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1月12日
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3月13日(水)配信
婦人発明家協会が主催する発明コンクール作品展「第52回なるほど展」が3月3日〜9日まで、東京・有楽町の東京交通会館で開催された。文部科学大臣賞や厚生労働大臣賞、特許庁長官奨励賞などを始め16種類の賞を受賞した合計26作品が展示されたほか、過去の受賞作品を含め同会会員が発明したヒット商品の販売会も併催。女性発明家が生活者の視点から思いついた斬新な発明品の数々を、訪れた多くの人々が楽しんだ。
文部科学大臣賞と厚生労働大臣賞の2つを同時受賞したのは、榎本貴子さん(埼玉県)が発明した「飲み口が開閉するスプーン」。ピンセット状で自由に開閉できるようになった柄の部分に、ゴム状の柔らかい飲み口を付けた。赤ちゃんや高齢者のように、口の開け閉めが自在にできなかったり、大きく口を空けられないような使い手にも、食材を楽に口の中に入れてもらうことができる。柄を調節することでスプーンを開け閉めできるため、こぼす心配もない。
特許庁長官奨励賞には、横田洋子さん(熊本県)発明の「簡易ベスト服構造」が輝いた。スーツの襟元からベスト風にみえる外観が特徴のひとつだが、食事用ナプキン機能も併せ持っており、汚れが目立たないデザインに仕立てた。折り畳み携行も可能。礼装としての装いを保ちながら、マナーにも気を配れる優れものだ。
東京都知事奨励賞を受賞したのは、角住由美さん(東京都)が発明した「油切れのよいトレイ」。タイトルの通り、揚げ立ての揚げ物を乗せるトレイで、油が下に流れやすいよう、たくさんの棒を付けた。外側の棒を長くすることで、揚げ物が転げ落ちないよう安定感を持たせたという。
今年の受賞作品について、同会副会長の石原匠子氏は、「どれもおもしろいものばかり。農作の年だった」と総括した。
発明の入賞作品が一堂に集まる今回のような大きな展示会は、発明品好きにとってだけではなく、発明そのものに興味のある女性にとっても有用な機会となる。アイデアを持ってはいても、自分ひとりではなかなか作品化にまでは至らないという人も、実際の発明品が集まった展示会は「リアル感があり、こうやってつくるんだというイメージに結び付けやすい」(石原氏)上に、「作品化、商品化へのモチベーション」(同)を得ることにもつながる。
作品から刺激を受けるのは、ファンや発明家だけではない。展示会には、一般企業の関係者も足を運ぶ。主婦としての「使う側の視点に立った、斬新な切り口の作品が多い」(同)ことが、商品開発のヒントになるからだ。入賞作品を発明者と企業が協力して商品化につなげるケースも少なくない。
展示会に併設された即売会で販売されていた発明商品は、発明者と企業が協力関係を築きながらブラッシュアップしていったことで完成された商品も多い。「会場のスペースに余裕があれば、商談スペースも設けたいところ」(同)だ。
展示会では、実際の入賞者にも話を聞くことができた。
日本弁理士会会長賞を受賞したのは、津久田喜代枝さん(茨城県)発明の「ワンタッチ日除けカバー」。車の運転時に腕に装着し、車窓からの日差しを遮るカバーで、乗車してから発進するまでのわずかな時間で装着が可能だ。腕に乗せ、ポンとたたくと振動でバネの力が働き、カバーが腕に巻き付く。手の甲まで、日差しを避けたいすべての面をカバーできる一方で、腕の下部分は密閉されずに風が通る作りになっており、熱を逃がしやすいという。コンパクトに折りたたむことができ、携行性にも優れている。
実は、なるほど展で津久田さんが受賞したのは、今回で3回目。これまで骨盤サポーターなど数々のヒット商品を発明し、送り出してきた「大家」だ。もともと、父親がエンジニアで自動車関連の特許を持っており、父親の背中をみて育つ中で、自身も自然に発明のアイデアを練るようになったという。「今も、頭の中には30個ほどのアイデアが眠っている」(津久田さん)といい、発明の意欲は衰えない。今回のなるほど展では、同じ発明者が文部科学大臣賞と厚生労働大臣賞を同時受賞したが、「次は、私もダブル受賞を狙いたい」と目を輝かせた。
なるほど賞を受賞した大橋佳子さん(奈良県)が発明したのは、「差込式半衿」。着物の初心者にとってハードルとなる半襟のつけ替えも、この発明品を用いることによって約5分で済ませることが可能になるという。あらかじめ中襟1枚を長襦袢の地襟に縫い付けておき、この中襟に、差し込みヅメを装着した特製の半襟を差し込んで形を整える。半襟には、差し込みヅメを入れるためのボタンホールが開けられているのだが、このボタンホールの絶妙な間合いを見つけるのが大変で、「何度も試行錯誤を重ねた」(大橋さん)という。
大橋さんの発明の背景には、自身が講師を努める着付け教室の生徒たちへの配慮がある。着付け教室に通い始めた人にとって、半襟の着脱は最初の難関とされる。実際、大橋さんの教室でも手こずってしまう人が多く、次の授業に進めないという状況に陥ることが少なくなかったという。そうした中で「なんとかしなければ」との思いが、今回の発明を生み出した。生徒に「差込式半衿」を試してもらってみたところ、反応は上々だという。
このほかにも、展示会では数々のユニークで有用な入賞作品が並んでいた。
併設の即売会にも、おなじみとなった発明商品、ロングセラーヒット作品が販売されており、リピーター客や新規の客を呼び込んでいた。
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