シリーズ「特許庁に突撃!!」~第1回 広報の人に聞いてみた 前編~

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最近……、活発ですよね?
 特許庁の広報活動・知財普及活動。
中の人に聞いてきました!

第1回 広報の人に聞いてみた ~前編~

特許庁 総務部 総務課 広報室 インタビュー

広報室のコーディネート機能

成田ウェブサイトのリニューアルなどは、広報室が主導した取り組みのようですが、広報室がコーディネート機能を担った取り組みとしてはどんなものがあるのでしょう?

清水さんプレスリリースに対するアドバイスがその1つです。プレスリリースは原則として各施策の担当課が原案を作成し、特許庁広報室とがチェックし、とりまとめを行う経済産業省広報室が掲載します。これまで、特許庁広報室がチェックを行う際の視点はあまり定まっていなかったように思います。誰に向けた情報なのか、伝えたいポイントは何か、どうすれば想定される読者が読みやすくなるかという視点を定めて見直すと、原案を作成していない広報室だからこそできるアドバイスがあると気づくようになりました。

成田ユーザー目線でみたときに、リリースの内容に直すべき点が見つかったということですね。それを広報室が、各課の担当官とのやりとりで指摘するのですか?

清水さんメールでやりとりすることが多いです。原案に対してコメントや修正案を追記します。広報室はプレスリリースの背景を熟知していないので、修正によって原案作成者が意図しない内容に変わってしまうこともあります。その場合は原案作成者から元に戻したいとのフィードバックが返ってきます。このようなやりとりの中で、担当課と広報室とが議論する形になるのですが、この過程で、徐々に意識が共有され、収束していきます。ユーザーの目線で考えるという意識を浸透させるには、良いプロセスかもしれません。

成田プレスリリースの他には何かありますか?

小泉さんプレスリリース以外でも、特許庁の公式ページなどで更新しているコンテンツについては広報室で掲載作業をしています。ここでもユーザー目線に立ち、誰向けの情報なのかといったことを念頭に置きながら、「こういう観点で直してほしい」「広報としては、こういう気持ちで載せたい」と担当官に伝えるやりとりをしています。一度伝えると、担当官は文章表現だけでなく画像回りのことも含めて次回からはそれを踏まえたものを出してきてくれるケースがほとんどで、「よく対応してくれているな」と感じます。

インタビューに協力してくれた総務課広報室 小泉 陽香(こいずみ はるか)さん。
2015年入庁。事務職員として人事、採用などを担当。その後、普及支援課で中小企業支援などに従事。2019年4月に総務課配属。

成田そうなのですね。特許庁ウェブサイトには様々なページが掲載されていますが、広報室はそれらの更新やリリースにも関わっているのでしょうか。

清水さんはい。ウェブサイトについては技術的な面もあるので、プレスリリースと比べると、広報室が主導する部分が大きいですね。

各ページは、原則として単一の課が担当することになっています。たとえばスタートアップ向けページは企画調査課が担当し、中小企業向けページは普及支援課が担当します。しかし、この原則だけではウェブサイトの情報が完全な縦割りになってしまいます。そこで、昨年度は、複数の課の人を集めたプロジェクトチームを設置し、チームでコンテンツを作る取り組みを行いました。内容を考えるのは各担当課、広報室は技術的な助言と全体のコーディネートというように役割を分担して進めました。

トップのリーダーシップの重要性

成田自分も日本弁理士会の広報センターの仕事で、弁理士会公式サイトのリニューアルを担当した経験があるのですが、色々な立場の人から、本当に色々な意見が出てきました。サイトのここをこうしたい、ああしたいというのは、人によって意見が大きく異なるものです。意見がうまくまとまらないといったことはなかったのでしょうか。

清水さん「ユーザー目線に立つ」という全体のコンセプトが揺るがなかったのがいい方向に働きました。コンセプトを明確にすると、様々な意見を採用するかどうかの優先度をつけやすくなります。各担当者から異なる意見が出たときに、どちらが今のコンセプトに近いか、すなわち、どちらがよりユーザーのためになるかという視点で検討を進めるわけです。何を目的にするのかというところを一つしっかりと決め、それを維持するのが、広報室の重要な役割だったのではないかと思っています。

成田なるほど。各セクションの権限は残しつつ、広報室が全体の指揮を取るというスタンスに立って、うまくコーディネート機能を果たせているという印象を受けます。

清水さん運がよかったと言えるのかもしれません。宗像長官のこだわりで、「初心者にやさしく」「スタートアップフレンドリー」「ユーザーフレンドリー」という点に徹底するという大きな方針がぶれなかったので、それを実現するためのWebサイトはどうあるべきかという点もぶれませんでした。そういう連鎖が働いたのではないでしょうか。

成田なるほど。大きな組織で方向性をそろえるには、やはりトップダウンでの大号令が必要なのかもしれませんね。それがよくわかる話だと思います。トップが力強いメッセージを発してくれると、各課からの協力も得やすいのかもしれませんが、そのあたりの苦労はなかったのでしょうか。

清水さんもちろん課によって、広報マインドに差はありました。つまり、先ほどの「誰に向けた情報なのか」「伝えたいポイントは何か」「どうすれば想定される読者が読みやすくなるか」などについて、敏感な課と、あまり敏感でない課とがあったように思います。広報室のコメントがあまり必要と感じられなかったのかもしれません。逆に、もっとアドバイスしてほしいと言ってくれる課もあり、その辺りをどう標準化していくか、多くの課にどうやってその気になってもらうかに難しさを感じたことはありました。もっとも、長官の号令により、格段に動きやすくなったと思います。

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