ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 令和2(ワ)8061 商標権侵害差止請求
| 裁判所 | 大阪地方裁判所大阪地方裁判所 |
|---|---|
| 裁判年月日 | 令和3年9月27日 |
| 事件種別 | 民事 |
| 当事者 | 原告株式会社WisteriaKyoto 被告pudことP1 |
| 法令 |
商標権 |
| キーワード | 商標権14回 差止10回 侵害5回 実施1回 |
| 主文 | 1 被告は,株式会社メルカリがインターネット上で運営するオンラインフリー 2 訴訟費用は被告の負担とする。 |
| 事件の概要 | 1 本件は,後記登録商標(以下「本件商標」という。)に係る商標権(以下「本 件商標権」という。)を有する原告が,被告がオンラインフリーマーケットサービ ス「メルカリ」上に開設したサイトに表示した別紙被告標章目録記載1又は2の標 章(以下,同目録記載の番号順に「被告標章1」などという。)が本件商標と同一 ないし類似し,また,上記サイトにおいて被告が販売する巾着型バッグ(以下「被 告商品」という。)は本件商標権の指定商品と同一であるとして,本件商標権に基5 づき,上記サイトにおける被告標章1又は2の表示行為の差止め(商標法(以下「法」 という。)36条1項)を求める事案である。 |
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令和3年9月27日判決言渡 同日判決原本交付 裁判所書記官
令和2年(ワ)第8061号 商標権侵害差止請求事件
口頭弁論終結の日 令和3年7月27日
判 決
原告 株式会社Wisteria Kyoto
同訴訟代理人弁護士 伊原友己
同 並山恭子
同 山本由利子
同 橋本祐太
被告 pudこと P1
同訴訟代理人弁護士 松居智子
同 中狹和孝
主 文
1 被告は,株式会社メルカリがインターネット上で運営するオンラインフリー
マーケットサービス「メルカリ」上に被告がその製造に係る巾着型バッグ等の商品
を販売するために開設したサイトにおいて,別紙被告標章目録記載1の標章を表示
してはならない。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求
被告は,株式会社メルカリがインターネット上で運営するオンラインフリーマーケットサービス「メルカリ」上に被告がその製造に係る巾着型バッグ等の商品を販売するために開設したサイトにおいて,別紙被告標章目録記載1又は2の標章を表示してはならない。
第2 事案の概要
1 本件は,後記登録商標(以下「本件商標」という。)に係る商標権(以下「本件商標権」という。)を有する原告が,被告がオンラインフリーマーケットサービス「メルカリ」上に開設したサイトに表示した別紙被告標章目録記載1又は2の標章(以下,同目録記載の番号順に「被告標章1」などという。)が本件商標と同一ないし類似し,また,上記サイトにおいて被告が販売する巾着型バッグ(以下「被
5 告商品」という。)は本件商標権の指定商品と同一であるとして,本件商標権に基づき,上記サイトにおける被告標章1又は2の表示行為の差止め(商標法(以下「法」という。)36条1項)を求める事案である。2 前提事実(争いのない事実又は掲記の証拠ないし弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1) 当事者ア 原告は,アパレル製品・日用品雑貨等の企画・デザイン・製造・販売等を業とする株式会社である。イ 被告は,少なくとも本件訴えの提起まで,「pud」の名称により,以下のウェブサイト(以下,これらを一括して「被告サイト」という。)において,その製造する被告商品等の商品を販売していた者である。・https://www.mercari.com/jp/u/646211599/(甲5)・スマートフォン向けアプリ「メルカリ」内における別紙出品情報画面記載の被告の販売ページ(甲6)
(2) 本件商標権原告は,以下の商標権を有する(甲1,2)。登録番号 商標登録6232133号出願日 平成31年4月18日登録日 令和2年3月4日商品及び役務の区分 第18類指定商品 かばん類,袋物登録商標(標準文字) シャルマントサック
(3) 被告の行為被告は,被告サイトで被告商品を含む商品を販売していたところ,その際,個別商品の紹介ページに,検索用のハッシュタグを付した「#シャルマントサック」(被告標章1)なる表示をしていた。
5 また,被告サイトにおいては,商品の写真に加え,価格や出品者名,商品の色や素材,サイズ等に関する説明がされていた。利用者は,被告サイト上の「購入画面に進む」とのボタンをクリックすることにより商品の購入手続に進むことができた。3 争点
(1) 被告標章1又は2の「業として」の使用の有無及び商標的使用の有無(争点1)
(2) 差止めの必要性(争点2)4 争点に関する当事者の主張
(1) 被告標章1又は2の「業として」の使用の有無及び商標的使用の有無(争点1)(原告の主張)ア 被告は,被告サイトにおいて,被告商品を含む多数の商品を1年以上にわたって販売しており,業としてこれを行っている。イ 被告が被告サイトで販売する巾着型バッグ(被告商品)は,本件商標権の指定商品と同一である。ウ 本件商標と被告サイトの表示との類否(ア) 被告サイトの「#シャルマントサック」なる表示は,「#」部分と「シャルマントサック」部分とが一連一体の標章(被告標章1)又は前者を除外した後者のみの標章(被告標章2)として把握し得る。(イ) 被告標章1として把握した場合,被告標章1は,「#」(ハッシュタグ)の構成と「シャルマントサック」の構成が一連一体となったものである。このうち,「#」部分は検索手段として付されたものであって,特定の意味を有するものではない。他方,「シャルマントサック」部分は,外観,称呼及び観念(原告の製造販売する巾着型バッグ製品)のいずれにおいても,本件商標と同一である。したがって,本件商標と被告標章1は,同一又は類似する。(ウ) 被告標章2として把握した場合,被告標章2は,外観,称呼及び観念のいずれにおいても,本件商標と同一である。エ 被告サイトの表示(前記2(3))は,被告商品に関する広告といえるから,被
5 告サイトにおける被告標章1又は2の表示は,商品又は役務に関する広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為(法2条3項8号)として,商標の使用に当たる。オ 被告標章1又は2が商標的に使用されていること(ア) 被告標章1について「#」部分は,ウェブサイト及びソーシャルネットワーキングサービス(SNS)上で,当該部分に続く文字列が示すテーマに関する情報の所在場所を表す機能を有するにとどまらず,商品自体の情報を示すものでもあり得る。被告標章1は,他のウェブサイトを閲覧している「シャルマントサック」に関心を寄せる需要者が「シャルマントサック」という文字列によって検索した際に被告サイトが検索結果として表示されるための仕組みのものであるから,「シャルマントサック」という標章の顧客吸引力を利用して需要者を被告サイトに誘引するものといえる。また,誘引されて被告サイトを閲覧している需要者が,被告標章1に接すると共に被告商品の画像に接することにより,被告商品を原告の商品であるかの如く受け止めるなどすることによって,原告の顧客が奪われる結果が招来されることとなる。したがって,被告サイトにおいて,被告標章1の表示は,出所表示機能を果たす態様によるものであり,商標的使用といえる。(イ) 被告標章2について被告標章2の表示についても,被告標章1の表示と同様に商標的使用といえる。(被告の主張)ア 否認又は争う。イ 被告は,パートタイム従業員としての勤務又は主婦業に従事しており,その余暇を利用して,趣味であるバッグを製作し販売していたにすぎず,「業として」販売していたものではない。ウ 被告は,被告サイトにおいて,被告標章1の表示を使用しており,被告標章2の表示は行っていない。
5 エ 「シャルマントサック」との文字列からは何らかの観念が生じるものではなく,これに接した多くの者が原告の商品を観念するとはいえない。また,被告サイトにおいては,ハンドメイド品であることが明記されており,被告サイトを閲覧する需要者において,被告商品をもって原告の商品と受け止めることはない。オ 被告標章1の表示は商標的使用といえないことハッシュタグ「#」は,後に続く文字列が表す特定の商品又はテーマに関連する情報を結び付けるものであり,そのような情報のウェブサイト上又はSNS上の所在場所を表すものである。被告標章1の表示も,「シャルマントサック」に関連する情報の所在場所を示すものに過ぎず,被告商品の商標として使用しているものではない。すなわち,被告は,被告サイトにおいて,被告標章1の表示だけでなく,「#ドットバッグ」等のハッシュタグも使用し,その後(ハッシュタグの直下)に「好きの方にも…」という文字を記載するという態様でハッシュタグを使用している。このような使用態様は,ハッシュタグによりタグ付けした「ドットバッグ」,「シャルマントサック」等を「好きな方」に向けて,ハッシュタグによりタグ付けされた事項に関連する情報が被告サイトに存在することを表示しているものといえる。このようなハッシュタグの使用により,被告は,上記情報の所在場所の1つが被告サイトの商品販売ページであることを示し,メルカリユーザーが検索する際の便宜を図っているのであり,被告標章1の表示を被告商品の出所を表示する態様により使用してはいない。
(2) 差止めの必要性(争点2)(原告の主張)ア 被告による被告サイトにおける被告標章1又は2の表示は,指定商品についての登録商標と同一又はこれに類似する商標の使用であり,本件商標権を侵害するものであるから,その差止めを求める。イ 被告は,原告の商品の模倣商品等を製作し,被告標章1又は2を被告サイト上に掲げることにより,原告の商品の需要者層に向けて被告商品を販売してきたも
5 のであるから,顧客維持のため,今後被告サイト上に被告標章1又は2を掲げ,侵害行為を継続する蓋然性は高い。また,現時点で被告サイトに被告標章1又は2を表示していないとしても,再度これを表示させることは極めて容易である。さらに,商品の出品に係るページは削除されているものの,メルカリ上に「pud」名のアカウントは存在しており,フォロワーも636名(令和3年2月1日時点)いることから,被告が将来的に当該アカウントを使用して自身の製作に係る商品を販売しないとはいえない。したがって,依然として差止の必要性は存在する。(被告の主張)ア 否認ないし争う。イ 被告は,既に被告標章1を表示していた被告サイトの全ページを削除している。また,被告は,趣味であるバッグの製作を行うに当たり,その作成に要する費用を賄う目的で被告サイトでの販売を行っていたにすぎないことから,訴訟の当事者となるリスクが顕在化して以降も被告標章1又は2を被告サイトで使用する動機もメリットもない。したがって,被告が現在及び将来において被告標章1又は2を使用するおそれはない。
第3 当裁判所の判断
1 被告サイトに表示された被告の標章
証拠(甲5,6)によれば,被告サイト(ウェブサイト及びアプリとも)には,「#シャルマントサック」なる表示が存在することが認められる。当該表示は,記号「#」の部分と片仮名「シャルマントサック」の部分からなるものと理解されるが,両者間にスペースはなく,また,フォントサイズや書体等に顕著な差異は見られないといった表示態様に鑑みると,両部分を分離するのではなく,一連一体の「#シャルマントサック」すなわち被告標章1として把握するのが相当である。
2 被告標章1又は2の「業として」の使用の有無及び商標的使用の有無(争点
5 1)について
(1) 「業として」の使用の有無
「業として」(法2条1項)とは,反復継続して行うことを意味し,営利目的であるか否かは問わない。ここで,証拠(甲5,6)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,被告サイトにおいて,少なくとも本件訴え提起まで1年以上にわたり,被告商品を含む複数の商品を販売していたことが認められる。したがって,被告は,「業として」商品を譲渡する者に当たる(法2条1項1号)。これに反する
(被告の主張)
は採用できない。
(2) 本件商標権の指定商品と被告商品との類否
被告商品は,被告サイトにおいて販売されていたものであるところ(前記第2の2(3)),巾着型バッグである被告商品は,本件商標権の指定商品「かばん類,袋物」と同一といえる。
(3) 本件商標と被告標章1との類否
ア 商標の類否は,同一又は類似の商品に使用された商標が外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべきであり,かつ,その商品の取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づいて判断すべきものである。イ 類否(ア) 外観本件商標と被告標章1との外観上の差異は,被告標章1に含まれる記号部分「#」の有無のみであり,少なくとも類似といってよい。(イ) 称呼被告標章1の記号部分は一見して明らかに記号であるため,特定の称呼を生じることはないと思われる。そうすると,本件商標と被告標章1とは,称呼において同一であると認められる。仮に上記記号部分につき「ハッシュ」ないし「ハッシュタグ」又は「シャープ」の
5 称呼を生じると考えても,本件商標と被告標章1とは片仮名部分において共通する
ことから,なお両者は称呼において類似するといえる。(ウ) 観念弁論の全趣旨によれば,本件商標の「シャルマントサック」は造語であると認められるところ,これは,取引者及び需要者にとって特定の意味を持つ単語とは理解されない(なお,この点について,原告は,原告の商品が人気ブランドであることに鑑み原告の商品を観念させると主張するが,当該片仮名部分から取引者及び需要者(一般消費者が想定される。)が原告の商品を直ちに想起すると認めるに足りる証拠はない。)。このことは,被告標章1の片仮名部分についても同様である。 他方,被告標章1の記号部分は,上記のとおり一見して明らかに記号であるため,特定の観念を生じることはないと思われる。そうすると,本件商標と被告標章1とは,いずれも,特定の観念を生じるものではない。なお,被告サイトが開設されているメルカリにおける具体的な取引状況(甲7,10)をも考慮すると,被告標章1の記号部分は,商品等に係る情報の検索の便に供する目的で,当該記号に引き続く文字列等に関する情報の所在場所であることを示す記号として理解されるものともいえる。そうすると,被告標章1は,特定の観念を生じない片仮名部分「シャルマントサック」なる商品等に係る情報の所在場所との観念を生じるとも考えられる。(エ) 小括これらの事情を総合して全体的に考察すると,本件商標と被告標章1は,類似するものと見るのが相当である。これに反する
(被告の主張)
は採用できない。
(4) 使用について
ア 被告サイトは,そこで被告商品を含む商品が表示され,販売されていることに鑑みると,被告の商品に関する広告を内容とする情報を電磁的方法により提供するものといえる。したがって,このような被告サイトに被告標章1を表示することは,商標の「使用」に当たる(法2条3項8号)。
5 イ 商標的使用について
被告は,被告標章1につき,需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる態様により使用されていない,すなわち商標的使用がされていない旨を主張する。しかし,前記のとおり,オンラインフリーマーケットサービスであるメルカリにおける具体的な取引状況をも考慮すると,記号部分「#」は,商品等に係る情報の検索の便に供する目的で,当該記号に引き続く文字列等に関する情報の所在場所であることを示す記号として理解される。このため,被告サイトにおける被告標章1の表示行為は,メルカリ利用者がメルカリに出品される商品等の中から「シャルマントサック」なる商品名ないしブランド名の商品等に係る情報を検索する便に供することにより,被告サイトへ当該利用者を誘導し,当該サイトに掲載された商品等の販売を促進する目的で行われるものといえる。このことは,メルカリにおけるハッシュタグの利用につき,「より広範囲なメルカリユーザーへ検索ヒットさせることができる」,「ハッシュタグ機能をメルカリ上で使うと使わないでは,商品閲覧数や売り上げに大きく差が出ます」などとされていること(いずれも甲7)からもうかがわれる。また,被告サイトにおける被告標章1の表示は,メルカリ利用者が検索等を通じて被告サイトの閲覧に至った段階で,当該利用者に認識されるものである。そうすると,当該利用者にとって,被告標章1の表示は,それが表示される被告サイト中に「シャルマントサック」なる商品名ないしブランド名の商品等に関する情報が所在することを認識することとなる。これには,「被告サイトに掲載されている商品が「シャルマントサック」なる商品名又はブランド名のものである」との認識も当然に含まれ得る。他方,被告サイトにおいては,掲載商品がハンドメイド品であることが示されている。また,被告標章1が同じくハッシュタグによりタグ付けされた「ドットバッグ」等の文字列と並列的に上下に並べられ,かつ,一連のハッシュタグ付き表示の
5 末尾に「好きの方にも…」などと付されて表示されている。これらの表示は,掲載
商品が被告自ら製造するものであること,「シャルマントサック」,「ドットバッグ」等のタグ付けされた文字列により示される商品そのものではなくとも,これに関心を持つ利用者に推奨される商品であることを示すものとも理解し得る。しかし,これらの表示は,それ自体として被告標章1の表示により生じ得る「被告サイトに掲載されている商品が「シャルマントサック」なる商品名又はブランド名である」との認識を失わせるに足りるものではなく,これと両立し得る。これらの事情を踏まえると,被告サイトにおける被告標章1の表示は,需要者にとって,出所識別標識及び自他商品識別標識としての機能を果たしているものと見られる。すなわち,被告標章1は,需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる態様による使用すなわち商標的使用がされているものと認められる。これに反する
(被告の主張)
は採用できない。
(5) 小括
以上より,被告サイトにおける被告標章1の表示行為は,指定商品についての登録商標に類似する商標の使用(法37条1号)に当たり,本件商標権を侵害するものと見なされる。
3 差止めの必要性(争点2)について
現在,被告がなおメルカリに開設したアカウントを維持していること及び被告サイトにおいて被告標章1が使用されていないことは,いずれも当事者間に争いがない。また,甲9によれば,被告のアカウントについては,令和3年2月1日時点で636名のフォロワーが存在することが認められる。これらの事情を踏まえると,被告が被告サイトにおいて商品を販売すること,その際被告標章1を表示することは,依然として容易に実施可能な状態にあると見られる。したがって,被告については,なお本件商標権を侵害するおそれがある者ということができるから,原告は,被告に対し,本件商標権の侵害の予防(法36条1項)
5 として,被告サイトにおける被告標章1の表示行為の差止めを請求し得る。被告は,
差止めの必要性がないとして縷々指摘するけれども,その指摘に係る事情を考慮しても,その主張は採用できない。
第4 結論
よって,原告が選択的に主張する請求のうち,被告標章1の表示行為の差止めを求める請求につき理由があるから,これを認容する。大阪地方裁判所第26民事部裁判長裁判官杉 浦 正 樹裁判官杉 浦 一 輝裁判官布 目 真 利 子
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