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令和7(ワ)12790損害賠償等請求事件

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裁判所 請求棄却 大阪地方裁判所
裁判年月日 令和8年8月27日
事件種別 民事
当事者 原告株式会社ノックオンウッド
被告XCorp.
法令 著作権
民事訴訟法248条1回
キーワード 侵害22回
損害賠償2回
主文 1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事件の概要 1 本判決で用いる呼称(略語) (1) 本件各映画:別紙著作物目録記載1ないし3の各映像作品(甲3の1ない し3) (2) 本件サイト:被告が運営するSNSである「X」のウェブサイト (3) 本件各投稿:本件サイトに投稿された別紙投稿記事目録記載1ないし5の 各投稿記事 (4) マイファンズ: 「myfans」との名称の動画共有サイト (5) A:原告の代表取締役である A (6) 情プラ法:特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等へ の対処に関する法律 2 事案の要旨 本件は、原告が、本件サイトにされた本件各投稿により、本件各映画の複製 物が無断で本件サイトにアップロードされているとして、本件サイトを運営・ 管理する被告に本件各投稿の削除を申請したにもかかわらず拒否され、これに

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判決文

令和8年8月27日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

令和7年(ワ)第12790号 損害賠償等請求事件

口頭弁論終結日 令和8年7月6日

判 決

原 告 株式会社ノックオンウッド

代表者代表取締役

訴訟代理人弁護士 満 村 和 樹

被 告 X C o r p .

日本における代表者

訴訟代理人弁護士 山 崎 雄 大

同 福 原 聡

主 文

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

被告は、原告に対し、7485万4880円及びこれに対する令和7年11月4日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を支払え。

第2 事案の概要

1 本判決で用いる呼称(略語)

(1) 本件各映画:別紙著作物目録記載1ないし3の各映像作品(甲3の1ないし3)

(2) 本件サイト:被告が運営するSNSである「X」のウェブサイト

(3) 本件各投稿:本件サイトに投稿された別紙投稿記事目録記載1ないし5の各投稿記事

(4) マイファンズ:「myfans」との名称の動画共有サイト

(5) A:原告の代表取締役である A

5 (6) 情プラ法:特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律2 事案の要旨本件は、原告が、本件サイトにされた本件各投稿により、本件各映画の複製物が無断で本件サイトにアップロードされているとして、本件サイトを運営・管理する被告に本件各投稿の削除を申請したにもかかわらず拒否され、これにより原告の著作権(複製権及び公衆送信権等)及び著作者人格権が侵害されたと主張し、被告に対し、不法行為に基づく7645万4880円の損害賠償金及びこれに対する令和7年11月4日(不法行為の後の日)から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を請求する事案である。なお、原告は、提訴時、本件各投稿の削除も請求していたが、本件各投稿が削除されたため、同請求を取り下げた。3 前提事実(争いのない事実、掲記各証拠及び弁論の全趣旨から容易に認められる事実)

(1) 当事者ア 原告は、経営コンサルティング業等を目的とする会社であり、マイファンズにおいて、「 B 」名のアカウントでアダルト動画作品の販売を行っている(甲1、2、8、9)。イ 被告は、アメリカ合衆国ネバダ州において設立された会社であり、本件サイトを設置・運営し、そのシステムを管理している(甲5、6)。

(2) 本件各投稿削除の申請ア 原告の代表取締役であるAは、令和7年10月31日、本件各投稿は、原告が制作、販売している本件各映画を無断で転載するものであり、原告の著作権を侵害しているとして、被告が設定した削除申請フォームに必要事項を記入し、被告に対し、本件各投稿の削除を申請した(甲10

5 ないし14、25)。イ 被告は、上記削除申請を受け、Aに対し、著作権に関する報告を受領したこと、できるだけ早く返信をすることなどを記載した自動返信メールを送信した(甲10ないし14)。ウ 被告は、令和7年11月1日、Aに対し、上記アの申請からは本人確認又は代表者であることの確認ができなかったとして、公的な身分証明書の写しをアップロードするようメールで求め、Aは、同日、Aの運転免許証の写しをメールで被告に送信した(甲15)。エ 被告は、令和7年11月4日、上記アの申請について検討したが、本件各投稿に関しこれ以上の措置は不要であると判断した旨、メールでAに通知した(甲16ないし20)。

(3) 本訴の提起等ア 原告は、令和7年11月29日、本件訴えを提起した。イ 本件各投稿は、令和8年5月22日までに、削除され、又は本件各投稿に係るアカウントが凍結された(乙2ないし6)。ウ 原告は、令和8年6月8日、本件各投稿の削除請求を取り下げる旨の取下書を提出した。同取下書は、同月9日、被告に送達され、同月24日、上記請求を取り下げた。4 主たる争点

(1) 本件各映画の著作権の帰属

(2) 被告につき情プラ法3条1項1号又は2号所定の事由があると認められるか

(3) 原告に生じた損害

第3 主たる争点に対する当事者の主張

1 争点1(本件各映画の著作権の帰属)について

【

(原告の主張)

】

5 原告は、本件各映画の製作に発意と責任を有する者であり、映画製作者に該

当するから、本件各映画の著作権を有している。すなわち、原告は、出演希望のあった女優に出演料を支払い、本件各映画に出演して演技をさせ、Aがその演技の相手方となり、原告所有のビデオカメラを用いて撮影し、原告名義で、その撮影した動画データの編集を依頼し、制作した本件各映画を、マイファンズ上の「 B 」名のアカウントで販売していた。上記「 B 」アカウントのプロフィールには、「本人情報(氏名・生年月日)」として原告代表取締役であるAの氏名が記載されている。したがって、本件各映画の著作権は原告に帰属する。【

(被告の主張)

】原告は、本件各映画がマイファンズの各閲覧用URLに投稿されている旨主張するところ、これらのURLを閲覧しても、本件各映画の画面表示には原告の名称は記載されておらず、その他著作者名の表示も一切記載されていない。また、本件各映画は、マイファンズにおいて「 B 」と称するアカウントとつながっているが、同アカウントが表示される画面にも原告の名称は記載されておらず、「本人情報(氏名・生年月日)」には、会社である原告とは異なる法的主体であるA個人の氏名が記載されているのみであり、その他著作者の表示も一切記載されていない。

2 争点2(被告につき情プラ法3条1項1号又は2号所定の事由があると認め

られるか)について【

(原告の主張)

】被告が用意している削除申請フォームは、動画データをそのまま提出する仕組みではなく、ウェブサイト上にアップロードされていることを前提としてそのURLを入力させるというものである。著作権者によりアップロードされた正規のコンテンツであれば、そのほとんどは有料であり、ID・パスワードを入力するなどしなければ閲覧できないものと思われる。そうすると、URLか

5 らウェブページを確認しようとしただけで「必要な調査」といえるのであれば、

ほとんど全ての正規コンテンツは、無断転載等されても、まともに調査されることなく削除申請を拒否されることになり、不当である。また、7日間もあれば、追加資料を少なくとも一度は提出させることはできるし、本件では、削除申請後、被告から原告に身分証明書の提示を求めるメールが送信されており、その際に追加の動画資料の提供を求めることもできたから、追加資料の提出等が物理的に不可能であったとはいえない。被告の対応は、杜撰であり、情プラ法23条及び25条1項所定の調査義務に反している。【

(被告の主張)

】情プラ法3条1項2号の解釈として、流通している情報が自己の著作物であるとの主張について何の根拠も提示されないような場合には、他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認められる「相当の理由があるとき」に該当しないと解されているところ、本件各映画の投稿URLや「 B 」と称するアカウントには、原告の名称や著作者名の表示は一切記載されていない。また、本件各投稿の削除申請には、原作品へのリンクとして本件各映画の投稿URLが、侵害投稿へのURLとして本件各投稿のURLが、それぞれ記載されているが、本件各映画の投稿URLが所在するマイファンズに接続しても、本件各映画の内容を確認するためには「本編を視聴する」とのアイコンをクリックしてメールアドレスやパスワードを入力することが求められるのであり、本件各投稿の引用動画が本件各映画と同一のものか、本件各映画がいかなる範囲で引用されているかなどを確認することができない。したがって、被告において、原告の著作権が侵害されていることを知っていたとはいえず、知ることができたと認められる相当の理由があったともいえない。なお、本件以前に原告が同様の削除申請を行った際に、被告が対応したことがあったからといって直ちに被告において同様の対応をしなければならないわけではないし、被告は、情プラ法23条及び25条1項に基づき、必要な調査

5 を行い(被告は、多数の利用者からの削除申請に対し、7日間という極めて短

い期間内に上記調査を行いその結果を通知しなければならないため、各削除申請について個別に申請者とやり取りをし、追加資料の提出等を促すまでの調査を行うことは、物理的に不可能である。)、その調査結果に基づいて削除申請には応じられない旨、通知しているから、被告の対応が杜撰であったとはいえない。また、仮に被告において本件各映画を視聴しその内容を確認したとしても、上記のとおり、原告がその著作権を有することを確認することができないのであるから、その意味においても、上記「相当の理由」があったとはいえない。

3 争点3(原告に生じた損害)について

【

(原告の主張)

】

(1) 著作権法114条1項1号は、公衆送信が公衆によって受信されることに

より作成された著作物の数量とその単位数量当たりの利益の額を乗じた額を損害額と推定しているところ、本件においては、本件各投稿に対し、これらの投稿をいつでも見られる状態にする機能である「ブックマーク」がされた回数を、同号における上記数量と考え、「ブックマーク回数×単価」により損害額を計算すべきである。また、仮に上記のような考え方を採ることができないとしても、「ブックマーク」をした人数が本件各映画のダウンロード回数の近似値になると考えることが合理的であるから、民事訴訟法248条に基づき「ブックマーク回数×単価」により損害額を計算すべきである。以上によれば、本件各投稿による著作権侵害によって原告に生じた損害は以下のとおりである。ア 別紙投稿記事目録記載1の投稿 5313回×2480円(甲22)=1317万6240円イ 同目録記載2の投稿 1843回×2480円=457万0640円ウ 同目録記載3の投稿 176回×4000円(甲23)=70万400

5 0円

エ 同目録記載4の投稿 8104回×3000円(甲24)=2431万2000円オ 同目録記載5の投稿 7273回×4000円=2909万2000円カ 損害額合計 7185万4880円

(2) 本件各投稿は、原告の著作者人格権(同一性保持権)を侵害しており、こ

れにより原告に生じた精神的苦痛に対する慰謝料として300万円を請求する。【

(被告の主張)

】

(原告の主張)

は否認ないし争う。

第4 当裁判所の判断

1 争点2について本件事案の性質に鑑み、争点2から判断する。

(1) 認定事実前記前提事実、掲記各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。ア 原告は、マイファンズにおいて、「 B 」名のアカウントで、本件各映画の販売をしていた。本件各映画の画面表示には、「 B 」の文字の表示は存在したが、原告の名称が表示されることはなく、著作者名の表示もなかった。また、マイファンズの「 B 」名のアカウントの表示画面には、「はじめまして、 B といいます。僕のXアカウントを見て会いたいと連絡くれた可愛い女の子(裏垢女子や普通の女の子)との・・」(以下略)との記載があり、「本人情報(氏名・生年月日)」の箇所にはAの氏名が記載されているが、原告の名称の記載はなく、「 B 」名のアカウントで販売されている動画の著作者名の記載もなかった。上記アカウントで本件各映画を販売しているウェブページにおいて、本件

5 各映画の内容を確認するには、「本編を視聴する」とのアイコンをクリックする必要があり、クリックをすると、メールアドレスやパスワードの入力を求められる仕様となっていた。(以上につき、甲8、9、22ないし24)イ Aは、令和7年10月31日、被告が設定した「X」利用者用の削除申請フォームを利用して、被告に対し、本件各投稿の削除を申請した。上記削除申請には、原作品へのリンク(「Link to original work」)として本件各映画が掲載されたウェブページのURLが記載され、侵害投稿へのURL(「URL(s)to the infringing material」)として本件各投稿のURLが記載されていた(甲10ないし14)。被告は、上記削除申請を受け、同日、Aに対し、著作権に関する報告を受領したこと、できるだけ早く返信をすることなどを記載した自動返信メールを送信した。被告は、令和7年11月1日、Aに対し、身分証明書の提示を求めるメールを送付し、Aは、同日、Aの運転免許証の写しを被告に提出した。被告は、追加資料の提出を求めることなく、同月4日、本件各投稿に関しこれ以上の措置は不要であると判断した旨、Aに通知した。

(2) 検討ア 情プラ法3条1項は、特定電気通信による情報の流通により他人の権利が侵害されたときは、当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者(関係役務提供者)は、これによって生じた損害については、権利を侵害した情報の不特定の者に対する送信を防止する措置を講ずることが技術的に可能な場合であって、「当該関係役務提供者が当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知っていたとき」(同条1号)又は「当該関係役

5 務提供者が、当該特定電気通信による情報の流通を知っていた場合であって、当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるとき」(同条2号)に該当するときでなければ、賠償責任を負わないと規定している。イ 本件についてみると、原告の代表取締役であるAは、削除申請フォームを利用して、被告に本件各投稿の削除を申請したが、マイファンズにおいて本件各映画が販売されていた「 B 」名のアカウントの表示画面には、原告の名称の表示も本件各映画の著作者名の表示もなく、むしろ「 B 」と自称する個人の男性が映像を撮影して販売していると解される記載が存在する上、本件各映画の内容を確認するには、メールアドレスやパスワードの入力が必要であり、被告が本件各映画の掲載されたウェブページのURLから当該ウェブページに到達したとしても、本件各映画の内容を確認することはできなかったと認められる。しかも、本件各映画の画面表示には、「 B 」の文字の表示は存在したが、原告の名称又は著作者名が表示されることはなかったから、仮に、被告が、上記削除請求を受けて本件各映画の内容を確認できたとしても、その内容から原告が本件各映画の著作者であると知ることはできなかったと認められる。そうすると、本件で認められる事実によれば、被告において、原告の権利が侵害されていることを知っていたとき(情プラ法3条1項1号)にも、原告の権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる「相当の理由があるとき」(同項2号)にも該当しない。ウ この点、原告は、追加資料の提出を求めることなく、本件各映画について削除の措置を取らないこととした被告の対応は、情プラ法23条及び25条1項の調査義務に反しており、同法3条1項2号所定の権利侵害

5 について知ることができたと認められる「相当な理由」があるなどと主張する。しかし、上記のとおり、仮に被告において追加資料として本件各映画の動画自体の提出を求めるなどして、本件各映画を確認することができたとしても、本件各映画には原告その他著作者名の表示はなく、原告が本件各動画の著作者であると認識することはできなかったと認められるから、元動画の提出を求めなかったことが上記判断を左右するとはいえない。また、情プラ法23条、25条1項、同法施行規則16条に基づいて、7日間という限られた期間内に、被侵害者からの申出に係る侵害情報の流通によって当該侵害者の権利利益が不当に侵害されているかどうかを確認するために必要な調査を行い、申出者に通知を行わなければならない大規模特定電気通信役務提供者において、多数の利用者からの削除申請を類型的に処理するために申請フォームを用意し、当該フォームに記載された情報に基づいて、権利侵害が明らかに認められる場合には削除の措置を取ることとし、各申請者との個別のやり取りによって追加資料の提出等を促さないものとしていることが、合理的を欠くものとはいえず、このような対応をとっていることをもって、情プラ法所定の「必要な調査」を怠ったと評価することはできず、情プラ法3条1項2号にいう「相当の理由」があると認めることもできない。原告は、被告がAの身分証明書の提示を求めた際に、追加資料の提出等を求めることもできたはずであると主張するが、当該メール(甲15)の文面をみると、削除申請者の氏名等、個別の削除申請ごとの事情は何ら記載されておらず、被告は、申請フォーム記載情報から本人確認ができなかった場合に定型的に身分証明書の提示を求めるメールを送信しているものと伺われるから、当該メールの送信をもって、削除申請者に個

5 別的な対応をしていたとはいい難く、追加資料の提出を求めることができたはずであるともいえない。また、上記のとおり、追加資料の提出の提出が求められていたとしても、それによって本件各映画の著作者が原告であると被告が認識可能であったとも認められない。さらに、原告は、過去に同様の削除申請を行った際には、被告が削除の措置を取っていたことも指摘するが、本件の全証拠によっても過去の削除申請において主張された著作権侵害の態様等の内容は不明であるから、被告が、原告による過去の削除申請の際には投稿の削除措置を取っていたとしても、そのことをもって、本件において情プラ法3条1項2号にいう「相当の理由」があると認められることにはならない。原告の上記主張は、いずれも採用することができない。

第5 結論

以上によれば、争点1(本件各映画の著作権の帰属)及び争点3(原告の損害)について検討するまでもなく、原告の請求には理由がない。よって、原告の請求を棄却することとし、主文のとおり判決する。大阪地方裁判所第26民事部

裁判長裁判官

水 野 正 則

裁判官

西 尾 太 一

裁判官

横 井 真 由 美

(別紙著作物目録及び別紙投稿記事目録 添付省略)

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