ホーム > 特別企画 シリーズ「特許庁に突撃!!」 > 「デザイン経営」について、聞いてみた(前編)
インタビュアー:知財ポータルサイト IP Force 成田浩司
インタビューに協力してくれた、特許庁デザイン経営プロジェクトチームの外山雅暁(とやま まさとき)さん。
成田「デザイン経営」の考え方には非常に興味を惹かれますが、やや抽象的で難しいという印象も受けます。
外山さんそうですね。私たちもデザイン経営とはどんなものか、実際にやってみなければわからないということで、特許庁でもやってみようということになりました。研究会の報告と同時に2018年5月に「『デザイン経営』宣言」をし、8月にデザイン経営プロジェクトを立ち上げるのですが、それらの前段階として、同年2月に庁内の若手を対象としたデザイン思考の研修を実施しました。
この研修で、実際にデザインによって組織が変わっていくという手応えを得たことが、その後の「『デザイン経営』宣言」をはじめとする一連の取り組みにつながっていったのだと思います。18年6、7月には管理職向けの研修会、さらには前長官も含めた幹部向けのデザイン思考研修を実施しました。そして8月にいよいよ「デザイン経営プロジェクト」を立ち上げた、という流れになります。
成田デザイン経営プロジェクトでは、どんなことに取り組んだのですか?
今村さんまず、「CDO(デザイン統括責任者)」のポジションを設置しました。そしてその直下にデザイン経営プロジェクトチームを立ち上げ、大きな政策テーマに沿った形で4つのチームを設けました。
外山さん4つのチームとは「広報」「国内」「海外」「UI」の4つで、あくまでも大きな方向性で分けたものでした。その後、「国内」チームについては必要に応じてさらに細かく分かれ、「国内スタートアップチーム」「国内中小・ものづくりチーム」「国内サービス・ブランディングチーム」の3チームができました。これら6チームのテーマはすべて、特許庁が取り組むべき課題を反映しています。
成田なるほど。チームメンバーはどうやって集めたのですか。
今村さんチームメンバーは特許庁内で公募しました。これも初の試みだったのですが20〜30代くらいの若手を中心に「やってみたい」という総勢60名のメンバーが集まりました。参加者は庁内の様々な部署から集まったため互いに面識がない人も多く、そもそもデザイン経営についてよく知らなかったということもあり、メンバー全員で研修や合宿を行いました。
成田合宿をしたというのはおもしろいですね。どんなことをしたのでしょうか。
今村さん1泊2日の日程でチームメンバー同士がプロジェクトのビジョンについてディスカッションをしたり、外部の有識者にアドバイザーとして来てもらい、基礎的な知識を学ぶ座学や課題を設定するためのワークショップを開いたりしました。
成田合宿は、メンバー同士の親睦を深めるいい機会にもなりそうですね。
今村さんそうですね。夜は懇親会なども開催され、メンバー同士の距離を縮める有意義な時間になったと思います。チームビルディングも進みました。
外山さんメンバー全員が庁内での「本業」を持ちながらプロジェクトに参加していたのですが、合宿をすることで、集中的な時間をつくってプロジェクトに取り組むことができ、一気に議論が進みました。プロジェクトが始まってから初期の段階で実施したのが非常に効果的に働いたと思います。
成田そうした形でプロジェクトが進み、2019年3月の最終報告会でデザイン経営の成果が発表されたのですね。
外山さんそうです。各チームがぞれぞれサービスのアイデアを出しており、現在は、チームによってはすでに実行に移しているものもあります。