シリーズ「特許庁に突撃!」~第2回 「デザイン経営」について、聞いてみた 前編 ~

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最近……、活発ですよね?
 特許庁の広報活動・知財普及活動。
中の人に聞いてきました!

第2回 「デザイン経営」について、聞いてみた ~ 前編 ~

特許庁 デザイン経営プロジェクトチーム インタビュー

インタビュアー:知財ポータルサイト IP Force 成田浩司

デザイン経営プロジェクトチームの活動の様子

デザイン経営プロジェクトチームの活動の様子(提供:特許庁)

 

「拒絶理由通知」であきらめないサポートを

成田各プロジェクトチームの取り組みでは、どんな成果があったのでしょう。

外山さんたとえばUIチームは、「拒絶理由通知書」が送られてきたときに、出願人が対応方法のヒントをスマートフォンで得られるようなサポートができないかと考えました。

特に出願人が初心者の場合、特許庁の審査官から拒絶理由通知書が送られてくると、困惑して、もう登録は無理だとあきらめてしまうケースが多々あります。拒絶理由通知書の中には、ちょっとした記載ミスを修正すれば登録を受けられるような場合もありますが、そのような場合でも出願人があきらめることで拒絶になってしまうのは、私たちからみるとあまりにももったいないので、それに気づいてもらえるような仕掛けはないかと考えて生まれたのがこのサービスです。

成田具体的に、どんな仕組みになっているのですか。

外山さん拒絶理由通知書の書面にQRコードを付けておき、そのQRコードから、これからどんな対応をしたらいいのかをわかりやすく紹介しているページに直接アクセスできる仕組みになっています。現在、そのページを制作し、サービスの実装に向けて取り組んでいるところです。

これらのページの見せ方についても、どのような形にすればユーザーが使ってくれるかを確認するため、実際に画面イメージを作ってはユーザーの意見を聞くという作業を繰り返しています。こうした工程には「デザイン経営」の考え方が色濃く生かされていると言えるでしょう。

成田確かに、「拒絶」という言葉は少しきつい響きがありますよね。「拒絶理由通知書」をもらって実際にあきらめてしまう人はいるようですし。

今村さんせっかくの良いアイデアなのにもったいないですよね。

先入観を克服して見えてきたもの

外山さんほかに、たとえば「海外チーム」は、今回のプロジェクトで翻訳コストの問題を深掘りすることができました。

デザイン経営の取り組みでは、ユーザーへのヒアリングを通して課題を見出すことが非常に重要なのですが、海外のユーザーに直接意見を聞く機会はどうしても限られてしまいます。今回のプロジェクトでもやはり同様の問題があったのですが、大勢に対してヒアリングするのではなく、少人数相手でも深く聞くということに徹底しました。その結果、これまでは気づかなかった課題、ユーザーの本音が見えてきたのです。

成田海外のユーザーが抱えていた本音とは、どのようなものだったのでしょう。

外山さん特許庁への出願では昔から翻訳コストが高いと言われており、それはよく認識していたつもりでした。ただ、今回のヒアリングを通して海外のユーザーから言われたのは、翻訳コストの中でも、登録になるものにコストをかけるのはいいということでした。一方で、拒絶になってしまうものに対してはコストをかけたくないと、それが本音だったということに気づいたのです。

そこでこのチームからは、機械翻訳システムを活用するアイデアが生まれました。海外ユーザーの側は登録になるものに関しては翻訳にお金をかける価値があると考えているということに気づけたのは、非常に大きな進歩でした。それまでは、翻訳費用が高いと言われても、それはやむを得ないことなのではないか、というところからさらに突き詰めて考えることはなかったように思いますので。

最後に、チームメンバーから直接聞いて印象的だったのは、「これまでの自分たちが、いかに先入観をもって考えてしまっていたかがよくわかった」という言葉でした

成田それはすごい成果だと思います。人を指導したり教育したりする上でもっとも苦労することは、「考え切れていないことを自覚させること」だと思います。言葉で指摘しても伝わらないし、本人も何が問題なのか理解できずに混乱する危険がある。実体験として理解させるしかないと思うのです。メンバーからそうした言葉が出てきたのは、非常に意義深いことなのではないでしょうか。

外山さん確かに。そういう考え方ができる職員が増えていることが、組織としての価値につながるのだと感じています。

デザイン経営プロジェクトチームの活動の様子

デザイン経営プロジェクトチームの活動の様子(提供:特許庁)

思考のプロセスを変える

成田組織の中で長年にわたり業務が定型化されていったり、いわゆるスタンダードな仕事の仕方が定着していくと、その組織における仕事の文化のようなものが出来上がり、そこでの仕事ができる人のイメージも固まっていくものだと思います。そうすると、その殻を破って一歩先の段階にいってみたり、さらに突き抜けて深いところまで考えをめぐらせたりするのは、なかなか難しいものです。

外山さんそうなんです。デザインのプロセスを取り入れた意味はまさにそこにあります。いつもとは違うプロセスを踏むことで違う考え方にいき着く、というのがデザインのプロセスで、そこに意味があるのだと思います。

成田なるほど。メンバーに対して、もっと深く考えをめぐらせてほしいのだけれど、そうした方向に導けるようなシステマチックな方法論は見当たらない、そんな状況下で、デザインプロジェクトのように、アプローチを変えるとか、見方を変えるといった取り組みをすることで、メンバーがそれまで考えつかなかったところまでたどり着けるようになったと。これはすごく価値のある取り組みですね。

外山さんおっしゃる通り、そこが一番の価値だと思っています。

成田それは、おそらく会社の経営者ならば、誰もが必要だと考えていることなのではないでしょうか。社員が、どうやったら固定化した枠から抜け出て、柔軟で深い思考のもと、新しい課題なり価値なりを見つけ、解決できるようになるか。

外山さんブランドの構築とイノベーションの創出というのは、まさにその先にあるものだと思います。イノベーション、イノベーションと皆が言っているけれど、ではどうしたらいいのか――。考えてもわからないのならば、考えるプロセスを変えたらいいじゃないか、と。

ブランドの創出については、自分たちの組織としての価値なので、どういった形ならば自分たちが社会に価値を提供できるのかを考え抜いていけば、自ずとブランドになっていくのだと思います。

成田お話を伺っていて、デザイン経営には大きく2つの価値があるように思いました。1つは、今おっしゃったように「新たな課題や価値を発見しイノベーションの創出につなげられる」ということ。もう1つは、それによって「組織自体のレベルが上がる、組織全体が一歩高い境地にいける」ということです。大きくみて、これら2つの価値があると思いました。

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