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1月26日
5月22日(水)配信
【事件概要】
無効審判事件において進歩性ありと判断した審決が維持された事例。
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【争点】
主引例(甲1文献)に副引例を組み合わせる動機づけがあるか。
【結論】
甲1文献の記載から、経日安定性の改善のために引用発明1の構成を2剤に変更するという解決手段を読み取れるにもかかわらず、さらに、このように分けた2剤のうちの一方である、「Arg・炭酸塩含有PEG被覆粉末1」をあらかじめ水に溶解させて「Arg・炭酸塩含有含水粘性組成物」に置き換える動機付けは見当たらない。
【コメント】
本件特許は、アルギン酸(Arg)を用いて予め調整された含水粘性組成物中で炭酸塩と酸を反応させ、発生した二酸化炭素を含水粘性組成物中に気泡状態で保持させて、皮膚に二酸化炭素を供給するための美容・医薬組成物を製造するためのキットに関するものである。
主引例には、酸を含む水溶液(第1剤)並びに炭酸塩および増粘剤(アルギン酸)を含む粉末(第2剤)の2剤に分けて用時調整することは記載されているものの、本件特許のようにアルギン酸(Arg)により含水粘性組成物を予め調整した後に含水粘性組成物中で炭酸塩と酸を反応させることについては動機付けがないと判断したものである。
ちょっとした工夫で、アルギン酸(Arg)による含水粘性組成物(ジェル)中に気泡状態で保持される二酸化炭素の量が画期的に増加する。
原出願に係る平成30年(行ケ)第10054号(平成31年2月4日)も同旨の判決。
本件特許と原出願の特許に係る大阪地判平成30年6月28日・平成27年(ワ)第4292号(控訴審は大合議事件に指定され、令和元年6月7日に判決言渡予定の平成30年(ネ)第10063号)においては、11の被告に対して、合計3億3777万円余りの損害賠償が認められており、ここ1年半の最高額となっている。また、知財高判平成25年12月26日・平成25年(ネ)第10016号においても、原出願の特許に関して2億8859万円余りの損害賠償が命じられている。
(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁理士 田村明照)
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