シリーズ「特許庁に突撃!」~特別編 「商標拳」はこうして生まれた 後編 ~

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最近……、活発ですよね?
 特許庁の広報活動・知財普及活動。
中の人に聞いてきました!

特別編 「商標拳」は、こうして生まれた
~ 後編 ~

特許庁 デザイン経営プロジェクト
「商標拳」チーム インタビュー

“成功したプロジェクト”がもたらすマインド変化

鹿戸さん公開する前は苦労もありましたが、今では成功したプロジェクトとして認識されていると思います。

成田一回成功すると変わりますよね。

鹿戸さん変わったのではないかと思います。特許庁で通常通り情報発信をしていても期待しているほどの反応がない、ということも多いのですが、そうすると、担当者によっては「どう発信しても一緒」という気持ちが出てくることもあります。しかし、やり方次第で変わり得るのだと、それを身をもって知ったことには大きな意義があると思います。何かをつくって終わりではなく、わかりやすく発信していこうと、チームだけでなく庁内各課の職員がそれぞれ意識するようになったようにも思います。

成田庁内でマインドの変化があったということですね。

鹿戸さんそう思います。その意味では、デザイン経営プロジェクトは、非常に効果的な取り組みだと思います。デザイン経営では、若手も幹部も、意見が平等に扱われます。若手であっても意見を述べること、まさに発信することが求められ、そして、発信した意見がその場で否定されることはないので「言ってはいけない」もしくは「言っても無駄」ということがありません。発信した意見はきちんと聞いてもらえ、反映されることまでつながるんだという意識が、プロジェクトを通して庁内全体に醸成されていったのではないかと思います。

成田「商標拳」を生み出したデザイン経営プロジェクトは、庁内の意識変化にも大きく貢献しているのですね。

デザイン経営プロジェクト「商標拳」チームの議論風景。

デザイン経営プロジェクト「商標拳」チームの議論風景(写真提供:特許庁)

成田の所感

成田ところでこれは私個人の感想なのですが、「商標拳」を見たとき、「あ、特許庁の人たちは商標制度の現状をこういうふうに考えているのだな」と思ったんですよね。というのは、動画で描かれているのは、「善人」がいて、それを真似する「悪人」がいるという構図。ただ、商標制度上は、商標出願していない人に手抜かりがあるのであって、たとえば後からその商標を出願して取得した人などは少なくとも制度上は「悪」ではありません。それを「悪」とするのであれば、制度を直せばいいというだけの話になるのですが、公正な競争市場を維持するために諸々のバランスを考慮して、制度上はそうしていません。にもかかわらず、動画では「後出しが悪」として描かれているように見受けられます。それを見て、「あ、特許庁の人たちもやっぱり本心ではそう考えているのだな」と思ったというわけです。

鹿戸さんいやいや、決してそう考えているわけではありません。「権利化していないと困ったことが起こり得ますよ」ということをわかりやすく伝える方法を追求したところ、シンプルな構図で描く形になったということです。また、知財を「自分事」として捉えて欲しいという思いもありました、その結果、主人公は「善」、乗っ取った方は「悪」にみえるような役回りがわかりやすく、そういうストーリーをカヤックさんから提案いただいた際に、我々が受け入れやすかったということではないかと思います。

               

この動画の登場人物について言えば、主人公は意図して権利化していなかったのかもしれませんし、もう少し流行ったら出願しようと思っていたところかもしれません。しかし、どんな事情があるにせよ、権利化していなかったことで、こういう困った事態になりましたと。ビジネスを行う際にはそういうリスクがあることを伝えたかったわけです。

成田確かに、あの動画では「出願していなかった」とか「後から権利を取られた」といったことはいっさい描かれていませんね。見た人が勝手にそう想像するかもしれないけれど、制度と矛盾するようなことは言っていない。そういった点も良く考えられていて、非常に巧妙につくられているなと思いました。

鹿戸さん複雑な内容や法律の話になると、見ている人が興味を失ってしまう恐れがありますので。

成田その辺りの加減が非常に難しかったのだろうなと思いました。ただ、シンプルな構図というのは分かりやすい一方で、誤解を与えてしまう恐れもあります。たとえば今回の動画では、あの「悪役のおじさん」にも言い分があるのかもしれません(笑)。そしてその言い分が商標制度に反するものではなく、実はあの悪役のおじさんも公正な競争市場で一生懸命にビジネスをしているだけだった......というケースを想定して、「悪役おじさん目線」の逆バージョンの動画もあったらおもしろいのかなと思いました(笑)。

「商標拳~ビジネスを守る奥義~」動画の1シーン

「商標拳~ビジネスを守る奥義~」動画の1シーン

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