知財判決速報/裁判例集知的財産に関する判決速報,判決データベース

ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 平成21(行ヒ)326 審決取消請求事件

この記事をはてなブックマークに追加

平成21(行ヒ)326審決取消請求事件

判決文PDF

▶ 最新の判決一覧に戻る

裁判所 最高裁判所第一小法廷 判決
裁判年月日 平成23年4月28日
事件種別 民事
法令 特許法67条2項1回
特許法68条の21回
キーワード 特許権19回
実施8回
審決4回
拒絶査定不服審判2回
主文 本件上告を棄却する。上告費用は上告人の負担とする。
事件の概要

▶ 前の判決 ▶ 次の判決 ▶ に関する裁判例

本サービスは判決文を自動処理して掲載しており、完全な正確性を保証するものではありません。正式な情報は裁判所公表の判決文(本ページ右上の[判決文PDF])を必ずご確認ください。

判決文

主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人須藤典明ほかの上告受理申立て理由について
1 本件は,特許第3134187号(以下「本件特許」といい,本件特許に係
る特許権を「本件特許権」という。)の特許権者である被上告人が,本件特許権の
存続期間の延長登録出願に係る拒絶査定不服審判の請求を不成立とした特許庁の審
決の取消しを求める事案である。
2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
(1) 本件特許(請求項の数は22である。)は,発明の名称を放出制御組成物
として,平成9年3月6日,特許出願され,平成12年12月1日,設定登録がさ
れた。
本件特許に係る発明は,薬物を含んで成る核が,水不溶性物質,一定の親水性物
質及び一定の架橋型アクリル酸重合体を含む被膜剤で被覆された放出制御組成物に
関する発明である。
(2) 被上告人は,平成17年9月30日,販売名を「パシーフカプセル30
㎎」とする医薬品(以下「本件医薬品」という。)につき,薬事法14条1項によ
る製造販売の承認(以下「本件処分」という。)を受けた。本件医薬品は,その有
効成分を塩酸モルヒネとし,効能及び効果を中等度から高度の疼痛を伴う各種癌に
おける鎮痛とする。
(3) 本件処分よりも前に,販売名を「オプソ内服液5㎎・10㎎」とし,有効
成分並びに効能及び効果を本件医薬品のそれと同じくする医薬品(以下「本件先行
医薬品」という。)につき,薬事法14条1項による製造販売の承認(以下「本件
先行処分」という。)がされている。本件先行医薬品は,本件特許権のいずれの請
求項に係る特許発明の技術的範囲にも属しない。
(4) 被上告人は,平成17年12月16日,本件処分を受けることが必要であ
るために本件特許権の特許発明の実施をすることができない期間があったとして,
本件特許権の存続期間の延長登録出願をしたが,拒絶査定を受けたことから,これ
を不服として拒絶査定不服審判の請求をした。
(5) 特許庁は,平成20年10月21日,本件処分よりも前に,本件医薬品と
有効成分並びに効能及び効果を同じくする本件先行医薬品について本件先行処分が
されているのであるから,本件特許権の特許発明の実施について,本件処分を受け
ることが必要であったとは認められないとして,上記審判の請求を不成立とする審
決(以下「本件審決」という。)をした。
3 特許権の存続期間の延長登録出願の理由となった薬事法14条1項による製
造販売の承認(以下「後行処分」という。)に先行して,後行処分の対象となった
医薬品(以下「後行医薬品」という。)と有効成分並びに効能及び効果を同じくす
る医薬品(以下「先行医薬品」という。)について同項による製造販売の承認(以
下「先行処分」という。)がされている場合であっても,先行医薬品が延長登録出
願に係る特許権のいずれの請求項に係る特許発明の技術的範囲にも属しないとき
は,先行処分がされていることを根拠として,当該特許権の特許発明の実施に後行
処分を受けることが必要であったとは認められないということはできないというべ
きである。なぜならば,特許権の存続期間の延長制度は,特許法67条2項の政令
で定める処分を受けるために特許発明を実施することができなかった期間を回復す
ることを目的とするところ,後行医薬品と有効成分並びに効能及び効果を同じくす
る先行医薬品について先行処分がされていたからといって,先行医薬品が延長登録
出願に係る特許権のいずれの請求項に係る特許発明の技術的範囲にも属しない以
上,上記延長登録出願に係る特許権のうち後行医薬品がその実施に当たる特許発明
はもとより,上記特許権のいずれの請求項に係る特許発明も実施することができた
とはいえないからである。そして,先行医薬品が,延長登録出願に係る特許権のい
ずれの請求項に係る特許発明の技術的範囲にも属しないときは,先行処分により存
続期間が延長され得た場合の特許権の効力の及ぶ範囲(特許法68条の2)をどの
ように解するかによって上記結論が左右されるものではない。
本件先行医薬品は,本件特許権のいずれの請求項に係る特許発明の技術的範囲に
も属しないのであるから,本件において,本件先行処分がされていることを根拠と
して,その特許発明の実施に本件処分を受けることが必要であったとは認められな
いということはできない。
4 以上によれば,本件先行処分がされていることは,本件特許権の特許発明の
実施に当たり,薬事法14条1項による製造販売の承認を受けることが必要であっ
たことを否定する理由にはならないとして,本件審決を違法であるとした原審の判
断は,正当として是認することができる。論旨は採用することができない。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁 判 長 裁 判 官 横田尤孝 裁判官 宮川光治 裁判官 櫻井龍子 裁判官
金築誠志 裁判官 白木 勇)

最新の判決一覧に戻る

法域

特許裁判例 実用新案裁判例
意匠裁判例 商標裁判例
不正競争裁判例 著作権裁判例

最高裁判例

特許判例 実用新案判例
意匠判例 商標判例
不正競争判例 著作権判例

今週の知財セミナー (3月3日~3月9日)

3月4日(火) -

特許とAI

3月6日(木) - 東京 港区

研究開発と特許

3月7日(金) - 東京 港区

知りたかったインド特許の実務

来週の知財セミナー (3月10日~3月16日)

3月11日(火) - 東京 港区

特許調査の第一歩

3月12日(水) - 東京 港区

はじめての特許調査(Ⅰ)

3月12日(水) - 愛知 名古屋市中区

技術情報管理と秘密保持契約

3月13日(木) - 東京 港区

はじめての特許調査(Ⅱ)

特許事務所紹介 IP Force 特許事務所紹介

辰己国際特許事務所【中堅企業様~中小企業様、歓迎致します】

バーチャルオフィス化に伴い、お客様、お取引先様には個別にご案内させていただいております。 特許・実用新案 商標 外国特許 外国商標 コンサルティング 

オネスト国際特許事務所

東京都新宿区西新宿8-1-9 シンコービル 特許・実用新案 意匠 商標 外国特許 外国意匠 外国商標 訴訟 鑑定 コンサルティング 

西川国際特許事務所

〒170-0013 東京都豊島区東池袋3丁目9-10 池袋FNビル4階 特許・実用新案 意匠 商標 外国特許 外国意匠 外国商標 訴訟 鑑定 コンサルティング