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11月2日
9月17日(水)配信
【事件概要】
請求項3~5に係る発明(以下「本件発明3」などという。)についての特許無効審判請求は成り立たないとの審決が支持された事例。
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【主な争点】
甲3発明の保持バーナー(リジェネレーティブバーナー)に代えて、フラットフレームバーナーを採用する動機付けが存在するか(本件発明3)、甲3発明に更に熱交換器を備えようとする動機付けが存在するか(本件発明4)、甲3発明の扉を不要とする動機付けが存在するか(本件発明5)。
【結論】
甲3発明のタワー型非鉄金属溶解保持炉は、その発売当時、フラットフレームバーナーがアルミ溶解等の用途において周知のものであったにもかかわらず、エネルギー効率等の観点であえて保持バーナーにリジェネレーティブバーナーを採用したと認めることができる。そうすると、甲3発明に接した当業者において、そのような保持バーナーに代えて、あえてフラットフレームバーナーを採用する動機付けが存在していたとは認められない。
よって、本件発明3は、当業者が甲3発明に基づいて容易に想到し得たものではない…甲3発明において、保持バーナーとしてフラットフレームバーナーを採用する動機付けの存在が認められないことは前記…のとおりであり、原告の上記主張はその前提を欠くといわざるを得ない。そして、リジェネレーティブバーナーには…排ガスを吸引し蓄熱体で熱交換を行って空気を予熱する機能を有するものであり、熱交換器を備えているから…これに追加して更に熱交換器を備えようとする動機付けが存在するとはいえない。…甲3発明は保持バーナーとしてリジェネレーティブバーナーを用いており…1日1回のフラックス処理が必要であるから、清掃のための扉も必要になるのであり、これを不要とする動機付けの存在は認められない。
【コメント】
甲3発明は、タワー型非鉄金属溶解保持炉「TERRA PAC MELT」について、平成9年5月時点の株式会社大紀アルミニウム工業所作成のカタログに記載された発明であり、既に市場で販売されていた完成品に係るものである。すなわち、本件進歩性判断における出発発明は、実際に流通していた完成品を基礎とするものであった。そのような完成品を出発発明として、溶解炉の重要部品であるバーナーを変更することは、たとえフラットフレームバーナーが周知であったとしても、相当程度強い動機付けがなければ困難であったと考えられる。
(執筆担当:創英国際特許法律事務所 弁理士 和田 雄二)
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