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令和8(ネ)10029損害賠償等請求控訴事件

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裁判所 控訴棄却 知的財産高等裁判所
裁判年月日 令和8年8月18日
事件種別 民事
法令 不正競争
キーワード 損害賠償2回
主文 1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は、控訴人の負担とする。
事件の概要 「原告」を「控訴人」と、 「被告」を「被控訴人」と、 「別紙」を「原判決別紙」 とそれぞれ読み替える。 )

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判決文

令和8年8月18日判決言渡

令和8年(ネ)第10029号 損害賠償等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所

令和6年(ワ)第70219号)

口頭弁論終結日 令和8年6月18日

判 決

控 訴 人 株式会社ソラスタイルズ

同訴訟代理人弁護士 高 橋 邦 明

被 控 訴 人 株式会社ルートート

同訴訟代理人弁護士 鹿 内 徳 行

同 高 松 政 裕

主 文

1 本件控訴を棄却する。

2 控訴費用は、控訴人の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 控訴の趣旨

1 原判決を取り消す。2 被控訴人は、控訴人に対し、640万円及びこれに対する令和5年1月24日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。3 訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人の負担とする。4 仮執行宣言

第2 事案の概要(略称等は、特に断らない限り、原判決の表記による。ただし、

「原告」を「控訴人」と、「被告」を「被控訴人」と、「別紙」を「原判決別紙」とそれぞれ読み替える。)1 本件は、原判決別紙控訴人商品目録記載のハンドバッグ(控訴人商品)を製造・販売する控訴人が、原判決別紙被控訴人商品目録記載1ないし7のハンドバッグ(被控訴人商品)を販売する被控訴人に対し、被控訴人商品は控訴人商

5 品の形態を模倣した商品であり、被控訴人商品を販売等する行為は、不正競争防止法(不競法)2条1項3号の不正競争に該当すると主張して、同法4条に基づき、損害賠償金640万円及びこれに対する不正競争の後の日である令和5年1月24日から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。原判決は、被控訴人商品が控訴人商品の形態を模倣した商品であるとは認められないとして、控訴人の請求を棄却した。控訴人は、これを不服として本件控訴を提起した。2 前提事実、争点及び争点に関する当事者の主張は、次のとおり補正し、後記3のとおり当審における控訴人の補充主張を付加するほか、原判決「事実及び理由」中(以下、原判決を引用する場合に「事実及び理由」中との記載を省略する。)第2の1ないし3(1頁21行目から9頁8行目まで。原判決別紙主張整理表を含む。)に記載のとおりであるから、これを引用する。

⑴ 原判決2頁6行目ないし7行目に「F081 134」とあるのを「F081D134」と、同頁8行目に「F081 124」とあるのを「F081D124」とそれぞれ改める。

⑵ 原判決2頁17行目に「L.T.デリ.CORON」とあるのを「LT.デリ.CORON」と改める。

⑶ 原判決2頁23行目に「2 争点とこれに対する当事者の主張」とあるのを「2 争点」と改める。

⑷ 原判決6頁13行目の末尾に「について」と加える。

⑸ 原判決6頁26行目に「出店」とあるのを「出展」と改める。

⑹ 原判決8頁2行目に「同月27日には、」とあるのを「同月27日以降、」と改め、同頁3行目の「受けたものの(」の次に「同月31日時点で」と加える。

⑺ 原判決8頁10行目に「期間限定ショップへの出展」とあるのを「期間限定ショップの出店」と改める。

5 3 当審における控訴人の補充主張

⑴ 原判決は、被控訴人商品の形態と控訴人商品の形態とは、少なくとも、①本体の正面及び背面から見た際の全体的な形状、②正面に位置するタグの有無、③背面に位置する外部ポケットの有無、④内ポケットの位置及び形状、

⑤ハンドル付け根部分の口回りの段差の程度、⑥ハンドル付け根部分の縫製の仕様の点で相違する旨認定した上で、上記相違点のうち、①、②及び④ないし⑥は両商品の形態の実質的同一性を否定するに足りない程度の相違にとどまるとしながら、少なくとも③は些細な相違とはいえないため、両商品の形態は実質的に同一のものとはいえない旨判断した。しかしながら、上記判断は、以下のとおり誤りである。ア 被控訴人商品において外部ポケットは背面(バック)につけられているところ、背面側は身体に隠れるものであるから、ファッション性等の観点からは正面(フロント)が重要である。被控訴人も、被控訴人商品の広告において、外部ポケットのある側をわざわざ「Back」と表示しているとおり、外部ポケットの有無は、バッグを選ぶ上で注目されるものではなく、取引先及び需要者から見て、商品の形態において些細な相違にすぎない。イ 控訴人商品には、背面部の内側に黒色の長方形状の内ポケットが存在する。被控訴人は、上記長方形状の黒色の内ポケットのデザインを、被控訴人商品の背面の外側にサイズを若干大きくして付けることとし、それが背面の外部ポケットになったにすぎない。被控訴人商品における外部ポケットは、被控訴人が依拠し、模倣した控訴人商品の内側をみれば、デザイン等の着想は容易であるどころか、そのデザイン・形態をも模倣しているだけである。ウ バッグには、内側や外側に、大小様々なポケットが付いているのが通常である。被控訴人が販売するバッグ等についても、ポケットは付いている

5 ものの、そのデザインや形態には種々のものがあり、一貫性はない。どのバッグにも通常付いているポケットを、被控訴人が販売するバッグにおいては「ルーポケット」と称することが被控訴人のアイデンティティーであると仮定しても、「ルーポケット」という名称の象徴となるような形状や形態は存在せず、被控訴人商品の外部ポケットのような黒色の長方形状の外部ポケットを「ルーポケット」と称している他の商品も存在しない。したがって、取引者及び需要者からみて、どれが「ルーポケット」なのか、それがバッグのどこについているのかさえ認識できない。そもそも、被控訴人のインターネットサイトには、被控訴人商品の外部ポケットが「ルーポケット」であるという説明もないから、当該外部ポケットは、取引先及び需要者の認識において、被控訴人のアイデンティティーとは関係のないことである。しかも、被控訴人は、被控訴人商品をインターネットサイトで販売するにつき、外部ポケットがある側を「Back」と表示し(甲4の2枚目、甲72)、被控訴人の新商品紹介のウェブサイトでも、正面(フロント)側のみを表示しており(甲6の4枚目)、背面の外部ポケットについては「Back」とした上で、「すぐに取り出したい小物入れに便利です。」と機能や利便性を紹介している(甲7の5枚目)。加えて、被控訴人がインターネットサイトで表示する女性のモデル全員が、被控訴人商品をその正面(フロント)が外側から見えるように所持し、外部ポケットがついた側は身体の内側に隠れるように所持している(甲4の2枚目、甲7の5枚目、甲72)。このように、「ルーポケット」であるという説明すらされていないことからすれば、被控訴人の客観的な意思解釈からしても、被控訴人商品において外部ポケットが訴求ポイントであるなどということはないし、実際にも、外部ポケットのある背面は、外観において第三者から見えないこと、衣服等と合わせるなどファッション性に関係ないこと等からして、被控訴

5 人商品の訴求ポイントであるはずがない。被控訴人商品におけるデザイン上の訴求ポイントは、控訴人商品の正面及び背面とほぼ同じ形態である被控訴人商品の正面なのであり、背面の外部ポケットは、それが視認性や商品形態に対して影響を与えることはなく、単に機能や利便性の観点から設置されたにすぎないものである。エ 需要者である女性がバッグを選ぶ際には、着用する衣服と合うか、外出を楽しめるようなものであるかといったファッション性やデザイン性を重視している。そして、女性がバッグを持つ際は、バッグの顔である正面(フロント)を身体の外観、第三者から見えるように持つものであり、控訴人商品や被控訴人商品についても、高級感あるパイピングが装飾された正面(フロント)が見えるように持つ。被控訴人商品において、外部ポケットは、黒色の部位で、高級感を表現するパイピングによるライン等を隠すものであり、ファッション性に著しく劣る上、被控訴人自身が「Back」と示しているように、デザイン性からみても被控訴人の商品であることを表示する部分でもないことからすれば、需要者である女性は、黒色の外部ポケットをわざわざ外観にし、

第三者に見えるように持つことはおよそ考えられないし、背面(バック)

が第三者から少し見えることがあっても気にすることはなく、あくまで正面(フロント)に注意をしている。被控訴人商品を机上に置く場合も、正面(フロント)を外観にし、第三者から見えるように置かないと、黒色の外部ポケットが第三者に見えてしまうのであり、綺麗なパイピングが施されたデザインと比較して、そのようなことはおよそ考えられない。以上のように、取引者及び需要者である女性はバッグの正面(フロント)のデザイン性を重要視するものであり、通常現れない背面(バック)が少し見えるといっても、背面の外部ポケットの有無は、些細な相違にすぎない。

5 オ 控訴人商品と被控訴人商品とは、パイピングのライン、バッグ本体やハンドルの生地素材、バッグ本体やハンドルの形状やデザインといった多くの点で共通しており、相違点とされるもののうち背面に位置する外部ポケットの有無以外の点は、いずれも些細な相違にすぎないことからすれば、被控訴人商品は控訴人商品と実質的に同一の形態であり、控訴人商品への依拠性も明らかである(控訴人商品のハンドル部から正面・底面・背面・ハンドル部を展開した生地と被控訴人商品のハンドル部から正面・底面・背面・ハンドル部を展開した生地との対比(甲73の1~11)によっても、控訴人商品への依拠性は明らかである。)。被控訴人は、控訴人商品に依拠して被控訴人商品を製造するに当たり、背面のみに、収納機能や利便性をもつポケットを付けることで、デッドコピーを回避しようとしたのであるが、需要者である女性は、ポケットがある背面のファッション性やデザイン性を検討して被控訴人商品を購入するわけではないし、被控訴人商品における外部ポケットがブランドを示すものとして購入意欲を誘引するもの でもない。 したがって、控訴人商品に依拠し、その形態をほぼ同一に模倣した上で、被控訴人商品の背面に外部ポケットを敢えて付けたというだけで、被控訴人商品と控訴人商品の形態の実質的同一性が否定されることはないというべきである。

⑵ 被控訴人は、原審において、主に控訴人商品と他社のバッグとの類似性などを主張していたにもかかわらず、原判決は、被控訴人のアイデンティティーや被控訴人商品の訴求ポイント、相違点③に係る構成の着想困難、被控訴人商品の持ち方や置き方を仮定した上での商品の見え方を理由に形態の実質的同一性の有無を判断したものである。これは、被控訴人の主張に基づかない裁判官独自の判断であり弁論主義違反であることに加え、被控訴人の主張していない事項や仮定に基づき被控訴人に有利な判断をするものであり、公平性を欠く。

5 ⑶ 控訴人は、どのようなバッグが、女性にとって関心を惹くのかなど経験や独自の着想を用いて試行錯誤しながら控訴人商品を開発し、実際に製造する工場を開拓したものであり、その過程において、資本や多くの時間を投じている。それにもかかわらず、被控訴人は、控訴人商品に依拠し、背面部の外部ポケットが存在する以外は控訴人商品とほぼ同一の形態である被控訴人商品を安価で大量に販売した。このように外部ポケットを付けさえすれば不正競争に該当せず、控訴人は保護を受けられないというのでは、一生懸命に開発し、資本を投下し、尽力して製造販売しても、いとも簡単にそれらが無に帰することとなる上、安価な模倣バッグによって、収益すら得られないということになる。これでは、ブランド品に何か付ければ合法になることを認めるようなものであり、知的財産保護等として著しく不当である。したがって、仮に被控訴人商品と控訴人商品の形態の実質的同一性が否定されるとしても、不競法における開発者の保護を重視し、被控訴人商品が控訴人商品の形態を模倣したことを肯定すべきある。

第3 当裁判所の判断

1 当裁判所も、控訴人の請求は理由がないから棄却されるべきものであると判

断する。その理由は、当審における控訴人の補充主張も踏まえ、次のとおり補正し、後記2のとおり当審における控訴人の補充主張に対する判断を付加するほかは、原判決の第3の1(9頁10行目から20頁1行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。

⑴ 原判決12頁17行目に「底面は同表の【底面】頁」とあるのを「底面は

同表【底面】の頁」に改める。

⑵ 原判決13頁5行目に「バッグ本体正面の高さ」とあるのを「中心丈(バ

ッグ本体正面の高さ)」と改める。

⑶ 原判決13頁25行目に「ハンドルの持ち手付け根間」とあるのを「ハン

ドルの付け根間」と改める。

5 ⑷ 原判決14頁6行目に「捩り」とあるのを「捻り」と改める。

⑸ 原判決15頁1行目の「その形状は、」の次に「ハンドル部分を捻り、付け

根において正面側に位置している生地をハンドル上部において下向きにした状態で」を加える。

⑹ 原判決15頁19行目に「LT.デリ.CORONパターンAシリーズ」と

あるのを「LT.デリ.CORONパターン‐Aシリーズ」と改める。

⑺ 原判決15頁22行目の末尾に改行の上、「いずれの被控訴人商品におい

ても、その背面には、当該商品に施されたパイピングと同色系の外部ポケットが設けられている(甲37)。」を加える。

⑻ 原判決15頁26行目に「商品の形態」とあるのを「形態の商品」と、同

行から16頁1行目にかけて「実質的に同一の商品の形態」とあるのを「実質的に同一の形態」と改める。

⑼ 原判決17頁17行目行頭から19頁21行目末尾までを次のとおり改め

る。「以上の共通点及び相違点の認定に基づき、被控訴人商品と控訴人商品が商品全体の形態が酷似し、その形態が実質的に同一であると認められるか否かについて検討する。a 相違点①、②及び④ないし⑥についてまず、相違点①についてみると、バッグ本体(ハンドル部分を除く。)を正面から観察すると、被控訴人商品では、控訴人商品の略逆台形状に比して上辺側の内角がやや大きい略逆台形状(言い換えれば、略長方形に近い形状)となっているものの、その角度の差異はさほど大きなものではないため、かかる相違は商品の全体的形態に与える変化が乏しく、商品全体の形態からみると些細な相違にとどまるものと認められる。次に、相違点④についてみると、バッグ本体内面に設けられたポケットが、控訴人商品では、内面の背面側に黒色の本革のポケットであるの

5 に対し、被控訴人商品では、内面の脇側片方にのみ設けられている点で

相違し、相違点⑥については、ハンドルの付け根部分が、控訴人商品では、バッグ本体に四角形状に縫製されている(すなわち、口部付近でもバッグ本体に縫い付けられている)のに対し、被控訴人商品では、四角形状に縫製されておらず(すなわち、口部付近はバッグ本体に縫い付けられておらず)、下側のみが縫製され固定されている点で相違するものの、いずれも、バッグ内側の外観にさほど影響しない部位における相違であって、商品の全体的形態に与える変化は乏しく、商品全体からみて些細な相違にとどまるものと認められる。さらに、相違点⑤についてみると、バッグ正面口回りに施されているパイピングと脇面口回りに施されているパインピングとの段差に関し、控訴人商品では、脇面口回りのパイピングが正面口回りのパイピングよりも15mm高いのに対し、被控訴人商品では、脇面口回りのパイピングが正面口回りのパイピングよりも10mm高いという点で相違するところ、かかる点は、外部から視認可能なバッグの外観における相違であり、しかも、商品のデザイン上の特徴の一つであるパイピング及びそれにより形成される形状に影響する相違であることからすれば、必ずしも需要者及び取引者の注意を惹かないとはいえないものの、脇面口回りのパイピングが正面口回りのパイピングよりも高く両者に段差が設けられている点は共通していること及び段差の程度の差異は5mmにすぎず僅かであることに照らせば、なお商品の全体的形態に与える影響は乏しく、商品全体からみれば些細な相違にとどまるものと認められる。また、相違点②についてみても、控訴人商品では、ハンドル下のバッグ本体正面上部の中央付近にブランド名である「FEEL AND TASTE」という文字が刻印された黒い長方形のタグが縫い付けられているのに対し、被控訴人商品にはこのようなタグは存在しないという点で相違するところ、外部か

5 ら視認可能なバッグの外観における相違であり、しかも、商品のブラン

ド表示部分に係る相違であることからすれば、必ずしも需要者及び取引者の注意を惹かないとはいえないものの、控訴人商品に配置されたタグは、バッグ本体の口回りに施されたパイピングと同色系の比較的小さなもの(バッグ本体を正面視した際に看取される面積と比べ相当小さいもの)であること、ハンドル付け根の間において口回りに施されたパイピングに連続して配置されていることに照らすと、当該タグの存在が商品の全体的形態に与える影響は乏しく、このようなタグの有無は、商品全体からみれば些細な相違にとどまるものと認められる。b 相違点③について被控訴人商品では、バッグの背面側において、バッグ本体部分の外側に、ハンドルの付け根間と略同幅の横寸法かつ中心丈よりやや短いが略同程度の縦寸法の大きさの長方形状であり、かつパイピングと同色系のポケットが存在し、当該ポケットは、パイピングにより形成される略二等辺三角形の内側で、ハンドル付け根間を結ぶパイピングにより画された区画のうち下方の略台形状部分のほぼ全体を覆うように配されているのに対し、控訴人商品では、外部ポケットは存在しないという点で相違する。そのため、控訴人商品では、バッグの背面視においても、正面視と同様に、底面からハンドル上部にかけてパイピングにより形成された縦長の略二等辺三角形状が際立って看取され、これにより、商品全体において、同略二等辺三角形状が、強く印象付けられる形態上の特徴の一つとなっており、看者の美的感覚に訴えかける点となっているのに対し、被控訴人商品では、バッグの背面側の上記位置に、上記の大きさ及び色の外部ポケットが配されているため、背面視において、底面からハンドル上部にかけてパイピングにより形成された縦長の略二等辺三角形状の印

5 象は相当程度に後退し、むしろ、背面中央部に大きな面積を占める外部

ポケットが際立って看取される。そして、外部ポケットが配されている面がバッグの背面側であるとはいえ、被控訴人商品は、基本的形状が上部に開口した袋状で、普段使いに供されることの多いトートバッグであることやその商品全体のデザイン(形態)に照らすと、「正面」や「背面」というのは必ずしも固定的なものではなく(販売者において、一方の面を「正面」と、その反対の面を「Back」と規定したとしても、それは商品の販売戦略上のものにすぎず、商品の形態自体から規定されるものではないし、需要者においては、それぞれの好みや使用シーンに応じて、両面のいずれもが正面にも背面にもなり得るものである。)、背面側もバッグの外観を形成している面であることからすれば、被控訴人商品において、上記外部ポケットの存在は、特段注意深く観察しなくとも容易に視認し得るものであり、かつ、商品全体のデザイン(形態)に与える影響も相当に大きいと認められる。このように、上記外部ポケットは、その大きさ、位置、色彩を考慮すると、控訴人商品全体を見た場合に際立って看取され、看者の美的感覚に訴えかける点となっていた縦長の略二等辺三角形状の印象を、被控訴人商品においては大きく後退させるものであり、商品全体の印象を大きく変えるものであると認められる。次に、上記相違点に係る着想の難易についてみるに、バッグの外観を形成する外面に、かつ商品のデザイン上の特徴の一つであるパイピングにより形成される形状の中央部に、このように大きな外部ポケットを配しつつ商品全体のデザイン(形態)を定めることには、その具体的な色彩、寸法、形状及び配置等を検討する上で相応の工夫を要するものと考えられるから、被控訴人商品における相違点③に係る形態は、ありふれたものであるとはいい難い。かえって、被控訴人は、そのウェブサイトにおいて、「カンガルーのおなかの袋からヒントを得た「ルーポケット」

5 が、ルートートにはかならず付いています。これで小物の“迷子”はと

ても少なくなりました。出し入れの多い小物はルーポケットへ。」との記載と共に、ブランドのオリジナルサイドポケットとして「ルーポケット」を紹介し(乙1)、あるいは、「ルーポケット」について「出し入れの多い小物はルーポケットへ。ROOTOTEのアイデンティティです。」と紹介していること(乙3)に照らすと、被控訴人は、その取り扱うブランドのバッグの外側面に「カンガルーのおなかの袋のような」役割を担うポケットを配置するという方針を採用しているものと認められる。そうすると、このような商品開発の方針が、被控訴人商品においても、バッグの外観を形成する外側の面に大きな外部ポケットを配する動機の一つとなっており、当該動機に基づき、具体的な色彩、寸法、形状及び配置等を工夫することで、被控訴人商品における外部ポケットの形態に至ったものであり、同外部ポケットは、被控訴人商品の外観に大きな影響を与えるものであることからすれば、当該形態に着想することが必ずしも容易であったとは認められない。さらに、上記のとおり、被控訴人商品において「正面」や「背面」というのは必ずしも固定的なものではないことに加え、被控訴人のウェブサイトにおける「今月の新商品」を紹介するページには、被控訴人商品の正面の画像と共に、背面の画像も併せて掲載されていること(甲37)、インターネット販売サイトにおける商品紹介においても、被控訴人商品の正面の画像と並んで背面の画像が併せて掲載されていること(甲4の2頁、甲7、72)、このうちファッション通販サイトである「オンワードクローゼット」の被控訴人商品の紹介記事(甲7)では、被控訴人商品の正面の画像と背面の画像が同じ大きさで横に並べた上で、「外付けのルーポケットがデザインのポイント!」、「すぐに取り出したい小物入れに便利です。」などと記載されていること等にも照らせば、被控訴人商品

5 において、背面外側に外部ポケットを設けた形態は、需要者及び取引者

の注意を相応に惹く部分であると認められる。以上のとおり、被控訴人商品においては、背面外側に外部ポケットが存在することで、底面からハンドル上部にかけてパイピングにより形成された縦長の略二等辺三角形状の印象は後退し、外部ポケットが際立って看取されるものとなっていること、それに加えて、外部ポケットを含む背面外側の形態がありふれたものである、あるいは、当該形態に至る着想が必ずしも容易であったなどとはいえないことを踏まえると、当該形態は需要者及び取引者の注意を相応に惹く部分であるといえ、相違点

③に係る被控訴人商品の形態は、商品に相応の形態的特徴をもたらして

いる部分であるといえる。したがって、外部ポケットがおよそ存在しない控訴人商品の形態との類比を判断する上で、相違点③に係る形態は無視できない相違であるというべきである。c そうすると、被控訴人商品と控訴人商品の形態は、上記のとおり共通点が存在し、また、相違点①、②及び④ないし⑥に係る相違も商品全体から見て些細な相違にとどまるとしても、相違点③に係る被控訴人商品の形態は、被控訴人商品に相応の形態的特徴をもたらしている部分であって、両商品の形態の類比を判断する上で無視できないものであるから、被控訴人商品の形態が控訴人商品の形態と実質的に同一のものであるとは認められない。」

2 当審における控訴人の補充主張に対する判断

⑴ 控訴人は、被控訴人商品において、外部ポケットは、背面(バック)につ

けられているところ、背面側は身体側に隠れるものであるから、ファッション性等の観点からは正面(フロント)が重要であり、被控訴人も、被控訴人商品の広告において、外部ポケットのある側をわざわざ「Back」と表示しているとおり、外部ポケットの有無は、バッグを選ぶうえで注目されるも

5 のではなく、商品の形態において些細な相違にすぎない旨主張する。

しかし、不競法2条1項3号にいう「商品の形態」とは、需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状等をいうところ(同条4項)、基本的形状が上部に開口した袋状で、普段使いに供されることの多いトートバッグである被控訴人商品において、「正面」や「背面」というのは、必ずしも固定的なものではない。すなわち、補正の上で引用した原判決第3の1⑵イ(ウ)bで説示したとおり、販売者である被控訴人が、被控訴人商品の一方の面を「正面」と、その反対の面を「Back」と規定したとしても、それは商品の販売戦略上のものにすぎず、商品の形態自体から規定されるものではないし、需要者においては、それぞれの好みや使用シーンに応じて被控訴人商品を使用するのであり、両面のいずれもが正面にも背面にもなり得るものである。そうすると、外部ポケットが存在するバッグの背面外側の形態は、需要者及び取引者の注意を相応に惹く部分であるといえる。そして、このような観点をも踏まえれば、背面外側に外部ポケットが存在する被控訴人商品の形態と外部ポケットがおよそ存在しない控訴人商品の形態との類否を判断する上で、相違点③は無視できない相違であるというべきである。したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。

⑵ 控訴人は、被控訴人商品における外部ポケットは、控訴人商品に依拠し、

その背面内側の黒色の長方形状の内ポケットのデザインを模倣して、被控訴人商品の背面外側にサイズを若干大きくして付けたというにすぎないから、そのデザインの着想は容易である旨主張する。しかし、控訴人商品の背面内側に配された長方形状の内ポケットと被控訴人商品の背面外側に配された外部ポケットとは、その配置位置やサイズが大きく異なる上、バッグの外観を構成しない内側の面に、すなわち商品全体のデザインへの影響が少ない部分に利便性を考慮してポケットを設けるという

5 のと、バッグの外観を構成する外側の面に、すなわち商品全体のデザインへ

の影響が少なくない部分にポケットを設けるというのとでは、デザインに至る着想において明らかな隔たりがあることからすれば、被控訴人商品における外部ポケットが控訴人商品における上記内部ポケットに依拠し、これを模倣することにより着想されたものであるとは認められない。そして、被控訴人商品における外部ポケットを含む背面外側の形態がありふれたものであるとも、当該形態に至る着想が必ずしも容易であったともいえないことは、補正の上で引用した原判決第3の1⑵イ(ウ)bで説示したとおりである。したがって、控訴人の上記主張は採用することができない。

⑶ 控訴人は、要旨、被控訴人が販売するバッグ等に設けられているポケット

には種々のものがあり、デザインや形態に一貫性はなく、特定のデザインや形態を指して「ルーポケット」と称しているわけではないから、需要者及び取引者から見て、被控訴人商品の外部ポケットを被控訴人のアイデンティティーに係る「ルーポケット」であると認識することはなく、被控訴人商品において外部ポケットの存在は訴求ポイントになるような構成ではない旨主張する。しかし、外部ポケット自体の形態が被控訴人のブランド理念を示すものとして一般化しているものでなければ、その存在は商品全体の形態に影響を及ぼさないというものではないし、需要者及び取引者の注意を惹かないというものでもない。補正の上で引用した原判決第3の1⑵イ(ウ)bで説示したとおり、被控訴人商品においては、背面外側に外部ポケットが存在することで、底面からハンドル上部にかけてパイピングにより形成された縦長の略二等辺三角形状の印象は後退し、外部ポケットが際立って看取されるものとなっており、その形態がありふれたものであるとも、当該形態に至る着想が必ずしも容易であったともいえないこと等を踏まえると、上記外部ポケットが存在するバッグ背面外側の形態は需要者及び取引者の注意を相応に惹く部分であ

5 るというべきである。

⑷ 控訴人は、バッグを持つとき及び置くときは、需要者である女性はバッグ

の顔である正面(フロント)のデザインが外観に現れ、第三者から見えるようにし、着用する衣服や靴等と合うかどうかなどファッション性を考えるものであり、背面部については、第三者から少し見えることがあっても気にすることはなく、あくまで正面(フロント)に注意をしている旨主張する。しかし、トートバッグである被控訴人商品において、「正面」や「背面」というのは、必ずしも固定的なものではないことは、前記⑴で説示したとおりであり、需要者は、それぞれの好みや使用シーンに応じて被控訴人商品を使用し、使用時の持ち方や置き方に応じて、どちらの面を外側に向けるかは常に一定ではなく、変化し得るものである。したがって、需要者において、販売者の規定した正面側のみに注意を惹かれ、その反対側の面(背面)にはおよそ注意を惹かれないというものではない。また、補正の上で引用した原判決第3の1⑵イ(ウ)bで説示したとおり、被控訴人による商品紹介やインターネット販売サイトにおける商品紹介においても、被控訴人商品の正面の画像のみならず、背面の画像も併せて掲載されており、中には、「外付けのルーポケットがデザインのポイント!」、「すぐに取り出したい小物入れに便利です。」などと背面外側に設けた外部ポケットの存在を訴える記載もあることからすれば、被控訴人商品における外部ポケットの存在は、需要者及び取引者の関心を惹く部分の少なくとも一つであることは明らかである。したがって、控訴人の上記主張は採用できない。

⑸ 控訴人は、原判決における判断は、被控訴人の主張に基づかない裁判官独

自のものであり、弁論主義に反する上、被控訴人に有利な判断であって公平性を欠く旨主張する。しかし、被控訴人は、原審において、被控訴人商品を販売することが不競

5 法2条1項3号の不正競争に該当すること、すなわち被控訴人商品と控訴人

商品の形態の実質的同一性及び依拠性をいずれも争っていたのであるから、原判決が両商品の形態に実質的同一性が認められるか否かについて判断したことは、何ら弁論主義に反するものではない。なお、被控訴人は、原審第1準備書面において、被控訴人が、カンガルーのポケットを想起するようなポケットを付した商品を展開していることや、被控訴人の取り扱うバッグの多くには特徴的なポケットを付しており、「ルーポケット」という名称を付していること、被控訴人商品の最大の特徴は、外側に付けられた大きなポケットであること等を主張していたのであり、この点からも原判決に弁論主義違反がないことは明らかであるし、かような当事者の主張をも踏まえ、原判決は実質的同一性の有無について判断したものであって、その手続や判断に当事者の公平を欠く点があるとは認められない。

⑹ 控訴人は、仮に被控訴人商品と控訴人商品の形態の実質的同一性が否定さ

れた場合であっても、被控訴人商品が控訴人商品の形態を模倣したことを肯定すべきである旨主張する。しかし、不競法2条1項3号にいう「模倣する」とは、他人の商品の形態に依拠して、これと実質的に同一の形態の商品を作り出すことをいう(同条5項)のであり、同条1項3号の不正競争に該当するというためには、他人の商品への依拠性と他人の商品の形態との実質的同一性を要する。したがって、被控訴人商品が控訴人商品の形態との実質的同一性を欠く場合には、同号所定の不正競争に該当しないことは法の規定から明らかであって、控訴人の上記主張は採用できない。

3 以上に認定判断したところは、当審における控訴人のその余の補充主張によ

っても、左右されるものではない。

4 よって、原判決は相当であって、本件控訴は理由がないから棄却することと

して、主文のとおり判決する。

5 知的財産高等裁判所第3部

裁判官今 井 弘 晃裁判官柵 木 澄 子裁判長裁判官中平健は、退官のため署名押印することができない。裁判官今 井 弘 晃

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