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平成19(行ケ)10095審決取消請求事件

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裁判所 審決取消 知的財産高等裁判所
裁判年月日 平成20年3月12日
事件種別 民事
当事者 被告特許庁長官
原告スリーエムカンパニー
対象物 再帰反射製品,その製造方法,及びそれを含む衣服製品(平成17年3月9日付け補正後)とする後記発明につき国際出願を
法令 特許権
特許法29条2項1回
キーワード 審決42回
実施17回
進歩性4回
刊行物1回
優先権1回
主文 1 特許庁が不服2005−2087号事件について平成18年10月30日にした審決を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
事件の概要 本件は,原告(旧商号 ミネソタ マイニング アンド マニュファクチャリン グ カンパニー)が名称を「再帰反射製品,その製造方法,及びそれを含む衣 服製品 (平成17年3月9日付け補正後)とする後記発明につき国際出願を」 したところ,日本国特許庁から拒絶査定を受けたので,これを不服として審判 請求をしたが,同庁から請求不成立の審決を受けたことから,その取消しを求 めた事案である。

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判決文

平成20年3月12日判決言渡

平成19年(行ケ)第10095号 審決取消請求事件

口頭弁論終結日 平成20年3月5日

判 決

原 告 スリーエム カンパニー

訴訟代理人弁護士 上 谷 清

同 永 井 紀 昭

同 萩 尾 保 繁

同 山 口 健 司

同 薄 葉 健 司

訴訟代理人弁理士 古 賀 哲 次

同 永 坂 友 康

被 告 特 許 庁 長 官

肥 塚 雅 博

指 定 代 理 人 末 政 清 滋

同 佐 藤 昭 喜

同 山 本 章 裕

同 内 山 進

主 文

1 特許庁が不服2005−2087号事件について平成18年10月3

0日にした審決を取り消す。

2 訴訟費用は被告の負担とする。

事 実 及 び 理 由

第1 請求

主文同旨

第2 事案の概要

本件は,原告(旧商号 ミネソタ マイニング アンド マニュファクチャリング カンパニー)が名称を「再帰反射製品,その製造方法,及びそれを含む衣服製品 」(平成17年3月9日付け補正後)とする後記発明につき国際出願をしたところ,日本国特許庁から拒絶査定を受けたので,これを不服として審判請求をしたが,同庁から請求不成立の審決を受けたことから,その取消しを求めた事案である。争点は,実開昭50−154747号(考案の名称「再帰反射シート」,出願人 ソニー株式会社,公開日 昭和50年12月22日。以下「引用例1」といい,そこに記載された発明を「引用発明」という。)との関係で進歩性(特許法29条2項)を有するか,である。

第3 当事者の主張

請求の原因

(1) 特許庁における手続の経緯

原告は,優先権主張を1994年(平成6年)5月12日(米国)として,1995年(平成7年)3月28日,名称を「再帰反射製品及びその製造方法」とする発明につき国際出願(PCT/US95/03746,特願平7−529630号。以下「本願」という)をし,その後平成8年11月12日に日本国特許庁に翻訳文(甲4。公表特許公報は特表平10−500230号〔甲6 〕)を提出し,平成16年2月5日付けで特許請求の範囲等の変更を内容とする補正(請求項の数13,以下「本件補正」という。甲7)をしたが,平成16年11月1日付けで拒絶査定を受けたので,これを不服として審判請求をした。特許庁は同請求を不服2005−2087号事件として審理することとし,その中で原告は平成17年3月9日付けで発明の名称を 再帰反射製品,「その製造方法,及びそれを含む衣服製品」と変更した(甲8)が,特許庁は,平成18年10月30日 ,「本件審判の請求は,成り立たない」との審決をし(出訴期間として90日附加),その謄本は平成18年11月14日原告に送達された。

(2) 発明の内容

本件補正後の特許請求の範囲は,前記のとおり請求項1∼13から成るが,そのうち請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という 。)は,次のとおりである。「1.a)第1及び第2主要表面を有する着色バインダー層;及びb)前記着色バインダー層の第1主要表面に部分的に埋め込まれた部分を有し,且つ,そこから部分的に突き出た部分を有するガラス又はセラミック微小球の層;を含む微小球が露出している再帰反射製品であって,前記バインダー層及び前記微小球の層が,昼間の照明条件下で見た場合に実質的に異なる再帰反射度を示し,且つ,顕著に異なる色を呈する第1及び第2セグメントに分けられており,前記第1セグメントが微小球の層の埋め込まれた部分に配置された反射性金属層を有し,そして前記第2セグメントが微小球の層の埋め込まれた部分の後方に機能的に配置された反射性金属層を有しないことを特徴とする,微小球が露出している再帰反射製品。」

(3) 審決の内容

ア 審決の詳細は,別添審決写しのとおりである。その要点は,本願発明は,前記引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたから特許法29条2項により特許を受けることができない,というものである。イ なお,審決が認定した引用発明の内容,本願発明と引用発明とを対比した場合の一致点及び相違点は,次のとおりである。<引用発明の内容>「上表面,下表面を有する接着剤層(5);及び前記接着剤層(5)の上表面に部分的に埋入された部分を有し,且つ,そこから部分的に突き出た部分を有するガラスビーズ(6)の単一層;を含むガラスビーズ(6)が露出している再帰反射シート(1)であって,前記接着剤層(5)及び前記ガラスビーズ(6)の層が,ガラスビーズ(6)の下にA層からなる光反射層(3)が存在する部分と,光反射層(3)の存在しない光透過部分(4)に分けられている,ガラスビーズ(6)が露出している再帰反射シート(1)」<一致点>a)第1及び第2主要表面を有するバインダー層;及びb)前記バインダー層の第1主要表面に部分的に埋め込まれた部分を有し,且つ,そこから部分的に突き出た部分を有するガラスまたはセラミック微小球の層;を含む微小球が露出している再帰反射製品であって,前記バインダー層及び前記微小球の層が,第1及び第2セグメントに分けられており,前記第1セグメントが微小球の層の埋め込まれた部分に配置された反射性金属層を有し,そして前記第2セグメントが微小球の層の埋め込まれた部分の後方に反射性金属層を有しないことを特徴とする,微小球が露出している再帰反射製品である点<相違点1>本願発明は,バインダー層が着色バインダーであるのに対し,引用発明では,そのような限定がない点。<相違点2>本願発明は,バインダー層及び微小球の層が,昼間の照明条件下で見た場合に実質的に異なる再帰反射度を示し,且つ,顕著に異なる色を呈するのに対し,引用発明では,そのような限定がない点。<相違点3>本願発明は,「反射性金属層を有しない」構成に,「機能的に配置された」との限定がされているのに対し,引用発明では,そのような限定がない点。

(4) 審決の取消事由

しかしながら,以下に述べるとおり,審決の進歩性判断は誤りであるから,違法として取り消されるべきである。ア 取消事由1(引用発明の「再帰反射シート」を本願発明の「再帰反射製品」に相当すると認定したことの誤り)審決(4頁2行∼4行)は,引用発明の「ガラスビーズ(6)が露出している再帰反射シート(1)」を本願発明の「微小球が露出している再帰反射製品」に相当すると認定した点で誤っている。すなわち,本願発明の「再帰反射製品」は,昼間の照明条件(強い拡散周囲光)において,金属反射層を後方に有しない第2セグメントが着色バインダー層の色を呈して高い顕著性を与えるとともに,夜間に自動車のヘッドランプ及びサーチライトなどからの光が再帰反射製品に当たったときに,微小球が埋め込まれた部分に金属反射層を配置した第1セグメントが再帰反射して高い顕著性を与えることにより,昼夜の双方において,この再帰反射製品は着用者の存在を目立たせ,着用者の安全性を高める,という機能を有するものである。このような本願発明の「再帰反射製品」は,例えば,建設作業者,消防士などの衣服などに取り付けて使用されることを意図して,自ら表示体(目印)を構成するものである。一方,引用発明の「再帰反射シート」は,再帰反射シートの前方及び後方側のいずれの方向から光が照射されてもこれを再帰反射光又は透過光として観察することを可能とするものであり,この再帰反射シートを電飾サイン装置に組み込むことで,装置内に配された光源を点灯すれば再帰反射シートの光透過部分を通過した光が不透明フィルムの光透過部分に対応したパターンの光サインを観察することができ,また,光源を消灯すれば装置の外部の光源からの光が再帰反射シートに反射されて戻るから,外部光源の照射方向から観察すると上述と同じパターンが鮮やかに光って見えて表示装置として機能し得るものである。このような引用発明の「再帰反射シート」は,電飾サイン等の表示又は装飾装置を夜間に観察できるようにするために適用されるものであり,かつ,自らは表示担体ではなく表示担体と組み合せて使用される再帰反射体(再帰反射シート)である。このように,本願発明の第1及び第2セグメントと引用発明の光不透過部分及び光透過部分とは全く異なる機能を有し,本願発明の「再帰反射製品」と引用発明の「再帰反射シート」とは本質的に異なる製品であることは明らかであるから,引用例1は本来的に本願発明の従来技術ということはできず,引用例1は本願発明の主引用例として適切なものではない。イ 取消事由2(本願発明の「第1/第2セグメント」と引用発明の「光不透過部分/光透過部分」との相違の看過)(ア) 審決は,引用発明の ガラスビーズ(6)の下にAℓ層からなる光反射層(3)「が存在する部分」が本願発明の「第1セグメント」に相当し,引用発明の「ガラスビーズ(6)の下に光反射層(3)の存在しない光透過部分(4)」が本願発明の「第2セグメント」に相当すると認定したが(4頁8行∼12行),以下のとおり本願発明の第1/第2セグメントと引用発明の光不透過部分/光透過部分とは本質的に異なるものであるから,審決の上記認定は誤りである。(イ) 本願発明の第1/第2セグメント本願発明の再帰反射製品は非常に目立つ着色セグメントにより縁取りされた再帰反射像を表示する製品に関するもので,昼間は主として「第2セグメント」が高い顕著性を与え,夜間は「第1セグメント」が高い顕著性を与えるものである。すなわち,第三者は昼夜両方の照明条件において再帰反射製品の第1セグメント又は第2セグメント(顕著な目印の像)を観察でき,これにより着用者の存在を認識できるというものであり,この目的を達成するため,本願発明の再帰反射製品は「前記バインダー層及び前記微小球の層が,昼間の照明条件下で見た場合に実質的に異なる再帰反射度を示し,且つ,顕著に異なる色を呈する第1セグメント及び第2セグメントに分けられて 」(請求項1)いることを特徴とするものである。(ウ) 引用発明の光不透過部分/光透過部分これに対し引用発明の再帰反射シート(1)は,前方側からの照明光は全面的に再帰反射し後方側の光源からの照明光は全面的に透過するシートであって,それ自体は特定の表示パターンは有さず,これに表示パターンをなす光透過部分(11)を形成した光不透過フィルム(12)とを組み合わせ,光源(15)を具備する電飾サイン装置(9)に装着することではじめて装置の内外(シートの前後)からの光源を利用して表示を行うことができるものである。すなわち,再帰反射シートの光不透過部分(3)及び光透過部分(4)はそれぞれ前方からの照明光は再帰反射し後方からの照明光は透過する機能を再帰反射シートに付与するために存在するが,その微細なパターンは表示(サイン)の機能を有さないものである。引用例1(甲1)の第1図に示されている市松模様を形成する光不透過部分(3)及び光透過部分

(4)の幅はともに0.5㎜程度(3頁7行∼8行)で0.25㎜ 程度

の極小面積の正方形(A4サイズに合計約25万個存在)であるから,再帰反射シートの市松模様を形成する光不透過部分(3)から再帰反射してくる光ないし市松模様を形成する光透過部分(4)を透過する光を観察する者にとっては,再帰反射シートから出射される再帰反射光又は透過光において市松模様(の個々の正方形)が認識(識別)されることはなく,前方からの照明は一様な再帰反射光として,後方からの照明光は一様な透過光として観察されるにすぎない。また,引用例1(甲1)は, …例えば光反射層のパターンは格子状,「逆格子状,水玉状,逆水玉状等の種々の模様であって巨視的に見てその分布が一様なものであればよい。…」(10頁5行∼8行)として光反射層のパターンは変形可能であるとしつつ,その変形パターンはいずれも繰り返しの微細パターンであり,しかも「巨視的に見てその分布が一様なもの」でなければならないと記載している。この点からも再帰反射シートから再帰反射され又は透過する光においては微細パターンは消失し,一様な光となることは明らかである。さらに,引用例1が記載する再帰反射シートの作用効果も上記の理解と一致する。引用例1(甲1)の実施例では「SONY」の文字を切り抜いてなる光透過部分(11)を有する黒色の塩化ビニル製不透明フィルム

(12)が貼り付けられた電飾サイン装置(9)の内側に再帰反射シート(1)を

配置して使用した場合,不透明フィルム(12)の光透過部分(11)に対応したパターンの光サインが観察できるだけで(8頁4行∼8頁5行),再帰反射シート(1)の市松模様自体は決して表示(サイン)の作用効果を有するものではない。(エ) 対比このように,本願発明においては普通の観察者が昼間の照明条件下で

第1セグメントと第2セグメントを見た場合,両者は顕著に異なる色を

呈することが認識されなければならないものであり,これにより再帰反射製品を取り付けた作業者等を容易に認識することが可能になるものである。これに対し,引用発明における再帰反射シート(1)の光不透過部分(3)及び光透過部分(4)は,上記のように前方からの照明は一様な再帰反射光として,後方からの照明光は一様な透過光として観察されるにすぎず,これを昼間の照明条件下で普通に観察する者は顕著に異なる色を呈することを認識できるものではない。したがって,引用例1に記載されている再帰反射シート(1)の光不透過部分(3)及び光透過部分(4)は,本願発明の「バインダー層及び微小球の層が,昼間の照明条件下で見た場合に…顕著に異なる色を呈する第1セグメント及び第2セグメント」とは異なるものであり,両者を同視することが誤りであることは明らかである。ウ 取消事由3(本願発明の 微小球の層の埋め込まれた部分に配置された」「の認定の誤り及び「微小球の層の埋め込まれた部分に配置された反射性金属層」と「着色バインダー層」と「第1/第2セグメント」の相互関係の看過)(ア) 本願発明の「微小球の層の埋め込まれた部分に配置された」の認定の誤りa 審決は本願発明と引用発明は「前記第1セグメントが微小球の層の埋め込まれた部分に配置された反射性金属層を有」する点で一致すると認定したが(4頁18行∼20行 ),以下のとおり引用発明は,本願発明と異なり微小球の層に対応するガラスビーズ(6)と反射性金属層に対応する光反射層(3)との間にバインダー層が存在し,そのため光反射層(3)はガラスビーズ(6)と点接触するにすぎず,ガラスビーズ

(6)の「埋め込まれた部分に配置された」構造ではないから,審決の

上記認定は明らかに誤りである。b すなわち,本願発明は「第1セグメントが微小球の層の埋め込まれた部分に配置された反射性金属層を有し,そして第2セグメントが微小球の層の埋め込まれた部分の後方に機能的に配置された反射性金属層を有しない」(請求項1)と規定する。ここで反射性金属層は「バインダー層の微小球の層が埋め込まれた部分の後方に」ではなく「バインダー層の微小球の層が埋め込まれた部分に」配置されるのであるから,請求項1の記載において「微小球の層の埋め込まれた部分」とはバインダー層と微小球の層の界面を意味することは明らかである。このことは本願明細書の次の記載からも明らかである。すなわち,本願明細書(甲4)は「微小球の層の埋め込まれた部分に配置された」及び「後方に機能的に」との用語について ,「…反射性金属層の位置に関し, 微小球の層の埋め込まれた部分に配置された』なる用語は,『反射性金属層が微小球と(埋め込まれた部分で)直接接触しているか,又は,他の反射層若しくは薄い非反射性の無色層(例えば,誘電体ミラー)を通じて微小球と接触していることを意味する。…」(5頁下行∼下3行)「 後方に機能的に』なる用語は,本明細書において,,『反射性金属層が微小球を透過した入射光を反射することができるように微小球の埋め込まれた部分に接して又はその後方に配置された反射性金属層を有することを意味するために用いる。… 」(6頁6行∼9行)と定義する。ここで「微小球の層の埋め込まれた部分に配置された」とは反射性金属層が微小球が埋め込まれた部分で微小球と直接接触しているか,反射性金属層と微小球が間に他の反射層若しくは薄い非反射性の無色層(例えば,誘電体ミラー)を介して接触していることをいい,反射性金属層と微小球の間には「他の反射層」又は「無色層」しかないから着色されているバインダー層が介在することはあり得ない。本願明細書(甲4)の他の記載も上記の定義と一致し,この定義と相違する記載は存在しない。例えば図3∼図7(甲5のFig.3∼Fig.5)のすべての図において,反射性金属層と微小球との位置関係は上記定義と一致している。すなわち,図4,5を除いて反射性金属層は微小球と直接に接触しており,図4,5では反射性金属層と微小球の間に誘電体ミラー57が形成されている(17頁下3行∼20頁14行)。また本願明細書(甲4)の記載では,例えば「…第1セグメントにおいて,反射性金属層は不透明であり,下方のバインダー層を見ることを妨げる。しかしながら,第2セグメントにおいて,着色バインダーの色は微小球を通して見ることができ,従って,第2セグメントは昼間の照明条件下で第1セグメントの色とは顕著に異なる色を呈する。… 」(7頁12行∼16行)と記載されている。不透明な反射性金属層が下方の(着色)バインダー層を見ることを妨げるとは,反射性金属層が微小球と直接に接触していること,反射性金属層と微小球の間に着色バインダー層が存在しないことを意味しており,上記定義と一致する。c これに対し引用例1(甲1)では基板(2)表面に光反射層(3)を部分的(市松模様)に形成し,その上に接着剤層(5)を塗布し,更にその上からガラスビーズ(6)を散布し,しばらく放置するか圧力を加えてガラスビーズ(6)を基板(2)表面に接触又は近接させた状態にして加熱乾燥しているから,下図(第3図)に見られるように光反射層(3)上には接着剤(5)が存在し,基板(2)表面の光反射層(3)にガラスビーズ

(6)の最下点が点接触又は近接する状態にある 4頁2行∼5頁1行)

( 。す なわち,ガラスビーズ(6)と光反射層(3)との間にはガラスビーズ(6)の最下点が光反射層(3)と接触する1点を除いて接着剤(5)が存在するので,引用発明においては「反射性金属層が微小球と(埋め込まれた部分で)直接接触しているか,又は,他の反射層若しくは薄い非反射性の無色層(例えば,誘電体ミラー)を通じて微小球と接触している」ものではない。すなわち 微小球の層の埋め込まれた部分に配置された反射性金属層」「を有しない。(イ) 「微小球の層の埋め込まれた部分に配置された反射性金属層」と「着色バインダー層」と「第1/第2セグメント」の相互関係の看過a 再帰反射は光の入射角に関わりなく入射方向とは反対方向に平行に反射する現象をいうところ,接着剤に一部が埋められた球状のガラスビーズ(本願発明では微小球)の露出部分に直進する光が入射した場合,ガラスビーズ内での正反射の程度はガラスビーズと接着剤との屈折率の差に依存し,通常は接着剤への透過光(屈折光)が存在するため再帰反射する光量(再帰反射率)は非常に小さくなる。そこでは実用できるほどの再帰反射率がないか,屈折率差や入射角によっては全く再帰反射しないことになる。この点本願発明は,上記(ア)に述べたとおり,ガラスビーズの反射すべき表面に反射金属層が形成されている(請求項1の「微小球の層の埋め込まれた部分に配置された反射性金属層」 。そのため,ガラス)ビーズ内の反射率ひいては再帰反射率を向上することができ,第1セグメントにおける再帰反射率は非常に高く優れており,実用できるものとなっている。これに対し引用発明では,上記(ア)のとおり,光反射層(3)はガラスビーズ(6)表面を覆うように存在するものではない。ガラスビーズ(6)と光反射層(3)とは点接触するにすぎず,ガラスビーズはほとんど完全に接着剤で包囲されている。そのため,再帰反射シートにほぼ垂直方向から入射した光だけはガラスビーズに接する金属反射層で反射(正反射であるが,1点での再帰反射でもある。)するものの,それ以外のガラスビーズ内で反射すべき光の多くは接着剤層に透過することから,再帰反射率は極めて低く 実用できる再帰反射度は得られず)( ,金属反射層は再帰反射の目的に機能しない。下図は引用例1(第3図)における再帰反射シートの光反射層(3)部分を拡大した部分図である。引用発明では,ガラスビーズ(6)に入射した光(7)は,ガラスビーズ

(6)内に屈折して侵入し(光(7a)),ガラスビーズ(6)の反対側で正反

射(光(7b))して,ガラスビーズ(6)から入射光(7a)と平行かつ反対方向に出射,すなわち再帰反射(光(7c))することを想定している。しかし,実際にはガラスビーズ(6)内に侵入した光(7a)は,入射光(7)が再帰反射シートの法線方向から入射する場合以外の場合,いくらかはガラスビーズ(6)の反対側で正反射(光(7b))するとしても,ほとんどはガラスビーズ(6)の反対側を屈折透過(光(7d))する。したがって,上記光(7d)は光反射層(3)で全部が正反射され(光(7e)),途中にガラスビーズ(6)が存在すれば更にいくらか屈折されて,最終的に再帰反射シートの外へ出射される(光(7f))。この出射光(7f)が出射する方向は入射光(7)が再帰反射シートの法線方向に近い角度から入射しない限り,通常は入射光に対して法線方向の反対側になる(ガラスビーズと金属反射層が接する部分以外で反射した場合は有効に再帰反射しないので,再帰反射できる入射角は極めて小さい。理論どおり点接触であれば,1∼2度もない。。)このように,引用発明の再帰反射シートは垂直入射する光だけを再帰反射し,他の角度で入射する光は再帰反射しないので,実質的には平面鏡に近いものであり,いうならば正反射シート(単なる反射材)である。なお,引用発明において本願発明と同様にガラスビーズ(6)の表面を覆うように光反射層が形成されていれば,入射光(7)はガラスビーズ(6)で完全に再帰反射(光(7c))されてガラスビーズ(6)を透過(光

(7d))するから,入射光に対して法線方向の反対側に反射(光(7f))

されることはない。引用例1の第3図の再帰反射光の進路は不正確であり,第4図は具体的な角度が記載されていない不備がある。b また,本願発明は第1セグメントの着色バインダー層が反射性金属層により隠される構造である結果,第1セグメントにおける昼間の散乱反射光及び夜間の再帰反射光は着色バインダー層で着色されることがないのに対し,第2セグメントにおいては着色バインダー層の後方に反射性金属層が存在しないため散乱反射光が着色バインダー層によって着色されることを可能にする。これにより,本願発明では昼間の照明条件下で第1セグメントと第2セグメントが「顕著に異なる色を呈する」ことを可能にし,第1セグメントにおいて第2セグメントと「実質的に異なる再帰反射度」が得られることになる。これに対し,引用発明はガラスビーズ(6)と光反射層(3)の間に接着剤層(5)が存在する構造であるので,仮に接着剤層(5)が着色されても(取消事由2において述べたとおり,普通の観察者は光透過部分(4)と光不透過部分(3)の微細なパターンを識別できないが,仮に識別できる寸法のセグメントであると仮定した場合にも ),光反射層(3)が存在しない光透過部分(4)と光反射層(3)が存在する光不透過部分はどちらも同様に着色されることになる。したがって,引用発明は「顕著に異なる色を呈する」ことができない。このように,上記のような構造上の相違があるため(引用発明の接着剤層を着色する動機は存在しないものの)たとえ引用発明の接着剤層が着色されても,引用発明の光透過部分(4)と光不透過部分が「顕著に異なる色を呈する」ことにはならない。審決は,上記のような「微小球の層の埋め込まれた部分に配置された反射性金属層」と「着色バインダー層」と「第1/第2セグメント」の相互関係を看過した誤りがある。エ 取消事由4(相違点1の容易想到性判断の誤り)(ア) 引用発明の「再帰反射シート」と引用例2又は周知例の「再帰反射製品」に関する技術との組み合せは困難であること本願発明は非常に目立つ着色セグメントにより縁取りされた再帰反射像を表示する「再帰反射製品」であり,観察者がその表示を認識できる着色セグメントを有しているに対して,引用発明は電飾サイン等の表示又は装飾装置に適用するのに最適な「再帰反射シート」であり,前方からの照明光を全面一様に再帰反射し,後方の光源からの光を全面一様に透過して再帰反射シートの前方にある表示板の表示を可能にするために光を提供するものであり,本願発明と引用発明の対象は全く異なる。したがって,そもそも,引用例1は本願発明の主引用例とされるべきものではない。また,引用例2(特開昭53−129595号公報,発明の名称「光反射体の製造方法 」,出願人 日本レフライト工業株式会社,公開日 昭和53年11月11日,甲2)が開示する光反射体は「夜間の交通事故防止を図るために警察官や道路工事者あるいは一般歩行者の衣類用布地として,あるいは交通標識,さらには宣伝用の各種部材やアクセサリー類等」に利用されるものであり(2頁上左欄2行∼6行 ),周知例(特開平5−111406号公報,発明の名称「着色剤を有する洗濯可能な逆反射性アップリケ」,出願人 ミネソタ マイニング アンド マニュファクチャリング カンパニー,公開日 平成5年5月7日,甲3)が開示する再帰反射性アップリケは「道路等での…作業者の安全を改善するために,逆反射性マーキングを衣類に付している」ものである(段落【0002】 。したがって,引用例2及び周知例の再帰反射製品は本願発明)の「再帰反射製品」とは共通性があるが,引用発明の「再帰反射シート」とは再帰反射の現象を利用している以外に共通性はなく,発明の対象が全く異なる。このように,引用発明と,本願発明及び引用例2又は周知例の発明とは対象が全く異なるので,審決のように引用例1と引用例2又は周知例を組み合せて本願発明とする理由及び動機は存在しない。審決はこのような発明の対象の相違を看過して引用例1と引用例2又は周知例を組み合せて本願発明の進歩性を判断しているので,根本的に不当である。(イ) 引用発明の接着剤層を着色する動機は存在しないし,阻害要因が存在することa 引用発明の「再帰反射シート」は電飾サイン装置内の再帰反射シート後方にある光源から光を透過させ,前方に配置された「例えば『SONY』の文字を切抜いてなる光透過部分(11)を有する黒色の塩化ビニル製不透明フィルム(12)」を利用して「SONY」の文字の表示を行うものである。このような引用発明において光透過部分(4)の光透過性は必要不可欠の本質的要素であり,引用例1(甲1)にも引用発明における接着剤層(5)の光透過部分(4)の光透過率T0はほぼ1(100%)の値であると記載されている(6頁14行∼15行 )。このような値は接着剤層(5)ができるだけ完全に光透過性であり光を吸収・反射しないことによるものであり,この接着剤層(5)は着色剤(光を吸収することで発色する物質)を含まない無色透明のものであることは明らかである。このような引用発明の再帰反射シートの機能及び用途からすれば,引用発明における接着剤層(5)は無色で高い光透過性を有することを必要とするものであり,これを着色する動機は存在しないし,これを着色することは引用発明の特性を損ない,その目的に反することであるから,引用発明にとって阻害要因である。b また,周知例(甲3)の再帰性反射アップリケにおいて結合剤層に添加される染料はアップリケの洗濯による再帰性反射素子の品質低下及び変色をカムフラージュ又は迷彩する添加剤として用いられるものであり,実質的に開示されているものは黒色のクロームアゾ染料である(請求項2,段落【0003】∼【0004】。)これに対し電飾サイン装置に用いる引用発明の再帰反射シートではカムフラージュ又は迷彩する必要はないし,かえってこれを行えば光透過部分(4)を光不透過性にすることになり,引用発明の再帰反射シートの本質を否定することになる。したがって,当業者が引用発明の光透過部分(4)に周知例のカムフラージュ又は迷彩剤である染料を使用することを試みるとは考えられないから,引用発明と周知例を組み合せる動機は存在しないし,その組合せには阻害要因がある。オ 取消事由5(相違点2及び効果の容易想到性判断の誤り)(ア) 取消事由2において述べたとおり,引用発明における再帰反射シート

(1)の光不透過部分(3)及び光透過部分(4)においては,前方からの照明

は一様な再帰反射光として,後方からの照明光は一様な透過光として観察されるにすぎず,これを昼間の照明条件下で普通に観察する者はそれらが顕著に異なる色を呈することを認識できるものではない。このことは引用発明の再帰反射シートの接着剤層(5)に引用例2又は周知例の記載に基づいて着色剤を添加して着色したとしても同様であり,引用発明の再帰反射シートを普通に観察する者にとっては再帰反射シートの光不透過部分(3)と光透過部分(4)のパターンは微細すぎて識別できず,両者からの再帰反射光は一体になり,区別されることなく,全体で1つの再帰反射光として感受されるにすぎない。したがって,引用発明の「再帰反射シート」の接着剤層(5)に引用例2又は周知例の記載に基づいて着色剤を添加して着色したとしても,得られる再帰反射シートは少なくとも「昼間の照明条件下で見た場合に実質的に異なる再帰反射度を示し,且つ,顕著に異なる色を呈する第1及び第2セグメント」を有していない点で,本願発明の「再帰反射製品」とは本質的に異なるものである。(イ) また,取消事由3において述べたとおり,引用発明の再帰反射シートはガラスビーズ(6)と光反射層(3)の間に接着剤層(5)が存在するため,「第1セグメントが微小球の層の埋め込まれた部分に配置された反射性金属層を有」するという構造が存在しないから,仮に引用発明に引用例2又は周知例を適用して再帰反射シートの接着剤層を着色したとしても得られる再帰反射シートは本願発明の再帰反射製品とは異なるものである。すなわち,上記(ア)のとおり,引用発明の再帰反射シートは普通に観察する者には光透過部分(4)と光不透過部分(3)とを区別して観察することはできないが,仮にこれを区別して観察できる寸法のセグメントであると仮定した場合,光反射層が存在しない光透過部分(4)のみならず光反射層(3)が存在する光不透過部分においてもガラスビーズ(6)との間には着色した接着剤層(5)が存在することになる。そうすると,光透過部分(4)と光不透過部分(3)における再帰反射光は同様に着色され,本願発明のような顕著に異なる色を呈することができない。しかも,引用発明の再帰反射シートは平面鏡に近いものにすぎず,再帰反射度が極めて低いものである。本願発明の再帰反射製品では引用発明とは異なり後方の光源は考えられないことから,高い再帰反射度が重要となり,実際にも本願発明の再帰反射製品は高い再帰反射度を示すのであるが,引用発明はこの点で本願発明の重要な作用効果を奏さないものである。このように,引用例1と引用例2又は周知例を組み合わせても本願発明における反射性金属層/バインダー層/第1及び第2セグメントの相互関係は得られず ,「昼間の照明条件下で見た場合に実質的に異なる再帰反射度を示し,且つ,顕著に異なる色を呈する第1及び第2セグメント」に相当するものではない。(ウ) さらに,引用例2(甲2)は「…塗料層6内にはアルミ微細粉又は透明で扁平な塩基性炭酸鉛等の反射材7(屈折率1.7以上が望ましい)が混在されるとともに,必要に応じて着色剤も混在される 。(2頁右下」欄7行∼10行)と記載されているとおり,その接着剤層に必ず反射材が存在(着色剤は必要に応じて混在)するものである。また周知例(甲3)は「本発明の逆反射性体の微小球を基本とする逆反射性素子は,その裏面にも反射体を有している。代表的には,微小球が部分的にキャリヤーに埋め込まれた後,このような反射体を微小球の裏面に適用し」 段(落【0025 】 ,) 「反射体として使用される種々の物質としては,アルミニウム又は銀によって真空蒸着された又は蒸気塗布された金属塗膜…である。アルミニウム又は銀塗膜は最高の逆反射性の明るさを提供するので好ましい 」(段落【0026】)と記載されているとおり,結合剤層に部分的に埋め込まれた微小球の裏面には反射物が被覆されることになる。このため,引用発明に引用例2又は周知例の開示事項を組み合せた場合,引用例1の光透過部分(4)の結合剤層(5)には着色剤とともにアルミ微細粉などの反射材が混在し,あるいは透明小球(4)の表面に反射性鍍金層又は反射物が存在することになり,光反射性となった光透過部分

(4)と光反射層(3)が存在する光不透過部分とは構成上の実質的な相違が

なくなるから,もはや昼間の照明条件下の再帰反射性及び発色においても相違がなくなる(この点は着色剤が混在しても同様である。。)また,取消事由4について述べたとおり,周知例(甲3)の再帰性反射アップリケにおいて結合剤層に添加される染料は黒色のクロームアゾ染料であり,これを引用発明に使用すれば光不透過部分と光透過部分は昼間の照明条件下で観察して実質的な再帰反射度の差及び顕著な色の差が見られないものとなる。このように,引用発明に引用例2又は周知例を組み合せても ,「実質的に異なる再帰反射度を示し,且つ,顕著に異なる色を呈する第1及び

第2セグメント」として識別することはできないし,本願発明の効果が

奏されることもないから,審決の相違点2及び効果に関する判断は誤りである。請求原因に対する認否請求原因(1)ないし(3)の各事実はいずれも認めるが,同(4)は争う。被告の反論審決の認定判断は正当であり,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。

(1) 取消事由1に対し

特許請求の範囲に記載された本願発明は,「a)着色バインダー層;b)ガラスまたはセラミック微小球の層を含む微小球が露出している再帰反射製品」である。これは文字通り「再帰反射製品」すべてを含む広範囲のものであり,それ以上に下位概念の用途を限定するものではないし,製品の部分であるとも全体であるとも限定していない。したがって,引用発明の「再帰反射シート」を本願発明の「再帰反射製品」に相当するとした審決の認定に誤りはない。また,引用発明の構成,作用・効果等は,審決で認定したように,引用例1に記載された当業者が一つのまとまりのある技術事項として理解し得る発明を基に解釈されるべきである。そして,本願明細書(甲4)によれば,本願発明の出願時の技術水準は構築物10に過剰の材料の層が使用されるとか再帰反射セグメント12は下方にある着色布帛から離層しうる等の欠点があったところ(2頁21行∼3頁6行 ),引用発明の「再帰反射シート」は再帰反射シートの全面にガラスビーズ(6)を埋め込み,その一部に光反射層(3)を配置し,ガラスビーズ(6)の表面から光(7)を照射すると光反射層(3)のある部分では再帰反射され他の部分では反射されないという本願発明のFig.3(図3)とほぼ同様の構成を有することで,本願発明の第1及び第2セグメントと同じ機能を有し,しかも,光透過部分にもガラスビーズを配置することによって上記技術水準の有する欠点も解消されることになったというものである。そうすると,上記のような本願発明の出願時の技術水準を基礎として引用例1の記載事項及び第3図に接した当業者であれば,引用発明を想到することは全く自然であり,引用発明の「再帰反射シート」を本願発明の「再帰反射製品」に相当すると認定した点に誤りはない。

(2) 取消事由2に対し

ア 特許請求の範囲に記載された本願発明における第1及び第2セグメントの構成は「第1セグメントが微小球の層の埋め込まれた部分に配置された反射性金属層を有し,そして第2セグメントが微小球の層の埋め込まれた部分の後方に機能的に配置された反射性金属層を有しない」というものであるところ,引用発明の「ガラスビーズ(6)の下にAℓ層からなる光反射層

(3)が存在する部分」と「ガラスビーズ(6)の下に光反射層(3)の存在しな

い光透過部分(4)」が,それぞれ本願発明の「反射性金属層を有し」ている第1セグメントと「反射性金属層を有しない」第2セグメントとに相当することは明らかである。イ これに対し原告は,引用例1(甲1)でいうところの「本考案」ないしその実施例を「引用発明」と捉えた上で,これに基づき引用例1の光不透過部分(3)及び光透過部分(4)の幅が0.5㎜程度の市松模様であるから認識できないとか,再帰反射シート(1)の市松模様は表示(サイン)ではないなどと本願発明との対比を行っている。しかし,審決では引用例1の記載事項及び図面,具体的には第3図から引用発明を認定したものであり,これは

(原告の主張)

する「本考案」と同一のものではない。そして,この引用発明の構成自体は実用新案登録請求の範囲に記載された考案とも矛盾するものではない。原告は考案の詳細な説明全体から引用発明を認定し,機能,効果等を解釈すべきであると主張するようであるが,引用例には1つの技術のみが記載されているというものではなく,種々の発明が記載されているところ,その中から本願発明との対比に必要とされる,当業者が理解し得るひとまとまりの技術事項を引用発明として認定することは,進歩性判断における審理の常道である。その場合,どの部分の技術事項に注目するかによって引用発明の内容が種々存在し得ることは当然である。この点,取消事由1に対して述べた本願発明の技術水準を改めて見ると,微小球のある部分は再帰反射層であるという思考にとらわれていたために着色層に再帰反射部分を貼り付けなければならなかったと考えることができる。そして,本願発明の技術水準が有する上記問題点を認識していた当業者が引用例1の第3図及び審決の摘記事項に接すれば,ガラスビーズを全面に配置しガラスビーズのある部分を反射層としないことにより,技術水準が有する上記問題点の大きな部分,すなわち二層構造にする必要がある点を解決できるという着想を得ることができ,その際「本考案」が全体として何を目的としたものか,サイズはどうかなどに関係なくそこから引用発明を抽出することに何ら不自然なことはない。したがって,原告の上記主張は失当である。ウ また原告は,審決が本願発明の第1/第2セグメントと引用発明の光不透過部分/光透過部分との相違を看過したと主張するが,審決は本願発明が「顕著に異なる色を呈する」点について相違点2として認定判断しているから,原告の上記主張は失当である。

(3) 取消事由3に対し

本願明細書の図面に記載された実施例において反射性金属層は微小球を球形に覆うものとして記載されているが,原告の指摘する本願明細書(甲4)における 微小球の層の埋め込まれた部分に配置された」「後方に機能的に」「 ,の定義(5頁下8行∼下3行,6頁6行∼9行)によれば,平面状の反射性金属層で微小球の埋め込まれた部分に直接接しているものは除外されておらず,これも「微小球の層の埋め込まれた部分に配置された」ということができることは明らかである。そこで,特許請求の範囲に記載された本願発明の「微小球の層の埋め込まれた部分に配置された反射性金属層」及び「微小球の層の埋め込まれた部分の後方に機能的に配置された反射性金属層」における反射性金属層と微小球との関係をみると,「埋め込まれた部分」が引用例1(甲1)の第3図のような態様を意味し,「埋め込まれた部分の後方」がバインダー中であって微小球と離れた位置である構成をも含むものである。このような構成でもバインダー中を通過する光路の長さが大きく異なるので,取消事由5について後述するように「顕著に異なる色を呈する」ことになる。また仮に原告が主張するように本願発明が微小球に接して反射性金属層が配置される構成であるとしても,そのような構成は周知慣用されていた技術事項である(例えば,本願出願時の技術水準として本願図面の図1〔Fig.〕)において示されるほか,特開昭57−189839号公報〔発明の名称「オープンタイプ再帰反射シートの製造方法」 出願人 東芝硝子株式会社,,公開日 昭和57年11月22日,乙1〕,特開昭62−2206号公報〔発明の名称「光反射器」,出願人 ユニチカスパークライト株式会社,公開日昭和62年1月8日,乙2〕,特開平2−126202号公報〔発明の名称「光透過性再帰反射材の製造方法」,出願人 ユニチカスパークライト株式会社,公開日 平成2年5月15日,乙3〕等参照)。したがって,引用例1の第3図に接した当業者であれば,光反射層(3)がガラスビーズ(6)の埋め込まれた部分に接して設けられたものを本願図面の図3(Fig.3)のものとほぼ等価のものとして認識することが可能であり,光反射層(3)が接して設けられたガラスビーズ(6)が接着剤層(5)に部分的に埋め込まれた光反射層(3)の存在する再帰反射部分が引用例1に記載されているに等しい事項として理解することができる。審決は,引用発明がそのような光反射部分をも包含する再帰反射シートであると認定しており,また,本願発明においても反射性金属層が微小球との関係でどこに配置されているか必ずしも明確ではなく,いずれの構成も当業者にとってほぼ等価のものとして認識し得るので,本願発明との対比においても相違点としては挙げていない。したがって,光反射層がガラスビーズを覆っていない点を相違点として論ずる

(原告の主張)

は失当である。なお審決は着色バインダー層については本願発明と引用発明との相違点として判断している。接着剤層が着色されても「顕著に異なる色を呈する」ことにならないとの

(原告の主張)

は,引用発明を引用例1の実施例として理解したことに基づくものであり,引用発明を正しく理解していないものであるから失当である。

(4) 取消事由4に対し

ア 原告は本願発明と引用発明は技術分野が異なるから両者を組み合わせることは困難である旨主張するが,引用発明は再帰反射シートであり,本願発明は再帰反射製品であって,再帰反射シートが再帰反射製品の下位概念のものであることは明らかであるから,技術分野が異なる旨の主張は失当である。イ 原告は,引用発明の接着剤層を着色することには動機付けがないとか,阻害要因があるなどと主張する。しかし,着色したい部分に着色するということは何ら例示する必要もないほど社会で普通に行われていることである。着色の目的も識別性を高めるとか美的効果を高める等種々あるが,いずれも技術的に議論するまでもなく当然のことである。審決が引用例2及び周知例を例示したのは本願発明の着色部分がバインダーであったためであるが,上述のようにどこを着色するかということも含め,着色することに格別の技術的意義があるということは到底できない。また再帰反射製品において再帰反射部分と再帰反射機能を有さない部分とを顕著に区別できるようにすることは,取消事由1について前述したとおり,本願出願時の技術水準であるほか,前掲特開昭62−2206号公報(乙2)にも示され,また,周知例(甲3)の【従来の技術】欄にも「道路等での歩行者,マラソン走者,作業者の安全を改善するために,逆反射性マーキングを衣類に付している。一つの通常の態様として,逆反射性素子の単層,例えば結合剤物質の層に部分的に埋め込まれた半球状反射物と透明微小球を含む逆反射性アップリケに接着性支持体を付して,衣類に密着させている 。 (段落【0002 】」 )と記載されているように,何ら格別の技術事項ではない。したがって,引用発明の識別性,視認性を高めるために引用発明の接着剤層を着色することは何ら格別のことではなく,原告の上記主張は失当である。

(5) 取消事由5に対し

ア 原告は,引用発明の再帰反射シートの光透過部分(3)と光不透過部分(4)のパターンは一様で微細なパターンであって,再帰反射シートを普通に観察する人は光透過部分(3)と光不透過部分(4)のパターンを個別のパターンとして識別できないものであると主張するが,審決で認定した引用発明と引用例1に記載された「本考案」とを混同した主張で失当である。また原告は,本願発明は独特の再帰反射製品の構成により本願発明の再帰反射製品を着用した人を昼夜間の照明条件下で目立たせることを可能とするものであるとも主張するが,再帰反射製品にあって再帰反射部分と再帰反射機能を有さない部分とを顕著に区別できるようにする効果(本願発明ではこれが「構成」となっている。)は,取消事由4に対し述べたとおり,本願出願時の技術水準であるほか,甲3,乙2の各周知例にも示されるように何ら格別の技術事項ではない。ちなみに,本願発明の「顕著に異なる色を呈する」の構成は機能的表現であって「顕著に」の程度は曖昧である。仮に引用発明の光反射層(3)の配置を引用例1(甲1)の第3図に示されるようにガラスビーズ(6)と点接触する平板状のものと解した場合でも,再帰反射光が接着剤層(5)中を通過する距離は非常に小さいもので,着色は極めて薄くなると考えられる。したがって,光反射層(3)のある部分と光反射層(3)がない光透過部分(4)とでは明度が異なり,異なった色として認識されることは明らかである。さらに,本願発明が微小球の再帰反射性を利用した再帰反射製品において微小球に接してアルミニウム等の反射性金属を蒸着等により設けるものであるとしても,取消事由3について述べたとおり,そのような構成はごく普通に行われていた技術手段である。イ 原告は,引用発明では光反射層(3)が存在する光不透過部分においてガラスビーズ(6)と光反射層(3)との間に接着剤層(5)が存在すると主張するが,審決は引用発明についてそのような認定をしていない。

(原告の主張)

は引用例1の実施例にとらわれたもので適切ではない。また原告は,引用発明に引用例2又は周知例を組み合わせて得られる再帰反射シートは「第1セグメントが微小球の層の埋め込まれた部分に配置された反射性金属層を有」していないので高い再帰反射度を示す本願発明の再帰反射製品とは異なるものであるとも主張するが,引用発明も接着剤層(5)に部分的に埋め込まれたガラスビーズ(6)の下にアルミニウム層からなる光反射層(3)を有するものであるから,本願発明と同様の構成であり,効果についても本願発明と同様であるから,

(原告の主張)

は失当である。なおバインダー層を着色することが格別の構成でないことは取消事由4について述べたとおりである。ウ また原告は,引用発明に引用例2又は周知例を組み合せた場合,光透過部分に反射材ないし反射物が存在することになるから,光反射層が存在する光不透過部分と構成上の実質的な相違がなくなる旨主張するが,ここでも原告は引用例2及び周知例に記載された周知技術をそれぞれの刊行物に記載された特定の実施例にとらわれて解釈する誤りを犯している。すなわち,審決の述べるとおり,バインダー層を着色することは周知であり,何ら格別のことではなく,引用例2及び周知例にバインダー層を着色することが記載されていることは明白な事実である。さらに,引用例2(甲2)にはこれまでも述べた周知技術である真空蒸着により透明小球4に反射性の高い物質を鍍金して鍍金層8を形成したものが記載され,その場合には,反射材7は必要に応じて入れればよいと記載されており(3頁左上欄) 必ず反射材を入れるという

(原告の主張)

は当たっていない。また,,周知例において微小球24が真空蒸着等による反射物26を有していても結合剤層16を着色しているのであるから,引用発明の接着剤層(5)を着色することに何らの阻害要因もない。したがって,原告の上記主張は失当である。

第4 当裁判所の判断

1 請求原因(1)(特許庁における手続の経緯),(2)(発明の内容 ),(3)(審決の内容)の各事実は,いずれも当事者間に争いがない。本願発明の意義

(1) 本願発明は上記1(2)のとおり,次のような内容である。「1.a)第1及び第2主要表面を有する着色バインダー層;及びb)前記着色バインダー層の第1主要表面に部分的に埋め込まれた部分を有し,且つ,そこから部分的に突き出た部分を有するガラス又はセラミック微小球の層;を含む微小球が露出している再帰反射製品であって,前記バインダー層及び前記微小球の層が,昼間の照明条件下で見た場合に実質的に異なる再帰反射度を示し,且つ,顕著に異なる色を呈する第1及び第2セグメントに分けられており,前記第1セグメントが微小球の層の埋め込まれた部分に配置された反射性金属層を有し,そして前記第2セグメントが微小球の層の埋め込まれた部分の後方に機能的に配置された反射性金属層を有しないことを特徴とする,微小球が露出している再帰反射製品。」

(2) 一方,本願明細書(甲4。ただし,本件補正〔甲7〕後のもの)には次の記載がある。ア 技術分野「本発明は , ⅰ)非常に目立つ着色セグメントにより縁取りされた再(帰反射像を表示する製品,(2)2種の異なる再帰反射セグメントを有する製品の製造方法,及び(3)外面に固定された再帰反射製品を有する衣服製品に関する。(1頁4行∼7行)」イ 発明の背景「再帰反射製品は,光が生じている方向からの入射光の殆どを反射する能力を有する。この独特の能力によって,高速道路の建設及び補修作業者並びに消防士により着用される衣服に再帰反射製品が広範に使用されてきた。これらの衣服に取り付けられている再帰反射製品は,典型的には,蛍光の地色に再帰反射縞(retroreflective stripe)の形態で存在する。再帰反射製品は,着用者の存在を目立たせることにより着用者の安全性を高める。このことは,昼間及び夜間の照明条件の双方のもとでの衣服に高い顕著性を与えることにより達成される。昼間の照明条件 強い拡散周囲光)(において,前記製品の蛍光部分は,非可視光を吸収し,そしてその光を可視スペクトルの光にして発光することによって高い顕著性を与える。夜間の照明条件(弱い拡散周囲光)において,再帰反射縞は,自動車のヘッドランプ及びサーチライトからの光が再帰反射製品に当たった時に照らされることにより高い顕著性を与える。再帰反射性の蛍光色製品は,有機バインダー中に蛍光顔料を含む蛍光材料の層を布帛基材上にコーティングし,次いで所望の形状の再帰反射材料を蛍光色布帛の表面の所定の領域に貼り合わせるか,さもなくば接着させることにより製造されてきた。多くの場合において,布帛基材の裏面(再帰反射材料をその上に有する蛍光面の反対側)は,次いで,高速道路の作業者又は消防士により着用される衣服の所定の領域に縫製,貼り合わせ,又は別の方法で取り付けられる。…衣服の外面に固定することができる従来の再帰反射の断面図が図1に詳細に示されている。図1に示される再帰反射製品10は,2つの着色セグメント14及び1’により縁取りされた再帰反射セグメント12を含む。再帰反射セグメント12は,バインダー層20中に部分的に埋め込まれた多数の光学素子,典型的には微小球18を含む。正反射性金属層22が微小球18の埋め込まれた部分の後方に配置されている。再帰反射セグメント12は縞として着色布帛15の表面に広がっている。着色布帛15は典型的には布帛26上に蛍光色塗膜24を含む。強い拡散周囲光のもとで位置Xから見た場合,製品10は,着色セグメント14及び14’として示した蛍光色布帛により両端で縁取りされた灰色がかった縞(セグメント12)として見える。夜間の視検条件下で,再帰反射縞は,基本的に,光が照らされた時に非常に目立つ製品10の唯一の部分である。製品10は,強い及び弱い周囲照明条件の双方において着用者の存在を目立たせることにより優れた顕著性を与えるが,再帰反射製品は以下の4つの欠点を有する: 1)構築物10に過剰の材料の層が使用される; 2)( (再帰反射セグメント12は下方にある着色布帛から離層しうる; 3)再帰(反射セグメント12の製造及びそれらの着色基材15への貼り付けに溶剤型バインダー及び接着剤が往々にして使用される;及び,(4)製品の着色セグメント14及び14’には基本的に再帰反射能がない。製品10からの再帰反射セグメント12の離層は,衣服を夜間に顕著性のないものにする。過剰の材料の層は,衣服を重たく,且つ柔軟性の低いものにし,そしてプロダクトコストを増加させうる。溶剤型バインダー及び接着剤の使用は,それらが環境を汚染することを防ぐための高価な溶剤回収装置を往々にして必要とするため好ましくない。種々の再帰反射度を有する部分により再帰反射製品の前面上に像(image)又はある種の模様を表示する再帰反射製品を提供するために,蒸着された正反射性金属層がシートの光学素子の後方の所定の領域に配置された。蒸着された正反射性金属層の選択的配置は,幾つかの異なる方法で達成されてきた。通常使用されている方法は,連続的な正反射性金属を光学素子の背面全体に蒸着すること,蒸着された金属部分の上に保護層を配置すること,次いで金属の保護しない領域を除去するためにエッチング剤溶液を使用することを含む。この種の方法は,…連続的な蒸着された金属層のレーザー除去及び選択的化学的除去を伴う。上記方法は,再帰反射シートの光学素子の後方に蒸着された正反射性金属を選択的に配置できるが,これらの方法は,比較的複雑であり,そして環境上安全な形態に処理しなければならない溶剤の使用を伴う。(1頁9行∼3頁下3行)」ウ 発明の要旨(ア) 「本発明は,新規再帰反射製品,及び再帰反射製品を製造する新規方法を提供する。この新規再帰反射製品は,公知の再帰反射製品の上記欠点を克服し,そしてこの新規方法は,環境上の問題を引き起こさないあまり複雑でない方法で微小球に選択的に蒸着金属を適用することを可能にする。(3頁下1行∼4頁4行)」(イ) 「本発明は再帰反射性である第1及び第2セグメントを有するものであって,前記第1セグメントは,埋め込まれた微小球に配置された反射性金属層を有し,且つ,第2セグメントは微小球の埋め込まれた部分の後方に機能的に配置された反射性金属層を有しない。反射性金属層の位置に関し, 微小球の層の埋め込まれた部分に配置された』なる用語は,『反射性金属層が微小球と(埋め込まれた部分で)直接接触しているか,又は,他の反射層若しくは薄い非反射性の無色層(例えば,誘電体ミラー)を通じて微小球と接触していることを意味する。非反射性の無色層が微小球と反射性金属層の間に配置される場合には,その厚さは20マイクロメートル以下( 薄い』ことを意味する)『 ,好ましくは10マイクロメートル以下,より好ましくは5マイクロメートル以下である。薄い層が前記製品の再帰反射性にあまり寄与しないならば,それは非反射性であると見なされ,そして薄い層が基本的に透明であるならば,それは無色であると見なされる。薄くなく,且つ無色である非反射性の無色層は,再帰反射シートの性能に有害な影響を及ぼす。(5頁17行∼6頁」5行)(ウ) 「 後方に機能的に』なる用語は,本明細書において,反射性金属層が『微小球を透過した入射光を反射することができるように微小球の埋め込まれた部分に接して又はその後方に配置された反射性金属層を有することを意味するために用いる。第1セグメントにおいて微小球に接して反射性金属層を有することにより,及び第2セグメントにおいて微小球の後方に機能的に配置された反射性金属層を有しないことによって,第1及び第2セグメントは,再帰反射性の視検条件下で見た場合に,異なる再帰反射度を与えることができる。(6頁6行∼13行)」(エ) 「 実質的に異なる再帰反射度』なる用語が意味することは,全ての照『明条件が基本的に等しい場合に,第1及び第2主要セグメントが著しく異なる量の光を再帰反射することである。第2主要セグメントが,反射性金属層よりも良好に機能する反射体を微小球の後方に有しないかぎり,第1セグメントが実質的により優れた再帰反射能を有することを意味する,即ち,第1セグメントが実質的に入射光をより多量に再帰反射する。典型的には,第1主要セグメントは,高度の再帰反射性の達成を可能にする。『高度』なる用語は,0.2度の観測角及び−4度の照射各を用いるの ASTM E 810-93b に従って再帰反射製品を試験した場合に,再帰反射係数R A がカンデラ毎ルクス毎平方メートル(c/l/ ㎡)を超えることを意味する。…第1及び第2セグメントは,ASTM E 810-93b に従って試験した場合に,好ましくは少なくとも25 c/l/㎡,より好ましくは少なくとも100 c/l/㎡のR A の違いを示す。 (6頁14行∼7」頁8行)(オ) 「昼間の照明条件下で,第1セグメントは,薄い反射性金属層の典型的には灰色がかった又は銀色がかった色を呈し,そして第2セグメントは,好ましい態様では蛍光色である下方の着色バインダー層の色を呈する。第1セグメントにおいて,反射性金属層は不透明であり,下方のバインダー層を見ることを妨げる。しかしながら,第2セグメントにおいて,着色バインダー層の色は微小球を通して見ることができ,従って,

第2セグメントは昼間の照明条件下で第1セグメントの色とは顕著に異

なる色を呈する。 着色バインダー層』なる用語は,本明細書において,『

第2セグメント(存在する場合に,第3,第4,第5の他のセグメント

であってもよい)が昼間の照明条件下で第1セグメントとは顕著に異なる色を呈することを可能にするある手段によりバインダー層が着色されていることを意味する。本明細書において『顕著に異なる色』なる用語は,普通の観測者により色が異なるとして認識されると記述できる外観の特性を意味する。同一色の異なる色彩又は色相は,この定義のもとで顕著に異なる色であることができる。…」(7頁9行∼下4行)(カ) 「バインダー層は,その中に有効量の染料又は顔料を含ませることにより着色しうる。代わりに,バインダー層は,透明ポリマーマトリックス中に埋め込まれたか,又はそのすぐ下方に配置された着色フィルム又は着色布帛を有していてもよい。昼間の照明条件において,第1セグメントと第2セグメントの間の色対比によって,第1セグメントの像又は形状を目立つように露呈させることが可能である。夜間の照明条件において,第1セグメントは,第2主要セグメントよりも光を極度に再帰反射することができ,第1セグメントの像を,再帰反射製品の方向に向けられた光源の近くに存在する人が認識できるものにする。(8頁下8行」∼9頁2行)(キ) 「本発明は,個々の再帰反射縞又は層が分離層(separate layer)としての下方の着色基材に縫い付け又は接着されていないという点で公知の再帰反射製品とは異なる。その代わりに,再帰反射縞又は像は着色された背景セグメントと『一体』になっていること,即ち,再帰反射縞(第1セグメント)と着色セグメント(第2セグメント)が2種の異なるセグメントを含む単一の構築物として形成され,衣服に使用する再帰反射製品を製造する際にこれまで行われてきたように2種の別々の部材はその後に一体にされない。本発明のこの「一体」形態は,第1セグメントの再帰反射領域が離層,さもなくばすぐ下方の基材から分離することがないために都合良い。更に,より少ない層が必要とされ,衣服の総重量を減らし,その柔軟性を高める。第1及び第2セグメントは,再帰反射製品の上面上に同様な実質的に均一な微小球の層を使用することができる。更に,本発明の製品の第2セグメントは,第1セグメントと同程度に再帰反射性ではないが,上記の既に公知の製品の非再帰反射性の蛍光色部分よりも高い再帰反射性を有する。更に,本発明の方法を構成する工程は,従来の方法と比較した場合に単純である。蒸着された金属部分を溶剤により選択的に除去することよりも,むしろ蒸着された反射性金属層が微小球の埋め込まれた部分に選択的に適用される。従来の方法は,金属を選択的に除去するために,保護層,溶剤,そしてレーザーまでも使用する。本発明の方法は,非常に容易に実施することができ,そして溶剤及び他の化学溶液又は複雑な機械装置の使用を必要としない。更に,本発明に係る再帰反射製品を使用するのに僅かな金属が使用される 。」(9頁3行∼下2行)エ 好ましい態様の詳細な説明本願明細書の図3(甲5の2頁,Fig.3)は,本願発明に係る再帰反射製品30の断面図であり,本願明細書(甲4)において以下のように説明されている。「図3に示されるように,再帰反射製品30は微小球36の単一層を含み,前記微小球の幾つかはそれらに接して配置された半球状の反射性金属層38を有する。微小球36は,着色バインダー層42の前面又は

第1主要表面40に部分的に埋め込まれており,且つ,そこから部分的

に突き出ている。着色バインダー層42により支持された微小球36は,入射光が入射した方向と実質的に平行な方向に入射光が反射されるように光を平行にすることができる。第1セグメント32は,埋め込まれた部分に反射性金属層38を有する微小球36を含む。第2セグメント34及び34’は,そこに配置された反射性金属層を有しない。第2セグメントの微小球の後方に機能的に配置された反射性金属が無い場合には,そのセグメントの再帰反射度は,ASTM E 810-93b に従って試験した場合に典型的には5∼15 c/l/m2 程度であり,一方,反射性金属層が微小球の層の埋め込まれた部分に配置された場合には,第1セグメントは同様に試験した場合に典型的には400∼600 c/l/㎡程度の再帰反射度を示す。従って,微小球36を透過して反射性金属層38に当たる入射光は,セグメント32によってセグメント34及び34’よりも強く再帰反射される。(11頁16行∼12頁6行)」

(3) 上記(1)によれば,本願発明は着色されたバインダー層と,これに部分的に埋め込まれたガラス又はセラミックの微小球の層を有し,この微小球の層と上記バインダー層との間に一部反射性金属層を有することで,昼間の照明条件下で見た場合に反射金属層を有する部分(第1セグメント。なお,セグメントは分節,区分の意)とこれを有しない部分(第2セグメント)とが実質的に異なる再帰反射度を示し,かつ,顕著に異なる色を呈する再帰反射製品であると認められる。そして,上記(2)の本願明細書の記載を参酌すると,本願発明は,光が生じている方向からの入射光のほとんどを反射する能力を有する再帰反射製品に関するものであり,従前,再帰反射製品は,この独特の能力により高速道路の建設及び補修作業者並びに消防士により着用される衣服において広範に使用されており,典型的には,蛍光の地色に再帰反射機能を有する縞形態をとることにより,着用者の存在を目立たせ,着用者の安全性を高めるものであったが, 1)その構築物に過剰の材料の層が使用される; 2)( (再帰反射セグメントは下方にある着色布帛(上記の例における蛍光の地色部分)から離層し得る; 3)再帰反射セグメントの製造及びそれらの着色(基材への貼り付けに溶剤型バインダー及び接着剤が往々にして使用される;及び ,(4)製品の着色セグメント(上記の例における蛍光の地色部分)には基本的に再帰反射能がないなどといった問題点が存在したことから,このような課題を解決するため,上記(1)のような構成を採用したものである。その特徴は,再帰反射縞又は像が着色された背景セグメントと「一体」になっていること,すなわち,再帰反射縞(第1セグメント)と着色セグメント(第2セグメント)が2種の異なるセグメントを含む単一の構築物として形成され,衣服に使用する再帰反射製品を製造する際にこれまで行われてきたように2種の別々の部材はその後に一体にされないというものであり,これにより,第1セグメントの再帰反射領域が離層ないし基材から分離しないとか,より少ない層で済むため衣服の総重量を減らしその柔軟性を高めるとか,微小球の層を有する第2セグメントは第1セグメントと同程度の再帰反射性ではないものの,上記従来製品の非再帰反射性の蛍光色部分よりも高い再帰反射性を有するなどといった効用を有するものである。取消事由1(引用発明の「再帰反射シート」を本願発明の「再帰反射製品」に相当すると認定したことの誤り)について(1) 引用発明の意義ア 審決が認定した引用発明の内容は前記第3,1(3)のとおり,「上表面,下表面を有する接着剤層(5);及び前記接着剤層(5)の上表面に部分的に埋入された部分を有し,且つ,そこから部分的に突き出た部分を有するガラスビーズ(6)の単一層;を含むガラスビーズ(6)が露出している再帰反射シート(1)であって,前記接着剤層(5)及び前記ガラスビーズ(6)の層が,ガラスビーズ(6)の下にA1層からなる光反射層(3)が存在する部分と,光反射層(3)の存在しない光透過部分(4)に分けられている,ガラスビーズ(6)が露出している再帰反射シート(1)」というものである。イ 一方,引用例1(甲1)には次の記載がある。(ア) 考案の名称「再帰反射シート」(1頁3行)(イ) 実用新案登録請求の範囲「光反射層に所定パターンの光透過部分を形成し,少なくとも前記光反射層上に透明ビーズを存在せしめてなる再帰反射シート 。(1頁5行」∼7行)(ウ) 考案の詳細な説明a 「本考案は再帰反射シートに関するものであって,特に電飾サイン等の表示又は装飾装置に適用するのに最適な再帰反射シートを提供するものである。(1頁9行∼11行)b 「従来此種の再帰反射シートとしては,例えばマイラからなる基板の表面にAℓからなる光反射層を全面蒸着し,この光反射層上にガラスビーズを一様に被着してなるものがある。この場合,光反射層に対し前方から光を照射するとこの光が一旦ガラスビーズ内に入射して屈折した後に光反射層に反射されて前方に戻され,この戻った光が更に屈折を受けてもとの照射方向とは反対方向に返る。これによって光源側からその再帰反射光を観察し得るわけであるが,光反射層が全面に設けられているからこの光反射層の後方側から光を照射した場合には,前方からはこの光を観察し得ないことになる。従ってこれを交通標識等に利用したときには前方側から光を照射したときにのみ効果があるだけである。本考案は上述の如き欠陥を是正すべく考案されたものであって,光反射層(例えばAℓ層)に所定パターン(例えば市松模様)の光透過部分を形成し,少なくとも前記光反射層上に透明ビーズ(例えばガラスビーズ)を存在せしめてなる再帰反射シートに係るものである。このように構成することによって,前方側の光源による再帰反射光を観察し得るのみならず,後方側の光源による透過光も観察することが出来て表示又は装飾効果を非常に高めることが可能となる。(1頁12」行∼2頁下5行)c 「次に本考案を電飾サイン装置に適用した実施例を図面に付き述べる。

第1図∼第6図は本考案の第1の実施例を示すものである。

まず第1図及び第2図に付き再帰反射シート(1)の構成を説明する。このシートにおいては,厚さ25μ程度のポルエステルフィルムからなる基板(2)の表面に厚さ1μ以下,例えば0.2μ程度のAℓ層からなる光反射層(3)が市松模様状に被着形成されている。この光反射層の存在しない箇所は光透過部分(4)となり,この部分の幅d1及び光反射層(3)の幅d 2 は共に0.5㎜程度である。…また光反射層(3)を含む基板(2)表面には厚さ5∼10μ,例えば8μ程度の透明の接着剤層(5)を介して多数のガラスビーズ(6)が単一層にして一様に被着されている。なおガラスビーズ(6)の粒径の1/2以下が接着剤層(5)中に埋入されているのが好ましい。これらのガラスビーズはユニオン硝子株式会社製UB−67Jであってよく,またその直径は40∼70μ,例えば50μ程度でありかつその屈折率は1.9程度であってよい。ガラスビーズ(6)は基板(2)表面に接触し若しくは十分に近接した位置に配されている。(2頁下4行∼4頁1行)」d 「次に再帰反射シート(1)の作用を第3図及び第4図に付き述べる。このシートの前方側,即ちガラスビーズ(6)側から基板(2)に対して光(7)を照射すると,光反射層(3)上に存在するガラスビーズ(6)においては,入射光がまず屈折して光反射層(3)上に到達して反射され,この反射光が再びガラスビーズ内を進行してガラスビーズと大気との界面にて屈折を受けた後にもとの照射方向とは逆方向に戻って行く。また光反射層(3)の存在しない光透過部分(4)上のガラスビーズ(6)においては,入射光がガラスビーズ(6),接着剤層(5)及び基板(2)を通じて屈折を受けた後に基板(2)の後方側に散乱透過してもとの照射方向には戻らない。従って基板(2)の前方側から観察すれば,丁度光反射層(3)に対応したパターンの光のみが反射光として得られることになる。またシート(1)の後方側から基板(2)に対して光(8)を照射すると,光透過部分(4)に入射した光は接着剤層(5)及びガラスビーズ(6)により屈折されつつ基板(2)の前方側に散乱透過する。しかし光反射層(3)に到達した光(8)は反射されて基板(2)の後方側に戻される。従って基板(2)の前方側から観察すれば,光透過部分(4)に対応したパターンの透過光のみが得られることになる。このように,再帰反射シート(1)はこの前方及び後方側のいずれの方向から光が照射されても,これを再帰反射光又は透過光として観察することを可能ならしめる。…光透過部分(4)の幅d1及び光反射層(3)の幅d 2 を適当に選択することによって再帰反射率及び透過率を夫々コントロールすることが出来る。(5頁2行∼6頁下3行)」e 「次に上述した再帰反射シート(1)を用いた電飾サイン装置を第5図及び第6図に付き説明する。この電飾サイン装置(9)は直方箱体に構成されていて,その前面側には透明アクリル板(10)が固定され,この透明アクリル板の前方側表面には所定パターン,例えば『SONY』の文字を切り抜いてなる光透過部分(11)を有する黒色の塩化ビニル製不透明フィルム(12)が貼付けられている。また装置(9)内においては,透明アクリル板(10)の後方に透明着色フィルム(13)と再帰反射シート(1)と透明着色フィルム(14)とが順次配列されている。なおこの場合シート(1)はフィルム(13)(14)によって両側から挟着されていてもよく,またフィ ルム(13)(14)を設けずにシート(1)のガラスビーズ側を透明アクリル板(10)の後方側面に当てて貼付けるようにしてもよい。この電飾サイン装置(9)内に配された光源ランプ(15)を点灯せしめれば,再帰反射シート(1)の光透過部分を通過した光が更に透明アクリル板(10)と不透明フィルム(12)の光透過部分(11)とを通過して装置外へ進行するから光透過部分(11)に対応したパターンの光サインを観察することが出来る。この場合,着色フィルム(13)を黄色にしかつ着色フィルム(14)を青色にすれば,これら2色が合成された色,即ち緑色の透過光を得ることが出来る。また光源ランプ(15)を消灯せしめた場合,装置(9)外部の光源,例えば自動車のヘッドライトからの光を前方側から照射してこの照射方向から観察すると,不透明フィルム(12)の光透過部分(11)を通過した光は再帰反射シート(1)に反射されてもとの光透過部分(11)を通じて戻るから,上述と同じパターンが鮮やかに光って見えて表示装置として機能し得る。従って装置内外に夫々光源を配しても所定パターンの光を観察することが出来るから極めて有用である。…」(7頁5行∼8頁3行)f 「次に本考案の第2の実施例を第7図に付き述べる。この実施例における再帰反射シート(21)を構成するガラスビーズ(26)はビーズ保護層(20)又は接着剤層内に完全に埋込まれており,かつこの保護層の後方側表面はガラスビーズ(26)の形状に対応した波形状になっている。またこの波形表面には前記第1の実施例と同一パターンの光反射層(23)が被着形成されている。この実施例においても,前記第1の実施例で述べたと同様に再帰反射光と透過光とを前方側にて夫々観察することが出来る…」(9頁7行∼下3行)g 「以上本考案を実施例に基づいて説明したが,本考案の技術的思想に基づいて更に変形が可能であることが理解されよう。例えば光反射層のパターンは格子状,逆格子状,水玉状,逆水玉状等の種々の模様であって巨視的に見てその分布が一様なものであればよい。… 」(10頁3行∼8行)h 「本考案は上述の如く,所定パターンの光透過部分を有する光反射層上に透明ビーズを存在せしめるようにしているので,前方側からの光を透明ビーズによってもとの方向とは逆方向に反射しかつまた光透過部分を通過する光は反射されないから,所定パターンの再帰反射光のみを前方側に観察することが出来る。また後方側からの光のうち光反射層に達した部分はこの反射層によって反射されて前方側には到達せずかつ光透過部分に達した部分は前方側へ透過するから,前方側にてはこの透過光のみを所定パターンに観察することが出来る。従って従来不可能であった両方向からの光を所定パターンにて見れるので表示及び装飾装置に最適であり,然も着色フィルム等と組合せれば多種多様の着色光が得られて表示及び装飾効果を高めることが可能となる。(10頁12行∼11頁8行)」ウ 上記イ(イ)によれば,引用発明は,光反射層に所定パターンの光透過部分を形成し,少なくとも前記光反射層上に透明ビーズを存在せしめてなる再帰反射シートであると認められる。そして,上記イ(ア)及び(ウ)によれば,引用発明は再帰反射シート,中でも交通標識や電飾サイン装置等の表示又は装飾装置に用いる再帰反射シートに関するものであり,従来,この種の再帰反射シートとして,例えば基板の表面にアルミニウムからなる光反射層を全面蒸着し,この光反射層上にガラスビーズを一様に被着してなるものがあったが,これによると光反射層が全面に設けられているため前方側から光を照射したときにのみ効果があり,光反射層の後方側から光を照射した場合には前方からこの光を観察し得ないという問題点があったことから,このような課題を解決するため,上記イ(イ)のような,更に具体的には上記ア(引用発明)のような構成を採用したものである。その構成上の特徴は,光反射層(例えばアルミニウム層)に所定パターン(例えば市松模様)の光透過部分を形成する点にあり,このように構成することによって,前方側の光源による再帰反射光を観察し得るのみならず,後方側の光源による透過光も観察することが出来て表示又は装飾効果を非常に高めることが可能となるというものである。(2) 原告は,審決が,引用発明の「ガラスビーズ(6)が露出している再帰反射シート(1)」を本願発明の「微小球が露出している再帰反射製品」に相当すると認定したことが誤りであると主張する。しかし,本願発明は,前記2(3)のとおり,同(1)の構成(本願発明)を備えることにより光が生じている方向からの入射光のほとんどを反射する能力を有する再帰反射製品に関するものであるのに対し,引用発明は,上記(1)のとおり,シートの前方側から照射された入射光が光反射層上に存在するガラスビーズ(6)においてまず屈折して光反射層(3)上に到達して反射され,この反射光が再びガラスビーズ内を進行してガラスビーズと大気との界面で屈折を受けた後にもとの照射方向とは逆方向に戻って行くという再帰反射作用を有する再帰反射シートに関するものである。そうすると,両者は基板上に存在する微小球ないしガラスビーズを透過した光が再帰反射するという構成において一致するということができるから,本願発明の「微小球が露出している再帰反射製品」と引用発明の「ガラスビーズ(6)が露出している再帰反射シート(1)」とは一致すると認められる。これに対し原告は,本願発明と引用発明の機能を比較の上,本願発明の 再「帰反射製品」と引用発明の「再帰反射シート」とは全く異なる機能を発揮する本質的に異なる製品であるから,引用例1は,本来的に,本願発明の従来技術ではないし,本願発明の主引用例として適切なものではないなどと主張する。しかし,原告が挙げる機能の差異等は,上記のような構成上の一致点の認定を左右するものではなく,相違点の容易想到性の判断において考慮すべき事情というべきであるから,原告の上記主張は採用することができない。取消事由2(本願発明の「第1/第2セグメント」と引用発明の「光不透過部分/光透過部分」との相違の看過)について(1) 原告は,引用発明の「ガラスビーズ(6)の下にAℓ層からなる光反射層(3)が存在する部分」が本願発明の「第1セグメント」に相当し,引用発明の「ガラスビーズ(6)の下に光反射層( 3)の存在しない光透過部分(4)」が本願発明の「第2セグメント」に相当するとの審決の認定は誤りであると主張する。この点,前記2(1)に述べた本願発明の構成のうち,審決において相違点2として認定された部分(前記第3,1(3)イ参照)を除いた第1/第2セグメントの構成は,「第1セグメントが微小球の層の埋め込まれた部分に配置された反射性金属層を有し,前記第2セグメントが微小球の層の埋め込まれた部分の後方に機能的に配置された反射性金属層を有しない」ものであると認められる。これに対し,引用発明の構成は前記3(1)イcのとおりであり,基板表面にAℓ層からなる光反射層(3)が被着形成された部分と光反射層の存在しない光透過部分(4)とが市松模様状にあり,その上に多数のガラスビーズ(6)が単一層にして一様に被着されているというものである。以上を対比すれば,引用発明は「ガラスビーズ(6)の下にAℓ層からなる光反射層(3)が存在する部分」及び「ガラスビーズ(6)の下に光反射層(3)の存在しない光透過部分(4)」を有し,これらの構成はそれぞれ「微小球の層の埋め込まれた部分に配置された反射性金属層を有」する第1セグメント及び「微小球の層の埋め込まれた部分の後方に機能的に配置された反射性金属層を有しない」第2セグメントの構成に相当すると認められる。(2) これに対し原告は,本願発明は第1セグメントと第2セグメントが顕著に異なる色を呈することが認識されるものであるのに対し,引用発明における再帰反射シート(1)の光不透過部分(3)及び光透過部分(4)はそのように認識されるものではなく,これらが一致すると認定することは両者の本質的な相違を看過するものであると主張する。しかし,原告の主張する本願発明における第1/第2セグメントないし引用発明における光透過/光不透過部分の見え方の相違という点は,既に相違点2(本願発明は,バインダー層及び微小球の層が昼間の照明条件下で見た場合に実質的に異なる再帰反射度を示し,且つ,顕著に異なる色を呈するのに対し,引用発明では,そのような限定がない点)として認定されており,原告主張の事情は相違点2の容易想到性の判断の当否として論ずれば足りるというべきであるから,原告の上記主張は採用することができない。取消事由3(本願発明の「微小球の層の埋め込まれた部分に配置された」の認定の誤り及び「微小球の層の埋め込まれた部分に配置された反射性金属層」と「着色バインダー層」と「第1/第2セグメント」の相互関係の看過)について(1) 原告は,本願発明と引用発明は「前記第1セグメントが微小球の層の埋め込まれた部分に配置された反射性金属層を有」する点で一致するとの審決の認定は誤りであると主張する。この点,本願発明の構成のうち反射性金属層に関するものは ,「第1セグメントが微小球の層の埋め込まれた部分に配置された反射性金属層を有し,そして第2セグメントが微小球の層の埋め込まれた部分の後方に機能的に配置された反射性金属層を有しない」というものであるが,前記2(3)に述べたとおり,本願発明の意義が第1セグメントは第2セグメントと比較して高い再帰反射度を示す点にあることからすると,上記反射性金属層の位置についても,それにより第2セグメントの再帰反射度と比較して高い再帰反射度を示すことが可能であることを要するものと解すべきであり,上記構成における「埋め込まれた」とか「機能的」との用語の意義も,そのような文脈で理解されるべきである。このような観点からみると,本願発明における再帰反射製品において,反射性金属層を微小球の層の界面に沿って微小球に直に接する形で配置することは,点接触にすぎない場合に比して多様な角度からの進入光を再帰反射できる点で望ましいものであることはいうまでもないが,第2セグメントの再帰反射度と比較して高い再帰反射度を示すことが可能である限り,反射性金属層と微小球の層の接触がより少ない態様や,本願明細書における「他の反射層若しくは薄い非反射性の無色層(例えば,誘電体ミラー)を通じて微小球と接触 」(前記2(2)ウ(イ))する場合のように反射性金属層と微小球の層が接触していない場合も包含されるというべきである。他方,引用発明における光反射層とガラスビーズの関係についてみると,

第1の実施例における構成上の位置関係は前記3(1)イ(ウ)cのとおりであ

り,ここではガラスビーズ(6)が光反射層(3)が被着形成された基盤表面に接触し,又は十分に近接した位置に配されるべきものとされている。また,ガラスビーズ(6)と光反射層(3)が接触しない場合,両者の間には接着剤(5)が存することになるが,この接着剤層は光透過部分(4)をも構成するため透明とされている(前記3(1)イ(ウ)c参照)。そして,前記3(1)ウに述べたとおり,引用発明の再帰反射シートは光反射層とガラスビーズにより交通標識や電飾サイン装置等の表示又は装飾装置として必要な再帰反射機能を得ることが予定されているものであり,その構成上の特徴である光反射層に形成された所定パターンの光透過部分によっても,前方側の光源による再帰反射光を観察し得るものとされている。そうすると,引用発明における光反射層とガラスビーズの構成上の位置関係は,直接的な接触又は非反射性の無色層を通じて接触を有し,かつ,これにより一定程度の再帰反射度を有するものであるということができるのであって,少なくとも反射性金属層よりも良好に機能する反射体をガラスビーズの後方に有しない光透過部分(本願発明における第2セグメント)と比較してより高い再帰反射度が得られることは明らかであるから,これと本願発明の構成とを対比すれば,両者は「前記第1セグメントが微小球の層の埋め込まれた部分に配置された反射性金属層を有」する点で一致するということができる。(2) これに対し原告は,本願発明における反射性金属層はバインダー層と微小球の層の界面に配置されるものであるのに対し,引用発明における光反射層はガラスビーズと点接触するにすぎないから,本願発明と引用発明とが「前記第1セグメントが微小球の層の埋め込まれた部分に配置された反射性金属層を有」する点で一致するとはいえない旨主張する。確かに,引用例1(甲1)の第3図には,引用発明の第1の実施例における作用を説明するものとして,光反射層(3)とガラスビーズ(6)が点接触する図が示されているが,このような場合,当該点接触部分に対応する正面からの光については強い再帰反射(正反射)が得られるし,また接触がない部分についても,ガラスビーズに十分に近接した位置に光反射層があることからすれば,少なくとも反射性金属層よりも良好に機能する反射体をガラスビーズの後方に有しない光透過部分(本願発明における第2セグメント)と比較してより高い再帰反射度が得られることは明らかであるから,点接触であることが直ちに本願発明の構成から除外されるべき理由となるものではない。この点原告は,再帰反射が正面からの光に対してしか生じない(実質的に正反射しか生じない)構成は実用性を欠く旨主張するが,前記のとおり本願発明も引用発明も道路における顕著性を求める再帰反射製品である点で一致するのであって,引用発明の上記構成が直ちに実用性を欠くことになるということはできない。また,本願発明の意義ないし本願明細書の記載を考慮しても,本願発明が(点接触である場合の正反射に相当するような)強い再帰反射を得られる範囲ないし角度を一定以上に限定する趣旨であると解することはできず,再帰反射を得られる範囲の広狭は程度の問題であって,当業者(当該発明の属する技術分野における通常の知識を有する者)において適宜設定すべき事項であると解される(前記3(1)イ(ウ)fのとおり,ガラスビーズの形状に対応した波形状に光反射層を(非反射性の無色層を介しつつ)被着形成するという強い再帰反射を得られる範囲を拡大するための構成は引用例1に開示されている。。)したがって,原告の上記主張は採用することができない。(3) なお原告は,引用発明の接着剤層が着色されても引用発明の光透過部分(4)と光不透過部分が「顕著に異なる色を呈する」ことにはならないと主張するが,この点は相違点1ないし2に係る容易想到性の判断の当否として後記6,7において説示するとおりである。取消事由4(相違点1の容易想到性判断の誤り)について(1) 原告は,引用発明の構成における接着剤層(5)を着色することは容易想到であるとした審決の判断は誤りである旨主張するので,この点について検討する。前記3(1)ウに述べたとおり,引用発明は再帰反射シート,中でも交通標識や電飾サイン装置等の表示又は装飾装置に用いる再帰反射シートに関するものであるが,引用発明の構成は,従来技術においては光反射層が全面に設けられているため前方側から光を照射したときにのみ効果があり,光反射層の後方側から光を照射した場合には前方からこの光を観察し得ないという課題を踏まえ,これを解決するための技術的特徴を備えるものであって,具体的には,光反射層の前方からの再帰反射光及び後方からの透過光をいずれも観察できるように,光反射層(例えばアルミニウム層)に所定パターン(例えば市松模様)の光透過部分を形成する点に技術的特徴を有するものである。したがって,このような引用発明の意義ないし技術的特徴に鑑みれば,引用発明における光透過部分は光を透過し得るものであることを必須の構成とするものである。なお,引用発明は,光透過部分の光透過率は光透過部分の幅及び光反射層の幅を適当に選択することでコントロールすることができるものとされ(前記3(1)イ(ウ)d),また引用発明の再帰反射シートの前後に透明着色フィルムを配列することで(前記3(1)イ(ウ)e)光透過率が低減するような構成を付加する場合が予定されているが,上記のような引用発明の意義に照らせば,上記光透過部分の幅の調整や付加的構成を前提としても光透過部分の光透過率がなくなることは想定されていないというべきである。これに対し本願発明は,前記2(3)に述べたとおり,典型的には高速道路の建設及び補修作業者並びに消防士により着用される衣服において使用される再帰反射製品であり,従前,蛍光の地色部分と再帰反射機能を有する部分とを個別に作製して縞形態に貼り合わせることによって着用者の存在を目立たせていた従来技術に対し,再帰反射縞(第1セグメント)と着色セグメント(第2セグメント)とを2種の異なるセグメントを含む単一の構築物として形成することによって,第1セグメントの再帰反射領域が離層ないし基材から分離しないとか,より少ない層で済むため衣服の総重量を減らしその柔軟性を高めるとか,第2セグメントは,第1セグメントと同程度に再帰反射性ではないものの,上記従来製品の非再帰反射性の蛍光色部分よりも高い再帰反射性を有するなどといった効用を図ったものである。このような本願発明の意義ないし技術的特徴に鑑みれば,相違点1に係る本願発明における着色バインダー層の構成は,蛍光色を典型とする目立つ色で着色されることを予定しており,しかも第2セグメント部分において従来技術のものよりも高い再帰反射性を有することが期待されていることからすれば,少なくとも着色バインダー層が透明ないし光透過性のものであることは予定されていないと認められる。そうすると,引用発明の光透過部分を本願発明の着色バインダー層のように蛍光色を典型とする目立つ色で着色し,光透過性でないものにすることは,引用発明の必須の構成である光透過部分の光透過性を喪失させることにほかならないから,相違点1の構成を引用発明から容易想到ということはできない。(2) これに対し被告は,引用例2(甲2)や審決で引用した周知例(甲3)その他の文献から明らかなとおり,着色したいところに着色することは当然のことであるとか,着色することに格別の技術的意義があるとはいえないなどと主張する。確かに,引用例2(甲2)には,「…織布や合成樹脂シート等の基材5に接着塗料をコーティングして塗料層6を形成する。該塗料層6内にはアルミ微細粉又は透明で扁平な塩基性炭酸鉛等の反射材7(屈折率1.7以上が望ましい)が混在されるとともに,必要に応じて着色剤も混在される。(2頁」右下欄5行∼10行)として,織布や合成樹脂シート等の基材を着色剤で着色することが,また周知例(甲3)には ,「逆反射性素子の単層が部分的に埋め込まれ,そして結合剤層の表面に突き出しており,該結合剤層が染料を含むことから成るアップリケを特徴とする逆反射性アップリケ 。(特許請求」の範囲【請求項1】)として,逆反射性アップリケの結合剤層に染料を混合することなどが記載されているが,これらの着色対象はいずれも引用発明のように光を透過し得るものであることを必須の構成とするものではないから,引用発明に適用できるものではない。したがって,被告の上記主張は採用することができない。取消事由5(相違点2の容易想到性判断の誤り)について(1) 原告は,相違点2(本願発明は,バインダー層及び微小球の層が,昼間の照明条件下で見た場合に実質的に異なる再帰反射度を示し,且つ,顕著に異なる色を呈するのに対し,引用発明では,そのような限定がない点)を容易想到とした審決の判断は誤りである旨主張するので,念のため,この点についても検討する。ここで本願発明における「バインダー層及び微小球の層が,昼間の照明条件下で見た場合に実質的に異なる再帰反射度を示し,且つ,顕著に異なる色を呈する」とは,再帰反射製品としての条件を示すものであるから,このような構成を満たすというためには,再帰反射製品の通常の使用状態の下において当該製品が実質的に異なる再帰反射度を示し,かつ,顕著に異なる色を呈するものでなければならない。具体的には, 実質的に異なる再帰反射度」「とは,前記2(2)ウ(エ)のとおり,すべての照明条件が基本的に等しい場合に,

第1及び第2セグメントが著しく異なる量の光を再帰反射することであり,

第2セグメントが反射性金属層よりも良好に機能する反射体を微小球の後方

に有しない限り,第1セグメントが実質的により優れた再帰反射能を有すること,すなわち,第1セグメントが実質的に入射光をより多量に再帰反射することを意味するものである。(2) そこで,上記の観点から前記3(1)に認定した引用発明の内容を検討する。ア 本願発明における第2セグメント及び第1セグメントに対応する引用発明の構成は,それぞれ光反射層の存在しない光透過部分(4)及び光反射層(3)が存在する部分であり,引用発明の再帰反射シートはこれらの上に接着剤層を介してガラスビーズなどの透明ビーズの層が設けられているものである(前記3(1)ア,イ(ウ)b)。イ 光反射層(3)は基盤の表面にアルミニウムなど光反射性の物質を薄く被着形成してなるものであり,この光反射層の存在しないところが光透過部分(4)である(前記3(1)イ(ウ)c)。ウ 光反射層(3)の存在しない光透過部分(4)の幅及び光反射層(3)の幅はともに0.5㎜程度であり(前記3(1)イ(ウ)c),その形状は市松模様のほか,格子状,逆格子状,水玉状,逆水玉状等の種々のものでよいが,その模様は巨視的に見て分布が一様なものであることを要する(同g)。エ シートの前方側(ガラスビーズ側)から光を照射した場合の光反射層(3)と光透過部分(4)の作用は,光反射層(3)上に存在するガラスビーズにおいては入射光が屈折して光反射層(3)上に到達して再帰反射されることになり,光反射層(3)の存在しない光透過部分(4)上のガラスビーズにおいては,理論的にはガラスビーズの存在により再帰反射の存在が観念できるとしても,実質的には入射光がガラスビーズ,接着剤層及び基板を通じて屈折を受けた後に基板の後方側に散乱透過するため,もとの照射方向には戻らないこととなる。これらを基板前方側から観察すれば,「光反射層(3)」に対応したパターンの光のみが反射光として得られることになる(前記3(1)イ(ウ)d,h)。(3) 以上によれば,引用発明の再帰反射シートは,光反射層(3)においては強い再帰反射を得ることができるのに対し,光透過部分(4)では実質的に再帰反射を観察することができないか,これがあるとしてもごくわずかというものであり,かつ,両者の色は,光反射層(3)は光反射層の色(銀色)ないし光線の色であり,光透過部分は透明というものであるが,これら光反射層ないし光透過部分の形状は極めて微細で,しかも一様な分布を有するものであるから,これを観察する者が通常の照明下において光反射層と光透過部分の再帰反射度ないし色を異なるものとして認識することは不可能といわざるを得ない。そして,このような引用発明に被告が挙げる引用例2(甲2) 周知例(甲,)を適用することを考慮したとしても,引用例2(甲2)及び周知例(甲)の記載は,上記6(2)のとおり,引用発明における接着剤層に相当する部分を着色することを内容とするものにすぎず,上記のような光反射層と光透過部分の形状を変更するものではない。また被告は,上記のような区別をするための周知技術の例として特開昭62−2206号公報(乙2)をも挙げるが,同公報の記載は「第1図で例示される光反射器(1)は,支持体(4)に接着剤層(7)を介して保持された固着バインダ樹脂層(5)に,直径500μ以下で,屈折率2.0以上の多数の高屈折率ガラス小球(2)が直径の40∼8%埋没した部分と,透明樹脂層(3)が積層された部分とが,例えば文字図柄等を構成して形成され,かつ前記ガラス小球(2)の後部埋没半球面と透明樹脂層(3)の後背面とに直接反射層(6)が設けられた構造を有している 。(2」頁右上欄下7行∼左下欄2行)「…透明樹脂層が積層された領域は,明るい,メタリック調の乱反射が生じ,着色することにより,近距離からの観察で上記ガラス小球露出領域とで,鮮やかなコントラストを示す。(同右下欄1行」∼4行)として,引用発明における接着剤層を着色することを内容とするものであって,これにより引用発明における光反射層と光透過部分の再帰反射度ないし色を区別して認識することを可能とするものでないことは,引用例2や周知例と同様である。そうすると,これらにより引用発明における光反射層と光透過部分の再帰反射度ないし色を区別して認識することが可能となるものではないから,相違点2の構成が引用発明から容易想到ということはできない。結論以上によれば,原告主張の取消事由のうち4及び5はいずれも理由があり,審決は違法として取消しを免れない。よって,原告の請求を認容することとして,主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所 第2部

裁判長裁判官 中 野 哲 弘

裁判官 森 義 之

裁判官 澁 谷 勝 海

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