上の利益の侵害につき,被

5 告に故意又は過失があったことは明らかである。

〔

(被告の主張)

〕争う。

6 争点6(損害額)について

〔

(原告の主張)

〕

(1) 逸失利益

原告は,被告商品の製造・販売により,本来得られたはずの利益を失い,損害を被った。その額は,不競法5条1項により,以下のとおり算定される。ア 被告商品の譲渡数量被告は,被告商品の販売を中止したと主張するが,実際に販売を中止したことを示す証拠は存在しない。また,被告は,回収済み又は未出荷の被告商品や未使用のボトルラベル又は外箱を使用して被告商品の販売を継続していた可能性があり,被告の得意先別商品別売上明細表(乙10)についても,そこに記載された出荷先のうち,株式会社ドン・キホーテ(以下「ドン・キホーテ」という。)を除く企業に対して出荷された数量はいずれも極端に少なく,企業間の取引数量を示すものとは信じ難い。さらに,被告が提出した充填包装作業指図・記録書(乙12)の「ロット番号」欄には「2aj」などと記載され,ファーストロットを示すものが含まれていないので,同作業指図・記録書に記載されている被告商品以外の同様の商品が製造された疑いがある。これによれば,被告は,

(被告の主張)

する●(省略)●を超える本数を販売したと考えるのが自然である。被告は,上記販売本数から回収した本数を控除して被告商品の譲渡数量を算定するが,被告が被告商品を出荷した時点で原告商品の販売機会は失われ,それによる損害は被告商品の回収によっては回復しないから,上記販売本数から回収した本数を控除すべきでない。

5 イ 原告商品の単位数量当たりの利益の額

a 平成29年10月から平成30年5月までの間,原告商品は,●(省略)●b 原告商品の1本当たりの製造費用は,以下の費用の合計額●(省略)●なお,被告は,利益の額の算定に当たり,広告宣伝費を原告商品の販売価格から控除すべきと主張するが,広告宣伝費は,その性質上,商品の販売数量の増加に応じて増加する費用ではないので,広告宣伝費を原告商品の販売価格から控除する必要はない。ウ 利益の合計額被告商品の譲渡数量に原告商品の単位当たりの利益の額を乗じて得た額は,少なくとも●(省略)●である。エ 原告の販売能力原告商品の実際の取引規模に鑑みると,原告商品を被告商品の販売本数程度販売することは十分に可能であった。これに対して,被告は販売能力を争うが,容器不足が生じたのは一時的なことであり,容器の製造の委託先を一社から複数に増やすなどの対応をすることにより,原告商品の販売本数にはほとんど影響はなかった(甲99)。このことは,原告商品の平成29年から平成30年の販売本数が増加していること(甲62)からも明らかである。オ 覆滅事由の存在について

(被告の主張)

する覆滅事由については,いずれも争う。(ア) 商品名の相違について被告は,原告商品と被告商品とではその外箱及び容器に異なる商品名が表示されていたと主張するが,原告商品と被告商品との混同が生じている以上,商品名が異なることは,不競法5条1項の推定を覆滅する事

5 由にならない。

(イ) 市場の非同一性についてa 需要者の相違及び販売態様・販売方法の相違について原告商品と被告商品は,同一店舗の同一売場で販売されている。また,原告商品は,国内でも販売されており,中国でしか販売されていないという事実はないので,両商品の需要者や販売態様・販売方法が異なるということはない。b 価格の相違について原告商品が被告商品より高価であるとしても,いずれの商品も若い女性が小遣いで購入できる程度の販売価格であり,両商品の間に市場における補完関係を否定するほどの価格差はない。また,仮に,被告商品がほぼドン・キホーテで売られているとしても,ドン・キホーテは,並行輸入等を利用してブランド品を他店より安価に販売することで有名な会社であるから(甲107),原告商品の約半値という被告商品の販売価格は,むしろ,原告商品がドン・キホーテで約半値で売られていると消費者に誤解を与え,原告商品と被告商品の混同を助長する。(ウ) 市場における競合品の存在について被告は,市場には原告商品と競合する商品が多数存在すると主張するが,原告商品と混同が生じるほど外箱及び容器が類似している化粧水は,被告商品以外に存在しない。被告が挙げる乙1に記載されている化粧品の形態・外観は原告商品と類似しておらず,原告商品との混同を生じさせるものではない。被告商品及び被告ブランドの市場占有率は高くなく,需要者が存在を知らない可能性が高いことに照らすと,被告商品を購入した需要者のほとんど全ては原告商品と混同して被告商品を購入したと考えられる。

5 (エ) 被告の営業努力について

被告容器は,「Juliette Ray」ブランドの各商品の容器とは外観が全く異なっており(甲108),被告商品に付記された「Juliette Ray」のロゴも全く目立っていないこと を考慮すれば,被告商品の販売に「Juliette Ray」ブランドの販売戦略が影響を及ぼしていないことは明らかである。(オ) 商品の分類・使用方法,成分・品質の相違について被告商品において,化粧水の分類や成分等に関する表記等は全て被告外箱の背面にあって,正面には記載されていない(甲2)。通常,店頭において化粧水は正面を向けて並べられており(甲56),最初から原告商品を目当てにしていた需要者は,外箱の背面まで見ることはほとんどなく,正面のみを確認することを考慮すれば,原告商品を購入予定であった需要者が,外箱の正面が酷似する被告商品と原告商品を混同することは明らかである。まして,訪日した中国人の需要者については,商品が置かれている売場と外箱の全体的な印象で原告商品を他の商品とを区別せざるを得ないから,外箱の全体的な印象が酷似する被告商品と原告商品を混同する可能性は一層高い。

(2) 無形損害

被告は,粗悪な品質の被告容器を原告商品と異なる成分の入った被告商品に使用して,同商品を販売したことにより,原告の長年の企業努力によって蓄積された原告商品に対する信用や価値を毀損し,原告に無形の損害を負わせた。その額は,300万円を下回らない。

(3) 弁護士費用 91万2289円

〔

(被告の主張)

〕

(1) 逸失利益について

5 ア 被告商品の譲渡数量について

被告は,平成29年10月から平成30年5月までに,被告商品を●(省略)●店頭に残った商品は,同年9月までの間に全て回収し,それ以降の出荷実績はない(乙9)。エンドユーザーである消費者が被告商品を原告商品と誤認して購入した時点で初めて原告に損害が発生したことになるのであるから,被告商品の譲渡数量は,販売本数から回収本数を控除した●(省略)●である。被告商品の出荷先は,ほとんどがドン・キホーテであり,その出荷による販売金額は合計261万9850円,返品による回収金額は合計64万6620円となり,実質的な売上高は197万3230円となる(乙9)。イ 原告商品の単位数量当たりの利益の額について原告商品の販売数が増加したのは,原告商品の販売のために広告宣伝費を費やしたことによる。原告商品は,原告が販売する商品全体の中でも,圧倒的に海外(特に中国)での販売比率が高い商品であり,その販売宣伝方法についても,原告商品に特化したものであることが容易に想定されるから,原告商品の広告宣伝費は,原告商品の追加販売のために必要となる経費というべきである。したがって,原告商品の単位数量当たりの利益の額の算定に当たっては,原告商品の追加販売のために費やすことになる広告宣伝費を控除すべきである。ウ 利益の合計額について争う。エ 原告の販売能力について原告は,平成29年8月から平成30年4月までの期間,容器不足で原告商品の出荷が制限される状況に陥っていた(甲51) この期間のうち,。平成29年10月から平成30年4月までの期間は,被告商品の販売期間

5 と重なっているので,平成29年10月から平成30年4月までの被告商

品の譲渡数量である●(省略)●原告の販売能力を超えるものである。被告が平成30年5月以降に出荷した本数は138本であり,そのうち96本は回収済みなので,これを控除した42本が販売し得た譲渡数量となる。原告主張のとおり原告商品の販売実績が拡大していたとしても,上記期間に,容器不足により原告商品を販売することができるだけの生産余力がなく,原告の販売能力が限界に達していたのであれば,被告商品の販売が原告商品の販売本数に影響を与えていたことにはならないから,原告商品の販売実績の拡大は,原告に販売能力があったことを裏付けるものではない。オ 覆滅事由の存在(ア) 商品名の相違原告商品の商品名は,「Labo Labo Super-Keana Lotion 毛穴ローション」であるのに対し,被告商品の商品名は,「Juliette Ray KEANA LOTION毛穴化粧水」であり,いずれの商品も,商品名が外箱の正面上部に表示されていた。このように,商品名が異なる以上,両商品の間に市場における相互補完関係はない。(イ) 市場の非同一性a 需要者の相違原告商品の主要な需要者・購買層は,訪日外国人,特に中国人であるのに対し,被告商品は,需要者として,大手安売量販店であるドン・キホーテでの廉価販売を想定し,購買力がさほど高くない国内の若年女性層にターゲットを絞っている。このように,原告商品と被告商品とでは,対象となる需要者が大幅に異なる。

5 b 販売態様,販売方法の相違

原告商品は,インターネットを中心に販売され,国内販売においてもドラッグストアや調剤薬局の販売が中心となっている(甲4,51)のに対し,被告商品は,インターネットでの通信販売を一切行っておらず,そのほとんど(96%)がドン・キホーテで販売されている。また,原告商品は,他の原告の商品とセットでの販売も行われていたのに対し,被告商品は単品での販売しか行っていない。このように,販売態様,販売方法が異なる以上,両商品の間に市場における相互補完関係はない。c 価格の相違原告商品は,店頭,インターネットにおいてほぼ1400円にて販売されているのに対し,被告商品は,仕入単価273~298円,販売単価350~540円,ドン・キホーテにおける店頭価格は500~598円という原告商品の半値以下の価格設定をしている。(ウ) 市場における競合品の存在甲62の調査結果によれば,原告商品は,同種の競合品,しかも同系色の色彩やデザインの外箱や容器が使用された商品(乙1)が多く参入している拭き取り化粧水分野において,平成28年から平成30年にかけて9.6~14.0%のシェアを占めるにとどまる。また,原告商品は化粧水全体の様々なランキングにも登場していない。(エ) 被告の営業努力被告商品の販売は,「Juliette Ray」ブランドを外箱正面の最上部に目立つ形で冠し,購買力が乏しい若年女性にターゲットを絞り,ドン・キホーテに絞って販売戦略を立てたことに基づく営業努力の結果なのであり,原告外箱及び原告容器の顧客誘引力・顧客購買動機のみによって達成されたものではない。

5 (オ) 商品の分類,成分等の相違

原告商品が古い角質や毛穴の汚れを落とし,肌に透明感を与えることを主目的とする拭き取り化粧水に分類されるのに対し,被告商品は,肌を引き締め,肌理を整えることを主目的とする収れん化粧水に分類されている(甲62)。そして,このような両商品の分類の相違から,両商品の成分も全く異なっている。すなわち,被告商品は,その外箱に表示されているとおり,原告商品と異なり,コラーゲン,ローヤルゼリー,乳酸,リンゴ酸といった成分や,イソステアリン酸PEG-30グリセリル,イソステアリン酸PEG-50グリセリル,レシチンといった活性剤,ローズヒップ油,オレンジ油,ハッカ油といったオイルを配合せずに,天然植物エキスを配合した無添加の化粧水である。また,拭き取り効果,ピーリング効果を上げるには,一般的に酸性の強い方がよいが,被告商品は,中性に近い弱酸性の化粧水である。このように,両商品は,分類,成分等が全く異なるから,両商品の間に市場における相互補完関係はない。

(2) 無形損害について

争う。原告の無形損害の主張は,被告商品が健康被害を生じさせる商品であることを前提としているが,被告商品が消費者に健康被害を生じさせた事実はない。

(3) 弁護士費用

争う。

第4 当裁判所の判断

1 争点1(原告外箱及び原告容器の周知性の有無)について

(1) 認定事実前提事実,後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。

5 ア 原告商品の紹介(ア) 原告商品は,平成24年5月から平成29年7月にかけて,同期間に発売された「with」,「CanCam」,「nicola」,「オレンジページ」等の各種雑誌において,原告容器の正面が写った写真とともに紹介された。(甲6~22,24~28)(イ) 原告商品は,平成27年2月11日,テレビ東京系列のテレビ番組「ワールドビジネスサテライト」において,「中国人に人気でこれを買いに日本に来る人が多い」,「中国の女優がブログで紹介したことで人気が広まり」などのコメントとともに,原告外箱及び原告容器の各正面が映像で紹介された。(甲32)(ウ) 原告商品は,平成27年7月20日付けの「日用品化粧品新聞」 「イのンバウンド需要が止まらない」という表題の記事において,「インバウンド需要の高い人気製品として好調な動きをみせている」などと紹介された。(甲23)(エ) 原告商品は,平成27年2月から平成29年9月にかけて,日本や中国の各種ウェブページ(原告のウェブページを含む。 で紹介された) (甲3,33~41,46~48)。これらのウェブページの中には,原告外箱及び原告容器のいずれもが写った写真が掲載されているもの(甲34) 原告容器の正面が写った写真が掲載されているもの, (甲3,35,37,40,41,46,48)がある。イ 原告商品の販売実績(ア)a 原告商品は,平成24年3月30日に外箱及び容器のデザインがリニューアルされて以来,現在まで販売されているが,原告商品の第15期(平成24年8月1日~平成25年7月31日)ないし第20期(平成29年8月1日~平成30年3月31日)までの出荷数及び売上(国外を含む。)は,以下のとおりであり,その合計は,出荷本数

5 2473万3405本,売上131億5212万7779円である。(甲3,5)

第15期(平成24年8月1日~平成25年7月31日)

出荷数 6万2788本売上げ 4052万5631円

第16期(平成25年8月1日~平成26年7月31日)

出荷数 6万9458本売上げ 5049万3254円

第17期(平成26年8月1日~平成27年7月31日)

出荷数 39万7525本売上げ 2億6340万6150円

第18期(平成27年8月1日~平成28年7月31日)

出荷数 380万8147本売上げ 22億3135万0052円

第19期(平成28年8月1日~平成29年7月31日)

出荷数 1094万6152本売上げ 57億9134万5414円

第20期(平成29年8月1日~平成30年3月31日)

出荷数 944万9335本売上げ 47億7500万7278円b 原告商品の販売実績は,平成26年秋頃から大幅に拡大し始めたが,この主要な要因は,中国人等の外国人観光客によるインバウンド需要を取り込んだことにあった。(甲23,25,26,28,32~41,44~49,62,67)(イ) 原告商品の平成29年3月及び同年6月ないし同年10月の国内・国外別の販売本数は,以下のとおりであり,その合計は,国内389万6

5 044本,国外384万3560本である。(甲52,58)平成29年3月 国内54万4167本 国外96万8127本平成29年6月 国内54万7690本 国外19万9816本平成29年7月 国内52万9606本 国外51万2372本平成29年8月 国内50万6176本 国外58万2029本平成29年9月 国内67万7982本 国外89万5726本平成29年10月 国内109万0423本 国外68万5490本ウ 市場占有率等(ア) 化粧水は,洗顔後に肌に水分を補給することを目的に使用する化粧料であるところ,その用途に応じて,「保湿・柔軟」(主に夜に使用し,肌を柔軟にし,有効成分の吸収を助けるもの),「収れん」(主に朝に使用し,肌を引き締め,メイクアップ前の肌を整えるもの),「拭き取り」(古い角質や毛穴の汚れを落とし,肌に透明感を出すもの)に分類することができる。原告商品は「拭き取り」を用途とするものである。(甲62の1(122頁),甲62の2(123頁))(イ) 化粧水市場の9割は「保湿・柔軟」を用途とする商品が占めているが,平成27年度以降,インバウンド需要で原告商品の売上げが伸びたことから,「拭き取り」用途の商品の構成比は,平成26年には6.7%であったが,平成29年には7.1%に増加した。(甲62の1(129頁),甲62の2(130頁))(ウ) 原告商品を含む「ラボラボ」ブランドの商品の拭き取り化粧水分野における国内のブランドシェア及び販売金額は,平成28年は9. (15%8億4000万円)で3位,平成29年は11.5%(22億5000万円)で2位,平成30年(見込み)は14%(27億8000万円)で2位であった。(甲62の1(132頁),甲62の2(133頁))(エ) 原告商品が属する1000~2000円未満の価格帯の化粧水は,原

5 告商品の販売実績が大幅に拡大したことが起因して,その販売金額が平成26年の328億円から平成29年の391億円に拡大し,その構成比も13.8%から14.3%に上昇した。(甲62の1(133頁),甲62の2(134頁))エ 口コミなどにおける評価(ア) 原告商品は,総合免税店ラオックスが主催するジャパン・ショッピング・アワード(JSA)において,平成28年に中国人をはじめとする訪日旅行者の間で人気急上昇した商品ランキングの「コスメ・美容のTOP5」部門で1位となった。(甲40,67)(イ) 原告商品は,株式会社IWの調査によるドン・キホーテにおいて訪日中国人が平成29年9月に購入した商品の売上ランキングで5位となった。(甲68)

(2) 検討ア 上記(1)アによれば,原告商品は,新たなデザインに変更された平成24年5月から被告商品の販売が開始された平成29年10月までの間に,各種雑誌,テレビ,ウェブサイトなどにおいて紹介され,「ワールドビジネスサテライト」というテレビ番組においては,原告外箱及び原告容器の各正面が映像で紹介されるとともに,「with」,「CanCam」,「nicola」,「オレンジページ」等の需要者に広く知られた雑誌や各種ウェブサイトにおいて,原告容器の正面が写った画像とともに原告商品が紹介されているとの事実が認められる。イ また,上記(1)イ(ア)によれば,原告商品の出荷数は,平成24年8月から平成26年7月にかけては約6万本から7万本にとどまっていたが,その後のインバウンド需要の拡大もあって,第18期(平成27年8月1日~平成28年7月31日)にはその50倍以上の380万本となり,更に

第19期(平成28年8月1日~平成29年7月31日)には1000万

5 本を超えるなど,被告商品が発売された平成29年10月に至るまでの数年間の間に急拡大しているということができる。これに伴い,需要者が店頭に陳列されている原告商品の外箱を目にする機会も増え,原告外箱のデザイン等の認知度も上がっていったものと推認される。ウ そして,上記(1)ウによれば,原告商品の販売数の増加に伴い,原告商品を含む「ラボラボ」ブランドの商品の拭き取り化粧水分野における国内のブランドシェアは,平成28年には9.5%で3位となり,平成29年は11.5%で2位となるなど,同種製品の中で上位に位置し,原告商品が属する1000~2000円未満の価格帯の化粧水の販売実績及び構成比がこの間に増加した要因についても,原告商品の販売増加の影響が大きいと評価されていることが認められる。エ 以上のとおりの原告商品の宣伝・広告及びその際の原告容器等の画像の掲載状況,原告商品の販売数及びその推移,並びに原告商品の市場占有率等に加え,後記のとおり,原告外箱及び原告容器のデザインは需要者の目を惹くものであり,外箱は店頭において需要者の目に直接触れるものであることなども考慮すると,原告外箱及び原告容器は,国内の化粧品関係の取引業者及び訪日外国人を含む美容に関心のある女性を中心とした一般消費者等の原告商品の需要者の間で,被告商品の販売が開始された平成29年10月までの間に,原告の商品であることを示すものとして広く知られるようになっており,その後も同様であるというべきである。

(3) 被告の主張についてア 被告は,原告商品の主たる需要者は中国人等の外国人観光客であると主張する。この点,原告商品の売上げの増加について中国等からの訪日外国人によるインバウンド需要の拡大が寄与していることは前記判示のとおりであるが,上記(1)イ(イ)のとおり,原告商品の平成29年3月及び同年6月な

5 いし同年10月の国内・国外別の販売本数のうち約半数は国内の販売であり,その販売本数や原告商品の宣伝・広告の状況に照らすと,国内における販売数の中には,訪日外国人に対して販売されたもののみならず,日本人の需要者に対して販売されたものも相当程度含まれていたと解するのが相当である。そうすると,原告商品の需要者は,国内の化粧品関係の取引業者及び訪日外国人を含む美容に関心のある女性を中心とした一般消費者であると認めるのが相当である。イ 被告は,原告商品を紹介する雑誌,テレビ番組,ウェブサイト等は,日本人を対象とするものであって,中国人等の外国人がこれらの雑誌等を読んで購買に及んだとは考えられないので,これらの媒体は原告商品の周知性を立証する事実とはなり得ないと主張する。しかし,上記アのとおり,原告商品の需要者には日本人も含まれるのであるから,原告容器等の写真とともに原告商品を紹介する各種雑誌,テレビ番組,ウェブサイト等は,原告容器等が周知性を有することの根拠となり得るというべきであり,また,上記(1)エ(ア)(イ)のとおり,原告商品が,平成28年に中国人をはじめとする訪日旅行者の間で人気急上昇した商品ランキングの「コスメ・美容のTOP5」部門で1位となったことなどによれば,原告商品及びその識別を可能にする原告外箱等は訪日外国人の間においても周知であったと認めるのが相当である。ウ 被告は,雑誌等に掲載されている原告商品の写真に,原告外箱が写ったものがないことを指摘し,原告外箱が需要者の間に広く認識されているということはできないと主張する。しかし,テレビ番組「ワールドビジネスサテライト」において原告外箱及び原告容器の各正面が映像で紹介されたこと,原告外箱及び原告容器のいずれもが写った写真が掲載されているウェブサイトが存在すること(甲

5 34)に加え,店頭に陳列されている原告商品のうち需要者がまず目にするのは外箱であることや,原告商品の販売数,拭き取り化粧水分野の市場占有率等にも照らすと,原告外箱は,原告容器と同様,被告商品の販売開始時期までの間に需要者の間で広く知られるようになっていたと認めるのが相当である。エ 被告は,拭き取り化粧水は,化粧水の一分野にすぎず,その販売金額が全化粧水に占める割合も6.9%にとどまるから,原告商品の化粧水全体に対する市場占有率は低いと主張する。しかし,前記認定事実(1)ウ(イ)(エ)のとおり,平成27年度以降,インバウンド需要で原告商品の売上げが伸びたことから,「拭き取り」用途の商品の構成比も増加していることや,原告商品が属する1000~2000円未満の価格帯の化粧水の平成26年から平成30年にかけての販売金額等が,原告商品の販売実績が大幅に拡大したことが起因して拡大したことなどによれば,原告商品は,平成29年10月頃には,化粧水分野全体としてみても需要者に広く知られるようになっていたというべきである。これに加え,原告商品の化粧水のうち「拭き取り」分野における市場占有率及びその順位並びに原告商品の販売本数等も考慮すると,原告商品並びにその外箱及び容器は,需要者の間に広く認識されていたものというべきである。オ 被告は,原告商品の国内における販売本数が少なく,また,各種の化粧水のランキングに原告商品が入っていないと主張する。しかし,原告商品の販売数のうち約半数が国内の販売であることは前記判示のとおりであり,原告商品の宣伝・広告及びその際の原告容器等の画像の掲載状況,原告商品の販売数及びその推移,並びに原告商品の市場占有率等に照らすと,原告商品が被告の挙げるウェブサイト等において上位にランキングされていないとしても,原告外箱及び原告容器が需要者の間

5 で周知であるとの上記結論を左右するものではない。カ したがって,被告の上記各主張は理由がない。

2 争点2(外箱及び容器の類否)について(1) 商品等表示の類似性ある商品等表示が不競法2条1項1号にいう他人の商品等表示と類似のものか否かを判断するに当たっては,取引の実情のもとにおいて,取引者又は需要者が両表示の外観,称呼又は観念に基づく印象,記憶,連想等から両表示を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるか否かを基準として判断するのが相当である(最高裁昭和57年(オ)第658号同58年10月7日第二小法廷判決・民集37巻8号1082頁,最高裁昭和56年(オ)

第1166号同59年5月29日第三小法廷判決・民集38巻7号920頁

参照)。(2) 原告外箱と被告外箱の類否ア 原告外箱と被告外箱の共通点前提事実及び証拠(甲1,2)によれば,原告外箱の外観は,別紙原告商品目録記載のとおりであり,被告外箱の外観は,別紙被告商品目録記載のとおりであると認められるところ,原告外箱と被告外箱の共通点は,以下のとおりである。(ア) 正面a 全体(a) 全体の色彩は半鏡面状で,背景色が赤色からオレンジ色までの暖色系のグラデーションとなっている点(b) 上方と下方に横方向の二本の赤色ラインが配置されている点(c) 左右の端の折り目の部分には上面から底面に至るまで,赤色ラインが配置された部分を除いて銀色の縁がある点b 上部

5 (a) 赤色ラインには銀色の縁があり,同ラインが上面から外箱の高さの3分の1程度下の位置に配置されている点(b) 赤色ライン上には白色で商品の種類が記載されている点(c) 赤色ラインより上の部分に銀色のアルファベットでブランド名や「Keana Lotion(KEANA LOTION)」との表現を含む商品名が記載されている点c 中央部(a) 薄く小さな丸状の図柄が配置されている点(b) 上記(a)の図柄のほかは目立つ文字又は図柄はなく,そのほとんどが赤色を始点としたグラデーションの背景色となっている点d 下部(a) 赤色ラインには銀色の縁がなく,同ラインが底面から外箱の高さの6分の1程度上の位置に配置されている点(b) 赤色ライン上には白色でアルファベットが記載されている点(イ) 背面a 半鏡面状ではなく,背景色を白とする点b 左右の端の折り目の部分には上面から底面に至るまで銀色の縁がある点c 効能や成分等の商品の説明が全体にわたって記載されている点d 中央からやや上部の位置に,白抜き文字で商品の説明が記載された赤色の四角形の領域があり,その領域の下には,成分ごとにグループ分けされた成分表示の記載がある点(ウ) 左右側面部a 半鏡面状であり,背景色を正面部のグラデーションの終点の色とする点b 左右の端の折り目部分には上面から底面に至るまで銀色の縁がある

5 点c バーコード,成分,会社情報,使用上の注意,容器包装リサイクル法に基づく紙製容器包装の識別表示が配置されている点イ 原告外箱と被告外箱の相違点原告外箱と被告外箱の相違点は,以下のとおりであると認められる。(ア) 正面a 全体背景色について,被告外箱の方が原告外箱よりも赤みが強い点b 上部(a) 原告外箱には,十字型のロゴマークの表記があり,その下にブランド名の「Labo Labo」の文字がサンセリフ体で記載されているのに対し,被告外箱には,十字型のロゴマークの表記がない上,ブランド名の「Juliette Ray」の文字が筆記体で記載されている点(b) 原告外箱では,ブランド名「Labo Labo」の下に商品名の一部「Super-Keana Lotion」の文字が大文字小文字を混在させて記載されているのに対し,被告外箱では,ブランド名「Juliette Ray」の下に,商品名の一部「KEANA LOTION」の文字が全て大文字で記載されている点c 中央部(a) 原告外箱には,ブランド名が記載されているのに対し,被告外箱には,ブランド名の記載がなく,また,原告外箱と異なり,六角形の模様が記載されている点(b) 原告外箱には,下方の赤色ラインより上の部分に「Dr. Ci:Labo」のロゴマーク及び「produced by Dr.Ci:Labo」の文字が銀色で記載されているのに対し,被告外箱には,そのような記載はなく,下方の赤色ラインの近くに至るまで六角形の模様が記載されている点

5 d 下部(a) 原告外箱では,赤色ライン上に「Simple & Natural」の文字が大文字小文字を混在させて記載されているのに対し,被告外箱では,赤色ライン上に「ALL SKIN TYPES」の文字が大文字のみで記載されている点(b) 原告外箱では赤色ラインの下に文字の記載はないが,被告外箱では同ラインの下に「アルコールフリー パラペンフリー」との文字が白色で記載されている点(イ) 背面a 原告外箱では,中央からやや上部にある赤色の四角形の領域より上の最上段に赤の文字で,またその下の段に赤と黒の文字で商品の機能・効能の説明が記載されているのに対し,被告外箱では,最上段に黒色で商品名と容量が記載されている点b 赤い四角形の領域の形が,原告外箱では,角丸四角形であるのに対し,被告外箱では,長方形である点c 赤色の四角形の領域内にある説明が,原告外箱では,おすすめの使用方法であるのに対し,被告外箱では,商品の効能である点d 被告外箱では,原告外箱と異なり,赤色の四角形の領域の下に,黒色で天然エキスの内容の注意書きが記載されている点e 赤色の四角形の領域の下にある成分表示のグループの数が,原告外箱では,3つであるのに対し,被告外箱では,2つである点f 成分表示のグループごとの記載につき,原告外箱では,角丸四角形の枠でグループ化されているのに対し,被告外箱では,リボン形のタイトルの下にグループ化されている点g 成分表示の記載の配置が,原告外箱では,ほぼ最下段まで配置されているのに対し,被告外箱では,上面から外箱の高さの3分の1の位

5 置から3分の2の位置までに配置され,その下には使用方法や「MADEIN JAPAN」の記載がある点ウ 類否判断(ア) 原告商品及び被告商品が店頭で販売される場合には,外箱の正面が需要者から見える形で陳列されることが通常であること(甲56)に照らすと,両商品の外箱のうち商品の自他識別機能又は出所識別機能を果たす中心的な部分は,その正面のデザインであると考えられる。(イ) 原告外箱の正面のデザインは,①全体にわたり背景色が赤色からオレンジ色までの暖色系のグラデーションとなっており,文字や図柄が上下に配置され,中央部には目立つ文字や図柄が配置されていないこともあって,暖色系のグラデーションが需要者に強い印象を与える点,②上方と下方に横方向の二本の赤色ラインが目立つように配置されており,特に,上面から外箱の高さの3分の1程度下の位置にある赤色ラインには銀色の縁取りがあり,上下方向のグラデーションとの対比ともあいまって,需要者の目を惹く点に特徴があると認められる。原告外箱と被告外箱の正面のデザインの共通点は,上記認定のとおりであるところ,これによれば,被告外箱は,上記①及び②の特徴をいずれも備えており,原告外箱のデザインと類似しているとの印象を与えるというべきである。この点,被告は,化粧品の分野では赤色を採用するのは通常であり,外箱又は容器が赤系の色彩であることは商品等表示を構成する要素とならないと主張し,その証拠として乙1を挙げるが,乙1に挙げられている化粧品の外箱及び容器の色彩やデザインは原告商品の色彩やデザインとは相当程度異なるものであり,原告外箱及び原告容器の色彩やデザインが他の化粧品にもよく見られるありふれたものであるということはできない。

5 (ウ) 被告は,両商品の外箱のデザインに関する相違点を考慮すると,被告外箱と原告外箱とは類似していないと主張するが,両商品の外箱の正面部分におけるデザインは,上記認定のとおり,背景色の色合い(赤み)の違い,文字の表記方法,字体及び内容,中央部の薄い色の模様の有無,下部における白色での文字の記載の有無など,需要者に強い印象を与えることのない点において相違するにとどまり,両商品の外箱が類似するとの上記結論を左右しない。また,被告は,外箱の背面及び左右側面部における差異も主張するが,同各部分に係る相違点は,店頭に陳列された状態において需要者の目に触れるものではないので,これらの部分における相違点は,外箱の類否判断に影響を及ぼさない。(エ) したがって,両商品の外箱のデザインは類似していると認められる。(3) 原告容器と被告容器の類否ア 原告容器と被告容器の共通点前提事実及び証拠(甲1,2)によれば,原告容器の外観は,別紙原告商品目録記載のとおりであり,被告容器の外観は,別紙被告商品目録記載のとおりであると認められるところ,原告容器と被告容器の共通点は,以下のとおりである。(ア) 正面が,全体的にオレンジ色を帯びた暖色系の色である点(イ) 正面上方と下方に横方向の二本の赤色ラインが配置されている点(ウ) 正面上方の赤色ラインには銀色の縁があり,同ラインが中心からやや上の位置に配置されている点(エ) 正面下方の赤色ラインには銀色の縁はなく,同ラインが底面よりやや上の位置に配置されている点(オ) 正面上方の赤色ラインの上に,ブランド名や「Keana Lotion(KEANALOTION)」を含む商品名が記載されている点

5 (カ) 正面上方の赤色ライン上に文字が白色で記載され,正面下方の赤色ライン上にも文字が記載されている点イ 原告容器と被告容器の相違点(ア) 正面の色につき,被告容器の方が原告容器よりも赤みが強い点(イ) キャップの色が,原告容器は銀色であるのに対し,被告容器は白色である点(ウ) 容器の種類が,原告容器は透明の容器であるのに対し,被告容器は反射性の不透明の容器である点(エ) 背面の色が,原告容器は正面と同じオレンジ色を帯びた暖色系の色であるのに対し,被告容器は銀色である点(オ) 容器の文字表示に違いがある点ウ 類否判断(ア) 原告商品と被告商品の容器は,外箱に収められた状態で販売されているため,需要者がその容器を店頭で直接目にするものではないが,外箱から取り出した状態で需要者がまず目にするのは容器の正面であると考えられ,原告容器の写真や映像付きで原告商品を紹介する雑誌やウェブサイト,テレビ番組では,いずれも原告容器の正面が写っているものが使用されていたことにも照らすと,両商品の容器のうち商品の自他識別機能又は出所識別機能を果たす中心的な部分は,その正面のデザインであると考えられる。(イ) 原告容器の正面のデザインは,①全体的にオレンジ色を帯びた暖色系の色となっており,文字や図柄が上下に配置され,中央部には目立つ文字や図柄が配置されていないこともあり,オレンジ色の色合いが需要者に強い印象を与えるデザインとなっている点,②上方と下方に横方向の二本の赤色ラインが目立つように配置されており,特に,上方の赤色ラインには銀色の縁取りがあり,需要者の目を惹く点に特徴があると認め

5 られる。原告容器と被告容器の正面のデザインの共通点は,上記認定のとおりであるところ,これによれば,被告容器は,上記①及び②の特徴をいずれも備えており,原告容器のデザインと類似しているとの印象を与えるものであるというべきである。(ウ) 被告は,両商品の容器のデザインに関する相違点を考慮すると,被告容器と原告容器は類似していないと主張するが,両商品の容器の正面部分におけるデザインは,上記認定のとおり,色合い(赤みの強さ),キャップの色,透明性の程度,背面の色,文字表記など,需要者に強い印象を与えることのない点において相違するにとどまり,両商品の容器が類似するとの上記結論を左右しない。(エ) したがって,原告容器と被告容器のデザインは類似していると認められる。

3 争点3(混同の有無)について前記判示のとおり,原告外箱及び被告容器は商品等表示として需要者の間に広く認識されていると認められるところ,被告外箱及び被告容器が原告外箱及び原告容器と類似していることや被告商品が原告商品と同様に毛穴ケア用の化粧水であることを考慮すると,被告容器及び被告外箱は,原告商品と出所の混同を生じさせるものと認められる。これに対し,被告は,被告容器及び被告外箱に被告商品のブランド名が記載されていることや,ドクターシーラボのロゴや十字形のマークと誤認する要素がないことを理由に,両商品の混同が生じる余地はないと主張するが,原告商品と被告商品の外箱及び容器の類似性の程度に加え,被告ブランドの知名度は必ずしも高くなく,需要者が被告ブランドの表示を見て原告ブランドの商品とは異なると識別することは容易ではないと考えられることなども考慮すると,被告ブランドの表示があることやブランドのマーク表示が付されていることは,

5 出所の混同が認められるとの上記結論を左右するものではないというべきである。

4 争点4(差止め及び廃棄請求の可否)について(1) 営業上の利益の侵害のおそれの有無について被告は,平成30年6月以降,被告商品の販売はしていないものの,被告は,未出荷の被告商品,被告容器に貼るボトルラベルを保管していることなどに照らすと,被告が再度被告商品を販売するなどして,原告の営業上の利益を侵害するおそれはあるものと認めるのが相当である。(2) 廃棄請求について被告は,原告が,被告外箱や被告容器に貼られたボトルラベルの廃棄のほかに,被告容器や被告容器内の液体の廃棄まで求めるのは過大であると主張するが,別紙被告商品目録記載の被告容器に化粧水の入ったものが,被告外箱に詰められて被告商品として存在している以上,外箱,容器及びその内容物である化粧水は一体のものであり,原告が,化粧水も含めて被告商品の廃棄を求めることが過大な請求であるということはできない。(3) 以上によれば,原告が本件で求める差止請求及び廃棄請求は理由がある。

5 争点5(故意又は過失の有無)について(1) 既に説示したとおり,原告外箱及び原告容器は,被告商品が発売された平成29年10月の時点で原告商品の商品等表示として既に周知なものとなっており,被告外箱及び被告容器は,原告外箱及び原告容器と類似し,原告商品と出所の混同を生じさせるものであったところ,被告は,原告と競合する化粧水の製造販売業者であるから,被告外箱及び被告容器の被告商品への使用並びに同商品の販売により,原告の営業上の利益を侵害することを知っていたか,少なくとも知らなかったことにつき過失があったものと認められる。(2) 以上によれば,被告は,原告に対し,不競法4条に基づき,損害賠償責任を負うというべきである。

5 6 争点6(損害額)について(1) 逸失利益について(不競法5条1項に基づく請求)ア 被告商品の譲渡数量(ア) 証拠(乙9~13,23)によれば,被告は,平成29年10月から平成30年5月までの間,被告外箱及び被告容器が使用された被告商品●(省略)●これに対し,原告は,被告が回収済み又は未出荷の被告商品(合計2589本)や未使用のボトルラベル又は外箱(各2991個)を使用して被告商品の販売を継続していた可能性があると主張するが,証拠(乙11,18~22)によれば,被告は,販売済みの被告商品●(省略)●を回収した上で,回収済み及び未出荷の被告商品並びに未使用のボトルラベル及び外箱を被告の物流センターにおいて保管しているものと認められ,これらの商品等を販売又は販売のために使用したと認めるに足りる証拠はない。また,原告は,被告の得意先別商品別売上明細表(乙10)に記載された出荷先のうち,ドン・キホーテを除く企業に対して出荷された数量はいずれも極端に少なく,企業間の取引数量を示すものとは信じ難いと主張するが,得意先別商品別売上明細表の一部の出荷先について事実と異なる販売数量を入力するとは通常考え難く,本件においても,被告がドン・キホーテ以外の出荷先について,その明細表に真実の販売数量より少ない数量を入力したことをうかがわせる証拠もない。さらに,原告は,被告が提出した充填包装作業指図・記録書(乙12)の「ロット番号」欄には「2aj」などと記載され,ファーストロットを示すものが含まれていないので,同作業指図・記録書に記載されている被告商品以外の同様の商品が製造された疑いがあると主張する。これに対し,被告は,「2aj」などの刻印は,内容物を充填した後,容器

5 に刻印した日を意味していると説明し,これに沿う証拠(乙23)を提出するところ,被告の同説明は合理的であり,他に,被告が同作業指図・記録書に記載されている被告商品以外の同様の商品を製造していたと認めるに足りる証拠はない。(イ) 他方,被告は,被告商品の譲渡数量の算定に当たり,被告商品の販売本数から回収本数を控除すべきと主張する。しかし,被告が回収した商品は販売済みのものであり,被侵害者が侵害品譲渡時に商品の販売機会を喪失したことにより受けた損害を回復させるものではないから,侵害品の譲渡数量の算定に当たって,被告商品の譲渡後に回収した本数を控除することは相当ではない。イ 原告商品の単位数量当たりの利益の額(ア) 単位数量当たりの利益の額の意義不競法5条1項所定の「単位数量当たりの利益の額」とは,被侵害者の商品の売上高から,被侵害者において上記商品を製造販売することによりその製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費を控除した限界利益の額のことをいうと解される(知財高裁特別部令和2年2月28日判決(平成31年(ネ)第10003号)参照)。(イ) 販売価格証拠(甲3,91,92)及び弁論の全趣旨によれば,原告商品の販売価格は,●(省略)●であると認められる。(ウ) 控除すべき経費a 証拠(甲93~96)及び弁論の全趣旨によれば,原告商品の1本当たりの製造費用の最大の額は,以下のとおりであり,その合計は●(省略)●であると認められるところ,上記費用は限界利益の算定に当たり,控除すべき費用ということができる。●(省略)●

5 b これに対し,被告は,上記費用のほかに,広告宣伝費を限界利益の算定に当たって控除すべきと主張する。しかし,原告商品の追加販売のために必要となる広告宣伝の具体的な内容を明らかにする証拠はなく,広告宣伝費が,原告商品の製造販売に直接関連して追加的に必要になったということはできない。したがって,原告の上記主張は採用することができない。(エ) 限界利益の額原告商品の限界利益の額は,上記(イ)の販売価格から上記(ウ)の製造費用を控除した●(省略)●となる。ウ 販売能力被告は,原告は,平成29年8月から平成30年4月までの間,容器不足で原告商品の出荷が制限される状況に陥っていたので,この期間における被告商品の譲渡数量である●(省略)●本分は,原告の販売能力を超えるものであると主張する。しかし,被告商品が販売されていた期間において,原告容器の不足が一時的に生じたとの事実は認められるものの(甲51) 原告の第20期, (平成29年8月1日~平成30年3月31日)の出荷数が944万9335本であることによれば,原告は,被告商品の譲渡数量である●(省略)●製造・販売する能力は十分に有していたものというべきである。エ 覆滅事由の存在について(ア) 「被侵害者が販売することができないとする事情」の意義不競法5条1項ただし書における「被侵害者が販売することができないとする事情」とは,不正競争行為と被侵害者の商品の販売減少との相当因果関係を阻害する事情をいい,例えば,同法2条1項1号の不正競争行為によって営業上の利益が侵害された場合においては,①被侵害者と侵害者の業務態様や価格等に相違が存在すること(市場の非同一性),

5 ②市場における競合品の存在,③侵害者の営業努力(ブランド力,宣伝広告),④商品の性能(機能,デザイン等商品等表示以外の特徴)に相違が存在することなどの事情がこれに該当するものというべきである(上記知財高裁特別部判決参照)。そこで,以下,「被侵害者が販売することができないとする事情」として被告が主張する事情について検討する。(イ) 商品名の相違について被告は,商品名の相違を「被侵害者が販売することができないとする事情」として主張するが,「被侵害者が販売することができないとする事情」とは,被告の譲渡数量分について,原告が自らの商品を販売し得たかどうかを問題とするものであって,被告のブランド名が付された商品が販売されることを前提とするものではないので,両商品の商品名が相違していることは,不競法5条1項にいう「被侵害者が販売することができないとする事情」には該当しない。(ウ) 市場の非同一性についてa 需要者の相違について被告は,原告商品の購買層は訪日外国人であり,被告商品の購買層は国内の若年女性層であるので,対象とする需要者が異なると主張する。しかし,原告商品の需要者が訪日外国人に限られないことは前記判示のとおりであり,原告商品が掲載された雑誌にも「 CanCam」 ,「steady.」,「nicola」など国内の若年女性層を読者層に含むファッション雑誌が含まれることに照らすと,両商品が対象とする需要者が異なるということはできない。b 販売態様,販売方法の相違について被告は,原告商品は,インターネットを中心に販売され,国内販売

5 においてもドラッグストアや調剤薬局の販売が中心となっているのに対し,被告商品は,インターネットでの通信販売を一切行っておらず,そのほとんどがドン・キホーテで販売されているので,両商品は販売態様,販売方法が異なると主張する。しかし,証拠(甲56)によれば,原告商品と被告商品は,ドン・キホーテ渋谷本店において,並べて陳列され,販売されていたとの事実が認められるのであって,その販売態様,販売方法が大きく相違するということはできない。また,被告は,原告商品は他の原告の商品とセットでの販売も行われていたのに対し,被告商品は単品での販売しか行っていないと主張するが,原告商品も単体で販売されていたのであるから,この点をもって,販売態様又は販売方法が異なるということはできない。c 価格の相違について被告は,原告商品は1400円で販売されているのに対し,被告商品の販売価格は原告商品の半値以下であることから,その購買層が異なると主張する。この点,証拠(甲3,31,91,92,乙10,16)及び弁論の全趣旨によれば,原告商品の平成30年5月までの店頭価格は1200円であるのに対し,被告商品のドン・キホーテでの店頭価格は,500~598円であったと認められるものの,その価格帯はいずれも若年女性層が日常的に使用する化粧水として購入可能な範囲内であり,両商品の価格差によりその購買層が大きく異なるということはできない。(エ) 市場における競合品の存在について被告は,原告商品には同種の競合品,しかも同系色の色彩やデザインの外箱や容器が使用された商品(乙1)が多く存在すると主張する。

5 しかし,被告が原告商品の競合品であると主張する化粧品(乙1)の外箱及び容器のデザインは原告商品の外箱及び容器とは異なり,原告商品と混同が生じるほど外箱及び容器が類似している化粧水は,被告商品以外に存在しない。そうすると,化粧水市場に原告商品と同種の競合品が存在するとしても,被告商品が販売されなかったとすれば,その譲渡数量分を原告商品が代替し得たものというべきである。(オ) 被告の営業努力について被告は,被告商品の販売はその営業努力が寄与していると主張するが,被告の営業力が原告の営業力を凌駕し,原告の営業力をもってしては被告商品の譲渡数量を販売し得ないなどの事情が存在するとは認められない。(カ) 商品の分類・使用方法,成分・品質の相違について被告は,被告商品が,原告商品のような拭き取り化粧水ではなく,肌を引き締めることなどを主目的とする収れん化粧水であり,成分も異なることから,両製品は市場において相互補完する関係にはないと主張する。しかし,原告商品と被告商品とは,いずれも毛穴ケア用の化粧水であり,各種雑誌や原告による宣伝の中で,「開いた毛穴をキュッと引き締めます。」(甲3),「毛穴を引き締め」(甲15の1)などの商品説明があることからも明らかなように,原告商品にも,素肌の引締め効果はあるものと認められる。このような用途,効能の共通性に照らすと,原告商品と被告商品が化粧水の中の分類を異にし,その成分に差異があるとしても,両商品は化粧水市場における競合品であるというべきであり,市場において相互補完的な関係にあったものというべきである。(キ) 小括

5 以上によれば,被告の譲渡数量の全部又は一部を原告が販売することができないとする事情があるということはできない。オ まとめ不競法5条1項の算定による原告の逸失利益の額は,上記アの被告商品の譲渡数量に上記イ(エ)の原告商品の単位数量当たりの利益の額を乗じた281万2788円●(省略)●円未満切捨。)となる。(2) 無形損害について原告は,被告の不正競争行為により原告商品に対する信用や価値が毀損され,無形の損害を被ったと主張するが,上記の経済的損害の賠償によりなお填補し得ない信用等の毀損が生じたと認めるに足りる証拠はない。したがって,原告の上記請求は理由がない。(3) 弁護士費用について本件訴訟の難易度,審理の経過,認容する請求の内容その他本件において認められる諸般の事情を考慮すると,被告による不正競争行為と相当因果関係にある弁護士費用相当額は,逸失利益の1割である28万1278円とするのが相当である。

(4) まとめ原告の損害額は,合計で309万4066円となる。

7 結論以上によれば,原告の請求は,主文掲記の限度で理由があるから,その限度で認容し,その余は理由がないから棄却することとし,主文第2項に係る仮執行宣言は相当でないからこれを付さないこととして,よって,主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第40部

裁判長裁判官

佐 藤 達 文

裁判官

三 井 大 有

裁判官

齊 藤 敦

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