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令和7(行ケ)10036審決取消請求事件

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裁判所 請求棄却 知的財産高等裁判所
裁判年月日 令和7年10月20日
事件種別 民事
当事者 原告スターバックスコーポレイション
被告ケンコーマン株式会社
法令 商標権
商標法4条1項11号9回
商標法4条1項15号7回
キーワード 審決15回
無効6回
商標権3回
無効審判2回
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
3 原告のため、この判決に対する上告及び上告受理申
事件の概要 本件は、 商標登録の無効審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である。

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判決文

令和7年10月20日判決言渡

令和7年(行ケ)第10036号 審決取消請求事件

口頭弁論終結日 令和7年8月25日

判 決

原 告 スターバックス コーポレイ

ション

同訴訟代理人弁護士 窪 田 英 一 郎

乾 裕 介

今 井 優 仁

中 岡 起 代 子

本 阿 弥 友 子

鈴 木 佑 一 郎

堀 内 一 成

山 田 康 太

古 橋 和 可 菜

被 告 ケンコーマン株式会社

同訴訟代理人弁理士 蓑 和 田 登

主 文

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

3 原告のため、この判決に対する上告及び上告受理申

立てのための付加期間を30日と定める。

事実及び理由

第1 請求

特許庁が無効2023-890037号事件について令和6年12月17日にした審決を取り消す。

第2 事案の概要

本件は、商標登録の無効審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である。争点は、商標法4条1項11号及び15号該当性である。1 特許庁における手続の経緯等

(1) 被告は、次のとおりの登録第6595964号商標(以下「本件商標」という。)に係る商標権の商標権者である。(甲1。本判決では、特記しない限り書証番号の枝番号の表記を省略する。)登録商標(標準文字):STARBOSS登録出願日:令和4年1月25日登録査定日:令和4年6月14日設定登録日:令和4年8月3日商品及び役務の区分並びに指定商品(以下「指定商品等」という。):

第32類「ビール、清涼飲料、果実飲料、飲料用野菜ジュース、ビール製造用ホッ

プエキス、乳清飲料」

(2) 原告は、令和5年4月28日付けで、本件商標が商標法4条1項11号又は

15号に該当するとして商標登録無効審判を請求した(甲26)。特許庁は、同請求を無効2023-890037号事件として審理を行い、令和6年12月17日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同月26日に原告に送達された(原告のため、出訴期間として90日が附加された。)。

(3) 原告は、令和7年4月22日、本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起し

た。

2 本件審決の理由の要旨

(1) 引用商標

原告が本件商標の商標登録が無効とされるべきとする理由において引用する商標は、別紙引用商標目録記載1~3のとおりである(以下、同目録の番号に応じて「引用商標1」などという。)。また、

(原告の主張)

の全趣旨によると、「STARBUCKS」の欧文字からなり、コーヒー等の提供の役務(以下「原告役務」という。)に使用するもの(以下「引用商標4」といい、引用商標1~4を併せて単に「本件各引用商標」という。)も、原告が本件商標の登録商標が無効とされるべき理由において引用する商標であると認められる。引用商標4は、本件商標の登録出願の日前から、原告役務の出所を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標であって、その状況は本件商標の登録査定時においても継続していたと認められる。他方、引用商標1~3について、原告は、コーヒー飲料等の商品を平成17年からコンビニエンスストア等において販売していることがうかがえるが、当該商品についての販売実績、広告宣伝状況、需要者の評価等が確認できない。証拠に示された写真その他の記載は、原告役務に係る飲食料品の提供に関するもので、原告が運営する店舗「スターバックスコーヒー」(以下「原告店舗」という。)において販売されている商品についての販売状況を示すものとは認められない。そうすると、引用商標1~3が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、その指定商品に属する商品(紅茶やフラペチーノ飲料などの飲料、果実飲料、アルコール等。以下「原告商品」という。)の出所を表すものとして、需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。

(2) 商標法4条1項11号該当性

ア 本件商標は、「STARBOSS」の文字を標準文字で表したもので、当該文字は、一般的な辞書等に載録のない一種の造語といえるものであり、特定の語義を有しない欧文字からなる商標は、我が国において親しまれているローマ字読み又は英語風の読みに倣って称呼するのが自然であるから、当該文字から「スターボス」の称呼を生じ、特段の観念を生じない。イ 引用商標1及び2は「STARBUCKS」の文字をゴシック体で横書きし、引用商標3は「STARBUCKS」の文字を標準文字で表してなるところ、当該文字は一般的な辞書等に載録のない一種の造語といえるものであり、特定の語義を有しない欧文字からなる商標は、我が国において親しまれているローマ字読み又は英語風の読みに倣って称呼するのが自然であるから、当該文字から「スターバックス」の称呼を生じるが、上記(1)のとおり、引用商標1~3は、その指定商品に属する商品の出所を表示するものとして需要者の間に広く認識されているとは認められないから、その指定商品との間で特定の観念を生じないものである。ウ 本件商標と引用商標1~3を比較すると、その外観においては、欧文字の大文字により横書きした構成からなり、語頭の構成文字が「STARB」、語尾の構成文字が「S」である点において共通するが、中間における「OS」と「UCK」の文字の差異を有し、比較的短い文字構成からなる両者の外観の視覚的印象に与える影響は小さいとはいえないから、両者は、外観上、判然と区別し得るものである。称呼においては、本件商標から生じる「スターボス」の称呼と引用商標1~3から生じる「スターバックス」の称呼とは、語頭から3音目までの「スター」の音及び語尾における「ス」の音を共通にし、中間に位置する「ボ」と「バック」の音の差異において相違するところ、「ボ」と「バ」の音は、共に破裂音であり比較的強く発音され、また、母音において前者が(o)であるのに対し、後者が(a)であって比較的近似しない発音である上、後者は促音を伴っているから一層強く発音され聴取される。そうすると、短い音構成からなる両称呼においては、当該相違音が称呼全体に及ぼす影響は小さいものとはいえず、それぞれを一連に称呼するときは語調、語感が異なり、両者は、称呼上、明瞭に聴別し得るものである。観念においては、本件商標及び引用商標1~3からは、共に特定の観念を生じないから、観念において比較することができないものである。そうすると、本件商標と引用商標1~3とは、その外観において判然と区別でき、称呼において明瞭に聴別でき、観念において比較することができないから、外観、称呼及び観念によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すると、両者は、相紛れるおそれのない非類似の商標である。したがって、本件商標は、商標法4条1項11号に該当しない。

(3) 商標法4条1項15号該当性

引用商標4が、原告の業務に係るコーヒーチェーンを表すものとして需要者の間に広く認識されているとしても、上記(2)のとおり、引用商標1~3と同一の文字構成からなる引用商標4についても、本件商標とは非類似の商標である。そうすると、本件商標に係る指定商品の取引者、需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すると、本件商標権者が本件商標をその指定商品について使用しても、取引者、需要者は、本件各引用商標を連想又は想起することはなく、その商品が他人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、商品の出所について混同を生じるおそれはなく、その他、出所の混同を生じるおそれがあるというべき事情は見いだせない。したがって、本件商標は、商標法4条1項15号に該当しない。

第3 原告主張の審決取消事由

1 取消事由1(商標法4条1項11号該当性の判断の誤り)

(1) 外観について

本件審決は、本件商標と引用商標1~3の外観について、中間にある「OS」と「UCK」の文字の差異が、比較的短い文字構成からなる両者の外観の視覚的印象に与える影響は小さいとはいえないとした。しかし、本件商標の指定商品(飲料等)のように限られたスペースに多数の商品が必ずしも正面を向かずに陳列され、迅速に取引される商品では、8文字や9文字からなる構成の商標が、取引者、需要者に瞬時に認識されるものではない。したがって、語頭の「STARB」の5文字が取引者、需要者に与える印象は極めて大きいといえ、本件商標と引用商標1~3は、外観上の類似性は高いといえる。

(2) 称呼について

本件審決は、あたかも「ボス」と「バックス」をそれ単体の商標であるかのように「ボ」と「バ」の音を比較し、本件商標及び引用商標1~3の全体の称呼を十分に検討していない。「STARBUCKS」及び「STARBOSS」は、いずれも英語の複合語であって、前半の語にアクセントが置かれるため、後半の語は弱く発音され、語が文末に置かれる場合には更に弱く発音される。また、カタカナ読みされる場合であっても、「ボ」と「バ」の音は「b」の破裂音において共通しており、この部分が強く発音される。残りの「オ」、「ア」の母音や無声音である「ック」は明確に聴別できるものとはいえない。したがって、本件商標と引用商標1~3は、称呼上の類似性が高いといえる。

(3) 小括

以上のとおり、本件商標と引用商標1~3は、その外観及び称呼において類似しており、各指定商品も類似しているから、本件商標は、商標法4条1項11号に該当するといえ、これと異なる判断をした本件審決には取り消されるべき違法がある。

2 取消事由2(商標法4条1項15号該当性の判断の誤り)

(1) 判断基準

本件審決は、本件商標が本件各引用商標とは非類似の商標であることから、直ちに商標法4条1項15号に該当しないとした。しかし、同号に該当する商標に当たるかは、当該商標と他人の商標の類似性の程度のほか、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情等に照らし、当該商標の指定商品等の取引者、需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断されるべきものである。

(2) 本件商標と本件各引用商標の類似性

前記1の「STARBOSS」と「STARBUCKS」との対比のとおり、本件商標は本件各引用商標に類似する。加えて、後記(3)のとおり、本件各引用商標が原告役務(コーヒー等の提供)のみならず、コーヒーや清涼飲料等の商品の出所を表示するものとしても著名であることからすると、本件各引用商標からは「カフェサービスを提供し、コーヒーや清涼飲料等を販売するスターバックス」の観念が生じ、本件商標からは、「本件各引用商標(STARBUCKS)の関連商標」の観念が生じるというべきである。したがって、本件商標と本件各引用商標の類似性は高いといえる。

(3) 本件各引用商標の著名性

本件審決は、引用商標4が原告役務の出所を表示するものとして需要者の間に広く認識されていると認定したが、次の事実関係によると、引用商標1~3も、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標1~3に係る指定商品の出所を表示するものとして著名であったというべきである。すなわち、原告は、サントリー株式会社(現在はサントリーホールディングス株式会社。以下、いずれについても「サントリー」という。)と提携し、同社とともに、原告の完全子会社であるスターバックスコーヒージャパン株式会社(以下「原告子会社」という。)を通じて、日本のコンビニエンスストア等において、コーヒー飲料のみならず、引用商標1~3が付されたエナジードリンクを含む炭酸飲料等の清涼飲料や果実飲料、乳飲料等多岐にわたる製品を約20年にわたり製造販売しており、これらの製品の販売実績は、令和元年から令和3年にかけて、販売数量が年間●●●個、営業利益では年額●●●円に上っている(甲4、6、7、11、30~32)。また、原告子会社が展開する日本国内の原告店舗において持ち帰り(テイクアウト)される飲料に商標が使用される場合には、当該商標の使用は、商品についての使用に該当するといえるところ(甲34)、原告は、原告子会社を通じて、コーヒー飲料のみならず、引用商標1~3が付された「フラペチーノ」と称するフローズンドリンク(コーヒーを使用するもののほか、果実を使用するものやミルクを使用するものがある。)等の清涼飲料、果実飲料及び乳飲料を販売し、またアルコール飲料も販売している(甲6、35~38)。そして、原告は、各種SNSにおいて多数のフォロワー数を有するところ、上記のとおり原告が販売する各種飲料の情報は、これらのSNSにおいて広範囲に拡散されている(甲8、33、35、39、40)。

(4) 本件各引用商標の独創性

本件各引用商標は、小説「白鯨」の登場人物であるスターバック航海士と、シアトル近くのレーニア山にあった採掘場の名前「スターボ」に由来する造語で、その独創性は極めて高い。また、本件商標の指定商品に類似する指定商品について我が国の登録商標を検索したところ、「STARB」から始まり「S」で終わる一体的な構成であり、称呼が「スター」で始まり「ス」で終わるものは、原告の登録商標のほかは、本件商標を含む被告の登録商標2件にとどまる。このことも、本件各引用商標の独創性を基礎付ける事実といえる。

(5) 本件商標の指定商品等と原告の業務に係る商品等の間の性質、用途又は目的

における関連性の程度上記(3)のとおり、原告は、原告子会社を通じて、原告店舗において原告役務(コーヒー等の提供の役務)を提供するほか、清涼飲料、果実飲料、乳飲料等の各種飲料を販売している。このため、本件商標の指定商品と原告が販売する、又は今後販売することが合理的に予想される商品との関連性は高い。また、被告は、本件商標をエナジードリンクに付して販売しているところ(甲18)、原告もエナジードリンクを販売しているのであるから(甲30、36)、商品間の関連性の程度は非常に高いといえる。

(6) 小括

以上に加え、本件商標と引用商標1~3の各指定商品の取引者、需要者が共通することが明らかであること、原告が多角的経営を行い、また国内のカフェチェーン企業が自社ブランドの各種飲料をコンビニエンスストア等で販売することも多くみられること(甲44、45)、コロンビア、メキシコ、韓国及びタイでは、本件商標を基礎出願とする商標登録が拒絶され、又は取り消されていること(甲16)、近時、外国人訪日客数が増加し、日本在留外国人も多数に上っていること(甲46、47)等の事情を総合すると、本件商標をその指定商品に使用すると、原告との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を含む営業主の業務に係る商品等であると誤信させるおそれがあるというべきである。したがって、本件商標は商標法4条1項15号に該当するといえ、これと異なる判断をした本件審決には取り消されるべき違法がある。

第4 被告の反論

1 取消事由1(商標法4条1項11号該当性の判断の誤り)について

本件商標と引用商標1~3の外観に関して、共通する「STARB」の部分を除く「OSS」と「UCKS」とは、つづりが全く異なっているから、両者が取引者、需要者に与える視覚的印象は全く異なり、外観上、明確に区別することができる。本件商標と引用商標1~3の称呼に関して、日本では、「STARBUCKS」を英語のように最初の音節にアクセントを置いて発音する者は少なく、取引者、需要者は、各音節に均等にアクセントを置いて発音する。同様に、「STARBOSS」についても、「ボス」の部分を弱く発音するということはなく、各音節に均等にアクセントを置いて発音する。したがって、本件商標は、引用商標1~3との対比において、外観上も称呼も明らかに相違する非類似の商標であるから、取消事由1には理由がない。

2 取消事由2(商標法4条1項15号該当性の判断の誤り)について

上記1のとおり、「STARBOSS」と「STARBUCKS」とは明らかに類似しない商標であるから、本件各引用商標の周知性、独創性や、本件各引用商標がハウスマークであるか、多角経営の可能性、商品役務の関連性等の事情を考慮したとしても、本件商標がその指定商品に付されたとしても、これに接した取引者、需要者において、その商品が原告又は原告と何らかの関係のある者の業務に係る商品であると混同するおそれはない。したがって、取消事由2には理由がない。

第5 当裁判所の判断

1 本件各引用商標について

(1) 掲記の証拠及び弁論の全趣旨によると、次の事実が認められる。

原告は、米国シアトルを発祥地としてコーヒーチェーンを経営する企業であり、我が国では、原告子会社(当初は合弁会社)が平成8年から原告店舗を開店し、平成27年には全国47都道府県に原告店舗が展開されるに至り、令和4年9月末時点の国内店舗数は1771店舗に上る。(甲3、4)原告は、原告子会社を通じて、「STARBUCKS」の文字からなる標章を付した原告店舗において、コーヒーをベースとした飲料のほか、「フラペチーノ」と呼ばれるフローズン状飲料、茶や果実をベースとした飲料等に、「STARBUCKS」の文字からなる標章を付した上で販売している。これらの飲料は、店内飲食用に提供されるほか、持ち帰り(テイクアウト)することもできる。(甲4、6、乙1)原告は、サントリーと提携し、同社とともに、原告子会社を通じて、原告店舗での飲料等の提供とは別に、コーヒーをベースとした飲料のほか、エナジードリンク、果実をベースとした飲料等を、「STARBUCKS」の文字からなる標章を付した上で、国内のコンビニエンスストア等で販売しており(甲6、7、11)、その販売個数は、平成31年から令和3年までの3年間で合計●●●●●●●個を超えた(甲30~33)。原告は、フェイスブック、X、インスタグラムといったSNSにおいて、日本語公式アカウントを運営しており、これらのアカウントの令和5年4月時点でのフォロワー数は順に約122万人、約698万人、約354万人である。(甲8)原告子会社の第28期(令和3年10月1日~令和4年9月30日)決算公告によると、同期における原告子会社の売上高は約2539億円、営業利益は約251億円であった。(甲5)

(2) 上記(1)の事実関係によると、「STARBUCKS」の文字からなる本件各

引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、原告の業務に係るコーヒー等の提供(原告役務)の提供のみならず、原告の業務に係るコーヒー、茶、清涼飲料、果実飲料等の飲料商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていたものと認められる。

2 取消事由1(商標法4条1項11号該当性の判断の誤り)について

(1) 商標法4条1項11号について

商標の類否は、対比される両商標が同一又は類似の商品等に使用された場合に、商品等の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、そのような商品等に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべきであり、しかも、その商品等の取引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づいて判断するべきである(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)。

(2) 本件商標と引用商標1~3との類否判断

ア 外観(ア) 本件商標は、「STARBOSS」の文字を標準文字で表してなるものであるのに対し、引用商標1~3は、「STARBUCKS」の文字をゴシック体や標準文字で表してなるものである。両者は、語頭の「STARB」及び語尾の「S」の各文字において共通するものの、その間の「OS」、「UCK」の文字において異なっており、欧文字8文字又は9文字といった比較的短い構成にあっては、その差異は明確であるから、両者は、外観上、判然と区別し得るものである。(イ) 原告は、本件商標の指定商品(飲料等)のように限られたスペースに多数の商品が必ずしも正面を向かずに陳列され、迅速に取引される商品では、8文字や9文字からなる構成の商標は、取引者、需要者に瞬時に認識されるものではないから、語頭の「STARB」の5文字が取引者、需要者に与える印象は極めて大きいと主張する。しかし、本件商標及び引用商標1~3ともに、欧文字が一連一体にまとまりよく構成されたものであって、「STARB」の部分が視覚上分離、独立して看取し得るとか、取引者、需要者に対して強く支配的な印象を与えるということはできないから、原告が主張する取引の実情を勘案しても、両者の外観は判然と区別し得るものである。

(原告の主張)

は採用することができない。イ 称呼(ア) 本件商標は、「STARBOSS」の文字を表したものであって、その文字は一般的な辞書等に載録されていないから、一種の造語といえるものである。特定の意義を有しない欧文字からなる商標は、我が国で親しまれているローマ字読み又は英語風の読みにより称呼するのが自然であるから、本件商標からは、その文字から「スターボス」の称呼を生じる。引用商標1~3は、「STARBUCKS」の文字を表したものであって、その文字は一般的な辞書等に載録されていないから、一種の造語といえるものである。特定の意義を有しない欧文字からなる商標は、我が国で親しまれているローマ字読み又は英語風の読みにより称呼するのが自然であるから、引用商標1~3からは、その文字から「スターバックス」の称呼を生じる。両者は、語頭の「スター」と語尾の「ス」の各音において共通するが、その間の「ボ」、「バック」の音において異なり、比較的短い音数にあって音節数も異なっているから、両者の称呼は、全体の音感において異なっており、明瞭に聴別し得るものである。(イ) 原告は、本件商標と引用商標1~3が、いずれも英語の複合語であって、前半の語にアクセントが置かれるため、後半の語は弱く発音され、語が文末に置かれる場合には更に弱く発音されるとか、カタカナ読みされる場合であっても「ボ」と「バ」の音は「b」の破裂音において共通しており、残りの音は明確に聴別できるものとはいえないと主張する。しかし、特定の意義を有しない欧文字からなる商標は、我が国で親しまれているローマ字読み又は英語風の読みにより称呼され、その場合には、一般に、日本語の音節に倣い、特定の音節にアクセントを置かず、平板な調子で称呼されることが多いといえるから、英単語としてのアクセントによって称呼されることを前提とした

(原告の主張)

は採用することができない。また、上記のとおり特定の音節にアクセントを置かず、平板な調子で称呼される場合には、「ボ」や「バック」の音も同様の調子で称呼されるから、これらの差異が明確に聴別できないとの

(原告の主張)

も採用することができない。ウ 観念(ア) 本件商標を構成する「STARBOSS」の文字は、一種の造語といえるものであって、特定の観念を生じない。引用商標1~3を構成する「STARBUCKS」の文字は、一種の造語といえるものであるが、前記1のとおり、引用商標1~3が、原告の業務に係る原告役務のみならず、原告の業務に係るコーヒー、茶、清涼飲料及び果実飲料等の飲料商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたと認められることから、引用商標1~3からは「コーヒーチェーンであるスターバックス」の観念が生じる。そうすると、両者から生じる観念は明確に区別することができる。(イ) 原告は、取消事由2の主張において、本件商標からは「本件各引用商標(STARBUCKS)の関連商標」の観念が生じると主張する。そこで念のため検討すると、原告や原告子会社が、「STARBUCKS」以外の「STARB」から始まる語を本件各引用商標の関連商標として使用していたとか、そのような語が本件商標の指定商品の取引者、需要者において原告との関係を連想させるものとして認識されているなどの事情はうかがわれないから、本件商標から「本件各引用商標(STARBUCKS)の関連商標」の観念が生じるということはできない。

(原告の主張)

は採用することができない。エ 以上のとおり、本件商標と引用商標1~3とは、その外観、称呼、観念においていずれも相違し、これらによって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すると、両者は、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。

(3) 小括

したがって、本件商標は商標法4条1項11号に該当しないから、

(原告の主張)

する取消事由1には理由がない。

3 取消事由2(商標法4条1項15号該当性の判断の誤り)について

(1) 商標法4条1項15号について

商標法4条1項15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」には、当該商標をその指定商品等に使用したときに、当該商品等が他人の商品等に係るものであると誤信されるおそれがある商標のみならず、当該商品等がその他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれがある商標が含まれる。そして、「混同を生ずるおそれ」の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断するべきである。(最高裁平成10年(行ヒ)第85号同12年7月11日第三小法廷判決・民集54巻6号1848頁参照)

(2) 検討

これを本件についてみると、前記2のとおりの「STARBOSS」と「STARBUCKS」との対比に照らすと、本件商標と本件各引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても異なり、相紛れるおそれのない非類似の商標である。そして、前記2(2)ウ(イ)のとおり、原告や原告子会社が、「STARBUCKS」以外の「STARB」から始まる語を本件各引用商標の関連商標として使用していたとか、そのような語が本件商標の指定商品の取引者、需要者において原告との関係を連想させるものとして認識されているなどの事情はうかがわれない。そうすると、前記1のとおり、本件各引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、原告の業務に係るコーヒー等の提供(原告役務)の提供のみならず、原告の業務に係るコーヒー、茶、清涼飲料及び果実飲料等の飲料商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたと認められること、本件商標の指定商品と原告の業務に係る商品及び役務との関連性が認められ、取引者、需要者も共通すると認められること、我が国を訪問する外国人が増加し、日本在留外国人が多数に上っていること、その他原告が主張する種々の事実関係を考慮したとしても、本件商標をその指定商品に使用すると、当該商品が、原告との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信させるおそれがあるということはできない。

(3) 小括

したがって、本件商標は商標法4条1項15号に該当しないから、

(原告の主張)

する取消事由2には理由がない。

4 結論

以上のとおり、原告が主張する取消事由1及び2にはいずれも理由がなく、本件審決に取り消されるべき違法はないから、原告の請求には理由がない。よって、本件請求を棄却することとし、主文のとおり判決する。知的財産高等裁判所第1部裁判長裁判官本 多 知 成裁判官伊 藤 清 隆裁判官天 野 研 司(別紙)引用商標目録

1 登録第2200242号商標(引用商標1)(甲2の1)

商標の構成:登録出願日:昭和62年12月22日設定登録日:平成元年12月25日書換登録日:平成21年12月24日指定商品等:

第30類「茶、コーヒー、ココア、氷」

第32類「清涼飲料、果実飲料」

2 登録第2646499号商標(引用商標2)(甲2の2)

商標の構成:登録出願日:平成3年9月27日設定登録日:平成6年4月28日書換登録日:平成17年8月17日指定商品等:

第1類「人工甘味料」

第5類「乳糖、乳児用粉乳」

第29類「食用油脂、乳製品」

第30類「みそ、ウースターソース、グレービーソース、ケチャップソース、し

ょうゆ、食酢、酢の素、そばつゆ、ドレッシング、ホワイトソース、マヨネーズソース、焼肉のたれ、角砂糖、果糖、氷砂糖(調味料)、砂糖、麦芽糖、はちみつ、ぶどう糖、粉末あめ、水あめ(調味料)、ごま塩、食塩、すりごま、セロリーソルト、化学調味料、香辛料、アイスクリームのもと、シャーベットのもと」

第31類「ホップ」

第32類「ビール製造用ホップエキス、乳清飲料」

3 登録第4758376号商標(引用商標3)(甲2の3)

商標の構成:STARBUCKS(標準文字)登録出願日:平成15年11月10日設定登録日:平成16年3月26日指定商品等:

第33類「日本酒、洋酒、果実酒、中国酒、薬味酒、アルコール飲料(ビールを

除く)」以 上

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