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12月1日
9月21日(水)配信
【事件概要】
特許無効審判の請求を不成立(特許維持)とした審決が、取り消された事例
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【争点】
甲2及び甲3の記載事項から把握される技術の認定の誤りの有無と、それに基づく容易想到性判断の誤りの有無。
【結論】
リモコン端末に表示されたアイコンによってプログラムを選択するシステムにおいて、制御装置がプログラムコードを受信する際に、当該プログラムと関連付けられたアイコンのグラフィカルコンテンツを合わせて受信して、当該アイコンを制御装置からリモコン端末に送るようにすることは、甲2及び甲3に記載されているように周知の技術的事項であり、甲1発明1にこのような周知技術を適用することは、当業者が容易に想起し得たものと認められる。
本件審決は、甲2において、制御端末110から複数の家電機器に対する制御命令は、家電機器の制御部に対して実行されるものであるから、制御端末110は家電機器の駆動部に接続して制御する装置ではなく、また、甲3において、AV用集中制御装置(12)から複数のAV用機器(14)に対する制御命令は、家電機器の制御部に対して実行されるものであるから、AV用集中制御装置(12)はAV用機器の駆動部に接続して制御する装置ではないので、いずれも、本件発明1の「駆動部に接続されたマイクロコントローラ」に相当するものではないと解釈した。しかし、甲2及び甲3に記載された技術的事項は、・・・本件審決のように、制御端末110が家電機器の駆動部に接続して制御する装置ではないこと、AV用集中制御装置(12)がAV用機器の駆動部に接続して制御する装置ではないことと限定的に解釈すべき根拠はなく、本件審決による甲2及び甲3の記載事項から把握される技術の認定には誤りがある。
【コメント】
審決は、甲2の制御端末110と甲3のAV用集中制御装置(12)のいずれもが、本件発明1の「駆動部に接続されたマイクロコントローラ」に相当しないと認定した上で、「(甲2、3の)制御装置が、本件特許発明1の『駆動部に接続されたマイクロコントローラ』に相当するものでない以上、上記相違点1における『駆動部に接続されたマイクロコントローラによる処理』に適用しようとする動機は生じ得ない。」と判断した。しかしその判断は、「駆動部に接続されたマイクロコントローラ」に相当する構成は甲1発明が備えている構成であることと、そのマイクロコントローラに適用可能な周知技術が、判決が示すように甲2、3から認定できることとを考慮すると、誤りであったと言わざるを得ないように思われる。
(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁理士 小曳 満昭)
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