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【令和7年度パテントコンテスト受賞者インタビュー】名古屋造形大学——「貼る瞬間」を変える発想

6月30日(火)配信

「令和7年度 パテントコンテスト・デザインパテントコンテスト」の表彰式が、去る3月16日に行われた。

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 本稿では受賞作品の中から特に目を引いた発明に焦点を当て、受賞者の着眼点や発想を紹介していく。

 今回は、名古屋造形大学の学生による絆創膏『プルぺた』を紹介する。

写真(左)石田 千織さん 写真(右)鈴木 歩美さん

出発点は、子どもが絆創膏を貼る姿

 きっかけは、小さな子どもが絆創膏を貼ろうとしていた場面だった。

「接着面がくっついて何度もやり直していたんです。」

 そう振り返るのは、本デザインを制作した石田さんと鈴木さんだ。子どもの方が怪我をする機会は多いにもかかわらず、自分で貼ろうとすると苦戦している。その姿が強く印象に残ったという。

 さらに、自分たちも同じような不便さを感じていた。

「急いでいる時にイライラした経験があって、同じような悩みを持つ人は多いのではないかと思いました。」

 実際、絆創膏を貼る場面を思い返してみると、意外と小さなストレスは多い。包装がなかなか剥がれない。接着面同士がくっついてしまう。使い終わった後はゴミが散らばる。

 絆創膏は誰にとっても身近な存在だ。
 怪我をしたときに取り出し、貼って、捨てる。
 ほんの数十秒で終わる行為だからこそ、その使い勝手について深く考える機会は少ない。
 「絆創膏だから仕方ない」と受け入れられてきた不便さこそ、『プルぺた』の出発点だった。

“めくる”をなくしたらどうなるだろう

 話を聞いていて興味深かったのは、発想の出発点だ。

 一般的な絆創膏は、包装を開き、台紙をめくり、接着面を露出させて貼る。当たり前のように行っているが、実は細かな動作がいくつも積み重なっている。

 そこで2人が着目したのが、「めくる」という行為そのものだった。

「従来のめくる動作をなくして、挟んで引っ張るという単純な動作で貼れるようにしました。」

 そうして生まれたのが『プルぺた』である。本体を挟み、そのまま引っ張るだけで貼ることができる構造だ。

 仕組みを聞くと意外なほどシンプルだが、そのシンプルさこそがこのデザインの面白さでもある。新しい機能を付け加えるのではなく、余計な動作を減らすことで使いやすさを生み出している。

 さらに、接着面に触れずに貼れるため衛生的である点も特徴の一つだ。

デザインしたのは“貼る前後”も含めた体験

 『プルぺた』が目指したのは、単に貼りやすい絆創膏ではない。

 「貼った後ではなく、貼る瞬間をより良いものにしたいと思って制作しました。」

 『プルぺた』が目指したのは、絆創膏そのものではなく、その周囲にある体験なのだろう。
 例えば、使用後の包装紙は一つにまとまる構造になっている。絆創膏を貼った後、剥がした紙が机や床に散らばった経験がある人も多いだろう。『プルぺた』は、そうした貼った後の小さな煩わしさにも目を向けている。

 また、サイズごとにS・M・Lで色分けを行い、一目で判別しやすくした。持ち手部分には滑り止めとなる凹凸付きの紙を採用し、本体には手順番号も記載している。

 こうした工夫は、見た目のためだけではない。

「怪我をして余裕を失っている時でも迷わないようにしたかったんです。」

 絆創膏を使うのは、慌てている時や痛みを感じている時が少なくない。『プルぺた』では、説明書を読まなくても自然に使えることが意識されていた。使い方そのものをデザインしている。

 また、素材は紙に統一されている。使用後に分別する必要がなく、そのまま捨てられるようにするためだ。

 話を聞いていると、『プルぺた』は単に「貼りやすい絆創膏」を目指したわけではないことが分かる。包装を開けるところから、貼り終えて捨てるところまで。その一連の流れ全体を見直そうとしていた。

 使用する紙の種類も必要最小限に抑えられており、素材選びにも試行錯誤を重ねたという。貼る前、貼る時、貼った後。そのどの場面でも余計な負担を減らしたいという考えが、細かな部分にも貫かれていた。

(写真)『プルぺた』SサイズMサイズLサイズ

シンプルだからこそ、試行錯誤は多かった

 もっとも、シンプルな仕組みだからといって制作が簡単だったわけではない。

 特に苦労したのはパッケージサイズだった。構造上、どうしても通常の絆創膏より大きくなりやすい。

「なるべく大きくなりすぎないようにサイズ調整をしました。」

 さらに紙素材についても検討を重ねたという。

「実際に色々な紙を手で触りながら、適した紙を選びました。」

 強度が必要だが、厚くなりすぎても扱いにくい。軽さと丈夫さを両立するため、試作を何度も繰り返した。

 一見するとシンプルに見えるデザインほど、その裏側には多くの調整が隠れている。『プルぺた』もまた、そうした試行錯誤の積み重ねによって形になった作品だった。

「これ、楽だね!」——使った人の反応が自信になった

 制作を進める中で、最も印象に残っている出来事について尋ねると、石田さんは試作品を使ってもらった時のエピソードを挙げた。

「『これ、楽だね!』と笑顔になってくれた瞬間が一番印象に残っています。」

 自分たちの考えた仕組みによって、人の動作が変わる。さらに、その変化が表情として返ってくる。その瞬間に大きなやりがいを感じたという。

 鈴木さんも、制作そのものを楽しめたことが印象に残っていると話す。

「先生との進捗確認で褒めていただける度にやりがいを感じました。」

 工程は多く、決して楽な制作ではなかった。それでも楽しみながら取り組めた背景には、少しずつ形になっていく手応えがあったのだろう。

学びを形にし、次のステップへ

 石田さん、鈴木さんはともに大学でプロダクトデザインを専攻している。普段からユーザーの行動や不便さを観察し、そこから課題を見つけ出すことを学んでいるという。

 『プルぺた』もまた、そうした学びの延長線上から生まれた。

「大学ではユーザーの不便や行動をリサーチしていました。プルぺたもそのリサーチから生まれたデザインです」

 今回の取り組みでは、使いやすさだけでなく、実際に製品として世の中に出すための視点についても学ぶことができたそうだ。

 製造コストはどうか。実際に量産できるのか。社会に普及するためには何が必要か。デザインを考えるだけでは見えてこなかった課題とも向き合うことになった。

 ユーザー目線で考えることの大切さに加え、製品化まで見据えて設計することの難しさも実感したという。

商品化を目指して

 今回の受賞について、石田さんは「まさか二つも賞をいただけるとは思っていなかったので驚きました」と振り返る。先生や家族も喜んでくれたことが、とても嬉しかったそうだ。

 一方の鈴木さんは、「最初はあまり実感が湧かなかった」と話す。しかし、家族や友人に受賞を報告する中で、少しずつその大きさを感じるようになったという。

 現在も課題だと感じているのは、使い方をより直感的に伝えることだ。

「まだ手順を十分に伝えられていない部分があると思っています」

今後もブラッシュアップを続けながら、さらに完成度を高めていきたいという。そして、その先には商品化という目標もある。

 接着面がくっつく。うまく剥がせない。ゴミが散らばる。

 『プルぺた』は、そんな小さなストレスから生まれた。

 絆創膏を貼る時間はほんの数秒かもしれない。しかし、その数秒をより良くしようという発想が、多くの人にとって身近な製品を見直すきっかけになるのかもしれない。