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令和7(ネ)10040特許権侵害損害賠償請求控訴事件

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裁判所 控訴棄却 知的財産高等裁判所
裁判年月日 令和8年1月26日
事件種別 民事
対象物 携帯情報通信装置及び携帯情報通信装置を使用したパーソナルコンピュータシステム
法令 特許権
特許法134条の21回
特許法123条1項2号1回
特許法104条の31回
キーワード 無効23回
進歩性12回
新規性11回
刊行物10回
無効審判6回
特許権4回
損害賠償2回
実施2回
分割2回
侵害2回
審決1回
主文 1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事件の概要 1 本件は、発明の名称を「携帯情報通信装置及び携帯情報通信装置を使用し たパーソナルコンピュータシステム」とする本件特許に係る本件特許権を有 する控訴人が、被控訴人に対し、原判決別紙被告製品目録記載の被告製品は 本件特許の特許請求の範囲の請求項1に係る本件発明の技術的範囲に属する ものであり、被控訴人が被告製品を販売したことが本件特許権の侵害に当た り、これにより損害を被ったと主張して、不法行為に基づく損害賠償として、 損害金46億1600万円の一部である1000万円及びこれに対する令和 5年2月21日(不法行為後の日)から支払済みまで民法所定の年3%の割 合による遅延損害金の支払を求める事案である。

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判決文

令和8年1月26日判決言渡

令和7年(ネ)第10040号 特許権侵害損害賠償請求控訴事件

(原審・東京地方裁判所令和5年(ワ)第70050号)

口頭弁論終結日 令和7年11月18日

判 決

当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり

主 文

1 本件控訴を棄却する。

2 控訴費用は控訴人の負担とする。

事 実 及 び 理 由

(略語は、本判決で別途定めるもののほか、原判決の例による。)

第1 控訴の趣旨

1 原判決を取り消す。2 被控訴人は、控訴人に対し、1000万円及びこれに対する令和5年2月21日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。

第2 事案の要旨

1 本件は、発明の名称を「携帯情報通信装置及び携帯情報通信装置を使用したパーソナルコンピュータシステム」とする本件特許に係る本件特許権を有する控訴人が、被控訴人に対し、原判決別紙被告製品目録記載の被告製品は本件特許の特許請求の範囲の請求項1に係る本件発明の技術的範囲に属するものであり、被控訴人が被告製品を販売したことが本件特許権の侵害に当たり、これにより損害を被ったと主張して、不法行為に基づく損害賠償として、損害金46億1600万円の一部である1000万円及びこれに対する令和5年2月21日(不法行為後の日)から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。2 原審は、本件特許は、乙8発明(特開2001-197167号公報に記載された発明)に記載された発明であるから新規性を欠き、特許無効審判により無効にされるべきものであるとして、控訴人の請求を全部棄却する判決をしたところ、これを不服とする控訴人が控訴を提起した。

第3 前提事実

5 1 当事者

原判決「事実及び理由」第2の2(1)(2頁)に記載するとおりであるから、これを引用する。

2 本件特許

以下のとおり補正するほかは、原判決「事実及び理由」第2の2(2)ア(2~4頁)に記載するとおりであるから、これを引用する。(原判決の補正)原判決4頁5行目末尾(前提事実(2)アの末尾)に改行の上、以下を加える。「(オ) ソニー株式会社は、特許庁に対し、本件特許の特許請求の範囲の請求項1に係る発明について特許無効審判請求(無効2023-800066)をした。控訴人は、同手続において、令和7年3月13日付けで、同請求項1について別紙「特許請求の範囲(令和7年3月13日付け訂正請求に係る訂正後のもの)」のとおりに訂正することを求める訂正請求をした(以下、同訂正請求に係る訂正を「令和7年訂正」といい、令和7年訂正後の本件発明を「本件訂正発明」という。令和7年訂正の訂正部分は同別紙の下線部分である。甲64、65)。なお、本件口頭弁論終結時において、特許庁は、上記特許無効審判請求について審決をしておらず、控訴人の令和7年訂正に係る訂正請求の許否についても判断していない。」

3 特許請求の範囲及び構成要件の分説

(1) 本件発明

令和7年訂正前の本件特許の特許請求の範囲の請求項1の記載及び構成要件の分説は、原判決「事実及び理由」第2の2(2)イ(4~8頁)のとおりであるから、これを引用する。

(2) 本件訂正発明

令和7年訂正後の本件特許の特許請求の範囲の請求項1の記載は、別紙

5 「特許請求の範囲(令和7年3月13日付け訂正請求に係る訂正後のもの)」

記載のとおりである。また、これを構成要件に分説すると、以下のとおりとなる。なお、下線部分は、令和7年訂正による訂正部分である。A ユーザーがマニュアル操作によってデータを入力し、該入力データを後記中央演算回路へ送信する入力手段と;B 無線信号を受信してデジタル信号に変換の上、後記中央演算回路に送信するとともに、後記中央演算回路から受信したデジタル信号を無線信号に変換して送信する無線通信手段と;C 後記中央演算回路を動作させるプログラムと後記中央演算回路で処理可能なデータファイルとを格納する記憶手段と;D 前記入力手段から受信したデータと前記記憶手段に格納されたプログラムとに基づき、前記無線通信手段から受信したデジタル信号に必要な処理を行い、リアルタイムでデジタル表示信号を生成するか、又は、自らが処理可能なデータファイルとして前記記憶手段に一旦格納し、その後読み出した上で処理する中央演算回路と、該中央演算回路の処理結果に基づき、単一のVRAMに対してビットマップデータの書き込み/読み出しを行い、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を後記ディスプレイ制御手段又は後記インターフェース手段に送信するグラフィックコントローラと、から構成されるデータ処理手段と;E 画面を構成する各々の画素が駆動されることにより画像を表示するディスプレイパネルと、前記グラフィックコントローラから受信したデジタル表示信号に基づき前記ディスプレイパネルの各々の画素を駆動するディスプレイ制御手段とから構成されるディスプレイ手段と;F 外部ディスプレイ手段を備えるか、又は、外部ディスプレイ手段を接続するかする周辺装置を接続し、該周辺装置に対して、前記グラフィッ

5 クコントローラから受信したデジタル表示信号に基づき、外部表示信号

を送信するインターフェース手段と;を備え、G″前記無線通信手段が「本来解像度が前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい動画像データ」を伝達する無線動画信号を受信してデジタル動画信号に変換の上、前記中央演算回路に送信し、前記中央演算回路が該デジタル動画信号を受信して、該デジタル動画信号が伝達する動画像データを処理し、前記グラフィックコントローラが、該中央演算回路の処理結果に基づき、前記単一のVRAMに対してビットマップデータの書き込み/読み出しを行い、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を前記ディスプレイ制御手段又は前記インターフェース手段に送信して、前記ディスプレイ手段又は前記外部ディスプレイ手段に動画像をリアルタイムで表示する機能(以下、「高解像度動画像受信・処理・表示機能」と略記する)を有する、携帯情報通信装置において、H″前記グラフィックコントローラは、前記携帯情報通信装置が前記高解像度動画像受信・処理・表示機能を実現する場合に、前記単一のVRAMから「前記ディスプレイパネルの画面解像度と同じ解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出し、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を前記ディスプレイ制御手段に送信する機能と、前記単一のVRAMから「前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出し、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を前記インターフェース手段に送信する機能と、を実現し、

5 I 前記インターフェース手段は、前記グラフィックコントローラから受

信した「ビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を、デジタルRGB、TMDS、LVDS(又はLDI)及びGVIFのうちのいずれかの伝送方式で伝送されるデジタル外部表示信号に変換して、該デジタル外部表示信号を前記周辺装置に送信する機能を有する、J′ことにより、前記外部ディスプレイ手段に、「前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する動画像」をリアルタイムで表示できるようにした、K ことを特徴とする携帯情報通信装置。

4 被控訴人による被告製品の販売

被控訴人が業として被告製品を販売したこと、被告製品の構成及び被告製品が構成要件の一部を充足することについては、原判決「事実及び理由」第2の2(3)ないし(5)(8~10頁)に記載するとおりであるから、これを引用する。

第4 争点及び争点に関する当事者の主張

1 争点

本件の争点は以下のとおりであり、争点3及争点4は、当審における新主張である。

(1) 被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか(争点1)

ア 構成要件Bの充足性(争点1-1)イ 構成要件Dの充足性(争点1-2)ウ 構成要件G′の充足性(争点1-3)エ 構成要件H′の充足性(争点1-4)

(2) 無効の抗弁の成否(争点2)

ア 乙2文献(特開2000-13776号公報)を主引用例とする進歩性

5 欠如(争点2-1)

イ 乙8文献(特開2001-197167号公報)を引用例とする新規性欠如及び進歩性欠如(争点2-2)ウ 乙22文献(「Powerbook G4 Technology Overview」と題する文献)を引用例とする新規性欠如及び進歩性欠如(争点2-3)エ 本件実機(「Powerbook G4」)により公然実施をされた発明に基づく新規性欠如及び進歩性欠如(争点2-4)オ 分割要件違反及び乙38文献(国際公開2006/068003)を引用例とする新規性欠如(争点2-5)カ 訂正要件違反(争点2-6)キ サポート要件違反(争点2-7)

(3) 訂正の再抗弁の成否(争点3)

ア 令和7年訂正による無効理由の解消の成否(争点3-1)イ 被告製品が本件訂正発明の技術的範囲に属するか(争点3-2)ウ 令和7年訂正が訂正要件を充足するか(争点3-3)

(4) 本件訂正発明に係る無効の抗弁の成否(争点4)

ア サポート要件違反(争点4-1)イ 明確性要件違反(争点4-2)ウ 特開2004-140670号公報(以下「乙70文献」という。)を主引用例とする進歩性欠如(争点4-3)

(5) 損害の発生及びその額(争点5)

2 争点に関する当事者の主張

争点に関する当事者の主張のうち、争点1、争点2及び争点5(原判決における争点3)に関する主張は、原判決「事実及び理由」第3(11~69頁)に記載のとおりであるから、これを引用する。当審における当事者の追加的主張(争点3及び争点4)のうち、後記のとおり当裁判所が判断する争

5 点3-1(令和7年訂正による無効理由の解消の成否)に関する当事者の主

張は、次のとおりであり、その余の追加的主張は、別紙「争点に関する当事者の主張」記載のとおりである。(控訴人の主張)原判決は、本件発明は乙8発明により新規性を欠き、本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものである旨判断したが、令和7年訂正により、乙8発明による新規性欠如及び進歩性欠如の無効理由は解消される。

(1) 乙8発明の認定

乙8文献には、以下の構成を有する乙8″′発明が記載されている。a 各種データの入力を可能とし、入力されたデータをCPU11に送信する操作部20と;b アンテナ12aを有し、送信信号の変調及び受信信号の復調機能を有し、CPU11に制御される通信部12と;c CPU11が実行する各種プログラムを格納するROM14及びユーザ設定データ等を格納するRAM13と;d1 ROM14に格納されたプログラムに基づき、入力された表示データ(外部から取り込んだ画像情報)を、ドットデータとして簡易型液晶表示パネル23やCRT表示器24等の大型ディスプレイに送信するよう制御するCPU11と;d2 CPU11の制御下で、入力された表示データを画像メモリ22に記憶させるとともに、画像メモリ22に記憶させた表示データ(ドットデータ)を電話機本体に設けられた簡易型液晶表示パネル23又はCRT表示器24等の大型ディスプレイに接続されたモニタ端子25に送信する表示制御回路21と;e 表示制御回路21から送られてきた表示データを表示する簡易型液晶表示パネル23と;

5 f CRT表示器24等の大型ディスプレイに接続されており、表示制御

回路21から送られてきた表示データをCRT表示器24等の大型ディスプレイに送信するモニタ端子25とを備え;g1 通信部12が、簡易型液晶表示パネル23では明瞭に表示できない画像情報を受信して復調の上、CPU11が、ドットデータとして簡易型液晶表示パネル23やCRT表示器24等の大型ディスプレイに送信するよう表示制御回路21を制御し、g2 CPU11の制御下で、表示制御回路21が、表示データを画像メモリ22に記憶させるとともに、画像メモリ22に記憶させた表示データ(ドットデータ)を電話機本体に設けられた簡易型液晶表示パネル23又はCRT表示器24等の大型ディスプレイに接続されたモニタ端子25に送信して、簡易型液晶表示パネル23又はCRT表示器24等の大型ディスプレイに画像を表示する機能を有する、携帯電話機において、h 携帯電話機が、簡易型液晶表示パネル23では明瞭に表示できない画像情報を表示する機能を実現する場合に、表示制御回路21は、画像メモリ22に記憶させた表示データ(ドットデータ)をCRT表示器24等の大型ディスプレイに接続されたモニタ端子25に送信し、CRT表示器24等の大型ディスプレイに、簡易型液晶表示パネル23では明瞭に表示できない画像情報を、欠落なく(スクロール操作することなく)表示する機能を実現し、i モニタ端子25は、表示制御回路21から受信した表示データ(ドットデータ)をCRT表示器24等の大型ディスプレイに表示できるようにして送信する機能を有する、j ことにより、CRT表示器24等の大型ディスプレイに、簡易型液晶表示パネル23では明瞭に表示できない画像情報を、欠落なく(スクロール操作することなく)表示できるようにした、

5 k 携帯電話機

(2) 本件訂正発明と乙8″′発明との相違点

本件訂正発明と乙8″′発明との間には、構成要件B、D及びG″が特定する「無線通信手段」と「中央演算回路」の構成について以下の相違点2-5が、構成要件G″及びJ′が特定する「外部ディスプレイ手段における画像の表示」に係る構成について以下の相違点2-6が、構成要件G″及びH″が特定する「グラフィックコントローラ」の構成について以下の相違点2-7が、それぞれ存在する。ア 相違点2-5本件訂正発明は、前記無線通信手段が「本来解像度が前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい動画像データ」を伝達する無線動画信号を受信してデジタル動画信号に変換の上、前記中央演算回路に送信し、前記中央演算回路が該デジタル動画信号を受信して、該デジタル動画信号が伝達する動画像データを処理するのに対して、乙8″′発明では、通信部12は、受信信号の復調機能を有し、CPU11によって制御されることまでは認められるとしても、通信部12は、動画像データを伝達する無線動画信号を受信するものではなく、ましてや、「本来解像度が簡易型液晶表示パネル23の画面解像度より大きい動画像データ」を伝達する無線動画信号を受信するものではなく、さらには、復調した信号をCPU11に送信するものではなく、ましてや、受信した無線動画信号をデジタル動画信号に変換の上、CPU11に送信するものではなく、CPU11は、通信部12から復調した信号を受信するものではなく、ましてや、無線動画信号を変換したデジタル動画信号を受信するものではない点。イ 相違点2-6本件訂正発明は、前記外部ディスプレイ手段に、「前記ディスプレイパ

5 ネルの画面解像度より大きい解像度を有する動画像」をリアルタイムで

表示できるようにしたのに対して、乙8″′発明では、簡易型液晶表示パネル23では明瞭に表示できない画像情報を、CRT表示器24等の大型ディスプレイに、欠落なく(スクロール操作することなく)表示できるようにしたことまでは認められるとしても、動画像をリアルタイムで表示する機能を有していない点。ウ 相違点2-7本件訂正発明は、前記携帯情報通信装置が前記高解像度動画像受信・処理・表示機能を実現する場合に、前記グラフィックコントローラは、前記単一のVRAMから「前記ディスプレイパネルの画面解像度と同じ解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出し、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を前記ディスプレイ制御手段に送信する機能と、前記単一のVRAMから「前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出し、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を前記インターフェース手段に送信する機能と、を実現するのに対して、乙8″′発明では、携帯電話機が、簡易型液晶表示パネル23では明瞭に表示できない画像情報を表示する機能を実現する場合に、表示制御回路21は、画像メモリ22に記憶させた表示データ(ドットデータ)をCRT表示器24等の大型ディスプレイに接続されたモニタ端子25に送信し、CRT表示器24等の大型ディスプレイに、簡易型液晶表示パネル23では明瞭に表示できない画像情報を、欠落なく(スクロール操作することなく)表示する機能を実現することまでは認められるとしても、当該機能は、携帯電話機が動画像データを受信・処理・表示する場合に実現されるものではなく、ましてや、高解像度動画像受信・

5 処理・表示機能を実現する場合に実現されるものではなく、また、携帯

電話機が、簡易型液晶表示パネル23では明瞭に表示できない画像情報を表示する機能を実現する場合においても、「簡易型液晶表示パネル23の画面解像度と同じ解像度を有する画像のビットマップデータを読み出し、送信する機能」は実現されない点。

(3) 相違点の非容易想到性

ア 相違点2-5原判決が提示する技術常識(携帯情報通信装置の無線通信手段が、画像データを伝達する無線信号を受信してデジタル信号に変換の上、中央演算回路に送信し、前記中央演算回路が該デジタル信号を受信して、該デジタル信号が伝達する画像データを処理すること)を乙8″′発明に適用したとしても、動画像データを伝達する無線動画信号を受信するとの構成に想到することはできない。イ 相違点2-6原判決が提示する技術常識(携帯電話機の簡易型液晶表示パネルに当該表示パネルの解像度より大きい表示データ(ドットデータ)を表示する場合に、大きい表示データ(ドットデータ)から上記表示パネルと同じ解像度の表示データ(ドットデータ)を生成して前記簡易型液晶表示パネルに表示し、スクロール操作を行うことで全画像を見ることができること)を乙8″′発明に適用したとしても、動画像をリアルタイムで表示するとの構成に想到することはできない。ウ 相違点2-7原判決が提示する上記イの技術常識を乙8″′発明に適用したとしても、前記単一のVRAMから「前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出し、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、

5 該デジタル表示信号を前記インターフェース手段に送信する機能に想到

することはできない。

(4) 被控訴人の主張に対する反論

ア 乙8文献の記載に基づけば、乙8″′発明の携帯電話機が、「動画像をリアルタイムで表示する機能」を有しないことは明らかである。(ア) 携帯情報通信装置が動画像データの受信・処理・リアルタイム表示を実現するためには、静止画像データの受信・処理・表示より格段に高い性能が必要となるのであるから、仮に、乙8文献において、携帯情報通信装置が画像データ(表示データ)の受信・処理・表示を実現することが開示・示唆されていたとしても、当該携帯情報通信装置が動画像データの受信・処理・リアルタイム表示を実現することにはならない。(イ) 乙8文献において、【0013】記載の表示データが動画像データを含むことを示唆するような記載は一切ない。【0014】には、「従来のように、スクロール操作によって全画像を見る必要がなくなる。」との記載があることから、【0013】記載の表示データは、「(従来技術では)スクロール操作によって全画像を見るような表示データ」ということになる。しかし、動画像の全体をスクロール操作によって見ることは通常あり得ないから、【0013】記載の表示データは動画像データを含まない。(ウ) 乙8文献には、無線通信手段(通信部12)が無線動画信号を受信することを開示・示唆する記載、データ処理手段(CPU11及び表示制御回路21)が動画像データを処理することを開示・示唆する記載、表示手段(簡易型液晶表示パネル23)が動画像を表示することを開示・示唆する記載は、いずれも一切ない。イ 被控訴人は、技術常識(①携帯情報通信装置において無線動画信号を

5 受信・処理するということ、②無線通信手段が、「本来解像度がディスプ

レイパネルの画面解像度より大きい動画像データ」を伝達する無線信号を受信してデジタル信号に変換すること、③無線通信手段が「動画像データ」を伝達する無線動画信号を受信し、これをもとにデジタル表示信号を生成してディスプレイ手段又は外部ディスプレイ手段に動画像をリアルタイムで表示すること、④携帯情報通信端末がウェブサイトから取得した動画像データをリアルタイム(ストリーミング)で再生すること)を考慮すれば、乙8″′発明に基づいて本件訂正発明に想到することは容易であると主張するが、これらが技術常識であると仮定したとしても、本件訂正発明に想到することはできない。(ア) 仮に、乙8″′発明の携帯電話機に対して「無線動画信号や動画像データの受信」に係る上記各技術常識を適用したとしても、それだけでは携帯電話機は機能せず、データ処理手段(CPU11及び表示制御回路21)や表示手段(簡易型液晶表示パネル23)についても、「動画像データの処理・リアルタイム表示」に対応するものに交換しなければならず、上記各技術常識を適用することへの重大な阻害要因となる。(イ) 相違点2-6は、携帯情報通信装置において、「前記外部ディスプレイ手段に、『前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する動画像』をリアルタイムで表示できるようにした」ことに関する相違点であるところ、上記各技術常識は当該事項を含意しない。(ウ) 相違点2-7は、グラフィックコントローラが、「前記携帯情報通信装置が前記高解像度動画像受信・処理・表示機能を実現する場合に、」実現する機能に係る相違点であるところ、上記各技術常識は、携帯情報通信装置が備えているグラフィックコントローラの機能について、何ら特定するものではない。

5 (被控訴人の主張)

本件訂正発明は、本件発明と同様に、乙8発明に基づく新規性欠如のほか、乙2発明に基づく進歩性欠如、乙22発明に基づく新規性及び進歩性欠如、分割要件違反に起因する乙38発明に基づく新規性欠如、並びにサポート要件違反の各無効理由を有するから、令和7年訂正によって無効理由が解消したとはいえない。

(1) 本件訂正発明と乙8発明との相違点

ア 控訴人は、通信部12が動画像データを伝達する無線動画信号を受信し、無線動画信号を受信してデジタル動画信号に変換の上、CPU11に送信することや、CRT表示器24等の大型ディスプレイに動画像を表示することは、乙8文献に記載された事項ではなく、相違点であると主張する。しかしながら、乙8文献には、「表示データ」「画像情報」が静止画に限定される旨の記載はないし、動画像を除外する旨の記載もない。そもそも、動画像は、複数の静止画像(フレーム)を連続的に表示させることで、動きのある映像を作り出すものであり、画像処理及び表示の点で静止画と変わることはない 。

①携帯情報通信装置において無線動画信号を受信・処理すること、②

無線通信手段が、「本来解像度がディスプレイパネルの画面解像度より大きい動画像データ」を伝達する無線動画信号を受信してデジタル信号に変換することは、③無線通信手段が「動画像データ」を伝達する無線動画信号を受信し、これをもとにデジタル表示信号を生成してディスプレイ手段又は外部ディスプレイ手段に動画像をリアルタイムで表示すること、④携帯情報通信端末がウェブサイトから取得した動画像データをリアルタイム(ストリーミング)で再生することは、いずれも本件特許の優先日当時には既に実用化されていた技術であり、技術常識ないし周知

5 技術である。

よって、通信部12が動画像データを伝達する無線動画信号を受信し、無線動画信号を受信してデジタル動画信号に変換の上、CPU11に送信すること、当該動画像データの解像度が簡易形液晶表示パネル23の解像度より大きいこと、簡易形液晶表示パネル23やCRT表示器24等の大型ディスプレイにリアルタイムで動画像を表示することは、いずれも技術常識であり、乙8発明に実質的に開示されているというべきであるから、控訴人の主張する相違点は存在しない。イ 控訴人は、乙8発明の機能は、携帯電話機が動画像データを受信・処理・表示する場合に実現されるものではなく、ましてや高解像度動画像受信・処理・表示機能を実現する場合に実現されるものでもないとして、これを相違点として主張する。しかしながら、上記各技術常識を適用することにより、動画像を簡易型液晶表示パネル23に画像全体を表示するか、又は画像の一部のみ若しくはスクロール操作によらなければ画像全体を見られないように表示する機能は、乙8発明に実質的に開示されているというべきである。また、乙8発明には、CRT表示器24等の大型ディスプレイに、簡易型液晶表示パネル23の解像度よりも大きい解像度を有する画像情報を表示することが開示されているのであり、これは動画像の場合にも同様に当てはまるから、簡易型液晶表示パネル23の解像度よりも大きい解像度を有する画像情報を、欠落なく(スクロール表示することなく全てを)表示する機能についても、乙8文献に実質的に開示されている。よって、控訴人が主張する相違点は存在しない。

(2) 相違点の容易想到性

原判決で正当に認定されているとおり、乙8文献には、外部より画像情報や情報量の多い表示データを受信することが開示されており、「外部から取

5 り込んだ画像情報などのように一度に表示すべきデータ量が多く、簡易型液

晶表示パネル23では明瞭に表示できない表示データ」(【0013】)と記載があることから、乙8文献には、通信部12が、簡易型液晶表示パネル23の解像度よりも大きい解像度を有する画像情報を受信して復調する構成が、実質的に開示されている。そして、動画像データを受信し、リアルタイムで表示する構成は優先日当時の技術常識であり、乙8文献には動画像の受信を除外することをうかがわせる記載はないことからすれば、仮に「高解像度動画像受信の構成」が相違点を構成するとしても、当該技術常識を適用することで当業者が極めて容易に想到できたものである。

第5 当裁判所の判断

1 当裁判所も、控訴人の請求は、理由がないから棄却すべきものと判断する。

その理由は、以下のとおりである。

2 乙8文献(特開2001-197167号公報)を引用例とする新規性欠

如及び進歩性欠如(争点2-2)について

(1) 本件明細書の記載事項等

本件明細書の記載等は、原判決「事実及び理由」第4の1(69~90頁)に記載のとおりであるから、これを引用する。

(2) 乙8文献の記載事項及び乙8″′発明

ア 乙8″′発明の認定乙8文献の各記載によれば、乙8文献には、次のとおり、乙8″′発明の記載があると認められる。(原判決の認定から変更した部分に下線を付した。)a 各種データの入力を可能とし、入力されたデータをCPU11に送信する操作部20と;b アンテナ12aを有し、送信信号の変調及び受信信号の復調機能を有し、CPU11に制御される通信部12と;

5 c CPU11が実行する各種プログラムを格納するROM14及びユ

ーザ設定データ等を格納するRAM13と;d1 ROM14に格納されたプログラムに基づき、入力された表示データ(外部から取り込んだ画像情報)を、ドットデータとして簡易型液晶表示パネル23やCRT表示器24等の大型ディスプレイに送信するよう制御するCPU11と;d2 CPU11の制御下で、入力された表示データを画像メモリ22に記憶させるとともに、画像メモリ22に記憶させた表示データ(ドットデータ)を電話機本体に設けられた簡易型液晶表示パネル23又はCRT表示器24等の大型ディスプレイに接続されたモニタ端子25に送信する表示制御回路21と;e 表示制御回路21から送られてきた表示データを表示する簡易型液晶表示パネル23と;f CRT表示器24等の大型ディスプレイに接続されており、表示制御回路21から送られてきた表示データをCRT表示器24等の大型ディスプレイに送信するモニタ端子25とを備え;g′1 通信部12が、簡易型液晶表示パネル23では明瞭に表示できない画像情報を受信して復調の上、CPU11が、ドットデータとして簡易型表示パネル23やCRT表示器24等の大型ディスプレイに送信するよう表示制御回路21を制御し、g2 CPU11の制御下で、表示制御回路21が、表示データを画像メモリ22に記憶させるとともに、画像メモリ22に記憶させた表示データ(ドットデータ)を電話機本体に設けられた簡易型液晶表示パネル23又はCRT表示器24等の大型ディスプレイに接続されたモニタ端子25に送信して、簡易型液晶表示パネル23又はCRT表示器24等の大型ディスプレイに画像を表示する機能を有する、携帯電

5 話機において、

h′携帯電話機が、簡易型液晶表示パネル23では明瞭に表示できない画像情報を表示する機能を実現する場合に、表示制御回路21は、画像メモリ22に記憶させた表示データ(ドットデータ)をCRT表示器24等の大型ディスプレイに接続されたモニタ端子25に送信し、CRT表示器24等の大型ディスプレイに、簡易型液晶表示パネル23では明瞭に表示できない画像情報を、欠落なく(スクロール操作することなく)表示する機能を実現し、i モニタ端子25は、表示制御回路21から受信した表示データ(ドットデータ)をCRT表示器表示器24等の大型ディスプレイに表示できるようにして送信する機能を有する、j′ ことにより、CRT表示器24等の大型ディスプレイに、簡易型液晶表示パネル23 では明瞭に表示できない 画像情報を、欠落なく(スクロール操作することなく)表示できるようにした、k 携帯電話機イ 乙8″′発明の認定についての補足説明乙8″′発明の認定の補足説明につき、当審において原判決の認定を補正した部分について、以下のとおり説明を加えるほか、原判決「事実及び理由」第4の2(1)イ(イ)ないし(オ)(93~97頁)のとおりであるから、これを引用する。(ア) 「簡易型液晶表示パネル23では明瞭に表示できない画像情報」(g′1、h′、j′)の構成について乙8文献【0008】、【0012】の記載によれば、通信部12が受信して復調する情報は、「簡易型液晶表示パネル23では明瞭に表示できない画像情報」と認められる。ただし、「簡易型液晶表示パネル23では明瞭に表示できない画像情

5 報」に、「簡易型液晶表示パネル23の解像度よりも大きい解像度を有

する画像情報に係る表示データ」が含まれることについては、原判決「事実及び理由」第4の2(1)イ(ア)(92、93頁)に記載のとおりであるから、これを引用する。そうすると、乙8″′発明の「簡易型液晶表示パネル23では明瞭に表示できない画像情報」は、本件発明の「本来解像度が前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」に相当するから、この点は相違点とは認められない。(イ) h′の構成について乙8文献には、表示制御回路21が「前記表示すべき表示データのコンテンツが簡易型液晶表示パネル23に対応する場合、または、表示データの送出先が簡易型液晶表示パネル23を指示する場合には、簡易型液晶表示パネル23に表示データを送らせ」ると記載されており(【0011】)、表示制御回路21は、表示データのコンテンツが簡易型液晶表示パネル23に対応しない場合、すなわち簡易型液晶表示パネル23では明瞭に表示できない画像情報についても、表示データの送出先として簡易型液晶表示パネル23が指示された場合には、画像情報を簡易型液晶表示パネル23に送って表示する機能を有することが認められる(g2)。一方、乙8文献には、表示制御回路21は、「一度に表示すべきデータ量が多く、簡易型液晶表示パネル23では明瞭に表示できない表示データにあっては、つまり表示データのコンテンツが簡易型液晶表示パネル23に対応しない場合には、画面表示領域の大きいCRT表示器24に表示できるように、その表示データ(ドットデータ)をモニタ端子25へ同期信号と共に送出する。」と記載されていること(【0013】)からすると、乙8″′発明が、携帯電話機が簡易型液晶表示パネル23では明瞭に表示できない画像情報を表示する機能を実現す

5 る場合に、同画像情報を簡易型液晶表示パネル23に送信するのか否

か、送信するとしてどのような態様で表示するのか、いずれも明らかではない。

(3) 本件発明と乙8″′発明との一致点及び相違点

以上を踏まえ、本件発明と乙8″′発明を対比すると、次のとおり、一致点及び相違点が認められる。ア 一致点本件発明の構成要件A、C、E、F、I、J及びKが、乙8″′発明のa、c、e、f、i、j´及びkと一致する。イ 相違点(ア) 相違点2-1″′本件発明では、無線通信手段が、無線信号を受信してデジタル信号に変換の上、中央演算回路に送信し、前記中央演算回路が該デジタル信号を受信して、該デジタル信号が伝達する画像データを処理する(前記中央演算回路が前記無線通信手段から受信したデジタル信号に必要な処理を行う)(構成要件B、D、G′)のに対し、乙8″′発明では、通信部12(無線通信手段)が、CPU11(中央演算回路)に復調した信号(デジタル信号)を送信し、前記CPU11(中央演算回路)が該復調した信号(デジタル信号)を受信して、該復調した信号(デジタル信号)が伝達する画像データを処理しているか明らかではないこと(b、d1、g′1)。(イ) 相違点2-2″′本件発明は、高解像度画像受信・処理・表示機能(構成要件G′参照)を実現する場合に、ディスプレイパネルの画面解像度と同じ解像度を有する画像のビットマップデータを読み出し、送信する機能を有する(構成要件H′)のに対し、乙8″′発明は、そのような機能を

5 有するか明らかでないこと(h′)。

(4) 相違点の容易想到性

ア 相違点2-1″′についていずれも本件特許の優先日前に頒布された刊行物である以下の各文献には、次の記載があると認められる。(ア) 特開2002-27038号公報(乙28、発明の名称:携帯端末装置、携帯電話機及びデータ処理方法)の【0039】ないし【0045】及び【図4】には、放送局から配信されたゲーム情報内容D1を受信し、チューナー55ではアンテナ41により受信された地上波放送信号からゲーム情報内容D1のデータ列を抽出してシステムバス79に送ること、受信部204は、テレビ放送電波の複数のチャネルの電波のうち、所望のチャネルを受信すること、データ放送番組に係る映像やゲーム情報内容D1などは、垂直ブランキングインターリービングを利用して多重化され、画像を含む各種デジタルコンテンツが配信されること、システムバス79にはデータ処理部35が接続され、データ処理部35は、デコード処理後のデータ放送番組に係る映像やゲーム情報内容D1などを処理する旨の記載がある。(イ) 特開2003-319043号公報(乙57、発明の名称:折り畳み型携帯電話機)の【0073】ないし【0076】、及び【図5】には、携帯電話機10において、発呼先から送信されてきた画像データは、RF回路105を介して、変復調回路106に供給され復調されて、ベースバンド処理回路107に供給され、ベースバンド処理回路107は、供給された信号から、キャラクタデータなどの送信されてきたデータを取り出して、これを制御部109に供給し、CPUを含んで構成される画像処理回路115が、ベースバンド処理回路107から供給されるデータに基づいて、画像信号を形成し、表示部11に

5 表示する旨の記載がある。

(ウ) 特開2003-244301号公報(乙58、発明の名称:携帯情報端末)の【0016】、【0038】、【0048】、【0049】及び【図7】には、携帯電話機において、アンテナ19から入力された通話先から送られたテレビ電話の画像データは、受話回路21を介してCPUを含む制御回路17に入力され(受話回路21は受信したアナログデータの復調処理を行い、その後、制御回路17に復調したデータを入力し)、制御回路17に入力された画像データは、メモリ23をワークエリアとして利用し、画像データを表示可能なように展開し、展開が終了すると、制御回路17は展開された画像データの保存領域を示すアドレスを表示制御部20に送り、表示制御部20は事前設定で定められた条件で、固定表示部4、可動表示部12の一方又は双方に画像を表示する旨の記載がある。上記(ア)ないし(ウ)の刊行物の記載から、携帯情報通信装置の無線通信手段が、画像データを伝達する無線信号を受信してデジタル信号に変換の上、中央演算回路に送信し、前記中央演算回路が該デジタル信号を受信して、該デジタル信号が伝達する画像データを処理することは、本件特許の優先日当時の当業者の技術常識であったと認められる。そうすると、本件特許の優先日当時、乙8″′発明に接した当業者は、上記技術常識を適用することより、通信部12が、無線信号を受信してデジタル信号に変換の上、これをCPU11に送信し、CPU11がこれを受信して、復調したデジタル信号が伝達する画像データを処理するとの相違点2-1″′に係る構成に想到することは容易であったということができる。イ 相違点2-2″′について(ア) 携帯電話機は、通常、利用者によって携帯された状態で使用される

5 ことを前提としており、その際には、表示しようとする画像データの

解像度が内蔵された表示パネルの画面解像度より大きい場合であっても、内蔵された表示パネルに画像データを送信して表示させることは多言を要しない。そうすると、乙8″′発明の携帯電話機は、簡易型液晶表示パネル23では明瞭に表示できない画像情報を表示する機能を実現する場合に、同画像情報を簡易型液晶表示パネル23に送信して、表示させると認められる。(イ) また、いずれも本件特許の優先日前に頒布された刊行物である以下の各文献には、次の記載があると認められる。a 特開2000-66649号公報(乙3、発明の名称:携帯情報処理装置、及び外部表示出力の制御方法)の【0008】、【0037】、【0038】及び【0044】には、携帯情報処理装置である携帯機器2において、アプリケーションプログラム35が、異なる解像度を持つ内部表示装置22と外部表示装置24において描画させるイメージ、すなわち内部表示イメージと外部表示イメージを、それぞれの表示装置の解像度に合わせて、表示メモリ18上にライトし、表示コントローラ20は、アプリケーションプログラム35によってライトされた内部表示イメージと外部表示イメージに応じて、内部表示装置22と外部表示装置24に対して、それぞれに応じた描画イメージを表示させる旨の記載がある。b 特開2000-13776号公報(乙2文献、発明の名称:動画像通信システムと動画像通信装置及び画像フォーマット変換方法)の【0003】、【0041】、【0069】及び【0080】並びに【図8】には、可搬使用を可能とした小型の動画像通信装置において、内部表示器24は、例えば、QCIF信号を表示するのに必要な画素数(180×144)を有し、表示制御部23の制御の下に

5 画像を表示し、表示制御部23は、受信動画像データのフォーマッ

トがCIFであった場合には、CIFからQCIFへのフォーマット変換を、CIF動画像データの画素を間引く処理により行い、CIFからQCIFにフォーマット変換された動画像を内部表示器24に表示させることが記載されている。c 特開2003-122339号公報(乙45、発明の名称:移動通信端末)の【0005】、【0032】、【0040】、【0048】~【0050】、【0054】並びに【図3】、【図5】及び【図11】には、移動通信端末において、入力された画像(静止画像及び動画像を含む)データの表示サイズが表示器(LCD)34の表示領域サイズより大きい場合、表示しようとする画像データの横方向の表示サイズがLCD34の横方向の表示領域サイズに対応する大きさになるように縮小処理が行われ、この縮小処理をされた画像データがLCD34に表示されること、その例として、QCIF(176×144ドット)からなる画像データの表示サイズを、SubQCIF(128×96ドット)に相当する表示領域サイズに対応させるために、8/11倍に縮小処理すること、CIF(352×288ドット)からなる画像データの表示サイズを、SubQCIF(128×96ドット)に相当する表示領域サイズに対応させるために、4/11倍に縮小処理することが記載されている。上記aないしcの刊行物の記載から、携帯端末において、表示しようとする画像データの解像度が表示パネルの画面解像度より大きい場合に、表示パネルと同じ解像度の画像データを読み出し、当該データを伝達するデジタル表示信号を送信し、これを表示パネルに表示させることは、本件特許の優先日当時における技術常識であったと認められる。

5 (ウ) そうすると、本件特許の優先日当時、乙8″′発明に接した当業者

は、簡易型液晶表示パネルでは明瞭に表示できない画像情報を簡易型液晶表パネルに表示するに当たり、上記(イ)の技術常識を適用することにより、簡易型液晶表示パネル23の画面解像度と同じ解像度を有する画像のビットマップデータを読み出すとの相違点2-2″′に係る構成に想到することは容易であったということができる。

(5) 小括

したがって、本件特許は、進歩性を欠き、特許無効審判により無効にされるべきものと認められる(特許法123条1項2号、29条2項)。

3 令和7年訂正による無効理由の解消の成否(争点3-1)について

(1) 本件訂正発明と乙8″′発明との一致点及び相違点

本件訂正発明の構成は、前記第3の2(2)記載のとおりであり、乙8″′発明の構成は、前記第5の2(2)アで認定したとおりである。ア 一致点本件訂正発明の構成要件A、C、E、F、I及びKが、乙8″′発明のa、c、e、f、i及びkと一致する。イ 相違点(ア) 相違点2-1″″本件訂正発明では、無線通信手段が、無線動画信号を受信してデジタル動画信号に変換の上、中央演算回路に送信し、前記中央演算回路が該デジタル動画信号を受信して、該デジタル動画信号が伝達する動画像データを処理する(前記中央演算回路が前記無線通信手段から受信したデジタル信号に必要な処理を行う)(構成要件B、D、G″)のに対し、乙8″′発明では、通信部12(無線通信手段)が、無線動画信号を受信してデジタル動画信号に変換の上、CPU11(中央演算回路)に復調した信号(デジタル信号)を送信し、前記CPU11

5 (中央演算回路)が該復調した信号(デジタル信号)を受信して、該

復調した信号(デジタル信号)が伝達する動画像データを処理しているか明らかではないこと(b、d1、g′1)。(イ) 相違点2-2″″本件訂正発明は、高解像度動画像受信・処理・表示機能(構成要件G″参照)を実現する場合に、ディスプレイパネルの画面解像度と同じ解像度を有する動画像のビットマップデータを読み出し、送信する機能を有する(構成要件H″)のに対し、乙8″′発明は、高解像度動画像受信・処理・表示機能を有するか明らかではなく(g1′、g2)、これを実現する場合に、簡易型液晶表示パネル(ディスプレイパネル)の画面解像度と同じ解像度を有する動画像のビットマップデータを読み出し、送信する機能を有するかも明らかでないこと(h′)。(ウ) 相違点2-5本件訂正発明は、外部ディスプレイ手段に、「前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する動画像」をリアルタイムで表示できるようにしたのに対し(構成要件G″、J′)、乙8″′発明は、そのような機能を有するか明らかでないこと(g2、j′)。

(2) 相違点の容易想到性

ア 相違点2-1″″について(ア) 本件明細書【0004】には「文字や映像を含む画像」との記載があること(甲2)に加え、いずれも本件特許の優先日前に頒布された刊行物である、①特開2002-27038号公報(乙28、発明の名称:携帯端末装置、携帯電話機及びデータ処理方法)の【0044】には「画像(動画と静止画)」との記載があること、②特開2003-319043(乙57、発明の名称:折り畳み型携帯電話機)の【0073】には「画像データ(静止画像又は動画像)」との記載があるこ

5 と、③特開2003-244301号公報(乙58、発明の名称:携

帯情報端末)の【0041】には「テレビ電話の受信画像の展開や送信画像の表示などの切換え行う。」との記載があること、④特開2003-122339号公報(乙45、発明の名称:移動通信端末)の【0015】には「例えば上記取り込まれた画像データが静止画像であるか動画像であるかを判定する。」との記載があることが、それぞれ認められる。これらの記載によれば、本件特許の優先日当時、「画像」には、静止画像及び動画像の両方を含むとの技術常識が存在したと認めることができる。(イ) また、前記2(4)ア記載の刊行物から、本件特許の優先日当時、携帯情報通信装置の無線通信手段が、画像データを伝達する無線信号を受信してデジタル信号に変換の上、中央演算回路に送信し、前記中央演算回路が該デジタル信号を受信して、該デジタル信号が伝達する画像データを処理することが技術常識であったと認められる。そして、上記(ア)の技術常識が存在することに加え、前記2(4)ア(ア)ないし(ウ)の刊行物には、上記(ア)①ないし③のとおり、「画像」には静止画像及び動画像の両方を含む旨の記載が存在することからすれば、本件特許の優先日当時、携帯情報通信装置の無線通信手段が、動画像データを伝達する無線動画信号を受信してデジタル動画信号に変換の上、中央演算回路に送信し、前記中央演算回路が該デジタル動画信号を受信して、該デジタル動画信号が伝達する動画像データを処理することも、当業者の技術常識であったと認められる。(ウ) そうすると、本件特許の優先日当時、乙8″′発明に接した当業者は、上記(ア)の技術常識から乙8″′発明の「画像」「画像情報」には、動画像、動画像情報を含むものと理解した上で、上記(イ)の技術常識を

5 適用することより、通信部12が、無線動画信号を受信してデジタル

動画信号に変換の上、これをCPU11に送信し、CPU11がこれを受信して、復調したデジタル信号が伝達する動画像データを処理するとの相違点2-1″″に係る構成を想到することは容易であったということができる。イ 相違点2-2″″について(ア) 上記ア(ア)の技術常識に照らせば、本件特許の優先日当時、乙8″′発明に接した当業者は、乙8″′発明の「画像」は動画像を含むものと理解するといえるから、乙8″′発明の「携帯電話機が、簡易型液晶表示パネル23では明瞭に表示できない画像情報を表示する機能を実現する場合」は、本件訂正発明の「携帯情報通信装置が」「高解像度動画像受信・処理・表示機能を実現する場合」に相当する。(イ) また、上記ア(ア)の技術常識に加え、前記2(4)イ(ア)で述べたところによれば、乙8″′発明の携帯電話機は、簡易型液晶表示パネル23では明瞭に表示できない動画像情報を表示する機能を実現する場合に、同動画像情報を簡易型液晶表示パネル23に送信して、表示させると認められる。(ウ) さらに、前記2(4)イ(イ)記載の刊行物から、本件特許の優先日当時、携帯端末において、表示しようとする画像データの解像度が表示パネルの画面解像度より大きい場合に、表示パネルと同じ解像度の画像データを読み出し、当該データを伝達するデジタル表示信号を送信し、これを表示パネルに表示させることが技術常識であったと認められる。また、上記ア(ア)の技術常識が存在することに加え、前記2(4)イ(イ)b及びcの刊行物には、上記技術常識に係る機能を動画像において実現する旨の記載があることからすれば、本件特許の優先日当時、乙8″′発明に接した当業者は、簡易型液晶表示パネルでは明瞭に表示

5 できない動画像情報を簡易型液晶表パネルに表示するに当たり、簡易

型液晶表示パネル23の画面解像度と同じ解像度を有する動画像のビットマップデータを読み出し、送信するという相違点2-2″″に係る構成に想到することは容易であったということができる。ウ 相違点2-5について(ア) いずれも本件特許の優先日前に頒布された刊行物である以下の各文献には、次の記載があると認められる。a 特開2000-13776号公報(乙2文献、発明の名称:動画像通信システムと動画像通信装置及び画像フォーマット変換方法)の【0063】及び【0064】には、コンテンツ・サーバTSはマルチメディア通信端末装置HS1が要求したフォーマットで動画像データを送信し、マルチメディア通信端末装置HS1は、上記コンテンツ・サーバTSから動画像の符号化データが送られると、この符号化データは映像デコーダ22で元の動画像データに復号されて表示制御部23に入力され、表示制御部23は、外部テレビジョンモニタVMの接続が有る場合、表示手段として外部テレビジョンモニタVMを使用することを決定し、外部テレビジョンモニタVMへ上記復号された動画像データを供給して表示させることが記載されている。b 特開2004-166219号公報(乙75、発明の名称:公衆ディスプレイ装置及び公衆ディスプレイ装置による画像提供システム並びに公衆ディスプレイ装置の情報提供システム)の【0040】及び【0085】には、公衆ディスプレイ装置100は、小型携帯用端末200とブルートゥース等による近距離通信の接続を確立し、他の小型携帯用端末200等から小型携帯用端末200に送信され小型携帯用端末200から転送される第1画像の画像データ、例え

5 ばテレビ電話の相手画像の画像パケットを受信し、受信する画像デ

ータから第1画像をリアルタイムに表示するものであり、また、第1画像、第2画像、第3画像はそれぞれ静止画像又は動画像とすることが可能であり、さらに、公衆ディスプレイ装置100が小型携帯用端末200から受信する第1画像の内容は適宜であり、例えば小型携帯用端末200が配信を受けている映画や番組等の映像とすることが可能である旨記載されている。加えて、本件特許の優先日当時、ウェブサイトから取得した動画像データをリアルタイム(ストリーミング)で再生することができる携帯情報通信端末が販売されていたと認められる(乙61~69)。そうすると、本件特許の優先日当時、携帯情報通信端末において、受信した動画像データをリアルタイムで表示させることは、技術常識であったといえる。(イ) 上記ア(ア)の技術常識に照らせば、本件特許の優先日当時、乙8″′発明に接した当業者は、乙8″′発明の「画像」は動画像を含むものと認識するとともに、上記(ア)の技術常識により、乙8″′発明に係る携帯電話機が、動画像をリアルタイムで表示させることができると認識するといえる。そうすると、乙8″′発明の「通信部12が、簡易型液晶表示パネル23では明瞭に表示できない画像情報を受信し」(g′1)、「CRT表示器24等の大型ディスプレイに、簡易型液晶表示パネル23では明瞭に表示できない画像情報を、欠落なく(スクロール操作することなく)表示する」(h′)構成は、本件訂正発明の「無線通信手段が『本来解像度が前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい動画像データ』を伝達する無線動画信号を受信し」、「外部ディスプレイ手段に動画像をリアルタイムで表示する」(構成要件G″、J′)構成に相当すると認められる。

5 したがって、相違点2-5は実質的な相違点ではない。

(3) 控訴人の主張の検討

ア これに対し、控訴人は、乙8″′発明の「画像」「表示データ」は静止画像のみを指し、動画像を含まないと主張し、その根拠として、①乙8文献に「画像」「表示データ」が動画像を含むことを示唆する記載がないこと、②【0014】には「従来のように、スクロール操作によって全画像を見る必要がなくなる」との記載があるところ、動画像をスクロール操作によって全画像を見ることはあり得ないから、同「全画像」には動画像を含まないと考えられることを挙げる。しかしながら、上記①については、前記(2)ア(ア)のとおり、本件特許の優先日当時、「画像」には静止画像及び動画像の両方を含むとの技術常識が存在したことに加え、動画像は複数の静止画像を連続的に表示させて表現されるものであり、両者は実質的に変わらないことからすれば、乙8″′発明に接した当業者は、たとえ乙8文献に動画像を示唆する記載がなかったとしても、「画像」「表示データ」に動画像、動画像に係る表示データを含むものと理解すると認められる。また、上記②については、仮に【0014】でスクロール操作の対象となっている「全画像」が静止画像のみを指すとしても、従来技術の帰結を説明するにとどまり、その他の部分の「画像」に動画像が含まれると解することを妨げない。したがって、控訴人の上記はいずれも採用できない。イ また、控訴人は、携帯情報通信装置が動画像データの受信・処理・リアルタイム表示を実現するためには、静止画像データの受信・処理・表示を実現するより各段に高い性能が必要になるから、乙8″′発明に前記(2)ウ(ア)の技術常識(携帯情報通信端末において、受信した動画像データをリアルタイムで表示させること)を適用することについては阻害

5 事由が存在したと主張する。

しかしながら、乙8″′発明が公開された平成13年7月から間もない同年11月以降、携帯電話端末で動画を再生するサービスの提供が開始され(乙61、63)、本件特許の優先日(平成16年12月)当時には、携帯電話端末において動画のストリーミング再生ができることが一般的になっていたと認められること(乙62、64~69)からすれば、当業者が、乙8″′発明の携帯電話機に上記技術常識を適用することについて何らかの阻害事由があったとは認められない。したがって、控訴人の主張はいずれも採用できない。

(4) 小括

したがって、本件訂正発明は、本件発明と同様に、乙8″′発明に本件特許の優先日当時の技術常識を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。そうすると、令和7年訂正によって本件発明の無効理由(乙8″′発明に基づく進歩性欠如)が解消されたとはいえないから、訂正の再抗弁は失当である。

4 したがって、本件特許は、特許無効審判により無効にされるべきものであり、

控訴人は被控訴人に対し本件特許権を行使することができない(特許法104条の3第1項)。よって、その余の点を判断するまでもなく、控訴人の請求は理由がない。

第6 結論

以上によれば、控訴人の請求を棄却した原判決は結論において相当であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。知的財産高等裁判所第4部裁判長裁判官

5 長 谷 川 浩 二

裁判官岩 井 直 幸裁判官安 岡 美 香 子(別紙)当事者目録

5 控 訴 人 株式会社DAPリアライズ

被 控 訴 人 サムスン電子ジャパン株式会社同訴訟代理人弁護士 大 野 聖 二同 小 林 英 了同訴訟代理人弁理士 松 野 知 紘同補佐人弁理士 榊 間 城 作(別紙)特許請求の範囲(令和7年3月13日付け訂正請求に係る訂正後のもの)

5 【請求項1】

ユーザーがマニュアル操作によってデータを入力し、該入力データを後記中央演算回路へ送信する入力手段と;無線信号を受信してデジタル信号に変換の上、後記中央演算回路に送信するとともに、後記中央演算回路から受信したデジタル信号を無線信号に変換して送信する無線通信手段と;後記中央演算回路を動作させるプログラムと後記中央演算回路で処理可能なデータファイルとを格納する記憶手段と;前記入力手段から受信したデータと前記記憶手段に格納されたプログラムとに基づき、前記無線通信手段から受信したデジタル信号に必要な処理を行い、リアルタイムでデジタル表示信号を生成するか、又は、自らが処理可能なデータファイルとして前記記憶手段に一旦格納し、その後読み出した上で処理する中央演算回路と、該中央演算回路の処理結果に基づき、単一のVRAMに対してビットマップデータの書き込み/読み出しを行い、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を後記ディスプレイ制御手段又は後記インターフェース手段に送信するグラフィックコントローラと、から構成されるデータ処理手段と;画面を構成する各々の画素が駆動されることにより画像を表示するディスプレイパネルと、前記グラフィックコントローラから受信したデジタル表示信号に基づき前記ディスプレイパネルの各々の画素を駆動するディスプレイ制御手段とから構成されるディスプレイ手段と;外部ディスプレイ手段を備えるか、又は、外部ディスプレイ手段を接続するかする周辺装置を接続し、該周辺装置に対して、前記グラフィックコントローラから受信したデジタル表示信号に基づき、外部表示信号を送信するインターフェース手段と;を備え、

5 前記無線通信手段が「本来解像度が前記ディスプレイパネルの画面解像度より

大きい動画像データ」を伝達する無線動画信号を受信してデジタル動画信号に変換の上、前記中央演算回路に送信し、前記中央演算回路が該デジタル動画信号を受信して、該デジタル動画信号が伝達する動画像データを処理し、前記グラフィックコントローラが、該中央演算回路の処理結果に基づき、前記単一のVRAMに対してビットマップデータの書き込み/読み出しを行い、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を前記ディスプレイ制御手段又は前記インターフェース手段に送信して、前記ディスプレイ手段又は前記外部ディスプレイ手段に動画像をリアルタイムで表示する機能(以下、「高解像度動画像受信・処理・表示機能」と略記する)を有する、携帯情報通信装置において、前記グラフィックコントローラは、前記携帯情報通信装置が前記高解像度動画像受信・処理・表示機能を実現する場合に、前記単一のVRAMから「前記ディスプレイパネルの画面解像度と同じ解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出し、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を前記ディスプレイ制御手段に送信する機能と、前記単一のVRAMから「前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出し、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を前記インターフェース手段に送信する機能と、を実現し、前記インターフェース手段は、前記グラフィックコントローラから受信した「ビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を、デジタルRGB、TMDS、LVDS(又はLDI)及びGVIFのうちのいずれかの伝送方式で伝送されるデジタル外部表示信号に変換して、該デジタル外部表示信号を前記周辺装置に送信する機能を有する、ことにより、前記外部ディスプレイ手段に、「前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する動画像」をリアルタイムで表示できるようにした、ことを特徴とする携帯情報通信装置。(別紙)争点に関する当事者の主張

1 被告製品が本件訂正発明の技術的範囲に属するか(争点3-2)

控訴人の主張 被控訴人の主張被告製品は、本件発明の全ての構成要件 被告製品は本件発明の全ての構成要件をを充足し、また令和7年訂正によって訂正 充足しないことから、本件訂正発明の全てした構成(構成要件G″、H″、J′)を の構成要件を充足しない。その理由は原審全て備えるから、本件訂正発明の構成要件 で述べたとおりである。をすべて充足する。

2 令和7年訂正が訂正要件を充足するか(争点3-3)

控訴人の主張 被控訴人令和7年訂正は、いずれも本件明 令和7年訂正は、本件明細書に記載した範囲細書に記載された事項の範囲内にお に基づくものではないから訂正要件を満たさなける訂正であり、訂正要件を満たし い(特許法134条の2第9項、126条5ている。 項)。すなわち、本件明細書【011 すなわち、本件明細書には、「本来解像度が前8】には、グラフィックコントロー 記ディスプレイパネルの画面解像度より大きいラ1_10B が、「前記携帯情報通信装 動画像データ」(テレビ放送信号以外の動画像デ置が前記高解像度動画像受信・処 ータ)に関して、「前記単一のVRAMから『前理・表示機能を実現する場合に、前 記ディスプレイパネルの画面解像度と同じ解像記単一のVRAMから『前記ディス 度を有する画像のビットマップデータ』を読みプレイパネルの画面解像度と同じ解 出し、『該読み出したビットマップデータを伝達像度を有する画像のビットマップデ するデジタル表示信号』を生成し、該デジタルータ』を読み出し、『該読み出したビ 表示信号を前記ディスプレイ制御手段に送信すットマップデータを伝達するデジタ る機能」についての開示はない。ル表示信号』を生成し、該デジタル また、令和7年訂正において、「前記ディスプ表示信号を前記ディスプレイ制御手 レイ手段または前記外部ディスプレイ手段に動段に送信する機能」を実現すること 画像をリアルタイムで表示する機能」との訂正が記載されている がなされたが、「リアルタイム」とはどの程度のまた、本件明細書【0056】 遅延を許容するのか、何秒間連続で表示できる【0095】【0118】には、動画 ことを意味するのかが定義されておらず、本件像データを「リアルタイムで表示」 訂正発明の技術的範囲の外延が不明確であるすることが記載されている。 し、それを実現できるように記載されていない。

3 (本件訂正発明に係る無効の抗弁)サポート要件違反(争点4-1)

控訴人の主張 被控訴人の主張本件明細書において、付属ディスプレイ 本件明細書には、テレビ放送信号以外のパネルにおいて表示される動画がどのよう 動画像を受信した場合について、付属ディな解像度で表示されるかについて記載され スプレイパネルにおいて表示される動画がている具体例がテレビ放送信号に限られる どのような解像度で表示されるかについてとしても、請求項において、インターネッ 何ら記載がない。したがって、「前記グラトプロトコルに準拠した無線ストリーミン フィックコントローラは、前記携帯情報通グ信号を含む「無線動画信号」へと一般化 信装置が高解像度動画像受信・処理・表示することは認められるというべきである。 機能を実現する場合に、前記単一のVRAましてや、本件明細書の【0056】に Mから『前記ディスプレイパネルの画面解は、「アナログテレビ放送信号、デジタル 像度と同じ解像度を有する画像のビットマテレビ放送信号、携帯テレビ電話信号、イ ップデータ』を読み出し、『該読み出したンターネットプロトコルに準拠した無線ス ビットマップデータを伝達するデジタル表トリーミング信号のうちの少なくとも1つ 示信号』を生成し、該デジタル表示信号をの無線信号(以下、無線動画信号と略記す 前記ディスプレイ制 御手段に送信する機る)」との記載があることから、この一般 能」は、発明の詳細な説明の記載されてお化には、何ら問題がない。 らず、サポート要件を満たさない。

4 (本件訂正発明に係る無効の抗弁)明確性要件違反(争点4-2)

控訴人の主張 被控訴人の主張「リアルタイムで表示す 「 動画 像を リ アル タ イム で表 示す る 」こ と につ いる」という用語は、データの て、本件明細書には、「リアルタイム」とはどの程度の送受信や処理の遅延が実用上 遅延を許容するのか、何秒間連続で表示できることを問題とならない速さで、かつ 意味するのかが定義されておらず、本件訂正発明の技連続的に表示されることを指 術的範囲の外延が不明確であることから、第三者が充す、ごく一般的な技術用語で 足の有無を判断できず、不測の不利益を被るものでああるから、被控訴人の主張は る。失当である。 したがって、本件訂正発明は、明確性要件を満たさない。

5 (本件訂正発明に係る無効の抗弁)乙70文献を主引用例とする進歩性欠如

(争点4-3)控訴人の主張 被控訴人の主張

(1) 乙70文献に記載された発明(以下 (1) 乙70発明の認定

「乙70発明」という。)の認定a ユーザーがマニュアル操作によってデ ユーザーの操作によってバス34、入出ータを入力し、該入力データをCPU3 力インタフェース35を介してCPU311へ送信する入力部36と; に情報を入力する、キーボード、マウスなb 無線信号を受信してデジタル信号に変 どよりなる入力部36と;換の上、CPU31に送信するととも 汎用的な無線通信方式を使用して他の無に、 CPU31から受信したデジタル 線通信装置との無線通信処理を実行し、他信号を無線信号に変換して送信する無線 の無線通信装置から配信される画像を、バ通信部40と; ス34、入出力インタフェース35を介しc CPU31を動作させるプログラムと て、CPU31が適宜読み出して実行するCPU31で処理可能なデータファイル 画像入力モジュール71に入力するとともとを格納する記憶部39等と; に、CPU31が適宜読み出して実行するd 入力部36から受信したデータと記憶 画像出力モジュール77が出力した画像信部39等に格納されたプログラムとに基 号を他の無線通信装置に送信する無線通信づき、無線通信部40から受信したデジ 部40と;タル信号に必要な処理を行い、リアルタ CPU31がそれに従って各種の処理をイムでデジタル表示信号を生成するか、 実行するプログラムを記録し、又はCPU又は、自らが処理可能なデータファイル 31が適宜読み出して実行する画像入力モとして記憶部39等に一旦格納し、その ジュール71で処理可能な画像を予め記憶後読み出した上で処理し、画像データ するROM32、記憶部39、RAM33を、入出力インタフェース35を介し と;て、LCD51又は外部機器接続部38 入力部36から入力された情報とROMに送信するCPU31と、 32、記憶部39、RAM33等に記録さe LCD51と; れたプログラムに従って、71~77の各f デジタルビデオカメラ61を接続し、 モジュールを適宜読み出して実行し、無線デジタルビデオカメラ61に対して、外 通信部40から受信した画像データに必要部表示信号を送信する外部機器接続部3 な処理を行い、LCD51等の表示部にリ8と; アル タイ ムで 出力 し て 表示 させ るか 、又を備え、 は、記憶部39に記憶されている画像デーg 無線通信部40が「本来解像度がLC タを読み出して必要な処理を行うCPU3D51の画面解像度より大きい動画像デ 1と、ータ」(第1の例又は第3の例)を伝達 画像出力モジュール77から出力されたする無線動画信号を受信してデジタル動 デジタル表示信号に基づき、動画像を表示画信号に変換の上、CPU31に送信 する、携帯型表示機器21が内蔵する表示し、CPU31が該デジタル動画信号を デバイスであるLCD51(解像度180受信して、該デジタル動画信号が伝達す ×120画素)と;る動画像データを処理し、出力先のフォ 外部の表示デバイス(解像度720×4ーマットに変換した後、動画像データ 80画素)であるデジタルビデオカメラ6を、入出力インタフェース35を介し 1等の「外部機器」を接続し、該外部機器て、LCD51又は外部機器接続部38 に対して、CPU31が読み出して実行しに出力して、LCD51又はデジタルビ た画像出力モジュール77から出力されたデオカメラ61に動画像をリアルタイム 画像データを表示させる外部機器接続部3で表示する機能を有する、 8を備え、携帯型表示装置21において、 無線受信部40を介して、CPU31がh 第1の例又は第3の例の場合に、 読み出して実行した画像入力モジュール7CPU31は、無線通信部40から受 1が、LCD51の解像度よりも大きい解信したデジタル動画信号に対してダウン 像度の動画像データを入力し、71~77コンバート処理を施して解像度がLCD の各 モジ ュー ルが 該 動 画像 デー タを 処理の画面解像度と同じ画像データを生 し、成し、該ダウンコンバート処理後の画像 画像出力モジュール77が該動画像デーデータを、入出力インタフェース35を タをLCD51又は外部機器接続部38に介して、LCD51のフォーマットに変 接続されたデジタルビデオカメラ61等の換した後、LCD51に出力する機能 外部機器に出力し、動画像をリアルタイムと、該ダウンコンバート処理後の画像デ で表示する機能を有する、実施形態を携帯ータを、デジタルビデオカメラ61のフ 電話とする携帯型表示機器21において、ォーマットに変換した後、入出力インタ ダウンコンバートモジュール76は、原フェース35を介して、外部機器接続部 画像の解像度よりもLCD51の解像度がに出力する機能と、を実現し、 低く、ダウンコンバートの必要があると判i 外部機器接続部38は、デジタルビデ 定された場合、画像データに対してダウンオカメラ61のフォーマットに変換され コンバート処理を施し、LCD51と同じた外部表示信号をデジタルビデオカメラ 解像度を有する画像データを画像出力モジに送信する機能を有する、 ュール77に供給し、画像出力モジュールj ことにより、 77がLCD51及び外部機器接続部38デジタルビデオカメラ61に、動画像 に接続されたデジタルビデオカメラ61にをリアルタイムで表示できるようにした 出力する機能と、原画像と表示部の解像度k ことを特徴とする携帯型表示装置21 が同じである場合、ダウンコンバート処理が不要であると判断し、ユーザ画像データをそのまま(ダウンコンバート処理を行わず)画像出力モジュール77に供給し、画像出力モジュール77が該画像データを外部機器接続部38に接続されたデジタルビデオカメラ61等の外部機器に出力する機能と、を実現することにより、デジタルビデオカメラ61等の外部機器に、LCD51より大きい解像度を有する動画像をリアルタイムで表示できるようにしたことを特徴とする、該携帯型表示機器21

(2) 本件訂正発明と乙70発明との相違点 (2) 本件訂正発明と乙70発明との相違点

ア <相違点5-3> ア <相違点5-1>本件訂正発明は、前記無線通信手段が 本件訂正発明は、「グラフィックコント「本来解像度が前記ディスプレイパネル ローラ」が「単一のVRAM」に対しての画面解像度より大きい動画像データ」 ビットマップデータの書き込み/読み出を伝達する無線動画信号を受信してデジ しを行うのに対し、乙70発明は、CPタル動画信号に変換の上、前記中央演算 U31がRAM33に対してLCD51回路に送信し、前記中央演算回路が該デ の画面解像度と同じ解像度を有する画像ジタル動画信号を受信して、該デジタル のビットマップデータ、又はLCD51動画信号が伝達する動画像データを処理 の画面解像度より大きい解像度を有するし、外部ディスプレイ手段に、「前記デ 画像のビットマップデータの書き込み/読ィスプレイパネルの画面解像度より大き み出しを行い、「該読み出したビットマッい解像度を有する動画像」をリアルタイ プデータを伝達するデジタル表示信号」ムで表示できるようにした」のに対し、 を生成するか否かが明らかでない点。乙70発明では、無線通信部40が「本 イ <相違点5-2>来解像度がLCD51の画面解像度より 本件訂正発明は、「ビットマップデータ大きい動画像データ」を伝達する無線動 を伝達するデジタル表示信号」が、「デジ画信号を受信してデジタル動画信号に変 タルRGB、TMDS、LVDS(又は換の上、CPU31に送信し、CPU3 LDI)及びGVIFのうちのいずれかが該デジタル動画信号を受信して、該 の伝送方式」で伝送されるのに対し、乙デジタル動画信号が伝達する動画像デー 70発明では、表示信号の「伝送方式」タを処理し、デジタルビデオカメラ61 について特定されていない点。のフォーマットに変換した後、デジタルビデオカメラ61に出力して、デジタルビデオカメラ61に動画像をリアルタイムで表示する機能を有することまでは認められるとしても、該動画像は「LCDの画面解像度より大きい解像度を有する動画像」ではない点。イ <相違点5-4>本件訂正発明は、中央演算回路の処理結果に基づき、単一のVRAMに対してビットマップデータの書き込み/読み出しを行い、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を後記ディスプレイ制御手段又は後記インターフェース手段に送信するグラフィックコントローラを有し、該グラフィックコントローラは、前記携帯情報通信装置が前記高解像度動画像受信・処理・表示機能を実現する場合に、前記単一のVRAMから「前記ディスプレイパネルの画面解像度と同じ解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出し、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を前記ディスプレイ制御手段に送信する機能と、前記単一のVRAMから「前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出し、「該読み出したビットマップデータを伝達するデジタル表示信号」を生成し、該デジタル表示信号を前記インターフェース手段に送信する機能と、を実現するのに対して、乙7発明では、そもそも、グラフィックコントローラに相当する要素を有していない点。

(3) 相違点の非容易想到性 (3) 相違点の容易想到性

被控訴人が言及する周知技術を前提とし ア <相違点5-1>ても、これによって<相違点 5-3>及 「グラフィックコントローラ」が「単一び<相違点5-4>の容易想到性を論理 のVRAM」に対して表示イメージのリ付けることはできない。 ード/ライトを行い、読み出した表示イ<相違点5-3>は、「外部ディスプレ メージを伝達する描画イメージを生成すイ手段に表示される動画像の解像度」を ることは、周知技術である。そして、乙特定しており、また、<相違点5-4> 70発明において、当該周知技術を採用は、「グラフィックコントローラ」が単一 し、あるいは、乙3発明を組み合わせのVRAMから読み出すビットマップデ て、<相違点5-1>に係る構成を備えータの解像度について特定しているのに ることは、当業者において容易に想到で対して、被控訴人が主張する周知技術 きたものである。(「グラフィックコントローラ」が「単一 イ <相違点5-2>のVRAM」に対して表示データのリー 表 示装 置に 表示 信 号 を送 信す る際 に、ド/ライトを行い、読み出した表示イメ 「デジタルRGB、TMDS、LVDSージを伝達する描画イメージを生成する (又は LDI)及びGVIFのうちのいこと)は、画像データや画像の解像度を ずれかの伝送方式」に変換して送信する何ら特定するものではない。 ことは、周知技術であり、乙70発明において、当該周知技術を採用して<相違点5-2>に係る構成を備えることは、当業者において容易に想到できたものである。

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