知財判決速報/裁判例集知的財産に関する判決速報,判決データベース

ホーム > 知財判決速報/裁判例集 > 平成13(ワ)15252 民事訴訟 不正競争

この記事をはてなブックマークに追加

平成13(ワ)15252民事訴訟 不正競争

判決文PDF

▶ 最新の判決一覧に戻る

裁判所 東京地方裁判所
裁判年月日 平成14年8月28日
事件種別 民事
法令 不正競争
不正競争防止法2条1項14号2回
特許法29条1項2号1回
キーワード 無効8回
特許権6回
審決4回
進歩性4回
新規性4回
無効審判3回
抵触3回
実施3回
侵害2回
損害賠償2回
主文
事件の概要    原告は,被告に対して,被告の社員が原告の取引先の社員に対して,被告が 特許を取得した事実を告げた行為が,不正競争防止法2条1項14号所定の営業上 の信用を害する虚偽の事実の告知行為に該当すると主張して,被告に対して,損害 賠償を請求した。

▶ 不正競争に関する裁判例

本サービスは判決文を自動処理して掲載しており、完全な正確性を保証するものではありません。正式な情報は裁判所公表の判決文(本ページ右上の[判決文PDF])を必ずご確認ください。

判決文

平成13年(ワ)第15252号 損害賠償請求事件

口頭弁論終結日 平成14年7月17日

              判       決

原      告  アオイ産業株式会社

訴訟代理人弁護士   安 福 謙 二

同          井 垣   弘

訴訟復代理人弁護士 堀 西 俊 光

       被      告  日立機材株式会社

訴訟代理人弁護士  大 崎 巖 男

同         森   明 吉

同         菊 地 達 也

同         吉 澤 敬 夫

同         牧 野 知 彦

              主       文

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1 請求

 被告は,原告に対し,金2255万円及びこれに対する平成13年1月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要

   原告は,被告に対して,被告の社員が原告の取引先の社員に対して,被告が特許を取得した事実を告げた行為が,不正競争防止法2条1項14号所定の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知行為に該当すると主張して,被告に対して,損害賠償を請求した。1 前提となる事実(証拠等を示した事実を除き当事者間に争いがない。)

(1) 当事者原告は,産業用運搬機械,動力伝導装置等の製造,販売等を業とする会社である。   被告は,搬送機器,動力伝導用チェン等の製造,販売,工事等を業とする会社である。    原告と被告は,いずれも,建設会社に対し,建設現場で使用される土砂搬送機の製造,販売,リースを行っており,互いに競争関係にある。 (2) 西松建設の土砂運搬機の発注等 平成12年1月ころ,西松建設株式会社(以下「西松建設」という。)は,工事名「常新加平工事」の工事用の「土砂搬送機」を発注することになり,関東支店内工事事務所のAが,発注事務(ただし,商社を介したリース契約を含む。)を担当した。 原告及び被告も,受注に向けての活動を開始した。 原告は,営業部長のBが,西松建設に対して,平成12年2月22日,見積書を提出し(甲4),また,同年8月ないし10月にも,価格を見直した上で,見積書を提出した(甲8,10,12ないし14)。他方,被告側は,C及び伊藤忠建機(被告が納品する場合に介在する商社)のDが,西松建設と交渉を行った。   平成13年2月ころ,西松建設は,被告に発注することを決定した。そして,同月27日,Aは,原告に対して,原告に対する発注をしない旨の決定を伝え,翌28日,「バケット式垂直土砂搬送設備のメーカ決定について」と題する書面で,特許紛争に巻き込まれるリスクを回避するためとのファックス送信した(甲)。  (3) 被告の特許権   被告は,平成6年8月19日,発明の名称をバケットエレベータ用バケットとし,請求項1ないし4の発明について特許出願をした。   次いで,平成8年3月5日出願公開,同9年10月21日拒絶理由通知,同年12月11日手続補正,同10年8月18日拒絶査定,同年9月10日審判請求,同12年8月3日の特許審決等を経て,平成12年10月27日に特許登録された(特許第3122924号。以下「本件特許」と,請求項1ないし4の発明を「本件発明」という。)。   これに対して,原告は,平成13年2月2日,無効審判請求をし,特許庁は,平成13年8月24日,特許法29条1項2号,3号,同条2項に該当するとして,本件特許を無効とする旨の審決(以下「本件審決」という。)をした(甲2,なお,被告は,上記無効審判手続において,答弁をしなかった。)。被告は,東京高等裁判所に対し,上記審決の取消訴訟を提起し,現在係属中である。2 争点及び当事者の主張

(1) 営業上の信用を害する虚偽の事実の告知行為の存否(原告の主張)ア 営業上の信用を害する行為の存在 平成12年12月13日ころ,Dは,西松建設のAに対し,被告の製品のバケットに関する特許が成立したと告げ,また,平成13年1月20日ころ,被告のCは,西松建設の関東支店内工事事務所にAを訪問して,本件特許の特許証等を提示した。 被告がAに対して,特許証等を示し,特許を取得した旨を告知する行為は,原告の土砂運搬機が本件特許権を侵害していることを知らせる行為であると評価されるべきであって,被告の行為は原告の営業上の信用を害する行為に当たる。イ 虚偽の事実の告知行為の存在被告は,以下のとおり,本件発明が公知であり,かつ,発明者であるEらの承諾を受けずに,特許出願した。このように,被告は,無効な特許であることを知っているにもかかわらず,取引の相手方である西松建設に対して,特許を取得したことを告知したのであって,同行為は虚偽の事実の告知に該当する。 (ア) 新規性,進歩性の欠如 本件特許の請求項1ないし4に係る発明は,いずれも出願前に後記レンドー工機あるいは被告自身により,公然実施された技術であるか,少なくとも,上記技術に基づき容易に発明し得るものであるから,新規性,進歩性を欠く。すなわち,Eは,昭和55年にレンドー工機に入社し,Fも昭和63年に鴻田産業からレンドー工機に出向した。そこで,E,Fは,バケット式垂直土砂搬送機の改良に取り組み,昭和62年ころ,本件特許請求項2の技術を除く本件特許の技術を完成させ,レンドー工機は,「SKIP HARRYOR」を製造,販売した。その後,Fは,平成元年11月に本件特許請求項2の技術を完成させ,以後,レンドー工機は,請求項2の技術を製品化した「SKIP HARRYOR」を製造,販売してきた。また,原告は,この「SKIP HARRYOR」の技術をそのまま受け継いで,原告の土砂運搬機として製造,販売している。したがって,これらの発明は既に公知となった。 (イ) 冒認出願   上記のとおり,本件特許の請求項2は,平成元年11月に,原告取締役技術部長のFが発明したものであり,被告による出願は冒認出願に当たる。すなわち,Eは,平成3年1月にレンドー工機を退社し,同年3月に被告に入社した。当時,被告はバケット式垂直土砂搬送機を製造販売していなかったが,Eらの持っていた技術を用いて,バケット式垂直土砂搬送機の製造を開始し,商品名「DORO CARRIER」を販売した。Eの有していた技術は,既に完成されており,何ら改良の必要はなかった。ところが,被告は,自社の従業員営業担当者らを発明者として本件特許を出願した。Eは,被告の特許出願について,承諾を与えていない。その後,Eは,平成8年3月に被告を退社した後,原告に入社し,平成9年7月からは,代表取締役に就任していた。(被告の反論)ア 営業上の信用を害する行為の不存在 伊藤忠建機のDが西松建設のAに対し,平成12年12月ころ,「当社が扱っている製品について特許が成立しました。」と告げたこと及び簡単な特許の内容を口頭で告げたことはある。また,Cが特許証及び特許請求の範囲を記載した書類をAに提示したことはある。 しかし,上記行為は,虚偽の事実の告知には該当しない。すなわち,本件発明は,進歩性も新規性も存在する発明である。また,被告が独自に発明したものであって,冒認出願ではない。自らの製品について特許が成立していることを宣伝活動に利用することは,通常の営業行為であるし,また,被告は被告製品のパンフレットにも特許出願中である事実を記載しており,西松建設に対して特許成立の報告を行うことは当然のことといえる。 本件発明は,公知のバケットエレベータ用バケットの改良に係る発明であり,従来技術において,粘着性の高い搬送物がバケットの底や側面にくっついて搬送効率が低下するという課題を解決するためのものである。 本件発明では,粘着性の高い搬送物について,バケットの上底を弾発性材料によって形成し,上底の厚さを,バケットエレベータの上部においてバケットが反転してバケット内の大部分の搬送物を排出したときに,自身の保有する弾発力を発揮して残りの一部分の搬送物を弾き飛ばすことができる程度の厚さに形成する構成によって,課題を解決したもので,このような技術は従来技術にはみられず,特許庁もこれらの点に新規性・進歩性を認めて特許を許した。 本件発明は,このように従来技術の改良に係るものではあるが,従来技術とは明らかに異なる構成に特徴を有する,被告の独自の発明である。イ 虚偽の事実の告知行為の不存在 上記行為は,原告の営業上の信用を害する行為には当たらない。 すなわち,西松建設が発注先を決定するに際しては,Aのような現場担当者が業者から見積書の提出を受け,各社の見積書を比較検討し,その報告を受けて支店の機械課課長が意思決定を行っている。西松建設には納期に余裕があり,平成12年12月末の段階では発注先を決定していなかった。 Aは,被告が特許を取得したことを知って,原告に対し,原告の土砂搬送機が本件特許に抵触しないか否かを問い合わせ,原告は弁理士作成の見解書,本件特許明細書及びレンドー工機株式会社の図面等の資料を示し,詳細に本件特許に無効理由があるとの説明を行った。西松建設は,本件特許明細書の図面と原告が提示した資料や原告の説明等を総合検討して,原告には発注しない決定をした。 以上のとおり,被告は何ら虚偽の事実の告知,流布をしていない。

(2) 過失の存在(原告の主張) 被告は,本件特許が無効理由を有することを知っていたのであるから,被告には,虚偽事実の陳述行為をするに当たり,少なくとも過失があった。(被告の反論) 被告には,以下のとおり,過失が存しない。すなわち,本件発明は,平成年8月19日に出願してから平成12年10月27日に登録されるまで,6年以上に及ぶ特許庁の厳格な手続を経て登録されたものであり,本件特許を有効と信じた被告には,過失は存しない。

(3) 損害額(原告の主張) ア 主位的主張  (ア) 原告は,被告の不正競争行為により,西松建設が特許紛争を回避しようとしたために,いったん西松建設と原告との間で成立したリース契約を解除され,契約が存続していれば得られたであろうリース契約の締結金額である2050万円の損害を受けた(甲13の1)。  (イ) 原告は,被告の営業誹謗行為により,本件訴訟提起を弁護士に委任せざるを得なくなったが,相当因果関係のある弁護士費用は,205万円が相当である。    (ウ) したがって,原告の損害は(ア),(イ)の合計2255万円である。 イ 予備的主張  (ア) 原告の土砂運搬機納入受注を失ったことによる損害額    原告は,西松建設に原告の土砂運搬機を2050万円で納入する予定であった。当該製品の製造原価は1532万600円であるから,原告の土砂運搬機の受注を失ったことによる原告の損害額(逸失利益)は517万9400円である。  (イ) 据付工事受注を失ったことによる損害額    原告は,原告の土砂運搬機の納入に伴う据付工事を463万5000円で受注する予定であった。そして,当該工事の原価は352万7000円であるから,据付工事の受注を失ったことによる原告の損害額は110万8000円である。  (ウ) 信用毀損による損害額    原告の信用が毀損されたことにより,今後の受注が不可能になった。ゼネコンである西松建設が本件工事と類似の工事を今後とも行っていくであろうことを考えると,今後本件と同様の受注は少なくとも3回は得られたであろうと予測できる。   したがって,信用毀損による損害は上記(ア)及び(イ)の損害額の合計万7400円の3倍である1886万2200円を下らない。 (エ) 原告の損害額(弁護士費用を除く)は,(ア)ないし(ウ)の合計25万9600円である。 (オ) 原告は,上記2514万9600円の一部である2050万円に弁護士費用205万円を加えた2255万円を請求する。(被告の反論)  否認する。

第3 争点に対する判断

1 争点1(虚偽事実の告知行為の有無)について

 (1) 事実認定 前提となる事実,証拠(甲7,8,20,乙1,6,7。枝番号の記載は省略する。以下同様である。)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ,これを覆すに足る証拠はない。ア 西松建設の「土砂搬送機」発注先の選定 平成12年1月ころ,西松建設は,工事名「常新加平工事」の工事に使用する「土砂搬送機」を発注することになり,Aが,発注事務等を担当した。原告及び被告も,受注活動を開始した。西松建設は,土砂搬送機の発注先を決定する資料とするため,平成12年7月21日,各社に対して,見積書の提出を求めた。これに対し,原告,伊藤忠建機(被告)及び菅機械工業の3社が見積書を提出した。同年8月4日,原告からは,据付け費用等を含んで総額2550万円とする旨の見積書が提出され,伊藤忠建機からも,同額の見積書が提出された。 Aは,同年12月ころ,原告と被告について,納入実績,メンテナンス能力,故障した場合の予備の機械の保有状況等を比較して,被告が勝るとの判断をした。 この点,原告は,平成12年12月12日に,Aから,原告と契約を締結する旨の内定が出た旨主張する。しかし,A作成の陳述書(乙1)において,この点を明確に否定していること,西松建設には納期に余裕があり,その段階で業者を内定することは不自然であること等の事情に照らすと,原告主張に係る上記事実を認めることはできない。イ 被告の特許権の取得と西松建設に対する説明等 伊藤忠建機のDは,平成12年12月12日,Aに対して,被告が,被告製品のバケットに関連する特許を取得した旨を伝えた(なお,Cは,平成13年月13日ころ,Aに対し,特許証及び特許請求の範囲が記載された書面を示した)。 Aは,平成13年1月22日,原告のBに対して,原告の土砂運搬機が,本件特許に抵触しないか否かについて確認した。これに対して,Bは,同月2日,Aに対し,本件特許の明細書及び弁理士の意見書を示して,本件特許には無効理由が存すること,原告は本件特許について無効審判請求をする意思があること等を説明し,また,本件特許の出願前に公然実施されていた資料として,レンドー工機作成の図面及び原告の土砂運搬機の図面等を示した。ウ 西松建設の発注先の決定 西松建設においては,現場担当であるAが見積書の提出を受けて比較検討した上,西松建設関東支店機械課の課長に報告し,同課長が発注先を決定する。西松建設は,平成13年2月末日ころ,被告のメンテナンス能力や機械保有台数,会社規模や納品実績等を総合考慮した結果,被告を本件工事の土砂搬送機のリース契約締結の相手方とすることを決定した。

(2) 判断

 以上認定した事実を基礎として,以下検討する。 一般に,自社が特許を取得した場合,そのことを取引先等に告げたりして,営業面で有利に活用することは,特段の事情のない限り,自由競争の範囲内の正当な営業活動と解すべきである。本件についてみると,①C又はDは,Aに対して,被告が被告の土砂搬送機のバケットに関して特許権を取得した旨を告げたり,特許証等を示したりしたが,そのような行為は,直ちには,原告の土砂搬送機が被告の有する本件特許権を侵害する旨を告げたことを意味するものではないこと,②西松建設のAは,原告のBに対して,原告の土砂運搬機が,本件特許権に抵触しないかどうかの説明を求め,これに対して,Bは,平成13年1月25日,Aに対して,本件特許の明細書,弁理士の意見書,出願前公然実施を証する図面等を示して,十分な説明を尽くしていること,③西松建設は,結局,発注先として被告を選択したが,それは,原告と被告について,過去の納品実績,メンテナンス能力,故障した場合の予備の機械の保有状況等を比較検討して,自らの責任において判断した結果であること等の事情を総合考慮すると,特許を取得したことを伝えた被告の従業員の行為等が,不正競争防止法2条1項14号所定の不正競争行為に該当するとはいえない。

2 結論

 以上のとおりであるから,その余の点を判断するまでもなく,原告の請求は理由がない。東京地方裁判所民事第29部裁判長裁判官    飯  村  敏  明裁判官 今  井  弘  晃裁判官石村智は,転補のため,署名押印することができない。   裁判長裁判官    飯  村  敏  明

最新の判決一覧に戻る

法域

特許裁判例 実用新案裁判例
意匠裁判例 商標裁判例
不正競争裁判例 著作権裁判例

最高裁判例

特許判例 実用新案判例
意匠判例 商標判例
不正競争判例 著作権判例

来週の知財セミナー (11月2日~11月8日)

11月5日(木) - オンライン

第69回東北大学知財セミナー

11月5日(木) - 東京 港

研究開発戦略と知的財産

特許事務所紹介 IP Force 特許事務所紹介

山下特許事務所

千葉県柏市若柴178番地4 柏の葉キャンパス148街区2 ショップ&オフィス棟6階 特許・実用新案 意匠 商標 外国特許 

栄セントラル国際特許事務所

愛知県名古屋市中区栄3-2-3 名古屋日興證券ビル4階 特許・実用新案 意匠 商標 外国特許 外国意匠 外国商標 訴訟 鑑定 コンサルティング 

あいわ特許業務法人(特許事務所)

〒104-0045 東京都中央区築地1-12-22 コンワビル4F 特許・実用新案 意匠 商標 外国特許 外国意匠 外国商標 訴訟 鑑定 コンサルティング