ホーム > 特別企画 シリーズ「特許庁に突撃!!」 > 「知財普及の取り組み」について、聞いてみた(後編)
成田地方での知財の取り組みといえば、特許庁では、福島県での知財活用を重点的に支援していると聞きました。
赤穂さんはい、「福島知財活用プロジェクト」ですね。2018年度から3年計画で取り組んでいるプロジェクトです。福島県で進む技術開発分野の活発な取り組みに知財活用も絡めて、震災復興をさらに加速させようという取り組みです。
「福島知財活用プロジェクト」について語る赤穂さん
成田福島県では今、技術開発が盛んになっているのですか?
赤穂さん震災からの復興に向け、福島県では数々の取り組みが進められているのですが、テクノロジーの分野でも、たとえばロボット関係や再生エネルギー関係の研究機関がどんどんつくられるなど、活発な動きがあります。そして、こうした新しい技術をテコに今後さらに復興を推し進める上で知財も活用してもらおうというのが、特許庁のプロジェクトです。福島県の出願件数は、たとえば、特許であれば全国で35位、意匠と商標は30位ですので、知財の認知度はまだ高くはありません。
成田伸びシロがあるということですね。
赤穂さん特許庁が特定の県を重点支援するのはこれまでなかったことなのですが、福島県についてはそうした背景や事情を踏まえ、重点的な支援をすることになりました。
成田プロジェクトでは、知財活用を進めるにあたってどんな取り組みをしているのでしょうか。
赤穂さん大きくわけて2つあります。1つは、知財について周知するセミナーの開催で、初年度から2年連続で実施しています。福島県は、縦に浜通り(東部地域)、中通り(中部地域)、会津(西部地域)の3地域に大きく分けることができるのですが、それぞれの地域で最低1回ずつセミナーを開いてきました。1回100人程度が集まるほどの規模で、知財を活用している企業や支援機関によるセミナーを行いました。
もう1つが、今年度から始めたビジネスプロデューサー派遣事業です。新規事業を創出する専門家であるビジネスプロデューサーが福島県の企業を個別訪問し、そこで知財を使って新しいビジネスができないかを相談しながら一緒に考えていくという試みです。この2本立てで福島を盛り上げていこうというのが、福島知財活用プロジェクトです。
成田ビジネスプロデューサー派遣事業ですか。興味を惹かれます。
赤穂さんこの事業は、特許庁の企画調査課が2018年度まで取り組んでいた「地方創生のための事業プロデューサー派遣事業」が前身となっており、そこで実績を挙げた人にビジネスプロデューサーとして携わってもらっています。現在は1名のビジネスプロデューサーが活動されています。
成田訪問先の企業はどのように選定しているのですか。
赤穂さんご紹介いただくことが多いですね。知財総合支援窓口や、市などの行政機関が現地の企業とやりとりし、ニーズがありそうならば紹介してもらってビジネスプロデューサーが訪問するという形です。知財セミナーで宣伝や名刺交換をし、そこでお客さんが見つかれば訪問するといったケースもあります。
成田ビジネスプロデューサーという名称ですが、知財だけに関わるわけではないのでしょうか。
赤穂さんビジネス全体をみることになります。その意味では、(知財メンターなどとは)少し毛色が違うかもしれません。知財があるということ前提で支援するのではなく、その前段階から入っていき、必要な知財は取得していくというスタイルに近いと言えるでしょう。いずれにしても、事業が始まってから間もないため、これから実績をつくっていけたらと考えています。
成田なるほど。ところで、巡回特許庁のお話の中で、地域の特性や実情に沿ったイベントをするというお話が出ましたが、福島県に特化したこのプロジェクトでも、やはり地域特性に沿ったアプローチをするのでしょうか。
赤穂さんそうですね。福島県の地域特性に合わせてカスタマイズする考えで進めています。福島県のように大きな県になると、県内部でもそれぞれの地域によって文化や特性が違うため、その辺りの事情も踏まえて、地元の行政機関とコラボレーションしながらイベントを行うよう心がけています。
成田地域による違いがあるのでしょうか。
赤穂さんはい、あります。たとえば、中通り方面(福島県の中部地域)の白河市などは昔からものづくり系が強く、部品産業などが地場産業として栄えていました。浜通りの辺りでは、新しく研究施設が建てられ、ドローンやロボットの実証実験をどんどん行っているようです。近年、多くの補助金が入っていることもあり、新しい産業をベースに復興していこうという動きもあります。また、会津方面では会津大学を中心にIT関連の新たな取り組みが進んでいます。このように、地域によって、いろいろな産業がありますね。
成田現在の福島県には、多くのシーズがあるようですね。新たな研究施設がどんどん建てられていると聞くと、ひと昔前に研究学園都市として整備されたつくば市のイメージが浮かびます。
赤穂さん確かに、浜通りでの取り組みは、つくば市のイメージに近いかもしれませんね。