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特許 平成30年(行ケ)第10174号「紙製包装容器の製造法及び紙製包装容器」(知的財産高等裁判所 令和元年12月26日)

3月4日(水)配信

 

【事件概要】

 本件は、無効審判事件において、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決が取消された事例である。

判決文を「IP Force 知財判決速報/裁判例集」で見る

 

【争点】

 争点は、本件審決の本件発明2と甲5発明(独国実用新案第29716230号明細書)との相違点Aの認定の誤りの有無である。

 

【結論】

 甲5の図において左右の三角形の折り込み片の頂点の上側に描かれている2個の小さな三角形は、「横シール部分」を示したものと認められる。甲5の図には、2個の小さな三角形の間には「横シール部分」は図示されていないが、その描写が省略されていると理解できる。加えて、甲5発明のように片流れ屋根形状であって、「横シール部分」が横方向に横断的に形成されている場合には、横線シールをする際に形成される折り込み片において対向するシールが同じ長さとなるので、設計上、「横シール部分」は後方寄りに位置することになるものと認められ、甲5には、相違点Aに係る本件発明2の構成のうち、「頂部に設けられた横線シールは、前面パネルよりも裏面パネルに近い側に位置し、かつ、裏面パネル側に倒される」構成を備えていることが開示されているものと認められる。したがって、相違点Aのうち、上記構成は、相違点ではなく、一致点であるから、本件審決の相違点Aの認定には誤りがある。

 

甲5(図1)

 

  (図3)

 

【コメント】

 被告は、「横線シール」が前方寄りに位置する「片流れ屋根形状」の容器の例が多数存在することからすると、「片流れ屋根形状」であれば、設計上、必ず横線シールが後方寄りに位置することになるものとはいえない旨主張したが、判決は、甲5記載の包装容器1は「上面が傾けられたそれ自体公知の折り畳み式包装容器」であることに照らすと、甲5発明の上面の形状は、本件優先日当時の折り畳み式包装容器の一般的な形状のものと理解するのが自然であり、また、甲5の記載を全体としてみても、甲5記載の包装容器1において、被告主張の展開図をあえて選択する必要性は認められないとして、被告の主張を採用しなかった。

 

(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁理士 阿部 寛)

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