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特許 令和4年(行ケ)第10027号「耕耘爪」
(知的財産高等裁判所 令和4年12月22日)

3月15日(水)配信

 

【事件概要】
 請求不成立(特許維持)とした特許無効審判の審決が維持された事例。
判決文を「IP Force 知財判決速報/裁判例集」で見る

 

【争点】
 請求項から「前記耕耘爪は、前記耕耘軸の軸方向端部を覆うカバー体に隣接する位置に配置され、前記横刃部は、前記耕耘軸の軸方向のうち前記カバー体とは反対方向に湾曲」するという構成(構成X)が削除されても、当該請求項に係る発明は「カバー体55の後板部55cに付着した土を除去することで生じる縦刃部54b及び横刃部54cの側面の摩耗が、縦刃部54b及び横刃部54cに渡って均一となる」という作用効果(段落【0042】記載の作用効果)を得ることができるものといえるか。

 

【結論】
 原告は、本件明細書等の段落【0042】に記載された作用効果を実現するためには、出願当初の請求項1に記載された構成Xを備えることは必須であり、補正により構成Xが削除された現在の請求項1により定められる本件発明1は、本件明細書等の同段落に記載された作用効果を奏することはなく、発明の詳細な説明に記載されたものではない旨主張する。
 しかし、構成Xが補正により削除された後の請求項1により定められた本件発明1は、カバー体に隣接する耕耘爪に限定されるものではなく、本件発明の効果を記載した本件明細書等の段落【0009】には、「本件発明によれば、耕耘軸の軸方向端部を覆うカバー体に隣接する耕耘爪として用いた場合に、カバー体の内面に付着した土に対して硬質合金部を接触させることが可能となる」と記載されており、本件発明が、カバー体に隣接しない耕耘爪として用いられることも示唆されている。他方で、本件発明1に係る耕耘爪は、カバー体に隣接する耕耘爪を排除するものではなく、それが、カバー体に隣接した耕耘爪として使用される場合には、本件明細書等の段落【0042】に記載された作用効果を奏すると認められる。そうすると、本件発明1は、構成Xを備えていないことをもって、本件明細書等の段落【0042】に記載された作用効果を奏しないとはいえない。

 

【コメント】
 本件の争点は多岐にわたるが、その中から興味深いと感じた上記争点を取り上げた。段落【0042】記載の作用効果は、本件発明に係る耕耘爪がカバー体に隣接する耕耘爪として用いられた場合に初めて得られる作用効果であると解されるが、判決は、そうであるとしても、請求項における「耕耘爪がカバー体に隣接する耕耘爪として用いられる」ことの限定は必須ではないと判断したものと解される。

 

(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁理士 小曳 満昭)

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